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【事件名】ツイッターへの発信者情報開示請求事件O 【年月日】令和5年6月9日 東京地裁 令和5年(ワ)第70012号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和5年3月27日) 判決 原告 A 同訴訟代理人弁護士 田中圭祐 同 吉永雅洋 同 遠藤大介 同 蓮池純 同 神田竜輔 同 鈴木勇輝 被告 Twitter,Inc. 同訴訟代理人弁護士 中島徹 同 平津慎副 同訴訟復代理人弁護士 小原丈佳 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告の運営するツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)のウェブサイトに氏名不詳者ら(以下「本件各氏名不詳者」という。)が投稿した別紙投稿記事目録記載1ないし7の各投稿(以下「本件各投稿」という。)により、別紙動画目録記載の動画(以下「本件原動画」という。)に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及びプライバシー権が侵害されたことは明らかであり、本件各氏名不詳者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使するため、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者 原告は、「B」との変名を用いて、インターネット上で動画の投稿及び配信活動をしている者である(甲9)。 被告は、ツイッターを運営する米国法人である(弁論の全趣旨)。 (2)原告による動画の配信 原告は、令和4年9月24日、原告が開設するファンクラブサイト「C」において、原告自身の姿態を自ら撮影した本件原動画の生配信(以下「本件配信」という。)を行った(甲9)。原告は、本件配信の際、本件原動画を撮影すると同時に録画していた(弁論の全趣旨)。 (3)本件各氏名不詳者による動画の投稿(甲1ないし7) 本件各氏名不詳者は、別紙投稿記事目録記載1ないし7の投稿日時欄の日時に、同ユーザー名欄のアカウントを利用して、ツイッター上に、本件原動画の一部を抜粋して作成した動画である同添付動画欄の動画(以下「本件各投稿動画」という。)の掲載を含む本件各投稿をした。 (4)本件発信者情報の保有 被告は、本件発信者情報を保有している。 3 争点 (1)本件各投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1) (2)原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか(争点2) 4 当事者の主張 (1)争点1(本件各投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について (原告の主張) ア 著作権侵害について (ア)本件原動画は、原告が、より刺激的な内容でファンを楽しませることを目的として表現し、原告自身がカメラの画素数、配置、被写体の角度、衣装、コンセプト等を考えて撮影したものである。 また、本件原動画は、「視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定」(著作権法2条3項)されているものである。 したがって、本件原動画は、映画の著作物であって、原告は、本件原動画の著作者である。 (イ)本件各氏名不詳者が、本件各投稿により、本件原動画の一部を抜粋して作成した本件各投稿動画をツイッターに投稿したことは、被告が管理するサーバー上に本件原動画を有形的に再製するものであるから、本件原動画に係る原告の複製権(著作権法21条)を侵害する。 また、本件各投稿は、公衆によって直接受信されることを目的として、無線又は有線電気通信の送信を行うもののうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うものであるから、自動公衆送信に該当し(同法2条1項7号の2、同項9号の4)、本件原動画に係る原告の公衆送信権(同法23条1項)を侵害する。 (ウ)原告は、本件各氏名不詳者に対し、本件原動画の利用を許諾していない。また、本件各投稿は、報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」での利用ではないから、当該投稿について引用による利用(同法32条1項)の規定は適用されない。 このほか、本件各投稿に関し、著作権侵害に係る違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。 (エ)したがって、本件各投稿によって、本件原動画に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。 イ プライバシー権侵害について (ア)本件各投稿動画には、「Twitter:D」との表示がされているところ、「D」は、原告がツイッターに開設したアカウントのユーザー名であるから、本件各投稿が原告に関する投稿であることは明らかである。 (イ)プライバシー権侵害は、公表された事実が、@私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること(私事性)、A一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること(秘匿性)及びB一般の人々に未だ知られていない事柄であること(非公知性)という要件を充足する場合に成立すると解される。 本件各投稿動画には、原告の乳頭が映っているところ、当該部位は、一般的に他人に見せるような部位ではなく、特に他人に見られたくない部位である。このため、本件において、@私事性及びA秘匿性の要件は、優に認められる。 また、原告は、過激な動画の配信を行っているものの、自身の乳頭や陰部が映らないよう撮影する角度や衣装等を工夫しており、これまでも自身の乳頭を公開したことはない。原告は、本件配信に当たり、絆創膏を貼って乳頭を隠していたこと、定期的に絆創膏のズレを気にしている様子が映っていることからも、原告が本件配信において自身の乳頭の公開を予定していなかったことは明白である。このため、本件において、B非公知性の要件を満たすことは明らかである。 (ウ)投稿内容がプライバシー権を侵害するものであっても、これを公表されない法的利益に比して、公表することによって得られる公共の利益が優越する場合には、違法性が阻却される余地がある。 しかし、本件各投稿は、原告が乳頭を隠すために貼っていた絆創膏が本件配信中に偶然剥がれ、乳頭が映り込んでしまったという事象を、いたずらに拡散する目的でされているものであるから、公共性及び公益性をいずれも有しない。 このほか、本件各投稿に関し、プライバシー権侵害に係る違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。 (エ)したがって、本件各投稿によって、原告のプライバシー権が侵害されたことは明らかである。 ウ 権利侵害の主張の関係 本件各投稿についての複製権侵害、公衆送信権侵害及びプライバシー権侵害の主張は、選択的主張である。 (被告の主張) 争う。 (2)争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について (原告の主張) 原告は、本件各氏名不詳者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使する予定であるところ、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要がある。 したがって、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 (被告の主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について (1)本件原動画の著作物性及び著作権者 証拠(甲9、12)によれば、本件原動画は、原告が、専ら胸元を中心とした自身の姿態及び仕草並びに自身の声をビデオカメラで撮影、収録した動画であって、顔が映らない一方で、胸元から下半身上部までが収まるような構図としたり、影が生じないようにしたりして撮影されていることが認められる。また、前提事実(2)のとおり、原告は、本件配信の際、本件原動画を撮影すると同時に録画していたことが認められる。 そうすると、本件原動画は、原告が、被写体の構図及び撮影方法のほか、被写体と光線との関係を工夫して撮影したものであるから、原告の「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、…美術…の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と認められる。 そして、上記において認定した本件原動画の作成経緯に照らせば、原告は、本件原動画を自ら撮影した者であるから、本件原動画に係る著作権者であると認められる。 (2)本件原動画に係る原告の著作権(公衆送信権)侵害の有無 前提事実(3)及び証拠(甲1の2、2の2、3の2、4の2、5の2、6の2、7の2、12)によれば、本件各氏名不詳者は、本件原動画の一部を抜粋して作成した本件各投稿動画をツイッターに投稿したこと、本件各投稿動画から、本件原動画の表現の本質的特徴を直接感得できることがそれぞれ認められる。 そして、短文投稿サービスが提供されているインターネット上のウェブサイトに本件各投稿動画の掲載を含む本件各投稿をすることは、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に本件原動画に係る情報を記録することによって、公衆からの求めに応じて自動的に本件原動画の送信を可能にする行為であると評価できる(著作権法2条1項9号の5、同項9号の4)。 そして、本件各投稿について違法性阻却事由が存在することはうかがわれない。 (3)小括 したがって、本件各投稿により、本件原動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。 2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について 証拠(甲9)によれば、原告は、本件各氏名不詳者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使する意思を有しており、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。 したがって、原告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 第4 結論 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 バヒスバラン薫 (別紙)発信者情報目録 別紙投稿記事目録記載の記事を投稿した者に関する情報であって、次に掲げるもの。 別紙アカウント情報目録記載の各アカウント管理者の電話番号 以上 (別紙)アカウント情報目録 以下省略 (別紙)投稿記事目録 以下省略 (別紙)動画目録 以下省略 |
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