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【事件名】プロバイダ各社への発信者情報開示請求事件C
【年月日】令和4年1月14日
 東京地裁 令和3年(ワ)第20887号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和3年12月3日)

判決
原告 X
被告 GMOペパボ株式会社
同訴訟代理人弁護士 佐藤明夫
同 石兼淳
同 冨田壮之
被告 GMOインターネット株式会社
同訴訟代理人弁護士 川﨑友紀
同 八木優大
同 松井将征


主文
1 被告GMOペパボ株式会社は、原告に対し、別紙1発信者情報目録1記載の各情報を開示せよ。
2 被告GMOインターネット株式会社は、原告に対し、別紙2発信者情報目録2記載の各情報を開示せよ。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
 本件は、原告が、インターネット上のウェブサイトに氏名不詳者が別紙3侵害情報目録1、6ないし9の各「画像」欄記載の各画像(以下、順に「本件画像1」ないし「本件画像6」、「本件画像12ないし15」といい、これらを併せて「本件各画像」という。)を掲載して原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したなどと主張して、経由プロバイダである被告らに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、別紙1発信者情報目録1及び別紙2発信者情報目録2記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1)当事者
ア 原告は、写真家であり、「夜景INFO」との名称のウェブサイト及び「夜景INFOまとめ」という名称のウェブサイト(以下、併せて「原告ウェブサイト」と総称する。)の運営者である(甲15、弁論の全趣旨)。
イ 被告らは、電気通信事業を営む株式会社である(争いのない事実)。
(2)本件各投稿について
ア 氏名不詳者らは、別紙3侵害情報目録1、6ないし8記載の各「投稿日時」頃に、被告GMOペパボ株式会社(以下「被告GMOペパボ」という。)が提供するホスティングサービスを利用して本件画像1ないし6を、被告GMOインターネット株式会社(以下「被告GMOインターネット」という。)が提供するホスティングサービスを利用して本件画像12ないし14を、それぞれ別紙3侵害情報目録の各「ページURL」欄記載のウェブサイト(以下、順に「本件ウェブサイト1」、「本件ウェブサイト6」ないし「本件ウェブサイト8」という。)に投稿した(以下、順に「本件投稿1」、「本件投稿6」ないし「本件投稿8」という。)(甲13、弁論の全趣旨)。
イ 氏名不詳者は、インターネット上の短文投稿サイトである「ツイッター」(以下「ツイッター」という。)上に、「(省略)」とのアカウント(以下「本件アカウント」という。)から、別紙3侵害情報目録9記載の「投稿日時」欄記載の日時に、同目録9の「画像」欄記載の画像(本件画像15)を同目録の「ページURL」欄記載のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト9」といい、本件ウェブサイト1、6ないし8と併せて「本件各ウェブサイト」という。)に投稿した(以下「本件投稿9」といい、本件投稿1、同6ないし8と併せて「本件各投稿」といい、各投稿の発信者を順に「本件発信者1」、「本件発信者6」ないし「本件発信者9」などといい、これらを併せて「本件各発信者」という。)(甲9の1、弁論の全趣旨)。
(3)本件発信者情報の保有について
ア 被告GMOペパボは、本件投稿1に係る本件発信者情報を、被告GMOインターネットは、本件投稿6ないし8に係る本件発信者情報をそれぞれ保有している(争いのない事実)。
イ 被告GMOインターネットは、別紙3侵害情報目録9の「直近のログイン日時」欄記載の日時に同目録9の「IPアドレス」欄記載のIPアドレス(以下「本件IPアドレス」という。)を被告GMOインターネットから割り当てられて本件アカウントにログインした者に関する本件発信者情報を保有している(争いのない事実)。
2 争点
(1)権利侵害の明白性
ア 本件各投稿が原告の著作権を侵害したといえるか否か
イ 適法な引用の成否
(2)本件ウェブサイト9について被告GMOインターネットが「開示関係役務提供者」に当たるか否か。
(3)開示を受けるべき正当な理由の有無
3 争点に対する当事者の主張
(1)争点(1)ア(本件各投稿が原告の著作権を侵害したといえるか否か)
【原告の主張】
 原告は、別紙4原告写真目録1ないし6、12ないし15の各写真(以下「本件各写真」という。)を撮影しているところ、いずれも夜間に撮影した写真であり、シャッター速度や絞り値、ISO感度などの調整で長時間露光を行い、夜景が最もきれいに見えるように構図やピントの位置を考慮して撮影しており、本件各写真は、原告の著作物であり、原告が著作権を有する。
 したがって、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害する。
【被告らの主張】
 原告の主張は争う。原告が本件各画像に係る著作権を有しているか明らかではない。
(2)争点(1)イ(適法な引用の成否)
【被告GMOペパボの主張】
 本件画像1ないし6が掲載された本件ウェブサイト1において、本件発信者1が作成した引用著作物は文章であるのに対し、被引用著作物である本件画像1ないし6は写真であり、表現形式が異なり、また、本件画像1ないし6の左下部に「出典:夜景INFO」と記載されており、本件ウェブサイト1における本件画像1ないし6の転載については明瞭区別性が認められる。
 また、本件ウェブサイト1の目的は、そのタイトル及びその内容から文章によりクリスマスのおすすめスポットを紹介することにあり、本件画像1ないし6は、本件ウェブサイト1において取り上げられているスポットを撮影した写真であり、それ自体を独立した鑑賞の対象とすることを目的とするものではなく、本件ウェブサイト1の内容を視覚的に補足説明するための参考資料にすぎない。そうすると、本件ウェブサイト1において、本件発信者1が作成した文章は主体性を保持しており、本件画像1ないし6は付随的な性質を有しているといえ、本件ウェブサイト1における本件画像1ないし6の転載には、主従関係が認められる。
 以上によれば、本件ウェブサイト1における本件画像1ないし6の転載は、明瞭区別性及び主従関係の要件を満たし、「引用」(著作権法32条1項)に当たり、原告の著作権を侵害するものとはいえない。
【被告GMOインターネットの主張】
 本件画像12ないし15が掲載された本件ウェブサイト6ないし9は、本件画像12ないし15以外にも画像又は文字の掲載がなされており、本件画像12ないし15とその他の記載が明瞭に区別して認識することができる。また、本件画像12ないし15以外の画像や文字の量も多いか、又は、紹介文として独立の価値を有しているといえ、本件画像12ないし15が他の掲載と比較して従の関係にあるといえる。また、本件ウェブサイト6ないし9の目的は、各記事のタイトルのとおり各地域の魅力などを紹介するものであり、当該地域の写真と思われる本件画像12ないし15を掲載することは正当な目的があるといえる。そして、上記画像内には、出典も記載されている。
 したがって、本件ウェブサイト6ないし9は、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内のものであるといえ、「引用」に該当し、著作権侵害に該当しない。
【原告の主張】
 本件各ウェブサイトには本件各画像が転載されているが、いずれも明瞭に区別されているとはいえない。また、本件各ウェブサイトは、上記画像を論評などせず、夜景・イルミネーションのスポットやイメージ画像として使っているだけであり、主従関係もない。そして、本件各ウェブサイトに上記画像を転載する必要性も見当たらない上、本件画像12ないし15については出典の明示も不十分である。
 以上によれば、「引用」には当たらないというべきである。
(3)争点(2)(「開示関係役務提供者」に当たるか否か)
【原告の主張】
 ツイッター社から開示されたログのIPアドレスは全て被告GMOインターネットが管理するものであり、また、本件アカウントが複数人で運用されている可能性もない。そして、本件画像15を含む記事の投稿日時とログイン日時との強い結びつきが考えられることからすれば、上記ログインの際の通信は権利侵害者の特定に資する通信といえる。
 以上によれば、被告GMOインターネットは開示関係役務提供者に該当するというべきである。
【被告GMOインターネットの主張】
 本件IPアドレスは、ログイン時のIPアドレスであり、投稿時のIPアドレスと同一か否か明らかではない上、本件ウェブサイト9に本件画像15を投稿した日時より後のログイン日時のものであり、本件投稿9を行った時点において本件IPアドレスによりログインしていたか否かは明らかではない。さらに、本件アカウントが複数人で運用されていた可能性も排除されておらず、当該ログイン時にログインをした人物が発信者ではない可能性もある。
 したがって、本件ウェブサイト9に関しては、被告GMOインターネットが開示関係役務提供者に該当するとはいえない。
(4)争点(3)(開示を受けるべき正当な理由の有無)
【原告の主張】
 原告は、本件各発信者に対して、本件各画像の無断転載を原因とする著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求をするため、被告らに対し、本件各発信者の発信者情報の開示を求めるものであり、正当な理由がある。
【被告らの主張】
 原告の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)ア(本件各投稿が原告の著作権を侵害したといえるか否か)について
 証拠(甲1、6ないし9、13の1ないし6、13の12ないし15、14の1ないし6、14の12ないし15、27ないし32)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、デジタル一眼レフカメラで本件各写真を撮影し、本件各写真をインターネット上の原告ウェブサイトに掲載していたことが認められる。そして、本件各写真は、いずれも夜間に撮影されたものであり、シャッター速度や絞り値、ISO感度などを調整して長時間露光を行い、夜景がきれいにみえるように構図やピントの位置などを工夫したものといえ、撮影者の個性・独自性が表れており、「写真の著作物」(著作権法10条1項8号)に当たると認めることができる。
 したがって、原告は、本件各写真の著作権者といえる。そして、本件各発信者は本件各画像の投稿(本件各投稿)をすることで、公衆送信用記録媒体に本件各画像の情報を蔵置して記録し、自動公衆送信し得るようにして、原告の著作物を複製し、公衆送信した。
2 争点(1)イ(適法な引用の成否)について
(1)認定事実
 証拠(特記しない限り各枝番を含む。甲1、6ないし9、13の1ないし6、13の12ないし15)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 本件ウェブサイト1には、「大阪クリスマスデート夜景・イルミネーションスポットまとめ」との表題の記事(以下「本件ウェブサイト1記事」という。)が掲載されている。本件ウェブサイト1記事では、クリスマスの時期にデートする際にお勧めする場所であるとして、夜景やイルミネーションがきれいであるとする複数の場所を写真、営業時間、コメント等によって紹介している。
 本件ウェブサイト1記事のうち、「スカイビル」との記載の下には、梅田の夜景写真として本件画像1及び梅田スカイビルの空中庭園展望台の写真として本件画像2が掲載され、その下に、営業時間、期間、料金がそれぞれ記載され、「ドイツ・クリスマスマーケット(判決注:同記事において「スカイビル」の前に紹介した場所)を楽しんだあとはやっぱりスカイビルに登りましょう!大阪の夜景といえばココ!という方も少なく無いですよね。」との記載から始まる8行のコメントが記載されている。
 本件ウェブサイト1記事のうち、「大阪府咲洲庁舎展望台PlatPlanet・WTCコスモタワー」との記載の下には、大阪府咲洲庁舎展望台からの夜景写真として本件画像3が掲載され、その下に、営業時間、料金がそれぞれ記載され、「大阪府咲洲庁舎展望台まではシースルーエレベーターで上がっていくのですが、上に行くに連れて夜景の美しさがどんどんと増し、そこでみなさん盛り上がり始めます。」との記載から始まる7行のコメントが記載されている。
 本件ウェブサイト1記事のうち、「あべのハルカス・ハルカス300」との記載の下には、あべのハルカス・ハルカス300からの夜景写真として本件画像4が掲載され、その下に、営業時間、料金等がそれぞれ記載され、「2014年3月に全面オープンしあおべのハルカス(判決注:ママ)。高さ300mの超高層ビルとなっており、現在、日本一高いビルとして有名です。」との記載から始まる6行のコメントが記載されている。
 本件ウェブサイト1記事のうち、「オリックス本町ビル展望テラス」との記載の下には、同所からの夜景写真として本件画像5が掲載され、その下に、営業時間、料金がそれぞれ記載され、「2011年に完成したオリックス本町ビルですが、28階には大阪の大パノラマが鑑賞できる展望テラスがあり、レストランも併設されているので食事を楽しむことも出来ます。」との記載から始まる5行のコメントが記載されている。
 本件ウェブサイト1記事のうち、「信貴生駒スカイライン」との記載の下には、生駒山料金所すぐの公園からの夜景写真として本件画像6が掲載され、その下に、営業時間が記載され、「生駒山料金所から車ですぐのところにあるこの公演(判決注:ママ)は大阪中心の夜景というよりは、奈良方面中心というのが特徴です。」との記載から始まる3行のコメントが記載されている。
 本件画像1ないし6は、いずれも、縦横の比率がおおよそ2対3であり、横幅がページの横幅のおおよそ3分の2程度である。また、それぞれの画像の左下外側に小さな字で「出典:夜景INFO」との記載があり、その画像内の右下にはそれぞれ「Copyright(c)NightViewPhotographer(省略)」との小さな白抜き文字が記載されている。(表示については、いずれも、甲1の1の表示により認定した。)
イ 本件ウェブサイト6には、「冬の小樽のロングランイベント「小樽ゆきの物語」大切なあの人と幻想的でロマンチックな時を過ごしちゃおう♡」との表題の記事が掲載されている。その記事には、「浮き玉ツリー」、「ハート・イルミ」との記載の下に写真と説明等が記載されるなどしている。「ハート・イルミ」との記載の下には、ハート形の電飾が写っている本件画像12が掲載されていて、その下に、「天狗山山頂で撮影スポットとして人気のハート型の電飾で飾られた「ハート・イルミ」が、冬期営業(11月21日から)に合わせて山麓へと移動しました。真っ白なゲレンデをバックに、記念撮影はいかがでしょうか」とのコメントと、期間、点灯時間、場所が記載されている。本件画像12は、縦横の比率がおおよそ2対3であり、横幅が上記コメント等の部分と同じである。本件画像12の画像内の右下には「Copyright(c)NightViewPhotographer(省略)」との小さな白抜き文字が記載されている。(表示については、甲6の1の表示により認定した。)
ウ 本件ウェブサイト7は、サーフィンなどを話題とするブログであり、同ブログの「宮崎サーフトリップ鬼の往路」との表題の記事には、まず、焼津市内の夜景が写っている写真である本件画像13が掲載され、その下に、「宮崎へ東京から車で行く方法」との記載の下に「今回は、宮崎トリップの往路について、書いていきたいと思います。」などの記載があり、さらに再び本件画像13が掲載され、「もう一度車で宮崎まで行きたいかと聞かれたら、行きたくありません。」などのコメントがある。上記記事において、本件画像13については何も言及されていない。本件画像13は、縦横の比率がおおよそ2対3であり、表題の下の本件画像13は、横幅がブログの記事部分と同じであり、その下に掲載されている本件画像13は、横幅がブログの記事部分の横幅のおおよそ2分の1程度である。本件画像13の画像内の右下には「Copyright(c)NightViewPhotographer(省略)」との小さな白抜き文字が記載されている。(表示については、甲7の1の表示により認定した。)
エ 本件ウェブサイト8は、外国人向けの旅行ツアーを紹介するなどするサイトである。本件ウェブサイト8には、有名な場所について、写真を掲載して、その写真の右側で簡単な説明をする部分があり、「TokyoSkyTree」との欄には、東京スカイツリーを中央に配置した構図の夜景写真である本件画像14が掲載され、その横に東京スカイツリーについての5行の英文の説明が記載されている。本件画像12は、縦横の比率がおおよそ2対3であり、その縦の高さは、説明文の全記載部分の高さを超える。(甲8。表示については、甲8の1の表示により認定した。)
オ 本件ウェブサイト9にあるツイートには、「★新夕陽ヶ丘(大阪)」「日本夕日百選にも選定されている、標高25mの小さな丘。特に、雰囲気が優れており、デートコースや告白スポットとしても利用できる!」との記載の下に、同所からの夜景写真として本件画像15が掲載されている。本件画像15は、縦横の比率がおおよそ2対3であり、その横幅は、本文が記載される部分の横幅と同じである。本件画像12の画像内の右下には「Copyright(c)NightViewPhotographer(省略)」との小さな白抜き文字が記載されている。(表示については、甲9の1の表示により認定した。)
(2)検討
 前記認定事実に照らせば、本件ウェブサイト1、6、8、9には、場所、光景を紹介するといえる記事等が掲載されているところ、それらの記事等において、夜景を写した写真である本件画像1ないし6、12、14、15は相当の大きさのものであり、また、それらの記事等において紹介している場所やそこから見える光景についての言語による説明はいずれも簡単といえるものである。そうすると、それらの記事等において、記事等により伝えられる主な情報は、上記の画像により伝えられているものといえる。それらの記事等において、写真である本件画像1等が、場所、光景を紹介、説明する目的で引用されているといえたとしても、それらの記事等において掲載された画像が果たしている上記のとおりの役割からすれば、それらが引用の目的との関係で正当な範囲内(著作権法32条1項)のものとして利用されたとはいえない。また、本件画像13については、本件ウェブサイト7において何らの言及もされていないほか、記事との関連性も直ちには不明であり、それが引用の目的との関係で正当な範囲内(著作権法32条1項)のものとして利用されたとはいえない。
 これらによれば、本件各ウェブサイトにおける掲載等を通じた本件各画像の利用が著作権法32条1項の引用に当たるとして適法であるということはできない。
(3)以上によれば、本件発信者は、原告の著作物を複製、公衆送信したところ、著作権法上の権利制限事由の存在など著作権侵害の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける事実も認められず、本件各投稿によって、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかといえる。
3 争点(2)(本件発信者9が開示関係役務提供者に当たるか否か)
(1)法4条1項は、「権利の侵害に係る発信者情報」とやや幅を持って規定しており、侵害情報そのものから把握される発信者情報だけでなく、侵害情報の送信に関連する発信者情報であれば、これを開示することが認められる場合があると解することができる。そして、法4条の趣旨が加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図るという点にあることに照らせば、侵害情報そのものの送信の前又は後に割り当てられたIPアドレスから把握される発信者情報であっても、当該侵害情報の発信者のものと認められるのであれば、法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解するのが相当である。
(2)本件投稿9は、本件アカウントから投稿されたものであるところ、本件投稿は、「2020年11月21日18:18」になされており、本件IPアドレスに係るログインは、「2020年11月22日8:18」になされており、本件IPアドレスは、本件投稿9が行われた際に割り当てられたIPアドレスそのものではない。しかしながら、ツイッターを利用するに当たっては、アカウントを登録し、そのアカウントを用いてパスワードを入力し、ログインした後に投稿する必要があり(甲40、弁論の全趣旨)、当該アカウントにログインする者は、そのアカウントの使用者である蓋然性が高いといえる。そして、本件投稿9の日時と上記ログイン日時は近接しており、また、本件アカウントからのログインは全て同一のIPアドレスからのものであり(甲38)、他方、本件アカウントが複数人によって共有されていたことをうかがわせる事情は見当たらない。
 以上によれば、本件IPアドレスに係る発信者情報は、本件投稿9を投稿した者のものと認めるのが相当であり、本件投稿9により原告の権利が侵害されたと認められることは前記1のとおりであるから、本件IPアドレスに係る発信者情報は、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるといえる。そして、本件IPアドレスに係る発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に当たる以上、このような情報に係る通信を媒介した被告GMOインターネットは、「開示関係役務提供者」に当たるといえる。
4 争点(3)(開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各投稿をした本件各発信者に対し、著作権(複製権及び公衆送信権)侵害等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有していることが認められるところ、原告が損害賠償請求権を行使するためには、本件各発信者を特定する本件発信者情報について開示を受ける必要があるといえ、その開示を受けるべき正当な理由があると認めることができる。
5 結論
 以上によれば、原告の本件発信者情報の開示を求める請求はいずれも理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 棚井啓
 裁判官 仲田憲史


別紙1 発信者情報目録1
 別紙3侵害情報目録1記載の侵害情報を、被告GMOペパボ株式会社が管理する特定電気通信設備(ウェブサーバ等)にアップロードした発信者に関する情報であって、次に掲げるもの。
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
4 発信者の電話番号

別紙2 発信者情報目録2
 別紙3侵害情報目録6ないし9記載の各侵害情報を、被告GMOインターネット株式会社が管理する特定電気通信設備(ウェブサーバ等)にアップロードした発信者ら、又は画像の投稿に用いられた同目録記載のアイ・ピー・アドレスを同目録記載の「直近のログイン日時」頃に使用して情報を送信した者に関する情報であって、次に掲げるもの。
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
4 発信者の電話番号

別紙3 侵害情報目録(以下省略)
別紙4 原告写真目録(以下省略)
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