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【事件名】エックスサーバーへの発信者情報開示請求事件B
【年月日】令和3年5月11日
 大阪地裁 令和2年(ワ)第10932号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結の日 令和3年3月26日)

判決
原告 株式会社P1写真事務所
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 笠木貴裕
被告 エックスサーバー株式会社
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 和田敦史


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、被告の電気通信設備を用いて別紙投稿記事目録記載の「投稿記事URL」により特定される各ウェブサイト(以下「本件各サイト」という。)に投稿された記事(以下総称して「本件各記事」という。)中に掲載された各写真画像は、別紙著作物目録記載の各画像(以下総称して「原告画像」という。)と同一のものであり、同各掲載によって原告画像に係る原告の各著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、本件各記事の投稿を行った者(以下「本件各投稿者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。
 (略称等:以下、本件各記事について、個別の記事については別紙投稿記事目録の番号欄の記載に従って順に「本件記事1」などという。また、原告画像について、個別の画像については、別紙著作物目録の各画像に付された番号に従って「原告画像1」などといい、原告画像のうち個別のいずれかの画像を指す場合は「原告各画像」という。なお、別紙投稿記事目録の番号欄に記載のない本件記事7、9、21〜23、27、30、34、37及び38に係る訴えは取下げられた。)
2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実。なお、枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。)
(1)当事者
 原告は、写真業等を主たる目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
 被告は、ウェブサイトの公開やメールアドレスの運用に必要なサーバをレンタルするサービス(以下「本件サービス」という。)を提供している法2条3号の特定電気通信役務提供者である。
(2)原告による原告画像の掲載
 原告は、原告が管理するウェブサイト(以下「原告サイト」という。)に、原告画像を掲載した(甲1の1〜1の6、1の8、1の10〜1の20、1の23〜25、1の27〜30。以下これらをまとめて「甲1」と記載する。)。
(3)本件各投稿者による原告各画像の掲載等
 本件各投稿者は、平成26年9月20日頃から令和元年11月25日頃までの間に、本件サービスを利用して、本件各サイトに、文章及び原告各画像と同一の画像等からなる本件各記事をそれぞれ投稿して掲載した(本件各投稿者が投稿した原告各画像は、別紙投稿記事目録記載の著作物目録番号欄のとおりである。)。(甲2〜5、7の2、7の3、9〜18、21〜23、25、26、28〜30、32、33、35の1、35の2、弁論の全趣旨)
 本件各サイトは、被告が管理する特定電気通信設備により提供されたものであり、被告は、法4条1項柱書の「開示関係役務提供者」に該当し、本件各発信者情報を保有している。
3 争点
(1)権利侵害の明白性(争点1)
ア 原告画像の著作物性及び著作権の帰属(争点1−ア)
イ 著作権法32条1項の「引用」について(争点1−イ)
(2)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について(争点2)
4 当事者の主張
(1)権利侵害の明白性について(争点1)
ア 原告画像の著作物性及び著作権の帰属(争点1−ア)
〔原告の主張〕
 原告画像は、いずれも、原告の代表取締役であり、写真家であるP1(以下「原告代表者」という。)が撮影を行った写真に係る画像である。原告画像は、被写体につき構図や撮影角度、被写体との距離、シャッターチャンスの捕捉、被写体と光線との関係等について、原告代表者の個性・独自性が表れており、写真の著作物に当たる。
 原告は、原告代表者から原告画像の各著作権を譲り受けた。
〔被告の主張〕
 不知又は争う。
イ 著作権法32条1項の「引用」について(争点1−イ)
〔被告の主張〕
 本件各投稿者は、本件各サイトにおいて、芸能人等を記事として取り上げるにあたり、読者の理解を助ける目的で、その話題の対象となっている芸能人等が被写体となっている原告各画像を掲載したものである。原告各画像は、本件各記事の内容に適したものとして掲載されたものであり、同記事との関連性及びバランスなどに照らしても、公正な慣行に合致するとともに、正当な範囲内での利用と評価することができる。
 また、原告画像は、写真自体に著作権保護の表示等をしておらず、広く公開されているものであることなども考慮すれば、原告画像の利用は、「引用」として正当化されるものである。
〔原告の主張〕
 被告は、本件各投稿者が芸能人等を記事として取り上げる際、読者の理解を助ける目的で、本件各サイトに原告各画像を掲載した旨主張しているが、このような被告の主張からすれば、本件各投稿者は、原告各画像自体を批評等する目的で本件各記事を掲載したものではない。
 また、被告が主張するような目的のために、原告各画像を本件各サイトに掲載して利用する必要性が高いとまではいえない。さらに、本件各記事(ただし、一部の記事を除く)においては、原告各画像について、その出所や本件各投稿者以外の者によって撮影された事実が明示されていないことも考慮すれば、本件各記事における原告各画像の利用は、引用の目的上、正当な範囲内のものであるとも、公正な慣行に合致するものとも認められない。同様に、原告各画像の撮影者が原告代表者であること等を明記している本件各記事の一部についても、上記のような利用の目的やその態様等に照らせば、「引用」と認められる余地はない。
 したがって、本件各投稿者が、本件各サイトにおいて原告各画像を掲載する行為は、原告の複製権及び公衆送信権を明らかに侵害する行為である。
(2)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について(争点2)
〔被告の主張〕
 原告画像は、いずれも、著作権保護の表示等を施すことなく、原告サイトに掲載され広く公開されている。そのため、原告各画像が掲載された本件各サイトの存在によって、原告にいかなる経済的損失が発生しているのかは不明である。
 したがって、原告に本件各発信者情報の開示を求める正当な理由があるとは認められない。
〔原告の主張〕
 原告は、原告画像を原告サイトに著作権保護の表示をしないまま掲載して公開しているものの、掲載しているのは「P1YOUREYESONLY」と題するコーナー(以下「本件コーナー」という。)においてである。「YOUREYESONLY」とは、「閲覧のみ」、「親展」または「複製厳禁」などの意味を持つ言葉であり、同タイトルからも、原告が原告画像を公開したからといって、著作権を放棄したとは評価されない。
 また、原告は、原告が著作権を有する公開された写真画像に対し、第三者から利用したい旨の申請があった場合には、審査の上、利用条件を提示し、同条件に従った利用を許諾するとともにライセンス料の支払を受けている。
 なお、原告は、本件各投稿者に原告各画像の利用を許諾したことはない。
 したがって、原告各画像が本件各サイトにおいて無断で利用されたことによって、原告には経済的損失が発生している。
 原告は、本件各投稿者に対する原告各画像に係る各著作権侵害について損害賠償請求等を行うことを予定しており、被告に対して発信者情報の開示を求めるものであるから、正当な理由がある。
第3 当裁判所の判断
1 権利侵害の明白性(争点1)
(1)原告画像の著作物性及び著作権の帰属(争点1−ア)
ア 著作物性
 原告画像は、別紙著作物目録の各画像のとおりであり、職業写真家である原告代表者が、男女の俳優、アイドル、タレント、モデル、ダンサー、アナウンサーといった、著名人に属する人達を被写体として撮影した、グラビア又はポートレートと呼ばれる写真である。
 各画像それ自体、及び各画像とともに本件コーナーに掲載された各被写体の他の画像に照らすと、原告画像は、原告代表者が、被写体である人物の魅力等を引き出すために、被写体の構図やポージング、被写体と撮影者との距離、撮影角度、光線との関係及びシャッターチャンスの捕捉等を工夫して、撮影したものであると認められる(甲1)。
 したがって、原告画像は、原告代表者の思想又は感情を創作的に表現したものであって、写真の著作物に当たると認められる(著作権法2条1項1号、10条1項8号)。
イ 著作物の帰属
 原告代表者は、原告画像を含む原告代表者が撮影した写真の著作権を原告に譲渡し、原告がこれを管理していると認められる(前提事実、甲39)。したがって、原告が原告画像の著作権者である。
(2)著作権法32条1項の「引用」について(争点1−イ)
ア 認定事実
 前記前提事実、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)原告画像の掲載態様
 本件コーナーは、原告サイトの中でも、「P1YOUREYESONLY」の題名で表示される、一連の雑誌形式のウェブページであり、各コーナーに一人ずつ、前記男女の俳優等の著名人を取り上げている。本件コーナーは、前記著名人の経歴や出演作品等、同人に対する取材記事を中央に配し、その周囲に、同人のポートレート写真数枚(その中に原告画像が含まれる。)を配するほか、取材を行って記事を執筆した者の氏名、及び写真の撮影を行った者として原告代表者の氏名とその経歴が記載されている(甲1)。
(イ)本件各記事の内容、構成、原告各画像の利用態様等
 原告が、本件各発信者情報の開示を求める本件各記事の内容、構成、原告各画像の利用態様等は以下のとおりである(ただし、以下認定した内容は本件各記事の内容等の全てではない。)。
A 本件記事1には、原告画像1(甲1の1)の被写体である女性の生年月日、血液型、身長、出身地、特技、趣味、エピソード、スリーサイズ、靴のサイズ、経歴等及びこれらに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像1が掲載されている(甲2、35の1)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像1の大きさは縦約4.5cm×横約7cmである。
 本件記事1には、原告画像1について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像1を掲載したと解し得る記載もない。
b 本件記事2及び同3には、原告画像2及び同3(甲1の2、1の3)の被写体である女性の経歴、家族関係、交際相手の有無等、及びこれらに対する記事作成者の感想や推測等を記載した文章とともに、前記各画像が掲載されている(甲3)。ウェブサイト上の同各記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像2の大きさは縦約4.4cm×横約6.5cm、原告画像3の大きさは縦約6.5cm×横約4.4cmである。
 本件記事2及び同3には、原告画像2及び同3について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像2及び同3を掲載したと解し得る記載もない。
c 本件記事4及び同5には、原告画像4及び同5(甲1の4、1の5)の被写体である女性のエピソードや同人のSNSの紹介等及びこれらに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、前記各画像が掲載されている(甲4)。原告画像4は、「そんな●●(被写体である女性の名前)のかわいい画像や動画はこちら↓↓」との記載の下に、同人の他の画像2枚とともに掲載されている。ウェブサイト上の同各記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像4の大きさは縦約3.2cm×横約4.7cm、原告画像5の大きさは縦約3.2cm×横約4.7cmである。
 本件記事4及び同5には、原告画像4及び同5について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像4及び同5を掲載したと解し得る記載もない。
d 本件記事6には、原告画像6(甲1の6)の被写体である女性の芸能活動に関する記事作成者の感想及び推測等を記載した文章とともに、原告画像6が掲載されている(甲5)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像6の大きさは、縦約7.4cm×横約11.1cmである。
 本件記事6には、原告画像6について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像6を掲載したと解し得る記載もない。
e 本件記事8は、原告画像8(甲1の8)の被写体である女性の写真等を集めた複数のウェブページの一部であり、同人の名前、生年月日、年齢、出身地、身長、体重、スリーサイズ、靴のサイズ、趣味、特技、家族関係、学歴、出演予定番組等及びこれらに対する記事作成者の感想や推測等を記載した文章の後に、「●●(被写体である女性の名前)のスリーサイズやカップサイズは?」との見出しがあり、その下に原告画像8を掲載している(甲7の2、7の3)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像8の大きさは、縦約11cm×横約16.5cmである。
 本件記事8には、原告画像8について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像8を掲載したと解し得る記載もない。
f 本件記事10には、記事の冒頭に原告画像3(甲1の3)が掲載され、そのほか同画像の被写体である女性の年齢、交際相手、家族関係等に関する記事作成者の推測等を記載した文章が掲載されている(甲9)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像3の大きさは、縦約10.5cm×横約12.8cmである。
 本件記事10には、原告画像3について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像3を掲載したと解し得る記載もない。
g 本件記事11には、記事の冒頭に原告画像10(甲1の10)が掲載され、そのほか同画像の被写体である女性の年齢、出身地、本名、身長、体重、婚姻歴等及びこれらに対する記事作成者の感想や推測等を記載した文章が掲載されている(甲10)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像10の大きさは、縦約6cm×横約7.2cmである。
 本件記事11には、原告画像10について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像10を掲載したと解し得る記載もない。
h 本件記事12には、「おすすめ記事です♪」という文言の下に、原告画像11(甲1の11)の被写体である女性が脚本を書いたドラマの原作本が発売される旨の記載と、原告画像11とが組み合わされている(甲11)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像11の大きさは、縦横約1.6cmである。
 本件記事12には、原告画像11について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像11を掲載したと解し得る記載もない。
i 本件記事13及び同14には、原告画像12及び同13(甲1の12、1の13)の被写体である女性の名前、生年月日、出身、身長、職業、家族関係、経歴等とともに前記各画像が掲載されている(甲12)。ウェブサイト上の同各記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像12の大きさは縦約4.6cm×横約6.9cm、同13の大きさは縦約4.1cm×横約6.9cmである。
 本件記事13及び同14には、原告画像12及び同13について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像12及び同13を掲載したと解し得る記載もない。
j 本件記事15には、原告画像14(甲1の14)の被写体である男性のエピソード等及びこれらに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像14が他の画像とともに掲載されている(甲13)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像14の大きさは、縦約4.3cm×横約6.6cmである。
 本件記事15には、原告画像14について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像14を掲載したと解し得る記載もない。
k 本件記事16には、原告画像15(甲1の15)の被写体である男性の経歴、エピソード、出演予定作品、家族歴等とこれらに対する記事作成者の感想や推測等を記載した文章とともに、原告画像15が他の画像とともに掲載されている(甲14)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像15の大きさは、縦約3cm×横約4.6cmである。
 本件記事16には、原告画像15について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像15を掲載したと解し得る記載もない。
l 本件記事17には、原告画像16(甲1の16)の被写体である女性の経歴やエピソード等を記載した文章とともに原告画像16が掲載されている(甲15)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像16の大きさは、縦約4.7cm×横約7cmである。
 本件記事17には、原告画像16について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像16を掲載したと解し得る記載もない。
m 本件記事18には、原告画像17(甲1の17)の被写体である女性の経歴やこれに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像17が他の画像とともに掲載されている(甲16)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像17の大きさは、縦約3cm×横約4.5cmである。
 本件記事18には、原告画像17について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像17を掲載したと解し得る記載もない。
n 本件記事19には、原告画像18(甲1の18)の被写体である男性2名のうち1名の経歴、容姿等及びこれらに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像18が掲載されている(甲17)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像18の大きさは、縦約11.7cm×横約17.1cmである。
 本件記事19には、原告画像18について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像18を掲載したと解し得る記載もない。
 なお、本件記事19中の原告画像18の下部には、出典元のURLと思われる記載があるが、原告サイトのURLではない。
o 本件記事20には、原告画像19(甲1の19)の被写体である男性の職業や、同人に関するウェブサイト上の記事に対する記事作成者の感想及び推測等を記載した文章とともに、原告画像19が掲載されている(甲18)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像19の大きさは、縦約10.5cm×横約16cmである。
 本件記事20には、原告画像19について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像19を掲載したと解し得る記載もない。
 なお、本件記事20中の原告画像19の下部には、出典元のURLと思われる記載があるが、原告サイトのURLではない。
p 本件記事24には、原告画像23(甲1の23)の被写体である女性について離婚報道があったとして、その理由、家族関係、交際関係等について記事作成者の推測等を記載した文章とともに、原告画像23が掲載されている(甲21)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像23の大きさは、縦約6.6cm×横約11.3cmである。
 本件記事24には、原告画像23について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像23を掲載したと解し得る記載もない。
q 本件記事25には、原告画像24(甲1の24)の被写体である女性について、生年月日、身長、出生地、経歴等及びこれらに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像24が掲載されている(甲22)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像24の大きさは、縦約5.4cm×横約4.5cmである。
 本件記事25には、原告画像24について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像24を掲載したと解し得る記載もない。
 なお、本件記事25中の原告画像24の下部には、出典元のURLと思われる記載があるが、原告サイトのURLではない。もっとも、同出典元と思われるウェブサイトにおいて、原告画像24の下部に原告代表者が撮影した旨の記載が表示されているため、本件記事25においても、同表示がそのまま掲載されている。
r 本件記事26には、原告画像25(甲1の25)の被写体である女性の経歴や記事作成者の同被写体の容姿に対する感想等を記載した文章とともに、原告画像25が掲載されている(甲23)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像25の大きさは、縦約4.6cm×横約6.9cmである。
 本件記事26には、原告画像25について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像25を掲載したと解し得る記載もない。
s 本件記事28には、原告画像27(甲1の27)の被写体である女性の出演作、エピソード、これらに対する記事作成者の推測及び感想等を記載した文章とともに、原告画像27が掲載されている(甲25、35の2)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像27の大きさは、縦約5.4cm×横約7cmである。
 本件記事28には、原告画像27について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像27を掲載したと解し得る記載もない。
t 本件記事29には、原告画像28(甲1の28)の被写体である女性の経歴、エピソード、交際相手の有無等及びこれに対する記事作成者の推測及び感想等を記載した文章とともに原告画像28が掲載されている(甲26)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像28の大きさは、縦約2.8cm×横約4.2cmである。
 本件記事29には、原告画像28について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像28を掲載したと解し得る記載もない。
u 本件記事31には、原告画像29(甲1の29)の被写体である女性のエピソードやこれに対する記事作成者の感想等とともに、同女性の写真画像を紹介するとして、原告画像29が掲載されている(甲28)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像29の大きさは、縦約7.7cm×横約7cmである。
 本件記事31には、原告画像29について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像29を掲載したと解し得る記載もない。
v 本件記事32には、記事の冒頭に原告画像1(甲1の1)が掲載され、同画像の被写体である女性がCMや映画でかわいいと話題であるなどとした文章が掲載されている(甲29)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像1の大きさは、縦約7.8cm×横約6.9cmである。
 本件記事32には、原告画像1について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像1を掲載したと解し得る記載もない。
w 本件記事33には、原告画像30(甲1の30)の被写体である女性の生年月日、年齢、出身地、職業、趣味や身体のサイズ等とこれに対する記事作成者の推測等を記載した文章とともに、原告画像30が掲載されている(甲30)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像30の大きさは、縦約4.5cm×横約6.9cmである。
 本件記事33には、原告画像30について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像30を掲載したと解し得る記載もない。
x 本件記事35には、原告画像20(甲1の20)の被写体である女性の経歴、出演作、婚姻歴等及びこれに対する記事作成者の感想等を記載した文章とともに、原告画像20が掲載されている(甲32)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像20の大きさは、縦約4.7cm×横約7.1cmである。
 本件記事35には、原告画像20について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像20を掲載したと解し得る記載もない。
y 本件記事36には、原告画像18(甲1の18)の被写体である男性2名のうち1名の出身地、身長、エピソード、出演歴等とこれに対する記事作成者の感想及び推測等を記載した文章とともに、原告画像18が他の画像とともに掲載されている(甲33)。ウェブサイト上の同記事をA4用紙に印刷した場合、掲載された原告画像18の大きさは、縦約3.5cm×横約5.2cmである。
 本件記事36には、原告画像18について説明したり、その写真としての良し悪しを論評するような記載はなく、本件コーナーの記事部分に言及して、それとの関係で原告画像18を掲載したと解し得る記載もない。
イ 検討
(ア)著作権法32条1項の引用は、公表された他人の著作物を自己の作品の中に採録する行為であるが、自己の作品と他人の著作物との間に、報道、批評、研究その他の目的のためにこれを利用するとの関係が必要であり、このような意味での引用にあたる場合に、それが公正な慣行に合致するか、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるかを次に検討することになる。
(イ)前提事実、上記認定事実ア(イ)及び弁論の全趣旨によれば、本件各記事は、本件各投稿者が各々に投稿したものであって、体裁も内容もそれぞれ異なるものであるが、主として掲載されているのは、原告各画像の被写体である俳優等のプロフィール、経歴、関係作品及びいわゆるゴシップといわれる話題等を含む同人らに関するエピソード等並びにそれらに対する本件各記事の作成者の推測や感想等を記載した文章と、その文章の冒頭や文章中において掲載された原告各画像を含む画像から構成される記事である。
 上記認定事実ア(イ)によれば、本件各記事において、原告各画像は、相当程度の大きさで、画像(写真)の全部又は主要部分が掲載されており、その結果、各被写体の写真として鑑賞することができる状態が維持されたまま掲載されているといえる。他方、上記認定事実ア(イ)で検討したとおり、本件各記事の中に、原告各画像を参照して何かを説明したり、原告各画像について論評したり、本件コーナーの記事内容を論評するために、原告各画像に言及するといった記載は一切存在しない。
 また、本件各記事は、本件記事19、同20及び同25を除き、原告各画像の出典や、本件各投稿者以外の者によって撮影されたものである事実が明示されていたとは認められないし、本件記事19及び20についても、原告各画像の出典元の記載としては不正確なものであり、本件記事25は、第三者が作成したものを転載したため偶然原告代表者が撮影者であることが掲載されたものに過ぎない。
 本件各記事と原告各画像との関係について検討するに、上記認定のとおり、本件各記事において、原告各画像を参照したり、これに言及したりするということがなされていないことから、本件各記事との関係で、原告各画像を利用する何らかの目的があったと認めることはできないし、俳優等の著名人の写真を掲載するにあたり、パブリックドメインに属する写真や本件各投稿者において許諾を取得し得る写真ではなく、原告各画像を掲載しなければならなかったとする事情のようなものも認められない。結局のところ、本件各投稿者は、本件各サイトを閲覧する者を増やす目的で、原告各画像と本件各記事とを共に展示しているにすぎず、何らかの目的で本件各記事の中に原告各画像を採録し、利用するといった関係は存在しないから、本件各記事における原告各画像の利用は、そもそも引用にはあらたないというべきであり、公正な慣行に合致するか否か、その目的上正当な範囲内で行われたか否かを論じる必要はないことになる。
(ウ)以上を総合すると、本件各記事における原告各画像の利用は、引用の法理(著作権法32条1項)により適法とされる場合には当たらない。
ウ 被告の主張について
 被告は、本件各投稿者が、読者の理解を助ける目的で、かつ本件各記事の内容に適したものとして原告各画像を利用したものであり、同記事との関連性及びバランスなどに照らしても、公正な慣行に合致し、正当な範囲内での利用と評価することができ、また、原告各画像に著作権保護の表示等が施されておらず、広く公開されていることも原告各画像の利用が「引用」に該当することを基礎づける事情に当たる旨を主張している。
 しかし、前記検討したとおり、本件各記事における原告各画像の掲載を、適法な引用ということはできず、単に複製したに過ぎないというべきであるし、原告各画像に著作権表示がなく、広く公開されているからといって、これを複製することが引用として許容されるものでもない。
(3)小括
 以上によれば、本件各記事における原告各画像の利用は、適法な引用に該当せず、本件各投稿により、原告の原告画像に対する著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると認められる。
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について(争点2)
(1)証拠(甲39、43)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各投稿者に対して、原告各画像の著作権侵害について不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有しており、その請求のためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要がある。
(2)被告の主張について
 被告は、原告画像が原告サイトにおいて著作権保護表示等をすることなく公開されていたことを根拠に、原告に経済的損失が発生したか不明であるため、原告には本件各発信者情報の開示を受ける正当な理由があるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、前記1(2)ア(ア)によれば、原告画像は、原告サイトにおいて、写真家である原告代表者の撮影によるものであることを明示した上で、積極的に一つの作品として公開されているものであって、原告画像に著作権の表示がないことや、原告画像が原告サイトにおいて広く公開されていることをもって、第三者に対し、原告画像の自由な利用を広く許容する趣旨であると解し得るものでないことは明らかである。
 また、証拠(甲40〜43)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、原告サイト等において公開した原告代表者撮影に係る写真画像について、第三者が利用を希望する場合、利用条件を付した上でライセンス料の支払を受け、その利用を許諾していることが認められる。
 以上によれば、原告に何らかの経済的損失は発生しているものと認められ、被告の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
 したがって、原告には、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
3 結論
 以上のとおり、本件各投稿により原告の権利が侵害されたことは明らかであり、かつ、原告には本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるから、被告は、開示関係役務提供者として、本件各発信者情報を開示すべき義務を負う。
 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官 谷有恒
 裁判官 杉浦一輝
 裁判官 布目真利子


[別紙省略]
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