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【事件名】ツイッターへの発信者情報開示請求事件H
【年月日】令和4年12月26日
 東京地裁 令和4年(ワ)第25147号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和4年11月24日)

判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士 田中圭祐
同 吉永雅洋
同 遠藤大介
同 蓮池純
同 神田竜輔
同 鈴木勇輝
被告 Twitter,Inc.
同訴訟代理人弁護士 中島徹
同 平津慎副


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク。以下、単に「ツイッター」という。)において、氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)により別紙アカウント情報目録記載のアカウントを通じて別紙投稿記事目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)をされたことにより、本件投稿に画像として添付された別紙著作物目録掲記の画像(以下「本件画像」という。)に係る著作権(複製権及び公衆送信権)のほか、プライバシー権を侵害されたと主張して、ツイッターを運営する被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)
(1)当事者等(甲4ないし6)
ア 原告は、別紙著作物目録掲記の本件画像につき、自らを被写体として撮影することにより、これを作成し、SNS上において、自身のアイコンとして使用していた。
イ 被告は、ツイッターを運営する米国法人であり、プロバイダ責任制限法2条3号にいう特定電気通信役務提供者に該当する。
(2)本件投稿等(甲1、2、4、6)
ア 本件発信者は、別紙投稿記事目録の投稿日時欄記載の日時に、ツイッターにおいて、同目録の添付画像1ないし3を添付して、同目録の投稿内容記載の本件投稿をした。なお、同目録の添付画像2は、本件画像と同一のものである。
イ 被告は、本件発信者情報を保有している。
3 争点
(1)本件投稿による権利侵害の明白性(争点1)
ア 本件投稿による著作権侵害の明白性(争点1−1)
イ 本件投稿によるプライバシー権侵害の明白性(争点1−2)
(2)正当な理由の有無(争点2)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1−1(本件投稿による著作権侵害の明白性)について
(原告の主張)
(1)著作物性について
 本件画像は、原告が自らを紹介する目的で、自らの印象が適切に表現されるように、構図、被写体及び撮影場所等を工夫したものであり、原告の思想、感情が創作的に表現されているから、著作物性が認められる。
(2)著作権の帰属について
本件画像は、原告が撮影したものであるから、原告に著作権が帰属する。
(3)複製権及び公衆送信権の侵害について
 本件発信者は、本件画像をそのままコピーし、これを添付して本件投稿に及んでいる。
 そして、本件投稿は、インターネットに掲載する上でサーバへのアップロードを必然的に伴うものであり、当該サーバ内に本件画像を有形的に再製しているため、本件画像に係る原告の複製権を侵害することが明らかである。
 また、インターネットへのアップロードは、公衆によって直接受信されることを目的として、無線又は有線電気通信を行うもののうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うものであり、自動公衆送信に該当するから、本件投稿は、本件画像に係る原告の公衆送信権を侵害することが明らかである。
(4)権利制限規定の適用がないことについて
 原告は、第三者に対して、本件画像の利用を許諾したことはない。また、本件投稿は、原告を「要注意人物」として晒し上げることを目的としており、何らの公益性、公共性を有するものではないから、著作権法32条1項の引用等の権利制限規定の要件を充たさないことが明らかである。
(被告の主張)
 争う。
2 争点1−2(本件投稿によるプライバシー権侵害の明白性)について
(原告の主張)
(1)プライバシー権の侵害について
 本件投稿は、原告の氏名、顔写真及び年齢などといった個人を特定することが可能な情報を記載した上で、「マッチングアプリ要注意人物」、「Tinder」、及び「pairs」とのハッシュタグを付しており、原告がマッチングアプリを利用しているという事実を公表するものである。
 そして、上記事実は、私生活上の領域に係り(私事性)、一般人の感受性を基準にすると公開を欲しないであろうと認められ(秘匿性)、一般の人々に未だ知られていない(非公知性)事柄であるから、本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害することが明らかである。
(2)違法性阻却事由が存在しないことについて
 本件投稿は、専ら原告を「要注意人物」として晒し上げることを目的としており、何ら公共性や公益性が認められないことは明白であり、公表によって得られる公共の利益自体存在しない一方で、容易に個人を特定できる種々の情報を公表するものであり、かつ、マッチングアプリを利用しているというプライバシー性の高い事項を公表するものである。
 そうすると、公表することによって得られる公共の利益に比して、公表されない法的利益が明らかに優越するため、プライバシー権侵害についての違法性阻却事由は存在しない。
(被告の主張)
 争う。
3 争点2(正当な理由の有無)について
(原告の主張)
 原告は、本件発信者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であり、そのためには、被告から本件発信者情報の開示を受ける必要がある。
 そうすると、原告には、被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
(被告の主張)
 不知又は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件投稿による権利侵害の明白性)について
(1)争点1−1(本件投稿による著作権侵害の明白性)について
ア 著作物性及び著作権の帰属について
 前提事実及び証拠(甲4、6)によれば、本件画像は、原告が、自らのスマートフォンのカメラを使用して、自らを紹介するために自身の容ぼうを撮影したものであり、撮影の構図、ピント、明るさ等において、原告の容ぼうが印象深くなるように工夫がされていることが認められる。
 上記認定事実によれば、本件画像は、原告の容ぼうが印象深くなるように工夫して表現した点において、作成者の個性が表れたものであり、作成者の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たるというべきである。また、上記認定事実によれば、本件画像は、原告が自ら撮影したものであることが認められることからすると、本件画像の著作権は、原告に帰属するものといえる。
イ 著作権(複製権又は公衆送信権)の侵害について
 前提事実及び証拠(甲1、2、4、6)によれば、本件発信者は、本件投稿において、本件画像と同一の画像(別紙投稿記事目録の添付画像2)をツイッターに投稿したことが認められる。
 そうすると、本件投稿は、本件画像に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであることが明らかである。そして、本件証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはできず、被告も、違法性阻却事由を主張するものではない。
(2)小括
 したがって、その余について判断するまでもなく、本件投稿による権利侵害の明白性が認められる。
2 争点2(正当な理由の有無)について
 証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者に対し、損害賠償等を請求することを予定していることが認められる。したがって、前記1において説示したところを踏まえると、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものといえる。
 以上によれば、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができる。
3 結論
 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 中島基至
 裁判官 古賀千尋
 裁判官 國井陽平


(別紙)発信者情報目録
 別紙投稿記事目録記載の記事を投稿した者に関する情報であって、次に掲げるもの。
 別紙アカウント情報目録記載のアカウント管理者の電話番号。
 以上

(別紙)投稿記事目録
 省略

(別紙)アカウント情報目録
 省略

(別紙)著作物目録
 省略
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