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【事件名】エキサイトへの発信者情報開示請求事件D
【年月日】令和4年12月14日
 東京地裁 令和4年(ワ)第8410号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和4年11月4日)

判決
原告 A
被告 エキサイト株式会社
同訴訟代理人弁護士 藤井康弘


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載2の各情報を開示せよ。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載1及び2の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者がツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報サービス)において原告が著作権を有する別紙著作物目録記載1及び2の各文章を複製した画像を投稿し、同文章に係る原告の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)を侵害したことが明らかであり、上記氏名不詳者に対する損害賠償請求等のために必要であると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条2項に基づき、別紙発信者情報目録記載1及び2の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告は、動画公開サイトYouTubeにおいて、自ら撮影した動画を編集して配信するユーチューバーである。
イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社である。
(2)原告による動画配信及びツイートの投稿
ア 原告は、令和2年3月21日、自らが開設するYouTube上のチャンネル「(チャンネル名は省略)」において、「(題名は省略)」との題名の動画(以下「本件動画」という。)を公開した。
 別紙著作物目録記載1の(1)ないし(14)は、いずれも、本件動画において挿入されたキャプション(以下、順次「本件キャプション(1)」、「本件キャプション(2)」などといい、これらを併せて「本件各キャプション」という。)である(甲9、13)。
イ 原告は、令和4年1月5日、ツイッター上の自己のアカウント「B」において、アカウント名を「C」とする者の投稿をリツイートした上、本文に別紙著作物目録記載2の文章を挿入して投稿した(甲10、27及び28。以下「本件原投稿」という。)。
(3)氏名不詳者によるツイートの投稿
ア 氏名不詳者は、令和3年12月23日19時08分(日本標準時)に、アカウント名を「D」、ユーザー名を「@(以下省略)」とするツイッターのアカウント(以下「本件アカウント」という。)において、本文に「FF外から失礼します。正式見解とはこの事を言ってるみたいですが、そういうことも含めてです。〜仮眠とっていただくことについては・・・何処が正式な回答なのでしょうか。通達って?」と記載した上、本件動画から本件各キャプション部分を切り抜き、一枚の静止画にまとめて作成した別紙投稿画像目録記載1の画像を添付したツイートを投稿した(甲1。以下、同ツイートを「本件ツイート@」と、同目録記載1の画像を「本件画像@」という。)。
イ 前記アの氏名不詳者は、令和4年1月6日8時13分(日本標準時)に、本件アカウントにおいて、本文に「修正したみたいですね。この情報で道の駅で車中泊は出来るなんて思う人がいるは驚く。コツコツではなく国交省に、道の駅へ通達する様に抗議すれば早いのに。車中泊は命にかかわる事だと聞いてますので。」と記載した上、本件原投稿をスクリーンショットして作成した別紙投稿画像目録記載2の画像を添付したツイートを投稿した(甲1、20。以下、同ツイートを「本件ツイートA」と、同目録記載2の画像を「本件画像A」といい、本件ツイート@及びAを投稿した氏名不詳者を「本件投稿者」という。)。
(4)ツイッター・インク(以下「ツイッター社」という。)による発信者情報の開示
 原告は、ツイッター社を相手方として、本件アカウントにログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプについて仮の開示を求める仮処分を申し立て(東京地方裁判所令和4年(ヨ)第22004号事件)、令和4年2月14日、ツイッター社に対し、上記申立てに係る情報について仮の開示を命じる旨の仮処分決定がされた。ツイッター社は、上記仮処分決定に基づき、原告に対し、別紙発信者情報目録記載1及び2のログイン日時及び同ログイン時の接続元IPアドレスを開示した。(甲2、3、18、19及び24)
(5)本件投稿者は、別紙発信者情報目録記載1(2)及び2(2)の各ログイン日時に、被告の提供するインターネットサービスを経由して、本件アカウントにログイン(以下、目録の順に「本件ログイン1」、「本件ログイン2」といい、これらを併せて「本件各ログイン」という。)した(甲3ないし5)。
3 争点
(1)本件ツイート@及びAにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
(2)原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか(争点2)
(3)本件各ログインの際の識別符号その他の符号(以下、本件ログイン1に係るものを「本件ログイン情報1」、本件ログイン2に係るものを「本件ログイン情報2」といい、これらを併せて「本件各ログイン情報」という。)の送信が侵害関連通信に該当するか(争点3)
(4)本件発信者情報が侵害関連通信に係る発信者情報に該当するか(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件ツイート@及びAにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(原告の主張)
(1)著作物性及び著作権の帰属について
ア 本件各キャプションの著作物性及び著作権の帰属
 本件各キャプションは、原告が国土交通省の担当者とのやりとりで得た国土交通省の見解を原告のYouTubeチャンネルへ投稿したものである。本件キャプション(1)、(2)、(13)及び(14)は、誰が見てもわかるように、本件動画の趣旨を簡潔にまとめた内容であり、本件キャプション(3)ないし(6)及び(8)ないし(10)は原告が国土交通省の担当者に対してインタビューした内容であり、本件キャプション(7)、(11)及び(12)は国土交通省の担当者の回答である。
 したがって、本件各キャプションは、原告が自己の「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)であるから、いずれも、原告が著作権を有する言語の著作物に該当する。
イ 本件原投稿の著作物性及び著作権の帰属
 本件原投稿は、原告が2年以上にわたり行ってきた「ドライバーの安全を守る活動」により得られた情報と原告の思いを140文字という文字数制限の中で簡潔にまとめたものであり、原告が自己の「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)といえるから、原告が著作権を有する言語の著作物に該当する。
(2)著作権の侵害について
ア 本件ツイート@について
 本件投稿者は、本件ツイート@により、ツイッターのサーバー上に本件各キャプションを複製し、不特定多数の者がこれを閲覧できる状態を作出した。そうすると、本件投稿者は、本件ツイート@により、本件各キャプションに係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害したといえる。
 また、本件投稿者は、本件動画から本件各キャプションだけを切り抜き、一枚の静止画像にまとめ、本件各キャプションの表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、新たに思想又は感情を創作的に表現したといえ、原告の本件各キャプションに係る翻案権を侵害しているといえる。
イ 本件ツイートAについて
 本件投稿者は、本件ツイートAにより、ツイッターのサーバー上に本件原投稿をスクリーンショットして作成した画像をアップロードし、不特定多数の者がこれを閲覧できる状態を作出した。そうすると、本件投稿者は、本件ツイートAにより、本件原投稿に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害したといえる。
(3)引用について
ア 本件ツイート@について
 被告は、本件ツイート@に本件画像@が添付されていることについて、著作物を引用して利用するものとして適法である(著作権法32条1項)と主張する。
 しかし、引用は、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないところ、本件投稿者は、自分が主張したいことを伝えるために本件動画を無断で編集し、原告が本来伝えたいこととは異なる内容の本件ツイート@を作成している。このような行為は社会的に許容される行為ではなく、一般的にも行われていないから、公正な慣行に合致するとはいえない。
 また、本件ツイート@においては、本件画像@が量的に明らかに主たる部分を構成しているといえ、引用の目的上正当な範囲の著作物の利用とはいえない。
 よって、本件ツイート@は引用の要件を満たしていない。
イ 本件ツイートAについて
 被告は、本件ツイートAに本件画像Aが添付されていることについて、著作物を引用して利用するものとして適法である(著作権法32条1項)と主張する。
 しかし、引用は、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないところ、ツイッターの規約においては、他人のコンテンツを利用する手順として引用ツイートという方法を設けており、他の方法による他人のコンテンツの利用を禁止している。
 したがって、本件ツイートAのように、スクリーンショットにより撮影した写真を添付して投稿する方法は、ツイッターの引用ルールに違反しており、公正な慣行に合致しているとはいえない。
 また、本件ツイートAにおいては、本件画像Aが量的に明らかに主たる部分を構成しているといえ、引用の目的上正当な範囲内の著作物の利用とはいえない。
 よって、本件ツイートAは引用の要件を充たしていない。
(被告の主張)
(1)著作物性及び著作権の帰属について
ア 本件各キャプションの著作物性及び著作権の帰属
 本件各キャプションの主要部分は、国土交通省への電話照会に対する回答や、国土交通省が作成した文章をそのまま写したものであり、「思想又は感情を創作的に表現した」(著作権法2条1項1号)ものとはいい難い。
 また、上記回答や文章は、原告自身の思想又は感情を表現したものではないから、原告の著作物であるともいえない。
イ 本件原投稿の著作物性及び著作権の帰属
 本件原投稿は、道の駅に関する議論を一般的な言語表現で述べたものにすぎず、特段の創作性が認められる表現ではない。
 したがって、原告の「思想又は感情を創作的に表現した」(著作権法2条1項1号)ものとはいえない。
(2)著作権の侵害について
 前記(1)のとおり、本件各キャプション及び本件原投稿はいずれも著作物には当たらない上、本件各キャプションについては原告が著作権者であるとはいえないから、本件ツイート@及びAにより原告の著作権が侵害されたとはいえない。
(3)引用について
ア 本件ツイート@について
 本件ツイート@には、「正式見解とはこの事を言ってるみたいです」、「何処が正式な回答なのでしょうか。」などと記載されていることからすると、国土交通省の担当者が「仮眠をとっていただくことについては問題ない」(本件キャプション(11))と回答したことをもって、これを車中泊についての国土交通省の正式な回答であるとする本件動画の内容に疑問を呈するものであるといえる。
 また、本件キャプション(13)及び(14)において、「これは国からの正式な回答となりますので」、「104の道の駅に通達されてます」と述べられていることに対して、「通達って?」と記載されていることからすると、「通達」が何を意味するか不明であると疑問を呈していると考えられる。
 そうすると、本件ツイート@が本件画像@を添付しているのは、道の駅の駐車場の車中において夜から朝まで寝ることが禁止されるか、あるいは遠慮すべきか、という論点について、原告の主張を批評する目的によるものであることは明らかである上、批評のために必要かつ正当な範囲で引用され、公正な慣行にも合致すると認められるから、著作物を引用しての利用として適法であり(著作権法32条1項)、著作権侵害は成立しない。
イ 本件ツイートAについて
 本件ツイートAは、道の駅の駐車場の車中において夜から朝まで寝ることが禁止されるか、あるいは遠慮すべきか、という論点に関し、本件原投稿において、「夜から朝まで寝ても良い」「車中泊禁止は不適切」などと主張されていることを受けて、「この情報で道の駅で車中泊は出来るなんて思う人がいるは驚く。」「車中泊は命にかかわる事だと聞いてます」などと、原告の主張を批評するものといえる。
 そうすると、本件ツイートAが本件画像Aを添付しているのは、道の駅の駐車場の車中において夜から朝まで寝ることが禁止されるか、あるいは遠慮すべきか、という論点について、原告の主張を批評する目的によるものであり、その批評のために必要かつ正当な範囲で行われるものであって、公正な慣行にも合致すると認められる。
 この点、原告は、ツイッターの規約において、ツイッター上のコンテンツの複製等にはツイッターが提供するインターフェース及び手順を利用しなければならないのであり、スクリーンショットを添付する方法は公正な慣行に合致しないと主張する。
 しかし、ツイッターはスクリーンショットを添付するインターフェース及び手順を備えているし、ツイッターの利用規約において、ツイートのスクリーンショットを添付することが明示的に禁じられているとはいえない。
 仮にスクリーンショットによる引用が禁じられているとしても、ツイッターの利用規約は、ツイッター社と個々のユーザーの契約関係を規律するもので、著作権法の引用の限界を画するものではない。
 以上のことから、本件ツイートAが本件画像Aを添付しているのは、著作物を引用しての利用として適法であり(著作権法32条1項)、著作権侵害は成立しない。
2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について
(原告の主張)
 原告は、本件投稿者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求する予定であるが、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があり、正当な理由(プロバイダ責任制限法5条2項2号)があるといえる。
(被告の主張)
 原告の本件投稿者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権が発生しているとはいえないから、正当な理由があるとはいえない。
3 争点3(本件各ログイン情報の送信が侵害関連通信に該当するか)について
(原告の主張)
 本件各ログインは、それぞれ本件ツイート@及びAの直前のログインであるし、被告から割り当てられたIPアドレスを利用して本件アカウントに多数回ログインされていることから、本件投稿者と本件各ログインに係る情報を送信した者は同一人物であるといえる。したがって、本件ツイート@及びAに係るログイン情報の送信は、いずれも、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則(以下「省令」という。)5条2号に掲げる「識別符号その他の符号の電気通信による送信」であって、かつ、同条柱書の「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」といえ、「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当する。
(被告の主張)
 争う。
4 争点4(本件発信者情報が侵害関連通信に係る発信者情報に該当するか)について
(原告の主張)
 本件発信者情報は、いずれも「侵害関連通信に係る発信者情報」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当する。
 この点に関する被告の主張は争う。
(被告の主張)
 原告が開示を求める本件各ログインに係る回線の契約者は、当該回線は契約者本人が利用しているわけではなく、他の企業にこれを利用させているから、投稿に身に覚えがないと述べており、このような観点からも、本件各ログインに係る情報は、侵害関連通信に係る発信者情報に該当しない。
 よって、本件発信者情報の開示は認められない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件ツイート@及びAにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(1)著作物性及び著作権の帰属について
ア 本件各キャプションの著作物性について
 原告は、本件各キャプションは、それぞれが独立して著作物性を有する言語の著作物であると主張するから以下検討する。
 著作物であるといえるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)である必要がある。そして、本件キャプション(3)ないし(12)は、いずれも原告と国土交通省の担当者の会話のやりとりを素材としたものであり、本件キャプション(1)、(2)、(13)及び(14)は、原告が動画の趣旨を簡潔にまとめたものであるところ、いずれもごく短いもので、ありふれた表現であるといわざるを得ないから、創作性を有するとはいい難く、著作物性は認められない。
イ 本件原投稿の著作物性及び著作権の帰属について
 本件原投稿は、原告が、ドライバーの安全を守る活動を通して得られた情報と原告の思いを140文字という文字数制限の中で簡潔にまとめたものであって、幅のある表現の中から選択したものであるといえ、かつ、ありふれた表現であるとはいえないから、原告が自己の「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)として、原告が著作権を有する言語の著作物に該当する。
(2)本件原投稿の著作権の侵害について
 前記前提事実(3)イのとおり、本件投稿者は、本件原投稿をスクリーンショットして作成した本件画像Aを添付したツイートを投稿したものであって、これにより、ツイッターのサーバー上に本件画像Aを複製し、不特定多数人に自動公衆送信し得る状況を作出したといえるから、原告の本件原投稿に係る複製権及び公衆送信権を侵害したと認められる。
(3)引用(著作権法32条1項)の成否について
 被告は、本件ツイートAにおける本件画像Aの添付が、原告の主張を批評する目的によるものであり、公正な慣行にも合致し、批評のために必要かつ正当な範囲で行われるものであるから、適法な著作物の利用である旨主張する。
 しかし、仮に、本件ツイートAの目的が、本件原投稿の内容を批評する点にあると認められるとしても、本件ツイートAは、その本文よりも添付された本件画像A内に現れた本件原投稿の文章の分量が多く、ツイートの本文が主で本件原投稿の文章が従の関係にあるとはいえない。また、本件原投稿は、言語の著作物であるところ、そこに文字で記載された原告の主張内容を批評するために、本件原投稿をスクリーンショットすることによって作成した本件画像Aをそのまま本件ツイートAに添付する必要性があったとまではいい難い。そうすると、本件ツイートAにおける本件画像Aの添付は、少なくとも、本件原投稿の批評という目的上正当な範囲で行われたものとは認められない。
 よって、本件ツイートAにおける本件画像Aの添付は、著作権法32条1項の要件を満たさず、本件ツイートAの違法性は阻却されない。
2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について前記1の判断を前提とすると、原告には不法行為に基づく損害賠償請求権の行使のため本件発信者情報の開示を受ける必要があるといえ、同開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
3 争点3(本件各ログイン情報の送信が侵害関連通信に該当するか)について
 プロバイダ責任制限法5条2項柱書所定の「侵害関連通信」は、同法5条3項において「侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、又はその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるもの」と定義されている。そして、同条項の規定を受けて、省令5条柱書は、侵害関連通信について、同条各号に掲げる識別符号その他の符号の電気通信による送信のうち、それぞれ侵害情報の送信と相当の関連性を有するものがこれに当たると定めている。
 本件ログイン2は、本件ツイートAから約10時間前のログインであり、かつ、本件ツイートAの直前のログインであることが認められる(なお、証拠(甲3及び26)によれば、本件ツイートAの直近のログインは令和4年1月6日8時13分33秒のログインであると認められるが、本件投稿前のログインであるか本件投稿後のログインであるかは明らかではないから、本件ログイン2が直前のログインであると認定するのが相当である。)。
 そうすると、本件ログイン情報2の送信は、省令5条2号のログイン情報の送信に該当し、かつ、侵害情報との時間的近接性に照らし、同条柱書の規定する侵害情報の送信と「相当の関連性」を有するものと認められる。
 したがって、本件ログイン情報2の送信は「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当する。
 そして、上記の判断及び前記前提事実(5)によれば、被告は「侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者」(プロバイダ責任制限法5条2項)に該当する。
4 争点4(本件発信者情報が侵害関連通信に係る発信者情報に該当するか)について
 プロバイダ責任制限法5条2項柱書は、発信者のみならず、「侵害関連通信に係る発信者情報」を開示の対象となる発信者情報に含めているところ、同規定が、「係る」との文言を用いて、開示の対象となる発信者情報の範囲を侵害情報あるいは侵害関連通信の送信者の情報のみに限定していないのは、プロバイダは厳密な侵害情報の発信者を把握することは困難であるから、プロバイダが把握している当該侵害情報の送信又は当該侵害関連通信の媒介の基礎となる特定電気通信役務の利用に係る契約の契約者に関する情報を開示範囲に含め、発信者情報開示の実効性を確保しようとした趣旨によるものと解される。
 したがって、本件ログイン情報2の送信の媒介の基礎となる特定電気通役務の利用に係る契約を締結している者の情報も、プロバイダ責任制限法5条2項柱書の「侵害関連通信に係る発信者情報」に含まれると解するのが相当であり、仮に被告主張のとおり、同契約者が侵害情報あるいは侵害関連通信の発信者ではないとしても、本件発信者情報はこれに該当する。
 したがって、被告の主張は失当であり採用できない。
5 結論
 以上の次第で、原告の請求は本件ツイートAに係る発信者情報の開示を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 間明宏充
 裁判官 バヒスバラン薫


(別紙)発信者情報目録
1 下記(1)の接続元IPアドレスを(2)のログイン日時に割り当てられた電気通信設備から(3)のいずれかの接続先IPアドレスに対して通信を行った契約者に関する氏名又は名称、住所、電話番号及びメールアドレス
 記
(1)接続元IPアドレス(接続元IPアドレスは省略)
(2)ログイン日時令和3年12月23日18時58分08秒(日本標準時)
(3)接続先IPアドレス(接続先IPアドレスは省略)
2 下記(1)の接続元IPアドレスを(2)のログイン日時に割り当てられた電気通信設備から(3)のいずれかの接続先IPアドレスに対して通信を行った契約者に関する氏名又は名称、住所、電話番号及びメールアドレス
 記
(1)接続元IPアドレス(接続元IPアドレスは省略)
(2)ログイン日時令和4年1月5日18時40分56秒(日本標準時)
(3)接続先IPアドレス(接続先IPアドレスは省略)
 以上

(別紙)著作物目録
1(1)中国地方の道の駅104ヵ所車中泊禁止、車中泊ご遠慮完全撤回です
(2)国土交通省から公式見解と声明がありますので
(3)宿泊目的での利用はご遠慮くださいに変えるってことですかね
(4)宿泊目的での利用はご遠慮くださいっていうQ&Aあるじゃないですか
(5)これはつまり休憩や仮眠の車中泊であれば問題ないってことでいいんですかね?
(6)そこに住み着くようなことはご遠慮いただいているってことですよね?
(7)そういうことも含めてです
(8)僕が言っている休憩のために仮眠のためにする車中泊
(9)そう思っている人もいるってことじゃないですか
(10)問題ないよってことでいいんですよね?
(11)休憩していただく、仮眠をとっていただくことについては問題ないと
(12)という理解を我々のほうもしております
(13)これは国からの正式な回答となりますので
(14)104の道の駅に通達されてます
2「定義が無い言葉を議論した所で答えはないですよね。
【道の駅では】
・夜から朝まで寝ても良い(その為にも作られた)
・車中泊禁止は不適切
・130ヵ所の看板が撤去された
 この情報で道の駅で車中泊が禁止なんだと思う人がいるは驚く
 私は今まで通りコツコツと時間をかけて発見次第交渉していくのみ」
 以上

(別紙投稿画像目録は省略)
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日本ユニ著作権センター
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