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【事件名】You Tube動画の著作権侵害通知事件
【年月日】令和5年8月25日
 東京地裁 令和4年(ワ)第7920号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和5年6月13日)

判決
原告 株式会社水戸大家さん
同訴訟代理人弁護士 大山慧
被告 株式会社東京カモガシラランド
被告 A
被告ら訴訟代理人弁護士 熊谷裕平


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告らは、原告に対し、連帯して、165万円及びこれに対する令和3年11月10日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 仮執行宣言
第2 事案の概要等
1 事案の概要
 本件は、原告が、インターネット上の動画共有サイトであるYouTube(以下「ユーチューブ」という。)に投稿した動画について、被告A(以下「被告A」という。)が、同動画投稿によって著作権が侵害されたか否かについて調査することなく、著作権が侵害された旨の虚偽の通知をしたとして、被告Aに対しては不法行為に基づき、被告株式会社東京カモガシラランド(以下「被告会社」という。)に対しては会社法350条に基づき、連帯して165万円及び同動画が削除された日である令和3年11月10日から支払済みまで、年3分の割合による金員の支払を請求する事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠(枝番号を含むものは各枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
(1)ア 原告は、インターネットを利用した各種情報提供サービス業務等を行う会社である。(弁論の全趣旨)
イ 被告会社は、人材育成に関する教育事業等を行う会社であり、同社の事業として、「AのビジネスYouTube」という名称のユーチューブのチャンネル等の運営を行っている。
ウ 被告Aは、被告会社の代表取締役である。
(2)原告は、令和3年11月9日、ユーチューブに、「【Aのコメ削除評価非表示】マコなり社長になるぞ!」と題する動画(以下「本件動画」という。)を投稿し、その頃、同動画はユーチューブ上で閲覧可能になった。(甲8、弁論の全趣旨)
(3)被告Aは、令和3年11月10日、被告会社の従業員に指示して、ユーチューブを運営するGoogleLLC(以下「グーグル」という。)に対し、本件動画が原告の権利を侵害している旨の通知(以下「本件通知」という。)を行った。グーグルは、同日、本件通知に基づいて、本件動画をユーチューブにおいて再生できないようにした。(乙6、弁論の全趣旨)
(4)被告らは、本件通知をするに当たり、本件動画が著作権を侵害しているか否かについての調査を行わなかった。(争いなし)
3 争点
(1)本件通知は、本件動画が被告らの著作権を侵害した旨の通知をしたものであり、被告らに著作権侵害の有無を事前に確認する義務があったか(争点1)
(2)本件通知が、被告会社の業務の執行として行われたか(争点2)
(3)損害(争点3)
4 争点に対する当事者の主張
(1)本件通知は、本件動画が被告らの著作権を侵害した旨の通知をしたものであり、被告らに著作権侵害の有無を事前に確認する義務があったか(争点1)
(原告の主張)
 本件通知は、「私は、侵害された著作権の所有者、または当該所有者の正式な代理人です。」、「私は、申し立てが行われたコンテンツの使用が、著作権の所有者、代理人、法律によって許可されていないことを確信しています。」等の記載がされている著作権侵害の通知をするフォームを用いて行われている。よって、本件通知は本件動画が通知者の著作権を侵害されている旨の通知をするものであり、通知者である被告Aには、著作権侵害の有無を事前に確認する義務があった。それにもかかわらず、被告Aは、これを怠って原告が著作権を侵害している旨の虚偽の通知をした。
(被告らの主張)
 原告の主張は否認ないし争う。
 本件通知は、ユーチューブにおいて用意されている著作権侵害を通知するフォームを用いて行われたものではあるが、本件通知は本件動画が被告Aのパブリシティ権を侵害する旨を通知するものであって、著作権を侵害する旨を通知するものではない。したがって、被告らには事前に著作権侵害の有無を確認する義務はなかった。また、ユーチューブの規約によれば、グーグルは合理的だと判断する場合、コンテンツを削除する権利を有しており、ユーチューブの利用者はその範囲でユーチューブを利用できるにすぎず、動画投稿について法的に保護された利益を有するものではなく、被告らには、著作権侵害の有無を確認する義務はない。
(2)本件通知が、被告会社の業務の執行として行われたか(争点2)
(原告の主張)
 本件通知では、被告会社の事業として運営しているユーチューブのチャンネル名を記入していることからすると、被告会社の代表取締役である被告Aによる本件通知は、被告会社の業務の執行として行われたものであるといえる。
(被告らの主張)
 原告の主張は否認ないし争う。
(3)損害(争点3)
(原告の主張)
 原告は、業務として本件動画をユーチューブに投稿していたところ、本件通知により本件動画が再生できないようになり、その業務が妨害されたことに加え、原告のユーチューブ上のチャンネル自体が削除される危機に陥った。原告が被った無形の損害は、150万円を下らない。
(被告らの主張)
 原告の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件通知は、本件動画が被告らの著作権を侵害した旨の通知をしたものであり、被告らに著作権侵害の有無を事前に確認する義務があったか(争点1)について
(1)証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア グーグルは、ユーチューブの利用について、以下の規約を定めていた。
 「YouTubeは、以下のいずれかに該当すると合理的に判断する場合、独自の裁量によりコンテンツを削除する権利を留保します。(1)コンテンツが本契約に違反している、または、(2)コンテンツがYouTube、ユーザー、もしくは第三者に損害を及ぼす可能性がある。削除する場合、YouTubeはその理由とともに通知します。・・・」(乙1)
イ グーグルは、ユーチューブについて、以下のポリシーを採用していた。
 「1.有効な著作権侵害による削除通知を受けて、YouTubeが動画を削除した場合、ユーザーにその旨を通知し、その動画をアップロードしたユーザーのアカウントに「著作権侵害の警告」を適用します。
2.「著作権侵害の警告」が適用された場合、ライブストリーミングの配信や15分を超える動画のアップロードなど、誤用される恐れのある機能へのアクセスができなくなります。
3.オンラインによる「コピーライトスクール」の受講を完了することにより、ユーザーは著作権について学び、アカウントへの違反警告の期限切れを待つ権利を取得します。
4.違反警告を3度受けた時点で、当該ユーザーのアカウントは停止され、そのアカウントにアップロードされた動画はすべて削除されます。」
 また、グーグルは、以下のような説明をしていた。
 「著作権者がYouTubeのウェブフォームからDMCAに基づく有効な申し立てを送信すると、YouTubeはその動画を削除し、著作権侵害の警告を適用します。ユーザーが90日間に著作権侵害の警告を3回受け取った場合、そのアカウントとそれに関連付けられているチャンネルがすべて停止されます。また、クリエイターが著作権侵害の警告を解除するために役立つツールもあります。警告を解除するには、90日後に期限が切れるまで待つ、撤回を依頼する、異議申し立て通知を提出するなどの方法があります。・・・」(甲17)
ウ アメリカのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)には、著作権者等がサービスプロバイダーに対して著作権侵害行為の除去等を求める際に利用すべき、一般にノーティスアンドテイクダウンと呼ばれる手続が定められている。ノーティスアンドテイクダウンによる通知で記載すべき事項は、「(i)侵害されたと主張される排他的権利の保有者を代理する授権を受けた者の、手書き署名又は電子署名。(ii)侵害されたと主張される著作権のある著作物の特定、又は単一の通知が単一のオンラインサイトに存在する複数の著作権のある著作物を対象とする場合には、当該サイトに存在する当該著作物に代えてその目録。(iii)侵害に当たる又は侵害行為の対象とされ、かつ除去又はアクセスを解除されるべきである素材の特定、及びサービスプロバイダーが当該素材の所在を確認する上で合理的に十分な情報。(iv)通知を行う者に連絡のとれる住所、電話番号及び(もしあれば)電子メールアドレス等、サービスプロバイダーが通知を行う者に連絡する上で合理的に十分な情報。(v)当該方法による素材の使用が著作権者、その代理人又は法律によって許諾されているものではないと、通知を行う者が善意誠実に信ずる旨の陳述。(vi)通知に記載された情報は正確である旨の陳述、及び偽証の制裁の下に、通知を行う者が侵害されたと主張される排他的権利の保有者を代理する授権を受けている旨の陳述。」である。(甲19)
エ グーグルは、他人が投稿したユーチューブの動画が自己の権利を侵害したと考えた者のために、ユーチューブのサイトにおいて一定のフォームを用意し、他人が投稿したユーチューブの動画が自己の権利を侵害したと考えた者は、そのフォームに必要事項を記載して、それをグーグルに送ることができる。本件通知がされた当時、グーグルは、著作権侵害があると考える者のためのフォームを用意するほか、商標権侵害、偽造品、プライバシー名誉侵害、それ以外の権利侵害があると考える者のためにもフォームを用意していた。ただし、パブリシティ権が侵害されたことを通知するための専用のフォームは用意していなかった。
 そのうち、著作権侵害を通知するフォーム(令和4年3月29日当時)には、「自分のコンテンツ」として、「著作物の種類」、「著作物のタイトル」、「その他の情報」の欄があり、利用者がそこにその内容を記載することとなっていた。また、削除を求める対象動画のURLを記入する欄や「著作権者」として、「関係当事者」を選択する欄(判決注:ここで「自分」を選択すると、通知者が著作者であると表示されることになると推測される。)、「著作権者名」、住所として「国」、「町村、番地」、「市区郡」、「都道府県」、「郵便番号」、「電話番号」、「メインのメールアドレス」等を入力する欄がある。そして、「法的合意事項」として、「私は、申し立てが行われたコンテンツの使用が、著作権者、代理人、法律によって許可されていないことを確信しています。」、「この通知に記載する情報は正確であり、虚偽の申告をした場合には偽証罪に問われることを認識したうえで、私は、自身が著作権者であること、または侵害されていると主張する独占的権利の所有者から代理権を許諾されている者であることを誓います。」、「所有権のないコンテンツの削除リクエストを送信するなどしてこのツールを不正使用した場合、YouTubeアカウントが削除される場合があることを了解しています。」という記載と各記載の前にチェックボックスがあり、また、署名欄がある。このフォームをグーグルに送る者は、必要な事項を記載し、また、チェックボックスをチェックして、グーグルに送信する。(甲11、12、弁論の全趣旨)
オ 被告Aは、令和3年11月10日、グーグルが用意している著作権侵害を通知するためのフォームを利用して、次の内容が含まれる本件通知をグーグルに送付した。
 「著作権者名(該当する場合は企業名)AのビジネスYouTubeご氏名(ペンネーム、ユーザー名、イニシャルはいずれも不可):Aあなたの肩書きまたは職位(この申し立てをする権限):著作者
 住所:(省略)
 ユーザ名:AのビジネスYouTube
 メールアドレス:(省略)
 予備のメールアドレス(省略)
 電話:(省略)
 権利を侵害していると思われる削除対象の動画URL:
 http://以下省略
 権利を侵害された作品についての説明:その他
○公演の種類:氏名
○著作権対象物のタイトル:A(ひらがな併記)
○補足情報:パブリシティ権侵害 顧客吸引力、宣伝、広告収益目的のためにタイトルに無断で氏名を使用し、経済的利益を害している。
○該当のコンテンツの位置 動画全体
 著作権が適用される国:JP
 私は次のように申し立てを行い、その内容に虚偽がないことを表明します:
・私は侵害された著作権の所有者、または当該所有者の正式な代理人です。
・私は、申し立てが行われたコンテンツの使用が、著作権の所有者、代理人、法律によって許可されていないことを確信しています。
・この通知は正確です。
・この手続きにより、著作権侵害に関して虚偽の申し立てや不誠実な申立てを行った場合、法的に不利な結果になる可能性があることを認識しています。
・このツールを不正使用した場合、YouTubeアカウントが削除されることを理解しています。
 ご署名:A
 よろしくお願いいたします。」(乙6)
カ グーグルは、令和3年11月10日、本件通知に基づき本件動画を削除した。また、グーグルは、同日、原告に対し、以下の通知をした。
 「著作権侵害による削除通知があったため、次の動画をYouTubeから削除しました。
 動画のタイトル:【Aのコメ削除評価非表示】マコなり社長になるぞ!
 動画のURL:(省略)
 削除の申請者:AのビジネスYouTube
 この動画はYouTubeで再生できなくなります。
 著作権侵害の警告を受けました
 現在、著作権侵害の警告が1件あります。著作権侵害の警告を複数回受けると、アカウントが無効化されます。これを回避するには、使用許可を得ていない著作権保護コンテンツを含む動画をアップロードしないでください。」
 また、ユーチューブにおいて、本件動画は、「動画を再生できません この動画は、AのビジネスYouTubeから著作権の申し立てがあったため削除されました」と表示され、再生することができなくなった。(甲9)
キ 被告Aは、令和4年1月24日頃、本件動画とは別の、原告がユーチューブに投稿した動画について、前記オと同じフォームを用いて次の内容を含む著作権侵害を理由とした削除依頼の通知をした。
 「著作権者名(該当する場合は企業名)A
 ご氏名(ペンネーム、ユーザー名、イニシャルはいずれも不可):A
 あなたの肩書きまたは職位(この申し立てをする権限):著作者
(省略)
 権利を侵害していると思われる削除対象の動画URL:
 http://以下省略
 権利を侵害された作品についての説明:その他
○公演の種類:写真
○著作権対象物のタイトル:動画のタイトルとサムネイルに私の名前を同意なく用いており、説明欄のリンクに私の顔写真(盗用写真)を同意なく利用し加工して利用しております。ご確認お願いいたします。
○補足情報:著作権侵害、肖像権の侵害説明欄にあるリンク
→https://twitter.com/(省略)
○該当のコンテンツの位置権利侵害にあたるとお考えのダウンロードサイトへのリンク
著作権が適用される国:JP
(省略)
 ご署名:A
 よろしくお願いいたします。」(乙4)
ク 上記キに対し、令和4年1月24日頃、グーグルは、被告Aに対し、次のとおりの通知をした。「著作物に関するさらに詳しい説明が必要です。この情報をご提供いただくまで、お客様のリクエストは処理いたしかねますのでご了承ください。役に立つと思われる情報はどんなことでもお知らせいただければと思います。作品のタイトル、タイプ、作者の名前、作成日、著作権登録番号(その作品が登録されている場合)、または問題の動画でお客様の作品が表示される箇所を特定するタイムスタンプなどがあれば、お客様のリクエストに対応するうえで大変役立ちますのでぜひお知らせください。ご協力のほどお願い申し上げます。」などの連絡があった。
 その後、被告Aは、グーグルに対し、「追加情報を送らせていただきます。動画説明欄にあったTwitterリンク(https://twitter・・・)にある画像内で私の顔写真(盗用写真)を同意なく利用し加工して著作権侵害、肖像権の侵害しております。」として、上記リンクのURLを示した連絡をするなどした。しかし、グーグルは、「本件について調査した結果、当該コンテンツには著作権がないと判断いたしました。このため、YouTubeはこの申立てに対応することができません。」などとして、申し立てに対応することができないとの回答をした。
 被告Aは、令和4年1月24日頃、原告ではない者がユーチューブに投稿した動画について、上記と同じフォームを用いて、グーグルに対して著作権侵害、肖像権の侵害を理由とする通知を行ったところ、グーグルは、前記クと同様に追加情報を求める連絡をした。(乙4、5)
(2)グーグルは、ユーチューブの利用について、コンテンツが第三者に損害を及ぼす可能性があると合理的に判断する場合、独自の裁量によりコンテンツを削除する権利を留保するという規約を定めていた(前記(1)ア)。また、グーグルは、ユーチューブにおける著作権侵害について同イのとおりのポリシーをとっていて、グーグルに対していわゆるノーティスアンドテイクダウンで定められている要件(同ウ)を満たした通知がされた場合、コンテンツが第三者に損害を及ぼす可能性があると合理的に判断できるとして、コンテンツを削除することがあったといえる。
 他方、作成した動画をユーチューブに投稿し、これを公開して広くその内容を伝える行為は、投稿者が行う表現活動や事業活動に関わり得るものであって、その動画が削除されることで表現活動や事業活動が制限され、投稿者の法律上保護される利益が害される場合があるといえる。ユーチューブの利用については、上記の規約があり、また、グーグルには著作権侵害についての前記のポリシーがあるところ、権利侵害の通知を行う者が著作権侵害がないにもかかわらず侵害がされているという情報をグーグルに通知して、それによってグーグルが動画を削除した場合、権利侵害がないにもかかわらず動画を削除されるに至った者は、本来動画を削除される理由がなくそれが削除され法律上保護される利益を害されたといえる場合があるといえる。これらによれば、グーグルに対して権利侵害の通知を行うことは、その内容や態様により、投稿者の法律上保護される利益を害する違法な行為となる場合があるといえる。
(3)本件通知は、著作権侵害を通知するためのフォームであり、フォームで用意されていた文言である「私は侵害された著作権の所有者、または当該所有者の正式な代理人です。」「私は、申し立てが行われたコンテンツの使用が、著作権の所有者、代理人、法律によって許可されていないことを確信しています。」という記載があり、また、フォームで用意された「著作権者名」、「著作権対象物のタイトル」についてもそれぞれ記載している。
 もっとも、「権利を侵害された作品についての説明」について「その他」とした上で、「公演の種類」を「氏名」とし、「著作権対象物のタイトル」を「A(ひらがな併記)」としている。そして、「補足情報」として、権利侵害の内容として「パブリシティ権侵害」と明記した上で、「顧客吸引力、宣伝、広告収益目的のためにタイトルに無断で氏名を使用し、経済的利益を害している。」と記載している。これらの記載のうち「著作権対象物のタイトル」が人の氏名そのものであることは明らかであり、「公演の種類」が「氏名」であることや「補足情報」の記載内容から、これらの記載は、「著作権者名」とされる、Aの氏名そのものを、対象動画のタイトルに用いることで、同人のパブリシティ権を侵害したと通知していると理解できるものである。
 被告Aは、著作権侵害の通知のフォームを利用して本件通知をしたところ、そのフォームでは、「著作権者名」や「著作権対象物のタイトル」に記入する欄があり、また、通知をする者が著作権者やその代理人であることなどを表明する定型の文言があるため、上記各欄の記載やその定型の文言が本件通知に含まれることとなっている。しかし、「著作権対象物のタイトル」や「補足情報」の上記のような記載からすれば、被告Aは、ユーチューブにおいてパブリシティ権侵害の通知をする専用のフォームがあったとは認められない状況において、本件動画のタイトルに被告Aの氏名を用いたことがパブリシティ権侵害であることを通知する意図で、本件通知をグーグルに送付したと認められる。
(4)本件で、原告は、本件通知は本件動画が通知者の著作権を侵害されている旨の通知をするものであり、通知者である被告Aには、著作権侵害の有無を事前に確認する義務があったにもかかわらず、被告Aは、これを怠って原告が著作権を侵害している旨の虚偽の通知をしたことを請求の原因として主張する。
 しかし、ユーチューブにおいてパブリシティ権侵害の通知をするフォームがあったとは認められない状況において、前記のとおり、被告Aは、本件動画のタイトルに被告Aの氏名を用いたことが被告Aの顧客吸引力等を利用するパブリシティ権侵害であることを通知する意図で、その旨の記載をするなどして、本件通知をグーグルに送付したと認められる。そして、本件通知は、著作権侵害の通知をするフォームを利用したことに伴う記載はあるが、著作権対象物のタイトルとして氏名のみが記載され、その補足情報の記載が上記のようなものであることからすると、通知者が自らの氏名が対象動画のタイトルに利用されていることによるパブリシティ権侵害があると通知するものであると理解できるものである。
 前記のとおり、ユーチューブにおいて、グーグルに対し権利侵害の通知を行うことは、その内容や態様により、投稿者の法律上保護される利益を害する違法な行為となる場合があるといえる。原告は、本件の請求の原因を上記のとおり主張して被告Aが著作権侵害の有無を調査すべき義務があったと主張するところ、本件通知の内容や態様が上記のようなものであったことに照らせば、通知者である被告Aに原告が主張するような著作権侵害の有無を事前に確認する義務があったとは認められず、同義務違反により原告の法律上保護された利益が侵害されたことを理由とする原告の請求には理由がない。
 なお、グーグルは、本件通知に基づき本件動画を再生できないようにしたが、被告Aに原告が主張する義務があったとはいえず、被告Aに原告が主張する義務違反行為があったとは認められないから、同事実は、上記判断を左右するものではない。
第4 結論
 よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 杉田時基
 裁判官 仲田憲史
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日本ユニ著作権センター
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