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【事件名】GMOインターネットへの発信者情報開示請求事件H 【年月日】令和5年2月16日 東京地裁 令和4年(ワ)第18631号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和4年12月26日) 判決 原告株式会社フライングドッグ(以下「原告フライングドッグ」という。) 原告キングレコード株式会社(以下「原告キングレコード」という。) 原告ら訴訟代理人弁護士 林幸平 同 笠島祐輝 同 尋木浩司 ほか 被告GMOインターネットグループ株式会社 同訴訟代理人弁護士 川ア友紀 同 八木優大 同 松井将征 主文 1 被告は、原告フライングドッグに対し、別紙発信者情報目録記載1の各情報を開示せよ。 2 被告は、原告キングレコードに対し、別紙発信者情報目録記載2の各情報を開示せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、原告らが、氏名不詳者ら(以下「本件発信者ら」という。)がいわゆるファイル交換共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、別紙著作物目録記載の商業用音楽CD(以下、符号に従い「本件レコード1」などといい、併せて「本件各レコード」という。)を送信可能化したことにより、本件レコード1に係る原告フライングドッグの送信可能化権を、本件レコード2に係る原告キングレコードの送信可能化権を、それぞれ侵害したと主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。) (1)当事者 ア 原告らは、多数のレコードを製作の上、これらを複製してCD等として販売する株式会社である。 イ 被告は、インターネットサービスプロバイダ事業等を営む株式会社であり、プロバイダ責任制限法2条3号にいう特定電気通信役務提供者に該当する。 (以上につき、弁論の全趣旨) (2)著作権の帰属 ア 原告フライングドッグは、令和元年7月24日、本件レコード1を発売した。 イ 原告キングレコードは、令和元年5月8日、本件レコード2を発売した。 (以上につき、弁論の全趣旨) (3)BitTorrentの仕組み BitTorrentは、いわゆるP2P形式のファイル共有に係るソフトであり、その概要や利用の手順は、以下のとおりである。 ア BitTorrentにおいては、特定のファイルを細分化し(以下、細分化されたファイルの一部を「ピース」という。)、ネットワーク上のユーザーに分散して共有させる。 イ BitTorrentを通じて特定のファイルをダウンロードしようとするユーザーは、まず、「インデックスサイト」と呼ばれるウェブサイトに接続し、当該ファイルの所在等の情報が記録されたトレントファイルをダウンロードする。 そして、ユーザーは、当該トレントファイルをBitTorrentクライアントソフトに読み込ませることにより、BitTorrentが、当該トレントファイルに記録されたトラッカーに接続し、当該特定のファイルの提供者のリストを要求することになる。トラッカーは、ファイルの提供者のリストを管理するサーバーであり、上記の要求に応じ、自身にアクセスしている特定のファイル提供者のIPアドレスが記載されたリストをユーザーに返信する。 ウ リストを受け取ったBitTorrentクライアントソフトは、当該リストに記載されたIPアドレスの割当てを受けた、当該ファイルのピースを持つ他の複数のユーザーに接続し、それぞれから、当該ピースのダウンロードを開始する。そして、全てのピースのダウンロードが終了すると、元の一つの完全なファイルが復元される。 エ 完全な状態のファイルを持つユーザーは、「シーダー」と呼ばれる。また、目的のファイルにつきダウンロードが完了する前のユーザーは「リーチャー」と呼ばれるが、ダウンロードが完了し、完全な状態のファイルを保有すると、当該ユーザーは自動的にシーダーとなり、今度は、リーチャーからの求めに応じて、当該ファイルの一部(ピース)をアップロードしてリーチャーに提供することになる。 また、リーチャーは、目的のファイル全体のダウンロードが完了する前であっても、既に所持しているファイルの一部(ピース)を、他のリーチャーの求めに応じてアップロードする。すなわち、リーチャーは、目的のファイルをダウンロードすると同時に、当該ファイルについて同時にアップロード可能な状態に置かれることになり、他のリーチャーに当該ファイルの一部を送信することが可能な状態になっている。 オ BitTorrentを通じてファイルをダウンロードした利用者は、BitTorrentクライアントソフトを停止させるまで、トラッカーに対し、当該ファイルが送信可能であることを継続的に通知し、他の不特定の利用者からの要求があれば、常にこれを送信することが可能な状態となる。すなわち、ユーザーは、他のユーザーと共同し、それぞれが保有するピースを送信することにより、特定のファイルのダウンロードを希望するユーザーに対し、当該ファイルの全体を受信させる役割を担い続けることになる。 (以上につき、甲2、7、12、14、弁論の全趣旨) (4)原告らによる著作権侵害調査の概要 ア 原告フライングドッグは、本件訴訟の提起に先立って、株式会社Flow(以下「本件調査会社」という。)に対し、本件レコード1に係る著作権侵害についての調査(以下「本件調査1」という。)を依頼した。 本件調査会社は、本件調査1に当たって、P2PFINDERという名称の著作権侵害検出システム(以下「本件検知システム」という。)を使用したところ、本件検知システムは、別紙発信者情報目録記載1の時刻に、同記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続していた氏名不詳者(以下「本件発信者1」という。)から、本件レコード1に係る楽曲ファイル(以下「本件ファイル1」という。)をダウンロードした。(甲2、3、14、弁論の全趣旨) イ 原告キングレコードは、本件訴訟の提起に先立って、本件調査会社に対し、本件レコード2に係る著作権侵害についての調査(以下「本件調査2」という。)を依頼した。 本件調査会社は、本件調査2に当たって、本件検知システムを使用したところ、同システムは、別紙発信者情報目録記載2の時刻に、同記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続していた氏名不詳者(以下「本件発信者2」という。)から、本件レコード2に係る楽曲ファイル(以下「本件ファイル2」といい、本件ファイル1と併せて「本件各ファイル」という。)をダウンロードした。(甲7、8、14、弁論の全趣旨) (5)本件発信者情報の保有 被告は、本件発信者情報を保有している。(弁論の全趣旨) 3 争点及びこれに対する当事者の主張 本件においては、本件検知システムが、@別紙発信者情報目録記載1の日時において、同記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続していた本件発信者1から、本件ファイル1をダウンロードした事実及びA別紙発信者情報目録記載2の日時において、同記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続していた本件発信者2から、本件ファイル2をダウンロードした事実については争いがない(第2回口頭弁論調書参照)。 そして、本件における争点は、上記事実を前提として、本件発信者らが本件各レコードに係る原告らの送信可能化権を侵害したといえるか否かである。 (1)原告らの主張 本件検知システムによって本件発信者らに割り当てられたIPアドレス等の情報を取得できたのは、トラッカーに、ファイルが送信可能なIPアドレスであるとの情報が記録されていたからである。そして、トラッカーにそのような記録がされていたのは、当該IPアドレスの割当てを受けたユーザーが使用するBitTorrentクライアントソフトからトラッカーに対し、自動的に、BitTorrentを用いてダウンロードした本件各ファイルの送信が可能であることが通知されていたためである。 すなわち、本件発信者らは、被告から、別紙発信者情報目録記載の各IPアドレスの割当てを受け、被告の提供するインターネット接続サービスを介し、トラッカーに対し、同記載の日時より前にBitTorrentを用いてダウンロードした本件各ファイルを送信可能であることを通知していたものであり、その結果、トラッカーには、別紙発信者情報目録記載の各IPアドレスが、対象ファイル提供者のIPアドレスの一覧に登録されていたものである そうすると、別紙発信者情報目録記載の日時頃に、同記載のIPアドレスを被告から割り当てられた本件発信者らは、本件レコード1又は2の楽曲ファイルが保存された端末をインターネットに接続することにより、当該ファイルを自動公衆送信し得る状態に置き(アップロードし)、もって、原告らの送信可能化権を侵害したということができる。 (2)被告の主張 争う。 第3 当裁判所の判断 1 権利侵害の明白性 前記前提事実によれば、本件発信者1及び2は、それぞれ、本件ファイル1又は2をその端末にダウンロードして、当該ファイルを不特定多数の者からの求めに応じ、BitTorrentを通じて自動的に送信し得るようにした上、被告から別紙発信者情報目録記載1又は2のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、同記載の各日時において、ダウンロードと同時にアップロードが可能な状態となる本件検知システムに本件ファイル1又は2のピースを実際にダウンロードさせたことが認められる。 これらの事情を踏まえると、本件発信者1が、別紙発信者情報目録記載1の日時において本件レコード1に係る原告フライングドッグの送信可能化権を侵害したほか、本件発信者2が、別紙発信者情報目録記載2の日時において本件レコード2に係る原告キングレコードの送信可能化権を侵害したものと認めるのが相当である。そして、当事者双方提出に係る証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはできない。 そうすると、権利侵害の明白性を認めるのが相当である。 2 正当な理由 弁論の全趣旨によれば、原告らは、本件発信者らに対し、損害賠償請求を予定していることが認められることからすると、原告らには、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものといえる。 3 したがって、原告らは、被告に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができる。 4 結論 よって、原告らの請求はいずれも理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 小田誉太郎 裁判官 古賀千尋 (別紙)発信者情報目録 1 令和3年(2021年)11月14日18時19分32秒頃に「●(省略)●」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名(又は名称)、住所及び電子メールアドレス 2 令和3年(2021年)11月16日18時19分9秒頃に「●(省略)●」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名(又は名称)、住所及び電子メールアドレス (別紙)著作物目録 1 実演家名 JUNNA 商業用レコード名 「イルイミ」 商品番号 VTCL−35304 2 実演家名 内田雄馬 商業用レコード名 「Speechless」 商品番号 KICM−1930 |
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