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【事件名】ツイッターへの発信者情報開示請求事件K
【年月日】令和4年7月5日
 東京地裁 令和3年(ワ)第14780号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和4年5月24日)

判決
 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり


主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、原告が、インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」で、原告の著作物であるイラストから自己のアカウントのプロフィール画像(アイコン)を設定していたところ、氏名不詳者によりツイッター上に同アイコンを含む原告のツイートのスクリーンショットを添付したツイートを投稿されたことにより、上記イラストに係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると主張して、ツイッターを運営する被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、被告が保有する上記氏名不詳者に係る電話番号の開示を求める事案である。
2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は、当事者間に争いがない。なお、枝番号の記載を省略したものは、枝番号を含む。)
(1)当事者
 原告は、ツイッター上で、ユーザ名を「@(以下省略)」、アカウント名を「(省略)」とするアカウント(以下「原告アカウント」という。)を利用している。(甲1、弁論の全趣旨)
 被告は、ツイッターを運営する米国法人である。
(2)原告イラスト等
ア 原告は、第三者がインターネット上で公開したイラスト(少年が笑顔で犬と戯れ、傍で少女がそれを見守っている構図のイラスト。甲4の3)について、当該第三者の許諾を得た上で、少年が真剣な表情でキャンバスにスケッチをし、傍で少女と犬がそれを見守っているという構図に変更すると共に、色調を和らげるなどの変更を加えて、別紙著作物目録記載のイラスト(以下「原告イラスト」という。甲4の1)を作成した。(上記のほか、甲1、弁論の全趣旨)
 原告イラストは、二次的著作物として原告を著作者とする絵画の著作物であり、原告がその著作権を有すると認められる。
イ 原告は、原告イラストのうち少年及び少女の姿部分のほぼ全体並びに犬の頭部が含まれるように原告イラストを丸くトリミングした画像を、原告アカウントのアイコン(以下「原告アイコン」という。)として設定した。(甲1、4、弁論の全趣旨)
(3)原告ツイート
 原告は、平成25年9月16日、原告アカウントを用いて、本文に「宮島の鹿たちが、餌やり禁止によって餓死し、虐待のために命を落としていることについて、海外の方も含めて多くの人々が心を痛めています。このような現状に対して、広島県と廿日市市は人道的な対策を講じられますように。#(以下省略)」と記載したツイート(以下「原告ツイート」という。)をツイッターに投稿した。
 ツイッターにおいては、利用者が投稿したツイートの本文の左上部分に、利用者が任意に選択した画像を丸くトリミングした画像が利用者のアイコンとして小さく表示され、その右側に、利用者のアカウント名及びユーザ名が表示される仕様になっている(甲14、15)。このため、原告ツイートにおいても、その本文左上部分に原告アイコンが小さく表示され、その右側に、原告アカウントのアカウント名及びユーザ名が表示された。
 (以上につき、上記のほか、甲3、弁論の全趣旨)
(4)本件ツイート
 氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)は、令和3年4月6日、ユーザ名を「@(以下省略)」とするツイッターのアカウント(以下「本件アカウント」という。)を用いて、第三者のツイート(以下「ツイートB」という。)に対する返信として、本文に「≫#宮島の鹿の事はもう世界の関心事〜/10年近く前からそう仰る方々がいますが、それなら何故これまで何の進展も無いのでしょうね?/本当に『世界の関心事』なのかどうか一度ご自身でご確認されてはいかがですか?/#宮島」(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)と記載すると共に、宮島の鹿に関するツイートのスクリーンショット2つを添付したツイート(以下「本件ツイート」という。)を投稿した。2つのスクリーンショットのうち1つが、原告ツイートの画像(以下「本件投稿画像」という。)である。
 本件ツイートの本文と共に閲覧可能な状態にある本件投稿画像には、原告ツイートに含まれる原告アイコン並びに原告アカウントのアカウント名及びユーザ名の全体と共に本文の一部等が表示され(ただし、令和3年5月18日時点のもの)、本件投稿画像部分をクリックすることで、本件投稿画像全体を表示するページに遷移し得る。(甲3)
(5)本件規定
 被告は、「Twitterサービス利用規約」(甲2)を定めているところ、このうち「4.本サービスの利用」の項には、「ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約またはhttps://(以下省略)…に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。」との規定(以下「本件規定」という。)がある。
(6)引用リツイート機能等
 被告は、ツイッター上で、既存の他のツイート(以下「引用元ツイート」という。)を引用し、これに自身のコメントを付して1つのツイートとして投稿する引用リツイート機能を提供している。この機能を使用したツイートが投稿されると、投稿者の付したコメント(本文)に続いて引用元ツイートへのリンクが添付され、このリンクをクリックすることで引用元ツイートそのものに遷移し得る。そこでは、引用元ツイートの投稿者のアイコン、アカウント名、ユーザ名、本文等が表示されるが、引用元ツイートの投稿者が当該ツイートをした後にアイコンを変更した場合、引用リツイート機能により表示される引用元ツイートのアイコンは変更後のものとなる。
 他方、ツイッターの利用者は、パソコンやスマートフォン等を使用して作成したツイートのスクリーンショットを、自己のツイートに画像として添付して投稿することによって、引用リツイート機能を使用することなく、他のツイートを自らのツイートにおいて表示させることも可能である。ツイッター上には、この方法を用いて投稿されたツイートが多数存在している。(乙4、弁論の全趣旨)
(7)本件発信者情報の保有等
 被告は、特定電気通信(法2条1号)の用に供される特定電気通信設備(同条2号)を用いる特定電気通信役務提供者(同条3号)にあたる。
 また、被告は、令和3年5月28日時点で、本件アカウントに係る電話番号(以下「本件発信者情報」という。)を保有している。
 (以上につき、弁論の全趣旨)
(8)本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由
 原告は、本件投稿者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使することを予定している。(弁論の全趣旨)
 本件発信者情報はその行使のために必要なものであるから、原告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
3 争点
(1)公衆送信の有無(争点1)
(2)引用としての適法性の有無(争点2)
(3)付随対象著作物の利用の成否(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 公衆送信の有無(争点1)
【原告の主張】
 本件ツイートはツイッターのサーバーに送信され、アップロードされることにより公表されているものであり、閲覧者はインターネットブラウザ等で同サーバーにアクセスすることにより本件ツイートを閲覧することとなる。したがって、本件ツイート及びこれに添付された本件投稿画像のデータ(原告アイコンを複製したものが含まれる。)は、公衆によって直接受信されることを目的として送信されたものであり、その送信行為は、原告アイコンという形式で、原告イラストを公衆送信(自動公衆送信)するものである。
 したがって、本件ツイートは、原告の著作権(公衆送信権)を侵害する。
【被告の主張】
 著作物としての本質的な特徴を被疑侵害物から直接感得することができなければ著作権侵害は成立しないところ、本件ツイート全体を見ると、原告アイコンが占める割合は相当限定されており、原告イラストが表示されているサイズは小さい。このため、本件ツイートからは、原告イラストの著作物としての本質的な特徴を直接感得することができない。
 したがって、本件ツイートは公衆送信を行ったものとはいえず、本件において著作権侵害は成立しない。
2 引用としての適法性の有無(争点2)
【被告の主張】
 本件ツイートは、次のとおり、引用の要件を満たす。
(1)ツイッターにおいて、スクリーンショットを用いて他のツイートを引用しつつ当該ツイートに対して批判的な意見を述べることは、現実には頻繁に行われている。このような引用方法は、原投稿者によってオリジナルの投稿が削除されたり、全ての情報が閲覧不可になるように特定のユーザを指定するブロック機能が使用されたりすることでリツイート機能を使用した引用ができなくなり、引用したツイートの意味が不明になる場合に備えた合理的な方法といえる。また、原告ツイートを表示する際、重複があり得るアカウント名や一見して判読困難なユーザ名のみならず、原告アイコンを含めて表示することは、出典表示義務を満たすものである。
 したがって、本件ツイートによる原告イラストの利用は、ツイッター上で実態として形成された公正な慣行に合致するものといえる。
(2)本件ツイートの主な目的は、原告ツイートに対して批判的な意見を述べる点にあり、原告アイコンの利用により利益を得る目的は基本的にない。また、上記のとおりアカウント名やユーザ名だけでは投稿者の判別ができない場合があり得ることを考慮すると、アイコンを含めて引用することは、アイコンを利用している利用者が許容すべき範囲の事象である。
 したがって、本件ツイートによる原告イラストの利用は、引用の目的上正当な範囲内で行われたものといえる。
【原告の主張】
 本件ツイートは、次のとおり、引用の要件を満たすものではない。
(1)本件ツイートにおいて、原告ツイートのスクリーンショット(本件投稿画像)は、他の部分と明瞭に区別されている。このうち、原告アイコン部分は、本件ツイートに添付された2つの画像のうち右側のものの冒頭に表示されており、本文掲載部分とはスペースに隔たりがある上、原告アイコン以外は全てテキストであるから、一見して目立つ態様で掲載されている。また、スマートフォンで本件投稿画像を閲覧する場合には、原告アイコンを独立して鑑賞の対象とし得る程度の大きさで閲覧することも可能である。
 したがって、本件ツイートと原告アイコンは主従の関係になく、引用に該当しない。
(2)スクリーンショットを用いた引用は、本件規定に違反する。ツイッター上で他人のツイートを引用したければ、引用リツイート機能を用いれば足りる。
 また、引用リツイート機能を用いた場合、著作権者がアイコンを変更すると、過去のツイートに表示されたものを含む全てのアイコンが変更される。これに対し、スクリーンショットを添付したツイートが投稿された場合、同ツイート自体又は同ツイートに用いられたアカウントが削除されない限り、変更前のアイコンが著作権者の意思に反して表示され続けることとなる。このような方法による引用が適法とされてしまうと、プロフィール画像の著作物が著作者の意に反して利用されることになるため、不当である。
 さらに、アイコン(プロフィール画像)はそれ単体では単なる画像であるし、原告アイコンに作者が原告であることをうかがわせる記載もないことから、原告アイコンは出典明記としての機能を果たさない。そうである以上、スクリーンショットを添付することで他人のツイートを利用する方法は、ツイッター上で他人のツイートを利用する際の公正な慣行には合致しないというべきである。
 したがって、本件ツイートによる原告イラストの利用は、公正な慣行に合致しない。
(3)本件ツイートは、宮島の鹿が餓死することが世界の関心事になっているとする原告の意見に対し批判的な意見を述べるものである。しかし、その目的に照らすと、原告のアカウント名やユーザ名を表示すれば足り、原告アイコンを掲載する必要はない。
 したがって、本件ツイートによる原告イラストの利用は、引用の目的上正当な範囲内で行われたものとはいえない。
3 付随対象著作物の利用の成否(争点3)
【被告の主張】
 本件ツイートは、次のとおり、付随対象著作物の利用の要件を満たす。
 すなわち、スクリーンショットは「複製伝達行為」(著作権法30条の2第1項)に該当するところ、原告アイコンは、本件投稿画像において占める割合が少ないため、「軽微な構成部分となる」ものとして、「付随対象著作物」(同項)に該当する。
 本件投稿者が本件ツイートに本件投稿画像を添付した主な目的は、原告ツイートに対して批判的な意見を述べることにあり、原告アイコンの利用によって利益を得る目的は基本的にない。加えて、原告アイコンが本件ツイートにおいて果たす役割は引用元を明記する点にあり、分離の困難性の程度も低くはないため、原告ツイートのスクリーンショットを作成する際に原告アイコンを残置することは、原告アイコンの正当な範囲内における利用である。
【原告の主張】
 本件ツイートは、次のとおり、付随対象著作物の利用の要件を満たすものではない。
 すなわち、本件投稿画像において、原告アイコンは冒頭に表示され、本文掲載部分とはスペースに隔たりがある上、原告アイコン以外の部分は全てテキストであるから、一見して目立つ態様で掲載されている。また、スマートフォンで本件投稿画像を閲覧する場合には、原告アイコンを独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさで閲覧することも可能である。したがって、本件ツイートにおいて原告アイコンは軽微な部分とはいえず、「付随対象著作物」に該当しない。
 仮に原告アイコンが「付随対象著作物」に該当するとしても、原告アイコンは、本件投稿画像を加工することで容易に削除することができ、原告ツイートの本文との分離困難性は著しく低い。また、本件投稿画像(原告ツイート)で原告アイコンについて何も触れられていないことからすると、本件投稿画像は、そもそも原告ツイートの本文を紹介するために作成されたものであって、同画像において原告アイコンが果たす役割はない。
 仮に原告アイコンが原告ツイートの投稿者(原告)を特定する意味を持つとしても、原告アイコンだけでは投稿者を確認できないこと、投稿者はユーザ名やアカウント名によって特定されることからすると、この意味においても原告アイコンが果たす役割はない。
 したがって、原告アイコンの利用は、付随対象著作物の利用として正当な範囲内のものとはいえない。
第4 当裁判所の判断
1 公衆送信の有無(争点1)について
 本件投稿画像において、原告アイコンは、本件ツイートの本文と共に表示されている場合及び本件投稿画像全体の表示ページに遷移した場合のいずれも、その表示自体から、原告イラストの構図及び色調等を認識することが可能であり、原告イラストの表現上の本質的特徴を直接感得し得るものといえる。
 したがって、本件投稿者による本件投稿画像の作成は原告イラストの複製ないし翻案に当たり、このような本件投稿画像を添付した本件ツイートの投稿は原告イラストの公衆送信に当たる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 引用としての適法性の有無(争点2)について
(1)前提事実(前記第2の2(4))、証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 すなわち、ツイッター上において、令和3年3月12日にある者が宮島地域の鹿対策に関する広島県廿日市市のホームページのスクリーンショットを添付して同市の宮島の鹿に対する餌やり禁止の方針について述べたツイートをした(以下「ツイートA」という。)。これに対し、他の者が、同年4月5日、ツイートAを引用すると共に、本文に「人間の都合で勝手なことばっか言ってて恥ずかしくはありませんか?…宮島の鹿の事はもう世界の関心事になりつつありますよ。」などと記載した引用リツイート(ツイートB)をした。
 本件投稿者は、同月6日、ツイートBに対する返信として、本件ツイートを行った。
(2)公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができるところ(著作権法32条1項)、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要である。また、引用としての適法な利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合的に考慮しなければならない。
 以上の観点から検討するに、まず、前提事実(前記第2の2(4))によれば、本件ツイートにおいて、本件投稿画像部分は、その形式上本件投稿者が記載した本文部分とは客観的に明瞭に区別して認識し得る態様で利用されているものといえる。また、前記前提事実及び前記(1)認定の各事実によれば、本件ツイート、ツイートA及びBを全体として見ると、行政による宮島の鹿に対する餌やり禁止の方針について、ツイートAの投稿者が行政側の説明の紹介及びこれを踏まえた意見を投稿したのに対し、ツイートBの投稿者が行政ないしツイートAに批判的な立場から意見を投稿し、その中で「宮島の鹿の事はもう世界の関心事になりつつありますよ。」などと指摘したことを受け、ツイートBに対する批判的な立場の意見として本件ツイートが投稿されたものと理解し得る。また、その際、本件投稿者は、本文において「10年近く前からそう仰る方々がいます」と指摘し、その具体例ないし根拠を示すことを目的として、本件ツイートの約7年半前に行政による宮島の鹿への餌やり禁止方針に批判的な立場から原告により投稿された原告ツイートのスクリーンショット(本件投稿画像)を添付したものと見られる。
 これらの事情を踏まえると、本件ツイートにおける本件投稿画像の添付という形での原告イラストの引用は、ツイートAから本件ツイートに至る議論の流れに沿って必要かつ合理的な範囲で行われたものといってよい。本件投稿画像の添付という方法についても、ツイッターには引用リツイート機能が設けられているものの、これによらずに、他のツイートのスクリーンショットを自己のツイートに画像として添付して投稿することによって他のツイートを自らのツイートにおいて表示させる方法もツイッター利用者により多く行われていること(前記第2の2(6))に鑑みると、なお公正な慣行に合致する範囲内にあるといえる。他方、原告イラストは、原告自らが選択し、これをトリミングして原告アイコンとして設定したことにより、原告ツイートに表示されたものである。その結果として、本件ツイートに添付された本件投稿画像を構成するものとして原告イラスト(原告アイコン)が利用されたことを踏まえると、原告イラストの著作物としての種類や性質、その著作権者である原告に及ぼす影響の有無及び程度等を考慮しても、原告イラストの著作物としての意義ないし価値が損なわれ、又は原告が経済的な不利益を受けるなど、本件ツイートにおける引用につき、公正な慣行に合致せず、又は社会通念に照らして合理的な範囲を逸脱するものというべき具体的な事情は特段うかがわれない。
 以上の事情を総合的に考慮すると、本件ツイートが本件投稿画像を添付することにより本件イラストを引用して利用したことについては、その方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内にあるものといえる。
 したがって、本件ツイートによる原告イラストの引用は適法である。
(3)これに対し、原告は、他のツイートのスクリーンショットを添付する方法による引用は本件規定に違反することなどを指摘して、公正な慣行に合致するとはいえないなどと主張する。
 しかし、そもそも、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が本件規定その他の規約違反に該当するか否かは、必ずしも明確ではない。被告も、本件において、このような行為がツイッターで多数行われていることは指摘しながら、それが規約違反であるとは明言していない。その点を措くとしても、現にこのような行為がツイッターで多数行われ、しかもこれが規約違反として被告により削除等規制されているという実態はうかがわれないことに鑑みると、スクリーンショットの添付という引用の方法につき、公式に用意されたリツイート機能によらないことをもって直ちに公正な慣行に合致しないものとするのは相当でない。
 このほか、原告は、リツイート機能ではなくスクリーンショットの添付により著作物が引用されることに伴う著作権者の不利益を指摘する。しかし、ツイッターにおける上記実情等に鑑みると、仮に原告指摘に係る不利益が生じたとしても、なおスクリーンショットの添付による引用をもって公正な慣行に合致しないとするに足りるものとはいえない。
 その他原告が縷々主張する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。
3 まとめ
 以上のとおり、本件ツイートによる原告イラストの引用は著作権法32条1項所定の要件を満たす適法なものであるから、その余の点につき論ずるまでもなく、本件ツイートによって原告イラストに係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるとはいえない。したがって、原告は、被告に対し、本件ツイートに係る発信者情報開示請求権を有しない。
第5 結論
 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 杉浦正樹
 裁判官 鈴木美智子
 裁判官 稲垣雄大


別紙 当事者目録
原告 甲
同訴訟代理人弁護士 小沢一仁
被告 ツイッターインク
同訴訟代理人弁護士 中島徹
同 上田一郎
同 平津慎副
同 細川智史
同 清水美彩惠
同 中所昌司
同 安藤裕実
同 相澤亮
同 小宮慶久
同 大岩祐貴
同 椎名紗彩
同 秋山円
同 犬飼貴之
同 山本ゆり
同 五十嵐紀史
同 大野真梨子
同 尾形夏子
同 中村彰男
同 堀川達流
同 松岡亮伍
同 水野幸大

別紙 発信者情報目録
 別紙対象アカウント目録記載のアカウントについて、令和3年5月28日時点で被告が保有していた情報であって、次に掲げるもの。
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別紙 対象アカウント目録省略
別紙 著作物目録省略
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