判例全文 line
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【事件名】スクールカウンセラーへの名誉棄損事件
【年月日】令和5年6月9日
 東京地裁 令和2年(ワ)第12774号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和5年3月7日)

判決
原告 A
被告 B(以下「被告B」という。)
被告 C(以下「被告C」という。)
被告 D(以下「被告D」という。)


主文
1 被告Bは、原告に対し、429万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Cと318万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Dと250万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
2 被告Cは、原告に対し、323万円及びこれに対する令和2年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Bと318万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Dと250万円及びこれに対する同月23日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
3 被告Dは、原告に対し、250万円及びこれに対する令和2年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Bと250万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Cと250万円及びこれに対する同月23日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
4 被告Bは、別紙画像目録記載の写真を自動公衆送信又は送信可能化してはならない。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、原告に生じた費用の10分の4と被告Bに生じた費用との合計の2分の1を原告の、2分の1を被告Bの各負担とし、原告に生じた費用の10分の3と被告Cに生じた費用との合計の5分の1を原告の、5分の4を被告Cの各負担とし、原告に生じた費用の10分の3と被告Dに生じた費用との合計の5分の3を原告の、5分の2を被告Dの各負担とする。
7 この判決は、第1項ないし第4項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告Bは、原告に対し、689万1880円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Cと、566万9000円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Dと、566万9000円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
2 被告Cは、原告に対し、566万9000円及びこれに対する令和2年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Bと、566万9000円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Dと、566万9000円及びこれに対する同月23日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
3 被告Dは、原告に対し、566万9000円及びこれに対する令和2年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、被告Bと、566万9000円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、被告Cと、566万9000円及びこれに対する同月23日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で、それぞれ連帯して)を支払え。
4 主文第4項と同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
 本件は、原告が、次の請求をする事案である。
(1)被告らに対する請求
 被告らが、共同して、平成26年3月24日から令和2年6月20日までの期間に、複数のブログ、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)等において、原告の名誉を毀損し、又は名誉感情を侵害する内容の記事等を投稿したとして、民法709条、710条及び719条1項に基づき、損害賠償金合計1億1338万円の一部請求として、566万9000円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日。被告Bにつき令和2年10月26日、被告Cにつき同月23日、被告Dにつき同月16日。)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(各被告への請求範囲が重なる部分に限り連帯支払)を求めるもの。
(2)被告Bに対する請求
ア 被告Bが、ブログ、ツイッター等において、原告のプライバシー権を侵害する内容の記事等を投稿するなどしたとして、民法709条に基づき、損害賠償金合計343万7280万円の一部請求として、57万2880円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である令和2年10月26日から支払済みまで前記(1)の割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
イ 被告Bが、ブログ、ツイッター等において、原告が著作権を有する別紙画像目録記載の画像(以下「本件原画像」という。)を複製した画像(以下「本件複製画像」という。)を、原告の名誉声望を侵害する形で掲載し、原告の名誉声望保持権を侵害したとして、民法709条に基づき、損害賠償金390万円の一部請求として、65万円及びこれに対する前記アの遅延損害金の支払を求めるもの。
ウ 被告Bが、本件複製画像をブログ、ツイッター等においてアップロードし、原告の本件原画像に係る公衆送信権を侵害するおそれがあるとして、自動公衆送信(ただし、送信可能化を含む。以下同じ。)の差止めを求めるもの。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者(弁論の全趣旨)
ア 原告は、心理援助職に就いており、スクールカウンセラー等として活動している。
イ 被告Bは、心理療法家である。
ウ 被告Cは、一般私人である。
エ 被告Dは、精神科医である。
(2)原告及び被告らが管理運営するブログ等(甲3、弁論の全趣旨)
ア 原告ブログ及びアカウント
 原告は、ハンドルネームを「a①」とする「(題名は省略)」と題するブログ(ただし、原告は、原告ブログのハンドルネームを「a②」、「a③」、「a④」と設定していたことがあった。以下、ハンドルネーム変更の前後を問わず、「原告ブログ1」という。)を管理運営している。
 また、原告は、ユーザー名を「@(以下省略)」とするツイッターアカウント(以下「原告アカウント」という。)を保有している。
イ 被告B各ブログ及びアカウント
 被告Bは、ハンドルネームを「b」とする「(題名は省略)」と題する2つのブログ(https://(以下省略)(以下、同ウェブサイトのブログを「被告Bブログ1」という。)及び「http://(以下省略)」(以下、「被告Bブログ2」といい、被告Bブログ1と併せて「被告B各ブログ」という。))を管理運営している。
 また、被告Bは、ユーザー名を「@(以下省略)」とするツイッターアカウント(以下「被告Bアカウント」という。)を保有している。
 さらに、被告Bは、「researchmap」という研究者のデータベース上で被告B名義の研究者サイト(以下「被告Bリサーチマップ」という。)を開設し、同サイトで記事を投稿するとともに、「私のブログ」として、被告Bブログ1のインターネットアドレスを公開している。
ウ 被告Cブログ及びアカウント
 被告Cは、ハンドルネームを「c」とする「(題名は省略)」と題するブログ(以下「被告Cブログ」という。)を管理運営している。
 また、被告Cは、ユーザー名を「@(以下省略)」及び「@(以下省略)」とする各ツイッターアカウント(以下「被告C各アカウント」という。)を保有している。
エ 被告Dは、ハンドルネームを「d」とする「(題名は省略)」と題するブログ(以下「被告Dブログ」という。)を管理運営している。
(3)本件紛争に至る経緯(甲1の1、1の2、弁論の全趣旨)
ア 原告は、平成26年3月15日、被告Bブログ1のコメント欄に、「a②」名又は「a③」名で、同ブログの内容についての質問を投稿したが、被告Bは、その質問に答える必要がないと考え、応答しなかった。
イ 原告は、平成26年3月16日にも、二度、被告Bブログ1のコメント欄に前記アの質問と同様の質問を投稿した。被告Bは、同月17日、同ブログのコメント欄に対する他の書き込みに応答する形で「(原告のコメントを)邪魔くさくて放置してましたが、丁寧に諭してくださり、ありがとうございます。」と投稿した。原告は、これに対し、同コメント欄に「こういう汚い言葉をつかえる人なのですね。残念です。」と投稿した。
ウ 原告は、平成26年3月17日、原告ブログ1において、東日本大震災の被災地に行き、案内してくれた考古学者で神主である人から聞いた話に対する感想を述べる記事を投稿した。被告Bは、同月18日、被告Bブログ1に、「(題名は省略)」と題して、(内容は省略)の記事を投稿した上、原告について、「否認を否認して、質問ばっかりする-相手を無料解答マシーンにしようとする傲慢さ」、「なりすましのかまってちゃん」などとする記事を投稿した。これに対して、原告は、同日、被告Bブログ1のコメント欄に、「なんだ、(発達障害は)あると思っているのですね。」と投稿した。
エ 原告は、平成26年3月21日、原告ブログ1(当時の原告のハンドルネームは「a②」であった。)に、東日本大震災の被災地を訪問した際に撮影した動画の静止画像を更にスクリーンショットにより撮影した本件原画像を掲載した。
オ 被告Bは、平成26年3月24日、被告Bブログ1に本件原画像を複製した本件複製画像を投稿するとともに、「リアル「カオナシ」a②たぬきのPTSD解離性悪行の数々」、「頭かくして尻尾隠さず被災地に行って体調不良中」などと投稿した(別紙一覧表の「本件記事等番号」欄記載【B0001】の投稿。以下、同一覧表の「本件記事等番号」欄記載の記事、ブログ記事のコメント欄への書き込み、ツイッターに投稿したメッセージ(ツイート)等を、番号順に、「【B0001】の投稿」などという。)。
カ 原告は、平成26年3月25日、本件複製画像の削除を求め、被告Bブログ1のコメント欄に、「a③」名で、「写真は削除してください。キレて犯罪おかしてしまうのは、あなたのいう逸脱、解離ですよね。私はあなたの実名を調べることもできるのですよ」、「キレると著作権侵害(犯罪)など、どうでもよくなってしまうのですね。」、「著作権法違反は「盗っ人」ととらえたほうがいいですよ」等と投稿した。原告は、同日を最後に、被告Bブログ1のコメント欄に投稿することはなくなった。
キ 被告Bは、本件複製画像を削除せず、平成26年3月31日には、「(タイトル名は省略)」とのタイトルの記事において、同事件の内容を紹介し、運転者がPTSD解離人格であると述べた上で、本件複製画像を掲載し、その後も、同日に1回、同年4月2日に1回、同月3日に2回にわたり、各地で発生した犯罪の犯人がPTSD解離にり患している旨のコメントや、チェルノブイリ原発事故への言及等と関連付けて、本件複製画像を掲載した(【B0004】ないし【B0008】。甲8の5)。
ク 原告は、ハンドルネームを「a⑤」とする新しいブログ(以下「原告ブログ2」という。)を開設し、同ブログにおいて、平成26年4月7日、「立ち去ったことが明らかなのに、まるで追いすがるように繰り返し窃盗画像を貼る執着心は、いったいあなたのどこから生まれるのかと不思議に思っています。」、「ただ、著作権侵害という盗み癖を繰り返すことは、やめてください。犯罪ですよ。」等と投稿し、同月18日にも、本件複製画像の掲載をやめるよう求める内容の投稿をした。
ケ 原告は、平成26年4月24日及び28日、被告Bの当時の勤務先等に電話を架けるなどし、被告Bが本件原画像を無断使用しているため迷惑を被っていることを伝えた。
コ 原告は、第三者が開設するブログのコメント欄において、平成26年5月1日、「著作権侵害に迷惑し、やめてくださいとあたりまえのお願いをしているだけなのですが、それに対し、「告訴」して受理されたそうです」等と投稿し、同月6日、同月7日、同月14日にも、被告Bの著作権侵害行為により迷惑を被っている旨を投稿した。
サ 被告Bは、平成26年5月13日以降も、【B0016】ないし【B0018】、【B0047】、【B0048】、【B0051】、【B0053】、【B0054】、【B0056】、【B0057】、【B0062】及び【B0064】の各投稿のとおり、「PTSD解離カオナシサイバーストーカー」、「カオナシ多重人格ストーカー」、「PTSD特有の認知の歪みで勘違いから暴走する犯罪級に醜い奴」、「ネットストーカー」、「PTSD解離ネットストーカー」などの文言とともに、本件複製画像を掲載した記事を繰り返し投稿した。また、被告Bは、【B0046】、【B0061】及び【B0063】の各投稿において、上記の文言を記載することなく、単に、本件複製画像には著作物性が認められない旨の記事又はツイートとともに、本件複製画像を掲載した(甲8の5)。
(4)被告らによる記事等の投稿
ア 被告B
 被告Bは、別紙一覧表の「投稿日時」欄記載の日時に、被告Bブログ1若しくは2、被告Bアカウント又は被告Bリサーチマップ(以下「被告Bブログ等」という。)において、次のとおりの投稿をした(ただし、「投稿者」欄に「被告B」と記載されているものに限る。甲4、44、弁論の全趣旨)。
(ア)被告B各ブログ及び被告Bリサーチマップ
 別紙一覧表の「記事タイトル」欄記載のタイトル名の記事又は同記事のコメント欄における「名誉・信用棄損/侮辱表現等」欄記載のとおりの書き込み
(イ)被告Bアカウント
 別紙一覧表の「名誉・信用棄損/侮辱表現等」欄記載のとおりのツイート
イ 被告C
 被告Cは、別紙一覧表の「投稿日時」欄記載の日時に、被告Cブログ、被告C各アカウント又は被告B各ブログのコメント欄に、次のとおり投稿した(ただし、「投稿者」欄に「被告C」と記載されているものに限る。甲4、弁論の全趣旨)。
(ア)被告C各ブログ又は被告B各ブログのコメント欄
 別紙一覧表の「記事タイトル」欄記載のタイトル名の記事又は同記事のコメント欄における「名誉・信用棄損/侮辱表現等」欄記載のとおりの書き込み
(イ)被告C各アカウント
 別紙一覧表の「名誉・信用棄損/侮辱表現等」欄記載のとおりのツイート
ウ 被告D
 被告Dは、別紙一覧表の「投稿日時」欄記載の日時に、被告Dブログにおいて、「記事タイトル」欄記載のタイトル名の記事において「名誉・信用棄損/侮辱表現等」欄記載のとおりの書き込みをした(ただし、「投稿者」欄に「被告D」と記載されているものに限る。)。
(5)大阪地方裁判所堺支部平成26年(ワ)第1449号損害賠償請求事件(以下、同事件の訴訟を控訴審及び上告審を含め「別件訴訟」という。)について
 被告Bは、平成26年11月27日頃、原告が、被告Bの運営するブログ1に、被告Bがあたかも犯罪者であるかのようなコメント等を投稿するとともに、原告ブログ2でも被告Bを誹謗中傷する内容の記事を投稿した上、被告Bの勤務先等にも手紙を送付したり架電したりして被告Bが犯罪行為を行っていると告げたことは、被告Bに対する名誉毀損、プライバシー権侵害及び業務妨害の不法行為に該当し、これにより被告Bは多大な精神的苦痛を受けたと主張して、原告を被告とする損害賠償請求訴訟を提起した(甲13の1)。
 大阪地方裁判所堺支部は、平成29年3月17日、別件訴訟において、被告Bの請求を棄却する旨の判決を言い渡した(甲1の1)。
 被告Bは、上記判決を不服として控訴を提起したが、同年9月1日、当該控訴を棄却する判決が言い渡され、さらに、この判決を不服として上告及び上告受理申立てをしたが、平成30年3月1日、当該上告を棄却し、当該申立てを上告審として受理しない旨の決定がされ、被告Bの請求を棄却する判決が確定した(甲1の2、1の3)。
3 争点
(1)名誉毀損の成否(争点1)
(2)違法性阻却事由の存否(争点2)
(3)名誉感情侵害の成否(争点3)
(4)原告の亡父に対する敬愛追慕の情の侵害及び不法行為の成否(争点4)
(5)被告らによる共同不法行為の成否(争点5)
(6)本件原画像の著作物性及び著作者(争点6)
(7)名誉声望保持権の侵害の成否等(争点7)
(8)引用の抗弁の成否(争点8)
(9)プライバシー権侵害の成否(争点9)
(10)原告と密接な関係を有する者に対するつきまといによる不法行為の成否(争点10)
(11)損害の発生の有無及び額(争点11)
(12)差止めの必要性の有無(争点12)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(名誉毀損の成否)について
(原告の主張)
(1)被告Bによる記事等の投稿
 被告Bによる前提事実(4)アの投稿のうち、別紙争点整理表(被告B)の各「番号」欄に対応する、「記事番号」欄記載の各記事等は、いずれも、同「番号」欄に対応する「原告主張の摘示事実」欄記載の事実を摘示するものである(以下、別紙争点整理表(被告B)の「番号」欄記載の番号に対応する「記事番号」欄記載の各記事等を、番号順に「被告B番号1の各記事等」などといい、被告B番号1ないし9の各記事等を併せて「被告B各記事等」という。)。
ア 同定可能性があることについて
 被告Bは、被告B各記事等の中に、原告のハンドルネームである「a①」、「a②」及び「a④」を繰り返し引用している。原告のハンドルネーム「a①」は、少なくとも平成26年8月から令和元年6月までの約5年間、インターネット検索エンジンのサジェスト機能により、常時、原告の実名や職業(所属先の具体的な情報を含む。)に紐付けられる状態に置かれていた。
 また、被告Bは、被告Bブログ等において、原告アカウントによりされたツイートのスクリーンショットを、記事又はコメントとともに繰り返し掲載しており、一般読者が同スクリーンショットの情報から原告の実名を特定することは可能な状態であった。
 さらに、被告Bは、原告の勤務先の情報や、原告の親族のツイート、原告と被告Bの間で係属中であった訴訟の事件番号や期日の日時等を被告Bブログ等に繰り返し投稿している。
 このような被告Bの投稿内容に照らすと、被告B番号1ないし9の各記事等に原告の氏名が投稿されていない場合でも、原告の属性について一定の知識や情報を有している者が読めば、原告を特定することが可能であるといえ、原告を同定する可能性はあるといえる。
イ 社会的評価を低下させる事実の摘示であることについて
(ア)被告B番号1の各記事等
 被告B番号1の各記事等は、「原告は、被告Bに対し、恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者である。」との事実を摘示するものである。
 このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実生活では、特定の他者につきまとい、執拗にストーカー行為を続ける者であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価を著しく低下させるものであることは自明である。
(イ)被告B番号2の各記事等
 被告B番号2の各記事等は、「原告は、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っている。」との事実を摘示するものである。
 被告Bは臨床心理学研究家を名乗っており、被告Bによるこのような表現行為は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実生活では、凄惨な虐待等の激しい心的外傷を体験する等、その生い立ちに深い傷を負った者であり、解離すなわち自身の人格に空間的、時間的同一性を保てない状況に置かれる疾患にり患し、時に重篤な犯罪性を表出する者であるとの印象を与えるもので、原告の社会的評価を著しく低下させるものであることは自明である。
(ウ)被告B番号3の各記事等
 被告B番号3の各記事等は、「原告は、精神疾患を患う「I」につきまとい、その実名を本人の承諾なく公表し、かつ、同人の症例について原告による心理援助の成功事例として虚偽報告を行った。」との事実を摘示するものである。
 上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実生活では、精神疾患を患う者に対しつきまとい行為を行い、その実名を本人の承諾もなく公表したり、同人の症例があたかも自身による心理援助の成功事例であるかのように虚偽の報告を行ったりするような、心理援助職としての自身の社会的評価を高めるためであれば、何らの躊躇もなく不正を働き他者を利用する、職業倫理に著しく悖る者であるという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を著しく低下させている。
(エ)被告B番号4の各記事等
 被告B番号4の各記事等は、「心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告は、実生活では、AV関係の副業等、職場には言えないような仕事を隠れて行う者である。」との事実を摘示するものである。
 被告Bは、このような事実を明記したことはないと主張するが、「a①(a②)先生も実名検索するとアダルトサイトが並ぶそうで・・・原因は他にあるのではないでしょうか??」(【B0119】)、「いろんなものを売っておられるみたいです。アダルトサイトが目立つのが気になりますが(スクールカウンセラーなのに大丈夫でしょうか。」(【B0159】)、「妙なアルバイトをしているのを逆SEOで隠そうとしたそうで」(【B0173】)、「妙なバイトをしてたのを隠そうとして・・・(今回知ったa①のバイトには本当に呆れました…関係筋に報告済みです)いろいろ糾弾されるでしょう。」(【B0179】)等と投稿している。このような投稿の内容に照らすと、被告Bは、原告が、職場には言えないような仕事を隠れて行う者である旨を間接的ないし遠回しに摘示しているといえる。
 そして、上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実生活では、職場に隠れてAV関係の副業等を行うような二面性を持つ者であるという印象を与えるものであり原告の社会的評価を低下させている。
(オ)被告B番号5の各記事等
 被告B番号5の各記事等は、「原告は、実生活では、子ども達に薬物の過剰処方を誘導している。」との事実を摘示するものである。
 被告Bは、「誘導している」と断定した記事等を投稿したことはないと主張するが、「公務員でないならアルバイトは自由でしょうが/これはひどいですね。/ねむれない人を病院に誘い込むなんて最低です。」(【B0159】)、「スクールカウンセラーに相談したらネットストーカーだったとしたら???/アフィリエイトで心療内科紹介されて知らない間に薬チューにされていたとしたら???」(【B0165】)、「実名検索では妙な広告がいっぱい出てきますが精神科誘導だけはやめてください。」(【B0168】)、「妙なバイトをしてたのを隠そうとして・・・(今回知ったa①のバイトには本当に呆れました!関係筋に報告済みです)いろいろ糾弾されるでしょう。」(【B0179】)、「眠れない人を精神科に誘い込むバイトをしている悪質スクールカウンセラー」(【B0181】)等と投稿している。
 これらの記事等は、原告が子どもたちに薬物の過剰処方を誘導している事実を間接的ないし遠回しに摘示しているといえる。
 上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実際のカウンセリングでは、自身のクライエントである子ども達を心療内科に誘導し薬漬けにするような、職業人としての倫理に著しく悖る行為を行う者であるという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させている。
(カ)被告B番号6の記事等
 被告B番号6の記事等は、「原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによる」との事実を摘示するものである。
 被告Bは、被告B番号6の記事等において上記事実を摘示していないと主張する。
 しかし、被告Bは、被告Cが、被告Bブログ等のコメント欄に、「a①さまの父上が落命されたのも「青信号」だったのに・・・」、「「青信号は進め」(←PTSDによる躁的否認)ではなく、「危険がないかどうか、よく確認してから渡っても良い」というのが交通常識です。落命されたかたに鞭を打つということではなく、交通「戦争」犠牲者として鎮魂し、次世代に轍を踏む人が出ないようにPTSD負の連鎖を止めることがポイントですね。」(【B0390】)と投稿したことを受けて、「「Researchmapに名前を公表したのだから、アメーバブログにもその名前を書いてもよいのだ」との主張は、「青信号だから渡った」につながります。心理職としては自殺行為で、その意味を理解できないのは本人a①だけです。PTSD世代間の負の連鎖と言ってよいでしょう。無意識の法則は怖ろしいのもので、人にしたことはすべて自分に返ってきます」(【B0391】)と投稿しており、原告の父の「青信号だから渡った」という被告Cのいう「PTSDによる躁的否認」が、「世代間の負の連鎖」すなわちその子である原告にも連鎖しており、それは自殺行為である旨を述べている。
 このように、被告Cと被告Bは、相互に連動し、一体となって上記の事実を摘示しているといえる。
 そして、上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、原告の父は、青信号を確認せずに進んでよいという思い込みを持つ者であり、実際にこれを実行したことにより死去したという印象、及びそのような「世代間の負の連鎖」が娘である原告に生じているという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させる。
(キ)被告B番号7の各記事等
 被告B番号7の各記事等は、「原告は、未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとした。」との事実を摘示するものである。
 上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、心理援助職としてスクールカウンセリング等に携わる原告が、実生活では、未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとするような、職業人としての倫理に著しく悖る行為を行う者であるという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させている。
(ク)被告B番号8の各記事等
 被告B番号8の各記事等は、「被告Bが著作権侵害を行っているとの原告の主張について、裁判所は、これが原告の勘違いであると判示した。」との事実を摘示するものである。
 このような摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、被告Bが著作権侵害などしていないにもかかわらず、原告が、自身の勘違いから暴走し、被告Bについての虚偽の事実を触れ回るような浅はかで粗野な者であるという印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させている。
(ケ)被告B番号9の各記事等
 被告B番号9の各記事等は、「裁判所は、被告Bに対する原告のストーカー行為があったことを認め、この事実を前提とした和解勧試を行い、また、判決文に記載した。」との事実を摘示するものである。
 上記摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、原告が被告Bに対しストーカー行為を行っている事実自体は裁判所も認めており、和解により原告にストーカー行為をやめさせるから、その代わりに被害者である被告Bもこれまでの原告の行為に沈黙してほしいと裁判所自らが被告Bに求めるほどに、原告によるストーカー行為があったことは真実であり、被告Bに被害が生じていたとの印象を与えるもので、原告の社会的評価を低下させる。
(2)被告Cによる記事等の投稿
 被告Cによる前提事実(4)イの投稿のうち、別紙争点整理表(被告C)の各「番号」欄に対応する、「記事番号」欄記載の各記事等は、いずれも、同「番号」欄に対応する「原告主張の摘示事実」欄記載の事実を摘示するものである(以下、別紙争点整理表(被告C)の「番号」欄記載の番号に対応する「記事番号」欄記載の各記事等を番号順に「被告C番号1の各記事等」などといい、被告C番号1ないし6の各記事等を併せて「被告C各記事等」という。)。
ア 被告C番号1の各記事等
 被告C番号1の各記事等は、「原告は、被告Bに対し、恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者である。」との事実を摘示するものであり、前記(1)イ(ア)と同様に、原告の社会的評価を低下させるものである。
イ 被告C番号2の各記事等
 被告C番号2の各記事等は、「原告は、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っている。」との事実を摘示するものであり、前記(1)イ(イ)と同様に、原告の社会的評価を低下させるものである。
ウ 被告C番号3の各記事等
 被告C番号3の各記事等は、「原告は、精神疾患を患う「I」につきまとい、その実名を本人の承諾なく公表し、かつ、同人の症例について原告による心理援助の成功事例として虚偽報告を行った。」との事実を摘示するものであり、前記(1)イ(ウ)と同様に、原告の社会的評価を低下させるものである。
エ 被告C番号4の各記事等
 被告C番号4の各記事等は、「原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによる。」との事実を摘示するものであり、(1)イ(カ)と同様に、原告の社会的評価を低下させるものである。
オ 被告C番号5の各記事等
 被告C番号5の各記事等は、「原告は、子ども達に虐待を行っている。」との事実を摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させるものである。
カ 被告C番号6の各記事等
 被告C番号6の各記事等は、「被告Bが著作権侵害を行っているとの原告の主張について、裁判所は、これが原告の勘違いであると判示した。」との事実を摘示するものであり、前記(1)イ(ク)と同様に、原告の社会的評価を低下させるものである。
(3)被告Dによる記事の投稿被告Dは、【B0090】、【B0162】、【B0169】、【B0928】及び【B1221】(以下、「被告D各記事」といい、被告B各記事等及び被告C各記事等と併せて「被告ら各記事等」という。)の各記事を被告Dブログに投稿した。
 被告D各記事は、「原告は、被告Bに対し、恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者である。」及び「原告は、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っている。」という事実を摘示するもので、原告の社会的評価を低下させるものである。
(被告Bの主張)
(1)同定可能性がないことについて
 原告のハンドルネームが実名と紐付けられた時期が存在するのは、原告が自ら実名を公表したからである。すなわち、原告は、自ら、平成22年7月から「A@a②」というツイッターアカウントを管理していたのであるから、紐付けられるのは当然である。
 他方で、被告Bは、「a①」とのハンドルネームを使用する者が原告であると記載したことは一度もない。
 さらに、被告Bが、被告Bブログ等に原告によるツイートのスクリーンショット画像を掲載したことは認めるが、当該スクリーンショット画像には原告のハンドルネーム「a⑥」等と表記されているのみであり、実名はわからない。
(2)社会的評価を低下させる事実の摘示ではないことについて
ア 被告B番号1の各記事等
 被告B番号1の各記事等の閲覧者は、「a①」、「a⑥」等のハンドルネームを使用する者(以下、被告Bの主張(2)において「ある特定の者」という。)が、被告Bに対して、ストーカー行為をしていると理解する。
 原告の主張する事実摘示の内容は、被告Bが日頃から使用する「ストーカー」についての多様な意味あいの中から、警視庁の定義や印象としての「つきまとい」という言葉を恣意的に選択して作文したものである。一般の閲覧者が「ストーカー」という言葉から原告が主張する事実摘示のとおり受け取ることは期待できない。
 したがって、被告B番号1の各記事等により、原告の主張する事実が摘示されているとはいえず、原告の社会的評価が低下することはない。
イ 被告B番号2の各記事等
 被告B番号2の各記事等の閲覧者は、ある特定の者がPTSDであると記載されていると理解する。一般的な閲覧者は、ある特定の者が複数の疾患を有しているとは考えない。したがって、被告B番号2の各記事等により、原告の主張する事実が摘示されているとはいえない。
 また、ある特定の者がPTSDであると記載すること自体は、摘示された人物の社会的評価を低下させるものではない。すなわち、PTSDは、人間であれば誰でもり患する可能性のある疾病名である。例えば、犯罪に巻き込まれた被害者がPTSDと診断されたことで、名誉を著しく傷つけられることはない。
ウ 被告B番号3の各記事等
 被告B番号3の各記事等の閲覧者は、ある特定の者が、職業上の倫理違反となる行為を行ったと理解する。
 これは、一般的にはある特定の者の社会的評価を低下させるものであるが、ある人物の人格的利益を考慮した場合には社会的評価の低下にはならない。
エ 被告B番号4の各記事等
 被告Bは、被告Bブログ等において、「職場に言えないような仕事」、「AV関係」と明記したことはない。
 【B0119】の内容は、原告が、原告の実名をインターネット上で検索すると、アダルトサイトが並ぶようになったのは、被告Bがサジェスト汚染をしているからであると一方的に疑い、被告Bの当時の訴訟代理人であったEに架電し、サジェスト汚染をやめるようにと言い立てたので、被告Bは、「代理人事務所に脅迫電話をかけているようです。」と事実を報告するとともに、通常人であれば、被告Bがサジェスト汚染をしたとは信じず、別の原因によるものと考えるであろうと常識的な見解を述べたにすぎない。
 また、【B0159】についても、被告Bが薬漬け問題について記載する中で、サジェスト汚染の実態を調査した結果、「アダルトサイトが目立つのが気になりますが」と、原告自らが拡散している事実に触れ、原告がインターネット内外で様々な画策を続けるならば、その結果として、今回のようなサジェスト汚染に発展するやもしれず、それは原告のためにならないのではないかと疑問を呈する形で見解を記載したにすぎない。【B0173】及び【B0179】も同様である。
 したがって、被告B番号4の各記事等に、原告の主張する事実が摘示されているとはいえず、原告の社会的評価が低下することはない。
オ 被告B番号5の各記事等
 被告Bは、被告Bブログ等において、「誘導している」と断定した記事等を投稿したことはない。
 現在のスクールカウンセラー業務のうち、重要なものの一つに医療機関への紹介があること、医療機関において薬物治療が行われることは公知の事実であり、被告Bはこれを指摘したにすぎない。
 特に、【B0168】は、「誘導している」と断定しておらず、原告主張の摘示事実と一致していない。「誘導しないように」という表現も、被告Bが単に警告する内容である。
 したがって、被告B番号5の各記事等により、原告の主張する事実が摘示されているとはいえず、原告の社会的評価が低下することはない。
カ 被告B番号6の記事等
 被告B番号6の記事等は、原告が主張する、「原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによる」という事実を摘示しているとはいえない。
 被告Bは、上記記事等において、「「青信号だから渡った。」という考え方につながる」と記載しているにすぎない。そもそも、被告Bがある芸能人が交通事故で死亡したことについて記載した記事のコメント欄に、原告は、「父は青信号を歩いていただけだけどね。」と、記事と無関係なコメントをしてきたのであり、このような経緯に照らし、被告B番号6の記事等は名誉毀損になり得ない。
キ 被告B番号7の各記事等
 被告B7の各記事等の閲覧者は、原告が主張する「原告は、未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとした。」と理解するといえる。しかし、原告は、被告らの表現の自由の権利行使を阻害したいというのが本心であり、上記摘示事実によって原告の社会的評価が低下するとは考え難い。
ク 被告B番号8の各記事等
 被告B番号8の各記事等の中に、原告が主張する摘示事実の記載は存在しない。
 したがって、原告が主張する摘示事実は存在しないから、原告の社会的評価が低下するとは考え難い。
ケ 被告B番号9の各記事等
 被告B番号9の各記事等の中に、原告が主張する摘示事実の記載は存在しない。被告Bは、被告Bの見解を記載したにすぎない。
 また、被告B番号9の各記事等の閲覧者も、原告が主張するような読み方をすることはない。
(被告Cの主張)
 争う。被告Cは原告とは面識がなく、原告の名誉又は名誉感情を毀損する意図で被告C各記事等の投稿をしたわけではない。被告Cは、あくまで一般論として意見を述べたにすぎない。
(被告Dの主張)
 被告D各記事が、原告主張の事実「原告は、被告Bに対し、恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者である。」及び「原告は、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っている。」を摘示したものであることは、争わない。
2 争点2(違法性阻却事由の存否)について
(被告Bの主張)
(1)被告B番号1の各記事等について
 原告が、被告Bに対し、SNSのメッセージを連続投稿したり、被告Bの関係者への脅迫行為を行ったりしており、原告がストーカーであることは真実である。
 そして、原告がストーカーであることは、学会でも発表した学術的内容であり、公共性及び公益性を有している。
 したがって、被告B番号1の各記事等の投稿については、違法性が阻却される。
(2)被告B番号2の各記事等について
 原告がPTSDであることは客観性のある真実である。また、インターネット上のどのような人物に対してもその人がPTSDであるとの論評を行ってはならないとすれば、臨床心理学的研究も精神科領域における診断もできないことになるから、真実と認める相当の理由があるし、公共性及び公益性のある表現であるから、被告B番号2の各記事等については、違法性が阻却される。
(3)被告B番号3の各記事等について
 原告は、別件訴訟において、原告の支援によって、重度の精神障害を有していた「I」が大学を目指すようになったとの事実無根の陳述書を提出した。また、平成28年12月20日の本人尋問において、必要がないにもかかわらず、「I」の実名を明かした。そして、「I」自身が、自分は「成功例などではない」とわざわざ投稿している。
 このような事実に照らすと、被告Bの摘示した事実が真実であることは明らかであるし、公共性及び公益性のある表現であるから、被告B番号3の各記事等の投稿については、違法性が阻却される。
(4)被告B番号7の各記事等について
 原告が、未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとしたことは事実である。原告は、弁護士への殺害予告をしたとして、被告Cを告発しているところ、この投稿をしたのは被告Cの子であった。
 また、被告Bの投稿には公共性及び公益性があるから、被告B番号7の各記事等の投稿については、違法性が阻却される。
(5)被告B番号8の各記事等について
 別件訴訟の判決文では、原告が「自身の線量計写真の転載は著作権侵害であり、著作権侵害は犯罪であると述べている部分は、単に被告の見解を述べているに過ぎず」との判断が繰り返しなされているから、原告主張の摘示事実は真実であり、公共性及び公益性のある表現であるから、被告B番号8の各記事等の投稿については、違法性が阻却される。
(被告Dの主張)
 被告D各記事は、原告がブログのメッセージ機能で「訴えてやるから覚悟しとけよ」などとコメントしてきたので、精神科医の知識を前提に、一般論として正しいと考えた内容を投稿したものであり、原告のメッセージに対して反論したにすぎないのであるから、正当な行為であって、上記各記事の投稿については、違法性が阻却される。
(原告の主張)
(1)被告Bの主張に対する反論
ア 被告B番号1の各記事等について
 被告Bが摘示した事実は、いずれも存在しないか、事実を極度に歪曲した上で、被告Bの主観的意見を述べるものにすぎない。このように、被告Bが摘示した事実は真実ではないことが明らかで、仮に、被告B番号1の各記事等における表現が意見又は論評であると評価されたとしても、人身攻撃に及ぶ表現であるから、同各記事等の投稿について、違法性は阻却されない。
イ 被告B番号2の各記事等について
 仮に、被告B番号2の各記事等における表現が意見又は論評であると評価されたとしても、それ自体極めて強い人格非難であり、相手方に対し社会的に回復不能な打撃を与えかねない人身攻撃であり、同各記事等の投稿について、違法性は阻却されない。
ウ 被告B番号3の各記事等について
 原告と「I」は、被告らの存在を知る前からインターネット上で交流をしていた。「I」は、原告に対し、自身の苦しみや葛藤を打ち明けることがあり、また、今後自身がどのように歩むべきかについて原告の意見を求めることもあった。
 特に、精神疾患の発症により中途退学せざるを得なかった大学への復学は同人の強い願いであり、原告は同人がこの検討を行う作業を手伝った。原告が別件訴訟において陳述書を提出した当時は、「I」は、まさに上記の願いを目標として表明している時期であったが、同訴訟において原告の本人尋問が行われた平成28年12月に、家族から強い反対を受け、大学への復学を断念した。また、原告は、「I」の了解を得て、同人の実名を公表した。なお、被告Bが引用する「I」による投稿(乙イ29)は、同人が通うデイケアの担当職員から提案された内容に対する同人の感想を述べたものである。
 したがって、被告Bの主張は事実に反しており、被告B番号3の各記事等の投稿について、違法性は阻却されない。
エ 被告B番号7の各記事等について
 被告Bの主張は否認し、争う。
オ 被告B番号8の各記事等について
 被告Bの主張は否認し、争う。
(2)被告Dの主張に対する反論
 被告Dの主張は否認し、争う。
3 争点3(名誉感情侵害の成否)について
(原告の主張)
(1)名誉毀損の予備的主張
 前記1(原告の主張)のとおり、被告ら各記事等は、いずれも、原告に対する名誉毀損となるが、仮に名誉毀損にならないとしても、侮辱行為に当たり、原告の名誉感情を侵害するものである。
(2)その余の侮辱行為
 被告B及び被告Cは、原告を、「ゴキブリ」、「黒い虫」、「cockroach」などと表現し、その合計回数は、被告Bにつき合計53回、被告Cにつき合計27回に及ぶ。
 また、被告B及び被告Cは、原告を「ゴロツキ」、「ヤクザ」、「みかじめ料」をとっている、などと表現し、その合計回数は、被告Bにつき合計72回、被告Cにつき合計11回に及ぶ。
 これらの表現は、その内容、回数に照らして、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為に当たり、原告の名誉感情を侵害する。
(被告らの主張)
 争う。
4 争点4(原告の亡父に対する敬愛追慕の情の侵害の有無及び不法行為の成否)について
(原告の主張)
 被告Bは、被告B番号6の記事等により、被告Cは、被告C番号4の各記事等により、「原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによる。」との事実を摘示した。このような表現は、原告の亡父に対する敬愛追慕の情を侵害するものであり、原告に対する不法行為が成立する。
(被告らの主張)
 争う。
5 争点5(被告らによる共同不法行為の成否)について
(原告の主張)
 民法719条1項は、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。」と規定する。
 複数の不法行為者が連帯して賠償責任を負う「共同の」不法行為とは、共謀がある場合等相互に共通の意思・了解・認識がある場合(主観的関連共同性)及び行為が客観的に関連することにより共同して損害を生じさせる場合(客観的関連共同性)である。
 前記1(原告の主張)のとおり、被告C各記事等及び被告D各記事は、その全てにおいて、被告B各記事等を土台とし、相互に反応し合っては、これにコメントを加え、あるいは引用する等して、同一の趣旨の表現行為を相互に行っている。被告らは、精神医療や心理臨床に関し、全てはPTSDであるとする同一の理念を持ち、インターネット上で同一の主張を行っている。その社会的影響力は、精神科医である被告Dにおいて特に高い。被告Bの表現行為が被告Dの承認を得たものであることから、一般読者は、原告に対する膨大な量の名誉・信用毀損表現を、信用性の高い正しい情報であると受け止める。さらに、一人が行った表現行為が、間を置かず他の二人に取り上げられることで、各ブログ等の固定読者も他のブログ等を頻繁に行き来し閲覧の幅を広げることとなる。
 このように、原告の社会的評価の低下が、被告らによる共通の意思・了解・認識の下、いわば球技の「パス回し」のように相互に連動し、加速しながら拡大する構造をとるのであり、その主観的・客観的共同性は明らかである。
 よって、被告らによる表現行為は、各自の表現について不法行為(民法709条)が成立し、同時にその主観的・客観的共同性から、共同不法行為(民法719条1項)を構成する。
(被告らの主張)
 争う。
6 争点6(本件原画像の著作物性及び著作者)について
(原告の主張)
 本件原画像は、原告が、南相馬市の伊勢大御神上大神宮を訪れた際の様子を動画(以下「本件動画」という。)に撮影し、本件動画の80秒付近の静止画像をスクリーンショットで撮影したものである。
 すなわち、本件動画の80秒付近の画像は、伊勢大御神上大神宮に設置された線量計において、原告が持参したポケット線量計の値より低い値が表示されていることを端的に映像にするため、設置されている線量計が画面上部に、ポケット線量計が画面下部に、それぞれ映るように、知人にポケット線量計をカメラの前に差し出してもらい、原告が撮影したものである。
 そして、本件原画像は、本件動画の80秒付近の画像を写真として記録に残すため、上記動画をiPhoneで再生した状態でスクリーンショットし、設置された線量計の数値とポケット線量計の数値の乖離が一見して明瞭に理解できるようにするため、背景やポケット線量計を差し出している手などの部分をトリミングして作成したものである。
 したがって、本件原画像が原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって写真の著作物として著作物性が認められること及び原告が本件原画像の著作者であることは明らかである。
(被告Bの主張)
 本件原画像に著作物性が認められるとの主張は争う。本件原画像のような写真はインターネット上にあふれており、原告の創造というよりは記録に近いものである。
 また、原告は、原告が本件原画像の著作者であると主張するが、本件原画像の真の撮影者は、F(以下「F」という。)であり、原告ではない。
 原告は、Fのはるか後方から本件動画を撮影していたのであって、このような位置関係に照らせば、本件原画像に対応する本件動画を撮影することは不可能な状況にあった。本件動画には、少なくともFを含む数人の後ろ姿が映っていたものと考えられるが、原告がその箇所を削除し、代わりにFが撮影した本件原画像を本件動画の中に挿入したものと推測できる。
 したがって、原告が本件原画像の著作者であるとは認められない。
7 争点7(名誉声望保持権の侵害の成否等)について
(原告の主張)
 被告Bは、本件原画像の内容自体の批評のために本件原画像を利用したのではなく、著作物の芸術性やその内容とは何ら関連性のない様々な犯罪や犯罪者をテーマとした記事の中で、「PTSD解離性悪行」、「PTSD解離」、「PTSD解離人格」、「多重人格」、「ストーカー」等の言葉を利用しながら、本件複製画像を掲載したものであり、意図的に著作者である原告の名誉・声望を害するように本件原画像を利用しているといえ、本件原画像に係る原告の名誉声望保持権を侵害するといえる。
 仮に、被告Bによる本件原画像の利用が、本件原画像に係る原告の名誉声望保持権を侵害するといえなくても、原告の名誉権を侵害するものといえる。
(被告Bの主張)
 争う。
8 争点8(引用の抗弁の成否)について
(被告Bの主張)
 被告Bによる本件原画像の利用は、著作権法32条に規定される引用の要件を満たしており、違法性が阻却される。
(原告の主張)
 争う。
9 争点9(プライバシー権侵害の成否)について
(原告の主張)
 被告Bは、【B0019】ないし【B0023】、【B0962】、【B0963】、【B0997】、【B1003】、【B1084】及び【B1123】において、一人暮らしの女性宅への住居侵入強姦・強制わいせつをテーマとした記事の中に、原告の自宅の室内写真(以下「本件自宅写真」という。)を掲載した。
 本件自宅写真は、原告の自宅の管理会社が当時インターネット上に掲載していた、原告が入居する前に撮影された原告の自宅の台所の写真であり、同写真の画像検索により、原告の自宅の住所が特定できる状態に置かれることになった。
 そして、被告Bは、平成28年9月以降、これらの記事の中に原告のハンドルネーム「a①」を記載し、「これはa①の家の写真ではありません。」(【B0962】)、「これはa①の自宅写真でもないのに被害妄想」(【B0997】)、「自分の家の台所がどんな構造だったか忘れて被害妄想の世界に迷い込んでしまったa①」(【B1003】)などと、故意に原告の自宅の写真であることを推知させる記載をしている。
 したがって、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件自宅写真は原告の自宅の写真であると理解できる。
 そして、このような表現は、原告が公開されることによって心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められる原告の私生活上の事実を、害悪の告知を目的として行ったものであるといえる。
 以上によれば、上記各記事等により、原告の自宅住居の室内の様子及びその住所が推知し得る状態に置かれたのであり、被告Bによる上記各記事等の投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものである。
(被告Bの主張)
 争う。
 被告Bは、原告の自宅の写真を掲載したことはない。
10 争点10(原告と密接な関係を有する者に対するつきまといによる不法行為の成否)について
(原告の主張)
 被告Bは、原告だけではなく、原告の所属先であるGや原告の勤務する高校に関する表現行為を行い、誹謗中傷を行った。特にGを示す「G’」という語を用いながらの誹謗中傷行為は100回を超える。
 また、原告の親族であるHに対し、同人のツイッターアカウントに100回を超えるコメント、リツイート及び「いいね」をするなどして、同人を不安に陥れている。
 このような被告Bの行為は、ストーカー行為等の規制等に関する法律において禁止されている「つきまとい等」(同法2条)に該当し、原告に対する不法行為が成立する。
(被告Bの主張)
 争う。
 被告Bは、Gに対して誹謗中傷を行ったことはない。また、心理療法家である被告Bが、日本初のカウンセリング会社であったG等について論評する自由を原告に制限されることもない。これは、多くの者から親しまれているインフルエンサーであるHに対するコメント等についても同様であり、被告BだけがHに対して接近してはならない理由はない。
11 争点11(損害の発生の有無及び額)について
(1)被告らによる原告に対する名誉毀損又は侮辱に係る損害
(原告の主張)
 原告に対する被告らによる名誉毀損及び侮辱は、9年間にわたり、1日と絶やさずに行われてきたものであり、原告は、これらの名誉毀損及び侮辱により、精神的苦痛を被ったのみならず、原告が時間をかけて培ってきた職業人としての社会的信用が破壊される危機に見舞われた。
 このような事情を考慮すると、原告が被った損害額は次の金額を下らない。なお、被告Bは、被告B各記事等の大部分を、被告Bブログ1及び同2のいずれにも投稿していることから、原告は、被告Bによる表現の回数を、記事の件数ではなく、同記事が投稿された媒体の数でカウントしている(例えば、記事が1つであっても、複数の媒体に掲載されれば複数回とカウントしている。)。
ア 名誉毀損又は侮辱(名誉毀損の予備的主張)による精神的損害
 原告の被った精神的苦痛を慰謝料に換算すると、投稿1回当たり3万円と評価すべきであり、被告Bが合計3069回、被告Cが504回、被告Dが12回の記事又はコメントを掲載していることからすると、その合計額は1億0755万円となる。
イ 侮辱による精神的損害
 原告の名誉感情侵害行為については、その精神的苦痛を慰謝料に換算すると、投稿1回当たり1万円と評価すべきであり、被告Bが合計125回、被告Cが合計38回の記事又はコメントを掲載しているから、原告が被った損害額は合計163万円となる。
ウ 名誉毀損及び侮辱による経済的損害
 原告の名誉毀損及び侮辱行為により、原告は、自身の職場である複数の学校長や、雇用主である都道府県の教育委員会又は心理学系諸学会から幾度となく説明を求められ、自ら説明に出向いた。原告が所属するGから任されていた専門学校の仕事の一つは辞めざるを得なくなり、Gが独自に認定しているカウンセラーとしての資格も、はく奪されることとなった。
 原告は、被告らの名誉毀損又は侮辱行為により、年間280時間分の業務を妨害され、被告らの行為は少なくとも3年間継続しているから、原告が被った損害額は、原告の時給5000円を前提とすると、合計420万円(5000円×280時間×3=420万円)となる。
エ 小括
 以上の損害額を合計すると、1億1338万円となるが、本件においては、その20分の1に相当する566万9000円のみを一部として請求する。
(被告らの主張)
 争う。
(2)被告Bによるプライバシー権侵害及びつきまとい等に係る損害
(原告の主張)
ア 本件自宅写真の掲載によるプライバシー権侵害による損害
 被告Bブログ等における本件自宅写真の掲載は、合計22回行われているところ、同写真の掲載により原告が被った精神的苦痛を慰謝料に換算すると、1回当たり10万円とするのが相当であり、原告の損害額は合計220万円となる。
イ 原告と密接な関係を有する者に対するつきまとい等による損害
 原告と密接な関係を有する者に対するつきまとい等は、合計836回行われているところ、このようなつきまとい等により原告が被った精神的苦痛を慰謝料に換算すると、1回当たり1480円とするのが相当であり、原告の損害額は合計123万7280円となる。
 そして、これらの損害額を合計すると、343万7280円となるが、本件においては、その6分の1に相当する57万2880円のみを一部として請求する。
(被告Bの主張)
 争う。
(3)被告Bによる名誉声望保持権侵害に係る損害
(原告の主張)
 被告Bによる被告Bブログ等における本件複製画像の掲載は、合計39回行われているところ、本件複製画像の掲載により原告が被った精神的苦痛を慰謝料に換算すると、1回当たり10万円とするのが相当であり、原告の損害額は合計390万円となるが、本件においては、その6分の1に相当する65万円のみを一部として請求する。
(被告Bの主張)
 争う。
12 争点12(差止めの必要性の有無)について
(原告の主張)
 原告は、被告Bに対し、幾度となく本件複製画像の掲載を止めるよう求めてきたが、被告Bはこれを受け入れなかった。
 そして、被告Bは、原告が被告Bに対し、原告の著作権を侵害したと主張していることが、名誉毀損であるとして別件訴訟を提起したものであり、同訴訟において敗訴したにもかかわらず、本件訴訟においても、原告が本件原画像の著作権を有しておらず、被告Bは原告の著作権を侵害していないとの主張を維持している。
 本件原画像は、被告Bブログ1のブログ運営会社により強制的に削除されているが、今後もこの措置が解除されることはないと保障されているものではないし、被告Bの訴訟追行の態度からして、被告Bが再度本件原画像を公衆送信する危険性がある。
 したがって、被告Bに対し、本件原画像の公衆送信を差し止める必要性がある。
(被告Bの主張)
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(名誉毀損の成否)について
(1)名誉毀損の判断枠組み
 名誉毀損とは、人の品行、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価を低下させる行為であるところ、ある表現内容が名誉毀損に該当するというためには、表現行為が公然とされ、表現内容が不特定又は多数人に認識されるか、認識可能な状態に置かれる必要があると解される。
 そして、ある表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものであるところ(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)、当該表現が特定の人物の実名を用いてされていなくても、当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、当該表現の対象者を特定できれば足りると解するのが相当である。
 また、事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。一方、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁、最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁参照)。そして、仮に上記意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、事実を摘示しての名誉毀損における場合と対比すると、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。
 以上を前提に、本件における名誉毀損の成否について判断する。
(2)同定可能性について
 前提事実(2)ア及び(4)アのとおり、被告Bは、被告B各記事等の大部分において、原告のハンドルネームである「a②」、「a③」、「a④」、「a①」又は「a⑥」のハンドルネームを使用する人物についての事実の摘示又は論評をしている。
 そして、原告が原告ブログ1を開設していることや原告アカウントを管理していることを知っている者であれば、「a②」、「a③」、「a④」、「a①」又は「a⑥」のハンドルネームを有する者が原告であると特定することは可能であるといえ、被告Bブログ等の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、被告B各記事等は、いずれも原告についての事実の摘示又は論評であると理解されるものといえる。
 また、被告B各記事等の中には、上記ハンドルネームの記載がないものも含まれているが、前提事実(4)アのとおり、被告Bは、被告Bブログ等において、平成26年3月頃から令和2年6月20日までの長期間にわたり、上記ハンドルネームを併記して、原告が、被告Bに対し、原告の著作権を侵害したなどと虚偽の事実を述べて、つきまといを行っていること、被告Bが、原告に対し、同つきまとい行為はストーカー行為に当たるとして、民事訴訟を提起したこと、同訴訟の経過等を記載した上、これらに関連する事実の摘示や、同事実に基づいて、原告は「ネットストーカー」、「サイバーストーカー」、「PTSD」等である旨の論評を繰り返しており、その記事等の数は膨大な数に及んでいる。
 そうすると、遅くとも令和2年6月20日までには、被告Bブログ等の読者であれば、被告Bブログ等の他の記事又はコメント等から、原告のハンドルネームの記載がなくても、被告B各記事等が原告についての事実の摘示又は論評を行っていると認識することが可能な状態となっていたと考えるのが相当である。そして、ブログ等の読者が、一般に、現在投稿された記事等のみならず、過去に投稿された記事等もさかのぼって閲読する傾向にあること(弁論の全趣旨)に照らすと、上記同定可能性が生じた時期よりも過去にされた投稿も含めて、被告B各記事等全てにつき、同定可能性が生じたと考えるのが相当である。
 これに対し、被告Bは、原告の実名を公開したのは被告Bではなく原告であるなどと主張するが、被告Bが、原告の実名を記載せずに原告についての事実の摘示又は論評を行っていたとしても、上記説示のとおり、一定の前提知識を有する者は、被告B各記事等が原告についての事実の摘示又は論評であると認識することが可能なのであるから、本件において、実名を公表したのが原告であるか、被告Bであるかは上記結論を左右しない。したがって、被告Bの上記主張は採用することができない。
(3)被告B各記事等の意味内容が原告の社会的評価を低下させるものであるか
ア 被告B番号1の各記事等について
 被告B番号1の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bに対し、本件原画像を使用したことについて、真実は、著作権を侵害するものとはならないにもかかわらず、著作権を侵害する行為に当たり、犯罪であるなどとインターネット上で頻繁にコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が「ストーカー」であるとの論評をするものであると認められる(なお、被告Bは、被告B番号1の各記事等が、「a②」、「a③」、「a④」、「a①」又は「a⑥」のハンドルネームを有する者が被告Bに対してストーカーをしている者であるとの表現を内容とすることについて争っていないから、前記(2)で説示したことを前提とすると、これらの各記事等について、原告が被告Bに対してストーカーをしているとの表現を内容とするものであるか否かの個別具体的な検討を要しない。)。
 そして、このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が、いいがかりをつけて特定の他者につきまとい、迷惑をかける者であるとの印象を与えるものといえるから、これらの表現の意味内容は、いずれも、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
イ 被告B番号2の各記事等について(ただし、原告は、同記事等のうち、【B0391】の投稿の、「PTSD世代間の負の連鎖」という表現において、原告がPTSDにり患しているとの事実が摘示されているとの主張を、被告B番号6の記事等としても重複して主張しているから、【B0391】の投稿につき、不法行為が成立するか否かについては、被告B番号6の記事等に関する検討の箇所(後記カ)で論じる。)
 被告B番号2の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bに対し、本件原画像を利用したことについて、真実は、著作権を侵害するものとはならないにもかかわらず、著作権を侵害する行為に当たり、犯罪であるなどとインターネット上で頻繫にコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの論評をするものであると認められる(なお、被告Bは、被告B番号2の各記事等が、「a②」、「a③」、「a④」、「a①」又は「a⑥」のハンドルネームを有する者がPTSDであるとの表現を内容とするものであることについて争っていないから、前記(2)で説示したことを前提とすると、これらの各記事等について、原告がPTSDであるとの表現を内容とするものであるか否かの個別具体的な検討を要しない。)。
 そして、このような表現は、原告が重い精神疾患を抱える者であるとの印象を与えるものといえるから、これらの表現の意味内容は、いずれも、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
ウ 被告B番号3の各記事等について
 被告B番号3の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bとの間で起こった裁判において、「I」とのハンドルネームを用いてブログを開設している人物の承諾なく、同人の実名を公開し、同人が原告の支援のおかげで大学への進学を目指すようになったなどと虚偽の事実を述べたとの事実を摘示するものであると認められる(なお、被告Bは、被告B番号3の各記事等が、上記摘示事実を前提として、「a②」、「a③」、「a④」、「a①」又は「a⑥」のハンドルネームを有する者が職業倫理に違反する行為をしたとの表現を内容とするものであることについて争っておらず、「職業倫理に違反する行為」とは、具体的には、被告Bとの間で起こった裁判において、「I」とのハンドルネームを用いてブログを開設している人物の承諾なく、同人の実名を公開し、同人が原告の支援のおかげで大学への進学を目指すようになったなどと虚偽の事実を述べたことを主張しているものと解されるから、前記(2)で説示したことを前提とすると、これらの各記事等について、上記表現を内容とするものかどうかの個別具体的な検討を要しない。)。
 そして、このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が心理援助職に就いているにもかかわらず、精神疾患を患う者に対しつきまとい行為を行い、その実名を本人の承諾もなく公表したり、同人の症例があたかも自身による心理援助の成功事例であるかのように虚偽の報告を行ったりするような、心理援助職としての自身の社会的評価を高めるためであれば、何らの躊躇もなく虚偽を述べて他者を利用する人物であるとの印象を与えるものといえるから、当該表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
エ 被告B番号4の各記事等について
 被告Bは、「PTSD否認ネトストカウンセラーa①の副業「お父さん、眠れてる??」の今」、「本業はカウンセラーと聞いているのですがResearchmapも出てこずいろんなものを売っておられるみたいです。」、「アダルトサイトが目立つのが気になりますが(スクールカウンセラーなのに大丈夫でしょうか(略))」(【B0159】)、「妙なアルバイトをしているのを逆SEOで隠そうとしたそうで((略))へーんなのばかり並んでしまって慌ててるそうです」(【B0173】)、「スクールカウンセラーなのに(略)妙なバイトをしてたのを隠そうとして(略)逆SEOかけたのが裏目に出て全てがバレ大恥をかいていますが自業自得でしょう。(略)スクールカウンセラーとして今一番やっちゃダメなバイトです。」(【B0179】)などと投稿した。
 これらの投稿は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が心理援助職としてスクールカウンセリングに携わっていながら、実生活では、アダルト関係の副業等、職場には言えないような仕事を隠れて行う者であるとの事実を暗に摘示するものと認められる。
 そして、このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が心理援助職に就いているにもかかわらず、職業倫理に違反するような副業をしているとの印象を与えるものであるから、当該表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
 他方で、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、【A0011】及び【B0119】の投稿については、原告の主張する事実を摘示しているものと認めるに足りず、同投稿に関する原告の主張は理由がない。
オ 被告B番号5の各記事等について
 原告は、被告B番号5の各記事等が、いずれも、原告が実生活において子供達に薬物の過剰処方を誘導しているとの事実を摘示するものであると主張する。
 しかし、被告B番号5の各記事等の内容を検討しても、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が主張する事実の摘示がされているとは認められない。
 よって、この点に関する原告の主張は理由がない。
カ 被告B番号6の記事等について
 原告は、被告B番号6の記事等が、原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもとで進んだことによるものであるとの事実を摘示するものであると主張する。
 被告B番号6の記事等は、被告C番号4の各記事等に関連して投稿されたものと認められるから、以下、上記事実の摘示がされているといえるかを、被告C番号4の各記事等の内容と併せて検討する。
 被告Cは、「「交通事故の被害者家族=被害者型PTSDが加害者型PTSDにスイッチしてストーカーになった」点がa①さまと同じですね。」(【B0356】)と投稿して、原告が交通事故の被害者家族であることをほのめかし、さらに、死傷者が発生した別の交通事故に関連させ、「a①さまの父上が落命されたのも「青信号」だったのに…「青信号は進め」(←PTSDによる躁的否認)ではなく、「危険がないかどうか、よく確認してから渡っても良い」というのが交通常識です。」(【B0390】)と投稿している。このような被告C番号4の各記事等の表現に照らすと、被告Cは、上記の各投稿により、原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は危険がないかどうか確認せずに進んでよいという思い込みのもとで進んだことによるものであるとの事実を摘示したと認めるのが相当である。
 そして、被告Bは、被告Cの上記各投稿を受けて、「「Researchmapに名前を公表したのだから、アメーバブログにもその名前を書いてもよいのだ」との主張は、「青信号だから渡った」につながります。心理職としては自殺行為で、その意味を理解できないのは本人a①だけです。PTSD世代間の負の連鎖と言ってよいでしょう。」(【B0391】)と投稿し、被告Cは、これを受けて、「「Researchmapに名前を公表したのだから、アメーバブログにもその名前を書いても良いのだ」との主張は、「青信号だから渡った」につながる「俺ルール((C)ニキ・リンコさん)」つまりPTSD症状ですね。」(【B0393】)と投稿している。これらに照らすと、被告B及び被告Cは、上記の各投稿により、原告の認知の在り方がPTSDの症状であり、原告のPTSDや認知の在り方は父から受け継いだものである旨の論評をしたと認められる。
 これらの一連の投稿に係る表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによるものであるとの事実を摘示し、これがPTSDの症状であり、原告にも受け継がれている旨の論評をしたものと認めるのが相当である。
 そして、同記事等の投稿は、前記イで説示したとおり、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
キ 被告B番号7の各記事等について
 被告Bは、「渋谷で爆弾騒動の英国籍男と未成年を爆破予告犯にでっち上げようとするスクールカウンセラーa①」との題名で記事を投稿し(【B1023】)、上記記事の題名が閲覧できるように同記事を引用して別の記事を投稿し(【B1026】)、さらに、「サイバーストーカーa①は爆破予告などしていない未成年に対し爆破予告をしたかのように話を捻じ曲げて貶めるなど(スクールカウンセラーのすることではありません)」との記事を投稿している(【B1068】)。
 上記各記事は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとしたとの事実を摘示するものであると認められる。
 そして、このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が罪のない未成年者を陥れようとする冷酷な人物であるとの印象を与えるものといえるから、当該表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
 他方で、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、【B1022】の記事については、原告の主張する事実を摘示しているものと認められず、同記事に関する原告の主張は理由がない。
ク 被告B番号8の各記事等について
 被告Bは、「「著作権侵害」「ドロボー」と勘違いしてネット等あちこちに言いふらしただけなので違法行為にはあたらないという判決を貰った」(【B1408】)、「勘違いして著作権侵害と言いまわったと書いてある判決等裁判記録も然りです。」(【B1494】)、「裁判官も勘違いと判じてくれました」(【B1714】)、「本人を見ている地裁の裁判官は、性格を重々知っているので、「勘違い」行動しただけなので、法的には裁けないと書きました。」(【B1715】)、「私も信じられない判決(略)もらいました。勘違いしてネットに嘘書いても法的には無問題とストーカーを擁護」(【B1754】)、「著作権侵害等勘違いして書き込んでいるだけとの判決」(【B2122】)と投稿をしている。
 上記各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、被告Bが著作権侵害を行っているとの原告の主張について、裁判所が原告の勘違いであると判示したとの事実を摘示するものであると認められる。
 そして、このような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が、勘違いで他人に著作権侵害による法的責任を追及するような者であるという印象を与えるといえるから、当該表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
 他方で、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、その余の【B1582】、【B1711】、【B1726】、【B1727】、【B1759】、【B1762】、【B1765】、【B1784】、【B1788】、【B1790】、【B1815】、【B1817】及び【B1824】の各記事等において、上記の原告主張に係る事実摘示がされているとは認めるに足りず、これらの記事等に関する原告の主張は理由がない。
ケ 被告B番号9の各記事等について
 被告Bは、「私も、最初の裁判の和解勧告のなかで、a①がストーカー行為をやめる代わりに、私の方でも、こういうa①の他者への加害行為を世に問うこと(略)も含め、a①の行うすべてのサイバーストーカー行為に沈黙するという条件がつけられました。」(【B1471】)との記事等を投稿した。
 上記記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、被告Bは、原告が、裁判所は、被告Bに対する原告のストーカー行為があったことを認め、これを前提とした和解勧試をしたとの事実を摘示したものといえる。
 そして、このような表現内容は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が真実ストーカー行為を行っていたとの印象を与えるといえ、当該表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるとる。
 他方で、その余の【B1613】、【B1614】及び【B1628】の各記事等に原告主張の事実摘示がされているとは認められず、これらの投稿に関する原告の主張は理由がない。
(4)被告C各記事等の意味内容が原告の社会的評価を低下させるものであるか
ア 被告C番号1の各記事等について
 被告C番号1の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bに対し、本件原画像を利用したことについて、真実は、著作権侵害とはならないにもかかわらず、著作権侵害であり、犯罪であるなどとインターネット上で頻繫にコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が「ストーカー」であるとの論評をするものであると認められ、前記(3)アにおいて説示したとおり、このような表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
イ 被告C番号2の各記事等について(ただし、原告は、同記事等のうち、【B0356】、【B0390】及び【B0393】の各投稿の、「PTSD負の連鎖」等という表現において、原告がPTSDにり患しているとの事実が摘示されている旨の主張を、被告C番号4の記事等としても重複して主張しているから、【B0356】、【0390】及び【0393】の各投稿につき、不法行為が成立するか否かについては、被告C番号4の記事等に関する検討の箇所(後記エ)で論じる。)
 被告C番号2の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bに対し、本件原画像を使用したことについて、真実は、著作権侵害とはならないにもかかわらず、著作権侵害であり、犯罪であるなどとインターネット上でしつこくコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの論評をするものであると認められ、前記(3)イにおいて説示したとおり、このような表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
ウ 被告C番号3の各記事等について
 被告C番号3の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも、原告が、被告Bとの間で起こった裁判において、「I」とのハンドルネームを用いてブログを開設している人物の承諾なく、同人の実名を公開し、同人が原告の支援のおかげで大学への進学を目指すようになったなどと虚偽の事実を述べたとの事実を摘示するものであると認められ、前記(3)ウにおいて説示したとおり、このような表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
エ 被告C番号4の各記事等について
 前記(3)カにおいて説示したとおり、被告Cと被告Bの一連の投稿は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告の主張するとおり、少なくとも、原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによるものであるとの事実を摘示し、これがPTSDの症状であり、原告にも受け継がれている旨の論評をしたものと認められ、このような表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
オ 被告C番号5の各記事等について
 被告Cは、「私がa①さまと関わったから面倒に巻き込まれたのだというのです。息子が言いがかりをつけられて隠れ虐待と心理操作を受けたことも「なかったことにしよう」というわけですね。」(【B1533】)、「「abuse」(←不当な扱いを)された子どもが死なずに持ち堪えたからと言ってa①さまは「abuse」(←不当な扱いを)しなかった…ということにはならないのでした。」(【B1928】)と投稿している。
 一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、被告Cは、上記各記事等の投稿により、原告が子ども達に虐待を行っていた事実を摘示するものと認められ、このような表現内容は、原告が子ども達に虐待を行うような人物であるとの印象を与えるといえ、原告の社会的評価を低下させるといえる。
 他方で、その余の【B0376】、【B0888】、【B0941】、【B0960】、【B0964】、【B1060】、【B1130】、【B1654】及び【B1971】の投稿は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも原告が主張する事実を摘示するものとは認められないから、原告の主張は理由がない(なお、甲第4号証には、上記各記事等が原告の主張する事実を摘示する表現を含んでいるかのような記載があるが、原告は、本件訴訟において、被告らが別紙一覧表のとおりの記事等を投稿したと主張し、被告らの認否も別紙一覧表に基づいてされていることから、弁論主義の観点からは、別紙一覧表の記事等の内容に基づいて名誉毀損の有無等を判断するのが相当である。)。
カ 被告C番号6の各記事等について
 被告Cは、「「勘違い」であれば、業務妨害を実行して良い…という謎の判決が出されたわけです。」(【B1836】)、「b先生に対する業務妨害についても「勘違いだからお咎めなし」と変な判決を出す裁判官がいたり」(【B1846】)、「「業務妨害」を行なったa①さまに一番の被害を受けられた親子箱庭療法の専門家が民事訴訟を起こした場合でさえ、「勘違いだったので問題なし」という変な判決でした。」(【B1871】)と投稿した。
 上記各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、別件訴訟において、被告Bが原告の著作権を侵害しているとの原告の主張は、原告の勘違いであるとの理由により、原告の被告Bに対する業務妨害は成立しない旨が判示されたとの事実を摘示するものであると認められる。
 そして、前記(3)クにおいて説示したとおり、このような表現の意味内容は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
 他方で、【B1760】及び【B1980】の各記事等は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、いずれも原告が主張する事実を摘示するものとは認められないから、原告の主張は理由がない。
(5)被告D各記事について
 被告D各記事が、いずれも、原告が被告Bに対し恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者であるとの事実及び原告がPTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの事実を摘示するものであることについて、当事者間に争いはない。
 そして、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告が被告Bに対し恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者であるとの事実を摘示する表現の意味内容については、原告が他人に犯罪行為を行うような人物であるとの印象を与えるものといえるから、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
 また、同様に、原告がPTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの事実を摘示する表現の意味内容についても、前記(3)ア及び(3)イのとおり、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
(6)小括
 以上によれば、次のアないしウの各記事等の投稿には、違法性阻却事由がない限り、原告に対する故意による名誉毀損が成立する。
ア 被告B各記事等のうち、番号1ないし3の各記事等(ただし、番号2の各記事等の中に、番号6の記事等を含む。)、番号4の記事等のうち【B0159】、【B0173】及び【B0179】、番号7の各記事等のうち【B1023】、【B1026】及び【B1068】、番号8の各記事等のうち【B1408】、【B1494】、【B1714】、【B1715】、【B1754】及び【B2122】並びに番号9の記事等のうち【B1471】
イ 被告C各記事等のうち、番号1ないし3各記事等(ただし、番号2の各記事等の中に、番号4の各記事等を含む。)、番号5の各記事等のうち【B1533】及び【B1928】並びに番号6の各記事等のうち【B1836】、【B1846】及び【B1871】
ウ 被告D各記事全て
2 争点2(違法性阻却事由の存否)について
(1)被告B各記事等について
ア 被告B番号1の各記事等
 前記1(3)アのとおり、被告B番号1の各記事等は、原告が、被告Bに対し、本件原画像を使用したことについて、真実は、著作権侵害とはならないにもかかわらず、著作権侵害であり、犯罪であるなどとインターネット上で頻繫にコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が「ストーカー」であると論評する内容であると認められるから、前記1(1)で説示したとおり、被告B番号1の各記事等は、その表現内容が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、違法性を欠くというべきである。
 そこで検討すると、前提事実(3)のとおり、原告は、①被告Bによる被告Bブログ1の記事に関し、同ブログのコメント欄に、数回にわたり質問をしたこと、②被告Bが、被告Bブログ1に本件複製画像を掲載した後、強い論調で被告Bを批判し、本件複製画像を削除するよう繰り返し要求したこと、③第三者のブログ上で、被告Bの行為を強く非難する言動をしていることが認められる。
 そして、被告Bによる原告がストーカーであるとの論評は、上記事実を前提としたものと考えられるものの、原告から被告Bに最後にメッセージが送られた平成26年3月25日から、令和2年6月まで、繰り返し、合計951回にわたり投稿されていることからすると、もはや上記事実を前提とする論評の域を超え、原告に対する人身攻撃に及ぶ表現であるといわざるを得ないから、違法性が阻却されるとは認められない。
イ 被告B番号2の各記事等(ただし、被告B番号6の記事等を含む。)
 前記1(3)イのとおり、被告B番号2の各記事等及び被告B番号6の記事等は、原告が、被告Bに対し、本件原画像を使用したことについて、真実は、著作権侵害とはならないにもかかわらず、著作権侵害であり、犯罪であるなどとインターネット上でしつこくコメントしたこと、その他これに関連する原告の言動等の事実を基礎として、原告が、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの論評をしたものであると認められるから、前記アと同様に、事実を前提とする意見ないし論評による名誉毀損の違法性阻却事由の有無が問題となる。
 そこで検討すると、前提事実(3)のとおり、原告は、①被告Bが、被告Bブログに本件複製画像を掲載した後、強い論調で被告Bを批判し、本件複製画像を削除するよう繰り返し要求したこと、②第三者のブログ上で、被告Bの行為を強く非難する言動をしていることが認められる。
 そして、被告Bによる原告がPTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの論評は、上記事実を前提としたものと考えられるものの、被告B番号1の各記事等と同様、原告から被告Bに最後にメッセージが送られた平成26年3月25日から、令和2年6月まで、繰り返し、合計888回にわたり投稿されていることからすると、もはや上記事実を前提とする論評の域を超え、原告に対する人身攻撃に及ぶ表現であるといわざるを得ないから、違法性が阻却されるとは認められない。
ウ 被告B番号3の各記事等
 被告B番号3の各記事等は、いずれも、原告が、被告Bとの間で起こった裁判において、「I」とのハンドルネームを用いてブログを開設している人物の承諾なく、同人の実名を公開し、同人が原告の支援のおかげで大学への進学を目指すようになったなどと虚偽の事実を述べたとの事実を摘示するものであると認められる。
 確かに、証拠(甲11の3、11の6、47)によれば、原告は、別件訴訟において、「I」が重度の精神疾患を抱えていたが、原告の支援の結果大学復学を目指し始めたなどと述べた陳述書を提出したこと、同訴訟における原告の本人尋問において、「I」の実名を明らかにしたことが認められる。
 しかし、本件において、原告が、「I」の承諾なく同人の実名を明らかにしたことや、「I」が、原告の支援のおかげで大学への進学を目指すようになったことが虚偽の事実であることを認めるに足りる証拠はない。
 また、上記摘示事実は、公共性のある事実とは評価できないし、被告B番号3の各記事等は、その内容に照らし、原告を非難する目的でされたものと評価できるから、被告B番号3の各記事等を投稿した目的が、専ら公益を図ることにあったともいえない。
エ 被告B番号7の各記事等
 原告が未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとしたことを認めるに足りる証拠はなく、被告B番号7の記事等については、摘示された事実が真実であるとはいえないから、違法性が阻却されるとは認められない。
オ 被告B番号8の各記事等
 証拠(甲1)によれば、別件訴訟の第1審の判決文において、原告による前提事実(3)コの行為につき、「著作権侵害は被告の認識に過ぎないことが自明である」、原告による前提事実(3)ケの行為につき、原告が本件原画像の転載が著作権侵害であり、著作権侵害が犯罪であると述べている部分は、「単に被告の見解を述べているに過ぎず」とそれぞれ判示されていると認められる。
 しかし、上記判示部分と同部分の前後とを併せて読むと、同判決は、上記判示部分を、原告の行為に違法性がないことの理由の一つとして挙げているにすぎず、被告Bが原告の著作権を侵害しているとの原告の主張について、原告の勘違いであることを理由に、業務妨害は成立しない旨を判示していると解することはできない。
 よって、被告B番号8の記事等の投稿については、摘示された事実が真実であるとはいえないから、違法性が阻却されるとは認められない。
(2)被告D各記事について
 証拠(甲15の1)によれば、被告Dは、平成28年8月1日、「b先生にストーカー裁判を起こされてる被告が私に「五分でPTSDと診断されて、ここで治療しないと廃人・自殺すると暴言を吐かれた(略)。集団訴訟をする。」とネットでデマをまき散らしてますが、本当に裁判すべきものが裁判されない国。」(【B0928】)と投稿し、これを受けて、原告は、同月24日、被告Dに対し、被告Dブログのメッセージ機能を使い、被告Dが投稿した上記の記事内容が原告に対する名誉毀損及び侮辱に当たることを理由として、損害賠償訴訟を提起する予定である旨を伝えたことが認められる。
 しかし、上記のような経緯があったとしても、それによって、原告が被告Bに対し恋愛感情等を持って特定の者に付きまとう犯罪行為をしている者であるとか、原告がPTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているといった、原告の社会的評価を低下させる事実を摘示する必要性及び相当性が基礎付けられるものではなく、本件全証拠によっても、被告Dによる【B1221】の記事の投稿が正当行為に当たることを基礎付ける事情を認めることはできない。
 その他の被告D各記事についても、正当行為として違法性が阻却される事由があることを認めるに足りる証拠はない。
(3)小括
 以上のとおり、前記1(6)の被告ら各記事等による名誉毀損については、いずれも違法性が阻却されるとは認められない。
3 争点3(名誉感情侵害の成否)について
(1)名誉毀損の予備的主張
ア 被告B番号4の各記事等について
 前記1(3)エのとおり、被告B番号4の各記事等のうち、【A0011】及び【B0119】の投稿については、原告の主張する表現を内容とするものと認めるに足りないから、これによる侮辱が成立するとはいえないし、上記表現のほかに、被告B番号4の各記事のどの部分が侮辱に該当するかについての具体的な主張をしていないから、原告の主張は理由がないものといわざるを得ない(なお、【A0011】及び【B0119】原告を「ストーカー」等と表現している部分については、前記1(3)アのとおり名誉毀損が成立する。)
イ 被告B番号5の各記事等について
 前記1(3)オのとおり、被告B番号5の各記事等は、いずれも、原告が実生活において子供達に薬物の過剰処方を誘導しているとの内容を含むものと解釈することはできないから、これによる侮辱が成立するとはいえないし、原告は、上記表現のほかに、被告B番号5の各記事等のどの部分が侮辱に該当するかについての具体的な主張をしていないから、原告の主張は理由がないものといわざるを得ない(なお、被告B番号5の各記事等のうち、原告を「ストーカー」及び「PTSD」等と表現している部分については、前記(3)ア及び(3)イのとおり名誉毀損が成立する。)。
ウ 被告B番号7の各記事等について
 前記1(3)キのとおり、【B1022】の投稿は、原告が未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとしたとの表現を含むものとは認められないから、これにより原告に対する侮辱が成立するとはいえないし、原告は、上記表現のほかに、被告B番号7の各記事等のどの部分が侮辱に該当するかについての具体的な主張をしていないから、原告の主張は理由がないものといわざるを得ない。
エ 被告B番号8の各記事等について
 前記1(3)クのとおり、【B1582】、【B1711】、【B1726】、【B1727】、【B1759】、【B1762】、【B1765】、【B1784】、【B1788】、【B1790】、【B1815】、【B1817】及び【B1824】の各記事等の投稿が、別件訴訟において、被告Bが原告の著作権を侵害しているとの原告の主張は原告の勘違いである旨が判示されたとの表現を含んでいるものとはいえず、これにより原告に対する侮辱が成立するとはいえない。
 また、原告は、【B1726】、【B1762】、【B1824】の各記事等について、「G’ストーカー」、「G’学芸もどきネットストーカー」、「G’プロレス」、「「G’」蛮行!」という表現が侮辱表現に当たると主張する。しかし、「G’ストーカー」及び「G’学芸もどきネットストーカー」との表現については、仮に、原告はストーカーであるとの意味内容を有するものであったとしても、同表現には前記1(3)アのとおり、原告に対する名誉毀損が成立しているし、「G’プロレス」及び「「G’」蛮行!」という表現については、一般的に用いられているものではないため、その意味内容が明確であるとはいえず、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為を構成するとは認め難い。したがって、原告の上記主張は理由がない。
オ 被告B番号9の各記事等について
 前記1(3)ケのとおり、【B1613】、【B1614】及び【B1628】の各投稿は、裁判所が、被告Bに対する原告のストーカー行為があったことを認め、この事実を前提とした和解勧試をしたとの表現を含んでいるものとはいえず、これにより侮辱が成立するとはいえない。
 また、原告は、【B1614】及び【B1628】の各記事等について、「G’プロレス裁判」という表現が侮辱表現に当たると主張する。しかし、上記表現は、一般的に用いられているものではないため、その意味内容が明確であるとはいえず、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為を構成するとは認め難い。したがって、原告の上記主張は理由がないものといわざるを得ない。
カ 被告C番号5の各記事等について
 前記1(4)オのとおり、【B0376】、【B0888】、【B0941】、【B0960】、【B0964】、【B1060】、【B1130】、【B1654】及び【B1971】の各投稿は、原告が、子ども達に虐待を行っているという、これにより侮辱が成立するとはいえない。
 また、原告は、【B1654】の記事等について、「我が家では、2001年911をトリガーに大崩壊した西洋白人男性が西洋白人ヒエラルキーをバックに陰陽混乱状態から黄色いサルの虐待を展開して、a①さまがその横暴をサポートしました。」との表現が侮辱表現に当たると主張する。しかし、上記表現は、一般的に用いられているものではないため、その意味内容が明確であるとはいえず、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為を構成するとは認め難い。したがって、原告の上記主張は理由がないものといわざるを得ない。
キ 被告C番号6の各記事等について
 前記1(4)カのとおり、【B1760】及び【B1980】の各記事等は、別件訴訟において、被告Bが原告の著作権を侵害しているとの原告の主張は、原告の勘違いであるとの理由により、原告の被告Bに対する業務妨害は成立しない旨が判示されたという内容ではなく、これにより侮辱が成立するとはいえないし、原告は、上記表現のほかに、被告C番号6の各記事等のどの部分が侮辱に該当するかについての具体的な主張をしていないから、原告の主張は理由がないものといわざるを得ず、これにより侮辱が成立するとはいえない。
(2)その余の侮辱行為
 具体的事実を摘示して社会的評価を低下させるものではない表現については、これが社会通念上許容される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて人格的利益の侵害が認められると解するのが相当である。
 前提事実(4)ア及びイによれば、被告Bは、記事等数にして合計24件にわたり、原告又は原告の言動を、「ゴキブリ」、「ゴキブリ級」、「黒い虫」「cockroachtherapist」と揶揄した記事等を投稿し、被告Cは、記事等数にして合計17件にわたり、原告を「ゴキブリ」と揶揄した記事等を投稿したことが認められる。
 また、前提事実(4)ア及びイによれば、被告Bは、記事等数にして合計54件にわたり、原告又は原告の言動を「ゴロツキ」、「ヤクザ」、「準ヤさん」と揶揄した記事等を投稿しており、被告Cは、記事等数にして合計6件にわたり、原告又は原告の言動を「ゴロツキ」、「ヤクザ」、「ヤさん方式」と揶揄した記事等を投稿したことが認められる。
 これらの被告B及び被告Cによる各記事等の投稿は、その表現の内容が他人をひどく貶めるものであることや当該表現を含む記事等の投稿が多数回にわたり繰り返しされていることに照らして、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為であるといえる。
 他方、被告Bの【A0022】、【B0641】、【B0644】、【B1184】及び【B1944】の記事等並びに被告Cの【B0522】及び【B1793】の記事等が、原告主張の表現(「ゴキブリ」、「黒い虫」、「cockroach」「ゴロツキ」、「ヤクザ」、「みかじめ料」(をとっている))を含むものとは認められないから、これらの各記事等に係る原告の主張は理由がない(なお、甲第4号証には、上記各記事が「ゴロツキ」などの表現を含んでいることをうかがわせる記載があるが、原告は、本件訴訟において、被告らが別紙一覧表のとおりの記事等を投稿したと主張し、被告らの認否も別紙一覧表に基づいてされていることから、弁論主義の観点からは、別紙一覧表の記事等の内容に基づいて名誉毀損又は侮辱の有無等を判断するのが相当である。)。
(3)小括
 よって、被告Bによる前記(1)の各記事等の投稿については、名誉感情侵害の不法行為が成立しないものの、被告B及び被告Cによる前記(2)の各記事等の投稿のうち、被告Bの【A0022】、【B0641】、【B0644】、【B1184】及び【B1944】の記事等並びに被告Cの【B0522】及び【B1793】の記事等の投稿を除くものについては、いずれも故意による名誉感情侵害の不法行為を構成するというべきである。
4 争点4(原告の亡父に対する敬愛追慕の情の侵害及び不法行為の成否)について
 遺族が故人に対し有している敬愛追慕の情は、一種の人格的利益として保護に値するから、これを故人の社会的評価を低下させる言動によって違法に侵害 する行為は、不法行為を構成するものというべきである。
 そして、遺族の故人に対する敬愛追慕の情が、時の経過とともに軽減し、故人に関する事実も死の直後から時の経過とともに歴史的事実へと移行してゆくものであることなどに照らし、上記違法性の有無の判断は、当該故人の死亡時から名誉毀損行為時までに経過した時間の長短、摘示された事実が虚偽であるか否か、行為者が虚偽であることの確定的認識を有していたか否か、摘示された事実の内容、名誉毀損行為の目的、態様、必要性、当該故人の社会的地位及び遺族と当該故人との関係などを総合考慮し、当該故人の遺族の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるといえるか否かにより判断するのが相当である。
 前記1(3)カ及び1(4)エのとおり、被告B番号6の記事等及び被告C番号4の各記事等は、いずれも、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば、原告の主張するとおり、少なくとも、原告の父が交通事故に遭い死亡したのは、同人が青信号は確認せずに進んでよいという思い込みのもと進んだことによるものであるとの事実を摘示し、このような思い込みがPTSDの症状によるものであるとの論評をしたものと認められ、原告の父の社会的評価を低下させる表現内容であると認められる。
 他方で、証拠(甲11)によれば、原告の父が交通事故により亡くなってから数十年以上が経過していると認められ、原告の父の死亡時から名誉毀損行為時までに長期間が経過していること、本件全証拠によっても、上記摘示された事実が虚偽であるか、また、同事実について被告B及び被告Cが虚偽であることの確定的認識を有していたかは、いずれも明らかではないこと、被告B及び被告Cによる投稿は数回程度されたにすぎないことなどを考慮すると、被告B番号6の記事等及び被告C番号4の各記事等の各投稿による原告の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるとまでは認められないというべきである。
 よって、この点に係る原告の主張は理由がない。
5 争点5(被告らによる共同不法行為の成否)について
(1)民法719条の共同不法行為が成立するためには、共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加え、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えることを要する(最高裁昭和39年(オ)第902号同43年4月23日第三小法廷判決・民集22巻4号964頁参照)。
(2)本件において、被告らによる前記1(6)に記載の記事等の投稿(以下「本件名誉毀損投稿」という。)及び被告B及び被告Cによる前記3(2)の投稿(以下「本件侮辱投稿」という。)は、それぞれ独立に不法行為の要件を備えている。
 他方で、被告らが、これらの本件名誉毀損投稿及び本件侮辱投稿の全てについて客観的に関連共同していたとはいい難い。
 すなわち、証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば、被告Cが初めて原告についての記事等の投稿をした平成27年10月14日以降の被告B番号1ないし3の各記事等及び被告Bの、【B1408】、【B1494】、【B1714】、【B1715】、【B1754】及び【B2122】の各記事等並びに被告C番号1ないし3の各記事等及び被告Cの【B1836】、【B1846】、【B1871】の各記事等については、被告B各ブログにおいて、原告に対する名誉毀損又は侮辱を内容とする記事のコメント欄に、同記事に関連する内容のコメントをする形で投稿されるか、被告Bとほぼ同様の名誉毀損又は侮辱表現を用いて、被告Cブログ又は被告C各アカウントに記事等を投稿されていることが認められ、これらの事実によれば、被告B及び被告Cの不法行為が客観的に関連共同していると評価できるものの、被告Bの平成27年10月14日より前の各記事等及び被告B【B0159】、【B0173】、【B0179】、【B1023】、【B1026】、【B15068】及び【B1471】の各記事等の投稿、被告Cによる【B1533】及び【B1928】の各記事等の投稿については、本件全証拠によっても、上記のような事実は認められず、被告Bと被告Cが、同記事等の投稿により、客観的に関連共同して原告の権利を侵害したものとは認められない。
 また、被告Dは、被告B番号1及び2の各記事等並びに被告C番号1及び2の各記事等の投稿について、被告Bブログ等や被告Cブログにコメントすること等はなかったものの、被告Dが初めて原告についての記事等を投稿した平成27年10月14日以後は、被告D各記事において、「b先生に対するストーカー裁判」(【B0090】)などと、被告Bのハンドルネームを記載して、被告Bブログ等の読者の増加に寄与し得る行為に及ぶとともに、「ストーカーa①」(【B0162】、【B1221】)、「トラウマPTSD」(【B0090】)などと、被告B及び被告Cと同様の表現を用いて原告の名誉を毀損していることからすると、被告らによる、平成27年10月14日以降の被告B番号1及び2の記事等、被告C番号1及び2の記事等並びに被告D各記事の投稿についての不法行為は客観的に関連共同していると評価できる。
 しかし、被告Dについては、平成27年10月14日以降の被告B番号1及び2の記事等並びに同日以降の被告C番号1及び2の記事等の投稿を除く、本件名誉毀損投稿による社会的評価の低下並びに本件侮辱投稿による原告の名誉感情の侵害に関与又は寄与していたことを認めるに足りる証拠はなく、これらの投稿についてまで被告Dが被告B及び被告Cと客観的に関連共同して行ったとは認められない。
 以上によれば、被告らは、平成27年10月14日以降の、被告B番号1及び2の記事等及び同日以降の被告C番号1及び2の記事等の投稿並びに被告D各記事による原告に対する名誉権侵害の限度で、客観的に関連共同しているといえ、共同不法行為が成立するといえるが、被告B番号3の各記事等及び被告Bの【B1408】、【B1494】、【B1714】、【B1715】、【B1754】及び【B2122】の各記事等並びに被告C番号3の各記事等の投稿、被告Cの【B1836】、【B1846】及び【B1871】の各記事等の投稿については、被告Bと被告Cとの間でのみ関連共同してされたと認められるから、同被告らの間でのみ共同不法行為が成立する。
 その余の記事等による投稿については、被告B又は被告Cの単独不法行為責任が成立するにすぎない。
6 争点6(本件原画像の著作物性及び著作者)について
(1)証拠(甲8の4、52)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、南相馬市の伊勢大御神上大神宮を訪れた際に、同所に設置された線量計において、原告が持参したポケット線量計の値より低い値が表示されていることを端的に映像にするため、設置されている線量計が画面上部に、ポケット線量計が画面下部に映るように、知人にポケット線量計をカメラの前に差し出してもらい、スマートフォンで動画を撮影したこと、原告は、後に上記動画を再生し、同動画の80秒付近で静止させ、その表示画面のスクリーンショットを撮影して、本件原画像を作成したことが認められる。
 そして、上記認定事実によれば、本件原画像は、被写体の選択、構図の決定、カメラのアングルの決定等により、原告の「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、」「美術の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)といえ、写真の著作物に該当し、原告は、本件原画像の著作者であると認められる。
(2)これに対し、被告Bは、本件原画像のような写真は、インターネット上にあふれており、また、記録に近いものであるとして、著作物性を争うが、本件原画像における表現がインターネット上にあふれていることを認めるに足りる証拠はない上、インターネット上にあふれていることや記録に近いものであることによって、直ちに著作物性が否定されるものでもない。
 また、被告Bは、本件原画像の撮影者はFであり、Fと原告の位置関係に照らせば原告が本件原画像を撮影することは不可能であるから、原告が本件動画の中にFが撮影した本件原画像を挿入したなどと主張する。しかし、被告Bが主張する、原告が本件動画を撮影した際の原告とFの位置関係や、本件動画の一部が差し替えられたことをうかがわせる証拠はない。
 したがって、被告Bの上記各主張はいずれも採用することができない。
7 争点7(名誉声望保持権の侵害の成否等)について
 著作権法113条11項は、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」について、著作者人格権を侵害する行為とみなすと規定しているところ、同項の「名誉又は声望」は,社会的な名誉又は声望であると解される。そこで、著作物を掲載した記事の投稿が「名誉又は声望を害する方法」に該当するか否かについては、著作者の社会的評価の低下をもたらすような利用であるか否かを基準として判断するのが相当である。
 前提事実(3)オ、(3)キ及び(3)サによれば、被告Bは、「PTSD解離人格」、「PTSD解離カオナシサイバーストーカー」、「カオナシ多重人格ストーカー」、「PTSD特有の認知の歪みで勘違いから暴走する犯罪級に醜い奴」、「ネットストーカー」、「PTSD解離ネットストーカー」などの文言とともに、本件複製画像を掲載した記事を繰り返し投稿している(【B0001】、【B0004】ないし【B0008】、【B0016】ないし【B0018】、【B0047】、【B0048】、【B0051】、【B0053】、【B0054】、【B0056】、【B0057】、【B0062】及び【B0064】)と認められる。
 これらの投稿における本件原画像の利用の態様は、本件原画像の撮影者がPTSD解離にり患している又はストーカー行為をしていることをほのめかすものであるといえ、本件原画像の著作者である原告の社会的な評価の低下をもたらすものであると認められる。
 したがって、被告Bは、上記の各投稿によって、著作者である原告の名誉又は声望を害する方法によりその著作物である本件原画像を利用したものであって、これは、本件原画像に係る原告の著作者人格権を侵害する行為であるとみなされる。
 他方で、【B0046】、【B0061】及び【B0063】の各記事等については、上記のような文言を記載しておらず、単に、本件複製画像に創作性がなく著作物に当たらないとの趣旨のコメントとともに本件複製画像を掲載した記事を投稿したにすぎないから、本件原画像の著作者である原告の社会的な評価の低下をもたらすような利用であるとはいえない。よって、これらの各記事等の投稿に係る原告の主張は理由がない。
8 争点8(引用の抗弁の成否)について
 被告Bは、本件原画像の使用につき引用(著作権法32条1項)の抗弁が成立すると主張するものの、引用の成立要件を満たすことについて何ら具体的な主張立証をしていないから、被告Bの主張は理由がないといわざるを得ない。
9 争点9(プライバシー権侵害の成否)について
 プライバシーの侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するものと解される(最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁、最高裁平成12年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号229頁)。そして、事実の公表が原告のプライバシーを侵害したものとして不法行為法上違法となるか否かは、同公表に係る情報の性質及び内容、公表の当時における原告の年齢や社会的地位、公表の目的や意義、公表においてプライバシー情報を開示する必要性、公表によって本件プライバシー情報が伝達される範囲と原告が被る具体的被害の程度、公表における表現媒体の性質など、プライバシー情報に係る事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由に関する諸事情を比較衡量し、プライバシー情報に係る事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するか否かによって判断すべきものである。
 証拠(甲63)及び弁論の全趣旨によれば、被告Bは、【B0019】ないし【B0023】、【B0962】、【B0963】、【B0997】、【B1003】、【B1084】及び【B1123】において、性犯罪やストーカーをテーマとする記事の中に、原告の自宅住居を管理する不動産会社が、そのホームページ上に掲載していた本件自宅写真を掲載したことが認められる。
 そして、本件自宅写真は、敢えて、「これはa①の家の写真ではありません。」(【B0962】)、「これはa①の自宅写真でもないのに被害妄想」(【B0997】)、「自分の家の台所がどんな構造だったか忘れて被害妄想の世界に迷い込んでしまったa①」(【B1003】)、「これが自分の家で私や知り合いがここに侵入しそのうちの一人は職務質問を受けたという妄想」(【B1084】)、「私が忍び込んで撮影したとか自分への加害予告であり警察も動いたという妄想を(警察から2度も注意された不安から生じた妄想)いまだに平気で書いている」(【B1123】)との記載と併せて投稿されており、本件自宅写真が、原告の自宅住居の室内の写真であると受け取られるおそれがあるといえる。
 このような、本件自宅写真は、これに基づいて原告の住所を特定されるおそれを否定できない情報であるといえ、このような情報は、インターネットにより不特定多数の者に伝達されたことにより、原告に対する嫌がらせ目的で原告に接触しようとする者が現れ、原告の生活の平穏が害される可能性は否定できないから、原告には、本件自宅写真を公表されない法的利益が一定程度あると認められる。
 他方で、本件において、被告Bから、本件自宅写真を掲載した目的や意義、その必要性は何ら主張立証されていないから、原告の自宅住居の室内の写真画像を公表されない法的利益は、これを公表する理由に優越するといわざるを得ず、被告Bの本件自宅写真の掲載には故意による不法行為が成立する。
10 争点10(原告と密接な関係を有する者に対するつきまといによる不法行為の成否不法行為の成否)について
 原告は、被告Bが、原告だけではなく、原告の所属先であるGや原告の勤務する高校に対する誹謗中傷を行い、また、原告の親族であるHのツイッターアカウントに多数回コメントをするなどして、同人を不安に陥れているなどと主張し、これらの行為が不法行為に該当すると主張する。
 しかし、本件全証拠によっても、原告が主張する上記行為によって、原告の権利又は法律上保護される利益が侵害され、かつ、その侵害の程度が社会的相当性を逸脱する程度に至っていることを認めるに足りないから、原告の主張は理由がないといわざるを得ない。
11 争点11(損害の発生の有無及び額)について
(1)名誉毀損、侮辱による損害について
ア 被告らの共同不法行為(被告B番号1及び2の各記事等(ただし、被告B番号6の記事等を含む。)、被告C番号1及び2の各記事等(ただし、被告C番号4の各記事等を含む。)並びに被告D各記事の投稿)による損害被告らによる共同不法行為は、平成27年10月頃から令和2年6月頃まで、4年を超える期間にわたって継続して行われ、その合計記事等数は、被告Bにつき優に1000件を超えている。
 また、弁論の全趣旨によれば、被告Bは、上記同一の記事の内容を複数示板に投稿する、名誉毀損等の表現内容を含む記事へ遷移するよう、別の媒体の記事にリンクを貼るなどしていたことが認められることからすると、実際には、上記記事数では考慮できないほどの表現の拡散があったといえる。
 さらに、被告Dが精神科医であることを考慮すると、原告は、被告Bに対し、恋愛感情等を持って特定の者につきまとう犯罪行為をしている者であるとの摘示事実や、原告は、PTSDや解離性同一性障害などの精神障害を患っているとの摘示事実の各内容が、被告Dブログの読者に真実らしく受け止められるおそれは高く、原告の社会的評価の低下に少なくない影響を与えたと認められる。
 そして、原告が心理援助職に就いており、各種学校にスクールカウンセラーとして稼働する者であること、証拠(甲11、60)によれば、原告は、被告BによるGに対する嫌がらせ等が懸念されることを理由に、同団体が独自に認定するカウンセラーとしての資格をはく奪されたと認められることなどを併せ考慮すれば、原告の損害額を250万円と認めるのが相当である。
イ 被告B及び被告Cの共同不法行為による損害
(ア)被告B番号3の各記事等及び被告C番号3の各記事等について
 本件において、被告B番号3の各記事等及び被告C番号3の各記事等により摘示された事実の内容は、原告が心理援助職に就いており、他人のプライバシーを尊重すべき立場にあることを考慮すると、これらの表現による原告の社会的評価に対する影響は小さくないこと、その記事数が合計150件を優に超えていること、前記アのとおり、実際には、上記記事数では考慮できないほどの表現の拡散があったといえることなどを考慮し、原告の損害額を40万円と認めるのが相当である。
(イ)被告Bの【B1408】、【B1494】、【B1714】、【B1715】、【B1754】及び【B2122】の各記事等並びに被告Cの【B1836】、【B1846】及び【B1871】の各記事等について
 被告Bの【B1408】、【B1494】、【B1714】、【B1715】、【B1754】及び【B2122】の各記事等並びに被告Cの【B1836】、【B1846】及び【B1871】の各記事等で摘示された内容は、被告Bが著作権侵害を行っているとの原告の主張について、裁判所は原告の勘違いである旨判示したというものであるところ、同表現は、それの内容自体から誇張されたものであることがうかがわれる上、被告Bが、別件訴訟の一方当事者であり、かつ、敗訴した当事者であることから、裁判所が真実そのような判示をしたのか疑問を持つ者もいると考えられ、原告の社会的評価を大きく低下させるものであるとは認め難い。
 以上に加え、投稿された記事等の件数等を考慮し、原告の損害額を3万円と認めるのが相当である。
(ウ)本件侮辱投稿について
 本件侮辱投稿の内容は、原告を、「ゴキブリ」、「cockroach」「ゴロツキ」、「ヤクザ」等という極めて不穏当な表現を使って揶揄したものであること、本件侮辱投稿が100回を優に超えてされていることに照らし、原告の損害額を25万円と認めるのが相当である。
ウ 被告Bの単独不法行為による損害
(ア)被告B各記事等のうち、平成26年3月24日から平成27年10月1日までにされた投稿に係る各記事等について
 被告Bは、平成26年3月24日から、被告C及び被告Dが原告に関する記事等の投稿を開始した平成27年10月14日より前の平成27年10月1日まで、被告B番号1又は2の各記事等のうち、合計65件の記事等の投稿をした。
 このような、記事等の投稿期間、記事等の件数及び表現の内容等を考慮し、原告の損害額を20万円と認めるのが相当である。
(イ)【B0159】、【B0173】及び【B0179】の各記事等について
 【B0159】、【B0173】及び【B0179】の各記事等で摘示された内容は、原告が、原告が心理援助職としてスクールカウンセリングに携わっていながら、実生活では、アダルト関係の副業等、職場には言えないような仕事を隠れて行う者であるとの事実を暗に摘示するもので、このような記事等の件数及び表現の内容等を考慮し、原告の損害額を5万円と認めるのが相当である。
(ウ)【B1023】、【B1026】及び【B1068】の各記事等について
 【B1023】、【B1026】及び【B1068】の各記事等で摘示された内容は、原告が未成年の少年を爆破予告犯に仕立て上げようとしたというものであるところ、このような、記事等の件数及び表現の内容等を考慮し、原告の損害額を5万円と認めるのが相当である。
(エ)【B1471】の記事等について
 【B1471】の記事等で摘示された内容は、裁判所が、被告Bに対する原告のストーカー行為があったことを認め、この事実を前提とした和解勧試を行ったというものであるところ、被告Bは、別件訴訟の一方当事者であり、かつ、敗訴した当事者であることを考慮すると、被告Bが、別件訴訟において裁判官が述べた内容を自らの都合のいいように解釈したととらえることも可能であるから、原告の社会的評価を大きく低下させるものとは認め難い。
 以上のことに加え、記事等の投稿件数を考慮し、原告の損害額を1万円と認めるのが相当である。
エ 被告Cの単独不法行為(【B1533】及び【B1928】の各記事等の投稿)による損害
 【B1533】及び【B1928】の各記事等で摘示された内容は、原告は、子ども達に虐待を行っているというものであるところ、原告が、心理援助職に就いており、スクールカウンセリングに携わる者であることを考慮すると、このような表現の内容が原告の社会的地位に与える影響は小さくないといえる。
 以上のことに加え、記事等の投稿件数を考慮し、原告の損害額を5万円と認めるのが相当である。
オ 小括
 以上によれば、被告Bは、原告に対し、合計349万円(ただし、318万円の限度で被告Cと連帯し、250万円の限度で被告Dと連帯して)の損害賠償義務を、被告Cは、原告に対し、合計323万円(ただし、318万円の限度で被告Bと連帯し、250万円の限度で被告Dと連帯して)の損害賠償義務を、被告Dは、原告に対し、被告B及び被告Cと連帯して、合計250万円の損害賠償義務を負うことになる。
(2)プライバシー権侵害による損害について
 被告Bは、合計11回にわたり、執拗に本件自宅写真を掲載しているところ、その態様や投稿内容、掲載の必要性が何ら主張立証されていないことに照らすと、上記画像の掲載は、原告に対する嫌がらせ目的でなされたことが明らかである。
 他方で、原告の自宅住居内の画像は、原告の私生活の様子を写したものではないことを併せ考慮し、原告の損害額は、合計30万円と認めるのが相当である。
(3)著作者人格権侵害とみなされる行為(著作権法113条11項)による損害について
 前記7のとおり、被告Bによる原告の本件原画像に係る著作者人格権の侵害とみなされる投稿は合計10回にわたりされていること、本件複製画像と併せて投稿された記事の内容からうかがわれる原告の名誉声望に与える影響の程度は小さくないこと、前提事実(3)のとおり、原告が複数回にわたり、本件原画像の削除等を求めたにもかかわらず、被告Bはこれを意に介することなく、かえって、新たに本件複製画像を投稿していたことなどを考慮し、原告が被った精神的苦痛を金銭に評価すると、原告の損害額は、50万円と認めるのが相当である。
(4)小括
 以上によれば、原告が各被告に対して請求できる損害額は次のとおりである。
ア 被告Bに対し、合計429万円(ただし、うち318万円の限度で被告Cと連帯し、250万円の限度で被告Dと連帯)
イ 被告Cに対し、合計323万円(ただし、うち318万円の限度で被告Bと連帯し、250万円の限度で被告Dと連帯)
ウ 被告Dに対し、250万円(ただし、被告B及び被告Cと連帯)
12 争点12(差止めの必要性の有無)について
 前提事実(3)のとおり、被告Bは、原告から再三にわたり、本件複製画像の掲載を中止するよう求められたにもかかわらず、これを意に介さず、本件複製画像の掲載を継続するにとどまらず、本件複製画像の新たな投稿を繰り返していたのであるから、これらの事情を考慮すると、本件複製画像の自動公衆送信又は送信可能化を差し止める必要性が認められる。
13 結論
 以上の次第で、原告の請求は、主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 間明宏充
 裁判官 バヒスバラン薫


(別紙画像目録―省略)
(別紙一覧表―省略)
(別紙争点整理表―省略)
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