判例全文 | ||
【事件名】販促冊子「さくら SAKURA」事件B(2) 【年月日】令和6年6月12日 知財高裁 令和5年(ネ)第10105号 損害賠償請求控訴事件 (原審・東京地裁令和4年(ワ)第6207号) (口頭弁論終結日 令和6年5月8日) 判決 控訴人(第1審原告) X 同訴訟代理人弁護士 喜田村洋一 被控訴人(第1審被告) 日本たばこ産業株式会社 同訴訟代理人弁護士 山田洋平 同 高橋優依 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 (略語は、別に定めるもののほか、原判決の例による。) 第1 事案の要旨 写真家である控訴人は、本件各写真の著作者・著作権者であるところ、被控訴人は、平成17年2月以降、地域限定で本件たばこ「さくら」のテスト販売を行った際、(1)本件各写真を掲載した本件冊子を頒布し、(2)本件写真B、Dを改変(トリミング)した本件販促用写真を自動販売機上で宣伝に用いた。 本件は、控訴人が、上記(1)の行為は許諾期間を超えて行われたから著作権(複製権)を侵害するものであり、上記(2)の行為は控訴人の意に反するものとして著作者人格権(同一性保持権)を侵害する旨主張し、被控訴人に損害賠償を求める事案である。 第2 当事者の求めた裁判 1 控訴人の請求 被控訴人は、控訴人に対し、8946万円及びうち6000万円に対する平成17年2月2日から、うち2946万円に対する平成18年1月1日から、各支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 【請求の法的根拠】 ・主請求:不法行為に基づく損害賠償請求 ・附帯請求:遅延損害金請求(利率は平成29年法律第44号による改正前の民法所定) 2 原審の判断及び控訴の提起 原審は、控訴人主張の許諾期間を超えて本件冊子が頒布された事実は認められないとして複製権の侵害を否定し、また、本件写真B、Dに係る同一性保持権の侵害が認められるとしても、消滅時効が成立するとして、控訴人の請求を全部棄却する判決をした。これを不服として、控訴人が以下のとおり控訴した。 【控訴の趣旨】 (1)原判決を取り消す。 (2)上記1と同旨 第3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張 1 前提事実 前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の2(2頁〜)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 争点 本件の争点は、以下のとおりである。 (1)本件冊子に係る複製権侵害の有無 ア 本件冊子の頒布期間(争点1) イ 利用許諾期間(争点3) (2)本件販促用写真に係る同一性保持権侵害の有無 ア 本件販促用写真と「意に反する改変」の有無(争点2) イ 本件写真B、Dのトリミングと許諾の有無(争点3) (3)損害額(争点4) (4)消滅時効の成否(争点5) 3 争点に関する当事者の主張 争点に関する当事者の主張は、以下のとおり当審における控訴人の補充的主張を加えるほか、原判決「事実及び理由」の第3(4頁〜)に記載のとおりであるから、これを引用する。 【当審における控訴人の補充的主張】 (1)争点1(本件冊子の頒布期間)について 原判決は、本件たばこが販売されていた平成17年2月から同年12月までの期間のうち、同年4月以降は同年3月までに獲得された顧客のリピート・定着の促進を図るべき期間と位置付けられていたとして、控訴人が主張する侵害対象期間である同年5月以降の本件冊子の頒布の事実を認めなかった。 しかし、本件冊子は、本件たばこのネーミングが広く記憶され、本件たばこが広く消費されるためのものである以上、本件たばこが販売されている間は本件冊子が頒布されていたことが明らかである。 (2)争点5(消滅時効の成否)について 原判決は、控訴人が広告代理店から本件デザイン案の交付を受けたことから、利用(改変)する写真を本件デザイン案のものから本件写真B、Dに入れ替えた本件ハンドブックについても、平成17年2月頃に広告代理店から交付を受けたことが十分合理的に推認されるとして、その頃に損害の発生及び加害者を知った旨判示するが、控訴人が本件デザイン案の交付を受けたからといって、それとは別の、利用(改変)する写真を本件デザイン案のものから本件写真B、Dに入れ替えた本件ハンドブック等の交付を受けたことが推認されることにはならない。 本件デザイン案では、本件写真B、Dについては目立った改変はされておらず、控訴人が本件デザイン案に異議を述べなかったとしても、広告代理店によって本件写真B、Dが本件販促用写真のように無残に改変されることが提示され、控訴人がこれに異議を述べなかったことにはならない。 また、原判決は、Aの陳述書(甲10)につき、平成17年2月頃に撮影された写真の記憶が令和2年9月頃に喚起されるのが不自然であるとするが、人の記憶能力や記憶喚起のきっかけは千差万別であり、原判決のような決めつけは経験則に反する。 第4 当裁判所の判断 当裁判所は、以下に述べるとおり、@著作権(複製権)侵害に関しては、控訴人主張の許諾期間を超えた本件冊子の頒布の事実が認められない(この点は原審と同旨)上、当該許諾期間の合意自体も認められない、A著作者人格権(同一性保持権)侵害に関しては、原審の理由と異なり、そもそも意に反した本件各写真の改変が行われた事実が認められないとの理由により、控訴人の請求は全部棄却すべきものと判断する。 1 認定事実 前提事実のほか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件写真集及びその収録写真(甲1、7、10、15) ア 控訴人は、大阪芸術大学写真学科を卒業した写真家であり、平成6年発行の本件写真集(「幻視」)を始めとして、複数の写真集を発表している。控訴人の写真作品は、一流ミュージシャンのアルバムのジャケットに使用されたこともある。 イ 本件写真集に収録されている本件写真B〜Dを含む写真は、明治時代を想起させる人物のモチーフをセピア色のモノクロームで表現した写真作品である。 本件写真Bは、楼閣のある庭園(横浜の三渓園)を背景に、和装にくわえたばこの男性(文士)が片膝を立てて地面に腰を下ろし、険しい表情で遠くに視線を送っている様子を表現した作品、本件写真Cは、同様のシチュエーションで、文士が指にたばこを挟んだ立ち姿となっている作品である。この文士は芥川龍之介をイメージしたとされ、文士の発する緊張感が画面全体を引き締めるような印象を与えている。 本件写真Dは、満開の桜の下で、男女が並んで地面に腰を下ろし手を取り合っている様子を表現している。和装の男性は太宰治をイメージしたとされ、時間が止まったような静謐さを感じさせる作品である。 ウ 本件写真集には、本件各写真のほか、桜の花に囲まれて直立する男女の写真(甲15の資料1、以下「件外写真@」という。)、ふすまを背に正座する和装の青年の写真(同資料2、以下「件外写真A」という。)も収録されている。件外写真@は、「明日出陣する特攻隊員が恋人と一緒にいる情景」という設定の作品であり、正面を見据える男女の眼差しの強さが印象的で、男性の服装は特攻隊員のものと思われるものである。 (2)本件たばこのテスト販売に係る販促活動と控訴人の写真作品の利用許諾(甲2、8、乙1、8) ア 被控訴人は、平成16年頃、「さくら<SAKURA>」という名称の紙巻きたばこの新製品(本件たばこ)の販売を計画し、平成17年2月以降、鹿児島県と宮崎県の地域限定でテスト販売を行うこととした。本件たばこは、百年の歴史を持つブランド「チェリー」から着想を得て、「日本的な美を極めたパッケージ」で販売するというコンセプトで商品化されたものであり、「さくら」のロゴは、流麗な草書体風の文字が使用されている。 イ 被控訴人は、上記のコンセプトに従った本件たばこのプロモーション(以下「本件販促活動」という。)を広告代理店の電通に委託し、電通は本件販促活動に用いる写真のデザイン等に係る業務をNDCに委託した。NDCでは、Bがプロデューサーとしてこれを担当することになった。Bら(B又は電通若しくはNDCの別の担当者をいう。以下同じ。)は、控訴人の本件写真集収録の控訴人の写真作品が本件販促活動のイメージに合致すると考え、平成16年頃、控訴人に同写真の有償使用を打診した。控訴人はこれを了承し、本件販促活動に使用してもらうために新たに本件写真@、Aを撮り下ろすなど、積極的にこのプロジェクトに関わることとなった。 なお、本件写真@、Aは、和室の座卓上で、灰皿に載せられたたばこから煙が立ち上っている様子を表現した作品である。 ウ 控訴人はNDCの子会社の従業員であった時期があり、NDCとの間には一定の信頼関係があったこともあり、控訴人とNDCとの間で、写真の使用許諾に係る契約書は作成されず、目的が本件たばこのテスト販売に係る本件販促活動における使用であること、写真作品の使用許諾料は合計800万円とすること等が口頭で合意されたにとどまった。 そうして、NDCは、控訴人が経営する有限会社レーヴに対し、平成16年12月28日に314万9160円、平成17年2月7日に524万9160円を振り込んだ(甲5)(総額が800万円を超えている理由の詳細は不明であるが、若干の経費の支払等が含まれているものと考えられる。)。 (3)本件デザイン案の交付及び対象写真の選定過程(甲6、14、15、乙6〜8) ア Bらは、平成16年秋頃以降、控訴人に対し、本件たばこの自動販売機及び販売店舗でどのように控訴人の写真作品を利用するかを具体的に示した本件デザイン案(甲6)及び本件販促活動に使用する小冊子のイメージを手書きで示したラフ(甲14)を交付するなどしながら、打合せ及び調整作業を進めた。 イ 本件デザイン案では、(ア)自動販売機のインサイドパネル及び販売店舗用のポスターステッカーなどとして本件写真B、Dを使用すること、(イ)自動販売機のガラス面アイキャッチャー(販売商品の見本〔たばこパッケージ〕が並んでいる部分)に件外写真@、Aを使用することが示されている。このうち、(ア)の本件写真B、Dは、「さくら」のロゴが重ねられているものの、全体の構図は原作品を比較的忠実な形で用いているが、(イ)の件外写真@、Aは、たばこパッケージとほぼ同じ大きさになるよう、人物部分だけを切り出すように大幅にトリミングした写真が使用されており、そこに「さくら」のロゴが重ねられていた。 ウ 本件デザイン案を踏まえた控訴人とBらの調整を経て(その詳細は、古いことでもあり証拠上明確でない部分が多いが、合理的に推認される内容は後記3に示す。)、最終的に、本件販促活動において使用する対象写真として、上記イ(ア)の本件写真B、Dは本件デザイン案のとおりとしたが、同(イ)の写真2葉については、件外写真@、Aをトリミングしたものから本件販促用写真に差し替えられた。本件販促用写真@−1及びA−1は本件写真Bをトリミングしたもの、本件販促用写真@−2及びA−2は本件写真Dをトリミングしたものであるが、たばこパッケージとほぼ同じ大きさになるよう人物部分だけを切り出すような大幅なトリミングが施されている点(以下「本件トリミング手法」という。)は、差替え前の本件デザイン案(上記イ(イ))と同様である。 エ 当時、Bは、本件販促活動に写真作品を使用することを前提に控訴人がその使用を許諾している以上、ツールの規格等に合わせて所要のトリミング等を行うことは当然に予定されていたという認識であった。 (4)本件ハンドブックに基づく本件販促活動の展開 ア 被控訴人は、以上の調整等を踏まえて、平成17年2月までに、本件販促活動のための内部資料として本件ハンドブック(乙1の「セールスハンドブック」)を作成した。本件ハンドブック中の自動販売機等の広告イメージ図には、本件デザイン案を上記(3)ウのとおり変更された内容が記載されている。また、店頭プロモーションとして、本件販促用写真を使用したオリジナルマッチ及び同マッチとたばこをパックしたものも示されている。 イ 本件ハンドブックの示すタイムスケジュールによれば、平成17年1月17日に記者発表をし、同年2月1日に地元紙への発売告知広告がされるとともに、同年2月〜3月が「店頭・VM展開」期間とされ、また、同年4月以降は、「リピート・定着/ロイヤリティ把握」のための「フォロー施策」として、名簿獲得顧客に対するDM施策の展開及び名簿に記載はあるがDMアンケート等の調査に参加していない喫煙者に対するサンプルたばこ送付等を行う期間とされた。 上記「店頭・VM展開」に関し、「文士達をモチーフとしたビジュアルにより、興味喚起を図りながら、喫味としてのうまさの想起も狙う。差別性のある世界観を打ち出しつつ、新製品の登場感を演出。」という説明が付記されており、本件各写真の利用は、本件販促活動において重要な柱とされていた。 ウ 本件冊子(甲2)には、本件たばこのコンセプトを説明する文章とともに、本件各写真が掲載されている。被控訴人は、上記イのスケジュール上「店頭・VM展開」期間とされる平成17年2月〜3月の間、本件販促活動のために本件冊子を頒布した。 エ 本件販促活動の期間中、たばこの自動販売機に本件販促用写真が使用された(甲3、4)。 (5)本件訴訟に至る経過(甲11、15) ア 控訴人の知人(写真作品のファン)であるAは、平成17年2月頃、旅行で鹿児島を訪れた際、本件販促用写真が使用されている自動販売機を偶然見つけ、控訴人の写真作品を使用したものであると認識し、「記念のため」写真に収めた(甲3、4、10)。 イ 本件たばこは、地域限定のテスト販売から全国販売に展開されることなく、平成18年1月以降販売中止となった(甲12)。 ウ その後、令和2年夏頃に至り、控訴人とAが話をしていた際、本件たばこのプロモーションに控訴人の写真作品が利用されたことが話題に上ったのを契機として、同年秋頃、Aが上記アの写真を控訴人に提供した。これを見た控訴人は、自身の写真作品について意に反した改変があったと考えるに至り、その約1年半後の令和4年3月14日、本件訴訟を提起した。 2 本件冊子に係る複製権侵害の有無(争点1、3)について (1)上記1(4)イ、ウのとおり、本件冊子が頒布されたのは、被控訴人作成の本件ハンドブックに「店頭・VM展開」期間とされている平成17年2月〜3月の間であったと認められ、控訴人の主張する許諾期間(同年2月1日〜4月30日)を超えて本件冊子が頒布されたと認めるに足りる証拠はない。以上の詳細は、原判決「事実及び理由」第4の1(8頁〜)のとおりである。 (2)控訴人は、本件冊子は本件たばこのネーミングが広く記憶され本件たばこが広く消費されるためのものである以上、本件たばこが販売されている間は本件冊子が頒布されていた旨主張するが、仮にそうだとしても、控訴人が本件各写真の使用許諾をした目的が本件販促活動における使用であったことは明らかであり、本件販促活動の期間と切り離して許諾期間が定められていたと認めるに足りる証拠はない。なお、控訴人とBらとの間の許諾交渉過程で、Bらから「本件販促活動期間は平成17年2月1日〜4月30日の予定」という程度の話があったことは推認されるが(甲8〔別件訴訟におけるNDCの準備書面〕の3頁の記載参照)、そうだとしても、「本件販促活動の継続の有無にかかわらず、同年4月30日をもって許諾期間が満了する」という趣旨を含む許諾期間の合意が成立していたとまで認めることはできない。 (3)以上のとおり、上記(1)、(2)のいずれの観点からしても、本件冊子に係る著作権(複製権)の侵害をいう控訴人の主張は理由がない。 3 本件販促用写真に係る同一性保持権侵害の有無(争点2、3)について (1)控訴人は、本件販促用写真は、控訴人の意に反して本件写真B、Dを無残にトリミングしたものであり、控訴人がこれを許諾したことはない旨主張する。 しかし、上記1で認定したとおり、NDCのBは、本件販促活動に関わっていた当時、本件販促活動に写真作品が使用されることを前提に控訴人がその使用を許諾している以上、ツールの規格等に合わせて所要のトリミング等を行うことは当然に予定されていたという認識を有しており、現に、そのような前提の本件デザイン案が控訴人に示されている。その後のBらと控訴人との調整過程を客観的に明らかにする証拠はないものの、最終的に、件外写真@、Aを本件販促用写真(本件写真B、Dをトリミングしたもの)に差し替える変更が行われたにとどまり、本件トリミング手法自体が変更されることはなかった。控訴人の当審における陳述書(甲15)においても、本件デザイン案が変更された理由として、件外写真@は出陣を翌日に控えた特攻隊員を表現した写真作品であったという理由が強調されている一方、トリミングの当否を巡る具体的なやり取りは明らかにされていない。なお、件外写真Aの変更理由は必ずしも明らかでないが、「たばこ」も「さくら」も登場しない点で、本件販促活動に使用する必然性はそもそも乏しかったと考えられる。 以上のような事情に照らすと、件外写真@、Aについては、NDC側が、控訴人の意見も踏まえつつ、本件たばこのイメージにそぐわないと判断して対象写真を差し替えたという経緯がうかがわれる一方、本件トリミング手法(たばこパッケージとほぼ同じ大きさになるよう人物部分だけを切り出すような大幅なトリミングを施す手法)の採用自体が問題とされた形跡はなく、こうした状況を総合すると、控訴人において、本件トリミング手法を使った写真の利用につき明示又は黙示の許諾を与えていたものと合理的に推認される。 (2)控訴人は、陳述書(甲9、11、15)中で、本件写真集収録の写真は広告用のものではなく、芸術家として作り上げた芸術作品であって、写真芸術としての価値を損なうような改変を同意するはずがないと強調している。 本件各写真(特に本件写真B、D)が芸術作品と呼ぶにふさわしいものであることは、当裁判所も全面的に認めるものであり、その価値が損なわれるのは許せないとする控訴人の心情は理解できる。 しかし、当然ながら、被控訴人は、控訴人の芸術作品を紹介したくて本件各写真の利用を申し出たのではなく、主役である本件たばこを引き立てる道具として本件各写真を利用しようとし、NDCを通じてその対価の支払を提案しているのである。そして、自動販売機で最も目に付きやすいガラス面アイキャッチャー(販売商品の見本〔たばこパッケージ〕が並んでいる部分)にたばこパッケージと同じ大きさになるようにトリミングした写真を使用するという本件各写真の利用方法は、本件販促活動の重要な柱となっていたのであるから、仮に、控訴人がこのようなトリミングを許諾しないという意思を明確にしていたとすれば、控訴人の写真作品を本件販促活動に利用するという構想自体が白紙となり、800万円の許諾料の支払合意も合意解除されることが当然予想されるところ、現実には、本件トリミング手法を使った写真の利用がされ、控訴人は許諾料800万円を受領しているのである。 さらに、控訴人がAから本件販促用写真が使用されている自動販売機の写真の提供を受けて、自身の写真作品について意に反した改変があったと考えるに至ったのは令和2年秋頃である(上記1(5)ウ)ところ、その時点までに、控訴人とBらが本件販促活動の内容の打合せを行っていた平成16年〜17年から15年以上もの年月が経過している。この間、本件各写真の利用方法を巡る打合せの経過及び内容につき、控訴人の記憶が変容し又はあいまいになっていたとしてもやむを得ないところである。十数年ぶりに本件販促用写真を見て、原作品とのギャップに強い違和感を抱いたという控訴人の心情に偽りはないとしても、これを「意に反した改変」が行われた根拠とすることが適切とはいえない。 (3)以上に述べたところによれば、原作品である本件写真B、Dを本件販促用写真に改変したことが控訴人の「意に反して」(著作権法20条1項)行われたものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。同一性保持権の侵害をいう控訴人の主張は理由がない。 4 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求は理由がないから全部棄却すべきである。これと結論を同じくする原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸 |
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