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【事件名】「生長の家」著作物の無断複製事件C(2)
【年月日】令和6年2月7日
 知財高裁 令和5年(ネ)第10065号 著作権侵害差止請求控訴事件
 (原審・東京地裁令和3年(ワ)第9047号)
 (口頭弁論終結日 令和5年11月2日)

判決
控訴人 公益財団法人生長の家社会事業団(以下「原告事業団」という。)
控訴人 株式会社光明思想社(以下「原告光明思想社」という。)
控訴人 生長の家創始者谷口雅春先生を学ぶ会(以下「原告学ぶ会」という。)
前記3名訴訟代理人弁護士 内田智
被控訴人 生長の家(以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 田中伸一郎
同 相良由里子
同 松野仁彦


主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被告は、原告事業団に対し、原判決別紙著作物目録記載1及び2の各著作物の部分を削除しない限り、原判決別紙書籍目録記載の書籍を複製又は頒布してはならない。
3 被告は、原告光明思想社に対し、原判決別紙著作物目録記載1及び2の各著作物の部分を削除しない限り、原判決別紙書籍目録記載の書籍を複製してはならない。
4 被告は、原告学ぶ会に対し、原判決別紙著作物目録記載1及び2の各著作物の部分を削除しない限り、原判決別紙書籍目録記載の書籍を複製又は頒布してはならない。
第2 事案の概要
1 事案の要旨(本判決中の用語の定義は、特に記載しない限り、原判決の例による。以下同じ。)
(1)本件は、本件著作物1及び本件著作物2の収録された本件書籍の出版を計画している被告に対し、原告らが、本件書籍の出版により原告らの次の各権利が侵害されるおそれがあると主張し、いずれも著作権法112条1項に基づき、本件書籍の複製及び頒布又は複製の差止めを求めた事案である。
@原告事業団本件各著作物に係る原告事業団の著作権(複製権)
A原告光明思想社本件各著作物に係る原告光明思想社の出版権
B原告学ぶ会本件各著作権に係る原告学ぶ会の著作権(複製権。ただし、原告事業団から一部譲渡を受けたもの)
(2)原審は、原告らの請求をいずれも棄却した。原告らは、これを不服として本件控訴をした。
2 前提事実
(1)原判決の引用
 前提事実は、後記(2)のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2(原判決3頁1行目から7頁16行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決の補正
ア 3頁11行目の「宗教としての「生長の家」を指す場合」を「宗教(宗教法人法上の宗教法人としての被告が成立する前も含む。)としての「生長の家」を指す場合」と改める。
イ 3頁19行目の「(甲11)。」の次に「被告の成立前は、宗教法人令2条に基づく宗教法人として、昭和24年7月に設立された「生長の家教團」が存在していたが、宗教法人法の施行に伴い、同法附則6項の規定の手続を経て、同法上の宗教法人としての被告が成立したものである(乙158、160、弁論の全趣旨)。」を加える。
3 争点
 本件の争点は、次のとおりである。
(1)黙示の使用許諾の有無(争点1)
(2)使用許諾の解約の成否(争点2)
(3)本件出版権侵害の成否(争点3)
(4)本件出版権の行使の権利濫用該当性(争点4)
(5)原告学ぶ会の本件各著作物の準共有者該当性(争点5)
(6)著作権及び出版権侵害のおそれの有無(争点6)
 なお、当審において、原告らは、争点2に関し、黙示の使用許諾が認められた場合における解約の範囲について、被告が有償で複製頒布して行う出版事業における本件各著作物の使用に限り解約する旨の主張に変更した。
4 争点に関する当事者の主張
(1)原判決の引用
 争点に関する当事者の主張は、当審における原告らの主張を踏まえ、後記(2)のとおり補正し、後記5のとおり当審における原告らの補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の4(原判決7頁24行目から15頁6行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決の補正
ア 10頁24行目の「黙示の使用許諾を解約すること」を「黙示の使用許諾を有償での出版事業での使用に限り解約すること」と改める。
イ 11頁15行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「(エ)被告と原告事業団との間では、平成21年以降の著作権の帰属や管理を巡る不当な被告の主張や請求により紛争が生じており、最高裁で決着した紛争についても、被告がなお原告らの著作権を否定する主張を続けていること(甲98〜107)、被告による原告事業団の役員らの信者団体からの除名や役職解任等(甲125〜127)、原告事業団の運営する児童養護施設の入所児童に対し、被告が青少年練成会への参加を拒否したこと(甲128の1〜6)などにより、信頼関係が破壊されている。
(オ)原告事業団による解約の範囲は、本件各著作物に限られ、かつ、被告が複製し、有償で配布する本件書籍の出版事業に限られており、儀式や口演で使用することは認められるのであるから、被告の布教や伝道活動が不可能になるなどして、多大な不利益が生ずることもない。」
5 当審における原告らの補充主張
(1)黙示の使用許諾について
ア 昭和28年1月1日に発行された聖光録(乙10、35)は、被告とは別組織の営利団体である日本教文社が契約に基づき発行した書籍である。被告と日本教文社との間には一体性はない。亡Aは昭和23年頃から昭和32年頃までの間、公職追放されていたから、両組織の組織上の権限からも実質上の影響力行使からも排除されていた。日本教文社は、聖光録発行の際、原告事業団から出版の個別許諾を得ており(甲84)、被告は、その「編纂」「編集」について名目的にしか関与していない。被告は、昭和27年5月30日に宗教法人として成立した後、平成元年4月まで書籍の出版事業をしたことはない。原告事業団と被告との間には、昭和59年以降、原告事業団が著作権者であることを被告が認め、被告が、内規(甲114)や通達(五者会議資料)により、著作権の使用のルールを定めていた事実がある。包括的な黙示の許諾が無かったからこそ、このような通達や内規で使用ルールが定められていたのである。
 これらの事実によれば、被告が遅くとも昭和28年1月1日までに本件書籍を有償で発行することを含め著作物使用の許諾を原告事業団から得ていたと認めることはできない。
イ 亡Aにおいて生長の家に係わる宗教法人が本件各著作物を継続的に使用することは当然に認めていたかもしれないが、宗教法人が有償で書籍発行を行うことまで想定していたとは考えられない。原告事業団は、平成21年以降の著作権を巡る紛争の発生により、著作物の使用に対する異議や、使用料の請求を厳しく行うようになったが、そのことを引き合いに出して、昭和28年1月当時の黙示の使用許諾の認定根拠とするのは不合理である。原告事業団が、日本教文社との間で、昭和49年の契約(甲49)により、独占的、排他的内容の出版契約を締結していることは、昭和28年1月1日以降に被告が原告事業団から書籍発行の許諾を得ていた事実と矛盾する。原告事業団は、宗教儀式・行事での著作物の読み上げ利用や、口演などでの利用については、非営利的な伝道・宗教活動として、ことさら個別の許諾を必要とせずに被告による使用を認め、又は放置していたにすぎない。各「神示」は個別の著作物であり、内容上も表現上も一体性があるわけでもないのに、被告とは別法人である教化部の機関紙における一部の神示の使用例があるからといって、当該神示とは別の神示である本件各著作物の使用許諾もあったとするのは、著作物の個性を無視するものである。
(2)解約について
ア 宗教法人法は、宗教法人の「規則の認証の申請」に当たり、「当該団体が宗教団体であることを証する書類」の提出を求めており(同法13条1号)、当該書類の様式上、「主神・本尊」「宗教行事」等の事項を記入することとされているから、これらの事項は、外形的・客観的に観察可能な事項である。したがって、「祭神の変更」「宗教儀式の変更」等に基づき被告の教団としての同一性が変更されたと認めること(甲80、86)は、信教の自由や教義に立ち入るものではないから、これを原告事業団による使用許諾の解約の根拠とすることは正当である。
イ 被告が教団の団体としての同一性を失った以上、事情変更の原則を適用し、解約を認めるべきである(神社と信じて土地の使用貸借を認めた地主が、同神社がカルト的新興宗教団体のダミーであったことが判明した場合に解約を認められるべきであることと同様である。)。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も原告らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおりである。
1 認定事実
(1)原判決の引用
 認定事実は、後記(2)のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の1(原判決15頁8行目から19頁19行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決の補正
ア 16頁1行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「なお、光明思想普及会は、独立の法人であるが、実質的には生長の家の出版部門として位置づけられていた(甲151、390頁)。また、前提事実(1)カのとおり、亡Aは同社における最高顧問の地位にあるとされており、昭和34年公刊の「生長の家三十年史」97頁にも「本年は創立二十五周年を迎え、A先生が常に最高顧問の地位にあって經榮一切の御指導に當られ」との記載がある(乙165)。」
イ 16頁2行目の「原告事業団の設立」を「原告事業団の設立等」に改める。
ウ 16頁11行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
 「イ 亡Aは、終戦後も精力的な執筆活動を続け、原告事業団を設立した昭和21年には地方における講演活動(御巡錫)を再開し、昭和22年以降、全国各地における講演活動を本格的に再開した。亡Aは、昭和23年6月、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)から正式に公職追放指定を受け、生長の家総裁を辞任した。しかし、亡Aが純粋な布教活動を行うことは制限されなかったことから、亡Aは、引き続き全国を廻り布教活動を行っていた(甲151の369頁、379頁〜382頁、乙19)。亡Aの公職追放は、昭和26年8月頃終了した。他方、被告は、昭和24年7月の宗教法人令上の宗教法人を経て、昭和27年5月、生長の家の教規に基づき生長の家の教義をひろめること等を目的とする宗教法人法上の宗教法人として成立した(甲11、乙159)。なお、被告は、昭和63年8月1日付で、宗教法人法27条1号の規定に基づき、公益事業以外の事業として出版業を追加することを内容とする規則変更の申請の認証申請を行い、同月23日、文部大臣から同法28条の規定による認証を受けた。同規則の変更は、平成元年4月1日から施行された(甲113)。
エ 16頁12行目の「イ」を「ウ」に改め、16行目の末尾に「原告事業団の目的は「創立者Aの宗教的信念に基づき」「社会厚生事業及び社会文化事業の発展強化を図ること」である(前提事実(1)ア、甲1、11)。」を加える。
オ 19頁19行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「(6)各訴訟に関する被告のホームページの記事等
ア 被告は、前記(5)アの訴訟事件の係属中の平成23年3月から平成26年4月にかけて、被告のホームページにおいて、当該訴訟事件における被告の主張を紹介するとともに、原告事業団が、「自らに著作権が存するとする著作物の出版その他の利用を行うことにより、宗教法人「生長の家」の文書伝道を阻害しようとしているのが、本件訴訟を巡る紛争の本質です。」(甲101)等と記載した記事を掲載した(甲98から107まで)。また、同ホームページには、日本教文社と原告事業団との間の訴訟事件(甲95から甲97まで)における日本教文社の主張(原告事業団の主張を批判する内容のもの)を引用した記事も掲載されている。これらの記事は、平成25年5月27日付け(甲20)及び平成28年3月15日付け(甲97)の最高裁の各決定により、被告及び日本教文社の各敗訴が確定した後もなお閲覧可能な状態のままである(甲18から20まで、甲96から甲107まで)。なお、被告の海外法人である「生長の家ブラジル伝道本部」は、平成22年8月以降、そのホームページに「生命の實相」の著作権について被告と同じ主張を掲載している(甲143の2)。
イ 被告の幹部であったB(以下「B」という。)は、退職後、令和3年12月頃及び令和5年3月頃の2回にわたり、「生命の實相の著作権が亡Aから原告事業団に寄付された事実はない」等といった内容を含む記事を執筆し、個人機関誌「光明の音信」に掲載した(甲131から甲136まで)。」
2 争点1に対する判断
(1)原判決の引用
 争点1に対する判断は、後記(2)のとおり原判決を補正し、後記(3)のとおり当審における原告らの補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の2(原判決19頁20行目から23頁10行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決の補正
ア 20頁8・9行目の「亡Aが原告事業団の理事長及び被告の総裁として両者を運営していたこと」を「亡Aは、原告事業団が設立された昭和21年1月以後、公職追放されていた期間中も全国を巡り布教活動を行っており、公職追放終了後であり、日本国との平和条約(サンフラシスコ平和条約。昭和27年条約第5号)の発効日である昭和27年4月28日の後である同年5月30日に、生長の家の教義をひろめることを目的とする被告が成立したこと」に改める。
イ 20頁18・19行目の「想定していたものと認めるのが相当である」を「想定しており、本件各著作物を宗教法人がその設立目的のため利用する場合に、原告事業団から個別の承諾を要するような仕組みにする意図はなかったものと認めるのが相当である」に改める。
(3)当審における原告らの補充主張に対する判断
ア 黙示の使用許諾について
(ア)原告らは、日本教文社は被告とは別の法主体であって一体性はなく、亡Aが公職追放されていた間、亡Aは両組織から排除されていた旨主張する。しかし、前記補正の上引用した原判決の認定事実のとおり、日本教文社は、実質的には生長の家の出版部門として位置づけられていたのであり、生長の家の創設者であった亡Aが、最高顧問として、常に日本教文社に対する影響力を行使していたことは、昭和34年に公刊された「生長の家三十年史」の記載からも明らかである。亡Aは、昭和21年以降、公職追放期間中も執筆活動のほか、積極的に全国を廻って布教活動をしており、生長の家の教義は、すべて亡Aが創設したものであるから、亡Aが、被告や原告事業団について影響力を有していなかったとは到底考えられない。むしろ、当時、生長の家の教義に関する書籍の出版の可否及びその内容は、すべて亡Aの意向や指示に基づいて決められており、被告は、生長の家の教義を広めることを目的とする法人であり、原告事業団から個別の承諾を得ることなく、布教のため、当然に、亡Aの著作物について自由に利用することが認められていたと考えるのが自然である。日本教文社が聖光録を出版するに当たり、被告や日本教文社が原告事業団から著作権に係る個別の許諾を受けていたことや、その「編纂」「編集」について被告が名目的にしか関与していなかったことを認めるに足りる的確な証拠はないし、原告事業団が第三者に本件各著作物を含む「神示」の使用を許諾する場合には個別に許諾することとしていた旨の原告事業団代表者の供述を裏付ける客観的な証拠がないことも、前記補正の上引用した原判決のとおりである。また、確かに、証拠上、昭和63年8月以前の被告の規則に出版業の記載がなかったことは認められるが、そのことは、原告事業団が設立された昭和21年以後も被告が布教活動を行う上で本件各著作物を自由に使用していたことを認める妨げにはならない。さらに、原告らの主張する昭和59年以降の内規や五者会議資料(乙182から185まで)の記載によっても、これらの文書において、原告事業団が有する本件各著作物を含む亡Aの著作物に関し、被告がこれを自由に利用することができないことを前提に、その使用ルールが定められていたと認めることはできない。
 以上のとおり、原告らが黙示の使用許諾の存在を否定する根拠として主張する事実は、いずれも証拠上これを認めることができないか、又は黙示の使用許諾の存在を否定するに足りるものではない。
(イ)その他の原告らの主張についても、以下のとおり、いずれも採用することができない。
 原告らは、亡Aは宗教法人が有償で書籍発行を行うことまで想定していなかった旨主張する。しかし、亡Aが原告事業団を設立したのは、社会厚生事業及び社会文化事業のためであって、布教活動は、原告事業団ではなく被告(その前身の教団も含む。)が行うことが想定されていたところ、布教活動のための書籍発行が常に無償で、すなわち、全て被告の費用負担において行われなければならないとする理由はないから、被告が布教活動のために有償で書籍発行を行うことがおよそ想定されていなかったということはできない。
 原告らは、平成21年以後の原告事業団の著作権侵害に対する対応をもって昭和28年1月当時の黙示の使用許諾の認定根拠とするのは不合理である旨主張するが、昭和28年1月以降、平成21年頃までの間の被告による亡Aの著作物の利用に対する原告事業団の態度が原告事業団による黙示の使用許諾の認定根拠となるのであり、平成21年以降の原告事業団の対応それ自体が認定根拠となるわけではないから、同主張は失当である。
 原告らは、原告事業団が日本教文社に対し著作物の発行を排他的、独占的に認める旨の昭和49年1月31日付著作権使用(出版)契約書(甲49)の存在は、被告に対する黙示の使用許諾と矛盾する旨主張する。しかし、同契約書は、昭和49年になってから原告事業団と日本教文社との間で作成されたものにすぎないから、昭和28年1月1日頃に原告事業団の被告に対する黙示の使用許諾がされたことを認めることを妨げるものではない。また、本件全証拠によっても、原告事業団が被告の非営利的な伝道・宗教活動における本件各著作物の利用のみを許諾していたとか、放置していただけであるなどと認めることはできない。
 原告らは、被告の教化部の機関紙による一部の神示の使用例をもって当該神示とは異なる本件各著作物の使用許諾もあったとするのは著作物の個性を無視するものであるとも主張するが、前記のとおり、被告は生長の家の教義をひろめることを目的とする宗教法人であり、当該教義の根幹は、本件各著作物を含む亡Aの一連の神示に関する著作物に表れているのであるから、被告が、これらの著作物すべてを布教のために自由に使用することができるということは、原告事業団の設立当時から想定されていたはずである。被告の教化部の機関紙による神示の各使用例は、これらの著作物の布教活動における利用について原告事業団の個別の承諾を得ることが予定されていなかったことを認める一つの間接事実になるというべきである。
3 争点2に対する判断
(1)原判決の引用
 争点2に対する判断は、後記(2)のとおり原判決を補正し、後記(3)のとり当審における原告らの補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の3(原判決23頁11行目から25頁15行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決の補正
 原判決25頁4行目冒頭から6行目末尾までを次のとおり改める。
 「エ 原告らは、最高裁で決着した裁判紛争についても、被告がなお原告らの著作権を否定する主張を続けていることにより信頼関係が破壊されたとも主張し、被告が訴訟事件における被告の主張を紹介する中で、原告の著作権を否定する内容の記事をホームページに掲載していたこと、同ホームページの記事はなお閲覧可能な状態にあることは前記認定のとおりである。
 しかし、一般的に訴訟係属中に当事者が自己の主張をホームページで述べることは許容されるべき行為である。最高裁で最終的な判断がされ、敗訴判決が確定したときは、被告はこれに従うべき義務があるが、訴訟中にホームページに掲載されていた被告の主張自体は、被告が訴訟中にそのような主張をしていたという過去の事実であって、当該事実自体は撤回不可能である。それが現在もホームページで閲覧可能だからといって、被告が確定した裁判に従っていないことにはならないし、黙示の使用許諾の解約を正当化する理由にもならない。その他、Bによる個人機関誌の記事掲載など原告らが縷々主張する点は、被告による本件各著作物の利用態様とは無関係な事項であり、いずれも使用許諾の解約を認めるための正当な理由を構成するものということはできない。
オ 以上によれば、本件において、本件各著作物に係る黙示の使用許諾の解約を是認するに足りる正当な理由があると認めることはできない。原告らは、有償で複製頒布して行う出版事業に限り使用許諾を解約する場合には、被告に与える不利益の程度は少ない旨主張するが、そもそも、被告が布教のため、有償又は無償の別を問わず、本件各著作物を自由に利用することが認められていたと考えられる以上、仮に有償で複製頒布して行う出版事業に限って解約したとしても、被告の布教活動に支障が生ずることには変わりはない。したがって、原告らの同主張は採用することができない。」
(3)当審における原告らの補充主張に対する判断
ア 原告らは、「祭神の変更」「宗教儀式の変更」等の外形的・客観的に観察可能な事項に基づき被告の教団としての同一性を判断することは、信教の自由や教義に立ち入るものではない旨主張する。
 しかし、原告らが主張する内容は、結局、「祭神」や「宗教儀式」について、原告らが主張する内容が生長の家の教義に合致することを前提とするものであるから、裁判所の判断になじまない宗教上の教義に関する判断を求めるものにほかならない。したがって、原告らの主張は採用することができない。
イ 原告らは、被告が教団の団体としての同一性を失った以上、事情変更の原則を適用し、解約を認めるべきである旨主張するが、被告が教団としての同一性を失ったという前提について判断することができないことは前記アのとおりであるから、同主張もまた採用することができない。
4 争点3に対する判断
 争点3に対する判断は、原判決の「事実及び理由」の第3の4(原判決25頁16行目から26頁13行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
5 結論
 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく原告らの請求はいずれも理由がない。よって、当裁判所の判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、これをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 清水響
 裁判官 浅井憲
 裁判官 勝又来未子
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