判例全文 line
line
【事件名】ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件AF
【年月日】令和5年9月15日
 東京地裁 令和4年(ワ)第23204号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和5年7月5日)

判決
原告 株式会社A&T
同訴訟代理人弁護士 杉山央
被告 ソフトバンク株式会社
同訴訟代理人弁護士 金子和弘


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の品番及び作品名に係る各動画(以下、これらを総称して「本件各動画」という。)をそれぞれ複製して作成した動画ファイル(以下、これらを総称して「本件各ファイル」という。)を、本件各氏名不詳者が管理する端末にダウンロードし、公衆からの求めに応じ自動的に送信し得るようにするとともに、本件各ファイルを公衆送信したことによって、本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであり、本件各氏名不詳者に対する損害賠償請求等のため、被告が保有する別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告は、著作物である本件各動画の著作権者である(甲9、弁論の全趣旨)。
イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社である(弁論の全趣旨)。
(2)ビットトレントの仕組み(甲4ないし7、弁論の全趣旨)
ア ビットトレントは、P2P方式のファイル共有プロトコル及びこれを利用するためのソフトウェアである。
 ビットトレントを利用したファイル共有は、その特定のファイルに係るデータをピースに細分化した上で、ピア(ビットトレントネットワークに参加している端末)同士の間でピースを転送又は交換することによって実現される。上記ピアのIPアドレス及びポート番号などは、「トラッカー」と呼ばれるサーバーによって保有されている。
 共有される特定のファイルに対応して作成される「トレントファイル」には、トラッカーのIPアドレスや当該特定のファイルを構成する全てのピースのハッシュ値(ハッシュ関数を用いて得られた数値)などが記載されている。そして、一つのトレントファイルを共有するピアによって、一つのビットトレントネットワークが形成される。
イ ビットトレントを利用して特定のファイルをダウンロードしようとするユーザーは、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にインストールしたクライアントソフトウェアに当該トレントファイルを読み込ませると、当該端末はビットトレントネットワークにピアとして参加し、定期的にトラッカーにアクセスして、自身のIPアドレス及びポート番号等の情報を提供するとともに、他のピアのIPアドレス及びポート番号等の情報のリストを取得する。
 ピアは、トラッカーから提供された他のピアに関する情報に基づき、他のピアとの間で通信を行い、当該他のピアに対して当該他のピアが保有するピースの送信を要求し、当該ピースの転送を受ける(ダウンロード)。また、ピアは、他のピアから、自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)。このように、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、必要なピースを転送又は交換し合うことで、最終的に共有される特定のファイルを構成する全てのピースを取得する。
(3)株式会社utsuwa(以下「本件調査会社」という。)による調査(甲4ないし6、8、9)
 本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件各動画の品番等に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われるファイルに対応するトレントファイルを入手した。
 本件調査会社は、ビットトレントクライアントソフトウェアである「μTorrent」(以下「本件ソフトウェア」という。)に、入手したトレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応するファイルをダウンロードし、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報をスクリーンショットにより保存した(以下、この保存行為を「本件スクリーンショット」という。)。
 本件調査会社は、ダウンロードした上記トレントファイルに対応するファイルを再生し、表示される映像が本件各動画と同一であることを確認した。
(4)本件各発信者情報の保有
 被告は、本件各発信者情報を保有している。
3 争点
(1)特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
(2)本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(争点2)
4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(原告の主張)
ア 本件各氏名不詳者により本件各動画が送信可能化されたこと
(ア)本件調査会社が本件ソフトウェアの実行画面を本件スクリーンショットにより記録した時点において、当該実行画面に表示されたピアは、ビットトレントネットワークを介して、本件各動画を複製して作成された本件各ファイルを構成する全部又は一部のデータを保有していた。
(イ)ビットトレントネットワークを形成するピアは、共有されているファイルの送信を受けるのと同時に、公衆たる他の利用者が管理するピアに対し、当該ファイルを送信し得る状態となる。すなわち、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、他のピアからファイルの送信を受けている間、自動公衆送信装置として機能し、その記録媒体は公衆送信用記録媒体となる。そして、他のピアからファイルの送信を受けることは、自動公衆送信装置への情報の入力に当たるとともに、公衆送信用記録媒体への情報の記録に当たる。
 このビットトレントの仕組みに照らせば、本件調査会社による調査の際、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアにおいて、本件各動画が送信可能化されていることは明らかである。
 したがって、本件調査会社が本件スクリーンショットにより記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の日時及びIPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者の管理するピアが、ビットトレントネットワークを介して本件各ファイルの送信を受けることは、本件各氏名不詳者が本件各動画を送信可能化する行為(著作権法2条1項9号の5イ)と評価できる。
(ウ)また、ビットトレントのクライアントソフトウェアがインストールされた端末であって、当該端末の記憶領域内のファイルについて他のピアの求めに応じて自動的に当該ファイルを送信し得るように設定可能な記憶領域に、本件各ファイルを構成する全部又は一部のデータが記録されているものは、公衆送信用記録媒体に情報が記録されている自動公衆送信装置に当たる。そして、当該クライアントソフトウェアを操作して@ビットトレントネットワークに接続した上で、本件各ファイルを他のピアの求めに応じて自動的に送信し得るように設定する行為、又はA本件各ファイルを他のピアの求めに応じて自動的に送信し得るように設定した上で、ビットトレントネットワークに接続する行為は、公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行うことに当たる。
 したがって、本件調査会社が本件スクリーンショットにより記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の日時及びIPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者が、本件各動画を送信可能化(著作権法2条1項9号の5ロ)していることは、明らかである。
イ 本件各氏名不詳者により本件各動画が自動公衆送信されたこと
(ア)ビットトレントネットワークを形成しているピアは、他のピアから共有される特定のファイルの送信を受けるのと同時に、公衆たる他の利用者が管理しているピアからの求めに応じて自動的に当該ファイルを送信する。
 このビットトレントの仕組みに照らせば、本件調査会社による調査の際、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアが、公衆たる他の利用者が管理しているピア又は本件調査会社が管理しているピアからの求めに応じて自動的に本件各ファイルを送信していることは、明らかである。
(イ)したがって、本件調査会社が本件スクリーンショットにより記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の日時及びIPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者の管理するピアが、@他の利用者が管理するピアからの求めに応じて、当該ピアに対して本件各ファイルを自動的に送信したこと、A本件調査会社が管理するピアからの求めに応じて、当該ピアに対して本件各ファイルを自動的に送信したことは、いずれも本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信する行為(著作権法2条1項9号の4)と評価できる。
ウ 本件各氏名不詳者による本件各動画の送信可能化や自動公衆送信に係る通信は特定電気通信に当たること
 特定電気通信とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」(プロバイダ責任制限法2条1号)とされているところ、著作権法は、送信可能化及び自動公衆送信をいずれも「公衆送信」すなわち「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信…を行うこと」として評価しているから、上記「送信」には送信可能化や自動公衆送信に係る通信も含まれる。
 したがって、前記ア及びイの本件各氏名不詳者による本件各動画の送信可能化や自動公衆送信に係る通信は、特定電気通信に当たる。
エ 違法性阻却事由の不存在
 本件各氏名不詳者が本件各動画を送信可能化及び自動公衆送信したことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。
オ 小括
 以上によれば、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)。
(被告の主張)
ア 本件調査会社による調査結果が信用性を有するとはいえないこと
 原告は、本件調査会社が本件ソフトウェアを用いて行った調査結果に基づいて、本件各発信者情報から特定される者が本件各動画に係る原告の権利を侵害した者であると主張する。
 しかし、本件ソフトウェアを用いた調査は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会においてP2P型ファイル交換ソフトウェアによる権利侵害情報の流通に関する検出システムとして信頼性が認められると認定されたシステムを用いたものではないから、当該調査結果が技術的に信用できるものとはいえない。
イ 本件各ファイルに係る動画が本件各動画に依拠したものであり、かつ、両者が類似することは明らかではないこと
 本件各ファイルに係る動画が本件各動画に依拠して作成され、かつ、本件各動画と類似するものであることの立証がされているとはいえない。
ウ 本件各氏名不詳者が本件各動画を送信可能化又は自動公衆送信したかは明らかでないこと
(ア)原告が主張する本件各氏名不詳者の管理するピアによる通信が本件各動画を送信可能化したものであるかは明らかでないこと
a 著作権法2条1項9号の5イの態様による送信可能化について
 プロバイダ責任制限法5条1項所定の発信者情報開示請求が認められるためには、実際に送信された特定電気通信による侵害情報の流通がなければならないから、侵害情報が実際に送信されていない場合には、「特定電気通信による情報の流通によって」原告の「権利を侵害」することに当たらないし、かつ、そのような送信をしていない者に係る情報は「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たらない。
 これを著作権法2条1項9号の5イの態様による送信可能化についてみると、公衆送信用記録媒体に情報が記録されたというだけでは、未だ侵害情報が送信されておらず、これが流通するに至っていないから、「特定電気通信による情報の流通によって」原告の「権利を侵害」したとはいえない。
 仮に、電気通信による「情報の流通」によって、公衆送信用記録媒体に情報が記録されたとしても、上記に関する通信は情報の「受信」を目的としたものであり、電気通信の「送信」とは評価できないから、特定電気通信に当たらない。この点を措くとしても、公衆送信用記録媒体に記録された情報をもたらした電気通信は、別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の日時においてされた電気通信ではなく、それに先行する電気通信ということになるが、当該先行する電気通信がされた日時もIPアドレスも明らかでない。
b 著作権法2条1項9号の5ロの態様による送信可能化について
 自動公衆送信装置を電気通信回線へ接続しただけでは、未だ侵害情報が送信されておらず、これが流通するに至っていないから、「特定電気通信による情報の流通によって」原告の「権利を侵害」したとはいえない。
 仮に、ビットトレントネットワークに本件各氏名不詳者の管理するピアが参加していたとしても、別紙発信者情報目録1及び同目録2記載の日時において、本件各氏名不詳者の管理するピアが、送受信用プログラムの起動その他一連の行為のうち最後の行為を完了していたことが明らかとはいえない。
(イ)本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したかは明らかでないこと
 ビットトレントネットワークに、本件調査会社の管理するピア及び本件各氏名不詳者の管理するピアに加え、他のピアが参加している場合には、本件調査会社の管理するピアは、本件各氏名不詳者の管理するピア以外のピアから、本件各ファイルをダウンロードした可能性がある。
 このほか、本件スクリーンショットによって記録された情報のみでは、本件調査会社の管理するピアと本件各氏名不詳者の管理するピアとの間で、本件各ファイルを構成するピースのダウンロードやアップロードが行われていたのか、それとも両社が単に接続されていただけでピースの送受信は行われていないのかなどの詳細な実態が明らかになっているとはいえないから、本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したことが明らかとはいえない。
(2)争点 2(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について
(原告の主張)
 原告は、本件各氏名不詳者に対し、本件各動画に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要がある。
 したがって、原告には、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。
(被告の主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(1)本件各ファイルは本件各動画を複製又は翻案したものであるかについて
 証拠(甲8、9)によれば、本件各ファイルは、本件各動画を複製又は翻案して作成されたものであると認められる。
(2)自動公衆送信に係る情報の流通による原告の権利侵害の成否について
 前提事実(2)のとおり、ビットトレントネットワークを形成するピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)ように動作する。また、前提事実(3)のとおり、本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件各動画の品番等に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われるファイルに対応するトレントファイルを入手し、本件ソフトウェアに当該トレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応するファイルをダウンロードして、当該ファイルを再生して表示される映像がそれぞれ本件各動画と同一であることを確認したものである。
 そして、証拠(甲1、4、6)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査会社は、本件各ファイルのダウンロード中に表示されたピアのIPアドレス等の情報に基づいて、別紙発信者情報目録1及び同目録2の日時欄記載の日時及び同IPアドレス欄記載のIPアドレスをそれぞれ特定したことが認められるところ、本件スクリーンショットによって記録された本件ソフトウェアの実行画面の表示は、当該ピアから本件調査会社の管理するピアに本件各ファイルが送信されている状態を捉えたものといえる。
 加えて、特定のファイルに対応するトレントファイルは、インターネット上で公開されているのが通常であると考えられるところ、そのようなトレントファイルは少なくとも不特定の者において利用することができるから、同じトレントファイルを共有しているピアの管理者も不特定の者となるのが通常である。これに対し、本件全証拠によっても、本件各ファイルが特定かつ少数の者の間でのみ共有されていたとは認められないから、本件各ファイルに係るトレントファイルを取得してビットトレントネットワークに参加した本件調査会社は「公衆」(著作権法2条5項)に当たるといえる。
 以上によれば、別紙発信者情報目録1及び同目録2の日時欄記載の日時において、同IPアドレス欄記載のIPアドレスが割り当てられていた端末は、同品番及び作品名欄記載の動画を複製又は翻案して作成された本件各ファイルを(前記(1))、公衆である本件調査会社が管理する端末からの求めに応じ自動的に送信していたのであるから、当該各日時において、当該各IPアドレスが割り当てられていた端末から、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各動画がそれぞれ自動公衆送信されたと認められるところ、これは、特定電気通信である当該自動公衆送信に係る情報の流通によって、原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものというべきである。
(3)被告の主張について
ア 被告は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会においてP2P型ファイル交換ソフトウェアによる権利侵害情報の流通に関する検出システムとして信頼性が認められると認定されたシステムを用いたものではないから、本件調査会社による調査結果が信用できるものとはいえないと主張する。
 しかし、被告の上記主張は、本件調査会社による調査結果が信用できない可能性がある旨を抽象的に指摘するにとどまり、本件調査会社による調査結果が信用性を欠くものであることを示す具体的な事情を何ら摘示していない。
 そして、本件全証拠によっても、本件調査会社による調査結果の信用性に合理的な疑いを差し挟むような事情は何ら認められない。
イ また、被告は、ビットトレントネットワークに本件調査会社の管理するピア及び本件各氏名不詳者の管理するピアに加えて他のピアが参加している場合には、本件調査会社の管理するピアは、本件各氏名不詳者の管理するピア以外のピアから、本件各ファイルをダウンロードした可能性があるから、本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したことが明らかとはいえないと主張する。
 そこで検討すると、別紙発信者情報目録1の各項番の日時欄記載の日時に同IPアドレス欄記載のIPアドレスが割り当てられていたピアが参加していたビットトレントネットワークにおいて、当該ピア及び本件調査会社の管理するピア以外に、本件調査会社の管理するピアと通信することが可能なピアが参加していたと認めるに足りる証拠はない。
 これに対し、証拠(甲1の6、1の14)によれば、別紙発信者情報目録2の各項番の日時欄記載の日時に同IPアドレス欄記載のIPアドレスが割り当てられていたピアが参加していたビットトレントネットワークには、当該ピア及び本件調査会社の管理するピア以外にも1ないし2台のピアが参加していたことが認められる。
 しかし、証拠(甲1の6、1の14、13)によれば、別紙発信者情報目録2の各項番の日時欄記載の日時にIPアドレス欄記載のIPアドレスが割り当てられていた各ピアに係るフラグ欄には「D」との表示がされているところ、当該表示は本件ソフトウェアを実行しているピアが現在ダウンロード中であることを意味すると認められるから、別紙発信者情報目録2の各項番の日時欄記載の日時に同IPアドレス欄記載のIPアドレスが割り当てられていたピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファイルが送信されていたと認めるのが相当である。
ウ 以上のとおり、被告の前記各主張はいずれも採用することができない。
(4)小括
 以上の検討結果に加え、他に違法性阻却事由が存在することをうかがわせる事情は見当たらないことからすると、本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したことにより、特定電気通信による情報の流通によって本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)と認められる。
2 争点2(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について
 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各氏名不詳者に対し、本件各動画に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。
 したがって、原告には、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。
第4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 間明宏充
 裁判官 木村洋一


(別紙)発信者情報目録1
 下記日時に下記IPアドレスを割り当てられていた契約者の氏名又は名称及び住所
 記
 以下省略

(別紙)発信者情報目録2
 下記日時に下記IPアドレスを割り当てられていた契約者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス
 記
 以下省略
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/