判例全文 line
line
【事件名】エックスサーバーへの発信者情報開示請求事件E
【年月日】令和5年9月25日
 大阪地裁 令和5年(ワ)第5818号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和5年8月24日)

判決
原告 株式会社バーチャルエンターテイメント
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 小林弘和
同訴訟復代理人弁護士 木田飛鳥
同 山下良
被告 エックスサーバー株式会社
同代表者代表取締役


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
 主文同旨
2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権が侵害されたこと
ア 著作物
(ア)原告は、アバターを使用して動画配信等を行う者(いわゆる「バーチャルユーチューバー」。以下、「VTuber」という。)の育成及びマネージメント等を行う株式会社である。
(イ)別紙「原告著作物目録」記載のイラスト(以下「本件イラスト」という。)は、原告に所属する女性4名のVTuberのキャラクターが黒と紫の揃いの衣装を着用し、銃を持って笑顔でポーズをとった様子が描かれ、銃を扱うゲームのプレイヤーであることなど、キャラクター設定を反映した描写がされたイラストであるから、「思想または感情を創作的に表現した」美術の著作物(著作権法2条1項1号)に該当する。
イ 著作権の帰属
 原告は、本件イラストを作成したイラストレーターから本件イラストの著作権の譲渡を受け、本件イラストの著作権を有している。
ウ 氏名不詳者による投稿
(ア)原告は、原告に所属するVTuberの情報を紹介するインターネット上の短文投稿サービスである「X」(旧ツイッター)のアカウント「ぶいすぽっ!【公式】」(以下「原告アカウント」という。)を利用した投稿において、本件イラストを公開していた。
(イ)氏名不詳者は、別紙「投稿記事目録」記載の投稿日に、本件イラストの左右の一部を切り取った画像(同目録「使用画像」欄)を、インターネットサイト上の掲示板「VTuberまとめてみました」(同目録「投稿サイト名」欄。以下「本件サイト」という。)に投稿した(以下、同投稿を「本件投稿」といい、本件投稿をした氏名不詳者を「本件発信者」という。)。
エ 特定電気通信
 本件サイトは不特定多数の者に対する受信を目的としているから、本件投稿は、「特定電気通信」(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任法」という。)2条1号)に該当する。
オ 以上のとおり、本件投稿をもって、「特定電気通信による情報の流通」によって本件イラストに関する原告の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)が侵害されたといえる。
(2)被告が「特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」に該当すること
 本件サイトを蔵置するサーバーコンピュータは、「特定電気通信設備」(プロバイダ責任法2条2号)に該当し、被告は、同サーバー領域を管理するレンタルサーバー事業者であるから、「特定電気通信役務提供者」(同法5条1項)に該当する。
(3)権利侵害が明白であること
 本件投稿は、本件イラストと関係のない内容であり、本件イラストを利用する必要性も、報道、批評、研究その他正当な目的もうかがえず、明瞭区分性も欠くから、適法な引用(著作権法32条1項)に当たらず、権利侵害は明白である。
(4)開示を受けるべき正当な理由があること
 原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求等を予定しているから、本件発信者の発信者情報の開示を求める正当な理由がある。
(5)よって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任法5条1項の発信者情報開示請求権に基づき、別紙「発信者情報目録」記載の各情報の開示を求める。
2 被告は本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなされる答弁書には、請求原因に対する認否につき、次の記載がある。
(1)請求原因(1)について
 請求原因ウ(イ)及びエは認め、同ア(ア)及びイは不知。
 その余は、否認ないし争う。
(2)請求原因(2)について
 認める。
(3)請求原因(3)及び(4)について
 いずれも争う。
理由
第1 認定事実等
1 請求原因(1)について
(1)同ア(著作物性)について
ア 証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、同アの事実が認められる。
イ 証拠(甲4)によれば、本件イラストに同ア記載の描写がされていることが認められ、その内容に照らせば、本件イラストは「思想または感情を創作的に表現した」「美術の著作物」(著作権法2条1項1号)に該当すると認められる。
(2)同イ(著作権の帰属)について
 証拠(甲4ないし6。枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、本件イラストが遅くとも令和2年7月21日までにイラストレーターである「P1」(ペンネーム)によって作成された事実、及び、令和5年4月11日付け業務委託基本契約(なお、同契約は令和2年4月1日にさかのぼって効力を有するとされている〔契約書10条1項〕。)に基づき、本件イラストの著作権がその発生と同時に原告に移転した事実がそれぞれ認められる。
(3)同ウ(氏名不詳者による投稿)について
ア 証拠(甲7)によれば、同ウ(ア)の事実が認められる。
イ 同ウ(イ)は、当事者間に争いがない。
(4)同エ(特定電気通信)について
 同エは、当事者間に争いがない。
(5)同オについて
 上記(1)ないし(4)を前提に著作権侵害が成立するかについて検討すると、本件投稿に係る画像が本件イラストの左右の一部を切り取った画像であって、本件イラストを一部変更したものであるが、投稿画像に新たな創作的表現が含まれているとはいえない。そうすると、本件サイトに対する本件投稿によって、「特定電気通信による情報の流通に」よって、原告の本件イラストに係る複製権及び公衆送信権が侵害された(プロバイダ責任法5条1項柱書)と認められる(なお、翻案権侵害の成立を認めることはできない。)。
2 請求原因(2)について
 請求原因(2)は、当事者間に争いがない。
3 請求原因(3)について
 上記1のとおりの本件イラストの使用態様のほか、本件の証拠による限りは、本件投稿における本件イラストの使用は適法な引用(著作権法32条1項)に当たらないものと認められ、権利侵害の明白性(プロバイダ責任法5条1項1号)があるといえる。
4 請求原因(4)について
 上記認定及び弁論の全趣旨によれば、本件発信者に対する損害賠償請求等を予定する原告において、本件発信者情報開示を求める正当な理由(同法5条1項2号)があると認められる。
第2 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部
 裁判長裁判官 松阿彌隆
 裁判官 島田美喜子
 裁判官 峯健一郎


(別紙)発信者情報目録
 別紙投稿記事目録記載のウェブページが蔵置されたサーバー領域の契約者に関する情報であって、以下のもの。
1 氏名または名称
2 住所
3 電話番号
4 メールアドレス

※別紙原告著作物目録及び別紙投稿記事目録は添付省略
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/