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【事件名】ビッグローブへの発信者情報開示請求事件I 【年月日】令和3年1月26日 東京地裁 令和2年(ワ)第20960号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和2年12月4日) 判決 原告 同訴訟代理人弁護士 平野敬 同 井雅秀 同 笠木貴裕 被告 ビッグローブ株式会社 同訴訟代理人弁護士 橋利昌 同 平出晋一 同 太田絢子 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告に対し、原告の著作物の複製物が被告の提供するプロバイダを経由して送信されたことによって、原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたところ、損害賠償請求権の行使のために必要であると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき、上記の権利侵害に係る発信者情報である別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各情報」という。)の開示を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。) (1)被告は、電気通信事業等を目的とする株式会社である。(争いがない) (2)被告は、令和2年7月11日午後1時18分47秒(以下「本件時刻」という。)に別紙発信端末目録記載のアイ・ピー・アドレス(以下「本件IPアドレス」という。)を割り当てられた電気通信設備を用いており、被告から本件時刻に同電気通信設備を電気通信の用に供された者の氏名又は名称及び住所に係る情報(本件各情報)を保有している。(争いがない) (3)ビットトレントは、ビットトレントインク(BitTorrent、Inc.)が提供する、TCP/IPネットワーク上でP2P(ピアツーピア)方式のファイルの共有及び交換を行うための通信規約(プロトコル)の一つであり、また、同通信規約を実装した標準のファイル共有ソフトをいうこともある。(甲3) 2 争点及び争点に関する当事者の主張 本件の争点は、 @ 原告が「勇者のクズ」という題名の漫画の1巻及び2巻(以下「本件漫画」という。)の著作権を有するか。 A 侵害情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかといえるか。 B 本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか。 C 本件各情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要である場合であるか。 である。 (1)争点@(原告が本件漫画の著作権を有するか。)について (原告の主張) 原告は、「ナカシマ723」との名称で活動する漫画家及びイラストレーターであり、本件漫画を創作した。したがって、原告は本件漫画の著作権を有する。 (被告の主張) 不知 (2)争点A(侵害情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかといえるか。)について (原告の主張) 原告は、本件漫画を複製することにより作成された電子データがビットトレント上で不特定多数人により共有されていることを知ったことから、原告代理人をして調査を行ったところ、本件時刻に本件IPアドレスを割り当てられた特定電気通信設備を特定電気通信の用に供された者が、本件時刻に本件漫画の電子データを送信したことが確認された。上記の者は、ビットトレントを使用して上記電子データを自己の端末に複製して保存し他の端末に対し送信可能な状態に置いていたものであり、これによって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかである。 (被告の主張) 否認する。 ビットトレントの仕組み及び原告代理人による調査の詳細は不明であり、原告の著作権が侵害されたことが明らかとはいえない。 (3)争点B(本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか。)について (原告の主張) 前記(2)(原告の主張)のとおり、本件時刻に本件IPアドレスを割り当てられた特定電気通信設備を特定電気通信の用に供された者が、本件時刻に本件漫画の電子データを送信したから、本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であることは明らかである。 (被告の主張) 否認する。 (4)争点C(本件各情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要である場合であるか。)について (原告の主張) 本件各情報は原告の損害賠償請求権行使のために必要である。 (被告の主張) 否認する。 第3 当裁判所の判断 1 争点@(原告が本件漫画の著作権を有するか。)について 証拠(甲1、2、8、10)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、「ナカシマ723」との名称で活動する漫画家及びイラストレーターであり、本件漫画を創作したこと、したがって、原告が本件漫画の著作権を有することが認められる。 2 争点A(侵害情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかといえるか。)及び争点B(本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか。)について (1)ビットトレントにおいては、中央サーバーを介さず、個々の使用者の間で相互に直接ファイルが共有される。すなわち、ビットトレントにおいて、特定のファイルを入手した使用者は、ピアとしてファイルの提供者の一覧であるトラッカーに登録され、他の使用者から要求を受けた場合には、自己の使用する端末に保存した当該ファイルを送信して提供しなければならない。具体的には、特定のファイルをダウンロードし、自己の端末に保存すると、当該端末の電源が入っていてインターネットに接続されている限り、当該ファイルの送信を要求した不特定の者に対し、当該端末に保存された当該ファイルを自動的に送信する状態となる。 ビットトレントにおいて特定のファイルを得ようとする場合には、インデックスサイトと呼ばれるウェブサイトに接続して、当該ファイルのトレントファイルを入手する。そして、トレントファイルに含まれるリンクからトラッカーを管理するサーバーに接続して、当該ファイルの提供者であるピアのアイ・ピー・アドレスを入手し、これに接続して、当該ピアから、当該ピアが使用する端末に保存した当該ファイルの送信を受ける。(本項につき、甲3、11、弁論の全趣旨) (2)原告は、本件漫画を複製することにより作成された電子データがビットトレントにおいて不特定多数人により共有されていることを知ったことから、原告代理人をしてビットトレントを使用して調査を行ったところ、本件時刻頃、本件時刻に本件IPアドレスを割り当てられた電気通信設備を電気通信の用に供された氏名不詳者から、本件漫画を複製することにより作成された電子データが送信された。(甲4〜8、10、13、14、弁論の全趣旨) (3)原告の著作物である本件漫画を複製することにより作成された電子データが、本件時刻頃、ビットトレントを通じて前記氏名不詳者から送信された(前記(2))ところ、ビットトレントの仕組み(同(1))に照らせば、前記氏名不詳者が、ビットトレントを使用して上記電子データをダウンロードし自己の端末に保存すること等により、上記電子データを自動公衆送信し得るようにしていたことは明らかであり、前記氏名不詳者は、原告の著作権(公衆送信権)を侵害したといえ、同公衆送信につき、著作権法上の権利制限事由の存在その他不法行為の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける事実は認められない。また、前記氏名不詳者は、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信、すなわちプロバイダ責任制限法2条1号所定の特定電気通信によって上記電子データを流通させたものと認められる(同(1)、(2))。 したがって、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるといえ、また、プロバイダ責任制限法2条3号所定の特定電気通信役務提供者である被告が保有する本件各情報は原告の権利の侵害に係る発信者情報であると認められる。 3 争点C(本件各情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要である場合であるか。)について 本件は、本件各情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要である場合であると認められる。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容すべきである。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官 棚井啓 別紙 発信者情報目録 別紙発信端末目録記載のアイ・ピー・アドレスを、同目録記載の発信時刻頃に使用した者の情報であって、次に掲げるもの。 1 氏名又は名称 2 住所 以上 (別紙発信端末目録省略) |
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