判例全文 line
line
【事件名】放置系RPG“放置少女~百花繚乱の萌姫たち~”事件
【年月日】令和3年2月18日
 東京地裁 平成30年(ワ)第28994号 損害賠償等請求事件
 (口頭弁論終結日 令和2年11月12日)

判決
原告 FightSong株式会社
同訴訟代理人弁護士 兼松勇樹
同 佐々木 奏
同 上村哲史
被告 iGames株式会社
同訴訟代理人弁護士 岡邦 俊
同 神戸靖一郎
同 前原一輝


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙被告ゲーム目録記載のゲームを複製し、公衆送信してはならない。
2 被告は、別紙被告ゲーム目録記載のゲームを記録したコンピューター及びサーバー内の記録媒体から、当該記録を削除せよ。
3 被告は、原告に対し、5760万円及びうち480万円に対する平成30年10月2日から、うち5280万円に対する令和2年2月5日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、関連会社2社と共に、別紙原告ゲーム目録記載のゲーム(以下「原告ゲーム」という。)に係る著作権(原告ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せ並びに原告ゲームのプログラムに係る複製権・翻案権・公衆送信権。以下「本件著作権」という。)を共有しているところ、被告が別紙被告ゲーム目録記載のゲーム(以下「被告ゲーム」という。)を制作・配信する行為は、本件著作権を侵害しており、上記関連会社2社から、同社らの被告に対する本件著作権侵害に基づく損害賠償請求権(以下、単に「本件債権」という。)の譲渡を受けたと主張して、被告に対し、本件著作権に基づき、被告ゲームの複製及び公衆送信の差止め並びにこれを記録したコンピューター及びサーバー内の記録媒体からの同記録の削除を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害金5760万円(①著作権法114条2項に基づく損害4800万円、②弁護士費用960万円)及びうち480万円に対する平成30年10月2日(訴状送達の日の翌日)から、うち5280万円に対する令和2年2月5日(訴えの変更申立書送達の日の翌日)から、各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 なお、原告は、本件著作権侵害に基づく被告ゲームの複製及び公衆送信の差止請求並びにこれを記録したコンピューター及びサーバー内の記録媒体からの同記録の削除請求(前記第1の1、2)に係る訴えを取り下げる旨を述べたが、これに対し被告は同意しなかったため、上記訴えの一部取下げの効力は生じていない。
1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがない。枝番号の記載を省略した証拠は、枝番号を含む。以下同様。)
(1)当事者
ア 原告は、ウェブコンテンツ等を利用した各種サービス等の企画、制作、配信、運営及び管理等を目的とする株式会社である。
 なお、原告は、平成29年3月24日当時の商号は「GleeGames株式会社」であったが、同年12月25日に「gl-games株式会社」に商号変更し、平成30年4月13日に現商号である「FightSong株式会社」に商号変更した。(甲1)
イ 被告は、スマートフォンアプリの企画、設計、開発、運用業務等を目的とする株式会社である。
(2)原告ゲーム
 原告は、平成29年3月24日以降、原告ゲーム(放置少女~百花繚乱の萌姫たち~)を、AppStore及びGooglePlay等を通じて配信している(甲3)。
 原告ゲームは、中国の三国志の時代の世界観をベースにし、これに登場する武将をモチーフとした女性キャラクターを戦闘等を通じて育成していくという内容の、いわゆる放置系RPGのジャンルに属するゲームである。
 放置系RPGとは、プレイヤーが、実際にプレイすることなくアプリを閉じていても、ゲームが自動的に進行し、経験値を獲得してキャラクターを育成することができる機能(フルオート機能)を有し、ゲームを再開した際に、プレイヤーが何らかの利得を得ることができ、あるいは放置することで楽しめるジャンルのロールプレイングゲームを意味する。
(3)被告ゲーム
 被告は、平成30年7月9日以降、被告ゲーム(戦姫コレクション~戦国乱舞の乙女たち~)を、AppStore及びGooglePlayを通じて配信していたが、令和元年7月21日、被告ゲームの配信を一時停止した(甲19~21)。
 被告ゲームは、日本の戦国時代の世界観をベースにし、これに登場する武将をモチーフとした女性キャラクターを戦闘等を通じて育成して天下統一を目指すという内容の、いわゆる放置系RPGのジャンルに属するゲームである。
2 争点
(1)原告が本件著作権の共有持分権を有するか(争点1)
(2)被告ゲームの制作・配信行為が本件著作権を侵害するか(争点2)
(3)原告が本件債権の譲渡を受けたか(争点3)
(4)本件著作権の共有持分権及び本件債権の譲渡が信託法10条違反により無効になるか(争点4)
(5)原告の損害の有無及び額(争点5)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(原告が本件著作権の共有持分権を有するか)について
ア 原告の主張
 原告ゲームは、中国法人である北京COM4LOVESの甲を含む従業員ら(以下「甲ら」という。)が制作したものであるところ、本件著作権が同社に帰属するか否かは、法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国における著作権法の職務著作に関する規定によることとされている。そして、中国国内における使用者と労働者の労働関係の形成、労働契約の締結、履行、変更、解除又は終了には、中華人民共和国労働契約法が適用されるから(同法2条、甲34)、北京COM4LOVESに雇用されている甲らの雇用契約の準拠法は中華人民共和国法であり、職務著作の規定についても、中華人民共和国著作権法によることとなる。
 同法16条1項は、「公民が法人或いはその他の組織にかかる業務上の任務を遂行するために創作した著作物は職務著作であり」と、同条2項柱書は、「次に掲げる形態のいずれかの職務著作物については、…著作権にかかるその他の権利は、法人或いはその他の組織がこれを享有する。」と、同項1号は、「主として法人或いはその他の組織が物質上の技術的条件を利用して創作し、かつ法人或いはその他の組織が責任を負う…コンピューターソフトウェア等の職務著作物」と、同条2号は、「法人又はその他の組織が著作権を享有することを、法律・行政法規が規定し、又は契約で定められた職務著作物」と、それぞれ規定している(甲35)。
 そして、原告ゲームは、北京COM4LOVESの業務の一環として、その設備を利用して、従業員である甲らが開発し、同社が責任を負っているゲームないしコンピューターソフトウェアであり(甲18、24、32)、同社と甲らとの契約では、雇用期間に作成された著作物の著作権は、同社に帰属するとされている(甲36・3条)。
 したがって、本件著作権は、北京COM4LOVESに帰属した。北京COM4LOVESは、香港法人である香港COM4LOVESに対して本件著作権の共有持分権を譲渡し(甲29)、さらに、同社は、原告に対して本件著作権の共有持分権の一部を譲渡した(甲5、33、37)。
 著作権の移転について適用されるべき準拠法については、移転の原因関係である契約等の債権行為と、目的である著作権という物権類似の支配関係の変動とを区別し、それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきものとされている。
 まず、著作権の共有持分権の移転の原因関係である譲渡契約について適用されるべき準拠法は、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)7条により当事者の選択によることになるが、当事者間での準拠法の選択がない場合には、同法8条1項により「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」によるとされ、同条2項により特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法が「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」と推定されることになる。本件では、当事者間での準拠法の選択がないことから、同条1項及び2項により、北京COM4LOVESから香港COM4LOVESへの著作権の共有持分権の譲渡に係る契約の準拠法は、特徴的な給付たる著作権の共有持分権の譲渡を行う北京COM4LOVESの常居所地法である中華人民共和国法となる。同様に、香港COM4LOVESから原告への著作権の共有持分権の譲渡に係る契約の準拠法は、特徴的な給付たる著作権の共有持分権の譲渡を行う香港COM4LOVESの常居所地法である香港法となる。そして、中華人民共和国法、香港法のいずれに関しても、本件の覚書(甲5、29)のような書面による著作権の共有持分権の譲渡が無効になることはなく、上記各譲渡は、いずれも債権行為としては有効である。
 次に、著作権の共有持分権という物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法に関しては、一般に、物権の内容、効力、得喪の要件等は、目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされ、通則法13条は、その趣旨に基づく内容のものであるところ、著作権は、その権利の内容及び効力が、これを保護する国(保護国)の法令によって定められ、また、著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから、物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様に、著作権という物権類似の支配関係の変動については、保護国の法令が準拠法となるとされている。そして上記各譲渡は、日本国内における原告ゲームの知的財産管理(ライセンスや著作権侵害行為の除去その他の権利行使)等の便宜のためにされたものであるところ、少なくとも、本件では日本における著作権が問題となっているのであるから、保護国である日本の法令が準拠法となる。日本法上、著作権の共有持分権の移転の効力は、その原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとされているのであるから、上記各譲渡により、本件著作権の共有持分権は、著作権法27条及び28条の権利も含めて、移転しているといえる。
 したがって、原告は、本件著作権(翻案権を含む。)の共有持分権を有している。
イ 被告の主張
 本件著作権が北京COM4LOVESに帰属していること、著作権の移転について適用されるべき準拠法については、移転の原因関係である契約等の債権行為と、目的である著作権という物権類似の支配関係の変動とを区別し、それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきものとする裁判例が存在すること、著作権という物権類似の支配関係の変動については、保護国の法令が準拠法となるため、日本の法令が準拠法となることは認めるが、香港COM4LOVES及び原告が本件著作権の共有持分権を取得したことは否認する。
 著作権法61条2項は、「著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」と定める。この条文は、同法27条及び28条の権利の変動に関する規定であるから、「著作権という物権類似の支配関係の変動」についての規定であり、北京COM4LOVESから香港COM4LOVES、香港COM4LOVESから原告に本件著作権の共有持分権が譲渡される場合においても、同法27条又は28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定される。しかし、原告が提出した覚書(甲5、29)をみても、同法27条又は28条に規定する権利の特掲はない。
 したがって、原告は、本件著作権の共有持分権、少なくともそのうち翻案権を有しない。
(2)争点2(被告ゲームの制作・配信行為が本件著作権を侵害するか)について
ア 原告の主張
 次のとおり、被告ゲームは、原告ゲーム全体(後記プログラムを含む。)をデッドコピーした上で、アイコンやキャラクターを変更して制作したものであり、原告ゲームを複製又は翻案したものである。
 そして、被告は、平成30年7月9日から令和元年7月21日頃まで1年以上にわたって、被告ゲームが本件著作権を侵害することを知り、又は過失によりこれを知らずに、被告ゲームを配信した。
 したがって、被告ゲームの制作・配信行為は、本件著作権(複製権・翻案権・公衆送信権)を侵害する。
(ア)ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せ
a 基本的構成
 原告ゲームと被告ゲームは、いずれも歴史をテーマにし、歴史上の武将を美少女化し、フルオート機能を備えた放置系RPGである。
 また、原告ゲームと被告ゲームは、いずれもサーバー内のプレイヤー同士でグループを作り、ボス等に挑戦することができる「同盟」機能、キャラクターのステータスや装備を好みに合わせて強化育成できる「強化育成」機能、サーバー内のプレイヤー間や同盟を結んだプレイヤー間で情報交換をすることができる「チャット」機能を備えている。(甲6、7、17)
 これらの原告ゲームと被告ゲームの基本的構成に関する共通点は、いずれも具体的な表現部分である。
b 具体的構成
(a)キャラクターの名称、構成、機能
 原告ゲームと被告ゲームのキャラクターは、いずれも「主将」と「副将」から構成される(甲6の9・17、7の9・17)。
 「主将」の職業は、いずれも、初めてゲームを開始する際に、ユーザーが、①「武将」(被告ゲームでは「勇武」)、②「謀士」(被告ゲームでは「謀略」)、③「弓将」(被告ゲームでは「神速」)の3つから選択し、最大6文字のニックネームを付ける。そして、この3つの職業は、①「武将」(被告ゲームでは「勇武」)は「筋力」をメインの能力とし、②「謀士」(被告ゲームでは「謀略」)は「知力」をメインの能力とし、③「弓将」(被告ゲームでは「神速」)は「敏捷」をメインの能力としている(甲6の6・7、7の6・7)。
 「副将」は、いずれも、歴史上の人物が美少女化して登場し、一定数の「(副将名の)絆」(被告ゲームでは「(副将名の)欠片」)を獲得すると、当該副将が使用できるようになる(甲6の63、7の63)。また、レベルが上がるにつれて副将の数を増やすことができ、副将を「出陣」(主将と共に戦場で戦うこと)させたり、「応援」(出陣した副将が死亡した場合に、代わりに出陣すること)させたりすることができる。
 また、原告ゲームと被告ゲームにおいては、各キャラクターは、画面上で華麗にゆらゆらと動いている。そして、キャラクターをタッチすると、キャラクターのボイスを聴くことができ、タッチする部分によってボイスが変わる構成となっている(甲6の9、7の9)。
これらの原告ゲームと被告ゲームのキャラクターの名称、構成、機能に関する共通点はいずれも具体的な表現部分である。
(b)各画面の名称、構成、機能
 原告ゲームと被告ゲームの各画面の名称、構成、機能には、別紙「ゲーム画面対比表」の「原告の主張」欄記載のとおりの共通点がある(甲6、7、16、17)。
 これらの原告ゲームと被告ゲームの各画面の名称、構成、機能に関する共通点は、いずれも具体的な表現部分である。
c 利用規約原告ゲームの利用規約は、原告ゲームの内容に則した形で幅広い年齢層のユーザーが理解しやすいように表現を工夫するなどしたものであり、その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているから、著作物性が認められる。
 そして、原告ゲームと被告ゲームの利用規約は、別紙「利用規約対比表」記載のとおり、会社名を除き、全く同一の文言である(甲8、9)。
 これらの原告ゲームと被告ゲームの利用規約に関する共通点は、いずれも具体的な表現部分である。
d ゲーム全体
 一般に、ゲームの構成、機能、画面配置等の組合せには、無限の選択肢が存在するところ、その無限の選択肢の中から、どのような組合せを選択して表現するかについては、作成者の個性が発揮されるため、当該組合せによる具体的な表現には創作性がある。
 そして、前記のとおり、被告ゲームは、原告ゲームと80以上の画面の構成、機能、画面配置等が全て共通している上、原告ゲーム独自の機能等の名称やエラーメッセージが用いられたり、原告ゲームと同一のバグが存在したり(甲10、11、15)、被告ゲームのソースコードに原告ゲームの開発担当者の名前が残っていたりしており(甲12、18)、原告ゲームをほぼデッドコピーして制作されたものであることは明らかである。
 これらの原告ゲームと被告ゲームの構成、機能、画面配置等の組合せに関する共通点は、いずれも具体的な表現部分である。
e 小括
 したがって、被告ゲームは、原告ゲームの基本的構成、具体的構成(キャラクターの名称、構成、機能及び各画面の名称、構成、機能)並びに利用規約をそれぞれ複製又は翻案するものであり、少なくとも、これらの組合せを複製又は翻案したものであって、原告ゲームと被告ゲームの個別の画面を逐一比較するまでもなく、被告ゲームからは、原告ゲームの本質的特徴を感得することができるから、被告ゲームは、原告ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せに係る著作権を侵害している。
(イ)ゲームのプログラム
 プログラムのソースコードにおいて、変数の名称に用いる言葉や、それらの変数の定義の内容には、作成者たるプログラマーの個性が表れる。また、同じ内容のソースコードであっても、その記載の方法には選択の幅があり、ソースコードの順序を入れ替えたとしても、同一の機能を果たすものであるから、これらについてもプログラマーが自由に決定できるものであって、プログラマーの個性が表れる。このように、個々のソースコードの書き方、各ソースコードの順序、変数の名称及びこれらの組合せについては、無限の選択肢が存在する。
 そして、原告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムのソースコード(以下「原告ソースコード」という。)の内容は、別紙「ソースコード対比表」の「原告ソースコード」欄記載のとおりであるところ、これは作成者が無限の選択肢の中から選択した記述方法であり、その内容は作成者の思想又は感情を創作的に表現したものといえ、プログラム著作物に当たる。これに対し、被告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムのソースコード(以下「被告ソースコード」という。)の内容は、同表の「被告ソースコード」欄記載のとおりである(原告ソースコード及び被告ソースコードの実行内容等は、同表の「原告の主張」欄記載のとおりである。)ところ、原告ソースコードと大部分が一致しており、これを被告が独自に作成したとは考えられない。それゆえ、被告ソースコードは、原告ソースコードを全面的にコピーした上で、ごく一部を改変して作成されたものであることは明らかである。(甲12、24、25、28)
 したがって、被告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムは、原告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムを複製又は翻案して作成されたものであり、原告ソースコードに係るプログラム著作権を侵害している。
イ 被告の主張
 被告は、原告ゲームをデッドコピーし、これを修正するなどして被告ゲームを制作したことはない。すなわち、原告ゲームは、「天天掛機」というゲームのシステム等を複製又は翻案して制作されたゲームであり、被告ゲームは、「天天掛機」の著作権者から許諾を得てこれを複製又は翻案して制作したゲームである(乙1~4、7、8)。
 そして、次のとおり、原告が主張する原告ゲームと被告ゲームの共通点は、単なるアイデアやありふれた表現等である一方で、ゲームの舞台や登場するキャラクターのデザインについて相違点があり、被告ゲームに接する者が、原告ゲームの本質的な特徴を感得することはできない。
 したがって、被告について、本件著作権侵害は成立しない。
(ア)ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せ
a 基本的構成
 原告は、原告ゲームと被告ゲームの共通点につき、①歴史上の武将13をモチーフとした美少女育成ゲームである点、②フルオート機能を備えている点を挙げるが、①モチーフやゲームジャンルは単なるアイデアにすぎず、表現上の創作性がない部分であるし、②フルオート機能もありふれた「機能」であり、著作権法によって保護される表現ではない。
 また、原告が主張する原告ゲームと被告ゲームの「同盟」機能、「強化育成」機能及び「チャット」機能も、ありふれた機能となっていたものである。
b 具体的構成
(a)キャラクターの名称、構成、機能
 原告が主張する共通点は、いずれもアイデアであるか、ありふれた表現にすぎない。
(b)各画面の名称、構成、機能
 原告は、原告ゲームと被告ゲームの各画面の名称、構成、機能が共通していると主張するが、別紙「ゲーム画面対比表」の「被告の主張」欄記載のとおり、これらの共通点は、①アイデアであるか、②ありふれた表現であるか、③配置に創作性がないか、④既存の著作物の模倣(天天掛機の翻案)であるか、⑤具体的な表現が異なっているものであるにすぎない。
c 利用規約
 原告は、原告ゲームと被告ゲームの利用規約が同一である点を主張するが、ゲームの利用規約は、法令や慣行により、かなり似通ったものにならざるを得ず、創作性がないことから、著作物として保護されることはない。なお、原告ゲームの利用規約は、LINEゲームの利用規約とかなり似通った内容になっており、第三者が作成した利用規約の複製にすぎない。
d ゲーム全体
 ゲーム全体の構成の著作物性に関して、そもそもゲームソフトは通常の映画とは異なり、プレイヤーが参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため、プレイヤーが必要とする情報を表示し、又はプレイヤーの選択肢を表示するための画面や操作手順を表示する必要があるところ、このようなプレイヤーの便宜のための画面や操作手順は、プレイヤーの操作の容易性や一覧性等の機能的な面を重視せざるを得ないため、作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ない。
 そして、原告ゲームの構成、機能、画面配置等は、携帯電話機を利用したゲームという制約の中で、プレイヤーの便宜のために設計された部分も多くあるし、他の類似ゲームにも照らし、ありふれたものにすぎない。
 なお、原告は、被告ゲームが原告ゲームをデッドコピーしたものであると主張するが、実際に画面に表示されている表現も異なっている部分が多々見られることからして、デッドコピーとはいえない。
e 小括
 したがって、被告ゲームは、原告ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せに係る著作権を侵害していない。
(イ)ゲームのプログラム
 原告ゲームに原告ソースコードが存在すること、被告ゲームに被告ソースコードが存在することは立証されていない。
 また、原告の主張を前提とした場合の原告ソースコードと被告ソースコードの共通点は、別紙「ソースコード対比表」の「原告ソースコード」欄及び「被告ソースコード」欄記載のとおりであるが、同表の「被告の主張」欄記載のとおり、当該共通点にはいずれも創作性が認められない。
 したがって、被告ソースコードは、原告ソースコードに係るプログラム著作権を侵害していない。
(3)争点3(原告が本件債権の譲渡を受けたか)について
ア 原告の主張
 原告は、令和元年12月13日、本件著作権を共有する北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESとの間で、同社らの被告に対する本件債権の譲渡を受ける旨の債権譲渡契約を締結した(甲30)。
イ 被告の主張
 原告の主張は、否認ないし争う。
(4)争点4(本件著作権の共有持分権及び本件債権の譲渡が信託法10条違反により無効になるか)について
ア 被告の主張
 次のとおり、原告が、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESから、本件著作権の共有持分権及び本件債権を譲り受けたことは、信託法10条の趣旨に反し無効である。
 すなわち、信託法10条は、「信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。」と定めるところ、同法の趣旨(三百代言の跳梁防止、濫訴の弊の除去)に鑑みれば、訴訟行為を目的とする共有持分権譲渡や債権譲渡も無効とされるべきである。そして、任意的訴訟信託は、民訴法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り、また、信託法10条が訴訟行為をなさしめることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれを許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要性がある場合には許容するに妨げないと解されている(最高裁昭和45年11月11日大法廷判決・民集24巻12号1854頁参照)。したがって、かかる例外的な場合に該当しない限り、訴訟行為を目的とする共有持分権譲渡や債権譲渡は無効となる。
 そして、原告は、本件訴訟提起前及び仮処分命令申立前に、本件著作権を侵害する被告に対して日本国内で訴えを提起するために、北京COM4LOVESに対して本件著作権の共有を求めているが、これは、共有持分権譲渡の対価がなく、信託法の禁止する訴訟行為を目的とする共有持分権譲渡であるといえ、信託法の回避、潜脱のおそれが存在する。
 また、北京COM4LOVESが、自ら損害賠償請求権を行使することは可能であり、原告による訴訟追行を認める合理的必要性はない。したがって、香港COM4LOVESと原告との間の本件著作権の共有持分権譲渡契約は無効である。
 また、原告は、本件訴訟提起から1年以上経過した後に、原告が本件著作権に係る損害賠償請求権の全てを有していないことが発覚すると、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESから本件債権を譲り受けたところ、本件著作権の共有の経緯や本件訴訟の経過、本件債権譲渡の対価が損害賠償請求額に比して極めて低額であることなどに鑑みれば、譲受人たる原告に訴訟を追行させることを主たる目的としていることは明らかであり、信託法の回避、潜脱に該当する。また、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESは、別個の法人格を有しているのであるから、
自ら被告に対して損害賠償請求をすべきであり、原告による訴訟追行を認める合理的必要性はない。したがって、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESから原告に対する本件債権譲渡は無効である。
イ 原告の主張
 被告の主張は、争う。
 原告が、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESとの間で本件著作権を共有し、本件債権の譲渡を受けたのは、日本国内における原告ゲームの知的財産管理(ライセンスや著作権侵害行為の排除その他の権利行使)等の便宜のためである。すなわち、北京COM4LOVESと香港COM4LOVES、香港COM4LOVESと原告は、それぞれ親子会社の関係にあり、原告ゲームの事業上密接一体の関係にあるところ、外国にある北京COM4LOVES又は香港COM4LOVESが、日本国内において、原告ゲームのライセンスや著作権侵害行為について交渉や警告等を迅速かつ適時に行うのは困難であるため、日本国内に所在するグループ会社である原告に本件著作権を共有させることによって、日本国内における迅速かつ適切な権利行使ができるようにしようとしたものであり、日本国内における本件訴訟提起及び本件債権譲渡は、そのような趣旨で共有された本件著作権の権利行使の結果ないし一環にすぎない。
 実際に、原告が、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESから本件著作権の共有持分権の譲渡を受けたのは、被告ゲームが日本国内においてリリースされる平成30年7月9日よりも前の同年5月24日であり(甲5、29)、香港COM4LOVESとの間で取り交わした覚書(甲5)にも、原告が被告に対して訴訟提起をすることを目的とした条項は一切存在しない上、本件訴訟の提起・追行についても、弁護士である訴訟代理人に委任しているのであって、弁護士代理の原則を潜脱しようとするものともいえない。
 なお、被告は、上記覚書において、本件著作権の共有持分権譲渡に関する対価が記載されていないことを指摘するが、北京COM4LOVES、香港COM4LOVES及び原告は、原告ゲームの事業上も密接一体の関係にあるため、本件著作権の共有による原告の日本国内における原告ゲームの知的財産管理は、ひいては北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESの利益につながるものであり、単純に無償での共有持分権譲渡がなされていると評価されるべきものではない。また、原告は、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESに対し、損害賠償請求権の対価として、それぞれ10万円を支払っているが(甲30)、これは、本件訴訟において、損害論の本格的な審理は行われておらず、被告に対する本件債権の金額は未確定の段階にある上、回収可能性も不明であるためである。
 したがって、北京COM4LOVES、香港COM4LOVES及び原告による本件著作権の共有は、被告に対して日本国内で訴訟提起をすることを「主たる目的」としたものではなく、本件債権の譲渡を含め、信託法10条が禁止する訴訟信託に当たらない。
(5)争点5(原告の損害の有無及び額)について
ア 原告の主張
 本件著作権者である原告、北京COM4LOVES及び香港COM4LOVESが被告の不法行為によって被った損害の額は、5760万円を下らない。
(ア)財産的損害
 被告ゲームの配信開始前の事前登録数が20万人を超えていること(甲4)、日本国内最大級のゲームアプリ情報・攻略サイト「GameWith」のゲームアプリランキングでも、平成30年7月11日時点で被告ゲームのダウンロード数がAndroid部門で1位、iOS部門で2位となっていること(甲13)からすると、事前登録数20万人のうち少なくとも5%の1万人が被告ゲームの課金ユーザーであると考えられる。
 そして、課金ユーザー1人当たり、少なくとも月額2000円を課金すると考えると、被告が配信開始後12か月を経過した時点において得た売上は、少なくとも2億4000万円(2000円×1万人×12か月)を下らず、被告の利益率は少なくとも20%を下らないことからすれば、被告の利益は、少なくとも4800万円(2億4000万円×20%)を下らない。
 したがって、著作権法114条2項によって算定される損害額は、4800万円を下らない。
(イ)弁護士費用
 原告は、被告の不法行為によって、原告訴訟代理人らに対し、本件訴訟の提起及び本件訴訟を本案とする仮処分命令の申立て(当庁平成30第22081号)並びにこれらの追行を委任しなければならなくなった。
 被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当損害額は、前記(ア)の損害額の2割である960万円を下らない。
イ 被告の主張
 原告の主張は、否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1)原告ゲーム
ア 原告ゲームの各画面の表示内容
 原告ゲーム(平成29年3月24日に配信開始)の各画面の表示内容は、別紙「ゲーム画面対比表」の「原告ゲーム」欄記載のとおり(【1-1】~【1-84】、【5-23】、【5-28】、【5-69】)である(甲6、乙33、120)。
イ 原告ゲームの基本的構成及び具体的構成
 原告ゲームの基本的構成及び具体的構成は、別紙「ゲーム構成対比表」の「原告ゲーム」欄記載のとおりである(甲6、16、17、27、弁論の全趣旨)。
ウ 原告ゲームの利用規約
 原告ゲームの利用規約は、別紙「利用規約対比表」の「原告ゲーム」欄記載のとおりである(甲8)。
エ 原告ソースコード
 原告ゲームの「任務(ミッション)」(別紙「ゲーム画面対比表」の【1-52】~【1-54】)に関するソースコード(原告ソースコード)は、別紙「ソースコード対比表」の「原告ソースコード」欄記載のとおりである(甲24、28の1)。
(2)被告ゲーム
ア 被告ゲームの各画面の表示内容
 被告ゲーム(平成30年7月9日に配信開始・令和元年7月21日に配信一時停止)の各画面の表示内容は、別紙「ゲーム画面対比表」の「被告ゲーム」欄記載のとおり(【2-1】~【2-84】、【4-17(2)】、【4-17(3)】、【4-23】)である(甲7、乙61、120)。
 なお、被告ゲームは、原告が被告に対して本件訴訟を本案事件とする仮処分命令申立てをした後である平成30年9月頃、各画面の表示内容の一部が変更されたところ、当該変更後の各画面の表示内容は、同表の【4-1】、【4-2】、【4-3】、【4-4】、【4-5】、【4-6】、【4-10】、【4-12】、【4-17(1)】、【4-18】、【4-25】、【4-26】、【4-27】、【4-28】、【4-44】、【4-47】、【4-48】、【4-49】、【4-50】、【4-62】、【4-69】、【4-73】、【4-77】、【4-78】、【4-79】のとおりである(乙12、32)。
イ 被告ゲームの基本的構成及び具体的構成
 被告ゲームの基本的構成及び具体的構成は、別紙「ゲーム構成対比表」の「被告ゲーム」欄記載のとおりである(甲7、16、17、弁論の全趣旨)。
ウ 被告ゲームの利用規約
 被告ゲームの利用規約(原告が侵害を主張する旧版)は、別紙「利用規約対比表」の「被告ゲーム」欄記載のとおりである(甲9)。
 なお、被告ゲームは、原告が被告に対して本件訴訟を本案事件とする仮処分命令申立てをした後である平成30年8月頃、利用規約の内容が変更された(乙13)。
エ 被告ソースコード
 被告ゲームの「任務(ミッション)」(別紙「ゲーム画面対比表」の【2-52】~【2-54】)に関するソースコード(被告ソースコード)は、別紙「ソースコード対比表」の「被告ソースコード」欄記載のとおりである(甲24、28の2)。
(3)他の類似ゲーム等
ア 放置系RPG
 放置系RPGの先駆は、平成26年6月27日にリリースされた「天天掛機」であり、その後、下表の各ゲームがリリースされ、現在では、放置系RPGというジャンルが確立するに至っている(乙14、15、17~19、30、弁論の全趣旨)。

表(最高裁ホームページの判決文P.21-23参照)

イ 他の類似ゲーム等の各画面の表示内容
 原告ゲーム及び被告ゲームと同じ放置系RPGのジャンルに属する「天天掛機」を含む他の類似ゲーム等及びこれらの各画面の表示内容には、以下のようなものがある。
①天天掛機(甲26、乙31、36~54、142)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【3-○】(○は任意の数字)
②百姫退魔-放課後少女-(乙33)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-9】、【6-12】、【4-13】、【6-17】、【5-18】
③日替わり内室(平成30年秋リリース)(甲23の10、乙33、57、69、99)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-8】、【5-17】、【5-32】、【4-37】、【4-39】、【5-53】、【5-58】、【5-75】
④ジャンプチヒーローズ(乙33)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-36】
⑤ドラゴンクエストモンスターズライト(乙33)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-69】
⑥文豪とアルケミスト(乙34の1)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-7】
⑦OZChronoChronicle(乙34の2)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-11】
⑧ドラゴンネストR(乙34の3)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-19】、【4-20】
⑨戦国アスカZERO(乙34の4)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-32】
⑩OVERHIT(乙34の5、乙85)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-13】、【4-35】
⑪革命フロントライン(平成30年10月22日リリース)(甲23の1、乙34の6)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-38】
⑫キングダム乱(乙34の7、乙123)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-40】、【4-41】、【4-42】
⑬ONEPIECEサウザンドストーム(乙34の8、乙127)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-43】、【6-52】
⑭イルーナ戦記オンライン(乙34の9)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-44】
⑮ファイアーエムブレムヒーローズ(乙34の10・34)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-45】、【5-45】
⑯GRANBLUEFANTASY(乙34の11、乙97)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-46】、【5-46】
⑰SINoALICE-シノアリス-(乙34の12)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-51】
⑱ポコロンダンジョンズ(乙34の13)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-52】
⑲モンスターギア(乙34の14・15)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-53】、【4-54】
⑳マジバトッ!乱世コンクエスト(平成30年11月13日リリース)
 (甲23の2、乙34の16・37、乙100、106、128、137)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-17】、【4-55】、【5-55】、【6-58】、【5-61】、【5-72】
(21)アズールレーン(乙16、34の17、乙110)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-3】、【4-57】
(22)フォートナイト(乙34の18)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-58】
(23)リネージュ2レボリューション(乙34の19、乙62)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-21】、【4-60】
(24)クロノスブレイド(乙34の20、乙102)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-61】、【5-65】
(25)ドラゴンボールZドッカンバトル(乙34の21)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-66】
(26)BRAVELYDEFAULTFAIRY’SEFFECT(乙34の22)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-67】
(27)白猫プロジェクト(乙34の23、乙59、98)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-14】、【5-52】、【4-70】
(28)ミトラスフィア(乙34の24)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-71】
(29)オルタンシア・サーガ(乙34の25)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-72】
(30)冒険ディグディグ2(乙34の26)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-74】
(31)サファイア・スフィア~蒼き境界~(平成30年8月9日リリース)(甲23の3、乙34の27)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-75】
(32)Fate/GrandOrder(乙34の28、乙107)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-1】、【4-76】
(33)陰陽師(乙34の29)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-79】
(34)少女☆歌劇レヴュースタァライト(Android版:平成30年10月21日リリース、iOS版:同月28日リリース)(甲23の4、乙34の30)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-80】
(35)エンドライド-Xfragments-(乙34の31)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-9】
(36)あっぱれ!天下御免乱(乙34の32)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-12】
(37)パズル&ドラゴンズ(乙34の33、乙77、103)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-2】、【5-37】、【5-66】
(38)FOODFANTASY食霊たちのティアラ(平成30年10月11日リリース)(甲23の5、乙34の35)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-50】
(39)交響性ミリオンアーサー(平成30年10月4日リリース)(甲23の6、乙34の36)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-51】
(40)KNIGHTSCHRONICLE(乙34の38、乙105、114)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-9】、【5-70】
(41)三国FANTASY(乙34の39)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-74】
(42)FLOWERKNIGHTGIRL(平成30年8月29日リリース)(甲23の7、乙34の40)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-76】
(43)FOX-FlameOfXenocide-(平成30年12月6日リリース)(甲23の8、乙39の42、乙65)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-24】、【6-51】
(44)少年四大名捕之六扇门(乙55、58、66)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【8-1】、【5-13】、【4-29】
(45)クラッシュフィーバー(乙56)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【9-5】
(46)ドラゴンオンライン(乙60、83、90、140)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-10】、【4-15】、【4-16】、【5-24】、【7-26】
(47)THEKINGOFFIGHTERS’98ULTIMATEMATCHOnline(乙63、75)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-22】、【4-65】
(48)叛逆性ミリオンアーサー(平成30年11月29日リリース)(甲23の11、乙64)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-23】
(49)ユニゾンリーグ(乙67)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-30】
(50)ICARUSONLINE(乙68)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-31】
(51)パイレーツ・オブ・カリビアン(乙70)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-40】
(52)FINALFANTASYAGITO(乙71)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-56】
(53)クラッシュオブキングス(乙72)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-59】
(54)雄覇天地(乙73、101)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-57】、【4-63】
(55)三国天武(乙74)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【4-64】
(56)ゴシックは魔法乙女(乙76)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【9-1】
(57)新三國志(平成30年8月20日リリース)(甲23の12、乙78)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-3】
(58)誰ガ為のアルケミスト(乙79)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-5】
(59)ジョジョの奇妙な冒険StardustShooters(乙80)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-5】
(60)MEGAMIRACLEFORCE(平成31年1月31日リリース)(甲23の13、乙81)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-7】
(61)ぷよぷよ!!クエスト(乙82)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-8】
(62)IMPERIALIZER(乙84)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-11】
(63)RPG三国志(乙86)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-19】
(64)Soulworker(乙87)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-20】
(65)黒い砂漠MOBILE(平成31年2月26日リリース)(甲23の14、乙88)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-21】
(66)三国ブレイズ(乙89)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-23】
(67)スターオーシャン:アナムネシス(乙91)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-26】
(68)タワーオブプリンセス(乙92)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-27】
(69)リネージュM(令和元年5月29日リリース)(甲23の15、乙93)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-40】
(70)クリスタルオブリユニオン(乙94、95)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-41】、【5-42】
(71)モンスターストライク(乙96、104)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-43】、【5-67】
(72)シャドウストーン(乙108)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-1】
(73)魔法使いと黒猫のウィズ(乙109)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-2】
(74)文豪ストレイドッグス迷ヰ犬怪奇譚(乙111)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-5】
(75)ICARUSM(平成31年2月21日リリース)(甲23の16、乙112)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【5-6】
(76)ときめきメモリアル1(乙113)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-8】
(77)放置プレー(乙115)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-10】、【5-14】
(78)FINALFANTASY11(乙116)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-11】
(79)マーメイドディフェンス(乙117)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-13】
(80)レジェンドオブリング(乙118)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-19】
(81)HIT(乙119)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-21】
(82)GARDIANS(乙121)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-26】
(83)GameofWar(乙122)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-32】
(84)大三国志(乙124、132)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-8】、【6-41】
(85)クラッシュオブキングス(乙125)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-42】
(86)マフィアシティ(乙126)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-46】
(87)MISTCHRONICLE(平成30年10月11日リリース)
 (甲23の17、乙129)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-1】
(88)ウエポンガールズ(乙131)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【6-6】
(89)乙女戦姫(乙133)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-10】
(90)ブレイブフロンティア(乙134)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-11】
(91)ソードスピリット(平成31年1月31日リリース)(甲23の18、乙135)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-12】
(92)DESTINYofCROWN(乙136)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【8-13】
(93)ドラゴンズプロフェット(乙138)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-19】
(94)マンドラゴラ(乙139)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-21】
(95)蒼穹のミストアーク(平成30年10月29日リリース)(甲23の19、乙141)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【7-46】
(96)圣堂挂机传奇(平成28年11月2日リリース)(乙143)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【①-○】(○は任意の数字)
(97)风暴挂机(平成28年10月8日リリース)(乙144)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【②-○】(○は任意の数字)
(98)天天打兽人(平成29年1月17日リリース)(乙145)
 別紙「ゲーム画面対比表」の【③-○】(○は任意の数字)
2 争点1(原告が本件著作権の共有持分権を有するか)について
(1)原告は、中国法人である北京COM4LOVESが、職務著作として本件著作権を取得した後、香港法人である香港COM4LOVESに対して本件著作権の共有持分権を譲渡し、さらに、同社は、原告に対して本件著作権の共有持分権の一部を譲渡したため、原告は、本件著作物の共有持分権(翻案権を含む。)を有していると主張する。
(2)そこで検討するに、職務著作に関する規定の準拠法については、その性質上、法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国における著作権法の職務著作に関する規定によるものと解される。そして、中国国内における使用者と労働者の労働関係の形成、労働契約の締結、履行、変更、解除又は終了には、中華人民共和国労働契約法が適用される(同法2条、甲34)。しかして、中華人民共和国著作権法16条1項は、「公民が法人或いはその他の組織にかかる業務上の任務を遂行するために創作した著作物は職務著作であり」と、同条2項柱書は、「次に掲げる形態のいずれかの職務著作物については、…著作権にかかるその他の権利は、法人或いはその他の組織がこれを享有する」と、同項1号は、「主として法人或いはその他の組織が物質上の技術的条件を利用して創作し、かつ法人或いはその他の組織が責任を負う…コンピューターソフトウェア等の職務著作物」と、同条2号は、「法人又はその他の組織が著作権を享有することを、法律・行政法規が規定し、又は契約で定められた職務著作物」と、それぞれ規定している(甲35)。
 そして、これらの法令に基づき、北京COM4LOVESが、職務著作として、本件著作権を取得したことについては、当事者間に争いがない。
(3)次に、著作権の移転について適用されるべき準拠法については、移転の原因関係である契約等の債権行為と、目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し、それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。
ア まず、著作権の共有持分権の移転の原因関係である譲渡契約について適用されるべき準拠法は、通則法7条により当事者の選択によることになるが、当事者間での準拠法の選択がない場合には、同法8条1項により「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」によるとされ、同条2項により特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法が「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」と推定されることになる。
 これを本件についてみるに、証拠(甲5、29、33、37)及び弁論の全趣旨によれば、北京COM4LOVESは、香港COM4LOVESに対して本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)を譲渡し、さらに、同社は、原告に対して本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)の一部を譲渡したことが認められる。そして、当事者間においては、上記各譲渡に係る契約について適用されるべき準拠法の選択がないことから、通則法8条1項及び2項により、北京COM4LOVESから香港COM4LOVESに対する本件著作権の共有持分権の譲渡に係る契約の準拠法は、特徴的な給付たる上記譲渡を行う北京COM4LOVESの常居所地法である中華人民共和国法となり、同様に、香港COM4LOVESから原告に対する本件著作権の共有持分権の一部の譲渡に係る契約の準拠法は、特徴的な給付たる上記譲渡を行う香港COM4LOVESの常居所地法である香港法となるところ、弁論の全趣旨によれば、中華人民共和国法と香港法のいずれについても、上記各譲渡は、債権行為として有効であることが認められる。
イ 次に、著作権の共有持分権という物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法に関しては、一般に、物権の内容、効力、得喪の要件等は、目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされる(通則法13条参照)。そして、著作権は、その権利の内容及び効力が、これを保護する国(保護国)の法令によって定められ、また、著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから、物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様に、著作権の共有持分権という物権類似の支配関係の変動については、保護国の法令が準拠法となると解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、前記アで認定したところに加え、弁論の全趣旨によれば、本件著作権を取得した北京COM4LOVESから香港COM4LOVESに対する本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)の譲渡及び同社から原告に対する本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)の一部の譲渡は、いずれも日本国内における原告ゲームの知的財産管理(ライセンスや著作権侵害行為の除去その他の権利行使)等の便宜のためにされたものであることが認められ、少なくとも本件では日本における著作権が問題となっているのであるから、保護国である日本の法令が準拠法となるというべきである。そして、日本国の法令においては、著作権の共有持分権の移転の効力は、その原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとされているのであるから、同契約締結に当たる上記各譲渡により、本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)は移転しているといえる。
(4)以上によれば、原告は、本件著作権の共有持分権(翻案権を含む。)を有しているというべきである。これに対し、被告は、原告が本件著作権の共有持分権、特に翻案権を取得したとは認められない旨を主張するが、上記説示のとおり採用できない。
3 争点2(被告ゲームの制作・配信行為が本件著作権を侵害するか)について
(1)ゲームの複製・翻案該当性の判断基準
 ある創作物が著作権法による保護の対象となるためには、それが「著作物」であること、すなわち、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)であることを要する。
 また、著作物の複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照)、かかる著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、これと同一のものを作成するか、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解するのが相当である。
 さらに、著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいい、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
 このように、複製又は翻案に該当するためには、既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との共通性を有する部分が、著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものといえることが必要である。
 そして、創作的に表現されたというためには、厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく、作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが、他方、表現がありふれたものである場合には、当該作成者の個性が表現されたものとはいえず、創作的な表現であるということはできないというべきである。
 そして、本件のような携帯電話機等を用いたゲームについては、通常の映画とは異なり、システムないしルールが決められ、プレイヤーはシステムないしルールに基づいてプレイするところ、このようなゲームのシステムないしルール自体はアイデアそのものであり、著作物ということはできず、システムないしルールに基づき具体的に表現されたものがある場合に、初めてその創作性の有無等が問題となるというべきである。
 また、このようなゲームは、プレイヤーが参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため、プレイヤーが必要とする情報を表示し、又はプレイヤーの選択肢を表示するための画面(ユーザーインターフェース)(乙9~11)を表示する必要があり、また、ディスプレイ上に表示される画面は常に一定ではなく、プレイヤーが各画面に設置されたリンクを選択することによって異なる画面に遷移し、これを繰り返してゲームを進めるという仕組みになっているところ、一連のまとまった表現として把握される複数の画像が、プレイヤーの操作・選択により、又はあらかじめ設定されたプログラムに基づいて、連続的に展開することにより形成されている場合には、一連のまとまった表現を構成する各画像自体の創作性及び表現性のみならず、その組合せ・配列により表現される画像の変化も、著作権法による保護の対象となり得る。もっとも、このようなゲームにおける各画像及びその組合せ・配列については、プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性、操作等の利便性の観点から機能的な面に基づく制約を受けざるを得ないため、作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず、上記制約を考慮してもなおゲーム作成者の個性が表現されているものとして著作物性(創作性)を肯定し得るのは、他の同種ゲームとの比較の見地等からして、特に特徴的であり独自性があると認められるような限定的な場合とならざるを得ないものというべきである。
 以上を前提にして、原告ゲーム(基本的構成、具体的構成、利用規約及びゲーム全体)及び原告ソースコードについて著作権侵害の成否を検討する。
(2)ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せについて
ア 基本的構成について
 前記1の認定事実によれば、原告ゲーム及び被告ゲームは、①歴史をテーマにし、歴史上の武将を美少女化し、フルオート機能(プレイヤーが、実際にプレイすることなくアプリを閉じていても、ゲームが自動的に進行し、経験値を獲得してキャラクターを育成することができる機能)を備えた放置系RPGゲームである点、②サーバー内のプレイヤー同士でグループを作り、ボス等に挑戦することができる「同盟」機能、キャラクターのステータスや装備を好みに合わせて強化育成できる「強化育成」機能、サーバー内のプレイヤー間や同盟を結んだプレイヤー間で情報交換をすることができる「チャット」機能を備えている点において共通している。
 しかし、上記①及び②の共通点は、いずれも両ゲームのシステムないしこれに対応する機能であって、アイデアにすぎないというほかなく、そのような点が共通するとしても、複製又は翻案に当たらない。
イ 具体的構成について
(ア)キャラクターの名称、構成、機能について
 前記1の認定事実によれば、原告ゲームと被告ゲームは、①キャラクターが「主将」と「副将」から構成される点、②「主将」の職業は、初めてゲームを開始する際に、「筋力」をメインの能力とするもの、「知力」をメインの能力とするもの、「敏捷」をメインの能力とするものの3つの中から選択する点、③「副将」は、歴史上の人物が女性化して登場し、一定の条件を満たすと、当該副将が使用できるようになり、レベルが上がるにつれて副将の数を増やすことができ、副将を「出陣」させたり、「応援」させたりすることができる点、④各キャラクターは、画面上で華麗にゆらゆらと動いており、キャラクターをタッチすると、キャラクターのボイスを聴くことができる点において共通している。
 しかし、上記①ないし③の共通点は、いずれも両ゲームのシステムないしこれに対応する機能であって、アイデアにすぎないものであり、また、上記④の共通点も、各キャラクターの動きやボイスの機能をいうものであってアイデアにすぎないから、これらの点が共通するとしても、複製又は翻案には当たらない。
(イ)各画面の名称、構成、機能について
 前記1の認定事実及び前記(1)の判断基準を踏まえた、原告ゲーム及び被告ゲームの各画面の名称、構成、機能に関する共通部分に関する判断は、別紙「ゲーム画面対比表」の「裁判所の判断」欄記載のとおりである。
 すなわち、被告ゲームの各画面は、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームの各画面と同一性を有するにすぎないものであり、また、具体的表現においても相違するものであって、これに接する者が原告ゲームの各画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから、複製又は翻案に当たらない。
ウ 利用規約について
 前記1の認定事実によれば、原告ゲーム及び被告ゲームの利用規約は、別紙「利用規約対比表」記載のとおり、会社名を除き、同一の文言であることが認められる。
 しかし、一般的に、ゲームの利用規約は、法令や慣行により、形式及び内容が定型的なものとなり、その創作性が認められるのは、それにもかかわらず作成者の個性が発揮されたといえるような極めて限定された場合に限られると考えられる。しかして、弁論の全趣旨によれば、原告ゲームの利用規約は、LINEゲームの利用規約と相当程度に類似しているものであることが認められる。そして、原告ゲームと被告ゲームの利用規約に係る上記共通部分をみても、いずれも定型的なものの範囲にとどまっており、上記の限定された場合に当たるものとみられるものは存しない。そうすると、上記共通部分については、いずれも創作性が認められないものというほかなく、そのような点が共通するとしても、複製又は翻案に当たらない。
エ ゲーム全体について
(ア)前記(1)で説示したとおり、原告ゲーム及び被告ゲームのような携帯電話機等を用いたゲームは、プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性、操作等の利便性の観点から、その画面遷移等の構成には機能的な制約があるため、創作性の認められる範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず、特に特徴的であり独自性があると認められない限り、創作性を認めるのは困難というべきである。
 そして、前記説示のとおり、原告ゲーム及び被告ゲームは、いずれも、携帯電話機等を利用する歴史をテーマとする美少女育成型の放置系RPGであり、「ホーム」、「戦場」、「陣営」、「倉庫」、「チャット」、「同盟」の各画面を主要画面とし、ホーム画面上にボタンが表示される「競技」、「ショップ」ないし「商店」、「鋳造」、「任務」、「特典」、「チャージ」の各画面その他各種イベントに関する画面を中心とする構成であるところ、これらのゲーム内容及び各画面等については、基本的構成、具体的構成及び利用規約のいずれにおいても、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通しているにすぎず、また、具体的表現においては相違するものである。
 そして、上記のような性質のゲームを採用した場合、プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性、操作等の利便性の観点から、各画面の機能ないし遷移方法については、ある程度似通ったものにならざるを得ないことをも踏まえると、原告ゲーム及び被告ゲームにおける各画面の機能ないし遷移方法を具体的にみても、特に特徴的であり独自性があるということはできない。
 そうすると、被告ゲーム全体の構成・機能・画面配置等の組合せ(画面の変遷並びに素材の選択及び配列)についても、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームのそれと同一性を有するにすぎないものというほかなく、これに接する者が原告ゲームの画面の変遷並びに素材の選択及び配列の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとみるべきであるから、複製又は翻案に当たらないというべきである。
(イ)これに対し、原告は、原告ゲーム全体の構成・機能・画面配置等の組合せには選択の余地があり、創作性が認められるところ、被告ゲームは、原告ゲームと合計84画面の構成・機能・画面配置等が全て共通しており、原告ゲームをほぼデッドコピーして制作されたものであることは明らかであるから、両ゲームの個別の画面を逐一比較するまでもなく、ゲーム全体について複製又は翻案が成立することは明らかである旨を主張する。
 しかし、著作物の創作的表現は、様々な創作的要素が集積して成り立っているものであるから、原告ゲームと被告ゲームの共通部分が表現といえるか否かを判断する際に、その構成要素を分析し、それぞれについて表現といえるか否か、また表現上の創作性を有するか否かを検討することは、有益かつ必要なことであって、その上で、ゲーム全体又は侵害が主張されている部分全体について表現といえるか否か、また表現上の創作性を有するか否かを判断することが、正当な判断手法ということができるところ、両ゲームの各画面等の共通部分は、アイデアや創作性のないものにとどまることは、前記説示のとおりである。そして、著作権法上、著作物として保護されるのは、画面の選択や配列に関するアイデア自体ではなく、具体的表現であるから、画面の選択や配列に選択の余地があったとしても、実際に作成された表現がありふれたものである限り、それが共通することを理由として、複製又は翻案が成立するということはできないし、具体的な表現が異なることにより、表現上の本質的な特徴が直接感得できなくなる場合があり得るところ、前記説示のとおり、本件において、被告ゲームの画面の選択や配列から、原告ゲームのそれの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないものである。
 他方で、原告が主張するように、証拠(甲10~12、15、18、24、28)及び弁論の全趣旨によれば、①被告ゲームのテスト版では、「サーバーデータ取得エラー26002」という原告ゲームと同じエラーメッセージが用いられ、被告ゲームの通貨は「判金」であるにもかかわらず、イベント画面において原告ゲームで用いている「元宝」(中国の貨幣)の名称が用いられていること、②被告ゲームには、該当する名称の機能等が存在していないにもかかわらず、原告ゲーム内の機能等の名称である「同盟争覇戦」、「訓練所」、「遊歴」、「神将交換」、「高速戦闘」、「弓将」、「総力戦」、「神器」の用語がそのまま用いられており、チャット機能において、原告ゲームと同じバグが存在していること、さらに、③被告ソースコードには、原告ゲームの開発担当者の名前が残されたままとなっていることが認められる。
 しかし、上記の事実から、被告ゲームが原告ゲームを参考にして制作されたことが認められるとしても、その共通点はアイデアや創作性のないものにとどまり、また、具体的表現において相違し、デッドコピーであるとは評価できないのであるから、被告ゲーム全体が、原告ゲーム全体の複製又は翻案に当たるということはできない。
 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
(3)ゲームのプログラムについて
 原告は、被告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムは、原告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムを複製又は翻案して作成されたものであり、原告ソースコードに係るプログラム著作権をも侵害している旨を主張し、これに沿う証拠(甲24、25、27、28等)を提出する。
 そこで検討するに、前提事実に加え、証拠(甲25)及び弁論の全趣旨によれば、原告ゲーム及び被告ゲームは、携帯電話機等を用いて配布・実行されるゲームアプリ(Androidの場合にはGooglePlay、iOSの場合にはAppStoreを介して配布)であり、サーバー側のプログラムとネットワークを介して通信しながら実行が進められるものであることが認められる。また、前記1の認定事実によれば、原告ゲーム及び被告ゲームには、任務(ミッション)画面(メインミッション画面、デイリーミッション画面、功績画面)(別紙「ゲーム画面対比表」の【1-52】~【1-54】、【2-52】~【2-54】)が存在し、これらは、主に①「メインミッション」ボタン、②「デイリーミッション」ボタン、③「功績」ボタン、④「ヘルプ」ボタン、⑤「戻る」ボタンという5つのボタンと、上記①ないし③のボタンにそれぞれ対応した表示項目で構成されていることが認められる。
 この点、被告は、そもそも、原告ゲームに原告ソースコードが存在すること、被告ゲームに被告ソースコードが存在することを争っているが、仮に原告の主張を前提とした場合、原告ゲームのゲームアプリ(sanguo_Google_34_1.200.34.apk)及び被告ゲームのゲームア43プリ(戦姫コレクション_v1.0.68.apk)は、主として、①オープンソースのゲームフレークワーク(ゲームの基本的な処理を行うプログラムであって、これに含まれる各種「処理」を呼び出すゲームのソースコードを記述することで、グラフィック描画、キャラクターの動作、ネット通信等のゲームプログラムにおいてよく使用される機能を簡単に実現することができる。)であるCOCOS2D-X、②原告ゲームにつき473個、被告ゲームにつき555個のLuaファイル(Lua言語で記述されたソースコード)等から構成されていると考えられる。そして、原告ゲームの上記473個のLuaファイルのうちの「MissionMainPage.lua」(「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラム)のソースコード(原告ソースコード)とこれに対応する被告ゲームのプログラムのソースコード(被告ソースコード)は、それぞれ別紙「ソースコード対比表」の「原告ソースコード」欄及び「被告ソースコード」欄記載のとおりであると認められ、その大部分(「AUTHOR」欄の開発担当者の氏名や作成日付を含む。)が一致していることが認められる(原告ソースコードの行数が182行、被告ソースコードの行数が190行であり、これらのうち165行が共通しており、類似度は90.66%である。)。(甲12、24、25、27、28)
 しかし、上記説示に加え、弁論の全趣旨によれば、同表の「裁判所の認定」欄記載のとおり、原告ソースコードは、全体として、ゲーム画面内の上記5つのボタンが押された際の画面の切り替えに関する処理や表示内容の更新処理を行うものにすぎず、「メインミッション」、「デイリーミッション」、「功績」の内容とは直接関係しない、上記のような定型的な処理を機械的に実行するプログラムであるにすぎない。そして、個々のソースコードをみても、同表の「裁判所の認定」欄記載のとおり、いずれも単純な作業を行うfunction(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等)が複数記述されたものにすぎないから、このように定型的なありふれたものについて作成者の個性が表れており創作性があるとは認められないし、そのような創作性の認められない個々のソースコードの記載の順序や組合せについても、あくまでゲームの機能に対応した表現にすぎないから、やはり創作性があるとは認め難いというべきである。これに反する原告の主張は、採用することができない。
 したがって、原告ソースコードと被告ソースコードの存在を前提としたとしても、被告ソースコードは、表現上の創作性がない部分において原告ソースコードと同一性を有するにすぎないから、原告ソースコードの複製又は翻案には当たらないというべきである。
(4)小括
 以上によれば、被告ゲームは、原告ゲームの構成、機能、画面配置等及びこれらの組合せを複製又は翻案したものであるとはいえず、被告ソースコードが、原告ソースコードを複製又は翻案したものであるともいえない。
 したがって、その余の争点(争点3ないし5)について検討するまでもなく、原告の被告に対する本件著作権に基づく被告ゲームの複製及び公衆送信の差止め並びにこれを記録したコンピューター及びサーバー内の記録媒体からの同記録の削除請求と、不法行為に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がないことになる。
4 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 田中孝一
 裁判官 奥俊彦
 裁判官 西尾信員


別紙 原告ゲーム目録
名称 放置少女~百花繚乱の萌姫たち~
ジャンル RPG
対応OS Android/iOS
 以上

別紙 被告ゲーム目録
名称 戦姫コレクション~戦国乱舞の乙女たち~
ジャンル RPG
対応OS Android/iOS
 以上

(別紙「ゲーム画面対比表」省略)
(別紙「利用規約対比表」省略)
(別紙「ソースコード対比表」省略)
(別紙「ゲーム構成対比表」省略)
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/