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【事件名】ツイッターへの発信者情報開示請求事件M
【年月日】令和5年1月20日
 東京地裁 令和4年(ワ)第24629号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和4年11月28日)

判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士 藤吉修崇
同 瀧坪渉
被告 Twitter,Inc.
同訴訟代理人弁護士 中島徹
同 平津慎副
同 中村彰男


主文
1 被告は、原告に対し、別紙アカウント目録記載のアカウントの保有者の電話番号を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者が、被告の管理運営するSNSであるツイッター上の別紙アカウント目録記載のアカウント(以下「本件アカウント」という。)において、原告が作成した別紙著作物目録記載の文章(以下「原告文章」という。)をスクリーンショットの方法により複写して作成した画像(以下「本件画像」という。)の掲載を含む別紙投稿記事目録記載のツイート(以下「本件ツイート」という。)を投稿したことにより、「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)である原告文章に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、上記氏名不詳者に対して損害賠償請求をするため、被告が保有する上記氏名不詳者の電話番号(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実)
(1)当事者
ア 原告は、「B」の筆名で、ビジネスにおけるSNSの利用方法についての情報を発信している。
イ 被告は、SNSであるツイッターを管理運営する会社である。
(2)原告文章
 原告は、令和4年6月4日午前9時36分頃、SNSであるインスタグラム上の自らのアカウントにおいて、自らが作成した原告文章を投稿した。
(3)本件ツイート
 氏名不詳者は、ツイッター上の本件アカウントにおいて、別紙投稿記事目録の投稿日時欄記載の日時に、同目録の投稿内容欄記載の内容に続いて本件画像を掲載したツイート(本件ツイート)を投稿した。
(4)本件発信者情報等
ア 被告は、本件ツイートの投稿に係るプロバイダ責任制限法5条1項に規定する特定電気通信役務提供者であり、本件発信者情報を保有している。
イ 原告は、本件ツイートを投稿した氏名不詳者に対し、損害賠償請求をする予定である。
3 争点
(1)本件ツイートの投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
(2)原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか(争点2)
4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(本件ツイートの投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(原告の主張)
 原告文章は、書籍の紹介であるところ、論評部分は原告独自の文章であり、原告が改行の仕方や文章表現、文章の構成を工夫し、原告の思想感情を表現したものであって、原告の個性が反映されているから、「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)に該当する。
 氏名不詳者は、原告文章をスクリーンショットの方法により複写して本件画像を作成し、これを被告の管理するサーバ上にアップロードして、閲覧者の求めに応じて本件画像を閲覧することができる状態にすることにより、原告文章に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害した。
 原告は、第三者に対して原告文章の利用を許諾したことはないし、本件ツイートは、出典も明記しておらず、引用としての目的上正当な範囲内で行われたものともいい難いから、違法性阻却事由は認められない。
 したがって、氏名不詳者が本件画像の掲載を含む本件ツイートを投稿したことにより、原告文章に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。
(被告の主張)
 争う。
(2)争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について
(原告の主張)
 原告は、氏名不詳者に対し、損害賠償請求をすることを予定しており、このためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要がある。
(被告の主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件ツイートの投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
 前記前提事実(2)のとおり、原告は、別紙著作物目録記載のとおりの内容の原告文章を作成したところ、原告文章は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸等の範囲に属するもの(著作権法2条1項)ということができるから、「言語の著作物」(同法10条1項1号)に該当し、原告はその著作者であると認められる。
 そして、前記前提事実(3)のとおり、氏名不詳者は、ツイッター上の本件アカウントにおいて、原告文章をスクリーンショットの方法により複写して作成した本件画像の掲載を含む本件ツイートを投稿することにより、被告が管理するサーバ上に原告文章を再製し、かつ、公衆によって直接受信されることを目的として送信したものであるから、原告文章に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したと認めるのが相当である。
 本件において、違法性阻却事由が存在することは全くうかがわれない。
 以上によれば、本件ツイートの投稿により、原告文章に係る原告の著作権が侵害されたことは明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項1号)。
2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について
 前記前提事実(4)のとおり、原告は、本件ツイートを投稿した氏名不詳者に対し、損害賠償請求をする予定であるところ、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。
 したがって、原告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。
第4 結論
 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 小川暁
 裁判官 間明宏充


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