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【事件名】楽天モバイルへの発信者情報開示請求事件(2)
【年月日】令和5年4月17日
 知財高裁 令和4年(ネ)第10104号 発信者情報開示請求控訴事件
 (原審・東京地裁令和4年(ワ)第14375号)
 (口頭弁論終結日 令和5年2月6日)

判決
控訴人 A
被控訴人 楽天モバイル株式会社
同訴訟代理人弁護士 亀田治男 


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、原判決別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
(1)本件は、控訴人が、インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」において、特定のアカウントの利用者が、控訴人のツイート(原告ツイート)のスクリーンショット(本件添付画像)を添付して投稿したツイート(本件ツイート)について、控訴人のツイートに係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものであることが明らかであると主張して、同アカウントへのログインに係る経由プロバイダである被控訴人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律5条1項に基づき、被控訴人が保有する上記利用者に係る氏名又は名称、住所、電話番号及びメールアドレスの開示を求める事案である。なお、原審においては、令和3年法律第27号による改正前の同法が適用されていたため、控訴人は、同改正前の同法4条1項に基づいて上記請求をした。
(2)原審は、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は著作権法32条1項の要件を満たす適法な引用であるとして、控訴人の請求を棄却した。
 控訴人は、これを不服として、本件控訴を提起した。
2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張
 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決5頁2行目ないし3行目の「人々に」を「人々の」に改め、後記3のとおり当審における補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」の第2の1及び2並びに第3(原判決1頁26行目ないし5頁18行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。
3 当審における補充主張(争点2に関する主張)
〔控訴人の主張〕
 以下のとおり、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は、適法なものとはいえない。
(1)主従関係について
 本件ツイートの本文部分と本件添付画像部分とを比較しても、前者が質、量的に主であることが明らかとはいえないし、それぞれの内容をみても、両者の主従関係を判断することはできない。また、本件ツイートの本文部分よりも本件添付画像部分の方が文章の量が多いことからすれば、前者が主で後者が従であるとはいえない。
(2)引用の必要性について
 ツイッターにおいて、他のツイートを引用したいのであれば、ツイッター社により推奨されている引用リツイートをするか、当該ツイートに係るURLを記載すればよいのであって、全文を複写したスクリーンショットを添付する必要性はない。また、本件ツイートは、原告ツイートの前半部分については触れているものの、後半部分については触れていないことからすれば、原告ツイートの全文を引用する必要性はなかったといえる。
(3)一般的に行われている行為ではないこと
 他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートがされるのは、画像同士を比較しようとする場合か、一定のユーザーを執拗に批判、非難するような場合に限られており、ほとんどのユーザーはこのようなツイートをしていない。また、スクリーンショットを用いて他のツイートが引用された場合には、引用リツイートがされた場合とは異なり、引用元に何らの通知もされないため、ツイートを引用された者が引用の事実を知ることができない上、通知がされないことを利用して執拗に批判、非難がされる例が多い。
 このように、ツイッターにおいて、他のツイートのスクリーンショットを添付して引用する方法は、社会通念上許容されるものではなく、一般的には行われていない。また、被控訴人は、上記のような方法を用いたツイートが多くの利用者によってされていることについて、何らの立証もしていない。
(4)本件規定に反する行為であること
 本件規定の内容によれば、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートをすることは、本件規定に違反するものと考えるのが普通である。また、ツイッターにおいては、少なくとも著作権に基づく削除等の規制等は存在しないのであるから、上記のような方法を用いたツイートについて、削除等の規制がされていないことを理由として公正な慣行に合致する範囲内にあるということはできない。
(5)ツイッター社のルールや目的に反すること
 仮に、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートをすることが本件規定に違反していないとしても、このような方法を用いたツイートは、以下のような問題を生じさせるものであり、ツイッター社のルールや目的に反するものである。
ア 引用元に引用の事実が通知されないため、ツイートを引用された者は、自分が知らないところで議論がされ、自由かつ安全に公の会話に参加することができなくなってしまう。
イ 関わり合いを持ちたくない人物をブロックした場合であっても、当該人物にツイートを引用されてしまうことがある。
ウ 引用元に通知されない方法を用いてツイートをすることは、ツイッター社が禁止する一方的な返信に当たる。
エ 画像として添付されたツイートを検索することはできないため、ツイッターにおける検索機能の品質や他のユーザーの検索エクスペリエンスが低下してしまう。
オ 一部のユーザーについて、ツイッター内のコンテンツのスクリーンショットを撮影しようとするとURLの共有ボタンが強制的に表示されるようになっているのは、ツイッター社が、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートをすることを止めさせようとする意図を有しているからである。
〔被控訴人の主張〕
(1)〔控訴人の主張〕(1)に対し
 本件ツイート及び本件添付画像は、両者の関係からすれば、前者が主であり、後者が従であるとみるべきである。
(2)〔控訴人の主張〕(2)に対し
 本件投稿者が本件添付画像を引用したのは、原告ツイートの誤りを指摘するためであるから、引用の必要性があったことは明らかである。
(3)〔控訴人の主張〕(3)に対し
 控訴人は、ほとんどのユーザーは他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートをしていないと主張するが、その具体的な根拠は何ら示されていない。
(4)〔控訴人の主張〕(4)に対し
 他のツイートのスクリーンショットを添付するという利用態様が、ツイッター社により削除その他の方法で具体的に規制されていない点も考慮すると、本件ツイートにおける引用は、公正な慣行に合致する範囲内にあるといえる。
(5)〔控訴人の主張〕(5)に対し
ア 本件投稿者は、控訴人からアカウントをブロックされ、控訴人のツイートについて引用リツイートをすることが事実上不可能となったために、やむを得ず、原告ツイートのスクリーンショットを添付して本件ツイートをしたものであることからすれば、本件投稿者には、敢えて引用元に通知がされないようにする意図まではなかったものと解される。
イ 控訴人が本件投稿者のアカウントをブロックしていたとしても、原告ツイートは一般的に公開されているツイートであると評価することができることからすれば本件ツイートにおける引用方法が公正な慣行に合致しないとまではいえない。
ウ ツイッター社のルールやポリシーにおける一方的な返信とは、ツイッター上において、メール機能等でやり取りをしている相手方から何ら返答がないにもかかわらず、当該相手方に対し、返信機能を用いてメール等を繰り返し送り付ける行為を指しているものと解されるところ、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートは、これに該当しない。
エ 本件ツイートにおいて添付された原告ツイートが検索にかからないとしても、オリジナルの原告ツイートの検索には影響を与えないと解されるから、本件ツイートが、検索機能の品質や他のユーザーの検索エクスペリエンスの低下につながるかは不明である。
オ 控訴人が主張するように、ツイッター内のコンテンツのスクリーンショットを撮影しようとするとURLの共有ボタンが強制的に表示されるようになっているかは定かではない。また、仮にそのような仕様となっているのであれば、かえって、ツイッター社は、他のツイートのスクリーンショットを撮影する行為が一般的に行われていることを前提としつつ、明確にこれを禁止する意図を有していないものとうかがわれる。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(著作物性の有無)について
 当裁判所も、原審と同様に、原告ツイートは言語の著作物に該当するものと判断する。その理由は、原判決5頁26行目の「著作権法10条1号」を「著作権法10条1項1号」に改めるほかは、原判決の説示(原判決5頁21行目ないし6頁4行目)のとおりであるから、これを引用する。
2 争点2(引用としての適法性)について
 当裁判所も、原審と同様に、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は著作権法32条1項の要件を満たす適法な引用であると判断する。その理由は、次のとおりである(原判決6頁6行目ないし8頁2行目を次のとおりに改める。)。
(1)検討
ア 公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されているところ(著作権法32条1項)、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内であること、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮すべきである。
イ そこで検討するに、原判決の「事実及び理由」第2の1の前提事実(2)のとおり、原告ツイートの本文は、「私の謎/休憩・仮眠・宿泊目的について国交省は7、8時間寝てもそれは休憩、夜から朝まで寝ても仮眠と見解。/活動反対派は、その行為をしたら宿泊目的で車中泊はダメ!日本語や常識でわかる。国交省のQ&Aに記載されている!/えっと、だからその行為やQ&Aの見解を国交省は休憩仮眠と言っているのだが」というものである。他方で、同前提事実(3)のとおり、本件ツイートの本文は、「国交省担当者が7、8時間寝ても良いと言ったのはあくまで『仮眠』ならばという前提で話をしてたでしょ?/貴方の支持者のDさんが国交省に確認した結果、宿泊と受け取れる車中泊は一泊でもご遠慮と回答を貰ってます/宿泊目的の車中泊はご遠慮で結果は出てますので間違った情報は流さないように」というものである。
 以上のとおりの各ツイートの記載内容によれば、原告ツイートは、車中泊につき控訴人が得たとする国土交通省の見解及び控訴人の活動に批判的な者の控訴人に対する意見を示した上で、この批判的意見に対する控訴人の見解を示したものであり、本件ツイートは、原告ツイートにおける国土交通省の見解に係る要約が誤っており、又は不正確であることを指摘する内容であるといえる。
 そうすると、本件ツイートは、原告ツイートを批評する内容のツイートであり、本件添付画像は、原告ツイートの内容を紹介するために添付されたものといえるから、本件投稿者が本件ツイートにおいて原告ツイートを引用した目的は、原告ツイートを批評することにあるといえる。
ウ そして、本件ツイートが原告ツイートの内容を批評するものであること、一つのツイートに係る表示画面においては本文の下に添付された画像が表示されること、本件ツイートの本文部分及び本件添付画像部分がほぼ同じ分量の文章であることを考慮すると、両部分は明瞭に区別することができる上、前者が主であり、後者が従であるという関係に立つものといえる。さらに、スクリーンショットその他の画像ファイルを添付してツイートをすることは、ツイッターにおける基本的機能として備えられていること(甲28)からすれば、本件投稿者が、本件ツイートにおいて原告ツイートを引用するに当たって、本件添付画像を添付するという方法を用いたことが不相当であるということはできない。
 以上の事情に加え、ツイッターはいわゆるソーシャルメディアであり、投稿されたツイートがインターネット上で広く共有されて批評の対象となることも当然に予定されているといえること、本件添付画像の添付に当たって原告ツイートの内容が改変されたなどの事情は存しないこと、原告ツイートが引用されたことによって控訴人に経済的損失等の不利益が生じたものとはうかがわれないことも考慮すると、本件ツイートにおける原告ツイートの引用の方法や態様は、公正な慣行に合致したものであるといえる。
エ また、本件添付画像は、原告ツイートの全文を撮影したスクリーンショットであるところ、原告ツイートの全文が本件ツイートの本文部分と共に示されることにより、本件ツイートの閲覧者が批評の対象とされている原告ツイートの内容を正確に知ることができるといえることからすれば、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は、本件ツイートの妥当性や客観性の担保に資するものといえる。さらに、ツイッターには一つのツイート当たり140字という文字数制限があり、原告ツイートもそれほどの分量ではないことからすれば、その全文を引用することが不相当であるということはできない。
 これらの事情を考慮すると、本件ツイートが原告ツイートの全文を引用したことは、原告ツイートの批評という目的との関係で必要かつ相当なものであり、正当な範囲内のものであるといえる。
オ 以上によれば、本件投稿者が、本件ツイートにおいて原告ツイートを引用したことは、著作物を引用して批評する方法や態様として公正な慣行に合致したものであり、かつ、批評という引用の目的との関係で正当な範囲内のものであるといえる。
 したがって、本件ツイートによる原告ツイートの引用は、著作権法32条1項の要件を満たす適法な引用であるといえる。
(2)控訴人の主張に対する判断
ア 主従関係に関する主張について(原判決「事実及び理由」の第3の2【原告の主張】(1)及び前記第2の3〔控訴人の主張〕(1))
(ア)控訴人は、本件ツイートの本文部分と本件添付画像部分につき、両者の内容等を考慮すると、前者が主であり、後者が従であるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、そもそも「主従関係」の有無は、「引用」の成否を判断する考慮要素の一つにすぎず、それのみで「引用」の成否が決まるものではないばかりか、前記(1)ウで検討したとおり、本件ツイートの内容や表示画面の形式、本件ツイートの本文部分及び本件添付画像部分の各文章の分量を考慮すると、前者が主であり、後者が従であるという関係に立つものと認めるのが相当である。
(イ)したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 出所の明示に関する主張について(原判決「事実及び理由」の第3の2【原告の主張】(2))
(ア)控訴人は、本件添付画像には控訴人のアカウント名全体や投稿日付、ユーザー名が記載されていないから、引用された原告ツイートの出所が明示されているとはいえない旨主張する。
 そこで検討するに、著作物を引用するに際しては、著作物の出所は、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならないとされているところ(著作権法48条1項柱書、同項1号)、合理的と認められる方法及び程度により明示されているか否かは、実際に行われた出所表示の内容や態様、出所の表示から元の著作物にたどり着くことが可能な程度に出所を特定しているか否かを考慮して決められるべきである。
 これを本件についてみるに、本件添付画像は、その表示内容からツイッター上の投稿であることが明らかであるといえるところ、本件添付画像においては、一部であるとはいえ控訴人のアカウント名が表示されている上、控訴人のプロフィール画像及び原告ツイートの全文が表示されていることからすれば、本件ツイートの閲覧者は、これらの情報を基にツイッター上で検索するなどすれば、原告ツイートにたどり着くことが可能であるというべきである。そして、このことは、本件添付画像にアカウント名の全部、ユーザー名及び原告ツイートの投稿日時が表示されていないことを考慮しても左右されないというべきである。
 そうすると、本件ツイートにおいて引用された原告ツイートについては、利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、著作物の出所が明示されているものといえる。
(イ)したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 引用の必要性に関する主張について(前記第2の3〔控訴人の主張〕(2))
(ア)控訴人は、ツイッターにおいて他のツイートを引用するには引用リツイート又はURLの記載という他の手段があるから、全文を複写したスクリーンショットを添付する必要性はなく、また、本件ツイートの内容からしても、原告ツイートの全文を引用する必要性はなかった旨主張する。
 しかしながら、前記(1)で検討したところに照らすと、本件ツイートにおいて原告ツイートの全文が引用されたことについては、引用の方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、批評という目的との関係で正当な範囲内のものであるといえる。
(イ)したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
エ 一般的に行われている行為であるか否かに関する主張について(前記第2の3〔控訴人の主張〕(3))
(ア)控訴人は、ツイッターにおいて、他のツイートのスクリーンショットを添付して引用する方法は一般的には行われていない旨主張する。
 しかしながら、引用リツイートの代替行為として、引用したいツイートのスクリーンショットを添付する方法が用いられている実情があることは、控訴人も認めているところである上、上記の方法を用いたツイートが著作権侵害となり得ることを注意喚起するウェブサイトが複数存在すること(甲21、37)からも裏付けられるものといえる。このように、ツイッターにおいては、一定数のユーザーが、他のツイートを引用するために、当該ツイートのスクリーンショットを添付する方法を用いている実情があるものと認められる。
(イ)したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
オ 本件規定に関する主張について(原判決「事実及び理由」の第3の2【原告の主張】(3)及び前記第2の3〔控訴人の主張〕(4))
(ア)控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付するツイートは、本件規定に反するものであるから、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は公正な慣行に合致する範囲内のものとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件規定は、ツイッター社とツイッターのユーザーとの間の利用規約にすぎないことからすれば、本件規定に反する行為であるからといって、直ちに当該行為が引用に係る公正な慣行に合致しないものであると評価されるものではないというべきである。
 この点を措くとしても、本件規定は、ツイートの複製等について、原則としてツイッター社が提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨を定めているにすぎず、他の規定を併せて考慮しても、本件規定が他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートを禁止するものであるか否かは必ずしも明らかではないというべきであるから、本件ツイートが本件規定に反するということはできない。
(イ)したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
カ ツイッター社のルール等に反するか否かに関する主張について
(ア)原判決「事実及び理由」の第3の2【原告の主張】(3)並びに前記第2の3〔控訴人の主張〕(5)ア及びイの各主張について
a 控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートをした場合には、引用リツイートによる場合とは異なり、引用元に引用の事実が通知されないため、ツイートを引用された者は自分が知らないところで議論がされてしまい、また、ブロックした人物からツイートを引用されてしまうことがある旨主張する。
 しかしながら、ツイッターにおける上記の通知機能は、ユーザーの利便性を高めるための付加的な機能にすぎないというべきである。また、証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば、ツイッターにおけるブロック機能は、ブロック対象のアカウントがツイッターにログインした状態においてのみ、ツイートの閲覧を制限するなどの効果をもたらすものにすぎず、例えば、ブロック対象者がツイッターにログインせずに、又はブロックされた者とは異なるアカウントでアクセスした場合には、ブロックした者が公開しているツイートを閲覧することがなお可能である。さらに、ツイッターにおいては、投稿されたツイートがインターネット上で広く共有されて批評の対象となることも当然に予定されており、ツイートを投稿した者も、自らのツイートが批評されることや、その過程においてツイートが引用されることを当然に想定しているものといえる。
 以上の事情を考慮すると、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートがされた場合に上記の通知機能やブロック機能が働かなくなるからといって、控訴人の著作者としての権利が、引用リツイートの場合と比較して殊更に害されるものということはできない。そうすると、控訴人が指摘する上記の各事情をもって、本件ツイートにおいて原告ツイートが引用されたことにつき、公正な慣行に合致しないものであるということはできない。
b したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(イ)前記第2の3〔控訴人の主張〕(5)ウの主張について
a 控訴人は、引用元に通知されない方法を用いてツイートをすることは、ツイッター社が禁止する一方的な返信に当たる旨主張する。
 しかしながら、ツイッター社のポリシー(甲33)において禁止されているのは、「一方的な返信」を「大量、過剰、膨大に送信すること」であることからすれば、一つのツイートにすぎない本件ツイートが直ちにこれに当たるものということはできない。また、「一方的な返信」とは、ユーザー間における直接のメッセージのやり取りにおいて、相手方の意思に反して返信をすることを意味すると解されるところ、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートが直ちにこれに当たるものということもできない。
b したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ)前記第2の3〔控訴人の主張〕(5)エの主張について
a 控訴人は、画像として添付されたツイートを検索することはできないため、ツイッターにおける検索機能の品質等が低下してしまう旨主張する。
しかしながら、他のツイートのスクリーンショットを添付したツイートがされた場合であっても、画像として添付されたツイートが削除等されずにツイッター上に公開されている間は、これを検索することが可能であることからすれば、上記のような方法を用いたツイートがされることによって直ちに検索機能の品質等が低下するものということはできない。
b したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(エ)前記第2の3〔控訴人の主張〕(5)オの主張について
a 控訴人は、ツイッター内のコンテンツのスクリーンショットを撮影しようとするとURLの共有ボタンが強制的に表示されるようになっていることからすれば、ツイッター社がそのような行為を禁止する意図を有していることがうかがわれる旨主張する。
 しかしながら、控訴人が提出した証拠(甲37)をみても、上記のような表示がされるのは一部のユーザーに限られていることからすれば、ツイッター社が、他のツイートのスクリーンショットを撮影する行為を一般的に禁止しているものとまではいえないというべきである。
b したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
キ その他
 このほか、控訴人は、争点2に関して縷々主張するが、いずれも前記の判断を左右するものではない。
(3)小括
 以上のとおり、本件ツイートにおける原告ツイートの引用は、著作権法32条1項の要件を満たす適法な引用であるといえる。そうすると、本件ツイートにより、原告ツイートに係る控訴人の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるということはできないから、控訴人は、被控訴人に対し、本件ツイートに係る発信者情報開示請求権を有しない。
3 結論
 以上によれば、控訴人の請求を棄却した原審の判断は相当である。
 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部
 裁判長裁判官 東海林保
 裁判官 都野道紀
 裁判官 中平健は、転補につき、署名押印することができない。
裁判長裁判官 東海林保
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