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【事件名】新聞記事の社内LAN無断公開事件(2) 【年月日】令和5年6月8日 知財高裁 令和4年(ネ)第10106号 損害賠償請求控訴事件 (原審・東京地裁令和2年(ワ)第3931号) (口頭弁論終結日 令和5年4月24日) 判決 控訴人兼被控訴人 株式会社中日新聞社(以下「1審原告」という。) 同訴訟代理人弁護士 田中豊 同 宮澤幸夫 被控訴人兼控訴人 首都圏新都市鉄道株式会社(以下「1審被告」という。) 同訴訟代理人弁護士 富田純司 同 小暮信吉 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 1審被告は、1審原告に対し、133万4000円及び別紙1−1認容額一覧表の「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 1審原告のその余の請求(予備的請求を含む。)をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを20分し、その19を1審原告の負担とし、その余を1審被告の負担とする。 3 この判決の第1項(1)は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 1審原告 (1)原判決を次のとおり変更する。 (2)主位的請求 1審被告は、1審原告に対し、4239万4590円及び別紙2損害金計算書の「損害金額」欄記載の各金員に対する「年月日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)予備的請求 1審被告は、1審原告に対し、3332万5470円及びうち2777万1225円に対する別紙3損害金計算表の「損害金額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から、うち555万4245円に対する平成31年4月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告 (1)原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。 (2)前項の取消しに係る部分を棄却する。 (3)1審原告の予備的請求を棄却する。 第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) 1 事案の要旨 本件は、日刊紙「東京新聞」(以下「東京新聞」という。)を発行する1審原告が、1審被告に対し、1審被告の従業員が東京新聞に掲載された新聞記事の画像データを作成して1審被告の社内イントラネット(以下「本件イントラネット」という。)の電子掲示板用の記録媒体に記録した行為が、1審原告の著作物である上記新聞記事に係る著作権(複製権、公衆送信権)の侵害に当たる旨主張して、民法709条又は715条1項に基づき、損害賠償として4239万4590円及び別紙2損害金計算書の「損害金額」欄記載の各金員に対する「年月日」欄記載の各日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、1審原告の請求について、1審被告に対し、192万3000円及びうち137万4000円に対する平成30年4月1日から、うち原判決別紙損害金計算表の「損害額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から、うち15万円に対する平成31年4月17日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却した。 1審原告及び1審被告は、それぞれ、原判決中敗訴部分を不服として控訴した。また、1審原告は、当審において、予備的に、3332万5470円及びうち2777万1225円に対する別紙3損害金計算表の「損害金額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から、うち555万4245円に対する平成31年4月17日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する旨の訴えの変更をした。 2 前提事実(証拠の摘示のない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。) 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決2頁16行目末尾に「1審原告は、首都圏において、東京新聞を発行している。」を、同頁18行目末尾に「1審被告は、平成17年8月24日、鉄道路線「つくばエクスプレス」を開業し、運営している。」を加える。 (2)原判決2頁20行目の「新聞」を「東京新聞」と、同頁22行目から23行目にかけての「社内イントラネット(以下「本件イントラネット」という。)」を「本件イントラネット」と改める。 (3)原判決3頁4行目及び7行目の各「イントラネット」をいずれも「本件イントラネット」と、同頁15行目の「別紙」を「原判決別紙」と、同頁17行目の「という。)」を「という。甲9、10、乙1、4)」と改め、同頁18行目から19行目までを削る。 3 争点 (1)本件イントラネットに掲載された1審原告発行の新聞記事の数量及びその著作物性(争点1) (2)1審原告の損害額(争点2) (3)消滅時効の成否(争点3) 4 争点に関する当事者の主張 (1)争点1(本件イントラネットに掲載された1審原告発行の新聞記事の数量及びその著作物性)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の3(1)記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決3頁23行目の冒頭に「ア」を加える。 イ 原判決4頁13行目の「回答していること」の次に「(甲19、28)」を加え、同頁14行末尾に行を改めて次のとおり加える。 「イ これに対し、原判決は、1審被告のAの陳述書(乙15)記載の陳述及びそれに沿った証人尋問における供述をそのまま採用し、1審原告と1審被告が紛争状態になる前にされた新聞社6社との面談時(6社面談)のAの説明につき、広報課長であるAが、本件イントラネットへの掲載記事数について平成30年以前についても大きく増減していないと思うといった趣旨の発言をしたとしても(甲6)、これは、本件イントラネットに掲載された記事数を調査の上で平成30年度より前の年度も平成30年度と同じ数の記事が掲載されたことを発言したものではなく、過去に本件イントラネットに掲載された記事のうち1審原告が著作権を有する記事の割合が明らかではないなどの上記に述べた事情に照らせば、権利侵害の件数についての認定(合計458本)を覆すに足りる事情とはいえない旨判示した。 しかしながら、6社面談時のAの説明内容を排斥し、それと真っ向から矛盾するAの陳述及び供述を採用した原判決の事実認定は、採証法則に違反するものであるから、誤りである。」 ウ 原判決5頁11行目末尾に行を改めて「したがって、1審原告の主張は理由がない。」を加える。 (2)争点2(1審原告の損害額) 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の3(2)記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決5頁13行目末尾に行を改めて次のとおり改める。 「ア 主位的請求関係 (ア)1審被告は、故意又は過失により、1審被告の従業員が東京新聞に掲載された新聞記事の画像データを作成して本件イントラネットの電子掲示板用の記録媒体に記録することによって、1審原告の著作物である上記新聞記事に係る著作権(複製権、公衆送信権)を侵害したものであるから、民法709条又は715条1項に基づき、上記侵害行為により1審原告が被った損害を賠償すべき義務を負う。」 イ 原判決5頁14行目冒頭の「ア」を削り、7頁13行目の「イ」を「(イ)」と、同頁21行目の「ウ」を「(ウ)」と改める。 ウ 原判決8頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 (エ)原判決は、著作権法114条3項に規定する1審原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、本件個別規定に基づいて算定するのではなく、掲載された1審原告の記事1本について掲載期間にかかわらず3000円として算定するのが相当である旨判断した。 しかしながら、著作権法114条3項の規定は、平成12年改正法により、「著作権…の行使につき通常受けるべき金銭の額」から「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額」に改正され、従前の規定から「通常」の文言を削除し、裁判所が一般的相場に拘束されることなく、訴訟当事者間の具体的事情を考慮した適切な使用料相当額を算定することができる旨を明らかにしたものであるところ、原判決の上記判断は、著作権法114条3項の改正の立法趣旨に反するものであるから、誤りである。 イ 予備的請求関係 (ア)著作権法114条3項に基づく損害額 a 仮に平成17年9月1日から平成30年3月31日までの間の掲載記事の数量につき、本件保管記事の数量をもとにして本件イントラネットへの掲載記事の総数量を推認するという原判決の採用した認定手法によるとした場合の損害額は、次のとおりである。 平成17年度から平成27年度の各年度については、本件保管記事のうちの1審原告が著作権を有する新聞記事の5倍、平成28年度及び平成29年度の各年度については8倍の各数量の記事が本件イントラネットに掲載されたと推認すべきであるから、上記期間に本件イントラネットに掲載された記事の総数量は1260本と推認される。 また、平成30年度においては、前年度までに掲載されたと推認される上記1260本につき、改めて1年分の使用料相当損害金が発生する。 そして、損害の算定に用いるべき本件個別規定(甲8)記載の金額は、1年間の使用に係る使用料であるから、1年を超えて無断使用が継続されている場合には、各新聞記事につき、使用開始後1年経過時に再び1年分の使用料相当損害金が発生し、以降も同様に1年ごとに上記使用料相当損害金が発生する。 以上によれば、平成17年9月1日から平成31年4月16日までの間の著作権法114条3項に基づく使用料相当損害額は、別紙3損害金計算表のとおり、合計2777万1225円となる。 b この点に関し、1審被告は、原判決が、本件イントラネットに掲載された個々の記事を特定することなく推認する方法で、侵害数量を認定したことは誤りである旨主張する。 しかしながら、被侵害著作物の個別の特定が必要であるとする1審被告の上記主張は、知財高裁平成28年10月19日判決(同年(ネ)第10041号。甲21の1)において明確に排斥されており、判例の立場に反するものであるから、失当である。 (イ)弁護士費用相当損害金 本件事案の性質及び内容に照らし、1審被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当額は、前記(ア)の使用料相当損害額の2割である555万4245円を下回ることがない。 ウ 小括 よって、1審原告は、1審被告に対し、著作権侵害の不法行為(民法709条又は同法715条1項)に基づく損害賠償として、主位的に、4239万4590円及び別紙2損害金計算書の「損害金額」欄記載の各金員に対する「年月日」欄記載の各日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、予備的に、3332万5470円及びうち2777万1225円に対する別紙3損害金計算表の「損害金額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から、うち555万4245円に対する平成31年4月17日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」 エ 原判決8頁2行目末尾に行を改めて「ア 主位的請求関係」を加え、同頁4行目末尾に次のとおり加える。 「また、1審被告は、本件イントラネットに1審原告が発行する東京新聞の記事を掲載する際、当該記事は「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しないと信じていたから、1審被告には、著作権侵害について過失はない。」 オ 原判決8頁5行目の「また、」を「次に、」と、同頁11行目の「これを」を「本件個別規定(甲8)が合理性を有すること」と、同頁15行目の「本件包括規定」を 「本件包括規定(甲11)」と改める。 カ 原判決9頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「イ 予備的請求関係 本件で問題となる不法行為は、あくまでも1審被告が本件イントラネットに掲載した個々の記事の不法行為であり、個々の記事を特定することが不法行為責任を論ずる大前提であり、その上で、それら個々の記事についての著作物性、損害の有無及び損害額が争点となるはずであるにもかかわらず、原判決が、本件イントラネットに掲載された個々の記事を特定することなく推認する方法で、458本の記事の著作権侵害を認定したことは誤りである。したがって、原判決の認定手法を前提とする1審原告の予備的主張は、失当である。 また、1審原告が本件保管記事の数量を5倍ないし8倍にして新たに掲載された記事数を算定する手法には合理的根拠がない。 さらに、本件イントラネットに掲載していた記事は、日刊紙に掲載された記事であり、その時々の社会的な出来事に関する記事、つまり時事に関する記事である。1審被告広報課ではこの時事に関する記事(例えば、鉄道事故の記事)をリアルタイムに社内で共有する目的で本件イントラネットに掲載したのであり、これら記事の内容や性質に照らし、この記事を社員が閲覧したとしても、閲覧した時期は、本件イントラネットに記事が掲載された当日から1週間以内がほとんどであり(全体アクセス数の9割以上)、記事掲載後1か月程度で閲覧を終えていたのが通常である。このような閲覧状況に鑑みれば、仮に1審原告の使用料規定を著作権法114条3項に適用し得るとしても、そこでは掲載期間1年のものを1回利用した場合の使用料を基準とし得るにとどまり、1審原告主張の累積加算は認められない。」 (3)争点3(消滅時効の成否) (1審被告の主張) ア 1審原告は、平成27年5月27日頃、1審被告が、1審原告が発行する東京新聞に掲載された記事を含む新聞各社が発行する新聞に掲載された記事を本件イントラネットに掲載していることを認識していた(甲3、4)。 そうすると、1審被告の1審原告に対する本件著作権の侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、本件訴訟の提起時点(令和2年2月17日)で、同日を遡ること3年を超える部分は、1審原告が損害及び加害者を知った時から、3年の消滅時効期間が経過していたから、改正前民法724条前段所定の消滅時効が完成していた。 イ 1審被告は、令和5年3月6日の当審第1回口頭弁論期日において、1審原告に対し、1審原告の1審被告に対する本件訴訟の提起日を遡ること3年を超える部分に係る前記アの不法行為に基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用した。 (1審原告の主張) 1審原告が本件イントラネットの掲載情報を表示したモニターの画像(甲3、4)を入手したのは平成31年4月24日であり、同日より前に本件著作権の侵害に係る「損害」及び「加害者」を知っていたとはいえないから、本件訴訟提起の時点では、1審原告の1審被告に対する本件著作権の侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成していなかった。 したがって、1審被告の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件イントラネットに掲載された1審原告発行の新聞記事の数量及びその著作物性)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決9頁4行目から7行目までを「(1)平成30年4月1日から平成31年4月16日までの間に係る掲載について」と改め、同頁8行目の「ア」の次に「1審被告が平成30年4月1日から平成31年4月16日までの間に本件イントラネットの掲示板に原告が発行した東京新聞に係る平成30年度掲載記事(合計133本。乙1、4、甲9、10)を掲載したことは、前記第2の2(3)のとおりである。」を加える。 (2)原判決9頁10行目の「しかしながら」を「そこで検討するに」と改め、同頁19行目の「したがって」から20行目末尾までを次のとおり改める。 「これらの点において、平成30年度掲載記事は、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるから、著作物に該当するものと認められる。 これに対し、1審被告は、平成30年度掲載記事は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。 しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙1、4)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。 したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。」 (3)原判決9頁末行から10頁4行目までを次のとおり改める。 「 そして、1審被告が平成30年度掲載記事の画像データを作成して1審被告の社内イントラネットである本件イントラネットの電子掲示板用の記録媒体に記録した行為は、平成30年度掲載記事を本件イントラネットに接続した者の求めに応じて送信を行い、閲覧することを可能化したものであるから、1審原告の著作物である平成30年度掲載記事に係る著作権(複製権、公衆送信権)の侵害に当たるものと認められる。」 (4)原判決10頁5行目を「(2)平成17年9月1日から平成30年3月31日までの間に係る掲載について」と、同頁12行目の「など」を「(乙21)など」と、同頁13行目、16行目、17行目、22行目、25行目の各「保存」をいずれも「保管」と改め、同頁16行目から17行目にかけての「ある。」の次に「乙10、14」を、同頁21行目の「ある。」の次に「例えば、乙14の「155」の記事」を加える。 (5)原判決11頁3行目の「ということがある。」の次に「乙10、14」を、同頁9行目の「有無及び数」の次に「について検討する。」を加え、同頁10行目の「平成23年度」を「平成24年度」と改め、同頁19行目から25行目までを次のとおり改める。 「 他方で、枠付き記事が存在する平成24年度以降の本件保管記事のうち、枠付き記事以外の記事については、本件イントラネットに掲載されたことを認めるに足りる証拠はない。」 (6)原判決11頁末行から12頁12行目末尾までを次のとおり改める。 「エ 平成17年度から平成23年度までの本件保管記事については、本件イントラネットに掲載されたことを認めるに足りる証拠はない。」 (7)原判決12頁13行目から14行目を次のとおり改める。 「オ 本件フォルダに保管された記事以外の記事について、本件イントラネットへの掲載の有無について検討する。」 (8)原判決12頁18行目の「有無やその数を」を「有無、数量及びその内容を」と改め、同頁20行目から15頁14行目までを次のとおり改める。 「カ 以上によれば、平成17年9月1日から平成30年3月31日までの間において、枠付き記事以外に、本件イントラネットに1審原告が発行した東京新聞の記事が掲載されたこと及びその内容を認めるに足りる証拠はなく、また、仮に東京新聞の記事が掲載された可能性があるとしても、その内容を確認することができないから、当該記事が著作物に該当することを認めることはできない。 これに対し、1審原告は、過去の著作権侵害行為を原因とする損害賠償請求をするに当たっては、被侵害著作物を個別に特定する必要はなく、このことは、判例の立場(知財高裁平成28年10月19日判決(同年(ネ)第10041号))であるとして、著作権が侵害されたとする新聞記事の内容を具体的に特定しないまま、1審被告が、平成17年9月1日から平成30年3月31日までの間に、毎月約11本の新聞記事を本件イントラネットに掲載していた旨主張する。 しかしながら、新聞記事においては、訃報や人事異動等の事実をそのまま掲載するものから、主題を設定して新聞社としての意見を述べる社説まで様々なものがあって、記載する事項の選択や記事の展開の仕方、文章表現の方法等において記者の個性を反映させる余地があるとしても、新聞記事であることのみから当然に著作物であるということはできない。 また、新聞記事の中には、通信社や企業等から提供された情報や文章をそのまま掲載するものや、第三者から寄稿されたものもあり、当該記事を掲載した新聞の発行者が当然にその著作権を有するということもできない。 さらに、1審原告が指摘する裁判例は、著作権等管理事業者であるJASRACが、その管理する著作物である楽曲を許諾なくライブ会場で演奏する者に対して著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案であり、上記裁判例は、本件とは、著作物の種類が異なるなど事案を異にするというべきであり、本件に適切でない。 したがって、1審原告の上記主張は採用することができない。 他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。」 (9)原判決15頁15行目から22行目までを削る。 2 争点2(1審原告の損害額)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決15頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(1)前記前提事実(前記第2の2)及び前記2の認定事実を総合すれば、1審被告の従業員が東京新聞に掲載された新聞記事の画像データを作成して本件イントラネットの電子掲示板用の記録媒体に記録することによって、1審原告の著作物である上記新聞記事に係る著作権(複製権、公衆送信権)を侵害したものであり、この点について、1審被告において、少なくとも過失があると認められる。これに反する1審被告の主張は採用することができない。 したがって、1審被告は、民法709条に基づき、上記侵害行為により1審原告が被った損害を賠償すべき義務を負うものと認められる。」 (2)原判決15頁24行目の「(1)」を「(2)」と、17頁4行目の「(2)」を「(3)」と改める。 (3)原判決17頁17行目の「これらの事実に加え」から同頁21行目までを次のとおり改める。 「以上の事情に加え、1審被告による侵害態様、著作権法114条3項の規定する額は著作権侵害があったことを前提に事後的に定められる額であること等を総合的に考慮すると、本件イントラネットに掲載された新聞記事について、1審原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、それぞれの記事の掲載の時期及び期間にかかわらず、掲載された記事1本当たり5000円とするのが相当である。 これに反する1審原告及び1審被告の主張はいずれも採用することができない。」 (4)原判決18頁6行目から15行目までを次のとおり改める。 「(4)前記1の認定事実によれば、1審被告が本件イントラネットに掲載して1審原告の著作権を侵害した新聞記事の数量は、合計232本と認められ、その内訳を期間ごとに整理すると、別紙1−2認容額内訳表の「掲載本数」欄に各記載のとおりとなる。 したがって、「期間等」欄記載の期間に生じた1審原告の損害の額は、それぞれ「認容額」欄に各記載のとおりとなり、全期間を通算すると、合計116万円となる。 遅延損害金については、平成24年4月1日から平成30年3月31日までの間に発生した損害については、その損害が発生した日の属する年度の末日の翌日(翌年4月1日)を起算日とし、平成30年4月1日から平成31年4月16日までの間に発生した損害については、その損害が発生した日の属する月の末日の翌日(翌月1日。ただし、平成31年4月に発生した損害については同月17日とする。)と認めるのが相当である。」 (5)原判決18頁16行目を次のとおり改める。 「(5)本件事案の性質・内容、本件の認容額、原審及び当審の審理経過等諸般の事情を斟酌すると、1審被告の著作権の侵害による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は、別紙1−2認容額内訳表の「弁護士費用相当額」欄記載のとおり、17万4000円と認めるのが相当である。」 3 争点3(消滅時効の成否)について 1審被告は、1審原告は、平成27年5月27日頃、1審被告が、1審原告が発行する東京新聞に掲載された記事を含む新聞各社が発行する新聞に掲載された記事を本件イントラネットに掲載していることを認識していたから、1審被告の1審原告に対する本件著作権の侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、本件訴訟の提起時点(令和2年2月17日)で、同日を遡ること3年を超える部分は、1審原告が損害及び加害者を知った時から、3年の消滅時効期間が経過し、消滅時効が完成していた旨主張する。 しかしながら、本件イントラネットの掲載情報を表示したモニターの画像(甲3、4)には、平成27年5月27日との日付の記載があるが、1審原告が上記画像を同日に入手したことを認めるに足りる証拠はない。他に1審原告が平成27年5月27日頃本件著作権の侵害に係る「損害」及び「加害者」を知っていたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、本件訴訟提起の時点では、1審原告の1審被告に対する本件著作権の侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成していたものとは認められないから、1審被告の上記主張は理由がない。 第4 結論 以上によれば、1審原告の請求(予備的請求を含む。)は、1審被告に対し、133万4000円及びこれに対する別紙1−1認容額一覧表の「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないから棄却すべきである。 したがって、原判決は一部不当であるから、原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 大鷹一郎 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司 別紙1−1 認容額一覧表
別紙1−2 認容額内訳表
別紙2 損害金計算書 「年月日」欄平成17年10月1日の「損害金額」欄 28,875円は平成17年9月分の損害金元本である。平成17年11月1日以降も、前月分の損害金元本を記載する。 損害金額(月額)の当月分が翌月1日から遅滞するものとする(平成31年4月分を除く。)。 1円未満切捨。遅延損害金の計算は閏年を366日とする。 別紙3 損害金計算表
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