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【事件名】フリー素材の“CCライセンス”事件(Visual Hunt) 【年月日】令和4年7月13日 東京地裁 令和3年(ワ)第21405号 著作権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結日 令和4年5月12日) 判決 原告 A 同訴訟代理人弁護士 山本隆司 被告 ススメル株式会社 主文 1 被告は、原告に対し、15万円及びこれに対する平成29年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 5 原告のために、この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙著作物目録記載の写真を複製し、自動公衆送信し、又は送信可能化してはならない。 2 被告は、原告に対し、33万9734円及びこれに対する平成29年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告がその管理運営するウェブサイトに別紙著作物目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を基にして作成した画像(別紙被告写真目録記載の画像。以下「本件画像」という。)をアップロードしたことが、原告の本件写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)及び氏名表示権を侵害し、又は公衆による複製権侵害を幇助したと主張して、被告に対し、著作権に基づき、本件写真の複製、自動公衆送信及び送信可能化の差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、合計33万9734円(ライセンス料相当額23万9734円、著作者人格権侵害による慰謝料5万円及び弁護士費用相当額5万円)及びこれに対する不法行為の日である平成29年11月4日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)ア 原告は、肩書住所地に居住する一般私人である。 イ 被告は、古物営業法に基づく古物の売買等を目的とする株式会社である。 (2)本件写真は、黄色、茶色、橙色等の花が全体的に描かれた薄黄緑色の浴衣の上に無地の深い青紫色の帯を重ねて撮影したものであり、被写体の選択、レンズ・カメラの選択、アングル、シャッターチャンス、シャッタースピード・絞りの選択、ライティング、構図・トリミング等により、原告の「思想又は感情を創作的に表現」(著作権法2条1項1号)しており、写真の著作物に該当する。原告は、本件写真の著作者であり、著作権者である(甲6)。 なお、我が国及びBは、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に加盟しているため、本件写真は、同条約3条(2)及び著作権法6条3号の規定により、我が国の著作権法による保護を受ける。 (3)原告は、「Flickr」(以下「本件写真共有サイト」という。)にて本件写真を投稿し、公開するとともに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(作品を公開する著作者が条件付きで作品の再使用を許可するに当たって容易にその意思を表示できるようにクリエイティブ・コモンズが策定した条件付使用許諾の類型。以下「CCライセンス」という。)を付与し、著作者の表示等を条件に本件写真の複製等による使用を許諾している(甲1、4)。 (4)本件画像は、被告が管理運営するウェブサイト「C」(https://以下省略、以下「本件被告サイト」という。)において、平成29年11月4日から令和3年1月7日までの間、掲載されたが、本件被告サイトにおいて、本件写真の著作者が原告である旨の表示はされなかった(甲3)。 (5)被告は、令和3年1月8日、原告から、本件画像を直ちに削除すること等を求める内容の同月7日付「警告書」を受領し、同日頃、本件画像を削除した(甲5)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張 (1)被告による著作権及び著作者人格権の侵害行為の有無(争点1) (原告の主張) 被告は、平成29年11月頃、本件写真の画像データをダウンロードし、別紙URL目録記載@のURLによりアクセスできるように、本件写真のデッドコピーである本件画像を、本件被告サイトに係るサーバーに複製(データ蓄積)して公衆送信し、また、本件被告サイト内における同目録記載AのURLによりアクセスできるページに上記サーバーに保存された本件画像データへのリンクを張って本件画像を公衆送信し、その結果、公衆に本件画像を複製させた。上記行為により、被告は、原告の本件写真に係る複製権(著作権法21条)及び公衆送信権(同法23条)を侵害し、又は公衆による複製権侵害を幇助した。また、被告は本件画像を掲載する際、原告のペンネームである「D」(以下「原告ペンネーム」という。)を著作者として表示しなかったものであり、原告の本件写真に係る氏名表示権(同法19条)を侵害した。 被告は、本件被告サイトは被告の外注会社が作成したなどと主張して、自己が著作権侵害を行ったことを否認するものと思われるが、被告が委託した外注会社は、被告の手足としてその業務の履行に当たる者であるから、その行為は被告の行為と同視される。したがって、本件被告サイト内に本件画像を掲載してこれを複製・公衆送信したのは被告である。 また、原告は、本件写真共有サイト上にて、CCライセンスを付与しているが、本件写真に原告ペンネームを表示すること及び本件写真共有サイト上の本件写真を掲載するページへのリンクを掲載することをその条件としている。それにもかかわらず、被告は、本件写真の使用に当たって、原告ペンネームの表示も本件写真共有サイトへのリンクの掲載も行っていない。したがって、被告は、本件写真を無償使用できるライセンス条件を満たしていないので、被告による本件画像の投稿は、前述したとおり、原告の著作権及び著作者人格権を侵害する。 (被告の主張) 被告は、外注会社に対し、「着物浴衣メディアの制作を依頼したい。」などと述べてウェブサイトの作成を依頼したにすぎず、ウェブサイトの構成や使用する写真等について特段指示はしていない。また、被告は、ウェブサイトが納品された際に本件被告サイトを確認したものではなく、ウェブサイトが完成し、アップロードされた後に、その内容を見たにすぎない。したがって、被告が本件被告サイトを制作したということも、本件画像をアップロードしたということもない。 (2)被告の故意又は過失の有無(争点2) (原告の主張) 被告には、他人の著作物の使用に当たり、他人の著作権を侵害しないよう注意すべき義務がある。仮に、本件画像を掲載したのが被告の外注会社であったとしても、被告は外注会社が作成したコンテンツを自己のサイトに掲載する場合には当該掲載によって著作権侵害が生じないように注意すべき義務を負う。 そこで、被告が上記注意義務に違反したかどうかを検討すると、被告が本件写真の画像データをダウンロードしたウェブサイト(https://以下省略(以下、このサイトを「ビジュアルハント」という。))には、原告が主張するとおり、「DOWNLOADFORFREE」のボタンがあるが、そのすぐ下には「Copyandpastethiscodeunderphotooratthebottomofyourpost」(写真の下又は掲載下部にこのコードを複製し貼り付けよ)との指示があり、貼り付けるべきものとして、原告ペンネームである「D」等が掲載されている上、さらにその下には「License:Attribution-ShareAlikeLicense」(使用許諾:表示−継承使用許諾)との表示がされており、同表示をクリックするとCCライセンス証が表示され、そこには、本件写真は著作権により保護されており、著作者の表示等を条件としてのみ使用許諾される旨の表示がされている。 したがって、被告は、本件写真を無償で使用するにはCCライセンスの条件の履行が必要であることを認識し又は認識し得たのに、この履行をしなかったといえ、少なくとも他人の著作権を侵害しないよう注意すべき義務に違反した過失がある。 (被告の主張) 本件写真の転載元であるビジュアルハントには、「DOWNLOADFORFREE」との記載があり、誰が見ても自由に使用できる写真だと誤認する状態にあった。使用許諾の条件は、英文で書かれており、非常に分かりにくく、どこに表記されているかも分からないから、被告がCCライセンスの条件を履行せずに本件写真を使用したことに過失はない。 (3)損害の発生の有無及び額(争点3) (原告の主張) 原告が被った損害の額は、原告が本件写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)により算定されるべきであり、同金額の算定に当たっては、欧米で広く利用されているfotoQuoteソフトの料金表又は文化庁から著作権等管理団体に指定され、著作権使用料について文化庁の審査を経ている協同組合日本写真家ユニオンの使用料規程が参考にされるべきである。 被告による本件写真の使用態様は、fotoQuoteの料金表の、国内市場向け宣伝用ウェブサイト(Website.Promotional.NationalMarket)の区分に該当し、その使用期間は平成29年11月4日から令和3年1月7日まで3年以上5年以内であり、本件写真の大きさは画面の4分の1を超えることからすると、その使用料額は2180米ドルである。令和4年5月28日の為替レートはドル109.97円であるから、当該レートで円換算すると、ライセンス料額は23万9734円となる。 また、被告による本件写真の使用は協同組合日本写真家ユニオンの使用料規程の「商用広告目的」の「HPセカンダリーページ」の区分に該当し、使用期間は平成29年114日から令和3年1月7日までの4年弱であるから、その使用料額は11万円となる。 したがって、本件写真の使用料相当額は、少なくとも11万円とするのが相当である。 さらに、原告は、被告による氏名表示権の侵害により、5万円相当の精神的損害を被った。 そして、原告は、本件訴訟を提起するに当たり弁護士に依頼せざるを得なかったのであり、弁護士費用相当損害金の額は5万円が相当である。 (被告の主張) 原告に損害が発生したとの事実及びその額についてはいずれも否認する。本件被告サイトの制作目的は、被告が運用する着物・浴衣買取サイトへの送客にあるところ、本件被告サイトの閲覧者数は207であり、同送客達成値を表すコンバージョンも0であり、被告は本件画像の掲載により何らの利益も得ていない。 また、本件画像の使用期間について、原告は被告が平成29年11月4日に本件被告サイトをアップロードしたと主張する。本件被告サイトを制作したのは確かにこの頃であるが、そのアップロードの正確な日付は不明である。 さらに、本件写真の使用に関して本件写真共有サイトに分かりやすい表記をしなかったことは原告の落ち度である。また、原告の氏名の記載が重要なのであれば本件写真に原告の名前を記載しておけばよく、それをしなかったのは原告の落ち度であり、むしろ、損害賠償請求をするために故意にそうしたものであると考えられる。このような事情も考慮して損害賠償請求権の有無及び損害額が決定されるべきである。 (4)本件写真の使用許諾の有無(争点4) (被告の主張) 被告が原告から直接許諾を得ずに本件写真を使用したことは認めるが、ビジュアルハント上には、本件写真はフリー素材である旨が記載されており、本件写真は原告の許諾を得ずに無料で使用することができるものである。 (原告の主張) 被告は、本件写真がビジュアルハントにフリー素材として掲載されており、これを使用したにすぎない旨主張するが、原告はビジュアルハントにおいて第三者への使用許諾権を付与したことはない。そして、前記(2)の原告の主張のとおり、被告が根拠とするビジュアルハントの本件写真掲載ページにも、「License:Attribution-ShareAlikeLicense」(使用許諾:表示−継承使用許諾)との表示がされており、同表示をクリックするとCCライセンス証が表示され、そこには、本件写真は著作権により保護されており、著作者の表示等を条件としてのみ使用許諾される旨の表示がされている。したがって、ビジュアルハント上においても、無条件で本件写真の使用許諾がされていたものではなく、被告が故意に条件を遵守せず、又は過失により条件の表示を見過ごしたことにより本件写真を利用したにすぎない。 (5)差止めの必要性(争点5) (原告の主張) 原告は、被告に対し、本件画像の掲載を中止し、損害賠償金を支払うよう求めたところ、被告は、本件画像の掲載を中止したものの、著作権侵害の事実を認めておらず、著作権侵害行為を再開するおそれがあるから、被告による本件写真の複製、自動公衆送信及び送信可能化を差し止める必要がある。 (被告の主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告による著作権及び著作者人格権の侵害行為の有無)について (1)前記前提事実、証拠(甲3、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、自社が運営する着物及び浴衣買取ウェブサイトへの送客のため、着物及び浴衣に関するウェブサイトを作成することとし、遅くとも平成29年11月4日までに、外注会社に本件被告サイトの制作を依頼し、同外注会社をしてビジュアルハントから本件写真の画像データをダウンロードし、別紙URL目録記載@のURLによってアクセスできるように、上記の画像データから作成した本件画像の画像データをサーバーに保存して、本件写真を有形的に再製するとともに、本件被告サイト内の同目録記載AのURLによりアクセスできるページに、上記サーバーに保存された本件画像データへのリンクを張ったことが認められる。 上記認定事実によれば、被告は、本件被告サイトにおいて、本件画像をサーバー内に保存することにより、本件写真を複製し、送信可能化したと評価することができる。そして、前記前提事実(4)のとおり、本件被告サイト内において、本件写真の著作者が原告であることは表示されていない。 したがって、被告は、前記前提事実(3)の原告が付与した使用許諾条件に違反して本件写真を複製及び送信可能化し、かつ、原告の実名又は変名を著作者として表示することなく本件写真を公衆に提供又は提示したといえ、原告の本件写真に係る複製権及び自動公衆送信権並びに氏名表示権を侵害したといえる。 (2)これに対し、被告は本件画像の選択や配置を考えてサーバー内にこれを蔵置したのは外注会社であり、しかも、被告は同社がサーバー内に本件被告サイトに係るデータや素材等を蔵置する前に本件被告サイトの内容を確認してもいないから、原告の著作権及び著作者人格権の侵害主体ではない旨を主張する。 しかし、ウェブサイトの制作の依頼を受けた業者が、依頼者に何らの確認をとることなく、完成したウェブサイトに係るデータや素材等をサーバー内に蔵置して納品することは通常考え難いというべきであり、本件全証拠によっても被告の主張するような経緯を認めることはできない。仮に被告の主張する経緯が認められるとしても、被告は、本件被告サイトが開設されて以降、同サイトを管理運営していたこと、前記(1)のとおり、同サイトは被告が運営する着物及び浴衣買取ウェブサイトへの送客のために作成されたものであって、本件写真を使用することによる最終的な利益帰属主体は被告であることからすると、被告自らが本件画像をアップロードしたと同視できる。したがって、被告の上記主張は採用することができない。 2 争点2(被告の故意又は過失の有無)について 証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば、被告が指摘するとおり、ビジュアルハント上の本件写真が掲載されているページには、「DOWNLOADFORFREE」との表示がされていることが認められるが、他方で、同表示のすぐ下には「Copyandpastethiscodeunderphotooratthebottomofyourpost」(写真の下又は掲載下部にこのコードを複製し貼り付けよ)との表示が、更にその下には「Checklicense」(ライセンスを確認せよ)との表示が、それぞれされていること、更にその下部には「License:Attribution-ShareAlikeLicense」(使用許諾:表示−継承使用許諾)と記載されたリンクが表示され、同リンクをクリックすると、CCライセンス証(甲4)に係るページが表示されることが認められる。そして、証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば、上記のCCライセンス証には、本件写真は著作者を表示する等の条件に従う限り自由に複製等の使用をすることができる旨の記載がされていることが認められる。 そうすると、上記ページを見た者は、通常、本件写真が著作権及び著作者人格権により保護されており、一定の条件に従わない限り使用することができないことを認識し、又は認識することができるといえるから、本件被告サイトに著作者を表示せずに本件画像を掲載したことについて、被告には少なくとも過失があったと認められる。 被告は、上記表示が英文で記載されており非常に分かりにくいなどと主張するが、上記英文は、インターネット上で検索又は翻訳機能を使用することによりその意味を調査することは可能であるといえるから、被告の主張は理由がない。 3 争点3(損害の発生の有無及び額)について (1)使用料相当額について ア 原告は、著作権法114条3項に基づいて、本件写真の使用料相当額を損害額として請求していることから、本件写真の使用料相当額を検討する。 証拠(甲6、7)によれば、原告は、通常、fotoQuoteのライセンス表に従って写真のライセンスを付与していることが認められるが、同ライセンス表が我が国の市場におけるライセンス額の算定基準として相当なものといえるかどうかは明らかではなく、同ライセンス表のみに依拠して使用料相当額を検討することは相当ではない。 他方、証拠(甲10)によれば、協同組合日本写真家ユニオン作成の使用料規程(以下「本件規程」という。)は、同組合が管理の委託を受けた写真の著作物の使用に係る使用料を定めるものであると認められるところ、本件規程は日本国内において実際に適用されているとうかがわれること、他に本件規程を本件写真の使用料に適用することが不相当な事情や、本件規程に定められた使用料自体が過大であるといった事情がうかがわれないことからすると、原告が本件写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)の算定に当たっては、本件規程の内容を参酌するのが相当である。 そして、本件規程によれば、商用広告目的でウェブページの最初のページより後のページ(以下「セカンダリーページ」という。)に写真を掲載する場合の使用料は、12か月以内で5万円、1年を超える場合の次年度以降は1年毎に2万円とされていることが認められる。 本件において、被告は本件被告サイトを被告の運営する着物及び浴衣買取サイトへの送客目的で制作したものであるから、本件写真の使用目的は商用広告目的であると認められる。また、本件写真はセカンダリーページにおいて掲載され、その使用期間は前記前提事実(4)のとおり約3年以上4年未満であることから、本件規程に基づくと、原告が本件写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、11万円と認められる(5万円+3×2万円=11万円)。 イ 被告は、@本件被告サイトにより何ら収益を上げておらず、A原告に損害が発生したとしても、それは、原告自身が使用許諾条件について分かりやすい表示をしなかったことや、写真自体に自己の氏名等を記載しなかったことに起因するものであるから、これらの事情を損害額の算定に反映すべきである旨主張する。 しかし、@の主張に関しては、著作権法114条3項の損害額の算定において、被告が利益を受けたか否かは無関係の事実であり、同事情を考慮することはできない。 また、Aの主張に関しては、前記2のとおり、本件写真のダウンロード元であるビジュアルハントの該当ページを見れば、通常、本件写真は、著作権により保護されており、一定の条件に従わない限り使用することができないことを認識し、又は認識することができ、一方、原告において自己の氏名等を本件写真自体に記載しなかったことは、何ら責められるべき事情ではないから、被告の主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。 (2)慰謝料について 前記前提事実(4)のとおり、本件被告サイト上に本件画像が掲載された期間は、約3年2か月間と長期間にわたっていること、他方で、証拠(乙2)によれば、上記期間における本件被告サイトのPV(ページビュー)は207にとどまり、本件写真の公衆への提供又は提示の回数自体は多いとはいえないこと等に鑑みると、原告の本件写真に係る氏名表示権侵害による慰謝料額としては3万円が相当であると認められる。 (3)弁護士費用について 本件の事案の性質及び内容、訴訟経過等に鑑みると、被告による本件写真に係る原告の著作権及び著作者人格権侵害と相当因果関係の認められる弁護士費用の額は1万円と認めるのが相当である。 (4)合計額 以上によれば、被告の不法行為により原告が被った損害の額は、合計15万円(11万円+3万円+1万円=15万円)と認められる。 4 争点4(本件写真の使用許諾の有無)について 被告は、ビジュアルハント上では本件写真が無償で使用できる素材であったなどと主張するが、本件において、原告がビジュアルハントにおいて無条件に本件写真の使用を許諾したと認めるに足りる証拠はなく、被告の主張は採用できない。 5 争点5(差止めの必要性)について 原告は、被告に対し、本件画像の掲載を中止し、損害賠償金を支払うよう求めたところ、被告は、本件画像の掲載を中止したものの、著作権侵害の事実は認めておらず、著作権侵害行為を再開するおそれがあるから、被告による本件写真の複製、自動公衆送信又は送信可能化を差し止める必要があるなどと主張する。 しかし、被告が、令和3年1月8日に原告からの本件画像の掲載の中止及び損害賠償金の支払を求める内容の警告書(甲5の1)を受領した後、同画像の掲載を中止したこと(前記前提事実(5))や、被告は第2回口頭弁論期日において、被告としては違法なことを行うつもりはなく、本件訴えの提起をきっかけに今後は法令を踏まえた対応をしたいと考えており、今後本件画像を使用する予定もない旨述べていることからすると、本件訴訟において被告が原告の主張を争っていることなどの事情を考慮してもなお、現時点において、被告が本件写真に係る原告の著作権を「侵害するおそれ」(著作権法112条1項)を認めることはできないというべきであり、原告の主張は理由がない。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は、主文の限度で理由があり、その余は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 バヒスバラン薫 (別紙著作物目録及び被告写真目録は省略) (別紙)URL目録 @ https://以下省略 A https://以下省略 以上 |
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