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【事件名】宣材写真事件
【年月日】令和6年2月2日
 東京地裁 令和5年(ワ)第20793号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和5年12月22日)

判決
原告 A
被告 株式会社ジャストプロ
同訴訟代理人弁護士 四宮隆史
同 秋山光


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
 被告は、原告に対し、160万円及びこれに対する令和5年10月19日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 請求の趣旨に対する答弁
 原告の請求をいずれも棄却する。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)原告は、B(以下「B」という。)から、インターネットライブ配信サービスであるSHOWROOM(以下「SHOWROOM」という。)及びSNSで使用する写真画像を撮影してほしいとの依頼を受け、平成30年12月16日、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を撮影し、Bに対し、本件写真をもとにして作成した画像(以下「本件画像」という。)を提供した。
(2)ア 被告は、平成29年8月頃、被告の系列会社が製作するアニメに出演する声優を選考するため、「ヤオヨロズ声優発掘オーディション」(以下「本件オーディション」という。)を開催した。
イ Bは、本件オーディションに参加申込みをしたため、被告は、Bとの間でSHOWROOMの配信に関する契約(以下「本件配信契約」という。)を締結し、Bに対し、SHOWROOMの公式アカウントを貸与し、Bは、同アカウントから本件オーディションの選考のためのライブ配信をした。
ウ したがって、前記イの本件配信契約時以後、遅くとも後記(3)の時点までの間、被告とBとの間に実質的な指揮監督関係が存在していたから、被告は、ある事業のために他人であるBを使用する者であった。
(3)ア Bは、平成31年1月頃、前記(2)の被告の事業の執行について、Bのファンである複数の第三者に対し、本件画像の一部を複製して作成した年賀状を配布した。
イ Bは、平成31年3月頃、前記(2)の被告の事業の執行について、短文投稿サービスであるTwitter(以下「Twitter」という。)上の「B’非公式応援アカウント」との名称のアカウント開設者に対し、本件画像の一部を複製した画像を提供した。
ウ Bは、遅くとも令和4年頃までに、前記(2)の被告の事業の執行について、原告はTwitter上でBのことを悪く言っているなどと虚偽の事実を述べ、原告を名誉毀損で告訴した。
(4)Bには、前記(3)ア及びイの著作権侵害並びに同ウの虚偽告訴の各不法行為(以下「本件各不法行為」という。)につき故意又は過失がある。
(5)原告は、Bによる本件各不法行為により、多大な精神的苦痛を受け、これを金銭に換算すると160万円を下らない。
(6)よって、原告は、被告に対し、Bによる本件各不法行為に係る使用者責任(710条、715条1項)に基づいて、合計160万円の慰謝料及びこれに対する本件各不法行為の後の日である令和5年10月19日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1)請求原因(1)、(4)及び(5)の事実は不知。
(2)請求原因(2)アの事実は認め、同イ及びウの事実は否認する。被告は、Bとの間で本件配信契約を締結したことはないし、Bに対しSHOWROOMのアカウントを貸与したこともない。
(3)請求原因(3)アないしウの各事実のうち、Bによる本件画像の複製及び虚偽告訴が被告の事業の執行についてされたとの点は否認し、その余は不知。
理由
1 請求原因(1)の事実について
 証拠(甲6、7)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因(1)の事実が認められる。
2 請求原因(2)の事実について
 原告は、本件各不法行為時に、被告とBとの間に実質的な指揮監督関係があったことを基礎付ける事実として、請求原因(2)イの事実を主張するが、同事実を認めるに足りる証拠はない。
 この点、原告は、BはSHOWROOMの公式アカウントからライブ配信をして本件オーディションに参加していたものであるところ、SHOWROOMの公式アカウントは、SHOWROOM株式会社と契約をした法人等であるオーガナイザーから貸与されない限り使用できないから、本件オーディションの開催者である被告がオーガナイザーとなってBと本件配信契約を締結していたはずであるなどと主張する。
 しかし、証拠(甲5)によれば、オーガナイザーとは、公式アカウントの発行や管理をすることができる、SHOWROOM株式会社と契約をした法人企業であると認められ、SHOWROOM株式会社と契約をした法人企業でありさえすればオーガナイザーになることができることに照らすと、被告が本件オーディションの開催者であるからといって当然にオーガナイザーとなりBにアカウントを貸与していたと推認することはできない。
 その他、原告が種々主張するところを検討しても、請求原因(2)イ及びウの事実を認めることはできない。
3 請求原因(3)アないしウの事実について
 原告は、Bが、被告とBとの間の本件配信契約に基づき、被告の事業の執行について、原告に対する本件各不法行為に及んだと主張する。
 しかし、仮に、Bが本件各不法行為をした事実が認められるとしても、本件各不法行為が被告の業務とどのように関連しているかは明らかではなく、本件全証拠によっても、本件各不法行為が、被告の事業の執行についてされたとの事実を認めることはできない。
 よって、原告の上記主張は理由がない。
4 結論
 以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 間明宏充
 裁判官 バヒスバラン薫


(別紙 写真目録−省略)
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