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【事件名】インスタグラムへの発信者情報開示請求事件B 【年月日】令和5年6月15日 東京地裁 令和4年(ワ)第70085号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和5年4月20日) 判決 原告 A 同法定代理人親権者父 B 同法定代理人親権者母 C 同訴訟代理人弁護士 飛田育彦 同 良井洋逸 被告 メタ・プラットフォームズ・インク(MetaPlatforms,Inc.) 日本における被告代表者 ビーコンサービス株式会社 被告訴訟代理人弁護士 宇佐神順 同 馬場埼悠(編注:埼は“大”ではなく“立”) 同 日向美月 同 神谷万桜子 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、別紙著作物対比表の各番号における(1)原告著作物記載の各画像(以下「本件各著作物」という。)の著作権者であるところ、氏名不詳者により、写真・動画共有SNS「Instagram」(以下「インスタ」という。)に本件各著作物を複製した画像(上記対比表の各番号における(2)侵害物記載の各画像)を含む別紙投稿記事目録記載の各投稿記事(以下「本件各投稿」という。)が投稿されたことにより、原告の本件各著作物に係る著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、インスタを運営する被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)5条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、末尾の証拠(枝番のあるものは、枝番を含む。以下同じ)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者等 原告は、自身のインスタアカウントに自ら撮影した写真を投稿した者である(甲3)。 被告は、インスタを運営する企業であり、その役務提供の内容等に照らし、特定電気通信(法2条1号)の用に供される電気通信設備(特定電気通信設備。同条2号)を他人の通信の用に供する者(特定電気通信役務提供者。同条3号)に当たり、また、本件発信者情報をいずれも保有している(甲4)。 (2)氏名不詳者の行為 氏名不詳者は、「(省略)」というユーザー名のアカウントから、別紙投稿記事目録各記載のURLによりインスタに本件各投稿を投稿した。本件各投稿には、別紙著作物対比表のとおり、本件各著作物を複製した画像が使用されている(甲1〜3)。 3 本件の主たる争点は、(1)当裁判所の管轄権の有無及び(2)権利侵害の明白性であり、これに関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)当裁判所の管轄権の有無 (被告の主張) 被告は米国デラウェア州法に基づいて設立された会社であり、その主たる事務所は米国カリフォルニア州メンロ・パークにある。 したがって、本件訴訟につき、当裁判所は管轄権を有しない。 (原告の主張) 被告は、インスタに係るサービスを提供、管理、運営しているところ、同サービスは日本に居住する利用者にも提供されていることから、被告は「日本において事業を行う者」(民訴法3条の3第5号)に該当する。 また、本件訴訟は、インスタに係るサービス利用者の発信者情報の開示を被告に求めるものであり、被告の「日本における業務に関するもの」(同号)に該当する。 さらに、被告は日本国内に主たる事務所又は営業所を有しておらず、日本における代表者その他の主たる業務担当者も存在しないから、「管轄裁判所が定まらないとき」(同法10条の2)に該当する。 したがって、当裁判所は、本件訴訟につき管轄権を有する(民訴規則6条の2)。 (2)権利侵害の明白性 (原告の主張) 本件各著作物は、いずれも原告が創意工夫して撮影した写真であり、著作物性が認められ、その著作権は原告に帰属する。 本件各著作物と氏名不詳者による侵害物との対比は別紙著作物対比表のとおりである。氏名不詳者による侵害物は、いずれも本件各著作物である写真をそのまま流用したものであり、いわゆるデッドコピーとして、原告の複製権を侵害することは明らかである。 また、氏名不詳者は複製物を被告がインターネット上で提供、管理、運営するインスタに投稿しており、原告の公衆送信権を侵害することも明らかである。 (被告の主張) 不知又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(当裁判所の管轄権の有無)について (1)被告は、米国デラウェア州法に基づいて設立された会社であり、その主たる事業所は米国カリフォルニア州メンロ・パークにある。しかし、被告は、日本に居住している利用者に対しても同社が管理及び運営しているインスタに係るサービスを提供しており(前提事実(1)、弁論の全趣旨)、「日本において事業を行う者」(民訴法3条の3第5号)に該当するものといえる。 また、本件訴訟は、原告が、インスタに係るサービスの日本での利用に関し、被告に対して提起した発信者情報開示請求訴訟である(前提事実(1)、(2))。 したがって、本件訴訟は、被告の「日本における業務に関する」訴えといえる(民訴法3条の3第5号)。 以上より、本件訴訟につき、日本の裁判所に管轄権があるものと認められる。 (2)被告は、日本国内に事務所等を置いていないが、日本における代表者の住所は東京都千代田区に所在する。したがって、民訴法4条5項により、その住所を管轄する当庁が管轄権を有するものと認められる。 (3)以上によれば、当裁判所は本件訴訟について管轄権を有する。これに反する被告の主張は採用することはできない。 2 争点2(権利侵害の明白性)について (1)証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば、本件各著作物は、いずれも、原告が創意工夫して撮影した写真であり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものといえる。 したがって、原告は、著作物である本件各著作物の著作者としてその著作権(複製権及び公衆送信権)を有するものと認められる。 他方、氏名不詳者は、別紙投稿記事目録記載のとおり、インスタに本件各著作物を複製した画像を使用して、本件各投稿をした(前提事実(2))。 このことから、氏名不詳者が本件各著作物を複製したこと及びこれを利用して作成した本件各投稿をインスタに投稿して本件各著作物を公衆送信したことは、いずれも明らかといってよい。 したがって、本件各投稿により原告が本件各著作物に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたことは明らかと認められる。 3 その他の要件について (1)前提事実(1)によれば、被告は、上記権利侵害に係る「特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」(法5条1項)に該当し、また、本件発信者情報をいずれも保有している。 (2)弁論の全趣旨によれば、原告が氏名不詳者に対して著作権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使するためには、本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。 したがって、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。 (3)本件発信者情報は、特定発信者情報以外の発信者情報に当たる。 4 まとめ 以上より、原告は、法5条1項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。 第4 結論 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 小口五大 裁判官 久野雄平 (別紙 投稿記事目録省略) (別紙 著作物対比表省略) (別紙)発信者情報目録 別紙投稿記事目録記載の投稿記事と投稿したもの(ユーザ名「(省略)」)に関する以下の情報(ただし、当該情報が入手可能なものに限る)。 1 氏名または名称 2 電話番号 |
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