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【事件名】訪日外国人向けWEBサイトの投稿写真事件(2)
【年月日】令和4年12月22日
 知財高裁 令和4年(ネ)第10058号 著作権侵害差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁令和3年(ワ)第13623号)
 (口頭弁論終結日 令和4年9月27日)

判決
控訴人 ジャパン・トラベル株式会社
被控訴人 Y
同訴訟代理人弁護士 山本隆司


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 前項の敗訴部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)
 本件は、別紙著作物目録記載の写真(以下「原告写真」という。)を撮影した被控訴人が、控訴人がその管理運営するウェブサイトに係るサーバーに別紙被告写真目録1及び同目録2記載の各写真(以下「被告各写真」といい、同目録1記載の写真を「被告写真1」、同目録2記載の写真を「被告写真2」という。)をアップロードしたことにより、被控訴人の本件各写真に係る著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したと主張して、控訴人に対し、著作権法112条1項に基づき、原告写真の複製等の差止めを求めるとともに、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として33万9092円及びこれに対する不法行為の日である平成30年10月6日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は、被控訴人の請求のうち、差止請求に関する部分については全部認容し、損害賠償請求に関する部分については7万円及びこれに対する平成30年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求を棄却した。
 控訴人は、原判決中、控訴人敗訴部分を不服として本件控訴を提起した。
1 前提事実
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決2頁19行目の「甲1」を「甲1、6」と、同頁21行目から22行目にかけての「原告の氏名(ペンネーム)を付して公表した。」を「写真共有サイト「flickr」に「Japanexperterna.se」との表示名(displayname)で公開した。」と改め、同頁22行目の「記事の」を削り、同頁25行目の「被写体の」から末行の「により、」までを削る。
(2)原判決3頁6行目の「被告各写真は、」から同頁7行目から8行目にかけての「感得できる。」までを削り、同頁8行目の「6日頃、」を「6日、それぞれ」と改め、同頁14行目の「という。」を「という。甲3の3」と、同頁19行目の「19日」を「19日到達の内容証明郵便で」と、同頁20行目の「警告書」を「警告書(甲5の1、2)」と改める。
2 争点
(1)職務著作の成否(争点1)(当審における控訴人の追加主張関係)
(2)複製及び公衆送信等の主体(争点2)
(3)差止めの必要性(争点3)
(4)不法行為の成否及び損害額(争点4)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(職務著作の成否)について(当審における控訴人の追加主張関係)
【控訴人の主張】
 原告写真は、被控訴人がスウェーデン国の旅行会社であるJapanexperterna社が企画・運営する同国の観光客のための日本旅行におけるガイドとして職務上作成した著作物であり(乙20の1、22)、同社のウェブサイトに掲載された原告写真は、「?Japanexperterna.se」との法人名義で公表されているから(乙20の2)、原告写真については職務著作(著作権法15条)が成立する。
 また、写真共有サイト「flickr」に掲載された原告写真には、被控訴の著作権表示がなく(乙38)、同サイトの「Japanexperterna.se」の「About」のページにも、被控訴人の著作権表示はない(乙36、37)。
 したがって、原告写真の著作者は、控訴人ではなく、Japanexperterna社であり、その著作権及び著作者人格権は同社に帰属する。
【被控訴人の主張】
 被控訴人は、2014年(平成26年)3月24日、原告写真を撮影し、その頃、写真共有サイトの「flickr」上に「Japanexperterna.se」のペンネームで公表した(甲1)。「flickr」上の「Japanexperterna.se」をクリックすると、「Japanexperterna.se」の「About」のページに遷移し、そこには、「AllphotospostedonthisaccountaretakenandcopyrightedbyY.」(訳文・このアカウントに掲載されたすべての写真は、Yが撮影し著作権を保有しています。)との記載がある(甲22)。
 したがって、原告写真の著作者は、被控訴人であり、その著作権及び著作者人格権は被控訴人に帰属するものであり(甲2)、原告写真について職務著作は成立しない。
(2)争点2(複製及び公衆送信等の主体)について
 次のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の3(1)記載のとおりであるから、これを引用する。
【当審における控訴人の補充主張】
 控訴人の会員の記事は、控訴人とは別会社であるメトロワークス社の会員投稿システム(クリエイティブ・システム)の記事作成ツールで作成され、そこから本件ウェブサイトの広告、スポンサー記事の制作・管理システム(ウェブサイト・システム)に投稿される(乙30)。
 会員は、クリエイティブ・システムの記事作成ツールで文章を作成し、文章とは別に写真をアップロードし、アップロードされた写真は文章に関連付けられるが、被告地域パートナーによって記事のレビューがされるまで、本件ウェブサイトへの投稿のための送信は待機状態となる(乙31)。会員は、写真のアップロードの際、自分が撮影したものか、使用許可を得ているかなどの情報を指定する。
 被告地域パートナーは、控訴人の従業員や履行補助者ではなく、その主な役目は、新人の会員や英語に自信がない会員のヘルパーとなって、その投稿を助け、投稿される記事の品質を保つことにある。
 被告地域パートナーは、会員が本件ウェブサイトに投稿する記事について、地名、駅名、公共交通機関名、店舗名等に基本的な誤りがないかどうかを確認するのみであって、掲載予定の写真については、何ら審査を行っていない。すなわち、上記のとおり、会員は、文章とは別に写真をアップロードし、自分が撮影したものか、使用許可を得ているかなどの情報を指定するが、これは自己申告に基づくものであって、被告地域パートナーが会員から投稿された写真について著作権侵害の有無をチェックする仕組みは存在しない。
 本件記事(甲3の3)についても、被告地域パートナーによって、基本的な事実、行程が可能であるかどうかについて確認が行われたにすぎず、掲載予定の被告各写真の著作権侵害の有無については審査が行われていない。
 以上によれば、控訴人は、被告各写真の複製、公衆送信等の主体とはいえない。これと異なる原判決の判断は誤りである。
【当審における被控訴人の補充主張】
 控訴人は、「地域パートナー」という制度を設け、被告地域パートナーに対し、本件ウェブサイトへの投稿記事に対する審査権を与えている。
 そして、会員規約(甲12)に基づいて、会員からの投稿記事について審査権を持つのは控訴人であるから、被告地域パートナーによる審査は、投稿者の履行補助者としての行為ではなく、控訴人の履行補助者としての行為である。
 すなわち、控訴人又はその履行補助者である被告地域パートナーが、内部に保存された投稿記事を取り出して、インターネットに接続された本件ウェブサイトに掲載する行為を行っており、この行為が公衆送信行為に該当し、また、投稿記事は、被告地域パートナーによる審査で承認されなければ、本件ウェブサイト上に公衆送信されないのであるから、公衆送信の主体は、投稿者ではなく、控訴人である。
 このように控訴人は、本件ウェブサイトに掲載する投稿記事について審査段階を設けているから、記事に含まれるおそれのある著作権侵害についてこれを回避するよう注意すべき義務があるところ、控訴人は、被告各写真の掲載に当たって、上記注意義務を尽くさなかった過失がある。
(3)争点3(差止めの必要性)について
 原判決の「事実及び理由」の第2の3(2)記載のとおりであるから、これを引用する。
(4)争点4(不法行為の成否及び損害額)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の3(3)記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決6頁4行目の「正規のライセンス料」を「著作権法114条3項に基づく損害額」と、同頁11行目の「18万9092円」を「18万9092円(甲7、8)」と改め、同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「したがって、被控訴人の著作権法114条3項に基づく使用料相当額の損害額(原告写真に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額)は、18万9092円を下らない。」
イ 原判決6頁12行目の「慰謝料」を「著作者人格権侵害に係る慰謝料」と改め、同頁13行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「ウ 小括
 よって、被控訴人は、控訴人に対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として33万9092円(前記イの合計額)及びこれに対する不法行為の日である平成30年10月6日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
ウ 原判決6頁18行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「 また、被控訴人は、プロの写真家として写真のライセンス販売をしたこともなく、日本写真家ユニオンの会員でもないから、原告写真の商業価値はゼロである。著作権法114条3項に基づく損害額算定の基礎となる被告各写真の使用期間は、米国で原告写真の著作権登録がされた2020年5月29日から起算すべきであるから、被控訴人主張の2年以上ではなく、4か月と17日である。
 さらに、著作者人格権侵害に係る慰謝料については、ウェブサイトのサイズ規格に合わせるための両端の単純なトリミングは、ウェブサイトの表示の際にシステムによって自動的に行われるものであり、世界的にも認められているから、原判決認定の慰謝料2万円は不当である。」
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決6頁20行目から22行目までを次のとおり改める。
「 前記前提事実と後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件ウェブサイトについて」
(2)原判決9頁10行目、14行目、16行目の各「商品」をいずれも「賞品」と改め、同頁24行目の「記事を」の次に「投稿システム(クリエイティブ・システム)を用いて」を加え、同頁同行目の「本件ウェブサイトで、」を削り、同頁末行から10頁1行目にかけての「表示されたが」を「表示されるが」と改める。
(3)原判決10頁3行目の「されていた。」を「されている。」と、同頁9行目の「被告パートナー」を「被告地域パートナー」と、同頁12行目の「乙5、」を「乙5、30、31、」と、同頁15行目の「エ本件記事について」を「(2)本件記事について」と、同頁16行目の「本件記事は」を「本件記事(甲3の3)は」と、同頁22行目の「本件写真1」を「被告写真1」と、同頁23行目の「(甲3の1)」を「(甲3の3)」と改める。
2 争点1(職務著作の成否)について(当審における控訴人の追加主張関係)
(1)前記前提事実(2)と証拠(甲1、22)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、2014年(平成26年)3月24日、京都市内で、別紙著作物目録記載の原告写真(甲1)を撮影し、同月中に、写真共有サイト「flickr」上に「Japanexperterna.se」の表示名、「PlumtreesattheKitanoTenmangu」(訳文・「北の天満宮の梅の木」)のタイトルで公開したこと、「Japanexperterna.se」の表示名をクリックすると、「Japanexperterna.se」の「About」のページに遷移し、同ページには「AllphotospostedonthisaccountaretakenandcopyrightedbyY.」(訳文・このアカウントに掲載されたすべての写真は、Yが撮影し著作権を保有しています。)との記載があること(甲22)、原告写真は、写真の著作物であることが認められる。
 上記認定事実によれば、原告写真の著作者は、その撮影者である被控訴人であり、原告写真の著作権及び著作者人格権は、被控訴人に帰属することが認められる。
(2)これに対し、控訴人は、原告写真は、被控訴人がスウェーデン国の旅行会社であるJapanexperterna社が企画・運営する同国の観光客のための日本旅行におけるガイドとして職務上作成した著作物であり(乙20の1、22)、同社のウェブサイトに掲載された原告写真は、「?Japanexperterna.se」との法人名義で公表されているから(乙20の2)、原告写真については職務著作(著作権法15条)が成立する旨主張する。
 しかしながら、職務著作が成立するためには、法人その他使用者の発意に基づき、法人等の業務に従事する者が、職務上作成する著作物であって、公表名義が法人等であることの要件を満たすことが必要であるが(著作権法15条)、本件においては、原告写真がJapanexperterna社の発意に基づいて作成されたことを認めるに足りる証拠はなく、また、原告写真が「flickr」上に公開された際、同社の著作名義が表示されたことを認めるに足りる証拠はないから、原告写真の公表名義が同社であるものとは認められない。かえって、前記(1)の認定事実によれば、「flickr」上には、「Japanexperterna.se」の表示名に関し、「AllphotospostedonthisaccountaretakenandcopyrightedbyY.」(訳文・このアカウントに掲載されたすべての写真は、Yが撮影し著作権を保有しています。)との記載があり、原告写真は、被控訴人(Y)の著作名義で公表されたものと認められる。
 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
3 争点2(複製及び公衆送信等の主体)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決10頁25行目の「6日頃」を「6日」と、11頁1行目の「いえる。」を「いえる(前記1(2))。」と改める。
(2)原判決11頁3行目から4行目までを次のとおり改める。
「(2)ア 原告写真は、被写体の構図、レンズ・カメラの選択、シャッターチャンス、シャッタースピード、絞りの選択等により、被控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものであり、被告各写真は、原告写真とその表現上の本質的特徴である創作的表現を共通にするから、原告写真を複製したものと認められる。
 そして、前記1(2)によれば、本件投稿者は、原告写真の複製物である被告各写真を本件記事の文章と共に投稿システムを用いて控訴人に送信したものと認められる。」
(3)原判決11頁12行目から13行目にかけての「と推認することができる。」を「ものと認められる。」と改める。
(4)原判決11頁14行目の「コンサルティング業等」を「コンサルティング業務等」と改め、同頁18行目の「「「インバウンド」を「「インバウンド」と、同頁24行目の「記事の送信を受けて、その記事を」を「投稿された記事を」と改める。
(5)原判決12頁13行目から14行目にかけての「本件ウェブサイト」を「控訴人の会員規約」と、同頁19行目から20行目にかけての「審査して」を「審査し、」と、同頁20行目から21行目にかけての「サーバーに蔵置、記録され、送信可能化されるに至り、」を「本件ウェブサイトに係るサーバーにアップロード(蔵置、記録、送信可能化)され、複製、」と改める。
(6)原判決13頁5行目の「推認できること」を「認められること」と改め、同頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(5)控訴人の当審における補充主張について
 控訴人は、@控訴人の会員は、控訴人とは別会社であるメトロワークス社の会員投稿システム(クリエイティブ・システム)の記事作成ツールで文章を作成し、文章とは別に写真をアップロードし、アップロードされた写真は文章に関連付けられるが、そのアップロードの際、自分が撮影したものか、使用許可を得ているかなどの情報を、自己申告で指定することとされており、被告地域パートナーは、控訴人の従業員や履行補助者ではなく、その主な役目は、新人の会員や英語に自信がない会員のヘルパーとなって、その投稿を助け、投稿される記事の品質を保つことにあるところ、会員が本件ウェブサイトに投稿する記事について、地名、駅名、公共交通機関名、店舗名等に基本的な誤りがないかどうかを確認するのみであって、掲載予定の写真については、何ら審査を行っておらず、被告地域パートナーが会員から投稿された写真について著作権侵害の有無をチェックする仕組みは存在しない、A本件記事(甲3の3)についても、被告地域パートナーによって、基本的な事実、行程が可能であるかどうかについて確認が行われたにすぎず、掲載予定の写真の著作権侵害の有無については審査が行われていないなどとして、控訴人は、被告各写真の複製、公衆送信等の主体とはいえない旨主張する。
 しかしながら、前記1の認定事実のとおり、被告地域パートナーは、会員から送信された記事の内容(文章)を審査して、本件ウェブサイトへの掲載を承認しているものであるところ、その承認の作業は、控訴人の委託に基づくものであると認められるから、被告地域パートナーは、控訴人の履行補助者であるというべきである。そして、被告地域パートナーが本件ウェブサイトへの記事の掲載を承認すれば、当該記事に関連する写真も本件ウェブサイトに掲載されることになるところ、被告地域パートナーは、記事の内容(文章)の審査に当たって、当該記事と共に掲載される写真(会員が投稿システムにより別途アップロードしたもの)について当該記事との関連性等を確認しており、本件記事についても同様の確認がされていたこと(乙29)からすれば、被告各写真は、控訴人の履行補助者である被告地域パートナーの承認によって、本件ウェブサイトに係るサーバーにアップロード(蔵置、記録、送信可能化)され、複製、公衆送信され、本件ウェブサイトに掲載されたことが認められるから、控訴人が被告各写真を複製、公衆送信したものと認められる。そして、控訴人が被告各写真について著作権侵害の有無を審査したかどうかは、控訴人による上記複製及び公衆送信の成否に影響を及ぼすものではない。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。」
(7)原判決13頁17行目の「(5)」を「(6)」と、同頁24行目の「(6)」を「(7)」と、同頁25行目の「また、」を「また、被控訴人の」と改める。
4 争点3(差止めの必要性)について
 原判決の「事実及び理由」の第3の3記載のとおりであるから、これを引用する。
5 争点4(不法行為の成否及び損害額)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決14頁11行目の「被告は、本件ウェブサイトへの被告各写真の掲載」を「前記3(5)のとおり、控訴人は、被告各写真を複製、公衆送信したものと認められるから、本件ウェブサイトに係るサーバーへの被告各写真のアップロード」と改める。
(2)原判決15頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「 また、控訴人は、当審において、@被控訴人は、プロの写真家として写真のライセンス販売をしたこともなく、日本写真家ユニオンの会員でもないから、原告写真の商業価値はゼロである、A著作権法114条3項に基づく損害額算定の基礎となる被告各写真の使用期間は、米国で原告写真の著作権登録がされた2020年5月29日から起算すべきであるから、被控訴人主張の2年以上ではなく、4か月と17日である旨主張する。
 しかしながら、控訴人主張の@の事情を踏まえても原告写真の商業価値がないものとはいえず、また、Aの米国における原告写真の著作権登録は、被控訴人による原告写真の著作権の取得とは関係がない事情であって(著作権法17条2項)、いずれも、前記(ア)の著作権法114条3項に基づく使用料相当額の損害額の認定を左右するものではない。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。」
(3)原判決15頁末行の「前記3」を「前記3(6)」と改める。
(4)原判決16頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「 これに対し、控訴人は、当審において、著作者人格権侵害に係る慰謝料については、ウェブサイトのサイズ規格に合わせるための両端の単純なトリミングは、ウェブサイトの表示の際にシステムによって自動的に行われるものであり、世界的にも認められているから、原判決認定の慰謝料2万円は不当である旨主張する。
 しかしながら、控訴人が主張する上記事情は、上記慰謝料額の認定を左右するものではなく、控訴人の上記主張は理由がない。」
(5)原判決16頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(3)小括
 以上によれば、被控訴人は、控訴人に対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として7万円(前記(2)アないしウの合計額)及びこれに対する不法行為の日である平成30年10月6日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。」
第4 結論
 以上によれば、被控訴人の請求は、原判決が認容した限度で理由があり、その余は理由がないから、これと同旨の原判決は相当である。
 したがって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部
 裁判長裁判官 大鷹一郎
 裁判官 小川卓逸
 裁判官 遠山敦士


(別紙)著作物目録
(別紙)被告写真目録1
(別紙)被告写真目録2
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