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【事件名】オンラインゲームの類似キャラクター事件
【年月日】令和4年4月22日
 東京地裁 平成31年(ワ)第8969号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 令和4年2月17日)

判決
原告 シャンハイムーントンテクノロジーカンパニーリミテッド
同訴訟代理人弁護士 鈴木良和
同 日野英一郎
同 西ア達史
被告 シックスジョイホンコンリミテッド
同訴訟代理人弁護士 寺澤幸裕
同 石原尚子
同 児玉友輝


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙被告作品目録1記載のオンラインゲームを複製してはならない。
2 被告は、別紙被告作品目録1記載のオンラインゲームを記録した記録媒体から、同目録記載のオンラインゲームのデータを削除せよ。
3 被告は、原告に対し、1110万円及びこれに対する令和元年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は、別紙被告作品目録2記載の画像を複製してはならない。
5 被告は、別紙被告作品目録2記載の画像を記録した記録媒体から、同目録記載の画像のデータを削除せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
 本件は、原告が、被告において、別紙被告画像目録記載2ないし7の各画像をゲーム内画面に含む別紙被告作品目録1記載のオンラインゲームを制作し、日本国内に配信した行為により、原告の別紙原告画像目録記載2ないし8の各画像に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害するとともに、フェイスブック上に作成された上記ゲームの公式ウェブページに別紙被告作品目録2記載の画像を表示させるインラインリンクを貼った行為により、原告の別紙原告画像目録記載1の画像に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害し又はこれを幇助したと主張して、被告に対し、著作権法112条1項及び2項に基づき、別紙被告作品目録1記載の上記ゲームの複製の差止め及び同ゲームのデータの削除並びに別紙被告作品目録2記載の画像の複製の差止め及び同画像のデータの削除を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、1110万円(著作権法114条2項及び3項に基づき算定した損害金並びに弁護士費用相当損害金の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年10月9日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告は、オンラインゲームの制作を営む中華人民共和国(以下「中国」という。)上海市所在の企業であり、「A」と題するオンラインゲーム(以下「原告ゲーム」という。)を制作して、遅くとも平成29年11月1日までには、日本国内における配信を開始した(甲3、弁論の全趣旨)。
 被告は、オンラインゲームの制作及び配信等を営む香港所在の企業であり、平成30年1月22日、日本国内において、スマートフォン等向けのアプリストア(GooglePlay及びAppStore)を通じて、別紙被告作品目録1記載のオンラインゲーム(以下「被告ゲーム」という。)の配信を開始した(甲1、2、乙8)。
(2)別紙原告画像目録記載1ないし8の画像(以下順に「原告画像1」、「原告画像2」などのようにいい、原告画像1ないし8を「原告各画像」と総称する。)は、プレイヤーが原告ゲームをプレイする際に表示されるゲーム内画面である(甲3、弁論の全趣旨)。
(3)別紙被告画像目録記載1の画像(以下「被告画像1」といい、同目録記載2ないし7も同様の例による。また、被告画像1ないし7を「被告各画像」と総称する。)は、遅くとも平成30年8月13日から、フェイスブックの被告が管理する被告ゲームのアカウントに係るウェブページ(以下「本件ウェブページ」という。)に表示されていたものであり、別紙被告作品目録2記載の画像と同一のものである(甲9)。
 また、被告画像2ないし7は、プレイヤーが被告ゲームをプレイする際に表示されるゲーム内画面である。
(4)被告のグループ企業であるシャンハイ・テンセント・コンピューター・システム社(以下「テンセント・コンピューター社」という。)は、原告が原告ゲームを開発、運営する行為が、被告のグループ企業が開発し、中国国内に配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームである「C」に係るテンセント・コンピューター社の著作権(複製権)を侵害するとして、原告に対し、平成29年3月16日、中国の裁判所に訴えを提起した(以下「別件中国訴訟」という。)(乙3、4)。
3 争点
(1)民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」の存否(争点1)
(2)原告各画像に係る著作権侵害の成否(争点2)
ア 原告各画像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)
イ 被告による原告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)
ウ 依拠の有無(争点2−3)
(3)差止め等の必要性(争点3)
(4)損害の発生及び額(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」の存否)について
(被告の主張)
(1)本件訴訟と別件中国訴訟との関連性
 本件訴訟と別件中国訴訟を比較すると、本件訴訟の原告が別件中国訴訟の被告であるという点や、本件訴訟の被告と別件中国訴訟の原告がグループ企業の関係にあるという点において、当事者に共通性が存在する。
 また、両訴訟はいずれも原告ゲームと被告のグループ企業が著作権を有するオンラインゲーム「C」とに関する紛争であるという点で、事案の共通性が存在する。
 さらに、本件訴訟の争点は別件中国訴訟の争点と共通するものである。すなわち、別件中国訴訟の争点は、原告ゲームのキャラクターやマップが「C」に係るテンセント・コンピューター社の著作権を侵害したか否か等であるところ、仮に別件中国訴訟において原告による著作権侵害が認められれば、原告は他人の著作権を侵害する原告ゲームを持ち出して本件訴訟を提起したことになるから、本件訴訟はクリーンハンドの原則や権利濫用の観点から許されるべきではない。それのみならず、被告が被告ゲームを開発する過程で被告の関連会社が作成した「C」を参考にすることは十分にあり得るから、別件中国訴訟は、本件訴訟における依拠の争点に対する判断にも影響を与えることになる。
 このように、本件訴訟と別件中国訴訟とは、当事者、事案及び争点において密接に関連する。
(2)当事者の予測可能性
 原告と被告は、いずれも、中国に所在し、中国でゲーム事業を展開する法人であること、原告ゲームと被告ゲームはいずれも中国の著作権法により作物として保護されるゲームであること、原告ゲームの開発者と被告ゲームの開発者はいずれも中国国内に所在すること、本件訴訟の提起に先立ち、本件訴訟と密接に関連する別件中国訴訟が中国で提起されていることに照らすと、原告と被告は、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたものというべきである。
(3)本件訴訟に関する客観的事情
 原告が主張する侵害行為は、被告が被告ゲームを制作して配信する行為であるところ、被告は、被告ゲームを日本に配信する作業も、被告ゲームを制作する作業も、専ら中国国内において行ったのであり、日本国内で配信及び制作行為をした事実はない。したがって、被告ゲームが日本向けに配信された作品であるという点を除き、本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したものである。
(4)証拠の所在地並びに応訴により被告に生じる負担及び不利益
ア 前記(3)のとおり、被告ゲームの制作作業及び配信は全て中国において行われており、ゲーム開発者、開発データ、配信作業に関わる担当者及び配信に関する資料等の本件訴訟の証拠は全て中国国内に存在する。そのため、日本の裁判所において本件の争点に係る事実を立証するためには、中国で活動する被告ゲームの開発者の証人尋問を実施したり、中国国外へ持ち出すことが中国の法令に違反しかねない被告ゲームの開発データを取り調べたりする必要がある。さらに、本件訴訟のために、中国語と日本語が堪能な通訳を手配したり、中国語で記載された被告ゲームの開発資料などの膨大な書面を全て日本語に翻訳したりする必要が生じる。したがって、本件訴訟が日本の裁判所で遂行された場合には、適正かつ迅速な審理の実現を妨げることになる可能性がある。
 加えて、被告は、日本国内に子会社や事務所などの拠点を有しないため、上記のような審理が日本の裁判所で行われる場合には、被告に過大な負担を課することになる。
イ なお、「C」は日本で配信されていないことから、テンセント・コンピューター社は原告に対して翻案権侵害を理由に日本で訴訟提起をすることができない。そのため、原告ゲームが「C」に係るテンセント・コンピューター社の著作権を侵害していたとしても、日本の裁判所では、侵害を認める判断に至らない可能性がある。しかし、そのような可能性を前提とした本件訴訟の判断は、著しく正義に反し、当事者の衡平を害するものである。したがって、上記の事情は、日本における適正な審理の実現を妨げるものといえる。
(5)原告の主張について
 原告は、仮に、本件が中国の裁判所において審理され、判決が下されたとしても、当該判決を日本国内において承認及び執行することができず、原告は実質的に救済されないこととなるから、本件訴訟については日本の裁判所に裁判管轄が認められると主張する。
 しかし、本件訴訟において被告に対する差止判決を取得したとしても、その執行力は海外に所在する被告にまで及ばないので、実質的には意味がないといえる。そもそも、民事訴訟法3条の9は、外国裁判所の確定判決の承認可能性を「特別の事情」の考慮要素として挙げていない。したがって、本件において、外国裁判所の確定判決の承認可能性を「特別の事情」に関する判断の基礎として考慮することはできないし、考慮する必要もないのであるから、原告の上記主張には理由がない。
(6)小括
  以上の次第で、本件訴訟には、民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」がある。
(原告の主張)
(1)本件訴訟と別件中国訴訟との関連性
 被告は、本件訴訟の争点が別件中国訴訟の争点と共通するものであり、両訴訟は密接に関連するものであると主張する。
 しかし、別件中国訴訟の当事者は、テンセント・コンピューター社及び本件訴訟の原告であって、本件訴訟と別件中国訴訟は、異なる当事者間における紛争である。
 また、本件訴訟は、原告が、被告に対し、被告が日本国内で被告ゲームを制作、配信等することによる原告ゲームに関する著作権侵害を理由として訴えを提起したものであるのに対し、別件中国訴訟は、テンセント・コンピューター社が、本件訴訟の原告に対し、本件訴訟の原告が中国で原告ゲームを制作したことによる「C」に関する著作権侵害を理由として訴えを提起したものであって、両者は全く異なる事実を原因として発生した紛争である。
 加えて、本件訴訟において想定される争点は、日本国内で作成、配信等されている被告各画像が原告各画像を無断で複製又は翻案したものであるのか否かであるのに対し、別件中国訴訟において想定される争点は、原告ゲーム内のキャラクターやマップ等の著作物が「C」に係る著作物を無断で複製又は翻案したものか否かであるから(なお、別件中国訴訟において、原告各画像が「C」に関する著作権を侵害するとの主張がされていることはうかがわれない。)、別件中国訴訟と本件訴訟とは争点も異なる。
 このように、別件中国訴訟と本件訴訟とは、紛争の当事者、紛争の発生原因となった事実及び争点が異なる、独立した別の紛争である。
(2)当事者の予測可能性
 被告は、本件の当事者が中国の裁判所で本件の解決が図られることを想定していた旨を主張する。
 しかし、本件訴訟の請求原因事実は、被告が日本国内で被告ゲームを制作、配信等することにより、原告各画像に係る原告の著作権を侵害したというものである。また、被告ゲームの売上の多くの部分は、日本国内で発生している。このように、本件は、日本国内での侵害行為や日本国内で発生した損害に係る事案であるから、その当事者としては、日本国内で提訴等を行うのが通常というべきである。
(3)証拠の所在地及び被告の応訴の負担
ア 被告は、本件訴訟の証拠が全て中国に所在すると主張する。
 しかし、本件訴訟は、日本国内で配信される日本向けのゲームである被告ゲームを被侵害物件とするものである。そして、被告ゲームには、日本語が使用され、日本人の声優が起用されている。こうした内容の被告ゲームの制作の全てが日本国外で行われたとは想定し難く、被告各画像については、被告又は被告から委託を受けた外部業者等が日本において作成したと考えるのが自然である。このように、証拠の一定部分は日本に所在するものと想定される。
 また、本件の主要な争点は、依拠の有無ではなく、原告各画像と被告各画像の類否になると考えられるし、被告各画像が原告各画像に依拠して作成された事実は、被告が指摘する証人尋問や書証の取調べをするまでもなく、日本の裁判所において認定することが可能である。
 以上によれば、本件の争点の審理に必要な証拠は、主として日本に所在するといえる。
イ また、被告は、本件訴訟について日本の裁判所で応訴することは、被告に過大な負担を課することになると主張する。
 しかし、前記アのとおり、本件において想定される争点に関する証拠は主として日本国内に所在するから、本件を日本の裁判所において審理するとしても、被告が指摘するような翻訳や証人尋問の負担が生じるものではなく、被告に過大な負担を課すことにはならない。また、被告ゲームの開発データを中国国外に持ち出すことが中国の法律に抵触するおそれがあるとする点も、抽象的なおそれにすぎず、被告ゲームの開発データに上記法律が適用されることが具体的に予見される状況にはない。
 原告は、中国の裁判所において被告に対する訴えの提起も反訴の提起もしていないから、本件について改めて中国の裁判所に訴えを提起しなければならないとすれば、過大な負担を被ることになる。
(4)中国の裁判所による判決の実効性
 中国の裁判所による判決は、一般に、日本国内において承認及び執行することができないと考えられているところ、本件は日本国内における差止請求を含むものであるから、仮に、本件が中国の裁判所において審理され、差止請求を認容する判決が下されたとしても、当該判決を日本国内において承認及び執行することができず、原告は実質的な救済を受けることができないこととなる。
(5)小括
 以上のとおり、被告の主張にはいずれも理由がなく、本件の事案の性質や関連訴訟の存在、証拠の所在地、当事者の予測可能性及び当事者の負担という観点に加え、判決の承認及び執行という観点も踏まえれば、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」が認められる余地はないというべきである。
2 争点2(原告各画像に係る著作権侵害の成否)について
(1)争点2−1(原告各画像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性)について
ア 原告画像1と被告画像1について
(原告の主張)
 原告画像1と被告画像1は、@丸い眼鏡を掛けた茶色のふくろうのキャラクターが、左側の羽を広げ、右足を前に出して走っているようなポーズをとっている点、A上記ふくろうのキャラクターが、右側の羽で、先端に時計が付いた杖を握っており、上記時計は小屋のようなデザインであり、屋根は青色で壁は茶色である点及びB上記ふくろうのキャラクターは、黄色い花と白いボアが付いた茶色の帽子をかぶり、青色と茶色のボーダー柄のマフラーのようなものを首に巻いている点において全く同一である。
 この点、原告ゲームはオンラインアクションゲームに属するものであるが、オンラインアクションゲームにふくろうのキャラクターを登場させること自体が極めて個性的な表現であるといえるのみならず、上記@ないしBの点は、ふくろうのキャラクターの外見として一般的な表現にとどまるものではないから、原告画像1の上記@ないしBの点は、オンラインアクションゲームに登場するふくろうの表現として極めて個性的な創作的表現である。そうすると、原告画像1と上記@ないしBの点において同一性を有する被告画像1に接した者が、原告画像1の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることは明らかである。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
イ 原告画像2と被告画像2について
(原告の主張)
(ア)a 原告画像2と被告画像2の表現は、@西遊記の孫悟空をイメージした猿のキャラクターが如意棒を手にしており、如意棒にも衣装にもオレンジ色が入っている点、A如意棒は、上記キャラクターの体長よりも長く、やや左に傾きながら縦にひび割れた地面に突き刺さっており、上記キャラクターは、右足を上、左足を下にして如意棒の上に立っており、右手で如意棒を握っている点、B上記キャラクターは、首周りに数珠を、腰にベルトを、腰周りにオレンジ色の布を巻いている点並びにC中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点において、極めて類似する。
 この点、オンラインアクションゲームにおいて、上記@のような西遊記の孫悟空をイメージした猿のキャラクターは、一般的に見られる表現ではない。加えて、上記A及びBのとおり、原告画像2の上記キャラクターのポーズ及び衣装の表現には、細部までこだわりが見られる。また、上記Cのとおり、原告画像2の画面構成も、キャラクターが際立つことを第一の目的としつつ、プレイヤーにとって必要な情報を画面の各位置に配置したものである。したがって、原告画像2の上記@ないしCの点は、原告画像2に特有の極めて個性的な創作的表現であるといえる。そうすると、被告画像2の表現が上記@ないしCの点において原告画像2と極めて類似する以上、被告画像2に接した者が原告画像2の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像2に原告画像2と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張する。
 しかし、原告画像2と被告画像2に共通する表現と上記既存の作品の表現との間には差異が存在するから、被告の主張は、原告画像2と被告画像2に共通する具体的な表現が既存の作品にもみられることを主張するものではなく、アイデアが共通することを指摘するものにすぎない。かえって、原告画像2の表現と上記既存の作品の表現との間に差異が存在するということは、原告画像2の表現に選択の幅があり、前記aの共通部分に係る表現の創作性の高さを裏付けるものである。
c また、被告は、前記aCのような画面構成について、オンラインゲームではある程度必然的かつ一般的に用いられるものであるとして、創作性が認められないと主張する。
 しかし、各キャラクターがどのような能力や特徴を有しているかを示す指標をキャラクター紹介画面で示すこと自体がアイデアであるとしても、そのような能力や特徴を表示する具体的な表現は、アイデアではなく表現そのものであり、創作性が認められ得る。そして、画面構成の具体的な表現は選択の幅が広いから、原告画像2の画面構成に関する表現には高い創作性が認められる。
 したがって、被告の上記主張には理由がない。
(イ)被告は、原告画像2と被告画像2には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張する。
 しかし、被告が主張するキャラクターの髪の色及び髪型、あごひげの色及び長さに関する差異は、それらをどのように言語化するかという問題にすぎず、表現上の本質的な特徴の差異とはいい難い。頭部の装飾の形状、数珠のデザインや身に着け方、画面表示の差異に関する被告の主張についてみても、表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎないし、被告が主張する衣装、手首等の装備及び靴のデザインに関する差異も、原告画像2及び被告画像2からは判別することが著しく困難なほどに軽微である。
 さらに、被告は、原告画像2と被告画像2において、如意棒の色、角度及びカーブの有無並びにキャラクターの足の開き具合及び体の角度が異ると主張するが、如意棒の色は濃さが若干異なるにすぎず、表現上の本質的な特徴の差異とはいい難いし、如意棒の角度及びカーブ並びにキャラクターの足の開き具合及び体の角度については、被告が主張するような差異を明確に認識することは困難である。
 したがって、被告の上記主張にはいずれも理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像2と被告画像2は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像2には、原告画像2の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像2のキャラクターの髪の毛は、オレンジ色で、無造作であり、山形の装飾を頭部に着けている。さらに、あごひげも同じくオレンジ色で、その長さは顎を覆うほどのものである。
 これに対し、被告画像2のキャラクターの髪の毛は、金色で、頭頂部から後ろにポニーテール状に結ってあり、頭部の装飾は月形である。
 さらに、あごひげも同じく金色で、その長さは胸まで届くほどのものである。
b 原告画像2のキャラクターは、膝上丈のオレンジ色のスカート状の衣装を身に着け、腰回りに布状のものを巻き、手首及び膝にそれぞれ防具のようなものを装着し、かつ靴を履いている。
 これに対し、被告画像2のキャラクターは、ひざ下丈の赤色(裏地が青色)のスカート状の衣装及びその真ん中から足元まで届くほどの長さの灰色の布状の唐草模様入りの衣装を身に着け、手首、膝には何も装着せず、かつ靴も履いていない。
c 原告画像2のキャラクターは、黒色の数珠を、ネックレスのように首に掛けて装着している。
 これに対し、被告画像2のキャラクターは、白色と茶色のボーダー模様であり、原告画像2が装着するものよりも大きい数珠を肩から腰にかけて斜めに装着している。
d 原告画像2の如意棒の色は、中央が灰色、両端がオレンジ色である。
 また、その位置は地面からほぼ垂直で、ややカーブし、先端は画面からはみ出すほど長い。そして、原告画像2のキャラクターは、その上に右足を上、左足を下にして、足を開いて立ち、体を右側に傾けている。
 これに対し、被告画像2の如意棒は赤ないし朱色である。さらに、当該如意棒の端部には丸く金色の装飾が施されており、その位置は地面から左側に45度程度傾いている。また、上記の如意棒は、カーブしておらず、長さが被告画像2のキャラクターの頭部あたりまでで、画面からはみ出していない。被告画像2のキャラクターは、その上に右足を上、左足を下にして、足を揃えるようにして立ち、体をほぼ垂直にしている。
e 原告画像2の画面構成は、背景が夜の荒涼とした大地で、画面右側のキャラクター選択欄には「猿王」と記されたキャラクターの表示があるが、その次のキャラクターは表示されていない。キャラクター選択欄の上には、本、黄金のコイン及び円錐形のダイヤのような宝石のアイコンが配置されている。また、画面左側には「タイプファイター」及び「特徴突撃/前進」とそれぞれ記載があり、その下には4種類(生存能力、攻撃能力、スキル効果及び難易度)の黄色又はオレンジ色のバーがあり、さらにその下に4つの異なるデザインの円状のアイコンが横に並び、最下段に「攻略」、「ストーリー」、「生放送」及び「装備」とそれぞれ表示された4つのアイコンが配置されている。なお、原告画像2のキャラクターが位置する中央の円形の台座は、四重円で2つ目と3つ目の円の間が水色で縁取られたデザインであり、その大きさも画面横幅の4分の3程度を占める。
 これに対し、被告画像2の画面構成は、背景が昼間の市街地で、画面右側のキャラクター選択欄の左側には「斉天大聖」と記されたキャラクターの表示があり、その右隣に「死闘遊戯」と記された次のキャラクターが表示されている。また、各キャラクターが表示される長方形上の枠囲いは、原告画像2のものよりも縦方向に細長い。キャラクター選択欄の上には、コンパス、先端が尖った槍の刃及び五角形の宝石のようなアイコンが配置されている。さらに、画面左側には、「基本情報」、「ステータス」、「ストーリー」及び「装備」とそれぞれ記載があり、その右側に4種類(物理攻撃、防御、スキル及び難易度)の白色のバーがあり、その下に4つの異なるデザインの円状のアイコンが縦方向に並んでいる。また、被告画像2にのみ最下部にコンパスと先端が尖った槍の刃のようなアイコンが再度表示され、その右横に「購入」及び「体験」のアイコンが表示されている。そして、被告画像2のキャラクターが位置する中央の円形の台座は、茶色のベースに金色で星模様のデザインが施されたもので、画面横幅の3分の1程度の大きさである。
(イ)原告画像2と被告画像2に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@ないしBについて、孫悟空をイメージしたキャラクターであること、如意棒を手にし、如意棒にも衣装にもオレンジ色が使われていること、如意棒がキャラクターの体長よりも長いこと、キャラクターが首周りに数珠を巻き、腰にベルトを巻いていることなどは、いずれもアイデアの域を出ない。仮にこれらが表現に当たるとしても、同様の表現は、原告ゲームが公表された2017年(平成29年)11月1日の時点で既に公表されていた同様のゲームでも見受けられるものであって、ありふれた表現である。
b 前記(原告の主張)(ア)aのCの画面構成は、画面上のキャラクターの位置、獲得アイテム数表示欄、画面右側に設置されているキャラクター選択欄及びステータスバーの存在並びにその位置であるが、これらは、原告ゲームのようなMOBA(マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ)と称されるオンラインゲームにおいて、ある程度必然性をもって一般的に用いられるものにすぎず、現に、原告ゲームより前に開発されて公表されていたゲームである「C」にも見られる表現であって、ありふれた表現であるから、創作性が認められない。そもそも、この構成自体は、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)でもなく、著作権法で保護されないアイデアの領域を出ないものである。
ウ 原告画像3と被告画像3について
(原告の主張)
(ア)a原告画像3と被告画像3は、@ウエストにベルトが付き、裾が広がった白色のロングコートを着た男性のキャラクターが、背中を向けて立っており、背中に2本のタンクを背負っていることが分かるようになっている点、A2本のタンクの上下部分は金属のようなもので覆われているが、胴体部分は透明で、中に液体が入っており、2本のタンクの間には器具が付いている点、B上記キャラクターが手に大きな器具を持っている点及びC暗い廃墟のような背景を有している点において、極めて類似する。
 この点、上記@ないしBの点は、化学者を連想させる表現であって、オンラインアクションゲームのキャラクターの表現として一般的に考え付くようなものではなく、特に、背中に液体の入った2本のタンクを背負っていることは、原告ゲームのようなオンラインアクションゲームのキャラクターの表現としては特異である。また、上記Cの背景は、化学者の不気味な雰囲気を演出するような表現である。したがって、原告画像3の上記@ないしCの表現は、原告画像3に特有の極めて個性的な創作的表現であるといえる。そうすると、被告画像3の表現が上記@ないしCの点において原告画像3と極めて類似する以上、被告画像3に接した者が原告画像3の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像3に原告画像3と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張する。
 しかし、原告画像3と被告画像3の共通部分の創作性は、ゲームのキャラクター紹介画面においてキャラクター並びに画面構成及び背景を組み合わせた表現にも認められるところ、被告が指摘する上記既存の作品は、原告画像3と被告画像3の共通部分と対比し得る画面構成や背景を有しておらず、ゲームのキャラクターでないものも含んでいる。したがって、上記既存の作品が存在することを根拠に、原告画像3と被告画像3の共通部分が、アイデアにすぎないとか、ありふれたもので創作性が認められないということはできない。かえって、上記既存の作品の存在は、前記aの共通部分の表現の選択の幅が大きく、創作性が高いことを強く裏付けるものである。
c また、前記aCについて、被告は、暗い廃墟のような背景をゲームで用いるという単なるアイデアが共通するにすぎない旨を主張する。
 しかし、「暗い廃墟のような背景」をゲームで用いることは、ゲームにおける表現そのものであり、アイデアにとどまるものではないから、被告の上記主張には理由がない。
(イ)被告は、原告画像3と被告画像3には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張する。
 しかし、被告が指摘する差異のうち、キャラクターが右に傾いているか左に傾いているかという点、キャラクターの体格、衣装のデザイン、タンク内の液体の色、キャラクターの後頭部が見えるか否かという点及び画面構成に関する差異は、極めて軽微なものであって、原告画像3と被告画像3の表現上の本質的な特徴の差異に当たるとはいい難い。
 さらに、原告画像3と被告画像3の背景に関して被告が主張する差異についても、それらの背景をどのように言語化するかの問題という側面が大きく、表現上の本質的な特徴の差異とはいい難い。
 したがって、被告の上記主張にはいずれも理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像3と被告画像3は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像3には、原告画像3の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像3のキャラクターは、左方向を向いた後ろ姿の、がっしりした体格の男性であり、足首丈ほどの長さのコートのような衣装を身に着け、黒色のベルトを装着し、黒色のブーツを履いている。
 これに対し、被告画像3のキャラクターは、右方向を向いた後ろ姿の、細身の男性であり、地面に着くほどの丈でタックが複数入った白衣のような衣装を身に着け、左腰には注射器のような器具を取り付けている(なお、原告が主張するようにベルトを装着しているかは確認できない。)。
b 原告画像3のキャラクターは、上半身を覆う程の大きさで、上下部分が灰色の金属で覆われた赤色の液体が入ったタンクを背中に背負い、そのためにキャラクターの後頭部が見えず、両手で大型の銃のような武器を持って左側を向いて立っている。
 これに対し、被告画像3のキャラクターは、原告画像3よりも小型で、上部と下部が金色の金属で覆われた緑色の液体が入ったタンクを背中に背負い、無造作な白髪の髪の毛を有している。さらに、右手には筒状の武器を持ち、左手には緑色の液体が入ったフラスコのような道具を宙に投げながら、右側を向いて立っている。
c 原告画像3の画面構成は、背景が前記原告画像2と同様の夜の荒涼とした大地である。
 これに対し、被告画像3の画面構成は、おぼろ月夜の廃墟を背景としたものである。
 画面構成に関するその余の相違点(キャラクター選択欄、アイコン、バー、キャラクターが立つ円形等)については、前記イ(被告の主張)
(ア)eと同様である。
(イ)原告画像3と被告画像3に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@ないしBについて、腰にベルトが付いたコートのような丈の長い衣装を身に着け、手に大きな器具又は武器を持ち、2本のタンクを背負った、後ろを向いたキャラクターをゲームに登場させることは、アイデアにとどまる。仮に原告画像3がこうしたアイデアを具体的に表現したものとみるとしても、原告ゲームの公表の前にも同様の表現が存在したことから、ありふれた表現であって創作性が認められない。
b 前記(原告の主張)(ア)aのCについて、暗い廃墟のような背景を用いるということはアイデアにとどまるし、アイコンなどの画面構成は、他のゲームの画面構成にも見られるありふれた表現であって創作性が認められない。
エ 原告画像4と被告画像4について
(原告の主張)
(ア)a原告画像4と被告画像4は、@ほぼ上半身裸で、腹が出ており、脚が短い大男のキャラクターが表現されている点、A上記キャラクターが、右手に大きな肉切り包丁を、左手に大きなフックを持っており、両手の先から肘の辺りまで防具を付けている点、B中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点並びにC暗い廃墟のような背景を有している点において、極めて類似する。
 この点、上記@及びAのようなキャラクターの外見は、肉屋を連想させる表現であるところ、これは、オンラインアクションゲームのキャラクターの表現として一般的に考え付くようなものではない。特に、ほぼ上裸の大男が、右手に大きな肉切り包丁を、左手に大きなフックを持ち、両手の肘の辺りまで防具を付けていることは、オンラインアクションゲームのキャラクターの表現としては特異である。また、上記Bのような画面構成は、キャラクターが際立つことを第一の目的としつつプレイヤーにとって必要な情報を画面の各位置に配置したものであり、上記Cのような背景は、恐ろしい肉屋の不気味な雰囲気を演出するような表現である。したがって、上記@ないしCの表現は、いずれも原告画像4に特有の個性的な表現であるといえる。そうすると、被告画像4が上記@ないしCの点において原告画像4と極めて類似する以上、被告画像4に接した者が原告画像4の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像4に原告画像4と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張する。
 しかし、前記ウ(原告の主張)(ア)bと同様の理由により、上記既存の作品が存在することを根拠に、原告画像4と被告画像4の共通部分が、ありふれたものであって創作性が認められないということはできず、かえって、その存在は、原告画像4と類似のコンセプトを持つキャラクターの表現には選択の幅があり、前記aの共通部分の創作性が高いことを裏付けるものである。
c また、被告は、前記aBのような画面構成について創作性が認められないと主張するが、前記イ(原告の主張)(ア)cと同様の理由により、かかる被告の主張には理由がない。
(イ)被告は、原告画像4と被告画像4には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張する。
 しかし、被告が主張する肌の色、体形、衣装、頭部のデザイン及び右わき腹の傷並びに画面構成の差異は、表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎない。
 また、被告は、原告画像4では、腕に防具のようなものを装着し、切株に右足を乗せ、体を右側に傾け、右手には大きな包丁状の道具、左手には丸みを帯びたフック状の道具を持っているのに対し、被告画像4では、左手首には防具ではなく鎖のようなものを巻き付けて、正面を向いて両足で立ち、右手には片刃のこぎり又は斧のような道具、左手には四角い鍵状のフックのような道具をもっていると主張するが、被告の主張するような差異を明確に認識することは困難である上、立ち方の差異に係る主張は、表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎない。
 したがって、被告の上記主張にはいずれも理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像4と被告画像4は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像4には、原告画像4の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像4のキャラクターは、肌がピンク色で、筋骨隆々の上半身にエプロン状の衣装を身に着け、腹部が隠れており、頭にはコック帽子を被っている。
 これに対し、被告画像4のキャラクターは、肌が灰色で、恰幅の良い上半身で、その肩から胸にかけて、胸の中心に円状の金属の留め具が施された皮又は布のようなものを纏い、腹部が出ており、頭には何も被っていない。頭部は、オレンジ色の髪の毛をモヒカン状に有し、あごひげのようなものを有している。また、右わき腹には極めて特徴的な大きな手術痕のような傷を有している。
b 原告画像4のキャラクターは、腕に防具のようなものを装着し、切株に右足を乗せ、体を右側に向け、右手には大きな包丁状の道具、左手には丸みを帯びたフック状の道具を持っている。さらに、両手を下げて、右手を前方に、左手を後方にしている。上半身に防具のようなものは見当たらない。
 これに対し、被告画像4のキャラクターは、左手首には防具ではなく鎖のようなものを巻き付けて、正面を向いて両足で立ち、右手には片刃のこぎり又は斧のような道具、左手には四角い鍵状のフックのような道具をもっている。また、胸部に防具のようなものを装着している。さらに、右手を上げて道具を右肩に背負い、左手は垂直に下げている。
c 原告画像4の画面構成は、背景が前記原告画像2と同じように夜の荒涼とした大地である。
 これに対し、被告画像4の画面構成は、おぼろ月夜の廃墟を背景としたものである。
 画面構成に関するその余の相違点(キャラクター選択欄、アイコン、バー、キャラクターが立つ円形等)は、前記イ(被告の主張)(ア)eと同様である。
(イ)原告画像4と被告画像4に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@及びAについて、手に刃物とフック状の武器のような装備を持った、上半身裸の、腹が出て脚の短い大男をゲームのキャラクターとして登場させることや、当該キャラクターが手の肘辺りまで防具を装着していることは、アイデアにとどまるか、表現であったとしても、他のゲームにも見られるありふれたものであって創作性が認められない。
b 前記(原告の主張)(ア)aのB及びCについて、原告画像4の画面構成がアイデアにとどまるか、ありふれた表現であって創作性が認められないことは、前記イ(被告の主張)(イ)bと同様である。
オ 原告画像5と被告画像5について
(原告の主張)
(ア)a 原告画像5と被告画像5は、@水色の衣装を着た女性のキャラクターが、椅子の上に、右足を上にして脚を組み、片手を椅子に付けて、正面を向いて座っている点、A上記キャラクターが座っている椅子は、水色で硬そうであり、氷を連想させるデザインであって、背もたれが女性の上半身よりも高い点並びにB中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点において、極めて類似する。
 この点、上記@及びAの点は、氷を連想させるように随所に工夫が施された表現であるところ、このような表現はオンラインアクションゲームにおいて一般的に見られる表現ではないし、上記Bのような画面構成は、キャラクターが際立つことを第一の目的としつつプレイヤーにとって必要な情報を画面の各位置に配置したものであるから、いずれも原告画像5に特有の個性的な創作的表現であるといえる。そうすると、被告画像5が上記@ないしBの点において原告画像5と極めて類似する以上、被告画像5に接した者が原告画像5の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像5に原告画像5と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張する。
 しかし、前記ウ(原告の主張)(ア)bと同様の理由により、上記既存の作品が存在することを根拠に、原告画像5と被告画像5の共通部分が、ありふれたもので創作性が認められないということはできず、かえって、その存在は、原告画像5と類似のコンセプトを持つキャラクターの表現には選択の幅があり、原告画像5の創作性が高いことを裏付けるものである。
(イ)被告は、原告画像5と被告画像5には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張する。
 しかし、被告は、キャラクターがアームカバーを身に着けているか否かに差異があると主張するところ、係る差異を明確に認識することは困難であり、むしろ、被告画像5のキャラクターもアームカバーを身に着けているようにも認識し得る。
 また、被告が主張するキャラクターの髪の毛の色、髪型、髪飾りの有無及び衣装の形状並びに画面構成の差異については、非常に細かく、表現上の本質的な特徴の差異とはいい難い。
 さらに、被告は、原告画像5のキャラクターが右足を上にして足を組んでいるかは不明であるのに対し、被告画像5のキャラクターは左足を右足の上に乗せて足を組んでいると主張するが、原告画像5のキャラクターの体勢から、当該キャラクターが右足を上にして足を組んでいると認めることができ、他方、被告画像5のキャラクターは左足ではなく右足を上にして足を組んでいると認められるから、被告が主張する上記差異を明確に認識することは困難である。
 したがって、被告の主張にはいずれも理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像5と被告画像5は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像5には、原告画像5の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像5のキャラクターは、水色の髪の毛をオールバックのようにして刺々しく固め、かつ頭飾りを身に着け、足全体が隠れる水色のロングドレスを纏い、腕にはアームカバーのようなものを身に着けている。なお、上記キャラクターが右足を上にして足を組んでいるかは不明である。
 これに対し、被告画像5のキャラクターは、銀色のストレート髪を有し、頭飾りを身に着けておらず、上半身には短い丈のジャケット又はマントのような衣装を、下半身にはストッキングのような衣装を、それぞれ身に着けているが、アームカバーは身に着けていない。また、被告画像5のキャラクターは左足を右足の上に乗せて足を組んでいる。
b 原告画像5のキャラクターが座る椅子は、紫色又は淡い紺色で、五重の階段状の台座になっており、背面には右手に剣をもった騎士のようなデザインが描かれ、その後ろ及び左右から氷柱のような刺々しい装飾が多数施されている。
 これに対し、被告画像5のキャラクターが座る椅子は、台座は石のような灰色で台形状の形になっており、左右及び中央の3か所から蝋燭台のような形状の装飾が施され、それぞれの頂上部にはクリスタルのような宝飾が1つずつ設置されている。さらに、椅子の背面は、水色で、アーチ状の細長い柱のようなものが設置されている。
c 原告画像5の画面構成は、背景が前記原告画像2と同様の夜の荒涼とした大地である。
 これに対し、被告画像5の画面構成は、背景がおぼろ月夜の山岳地帯である。
 画面構成に関するその余の相違点(キャラクター選択欄、アイコン、バー、キャラクターが立つ円形等)は、前記イ(被告の主張)(ア)eと同様である。
(イ)原告画像5と被告画像5に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@及びAについて、氷を連想させるように水色の衣装を着た女性のキャラクターをゲームに登場させることや、そうした女性キャラクターが水色の硬そうで背もたれの高い椅子に座っていることは、アイデアにとどまるものであるか、他のゲームや作品にもみられるありふれた表現であって創作性が認められない。
b 前記(原告の主張)(ア)aのBについて、原告画像5の画面構成がアイデアにとどまるか、ありふれた表現であって創作性が認められないことは、前記イ(被告の主張)(イ)bと同様である。
カ 原告画像6と被告画像6について
(原告の主張)
(ア)a 原告画像6と被告画像6は、@帽子を被り、短いスカートを着た少女のキャラクターが、地面に刺さった大きな鎌の上に座って正面を向いている点、A鎌は大きく、刃の長さも持ち手の長さも同じくらい長いほか、刃が上記キャラクターの左側にあり、刃の部分が途中まで地面に刺さっている点、B中央の円形の部分の上にキャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点並びにC暗い廃墟のような背景を有している点において、極めて類似する。
 この点、上記@及びAのとおり、帽子を被り短いスカートを着た少女が、地面に刺さった大きな鎌の上に座って正面を向いていることなどは、キャラクターの衣装、武器及びキャラクターのポーズまで細かく工夫された表現であって、オンラインアクションゲームにおいて一般的に見られる表現ではなく、原告画像6に特有の個性的な表現であるといえる。また、上記Bの画面構成は、キャラクターが際立つことを第一の目的としつつ、プレイヤーにとって必要な情報を画面の各位置に配置したものであり、上記Cの背景は、大きな鎌の上に座る少女の不気味な雰囲気を演出するような表現であり、いずれも、原告画像6に特有の個性的な表現であるといえる。そうすると、被告画像6が上記@ないしCの点において原告画像6と極めて類似する以上、被告画像6に接した者が原告画像6の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像6に原告画像6と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張する。
 しかし、前記ウ(原告の主張)(ア)bと同様の理由により、上記既存の作品が存在することを根拠に、原告画像6と被告画像6の共通部分が、ありふれたものであって創作性が認められないということはできず、かえって、その存在は、原告画像6と類似のコンセプトを持つキャラクターの表現には選択の幅があり、原告画像6の創作性が高いことを裏付けるものである。
(イ)被告は、原告画像6と被告画像6には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張する。
 しかし、被告が主張する衣装、鎌のデザイン、鎌の地面への刺さり方及び画面構成の差異は、表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎない。
 また、被告は、被告画像6のキャラクターと原告画像6のキャラクターは目の色、首飾り、腰に目玉をモチーフにしたような1つ目のキャラクターを付けているか否か、キャラクターが鎌状の武器に座っている姿勢等において差異がある旨を主張するが、こうした差異は、判別することが著しく困難なほどに軽微である。
 したがって、被告の上記主張にはいずれも理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像6と被告画像6は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像6には、原告画像6の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像6のキャラクターは、紫色のゴスロリ風のドレスを身に着け、その丈は膝上で短く、黒色のストッキングとヒールのついた黒い靴を履いている。また、髪は白色又はシルバーで長く、頭には紫色と白色の貴族風の帽子を被り、右目には紫色の蝶型の眼帯のようなものを着けている。
 これに対し、被告画像6のキャラクターは、青色のタイトな衣装の上に赤いマントを羽織り、赤色のストッキングと黒色及び濃紺色のロングブーツを履いている。また、髪は金色で短く、頭には赤い兜又は頭巾のようなものを身に着け、その縁は金色で棘のようなデザインの複数の装飾が施され、肩まで覆っている。さらに、右目がピンク又は赤色、左目が青色と、左右の目で色が異なり、首には首飾りのようなものを、腰には目玉をモチーフにしたような一つ目のキャラクターを、それぞれ身に着けている。
b 原告画像6のキャラクターが持つ大きな鎌状の武器は、柄及び刃が黒色で、刃の縁と柄の先端に金色の装飾が施され、かつ刃の先はフック状になって、柄が右斜め上方向を向いて地面に刺さっている。原告画像6のキャラクターは、鎌状の武器に座っているような姿勢であるが、両足は地面につき、左方向を向いている。さらに、鎌のそばには、こうもりのような羽の生えた黒色のキャラクターが描かれている。
 これに対し、被告画像6のキャラクターが持つ武器は、柄及び刃が灰色で、刃の先端は長く、赤色である。柄の根元部分は金色の装飾が施され、柄が地面と並行になって地面に刺さっている。被告画像6のキャラクターは、正面を向いて鎌状の武器の上に座り、足を地面から浮かせている。
c 原告画像6の画面構成は、背景が前記原告画像2と同様の夜の荒涼とした大地である。
 これに対し、被告画像6の画面構成は、おぼろ月夜の廃墟を背景としたものである。画面構成に関するその余の相違点(キャラクター選択欄、アイコン、バー、キャラクターが立つ円形等)は、前記イ(被告の主張)(ア)eと同様である。
(イ)原告画像6と被告画像6に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@及びAについて、帽子又は頭巾を被り、短いスカートを着た少女のキャラクターをゲームに登場させることや、かかる少女のキャラクターが大きな鎌を持ち又は鎌の上に座っていることは、アイデアにとどまるし、これが表現に当たるとしても、他のゲームやアニメ作品にもみられるものであるから、ありふれた表現であって創作性が認められない。
b 前記(原告の主張)(ア)aのBについて、原告画像6の画面構成がアイデアにとどまるか、ありふれた表現であって創作性が認められないことは、前記イ(被告の主張)(イ)bと同様である。
キ 原告画像7と被告画像6について
(原告の主張)
(ア)a原告画像7と被告画像6は、@赤色の帽子を被り、赤を基調とした衣装と短いスカートを身に着けた金髪の少女のキャラクターが、大きな鎌と共に正面を向いている点、A鎌は大きく、刃の長さも持ち手の長さも同じくらい長い点、B中央の円形の部分の上にキャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点並びにC暗い廃墟のような背景を有している点において、極めて類似する。
 この点、上記@及びAのとおり、赤色の帽子を被り短いスカートを身に着けた金髪の少女が大きな鎌と共に正面を向いており、その鎌が刃の長さも持ち手の長さも同じくらい長いことは、キャラクターの衣装、武器及びキャラクターのポーズまで細かく工夫された表現であって、オンラインアクションゲームにおいて一般的に見られる表現ではなく、原告画像7に特有の個性的な表現であるといえる。また、上記Bの画面構成は、キャラクターが際立つことを第一の目的としつつプレイヤーにとって必要な情報を画面の各位置に配置したものであり、上記Cの背景は、大きな鎌を持つ少女の不気味な雰囲気を演出するような表現であって、いずれも、原告画像7に特有の個性的な表現であるといえる。そうすると、被告画像6が上記@ないしCの点において原告画像7と極めて類似する以上、被告画像6に接した者が原告画像7の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像6に原告画像7と共通する部分があるとしても、この部分は、アイデアにすぎないか、既存の作品においてもみられるなど、ありふれた表現であって創作性が認められないと主張するが、この主張に理由がないことは、前記カ(原告の主張)
(ア)bのとおりである。
(イ)被告は、原告画像7と被告画像6には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張するが、前記カ(原告の主張)(イ)と同様に、被告が主張する差異は、いずれも表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎず、理由がない。
(被告の主張)
(ア)原告画像7と被告画像6は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像6には、原告画像7の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a原告画像7のキャラクターは、赤色のタイトで丈の短い衣装の上に赤いマントを羽織り、側面に赤色のダイヤ模様とくるぶし部分に赤いリボンの装飾がそれぞれ施された黒色のロングブーツを履いている。
 また、髪は金色で肩まで伸びている。さらに、頭には赤色で縁に白色で装飾が施された頭巾のような帽子を被り、右目には赤色の眼帯のようなものを着けている。
 これに対し、被告画像6のキャラクターは、青色のタイトな衣装の上に赤いマントを羽織り、赤色のストッキングと黒色のロングブーツを履いている。また、髪は金色で短い。さらに、頭には赤い兜又は頭巾のようなものを身に着け、その縁は金色の装飾が施され、肩まで覆っている。右目がピンク又は赤色、左目が青色と左右で色が異なり、首にはカチューシャのようなものを、腰には目玉をモチーフにしたようなキャラクターを、それぞれ身に着けている。
b 原告画像7のキャラクターが持つ大きな鎌状の武器は、柄の根元及び上部並びに刃の縁が黒色で、柄の中央部(持ち手)に金色の装飾が施され、かつ柄の先と刃の根元には赤いハート型の宝飾が施されている。また、上記の武器の刃は銀色である。原告画像7のキャラクターは、上記の武器を両手で持ち、正面を向いてやや内股気味に立っており、その武器はキャラクターの左側に位置している。
 これに対し、被告画像6のキャラクターが持つ武器は、柄及び刃が灰色で、刃の先端は長く、赤色である。さらに、柄の根元部分は金色の装飾が施され、柄が地面と平行になって、刃が地面に刺さっている。
 被告画像6のキャラクターは、正面を向いて鎌状の武器の上に座り、足を地面から浮かせている。
c 原告画像7の画面構成は、背景が前記原告画像2と同様の夜の荒涼とした大地である。
 これに対し、被告画像6の画面構成は、おぼろ月夜の廃墟を背景としたもので、原告画像7とは全く異なる。
 画面構成に関するその余の相違点(キャラクター選択欄、アイコン、バー、キャラクターが立つ円形等)は、前記イ(被告の主張)(ア)eと同様である。
(イ)原告画像7と被告画像6に共通する部分があるとしても、前記カ(被告の主張)(イ)のとおり、この部分はアイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
ク 原告画像8と被告画像7について
(原告の主張)
(ア)a原告画像8と被告画像7は、@赤い円形のアイコンが4つ並んでいる点、Aアイコンの中には絵が描かれている点、B原告画像8の一番左のアイコンと被告画像7の一番下のアイコンの中には、鎌を持った人影が、鎌を身体の前方に抱えて左側を向き、片足を伸ばし、もう片方の足を曲げており、その者の態勢と背景から左上に向かって飛んでいるように見える点及びC原告画像8の一番右のアイコンと被告画像7の上から2番目のアイコンの中には鎌のような絵が描かれている点において、極めて類似する。
 この点、特に、上記Bのとおり、アイコンの中に鎌を持った人影が鎌を身体の前方に抱えて左側を向き、片足を伸ばし、もう片方の足を曲げて、左上に向かって飛んでいるように見える絵が描かれているという表現は、アイコンの模様として通常考え付く表現ではなく、原告画像8に特有の極めて個性的な表現である。そうすると、被告画像7が上記@ないしCの点において原告画像8と極めて類似する以上、被告画像7から原告画像8の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるのは明らかである。
b 以上に対し、被告は、仮に被告画像7に原告画像8と共通する部分があるとしても、前記a@及びAについてはアイデアの類似にすぎず、前記aB及びCについては、ありふれた表現にすぎないか、アイデアの類似にとどまると主張する。
 しかし、前記a@及びAのように、ゲーム中のキャラクターの紹介画面において、中に絵が描かれた赤い円形のアイコンを4つ並べるということは、アイデアではなく、創作的な表現そのものというべきである。また、前記aB及びCについては、原告画像8と表現上の本質的な特徴を同じくする画像は存在せず、原告画像8には表現の選択の幅があるというべきであり、高い創作性が認められる表現といえる。
 したがって、被告の上記主張にはいずれも理由がない。
(イ)被告は、原告画像8と被告画像7には明らかな差異があり、両者には表現上の本質的な特徴に関する同一性が認められない旨を主張するが、被告が主張する差異は、いずれも表現の軽微な差異を殊更に取り上げるものにすぎない。
(被告の主張)
(ア)原告画像8と被告画像7は、以下の点で明確に相違する。したがって、被告画像7には、原告画像8の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されていない。
a 原告画像8のアイコンは、横方向に4つ並んでいて、その背景は薄い紺色で、アイコンの縁の色は金色である。
 これに対し、被告画像7のアイコンは、縦方向に4つ並んでいて、その背景は黒色で、アイコンの縁の色は灰色である。
b 原告画像8の最も左に位置するアイコンの中には、鎌状のものを持った又はこれに跨った人影が、影絵のような方法で、アイコン内全体に渡る大きさで描かれている。
 これに対し、被告画像7の最も下に位置するアイコンの中には、人影と同じくらい長く赤色の刃のような形状を有するものを持った人影のようなものが描かれている。アイコンの中のデザイン全体が金又は黄色の光を放ち、かつ人影の姿勢が原告画像8の左端のアイコンよりも前傾の角度が急になっており、左方向に向かって高速で移動しているようなデザインとなっている。さらに、人影のデザインのサイズも、原告画像8の左端のアイコンと異なり、アイコン全体を占めるほどの大きさではない。
c 原告画像8の最も右に位置するアイコンの中には鎌のようなものが描かれ、とりわけ立てた刃の部分が大部分を占め、その色は白又は銀色で強調されている。
 これに対し、被告画像7の上から2番目に位置するアイコンの中には、渦巻のようなものが黒色で描かれているが、それが鎌であるかは判然とせず、また、その色は黒色である。
d 原告画像8の左から2番目に位置するアイコン内には三日月状のものが描かれ、原告画像8の左から3番目に位置するアイコン内にはリングのようなものが描かれている。
 これに対し、被告画像7の上から1番目に位置するアイコン内には火の玉のようなものが描かれ、被告画像7の上から3番目に位置するアイコン内には台風の目のような渦巻状のものが描かれている。
(イ)原告画像8と被告画像7に共通する部分があるとしても、以下のとおり、この部分は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現であって創作性が認められない。
a 前記(原告の主張)(ア)aの@及びAについては、アイデアが類似するものにすぎず、複製権又は翻案権の侵害とはなり得ない。
b 前記(原告の主張)(ア)aのBについては、アイデアにすぎないか、仮に表現に当たるとしても、円形のアイコンの中に鎌状の武器などの様々な絵を描くという表現は、ありふれた表現であって創作性が認められない。
(2)争点2−2(被告による原告画像1に係る著作権侵害の成否)について
(原告の主張)
ア 著作権侵害
 被告は、「D」というYouTubeのアカウントを保有する第三者によって制作されてYouTube上で公表された動画(以下「本件動画」という。)のハイパーリンクを本件ウェブページに設定することで、本件ウェブページ上に被告画像1を掲載したものであるところ、この行為(以下「本件リンク設定行為」という。)は、規範的にみて、原告が著作権を有する原告画像1を複製及び公衆送信するものである。
 すなわち、被告は、インラインリンクを設定することで、本件ウェブページを閲覧するユーザーによるリンクのクリック等の操作を介することなく、リンク元である本件ウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトに掲載されている被告画像1がユーザーの端末に送信され、被告画像1がユーザーの端末上に自動表示されるようにしたものである。そして、インラインリンクの性質上、ユーザーから見て、本件ウェブページに被告画像1が貼り付けられる場合と、インラインリンクにより自動的に被告画像1が本件ウェブページに表示される場合とでは、ユーザーによる何らの操作も介することなく被告画像1を閲覧することができるという点において、異なるところはない。
 また、著作権侵害への関与の内容及び程度という観点からみると、本件リンク設定行為がなければ、被告画像1がユーザーの端末上に自動表示されることはなく、かつ、被告画像1がユーザーの端末上に自動表示されるためには、本件リンク設定行為のみで十分であるから、本件リンク設定行為は、被告画像1がユーザーの端末上に自動表示されるという結果をもたらす上で不可欠なものといえる。
 さらに、本件リンク設定行為により、本件ウェブページを閲覧したユーザーは、自らが意図しなくとも、いわば強制的に、被告画像1が自らの端末上に自動表示されることになる。したがって、被告は、その管理、支配下において、本件ウェブページを閲覧するユーザーによるリンクのクリック等の操作を介することなく、リンク元である本件ウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面である上記複製物がユーザーの端末に送信されて、上記複製物がユーザーの端末上に自動表示されるように設定するという、原告画像1の複製及び公衆送信の実現における枢要な行為をしたと認められる。
 加えて、本件ウェブページは、被告ゲームに関する宣伝及び情報発信を目的とした専用のウェブページであり、被告は、他者の著作権を侵害することを認識しながら本件リンク設定行為をすることにより、被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たものである。
 以上によれば、規範的にみて、被告が本件リンク設定行為による著作権(複製権及び公衆送信権)侵害の主体であることは明らかである。
イ 著作権侵害の幇助
 仮に被告が著作権侵害の主体であると認められなかった場合であっても、少なくとも被告が本件リンク設定行為により複製権及び公衆送信権侵害を幇助しているものと認められる。
 すなわち、前記アのとおり、本件リンク設定行為は、本件ウェブページを閲覧するユーザーによるリンクのクリック等の操作を介することなく、リンク元である本件ウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの被告画像1がユーザーの端末に送信されて、被告画像1がユーザーの端末上に自動表示されるように設定するものである。そうすると、被告は、本件リンク設定行為によって、リンク先のウェブページを閲覧した者だけでなく、リンク元の本件ウェブページを閲覧した者も被告画像1を閲覧することができるような状態を作り上げ、不特定多数の者が被告画像1にアクセスしてこれを閲覧することを容易にしたものであって、本件リンク設定行為を中止する条理上の義務を負っており、かつ本件リンク設定行為を中止して複製権及び公衆送信権侵害の事態を除去できるものといえる。
 したがって、被告が本件リンク設定行為により本件動画の投稿者による複製権及び公衆送信権侵害を幇助したとして、原告の被告に対する差止請求が認められることは明らかである。また、同様の理由により、原告の被告に対する損害賠償請求が認められることも明らかである。
(被告の主張)
ア 著作権侵害
(ア)本件ウェブページに被告画像1が掲載されていたことは認めるが、被告が原告画像1に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したことは争う。
 被告画像1は、本件動画の表紙画面(カバーページ)であって、被告が作成した画像ではない。また、被告の本件リンク設定行為により、被告画像1のデータが、リンク先であるウェブサイトのサーバーから直接閲覧者に送信されることとなるから、本件リンク設定行為には、リンク先の画像である被告画像1をリンク元すなわち本件ウェブサイトのサーバーに蓄積する行為は含まれない。したがって、本件リンク設定行為について、原告画像1に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害が成立する余地はない。
(イ)原告は、本件リンク設定行為がインラインリンクに該当することを根拠として、被告が著作権侵害の主体であると主張するところ、仮に本件リンク設定行為がインラインリンクに該当するとしても、リンクを設定する行為が著作物とされる画像のデータを複製及び公衆送信するものではないことに変わりはないから、原告画像1に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものではない。
 また、原告は、原告画像1を物理的に複製していないとしても、規範的にみれば、本件リンク設定行為を行った被告が、原告画像1に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害主体に当たると主張する。
 しかし、被告画像1の複製行為は本件リンク設定行為に先立ち第三者によって既に完了していたこと、被告は当該画像の複製を実現するシステムやサービスの提供をしていないことからして、被告を原告画像1に係る著作権侵害の主体と評価することはできないというべきである。
 さらに、原告は、本件ウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面である複製物がユーザーの端末に送信されて、上記複製物がユーザーの端末上に自動表示されるように設定するという、原告画像1の複製の実現における枢要な行為をしたと認められる旨を主張するが、リンクの設定は複製を実現するための枢要な行為ではないし、技術的に見てリンクにより複製物がユーザーの端末に送信されることもないのであるから、原告の主張は失当である。
 したがって、原告の主張にはいずれも理由がない。
イ 著作権侵害の幇助
 原告は、本件リンク設定行為により被告は著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助しているため、被告に対して差止請求及び損害賠償請求を行うことが認められるとも主張する。
 しかし、著作物の複製及び公衆送信は、被告がリンクを設定する以前に完了しており、被告がリンクを設定する行為により、著作物の複製及び公衆送信が実現され又はこれが容易になったという事情はないから、本件リンク設定行為が著作権(複製権及び公衆送信権)侵害の幇助に該当するといえる余地はない。
 また、仮に被告の本件リンク設定行為が幇助に該当するとしても、幇助をした者は、著作権法112条1項及び2項所定の「侵害する者又は侵害するおそれがある者」には該当しないから、差止請求が認められる余地はない。
 したがって、原告の主張にはいずれも理由がない。
(3)争点2−3(依拠の有無)について
(原告の主張)
 前記(1)アないしクの各(原告の主張)のとおり、原告各画像と被告各画像は、多数の点で極めて個性的な創作的表現が同一であるか又は極めて類似しており、それらが偶然一致することはおよそ考え難い。しかも、被告ゲームは平成30年1月22日に日本国内で配信が開始されたから、被告各画像は遅くとも同日までに作成されたと考えられるところ、原告ゲームは平成29年11月1日までには日本国内で公開されていたから、被告が被告各画像の作成前に原告各画像に接触する機会があったことは明らかである。
 したがって、被告が被告各画像を作成するに当たって原告各画像に依拠したことは明らかである。
(被告の主張)
ア 被告ゲームの開発チームの内部連絡(チャット)の記録及び開発データのスクリーンショットからも明らかであるように、同チームが被告画像2ないし7の各キャラクターのデザインを完成させた日は、いずれも原告ゲームの公開日である2017年(平成29年)11月1日より前である。
 したがって、被告各画像に表れているキャラクターのデザインは、いずれも原告ゲームの公開日より前に完成しているから、同チームが原告各画に接する機会はなく、その存在、内容を知らずに、独自に被告各画像を作成したものであるから、被告各画像は原告各画像に依拠して作成されたものではない。
イ 原告は、原告各画像と被告各画像が多数の点で創作的表現が同一であるか又は極めて類似しているとして、被告が原告各画像に依拠して被告各画像を作成したことは明らかであると主張する。
 しかし、前記(1)アないしクの各(被告の主張)のとおり、原告各画像と被告各画像には表現上の本質的な特徴の同一性がないから、原告の主張には理由がない。
3 争点3(差止め等の必要性)について
(原告の主張)
(1)前記2のとおり、被告は原告各画像に係る複製権を侵害したものと認められるから、被告画像1の複製を差し止める必要性が認められる上、被告画像2ないし7は被告ゲームの不可分な構成要素であるから、被告ゲーム全体の複製を差し止める必要性が認められる。
(2)被告は、日本国内における被告ゲームの配信及びサービスの提供を完全に中止したことを根拠として、被告ゲームの差止め及び削除の必要性を争う。
 しかし、被告が差止め及び削除請求権の存在を争っている上、オンラインゲームについては、日本国内における配信及びサービスの提供が停止された後に、これらが再開された例があるから、たとえ被告ゲームの配信及びサービスの提供が完全に中止されたとしても、被告ゲームの差止め及び削除の必要性が否定されるものではない。
(3)被告は、被告画像2ないし7のデータは、被告ゲームの他のデータと分離することができる上、被告ゲームのデータのごく一部を占めるにすぎないから、被告ゲーム全体に対する差止め及び削除を請求することは過剰な請求に当たるとして、差止め及び削除の必要性を争う。
 しかし、オンラインゲームは、それが複数の構成要素から構成されている場合であっても、各構成要素が不可分一体に組み合わさることにより成り立つものであるから、被告ゲームについても、被告画像2ないし7のデータと他のデータとが可分とはいえない。
 したがって、被告の上記主張には理由がない。
(被告の主張)
(1)被告は、2021年(令和3年)7月12日午前10時をもって被告ゲームのサービスを終了し、ユーザーに一定の補償をするとともに、法で義務付けられている情報を除いて、遅くとも同年8月30日までに全てのユーザーデータを削除した。また、被告は、被告ゲームの全てのユーザーに対し、同種の別のゲームへの参加を促すべく、同ゲームで使えるアイテム等の付与を行う旨のアナウンスをした。その後、被告ゲームの終了アナウンスを含め、被告ゲームのウェブサイトが閉鎖された。こうして、被告は、被告ゲームの提供を完全に中止したものである。
 そして、被告が被告ゲームの配信を中止したのは、被告において想定していたほどのユーザー数を確保できず、配信コストを維持できるだけの収入がなく、今後の収入増加も見込めなかったことが理由である。
 しかも、被告ゲームの運営等を担当していたチームは、既に解散し、別のプロジェクトに配置替えされている。
 以上のとおり、被告は被告ゲームの配信を再開する意思を有しておらず、実務的にも物理的にも被告ゲームの配信を日本において再開させることは不可能であるから、被告が日本において被告ゲームを複製する行為が行われる可能性は皆無である。
 加えて、ユーザーデータが記録された媒体も存在しない。
 したがって、被告ゲームの複製の差止め及び被告ゲームのデータの削除の必要性は認められない。
(2)本件リンク設定行為によって設定されたリンクは既に削除されているため、本件ウェブページに被告画像1が表示されることはない。
 したがって、被告画像1の複製の差止め及び削除の必要性は認められない。
(3)原告は、被告ゲームの複製の差止め及び被告ゲームの記録媒体からの削除を求めている。
 しかし、被告ゲームは、ストーリー、32種類のキャラクター、音楽、効果音、マップ、プログラム等に係る多数の著作物によって構成されているところ、原告が本件訴訟において複製権又は翻案権侵害を主張するのは、被告ゲームの中で展開されている32種類のキャラクターのうち、6種類のキャラクターが掲載されている正面方向の画面の画像(原告画像2ないし7)並びに1種類のアイコン画像(原告画像8)のみである。しかも、被告画像2ないし7は、被告ゲームの他のデータから分離することが可能であり、キャラクターのデザインや背景画面の修正、削除が必要となった場合には、当該デザインや背景画面のみを修正、削除することが可能であるから、被告ゲームの全体と被告画像2ないし7とが不可分一体の関係にあるものではない。
 このように、被告画像2ないし7は、他の被告ゲームのデータと分離することができ、被告ゲームのデータのごく一部を占めるにすぎないから、たとえ被告画像2ないし7が原告の著作権を侵害するとしても、被告画像2ないし7の複製等の差止め及び削除を超えて、被告ゲーム全体に対する差止め及び削除を請求することは過剰請求というべきであって、その必要性は認められない。
4 争点4(損害の発生及び額)について
(1)原告画像1に係る原告の著作権侵害について(著作権法114条3項)
(原告の主張)
 外部のデザイナーに原告画像1のようなキャラクターのデザインを委託した場合の対価の相場は、デザイン費のみで3ないし10万円であり、通常は、デザイン費に加え、ディレクション費、ポーズ追加費、修正費等が生じるほか、発注者からデザイナーに対し支払われる著作権譲渡料が加算されることになる。しかも、原告画像1は、複数の国で配信されているオンラインゲームに登場する人気キャラクターであって、このような人気キャラクターの複製ないし公衆送信について原告が受けるべき金銭の額は、当然、相場と比べて高額となる。
 以上によれば、原告画像1の複製ないし公衆送信について原告が受けるべき金銭の額が10万円を下らないことは明らかである。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
 原告が主張する金額は、いずれも当該著作物の作成の対価であって、著作権法114条3項所定の「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」ではないから、失当である。
(2)原告画像2ないし8に係る原告の著作権侵害について(著作権法114条2項)
(原告の主張)
 被告は、原告画像2ないし8に依拠して被告画像2ないし7を作成し、原告画像2ないし8を複製又はし翻案したものであるから、故意に原告の著作権を侵害するものである。
 被告ゲームの現在までの売上げは4000万円を下らず、被告の著作権侵害行為によって被告が受けた利益は1000万円を下らない。
 さらに、本件訴訟は専門性が高く、弁護士でなければ訴訟の遂行は不可能であり、本件の事案の内容、原告が被った損害内容等を斟酌すれば、被告による著作権侵害行為と因果関係のある弁護士費用は100万円を下らない。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」の存否)について
(1)証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲームの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められる。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することがうかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一定の負担を被り得ることは、否定し難い。
 しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定される額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。
 また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するところ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行うことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとしても、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それらの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のとおり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在するものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張する損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎となる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2)これに対し、被告は、@本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、A原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、B本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、C本件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、D本件を日本の裁判所で審理する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。
 しかし、まず、上記@についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いずれも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。
 しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。
 次に、上記Aについてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟との関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとしても、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。
 さらに、上記BないしDについてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1)のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせるものとまでは認められない。
 したがって、被告の上記@ないしDの主張はいずれも理由がない。
(3)以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると認めることはできない。
2 争点2(原告各画像に係る著作権侵害の成否)について
(1)複製又は翻案に関する判断枠組み
 著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号)をいい、複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に再製する行為をいうものと解される。
 また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴である創作的表現の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。
 そうすると、被告各画像が原告各画像を複製又は翻案したものに当たるというためには、原告各画像と被告各画像との間で表現が共通し、その表現が創作性のある表現であること、すなわち、創作的表現が共通することが必要であるものと解するのが相当である。
 一方で、原告各画像と被告各画像において、アイデアなど表現それ自体ではない部分が共通するにすぎない場合には、被告各画像が原告各画像を複製又は翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれたものであるような場合も,そのような表現に独占権を認めると,後進の創作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり,文化の発展に寄与するという著作権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないから,当該表現に創作性を肯定して保護することは許容されず、その結果、複製又は翻案したものに当たらないと解される。
(2)争点2−1(原告各画像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性)について
ア 原告画像1と被告画像1について
 原告画像1と被告画像1は、@丸い眼鏡を掛けた茶色い体のふくろうのキャラクターが、左側の羽を広げ、右足を前に出して走っているようなポーズをとっている点、A上記ふくろうのキャラクターが、右側の羽で、先端に時計が付いた杖を握っており、上記時計は小屋のようなデザインであり、屋根は青色で壁は茶色である点、B上記ふくろうのキャラクターは、黄色い花と白いボアが付いた茶色の帽子をかぶり、青色と茶色のボーダー柄のマフラーのようなものを首に巻いている点において同一であると認められる。そして、上記@ないしBについては、いずれも表現において創作性があるということができるから、原告画像1と被告画像1は、創作的表現が共通するものと認められる。
 したがって、被告画像1については、原告画像1を複製したものに当たると認めることができる。
イ 原告画像2と被告画像2について
(ア)原告画像2と被告画像2は、画面の中央に、猿をモチーフにした赤い顔のキャラクターを配置した点、同キャラクターは、向かってやや右肩下がり方向に傾きつつ、画面の上下方向に延びた、キャラクターの体長よりも長い棒を右手で握り、右足を左足よりも上にして上記の長い棒に掛けるような態勢で立っている点、上記キャラクターが、首周りに数珠を巻き、腰にベルトを巻いている点において、共通すると認められる。
 しかし、猿をモチーフにしたキャラクターを描くこと自体は、アイデアにすぎない。また、猿のキャラクターとして、赤い顔を描いたり、細長い棒を手に持った様子を描いたりすることは、他の作品(乙28)にもみられるように、ありふれた表現であって、創作性が認められない。
 さらに、原告画像2と被告画像2に描かれた数珠やベルトは、形状や色において表現に具体的な相違が見られるから、数珠やベルトを身に着けているというアイデアが共通するにとどまるものである。
(イ)これに対し、原告は、@西遊記の孫悟空をイメージした猿のキャラクターが如意棒を手にしており、如意棒にも衣装にもオレンジ色が入っている点、A如意棒は上記キャラクターの体長よりも長く、やや左に傾きながら縦にひび割れた地面に突き刺さっており、上記キャラクターは、右足を上、左足を下にして如意棒の上に立っており、右手で如意棒を握っている点、B上記キャラクターは、首周りに数珠を、腰にベルトを、腰周りにオレンジ色の布を巻いている点、C中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点において、原告画像2と被告画像2が極めて類似し、かつ、それらの類似する部分は創作的表現であると主張する。
 しかし、上記@の点において原告画像2と被告画像2が共通するとしても、それらの点は、いずれもアイデアが共通するにとどまるものであり、キャラクターの容姿、棒の形状、衣装の着色の状況等の具体的表現における共通点とはいえない。また、上記A及びBの点のうち、如意棒のような棒がひび割れた地面に突き刺さっている様子が被告画像2に描かれているとは認められず、その余の共通点については、前記(ア)のとおり、アイデア又はありふれた表現が共通するものというほかはない。さらに、上記Cの点についてみても、中央の円形の部分、獲得アイテム数表示欄、キャラクター選択欄、ステータスバー及び円形のアイコンは、それぞれ、原告画像2と被告画像2とで描き方が異なっているため、具体的な表現として共通するとは認められず、原告画像2と被告画像2の画面構成については、上記のような要素が配置されているという点が共通しているにすぎず、その具体的な位置や並んだ方向等が異なることから、上記Cの共通点が認められるとしても、画面構成に関するアイデアが共通するにすぎない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像2と被告画像2に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像2は、原告画像2を複製又は翻案したものには当たらない。
ウ 原告画像3と被告画像3について
(ア)原告画像3と被告画像3は、画面の中央に、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターが背中を向けて立っており、背中に2本のタンクを背負っている点において共通すると認められる。
 しかし、原告画像3に描かれたロングコートは、被告画像3と異なり、タックがなく、腰に黒い帯状のベルトが存在するほか、原告画像3のキャラクターと被告画像3のキャラクターでは、手の広げ方や立つ向きなどが異なるなど、具体的表現に複数の相違点がある。そうすると、画面の中央に、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターが背中を向けて立っているという上記の共通点は、いずれもアイデアが共通するにすぎないというべきである。仮に上記の点が表現に関する共通点であるとしても、裾が広がった白色のロングコートを着たキャラクターの表現はありふれたものであって創作性が認められない。また、原告画像3のタンクには赤い液体が入っており、その上下の部分が銀色の円柱状の金属様のもので覆われているのに対し、被告画像3のタンクには緑色の液体が入っており、その上下の部分が金色で先端が球状に丸まった金属様のもので覆われているなど、タンクの具体的表現には顕著な相違があるから、背中に2本のタンクを背負っているという共通点もまた、アイデアが共通するにすぎない。
(イ)これに対し、原告は、原告画像3と被告画像3は、@ウエストにベルトが付き、裾が広がった白色のロングコートを着た男性のキャラクターが、背中を向けて立っており、背中に2本のタンクを背負っていることが分かるようになっている点、A2本のタンクの上下部分は金属のようなもので覆われているが、胴体部分は透明で、中に液体が入っており、2本のタンクの間には器具が付いている点、B上記キャラクターが手に大きな器具を持っている点、C暗い廃墟のような背景を有している点において極めて類似し、かつ、それらの類似する部分は創作的表現であると主張する。
 しかし、上記@及びAの共通点がアイデア又はありふれた表現にすぎないことは、前記(ア)のとおりである。また、上記Bの共通点は極めて抽象的なものであって、創作的表現に関する共通点と認める余地はない。
 さらに、上記Cについてみると、仮に暗い廃墟のような背景が描かれているという点で原告画像3と被告画像3が共通するとしても、描かれている情景や配色等の点で、その具体的表現は全く異なり、アイデアが共通するにすぎない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像3と被告画像3に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像3は、原告画像3を複製又は翻案したものには当たらない。
エ 原告画像4と被告画像4について
(ア)原告画像4と被告画像4は、画面の中央に、上半身がほとんど裸の大柄の男のキャラクターを配置した点、同キャラクターは、右手に長方形の大きな刃を持つ武器を、左手にフック状の武器を持っている点において、共通すると認められる。
 しかし、原告画像4のキャラクターは、肌の色がピンク色で、筋肉質でたくましい上半身にエプロン状の衣装を身に着け、頭にはコック帽子を被っており、その体勢は、右足を切り株に乗せ、右手に持った武器を膝の前に置き、やや右側に寄った方向を向いているのに対し、被告画像4のキャラクターは、肌の色が灰色で、大きな手術痕を有する肥満体の上半身に丸い装飾を付した防具を身に付け、頭には何も被っておらず、その体勢は、右手の武器を振りかぶるように持ち、真正面を向いているというものであって、両者の具体的な表現には顕著な相違がみられる。
 そうすると、上記の共通点は、いずれもアイデアが共通するにとどまるというほかはない。
(イ)これに対し、原告は、原告画像4と被告画像4は、@ほぼ上半身裸で、腹が出ており、脚が短い大男のキャラクターが表現されている点、A上記キャラクターが、右手に大きな肉切り包丁を、左手に大きなフックを持っており、両手の先から肘の辺りまで防具を付けている点、B中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点、C暗い廃墟のような背景を有している点において極めて類似し、かつ、それらの類似する部分は創作的表現であると主張する。
 しかし、上記@及びAの点について共通点が認められるとしても、アイデアが共通するにとどまるというべきことは、前記(ア)のとおりである。また、上記Bについては、原告画像4と被告画像4とで描き方が異なっているため、具体的な表現として共通するとは認められず、画面構成に関するアイデアが共通するにすぎないことは、前記イ(イ)で説示したところと同様である。さらに、上記Cについてみると、そもそも、原告画像4及び被告画像4のいずれの背景についても、暗い廃墟のようなものを表現したとは認め難く、仮に暗い廃墟のような背景が描かれているという点で共通するとしても、描かれている情景や配色等の点で、その具体的表現は全く異なり、アイデアが共通するにすぎない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像4と被告画像4に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像4は、原告画像4を複製又は翻案したものには当たらない。
オ 原告画像5と被告画像5について
(ア)原告画像5と被告画像5は、画面の中央に、上半身に水色の衣装を着た女性が、片手を椅子に突き、足を組んで、正面を向いて椅子に座っている様子が描かれている点、上記椅子の背もたれは女性の上半身よりも高く、水色である点において共通すると認められる。
 しかし、原告画像5に描かれている女性は、髪が水色でオールバックのように刺々しく固められており、足全体が隠れる水色のロングドレスを身に着けているのに対し、被告画像5のキャラクターは、髪が銀色でストレートであり、上半身にはジャケットのような衣装を、下半身にはストッキングのような衣装を身に着けている点で相違する。また、原告画像5のキャラクターが座る椅子は、紫色又は淡い紺色で、五重の階段状の台座になっており、背面には右手に剣をもった騎士のようなデザインが描かれ、その後ろ及び左右から氷柱のような刺々しい装飾が多数施されているのに対し、被告画像5のキャラクターが座る椅子は、台座は灰色で台形状の形になっており、左右及び中央の3カ所から蝋燭台のような形状の装飾が施され、椅子の背面は、水色で、アーチ状の細長い柱のようなものが設置されている点において相違する。したがって、画面の中央に、上半身に水色の衣装を着た女性が、片手を椅子に突き、足を組んで、正面を向いて椅子に座っている様子が描かれている点、上記椅子の背もたれは女性の上半身よりも高く、水色である点において共通するとしても、その具体的表現には複数の相違点が存在するのであって、いずれもアイデアが共通するにすぎない。
(イ)これに対し、原告は、原告画像5と被告画像5は、@水色の衣装を着た女性のキャラクターが、椅子の上に、右足を上にして脚を組み、片手を椅子に付けて、正面を向いて座っている点、A上記キャラクターが座っている椅子は、水色で硬そうであり、氷を連想させるデザインであって、背もたれが女性の上半身よりも高い点、B中央の円形の部分の上に上記キャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点において、極めて類似すると主張する。
 しかし、上記@の点についてアイデアが共通するにすぎないことは、前記(ア)のとおりである。また、上記Aについては、いずれも触感やデザインを抽象化した点が共通であると指摘するものであって、具体的表現の共通性を主張するものとはいえない。さらに、上記Bについて具体的な表現として共通するとは認められず、画面構成に関するアイデアが共通するにすぎないことは、前記イ(イ)と同様である。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像5と被告画像5に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像5は、原告画像5を複製又は翻案したものには当たらない。
カ 原告画像6と被告画像6について
(ア)原告画像6と被告画像6は、画面の中央に、帽子を被り、短いスカートを着て、正面を向いた女性のキャラクターが配置されている点において共通すると認められるが、他方で、衣装の形状や色彩、顔つきなどの具体的な表現に顕著な相違が認められるから、上記の共通点はアイデアに関するものにすぎないというべきである。
(イ)これに対し、原告は、原告画像6と被告画像6は、@帽子を被り、短いスカートを着た少女のキャラクターが、地面に刺さった大きな鎌の上に座って正面を向いている点、A鎌は大きく、刃の長さも持ち手の長さも同じくらい長いほか、刃が上記キャラクターの左側にあり、刃の部分が途中まで地面に刺さっている点、B中央の円形の部分の上にキャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点、C暗い廃墟のような背景を有している点において、極めて類似すると主張する。
 しかし、上記@については、原告画像6を検討しても、キャラクターが大きな鎌の上に座っていることや、鎌が地面に刺さっていることが描かれているとは認められず、原告の主張は前提を欠く。また、上記Aについてみても、原告画像6のキャラクターが持つ大きな鎌は、柄及び刃が黒色で、刃の縁と柄の先端に金色の装飾が施され、かつ、刃の先はフック状になって、柄が右斜め上方向を向いているのに対し、被告画像6のキャラクターが持つ武器は、柄及び刃が灰色で、刃の先端は長く、赤色であり、柄の根元部分は金色の装飾が施され、柄が地面と並行になって地面に刺さっている点において相違しており、そもそも具体的な表現が共通しているとは認められない。さらに、上記Bについても、具体的な表現として共通するとは認められず、また、画面構成に関するアイデアが共通するにすぎないことは、前記イ(イ)で説示したところと同様である。そして、上記Cについてみると、そもそも、原告画像6及び被告画像6のいずれの背景についても、暗い廃墟のようなものを表現したとは認め難く、仮に暗い廃墟のような背景が描かれているという点で共通するとしても、描かれている情景や配色等の点で、その具体的表現は全く異なり、アイデアが共通するにすぎない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像6と被告画像6に共通する部分は、表現それ自体ではないアイデアにすぎないから、被告画像6は、原告画像6を複製又は翻案したものには当たらない。
キ 原告画像7と被告画像6について
(ア)原告画像7と被告画像6は、画面の中央に、正面を向き、赤色の頭巾のような帽子を被り、赤いマントや短いスカートを着た金髪の女性のキャラクターを配置した点において共通すると認められる。
 しかし、原告画像7のキャラクターが身に着けている帽子の縁は白く、赤いマントはほぼ体に沿う広がりのない形状であり、短いスカートは、裾が白いほかは全体として赤く、複数のひだが配された形状のものであるのに対し、被告画像6のキャラクターが身に着けている帽子の縁は黄色で刺のような部位が8か所に配置され、赤いマントは下部で左右に広がる略三角形の形状であり、短いスカートは白色で赤い部分やひだがないものである点において、具体的表現に複数の相違点が存在する。そうすると、原告画像7と被告画像6の上記共通点は、アイデアについて共通するものにすぎないというべきである。仮に表現について共通するものとみるとしても、上記のような容姿の女性のキャラクターを描くことは、他の作品(乙51)にもみられるように、ありふれた表現にすぎず、創作性が認められない。
(イ)これに対し、原告は、原告画像7と被告画像6は、@赤色の帽子を被り、赤を基調とした衣装と短いスカートを着た金髪の少女のキャラクターが、大きな鎌と共に正面を向いている点、A鎌は大きく、刃の長さも持ち手の長さも同じくらい長い点、B中央の円形の部分の上にキャラクター、右上に3種類の獲得アイテム数表示欄、右側に縦長のキャラクター選択欄(大きくキャラクターの絵が表示され、下に白色文字で名前が表示されている。)、左側に4本の横向きステータスバー及び4つのオレンジ色の円形のアイコンが配置されるとの画面構成を有している点、C暗い廃墟のような背景を有している点において極めて類似すると主張する。
 しかし、上記@及びAについてみるに、鎌の大きさや長さについて原告画像7と被告画像6との間に共通点があるとしても、それらは大きいとか長いといった抽象的な点であって、両者の鎌の具体的な描写は異なっているから、アイデアが共通するにすぎないというべきである。また、前記(ア)のとおり、その余の共通点については、アイデアが共通するか、ありふれた創作性が認められない表現が共通するにすぎない。また、上記Bのについては、具体的な表現として共通するとは認められず、画面構成に関するアイデアが共通するにすぎないことは、前記イ(イ)で説示したところと同様である。さらに、上記Cについてみると、仮に暗い廃墟のような背景が描かれているという点で共通するとしても、描かれている情景や配色等の点で、その具体的表現は全く異なり、アイデアが共通するにすぎない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像7と被告画像6に共通する部分は、アイデアなど表現それ自体ではないか、ありふれた表現であるから、被告画像6は、原告画像7を複製又は翻案したものには当たらない。
ク 原告画像8と被告画像7について
(ア)原告画像8と被告画像7は、4つの赤い円形のアイコンが並んで配置されている点、上記アイコンの内部には、全体として赤及び黒によって模様が描かれている点、原告画像8の一番左のアイコンと被告画像7の一番下のアイコンの中には、鎌のような刃物を前に抱え、左を向き、一方の足を伸ばし、他方の足を曲げた格好の人影の模様が黒く描かれている点において、共通すると認められる。
 しかし、原告画像8では、4つの赤い円形のアイコンが横一列に並んで配置されているのに対し、被告画像7では縦一列に並んで配置されているから、4つの赤い円形のアイコンが並んで配置されているという共通点は、具体的な表現において異なっており、アイデアが共通するにすぎない。同様に、アイコンの内部に全体として赤及び黒によって模様が描かれているという共通点や、鎌のような刃物を前に抱え、左を向き、一方の足を伸ばし、他方の足を曲げた格好の人影の模様が黒く描かれている共通点についても、具体的な表現に関する共通点ではないから、アイデアが共通するにすぎない。
(イ)これに対し、原告は、原告画像8と被告画像7は、@赤い円形のアイコンが4つ並んでいる点、Aアイコンの中には絵が描かれている点、B原告画像8の一番左のアイコンと被告画像7の一番下のアイコンの中には、鎌を持った人影が、鎌を身体の前方に抱え左側を向き、片足を伸ばし、もう片足を曲げており、鎌を持った者の態勢と背景から左上に向かって飛んでいるように見える点、C原告画像8の一番右のアイコンと被告画像7の上から2番目のアイコンの中には鎌のような絵が描かれている点において極めて類似すると主張する。
 しかし、上記@及びAについては、前記(ア)のとおり、アイデアが共通するにすぎない。また、上記Bの共通点についてみると、原告画像8の人影は専ら黒く描かれているのに対し、被告画像7の人影は、上半身及び鎌に当たる部分が白く縁どられていること、原告画像8の人影は頭巾のようなものを被り、体は服又は体型で太く描かれているのに対し、被告画像7の人影は頭巾のようなものを被っておらず、細い体型が描かれていること、原告画像8の背景部分は赤く渦のような形状が描かれているのに対し、被告画像7の背景部分は、人影を囲むように、人影の周囲及び足から先がやや明るくなっていて、人影が前方に向けてスピードを出して移動しているかのような印象を与えるように描かれているなど、具体的な表現には多くの相違点が存在する。したがって、上記Bの共通点もまた、上記@及びAの共通点と同様、具体的な表現が共通するものではなく、アイデアが共通するにとどまるというほかはない。さらに、上記Cの共通点が存在するとは認められない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)以上のとおり、原告画像8と被告画像7に共通する部分はアイデアなど表現それ自体ではない部分にすぎないか、表現上の本質的特徴を直接感得させるような共通点とは認められないから、被告画像7は、原告画像8を複製又は翻案したものには当たらない。
(3)争点2−2(被告による原告画像1に係る著作権侵害の成否)について
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リンク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そうすると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であって、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、@本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはないこと、A本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現における枢要な行為といえること、B本件リンク設定行為をすることにより、被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主張する。
 しかし、上記@についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをもって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性を直ちに肯定することはできないというべきである。
 また、上記Aについてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為であるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブページを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であるとも認められない。
 さらに、上記Bについてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であることを根拠付けることはできない。
 したがって、上記@ないしBの点を考慮しても、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵害を幇助したものと認められると主張する。
 しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることはできない。
 したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認めることはできない。
エ 以上のとおり、被告による原告画像1に係る著作権の侵害及びその幇助については、いずれも認めることができない。
(4)争点2に関する結論
 以上の次第で、被告が、原告画像1に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害し又はその侵害を幇助したとは認められず、原告画像2ないし8に係る原告の複製権又は翻案権を侵害したとも認められない。
第5 結論
 したがって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 矢野紀夫は差支えにより、
 裁判官 佐々木亮は転補により、いずれも署名押印することができない。
裁判長裁判官 國分隆文


別紙 被告作品目録1
「B」と題するオンラインゲームの日本語版
 以上

別紙 被告作品目録 2
 以上
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