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【事件名】“金魚電話ボックス”事件(2) 【年月日】令和3年1月14日 大阪高裁 令和元年(ネ)第1735号 著作権に基づく差止等請求控訴事件 (原審・奈良地裁平成30年(ワ)第466号) (口頭弁論終結日 令和2年9月29日) 判決 控訴人(一審原告) P1 同訴訟代理人弁護士 田中幹夫 同 冨宅恵 同 西村啓 被控訴人(一審被告) 郡山柳町商店街協同組合 被控訴人(一審被告) P2 上記2名訴訟代理人弁護士 緒方賢史 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人らは、原判決別紙被告作品目録記載の美術作品を制作してはならない。 3 被控訴人郡山柳町商店街協同組合は、前項の美術作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機を廃棄せよ。 4 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して55万円及びこれに対する平成30年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人の負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 主文第2、3項と同旨 3 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して330万円及びこれに対する平成26年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 控訴人の請求と訴訟の経過 本件は、控訴人が、被控訴人らが制作して展示した原判決別紙被告作品目録記載の美術作品(以下「被告作品」という。)は、控訴人の著作物である同別紙原告作品目録記載の美術作品(以下「原告作品」という。)を複製したものであり、被控訴人らは控訴人の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害したとして、@被控訴人らに対し、著作権法112条1項に基づき、被告作品の制作の差止めを求め、A被控訴人郡山柳町商店街協同組合(以下「被控訴組合」という。)に対し、同条2項に基づき、被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の廃棄を求め、B被控訴人らに対し、不法行為に基づき、損害賠償金330万円及びこれに対する被告作品の制作、展示日である平成26年2月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めて訴えを提起した事案である。 原審は控訴人の請求をいずれも棄却した。 これに対し、控訴人が控訴し、当審において、著作権につき、仮に複製権侵害が成立しないとしても翻案権侵害が成立すると主張している。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) (1)当事者 ア 控訴人は、東京藝術大学大学院を修了し、これまでに数多くの個展を開き、美術展に出品するなどして活動している現代美術家である(甲1、甲7の1〜7の9)。 イ 被控訴組合は、奈良県大和郡山市柳1丁目から4丁目まで(柳町商店街)の区域内の事業者を組合員とし、アーケード、道路の整備、街路灯等組合員のためにする共同施設の設置及び維持管理等を目的とする事業協同組合である。 被控訴人P2(以下「被控訴人P2」という。)は、デザイン関係の仕事をしており、大和郡山市で地域活性化を目指す団体であるケイプールプロジェクト(K-PoolProject)の代表者を務めている(被控訴人P2)。 (2)原告作品の概略 原告作品は、控訴人が制作したものである。 原告作品は、外見は我が国で見られる一般的な公衆電話ボックスに酷似したものであり、四方がアクリルガラスでできた電話ボックス様の水槽、その内部に設置された公衆電話機様の造作と棚、水槽を満たす水、水の中に泳ぐ多数の金魚から成る。 (3)被告作品の概略 被控訴人らは、大和郡山市内において、被告作品を展示していた(展示の時期と場所は後記(4)ウ、エのとおりである。)。 被告作品は、我が国で実際に使用されていた公衆電話ボックスの部材を利用して制作されたものであり、四方がアクリルガラスでできた電話ボックス様の水槽、その内部に設置された公衆電話機と棚、水槽を満たす水、水の中に泳ぐ多数の金魚から成る。 (4)被告作品が展示され、撤去された経緯 ア 「金魚部」による「テレ金」の制作と展示 京都造形芸術大学(現在の名称は京都芸術大学)でP3教授の指導を受けていた学生6名が創設した団体である「金魚部」は、公衆電話ボックスの部材を利用して造作した水槽に水を入れ、金魚を泳がせ、水槽内の公衆電話機の受話器部分から気泡を発生させた美術作品を制作し、平成23年10月、大阪市内で開催されたアートイベント「おおさかカンヴァス2011」に「テレ金」と名付けて展示した。 金魚部は、平成24年3月から4月にかけて、大和郡山市で開催された映画の公開記念イベント及び「大和郡山お城まつり」において「テレ金」を展示し、平成25年3月から4月にかけての「大和郡山お城まつり」にも「テレ金」を展示した。(甲6、10、21、27、乙6) イ 「金魚の会」による「金魚電話」の展示 金魚部は活動を停止し、大和郡山市の有志によって構成された団体である「金魚の会」(代表者は被控訴人P2)が、平成25年の「お城まつり」の後、金魚部から「テレ金」の部材を譲り受けた。金魚の会は、同年10月、同市で開催された「奈良・町家の芸術祭HANARART2013」に、「テレ金」と同様の作品を「金魚電話」と名付けて展示した。 ウ 被控訴人らによる被告作品(「金魚電話ボックス」)の展示 被控訴人P2は、金魚の会から「金魚電話」の部材を承継し、平成26年2月22日、大和郡山市内の喫茶店「KCOFFEE」(以下「本件喫茶店」という。)に被告作品を制作し、これを設置した。本件喫茶店は、かつてガソリンスタンドであった建物、工作物を利用した喫茶店であり、被告作品が設置されたのはその屋外部分である。 被告作品の所有権は被控訴組合が取得し、被控訴人P2とともにその管理に当たった。 被控訴人らは被告作品を「金魚電話ボックス」などと呼んでいた。 エ 控訴人と被控訴組合との交渉と被告作品の撤去 控訴人は、被控訴組合に対し、被告作品が原告作品についての控訴人の著作権を侵害していると申し入れ、両者間で交渉が行われた。その間の平成29年8月21日、被控訴組合は、「金魚の電話ボックスは控訴人が世界で初めて発表し、数多くの美術展で展示されてきました」などと記載された説明書を被告作品に掲示した。(甲16) しかし、交渉は決裂し、被控訴組合は、平成30年4月10日、著作権侵害を否定しつつ、本件喫茶店から被告作品を撤去した。その後、水を抜いた状態でこれを保管している。 3 争点 (1)原告作品の著作物性 (2)著作権(複製権又は翻案権)の侵害の有無 (3)著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の有無 (4)被控訴人らの故意、過失の有無 (5)控訴人の損害 4 争点についての当事者の主張 (1)原告作品の著作物性 【控訴人の主張】 ア 原告作品は、公衆電話ボックス様の造作、公衆電話機、それを設置する棚、水、多数の金魚により構成され、素材の選定、構成、文脈及び位置付け(関係性)が作品の重要な表現要素となっており、また、現代美術家である控訴人の思想又は感情を創作的かつ具体的に表現したものであり、著作物性が認められる。 原告作品は、「メッセージ」と名付けられて数々の美術展やギャラリーにおいて展示されており、各種メディアにも注目された。公衆電話ボックスも公衆電話機も本物を模して控訴人が造作したものであるが、それを考慮外としても、公衆電話ボックスや公衆電話機としての実用的機能は、水、金魚の組み合わせによって喪失しており、原告作品は、専ら美術的鑑賞に供される、現代アートに位置付けられる純粋美術である。原告作品は、控訴人が現代美術家としての人生をかけて展示を続けている代表作品であり、人格流出度が高い。被控訴人らは、大和郡山市には多数の類似作品があると主張するが、そのいずれもが原告作品よりも後に制作されたものであり、そのほとんどが、被告作品が展示された後、その影響を受けて制作されたものであることが判明している。 イ 原告作品の美術作品としての特徴は次のようなものである。 (ア)屋外に設置されるインスタレーション(屋内外の展示場所・空間を含めて作品とする表現手法又はジャンル)作品である。 (イ)レディ・メイド(本来既製品の意味であるが、マルセル・デュシャンが、大量生産された既製品から機能性を剥奪し「オブジェ」とした自らの作品群を指すために用いた語)の要素を含むものであり、公衆電話ボックスとしての「既製品」の機能性・実用性は喪失し、新たな意味と価値が与えられている。 (ウ)環境保全をテーマとし、「遠い地を流れる水の言葉に耳を傾け、美しい水と環境を守ろう」という控訴人のメッセージが込められている。 (エ)日常的な空間に非日常的な情景を織り込み、不特定多数の観衆に気付きを与えるという狙いを持って制作された。 ウ 告作品は、たとえ個々の素材がありふれたものであるとしても、その選択、構成・配列、文脈・位置付けにより、非日常的な情景を描く創作的表現としての美術作品となっている。「水槽でないものを水槽化する、又は、水槽でないものに水槽を組み込む」というアイデアを利用することによっても多様な表現が可能であり、原告作品はありふれたものではなく、創作性を有する。 原判決は、原告作品の「公衆電話機の受話器部分を利用して気泡を出す仕組み」について、「公衆電話ボックス内に通常存在する物から気泡を発生させようとすれば、もともと穴が空いている受話器から発生させるのが合理的かつ自然な発想である。すなわち、アイデアが決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られることとなるから、この点について創作性を認めることはできない。」と判示した。確かに、受話器(そのうち耳を当てる部分を受話部、口を近づける部分を送話部として区別することとする。)の受話部から発生する気泡は、金魚の生育環境を維持する目的も兼ね備えるが、原告作品はあくまで美術作品であって実用品ではなく、水槽としての実用性を考慮した機能的制約は存在しない。原告作品は、「メッセージ」の作品コンセプトの1つの美術的表現方法として、受話器を浮かせた上で、受話部の穴から気泡を発生させたのであり、機能的必然性に基づくものではない。しかし、水中に空気を注入することが必須であると仮定しても、その方法としては、ろ過装置やエアストーン(気泡発生装置)を別途設置するのが通常の選択と思われる。また、受話器の送話部、受話部に穴は空いているが、その内部には、受話部にはスピーカーが、送話部にはマイクが内蔵されており、空気を通す構造になっていない。電話機と受話器を結ぶコードには金属の導線が通っており、空気を通す構造になっていない。気泡を発生させるために受話器の受話部を使用していることが控訴人の表現上の工夫であり、創作性評価のポイントである。 【被控訴人らの主張】 ア 原告作品における控訴人の発想の中核は、「公衆電話ボックスの中に金魚を遊泳させる」という点に集約される。公衆電話ボックス及び金魚の形状は限定されており、誰が表現しても同様の表現にならざるを得ない以上、この発想はアイデアにすぎず、著作権法の保護の対象とならない。 原告作品は、「公衆電話ボックス様の造作水槽内に金魚を泳がせ、受話器から気泡を発生させている公衆電話機がその水槽内に設置された」という点によってのみ特定されるのであり、電話ボックスと金魚と水があれば誰でもこの定義を充足する物を制作することができるのであって、控訴人の個性を特段反映したものではない。 水槽以外の用途で作られた物に金魚を入れて鑑賞に供するという表現は、大和郡山市においては、公衆電話ボックス以外にも、自動販売機や自動改札機等、多数行われており、諸外国においても公衆電話ボックスに金魚を入れて展示する作品は複数ある。公衆電話ボックスに金魚を入れるという表現は、控訴人の個性を反映したものとはいえない。 原告作品において公衆電話機の受話器から気泡が発生している点についても、重要な創作性の要素とはならない。金魚を飼育する際に、水中への空気の注入は必須である一方、受話器は通気口によって空気が通る構造をしていることから、公衆電話ボックスに金魚を入れるという選択をした時点で、受話器から気泡が生じるというデザインのアイデアは必然的に生じるものといえるからである。 イ 原告作品を構成する電話ボックス(電話機を含む。)も、金魚も、水も、大量生産されている。原告作品は、誰でもどこでも制作が可能であり、同時に多数のものが異なる場所に存在することが可能である。したがって、原告作品は、その実質において純粋美術ではなく応用美術というべきであり、純粋美術であったとしても応用美術に近似する。原告作品の著作物性の判断はこの観点からされるべきである。 (2)著作権(複製権又は翻案権)の侵害の有無 【控訴人の主張】 ア 原告作品と被告作品の共通性 (ア)表現の共通性 a 共通点 原告作品と被告作品は、第1に、公衆電話ボックス様の造作が屋外に置かれ、その内部の角の棚に公衆電話機を設置した状態で水を満たし、多数の金魚を泳がすことで、公衆電話ボックスが金魚水槽化されている表現において一致している。第2に、水と公衆電話機受話器の受話部を組み合わせ、受話部から気泡を発生させる表現において一致している。第3に、公衆電話ボックス様の造作内に、水槽に一般的に見られる砂利石や水草のしつらえが存在しないという表現においても一致している。 b 共通点と「表現」 原告作品においては、「遠い地を流れる水の言葉に耳を傾け、美しい水と環境を守る」というテーマや「日常的なものに非日常的な風景を織り込む」という表現のコンセプトが、素材の選択、構成及び位置付けにより具現化されている。前記aの共通点はいずれも「表現」であり、アイデアにすぎないと評価することはできない。 c 共通点と「創作性」 原告作品の前記aの表現のいずれについても、控訴人の個性すなわち創作性が発揮されている。 (イ)相違点の非本質性 a 相違点 原告作品と被告作品の各構成物のディテールには次のような相違が存在する。第1に、公衆電話ボックス様の造作の屋根の色が異なり、また、既製品の電話ボックスの部材を用いているか否かに相違がある。第2に、公衆電話機の色とタイプが異なっており、また、既製品の公衆電話機を用いているか否かに相違がある。第3に、公衆電話機の棚の色及び形状が異なっている。第4に、金魚の個体数とサイズに相違がみられる。 b 相違の評価 公衆電話ボックスについては、屋根の色を除き、外観上の相違はほとんどない。素材の材質や、既製品を利用したか否かは、著作権法上の保護とは無関係である。棚の色の違いは、水中に存在することも相まって、感じ取りにくく、形状も外観上大きな印象の違いを与えない。屋根の色と公衆電話機の色やタイプが外観上異なることは、表現のクオリティ(審美性の程度)に関わり、被告作品は原告作品を改悪したものといわざるを得ないが、本質的な差異を感じさせるものではない。金魚の個体数、サイズ、色彩模様については、生魚であることからもとより変動し得るものであり、個体数の差の存在も当然の前提であって、限られた範囲における些細な相違といえる。 (ウ)まとめ 原告作品と被告作品は、創作的表現である素材の選択、構成及び位置付けのほとんど全てが共通しており、作品鑑賞者に強いイメージを与えるのはこの点である。個々の構成物のディテールにおいて相違点が存在し、表現のクオリティ(審美性の程度)には影響を与えるものの、両作品の表現の本質に影響を与えるものではない。原告作品と被告作品には本質的な特徴の同一性が認められ、被告作品から原告作品の本質的特徴を感得することができる。したがって、被告作品は原告作品を複製したものである。 仮に、被告作品における公衆電話ボックスや公衆電話機、棚の形状・色等に創作性が認められるとしても、被告作品は原告作品と表現上の本質的特徴の同一性があり、原告作品の本質的な特徴を直接感得することのできるものであるから、被告作品は原告作品を翻案したものである。 イ 依拠 (ア)直接依拠 a 控訴人による抗議 控訴人は、平成24年7月、金魚部が前年におおさかカンヴァス2011に「テレ金」を展示したこと、平成24年のおおさかカンヴァスにも展示しようとしていることを知り、同年8月、著作権侵害であるとしておおさかカンヴァスの事務局に抗議し、また、金魚部にも抗議した。その後、金魚部が展示を辞退したとの連絡を事務局から受けた。 控訴人は、HANARART2013に「金魚電話」が展示されたことを知り、平成25年10月事務局に問い合わせ、抗議した。P4実行委員長からは、従前の控訴人との間のいきさつを聞いていたものの、コンセプトや目的が異なるものであり盗用ではないとの回答があった。控訴人は、この抗議を通じて金魚の会の存在と被控訴人P2のことを知り、同年12月頃、被控訴人P2にも抗議した。 控訴人は、平成26年2月22日に被告作品が本件喫茶店に展示されてからも、被控訴人P2に対して2、3回抗議した。 b 被控訴人らの認識 被控訴人P2は、金魚部の学生や、金魚部の指導者であり、かつ、HANARART2013で柳町商店街ゾーンのキュレーターを務めたP3教授と親交があり、「テレ金」にも関与していたし、金魚の会の代表として「金魚電話」の制作、展示にも関与している。したがって、被控訴人P2は控訴人の前記の抗議の経緯を把握しており、被告作品が控訴人の著作権を侵害し得るものであることを認識していた。被控訴組合も同様である。 (イ)間接依拠 被告作品は、金魚部が制作した「テレ金」を承継したものであり、金魚部の「テレ金」と被告作品を比較すると、気泡発生装置において違いはあるが、いずれも、原告作品との間において、表現の本質的特徴に同一性が認められる。そして、「テレ金」自体、次のとおり、原告作品に依拠した複製物又は翻案物であるから、被控訴人らは、被告作品が原告作品に依拠したものであることを否定できない。 すなわち、控訴人は、原告作品を多数回にわたり制作、展示し、それが各種メディアに掲載されているから、控訴人と同じ現代美術の作家である京都造形芸術大学のP3教授は、原告作品を知らなかったとは想定し難い。「テレ金」と原告作品との共通性が偶然のレベルを超えていることからすると、「テレ金」は原告作品から独立して着想されたものとは認められない。したがって、金魚部の指導者であるP3教授は、原告作品を認識し、これに依拠して、金魚部の学生に「テレ金」を制作させたものといえる。 ウ 著作権侵害行為 被控訴人らは、被告作品を制作して平成26年2月22日から平成30年4月10日まで本件喫茶店に展示することにより、原告作品についての控訴人の著作権(複製権又は翻案権)を侵害した。 【被控訴人らの主張】 原告作品は著作物ではないから、被告作品が控訴人の著作権を侵害することはないが、仮に著作物であるとしても、次のとおり、被控訴人らによる著作権の侵害はない。 ア 共通性について 原告作品と被告作品の共通点として控訴人が列挙している事由は、いずれも「電話ボックス内に金魚を遊泳させる」というアイデアに至った時点で必然的ないし自然かつ合理的に導き出される要素である。したがって、控訴人が「共通点」とする部分は、何ら控訴人の個性が現れたものではなく、創作性が肯定されるべきものではない。 他方で、原告作品の電話ボックスの屋根の色と公衆電話機の色は黄緑色で統一されており、控訴人自身、被控訴組合に対し、被告作品の公衆電話機を黄緑色のものに付け替えることを要求していたから、この色が控訴人にとって重要であったと推定される。被告作品の電話ボックスの屋根の色や公衆電話機の色は黄緑色ではないから、被告作品は控訴人の著作権を侵害しない。 イ 依拠について 被告作品は金魚部が制作した「テレ金」を金魚の会が承継し、これを更に被控訴人P2が承継したものである。被告作品を制作したのは金魚部であり、被控訴人らではない。金魚部の学生は、「テレ金」を制作する に当たり、原告作品の存在及び内容を認識していなかった。 原告作品はこれまで多数回にわたり展示されてきたと控訴人は主張するが、展示されたのはいずれも東京都、神奈川県、埼玉県、福島県の1都3県に限られている。各種メディアに掲載されてきたとも主張するが、これも地域紙が主である。全国規模のものとしては、平成10年から平成13年までに発行された週刊誌や小学生向けの新聞しかない。金魚部の学生や被控訴人らがこれらを認識し得たとはいえない。 被控訴人P2は、控訴人が「テレ金」についておおさかカンヴァス事務局に抗議したことを認識していなかったし、控訴人から直接抗議を受けたこともない。控訴人がHANARART2013事務局に抗議したことは後日聞いたが、内容は聞いておらず、既に対応済みであると聞いていた。 (3)著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の有無 【控訴人の主張】 ア 氏名表示権の侵害 被控訴人らは、平成26年2月22日から平成29年8月22日まで、控訴人の氏名を表示することなく、原告作品の複製物又は翻案物である被告作品を本件喫茶店に展示し、控訴人の氏名表示権を侵害した。 イ 同一性保持権の侵害 被告作品は、公衆電話ボックスの屋根の色、公衆電話機の色等が原告作品と異なっており、これは原告作品の著作者である控訴人の意に反する原告作品の改変である。被控訴人らは平成26年2月22日に被告作品を制作し、控訴人の同一性保持権を侵害した。 【被控訴人らの主張】 原告作品は著作物ではないから、被告作品が控訴人の著作者人格権を侵害することはないが、仮に著作物であるとしても、被控訴人らによる著作者人格権の侵害を争う。 (4)被控訴人らの故意、過失の有無 【控訴人の主張】 前記(2)の【控訴人の主張】イのとおり、被控訴人らは原告作品に依拠して被告作品を制作しているから、控訴人の著作権及び著作者人格権の侵害につき、故意があり、少なくとも過失がある。 【被控訴人らの主張】 前記(2)の【被控訴人らの主張】のとおり、被控訴人らは、原告作品の存在及び内容を認識し得なかったから、故意はもとより、過失もない。 (5)控訴人の損害 【控訴人の主張】 ア 利用料相当額100万円 被告作品による著作権侵害について、著作権法114条3項所定の控訴人が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(利用料)は、100万円を下らない。 イ 慰謝料200万円 被控訴人らの著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害する行為により、控訴人は精神的損害を被った。控訴人は現代美術家であり、原告作品はその代表作品であるが、被控訴人らは、控訴人が再三抗議したにもかかわらず、あえて被告作品の制作、展示に及び、その結果、かえって控訴人が「ものまね」などと誹謗中傷を受けることになった。控訴人は、被控訴組合との交渉を通じて、被控訴人らに対して発展的解決を提案したにもかかわらず、被控訴人らはこれを拒否した。これらの事情からすると、慰謝料の額は、氏名表示権及び同一性保持権の侵害それぞれにつき100万円(合計200万円)を下らない。 ウ 弁護士費用 30万円 エ 合計 330万円 【被控訴人らの主張】 ア 利用料相当額 控訴人は、その主張する利用料額が相当であることの客観的な根拠を主張しないから、当該損害は認められない。 イ 慰謝料 控訴人の主張する事由が慰謝料の発生根拠となる理由は不明である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 (1)原告作品の詳細と展示歴 ア 前記前提事実(2)のとおり、原告作品の外見は公衆電話ボックスに酷似したものであるが、控訴人が一から制作したものであり、電話ボックス様の造作水槽、その内部に設置された公衆電話機様の造作と棚、水槽を満たす水、水の中に泳ぐ主に赤色の金魚から成る。ただし、側面は4面とも全面がアクリルガラスであり、本物の電話ボックスであれば1つの面(出入口面)にある縦長の蝶番は存在しない。屋根は黄緑色である。内部には、支柱の1つに黄緑色で公衆電話機様の造作(以下、単に公衆電話機という。)が固定され、その少し下に、薄い灰色で正方形の棚が設置されている。公衆電話機の受話器は、受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生している。水は、電話ボックス全体を満たしているのではなく、上部にいくらかの空間が残されている。金魚の数は、展示をするごとに変動するが、少なくて50匹程度、多くて150匹程度である。(甲6の11、甲7の5〜7の9、甲16、18、25、49、甲51の1〜51の9、甲52、53、55、70) イ 控訴人は、平成10年に初めて、「メッセージ」と題する作品を発表した。これは原告作品に類する作品であるが、金魚ではなくメダカやタナゴを水中に泳がせたものである。水質汚濁を始めとする環境問題をテーマとし、遠隔地の水からの伝言を都心の電話ボックスで受信するというイメージを表現したものとして、「メッセージ」というタイトルを付けた。 控訴人は、平成12年12月から平成13年1月まで神奈川県三浦市で開催された現代美術展において、上記作品にメダカやタナゴではなく金魚を泳がせたもの(すなわち原告作品)を発表した。以後、原告作品を「メッセージ」として、次のとおりの時期と場所において開催された美術展等で展示をしている。(甲5、15、52、70)
(2)被告作品の詳細 ア 前記前提事実(3)のとおり、被告作品は、実際に使用されていた公衆電話ボックスの部材を利用して制作されたものであり、電話ボックス様の造作水槽、その内部に設置された公衆電話機と棚、水槽を満たす水、水の中に泳ぐ主に赤色の金魚から成る。側面は4面とも全面がアクリルガラスであり、本物の電話ボックスであれば1つの面(出入口面)にある縦長の蝶番は存在しない(もっとも平成26年2月22日に本件喫茶店で展示を始めた当初、縦長の蝶番を模した部材を1面に貼り付けていたが、その後取り外した。)。屋根は赤色である。内部には、支柱の1つに上下二段の水平の棚が設置され、上段に灰色の公衆電話機が置かれている。その機種は、原告作品の公衆電話機とは違うものである。棚の形状は、上段が正方形で、下段が三角形に近い六角形(野球のホームベースを縦方向に押しつぶしたような形状)である。受話器は、受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生している。水は、電話ボックス全体を満たしているように見える。金魚の数は、正確には不明であるが、原告作品におけるのとそれほど異ならない。(甲22、26、32) イ 前記前提事実(4)のとおり、被告作品は、金魚部が制作した「テレ金」を金魚の会(代表者は被控訴人P2)が譲り受け、これを更に被控訴人P2が譲り受けたものであり(現在の所有者は被控訴組合)、「テレ金」、「金魚電話」及び被告作品の構成要素は同じであるが、表現の細部には次のような相違がある。 「テレ金」は、泳いでいる金魚の数が約1000匹とされ、大阪カンヴァス2011の展示においても、「無数の金魚を遊泳させる作品」と説明されていた。気泡は、受話器から発生するだけでなく、床面辺りから大量に発生しており、受話器から発生している気泡はほとんど目立たない。水は、電話ボックス全体を満たしているのではなく、上部にいくらかの空間が残されている。(甲8、10、11、21、甲71の1、乙3の2) 「金魚電話」は、「テレ金」とほぼ同じ状態で展示されていた時もあったが、金魚の数が原告作品と同程度で、床面からの気泡の発生があまり見られない状態で展示されていたこともあった。(甲12、13、68、甲69の1〜69の3、甲71の2・3、乙5)。 被告作品は、電話ボックス内の水中に、公衆電話機以外にガラス製ひな人形やレゴブロック等の異物を入れていた時期もあるが、本件喫茶店における展示期間中のほとんどは、これらの異物は存在しなかった。また、被控訴人P2の説明によれば、気泡発生装置やろ過装置が「テレ金」、「金魚電話」と被告作品とでは異なるということであるが、それらの装置はほとんど目につかない。(乙6、被控訴人P2) (3)被告作品が本件喫茶店で展示されるまでの経緯(後掲の証拠のほか、甲70、乙6、控訴人本人、被控訴人P2) ア おおさかカンヴァス2011における「テレ金」の展示 被控訴人P2は、平成23年5月頃、金魚部のメンバーである京都造形芸術大学の学生と知り合い、また、その指導者であるP3教授と知り合った。同年6月頃にK-PoolProjectのメンバーが金魚の調査のために香港を訪問した際には、P3教授が同行した。同年10月のおおさかカンヴァス2011での展示に向けて金魚部が「テレ金」を制作した際、被控訴人P2は、学生たちに金魚店を紹介したり水槽店を紹介したりしてその制作を支援し、展示された「テレ金」も見に行った。 イ おおさかカンヴァス事務局に対する抗議 控訴人は、平成24年8月頃、金魚部が前年のおおさかカンヴァス2011に「テレ金」を展示したこと、平成24年のおおさかカンヴァスでも展示しようとしていることを知人からの連絡で知り、原告作品の著作権を侵害するものであるとしておおさかカンヴァスの事務局に抗議し、出品の停止を求め、原告作品の資料を送付した。そうしたところ、金魚部のメンバーから連絡があったため、控訴人は、「テレ金」の内容を変えるよう求めた。その後、金魚部が出品を辞退したとの連絡が事務局からあった。(甲71の1) ウ お城まつりにおける「テレ金」の展示と金魚部の活動停止 平成25年3月から4月にかけての「大和郡山お城まつり」で金魚部が「テレ金」を展示した際、被控訴人P2は、その設置を手伝った。その展示の後、P3教授から、持ち帰るのに費用が掛かるから近くに置いておきたいと言われたため、被控訴人P2は大和郡山市内に空き地を探し、そこに水を抜いた状態の「テレ金」を保管した。その後、金魚部は活動を停止した。(甲8、9、28、75) エ HANARART2013における「金魚電話」の展示 平成25年10月に大和郡山市でHANARART2013が開催された際、P3教授が柳町商店街のキュレーターになったことから、P4実行委員長は被控訴人P2に対し、「テレ金」を同商店街で展示することを提案した。被控訴人P2は、P3教授に話をした上で、自分が代表を務めて有志数名から成る金魚の会を結成し、金魚の会が金魚部から「テレ金」の部材を譲り受けた。 金魚の会は、HANARART2013において「金魚電話」を展示し、その際、被控訴人P2は、P3教授から、その展示方法等についてアドバイスを受けた。(甲14、乙5) オ HANARART2013実行委員長に対する抗議 控訴人は、平成25年12月、HANARART2013に「金魚電話」が展示されたことを知り、P4実行委員長に電話をして抗議した。控訴人は、P4実行委員長から、「金魚電話」が金魚の会の作品であること、その代表者が被控訴人P2であることと、被控訴人P2の電話番号を聞いた。そして、被控訴人P2に電話をかけて、抗議した。(甲71の2〜71の4、甲73、74) このころ、控訴人は、京都造形芸術大学にも連絡したが、大学からは「金魚部は解散した。金魚部と金魚の会は全く別であり、大学は金魚の会の『金魚電話』は一切関知していない。」との回答を得た。 カ 被告作品の制作と本件喫茶店での展示の開始 HANARART2013の終了後、被控訴人P2は、「金魚電話」から水を抜き、ブルーシートを掛けて保管していたが、平成26年2月22日、新たに水を入れて金魚を泳がせ、本件喫茶店において被告作品の展示を始めた。 この展示の開始に当たって、被控訴組合は、本件喫茶店を構成する旧ガソリンスタンドの改修等を行い、以後、被控訴組合が主体となって被告作品の展示を行うこととなった。(甲45) (4)その後の交渉と決裂 ア 平成27年10月26日、柳町商店街にある本件喫茶店での常設展示がテレビ報道されたところ、知人から連絡を受けた控訴人は、このことを知り、被控訴人P2に対し、抗議をした。 イ 控訴人は、奈良市在住の文筆家であるP5に仲介を依頼し、P5の仲介で、被控訴人P2、被控訴組合の理事長であったP6、本件喫茶店経営者のP7と、被告作品の展示の継続の可否や条件について話し合った。 その結果、平成29年8月21日以降、「金魚の電話ボックス『メッセージ』」と題する書面(甲16)を被告作品に掲示することとなった。 その文面は次のとおりである。 「金魚の電話ボックスは、福島県在住の現代美術作家・P1が、1998年、東京の美術展において『メッセージ』と題して世界で初めて発表しました。以来、数多くの美術展で展示されてきました。 『遠い地を流れる水の言葉に耳を傾け、美しい水と環境を守ろう』という願いが込められた作品です。この金魚の電話ボックスは、柳町商店街協同組合とP1のコラボレーション作品として、ここに常設されています。水と金魚の町・大和郡山にふさわしい現代美術作品です。」 さらに、上記文の下に、控訴人の経歴とともに原告作品のカラー写真が「『メッセージ』2013年伊達市立梁川美術館(福島県伊達市)」の説明文とともに掲載されていた。 ウ しかし、控訴人は、被告作品の公衆電話機や屋根の色が原告作品と異なることについて、同一性保持権を侵害していると考えていたため、上記説明文(甲16)の掲示では満足しておらず、被告作品の公衆電話機と屋根を、原告作品と同様の色にすることを強く求め(控訴人は「緑色」というが、本判決では「黄緑色」という。)、話し合いを続けた。しかし、その経過において、被控訴組合は、それまでの態度を変え、控訴人の著作権を認めず、被告作品の公衆電話機を黄緑色のものにすることを拒否するようになった。 控訴人は、大和郡山市にも仲裁を依頼し、副市長作成の協定案が示されたが、控訴人の著作権を認める内容でなかったため、平成29年12月28日、被控訴組合に対し、改めて、費用を控訴人が負担することなどを条件に、被告作品の公衆電話機と屋根を、原告作品と同様の黄緑色にすることなどを内容とする協定書案を提案したが(甲17)、被控訴組合は、平成30年4月10日、控訴人の要請を受け入れることを拒否する一方で、被告作品を撤去するに至った(甲20)。 なお、撤去した被告作品は、ブルーシートを掛けて、空き地に保管されている(被控訴人P226頁)。 2 争点(1)(著作物性) (1)著作物の要件について 控訴人は、原告作品が著作権法10条1項4号にいう「美術の著作物」に該当すると主張する。 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいうから(同法2条1項1号)、ある表現物が著作物として同法上の保護を受けるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければならない。第1に、思想又は感情自体ではなく「表現したもの」でなければならないということであり、第2に、「創作的に表現したもの」でなければならないということである。そして、創作性があるといえるためには、当該表現に高い独創性があることまでは必要ないものの、創作者の何らかの個性が発揮されたものであることを要する。表現がありふれたものである場合、当該表現は、創作者の個性が発揮されたものとはいえず、「創作的」な表現ということはできない。また、ある思想ないしアイデアの表現方法がただ1つしか存在しない場合、あるいは、1つでなくとも相当程度に限定されている場合には、その思想ないしアイデアに基づく表現は、誰が表現しても同じか類似したものにならざるを得ないから、当該表現には創作性を認め難い。 原告作品は、その外見が公衆電話ボックスに酷似したものであり、その点だけに着目すれば、ありふれた表現である。そこで、これに水を満たし、金魚を泳がせるなどしたことにより、原告作品に創作性が認められるかが問題となる。 (2)原告作品の著作物性について 原告作品のうち本物の公衆電話ボックスと異なる外観に着目すると、次のとおりである。 第1に、電話ボックスの多くの部分に水が満たされている。 第2に、電話ボックスの側面の4面とも、全面がアクリルガラスである。 第3に、その水中には赤色の金魚が泳いでおり、その数は、展示をするごとに変動するが、少なくて50匹、多くて150匹程度である。 第4に、公衆電話機の受話器が、受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生している。 そこで検討すると、第1の点は、電話ボックスを水槽に見立てるという斬新なアイデアを形にして表現したものといえるが、表現の選択の幅としては、入れる水の量をどの程度にするかということしかない。また、公衆電話ボックスが水槽化していることが鑑賞者に強烈な印象を与えるのであって、水の量が多いか少ないかに特に注意を向ける者が多くいるとは考えられない。したがって、電話ボックスを水槽に見立てるというアイデアを表現する方法には広い選択の幅があるとはいえないから、電話ボックスに水が満たされているという表現だけを見れば、そこに創作性があるとはいい難い。 第2の点は、本物の公衆電話ボックスと原告作品との相違であるが、出入口面にある縦長の蝶番は、それほど目立つものではなく、公衆電話を利用する者もその存在をほとんど意識しない部位である。したがって、鑑賞者にとっても、注意をひかれる部位とはいい難く、この縦長の蝶番が存在しないという表現(すなわち、電話ボックスの側面の全面がアクリルガラスであるという表現)に、原告作品の創作性が現れているとはいえない。 第3の点は、これも斬新なアイデアを形にして表現したものである。そして、金魚には様々な種類があり、種類によって色が異なるものがあるから(公知の事実)、泳がせる金魚の色と数の組み合わせによって、様々な表現が可能である。実際、1000匹程度の金魚を泳がせていた「テレ金」は、床面辺りから大量の気泡が発生していることと相まって、原告作品とはかなり異なった印象を鑑賞者に与える作品であると評価することができ、その表現に原告作品との相違があることは明らかである。もっとも、このように表現の幅がある中で、原告作品における表現は、水中に50匹から150匹程度の赤色の金魚を泳がせるという表現方法を選択したのであるが、水槽である電話ボックスの大きさとの対比からすると、ありふれた数といえなくもなく、そこに控訴人の個性が発揮されているとみることは困難であり、50匹から150匹程度という金魚の数だけをみると、創作性が現れているとはいえない。 第4の点は、人が使用していない公衆電話機の受話器はハンガー部に掛かっているものであり、それが水中に浮いた状態で固定されていること自体、非日常的な情景を表現しているといえるし、受話器の受話部から気泡が発生することも本来あり得ないことである。そして、受話器がハンガー部から外れ、水中に浮いた状態で、受話部から気泡が発生していることから、電話を掛け、電話先との間で、通話をしている状態がイメージされており、鑑賞者に強い印象を与える表現である。したがって、この表現には、控訴人の個性が発揮されているというべきである。 被控訴人らは、金魚を泳がせるためには水中に空気を注入する必要があり、かつ、受話器は通気口によって空気が通る構造をしているから、受話器から気泡が発生するという表現は、電話ボックスを水槽にして金魚を泳がせるというアイデアから必然的に生じる表現であると主張する。しかし、水槽に空気を注入する方法としてよく用いられるのは、水槽内にエアストーン(気泡発生装置)を設置することである。また、受話器は、受話部にしても送話部にしても、音声を通すためのものであり、空気を通す機能を果たすものではないから、そこから気泡が出ることによって、何らかの通話(意思の伝達)を想起させるという表現は、暗喩ともいうべきであり、決してありふれた表現ではない。したがって、受話器の受話部から気泡が発生しているという原告作品の表現に創作性があることは否定し難い。 なお、第1から第4までの点のほかに、控訴人は、原告作品が環境問題をテーマとしていることから、公衆電話機の色と電話ボックスの屋根の色がいずれも黄緑色であることを特に重視している(控訴人本人)。しかし、原告作品は、実際に存在するいくつかの公衆電話ボックスの中から選択したものとほぼ同じ外観をした水槽から成るところ、公衆電話機の色と屋根の色が黄緑色のものはよく見られるところであるから(公知の事実)、この点だけをみる限り、そこに創作性を認めることはできない。 以上によれば、第1と第3の点のみでは創作性を認めることができないものの、これに第4の点を加えることによって、すなわち電話ボックス様の水槽に50匹から150匹程度の赤色の金魚を泳がせるという状況のもと、公衆電話機の受話器が、受話器を掛けておくハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生しているという表現において、原告作品は、その制作者である控訴人の個性が発揮されており、創作性がある。このような表現方法を含む1つの美術作品として、原告作品は著作物性を有するというべきであり、美術の著作物に該当すると認められる。 なお、被控訴人らは、水槽以外の物を水槽化して金魚を泳がせるという表現は大和郡山市内では多数みられ、ありふれたものであると主張する。しかし、平成12年に原告作品が公表される前からそれらの作品が作成されていたと認めるべき証拠はなく、原告作品や、「テレ金」、「金魚電話」又は被告作品が公表された後、それらに触発されて作成されたということが十分に考えられるから、被控訴人らの上記指摘をもって、原告作品をありふれたものということはできない。 3 争点(2)(著作権侵害) (1)同一性又は類似性について ア 共通点 原告作品と被告作品の共通点は次のとおり(以下「共通点@」などという。)である。 @ 公衆電話ボックス様の造作水槽(側面は4面とも全面がアクリルガラス)に水が入れられ(ただし、後記イEを参照)、水中に主に赤色の金魚が50匹から150匹程度、泳いでいる。 A 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生している。 イ 相違点 原告作品と被告作品の相違点は次のとおり(以下「相違点@」などという。)である。 @ 公衆電話機の機種が異なる。 A 公衆電話機の色は、原告作品は黄緑色であるが、被告作品は灰色である。 B 電話ボックスの屋根の色は、原告作品は黄緑色であるが、被告作品は赤色である。 C 公衆電話機の下にある棚は、原告作品は1段で正方形であるが、被告作品は2段で、上段は正方形、下段は三角形に近い六角形(野球のホームベースを縦方向に押しつぶしたような形状)である。 D 原告作品では、水は電話ボックス全体を満たしておらず、上部にいくらかの空間が残されているが、被告作品では、水が電話ボックス全体を満たしている。 E 被告作品は、平成26年2月22日に展示を始めた当初は、アクリルガラスのうちの1面に縦長の蝶番を模した部材が貼り付けられていた。 ウ 検討 控訴人は、複製権又は翻案権の侵害を主張している。 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを有形的に再製すること(著作権法2条1項15号)をいい、著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁、最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。 依拠については後記(3)において検討することとし、ここではそれ以外の要件について検討する。 共通点@及びAは、原告作品のうち表現上の創作性のある部分と重なる。なお、被告作品は、平成26年2月22日に展示を開始した当初は、アクリルガラスのうちの1面に、縦長の蝶番を模した部材を貼り付けていた(相違点E)。しかし、前記のとおり、この蝶番は目立つものではなく、公衆電話を利用する者にとっても、鑑賞者にとっても、注意をひかれる部位とはいえないから、この点の相違が、共通点@として表れている原告作品と被告作品の共通性を減殺するものではない。 一方、他の相違点はいずれも、原告作品のうち表現上の創作性のない部分に関係する。原告作品も被告作品も、本物の公衆電話ボックスを模したものであり、いずれにおいても、公衆電話機の機種と色、屋根の色(相違点@〜B)は、本物の公衆電話ボックスにおいても見られるものである。公衆電話機の下の棚(相違点C)は、公衆電話を利用する者にしても鑑賞者にしても、注意を向ける部位ではなく、水の量(相違点D)についても同様であることは前記のとおりである。すなわち、これらの相違点はいずれもありふれた表現であるか、鑑賞者が注意を向けない表現にすぎないというべきである。 そうすると、被告作品は、原告作品のうち表現上の創作性のある部分の全てを有形的に再製しているといえる一方で、それ以外の部位や細部の具体的な表現において相違があるものの、被告作品が新たに思想又は感情を創作的に表現した作品であるとはいえない。そして、後記(3)のとおり、被告作品は、原告作品に依拠していると認めるべきであり、被告作品は原告作品を複製したものということができる。 仮に、公衆電話機の種類と色、屋根の色(相違点@〜B)の選択に創作性を認めることができ、被告作品が、原告作品と別の著作物ということができるとしても、被告作品は、上記相違点@からBについて変更を加えながらも、後記(3)のとおり原告作品に依拠し、かつ、上記共通点@及びAに基づく表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、原告作品における表現上の本質的な特徴を直接感得することができるから、原告作品を翻案したものということができる。 (2)被告作品の制作者について 被告作品は、電話ボックス様の造作水槽に水を入れ、金魚を泳がせ、受話器を水中に浮かせた状態で固定してその受話部から気泡を発生させることで制作することができるから、平成26年2月22日に本件喫茶店で展示をするに当たってこれらの作業をすることにより、被控訴人P2は被告作品を制作したということができる(前記2(2)のとおり、金魚の数によっては、異なる著作物ということができる。)。 また、前記認定事実(3)カによれば、平成26年2月22日に本件喫茶店で被告作品の展示を開始するに当たり、被控訴組合は、本件喫茶店を構成する旧ガソリンスタンドの改修等を行い、後に被告作品を構成する電話ボックス様の造作水槽等の所有権を取得していることからしても、被控訴組合は、この展示の当初から主体的に関与していたと認められる。 以上のとおり、被告作品を本件喫茶店の屋外部分に設置し、展示をすることを主体的に行ったのは被控訴組合であり、被控訴人P2はその意向に沿って、被告作品を制作したものであるから、被控訴組合が主体となって、被控訴人P2と共同して、被告作品を制作したということができる。 (3)依拠について 前記認定事実(3)イのとおり、控訴人は、平成24年8月頃、「テレ金」についておおさかカンヴァス事務局に抗議して出品の停止を求め、原告作品の資料を送付したところ、金魚部のメンバーから控訴人に連絡があったため、控訴人は「テレ金」の内容を変えるように求めた。そして、金魚部は、平成24年のおおさかカンヴァスへの「テレ金」の出品を辞退した。この経緯からすると、金魚部のメンバーは、遅くともこの時までに原告作品の存在を知り、その制作者である控訴人が、「テレ金」が控訴人の著作権を侵害するとの主張をしていることを知ったと認められる。同時に、金魚部の指導者であるP3教授もまた、同様の認識を持ったと認められる。 前記認定事実(3)オのとおり、控訴人は、平成25年12月、HANARART2013のP4実行委員長に対し、「金魚電話」が控訴人の著作権を侵害しているとして抗議し、また、被控訴人P2に対しても同様の抗議をした。これは控訴人が本人尋問において供述するところであるが、これに対し、被控訴人P2は、本人尋問において、控訴人と話をしたことはなく、原告作品のことも知らなかったと供述する。しかし、被控訴人P2は、平成23年5月頃にはP3教授及び金魚部のメンバーと知り合い、以後、継続して関係を持っていた。また、被控訴人P2は、「テレ金」の部材を金魚部から承継した金魚の会の代表者でもあり、HANARART2013で「金魚電話」を展示するに当たっても、P3教授と話をし、その展示に関してアドバイスまで受けている(前記認定事実(3)ア、ウ、エ)。さらに、HANARART2013のP4実行委員長は、控訴人からの抗議に対する控訴人宛ての回答書(甲14)において、「以前のP1(控訴人)との間のいきさつもある程度聞き及んではおりましたが」と記載しており、ここにいう「いきさつ」は「テレ金」に対する控訴人の抗議のことを意味すると解するほかない。「金魚電話」を担当したわけでもないP4実行委員長が控訴人の抗議のことを聞き及んでいる以上、「金魚電話」の直接の担当者で、金魚部のメンバーやP3教授と親交のある被控訴人P2が聞き及んでいなかったとは考え難いことである。これらのことからすると、被控訴人P2の前記供述を信用することはできず、事実は控訴人の供述するとおりであると認められる。 そうすると、被控訴人P2は、遅くとも平成25年12月までに、原告作品のことを知り、かつ、これについて美術家である控訴人が著作権を主張していることも知ったと認められる。 なお、被控訴人らは、被告作品は、金魚部が制作した「テレ金」を承継したものであるから、被告作品を制作しておらず、金魚部の学生は原告作品の存在及び内容を認識していなかったから、原告作品に依拠した事実はないと主張する。 しかし、前記(2)のとおり、被告作品の制作者は、被控訴人らであるということができる。また、次に述べるとおり、金魚部の学生が制作した「テレ金」も、原告作品に依拠したものであると推認することができる。 すなわち、原告作品を制作した平成12年12月頃、前記(1)の共通点を備えた作品はもとより、公衆電話ボックスを水槽に見立てた作品が存在したと認めるに足りる証拠はない。上記作品の基礎となったアイデア自体斬新といえるが、これに伴う前記(1)の共通点@に加え、創作性の根拠となった共通点Aを備えたものが独立して制作されることは経験則上ないといってよいと考える。原告作品が展示されたり、報道されたりした状況は、前記認定事実(1)のとおりであるが、上記「テレ金」制作に関わった人物たちは、美術を専攻する者であったことを考えると、原告作品を紹介する媒体やこれに関する情報に接する機会は多いといえる。また、原告作品と被告作品との相違点は、前記(1)のとおりであるが、そのような相違点が生じたのは、たまたま、金魚部が、使用されなくなった電話ボックスを入手し、これを使用して「テレ金」を制作し、これが被告作品に受け継がれたという経緯に基づくものであり、新たな創作を加えたというような状況はない。また、原告作品と「テレ金」との間には、金魚の数や気泡発生装置を別途備える点の相違点があるが、この相違点は、金魚の数が多かったため、気泡発生装置を別途備える必要があったことに基づくものに過ぎない。このような事情を併せ考慮すると、「テレ金」は、原告作品に依拠して制作されたものと推認することが可能である。 なお、被控訴人P2は、前記認定事実(3)アのとおり、金魚部が制作した(被告作品の身ともいうべき)「テレ金」の最初の制作段階から、関与していたことが認められるが、その制作過程における状況について、具体的な制作状況を供述しているわけではない。 また、前記認定事実(3)イのとおり、控訴人が、おおさかカンヴァス2011の事務局に抗議するとともに、金魚部のメンバーに対し、「テレ金」の内容を変えるよう求めたところ、特段の反論もなく、金魚部の方から出品を辞退した。 以上の事情を総合すると、被告作品が「テレ金」を承継するものであることを理由として依拠を否定することはできず、被控訴人らは被告作品を制作するに当たり原告作品に依拠したと認めることができる。 (4)まとめ 被控訴人らは、平成26年2月22日に被告作品を制作したことにより、控訴人の著作権を侵害したと認められる。 4 争点(3)(著作者人格権侵害) (1)氏名表示権侵害について 被控訴人らは、平成26年2月22日から平成29年8月22日まで、控訴人の氏名を表示することなく、原告作品の複製物である被告作品を本件喫茶店に展示したから、この間の展示について控訴人の氏名表示権を侵害したと認められる。 (2)同一性保持権侵害について 被告作品は原告作品の複製物であり、前記3(1)イのとおり、その具体的表現において原告作品と異なっている部分がある。被控訴人らは被告作品を制作するに当たり原告作品を改変したと認められ、また、これは、少なくとも、公衆電話機及び電話ボックスの屋根の色が黄緑色ではないという点で、これらの色が黄緑色であることを重視する控訴人の意に反する改変である。 したがって、被控訴人らは、被告作品を制作することにより控訴人の同一性保持権を侵害したと認められる。 5 差止請求及び廃棄請求の必要性について 被告作品を構成する部材は現在、解体されることなく、水を抜いた状態で、その所有者である被控訴組合が保管している。被控訴人らは、これを水で満たし、金魚を泳がせること等により、被告作品と同じものを容易に制作することができる状況にある。 前記のとおり、被控訴人らは原告作品についての控訴人の著作権及び著作者人格権を侵害した。上記の経過からすれば、被控訴人らは、容易に被告作品を制作することにより、控訴人のこれらの権利を再び侵害するおそれがないとはいえず、控訴人が被控訴人らに対し、侵害の予防として、被告作品の制作の差止めを求める必要があることは否定できない。また、控訴人の権利の実効的な救済を図るためには、被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の所有者である被控訴組合に対し、その廃棄を求める必要があるというべきである。 6 争点(4)(故意、過失) 前記のとおり、被控訴人らは原告作品に依拠して被告作品を制作したのであり、また、被控訴人P2はその制作に先立ち、控訴人から、「テレ金」や「金魚電話」が原告作品についての控訴人の著作権を侵害するという抗議を受けていた。そして、被控訴組合も、平成26年2月22日に被告作品が本件喫茶店において展示された時からこれに関与していた。これらのことからすると、本件における著作権侵害及び著作者人格権侵害について、被控訴人らにはいずれも、少なくとも過失があったと認められる。 7 争点(5)(損害) (1)著作権侵害による損害25万円 前記認定事実(1)イのとおり、原告作品は、平成12年から平成30年まで、美術展等で何度も展示された実績のある美術作品であるから、その展示について利用料が発生し得る著作物といえる。しかし、これらの展示において控訴人にいくらの利用料が支払われたのかに関する客観的な証拠は提出されておらず、また、原告作品に類する美術作品の利用料に関する証拠も一切提出されていない。一方、控訴人の著作権を侵害する被告作品が展示された期間は平成26年2月22日から平成30年4月10日まで4年以上の長期間に及ぶが、原告作品に類する美術作品が、所蔵品の展示とは異なり、利用料の発生する状況下で、このように長い期間に渡って同じ場所で展示されることはまれであると考えられるし、その場合の利用料がいかなるものであるかも、個々の事情によって大きく異なると考えられる。 また、前記認定事実(4)のとおり、被告作品の展示方法について、控訴人と被控訴人らとの間で協議され、一旦は、平成29年8月21日以降、「金魚の電話ボックス『メッセージ』」と題する書面(甲16)を掲示するようになったものの、納得のいかなかった控訴人から、同年12月28日、改めて、被控訴組合に対し協定書案(甲17)を提出したところ、被控訴組合が上記提案を拒否し、平成30年4月10日、被告作品を撤去するに至ったという経緯がある。このような経緯に照らすと、協議の期間中、控訴人は、権利行使を控えていたということがいえる。 以上のことからすると、原告作品の過去の展示についての利用料に関する客観的な証拠が提出されたとしても、それに基づいた計算により本件における利用料相当額を認定することは困難である。 したがって、本件は、原告作品の利用料相当額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難な場合に当たるから(著作権法114条の5)、原告作品の内容、性格を中心に、本件における全ての事情を考慮し、上記期間全体を通じた著作権(複製権)の侵害による利用料相当損害額を25万円と認定する。 (2)著作者人格権侵害による損害25万円 前記認定事実(1)イのとおり、控訴人は、平成10年に初めて発表した「メッセージ」という作品を基にして、平成12年12月までに原告作品を完成させ、これを平成30年までに何度も美術展等で展示してきた。その内容、性格に加え、この展示の経緯をも踏まえると、原告作品は、現代美術家である控訴人にとって極めて重要な作品であると認められる。 以上に加え、被控訴人らが控訴人の著作者人格権のうち氏名表示権及び同一性保持権を侵害したことを考慮し、著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害によって控訴人が受けた精神的苦痛を慰謝するために必要な金額を25万円と認定する。 (3)弁護士費用5万円 本件の事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して、弁護士費用として相当と認められる額を5万円と認定する。 (4)賠償額合計55万円 (5)遅延損害金について 控訴人は、被告作品が制作され、本件喫茶店において展示された平成26年2月22日から遅延損害金を請求している。しかし、被告作品による控訴人の著作権及び著作者人格権の侵害は、本件喫茶店における展示期間の全体を通じて行われたものであるから、遅延損害金は、その終期である平成30年4月10日以降の請求に限って認容すべきである。 8 結論 以上によれば、控訴人の請求のうち、@被控訴人らに対する被告作品の制作差止めの請求、A被控訴組合に対する被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の廃棄請求はいずれも理由があり、B被控訴人らに対する損害賠償請求は、損害賠償金55万円及びこれに対する平成30年4月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める限度で理由があり、その余は理由がない。原判決のうち以上と異なる部分は不当であり、本件控訴はこれをいうものとして理由があるから、上記のとおり原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 倉地康弘 裁判官 三井教匡 |
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