判例全文 line
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【事件名】投資運営サイトの著作権帰属事件(2)
【年月日】令和2年10月28日
 知財高裁 令和元年(ネ)第10071号 著作権侵害差止等請求控訴事件
 (原審・大阪地裁平成30年(ワ)第5427号)
 (口頭弁論終結日 令和2年8月31日)

判決
控訴人 BことX
被控訴人 有限会社ピー・エム・エー
被控訴人 Y1
被控訴人 株式会社インターステラー
被控訴人 Y2
被控訴人 Y3
上記5名訴訟代理人弁護士 日隈将人


主文
1 被控訴人有限会社ピー・エム・エー、被控訴人Y1及び被控訴人Y2は、各自15万円及びこれに対する平成30年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 控訴人の当審における追加請求のうち、別紙映画目録記載の各DVD等に係る差止等請求及び損害賠償請求に関する部分の訴えの変更を許さない。
3 控訴人の当審におけるその余の追加請求(拡張請求を含む。)をいずれも棄却する。
4 本件控訴を棄却する。
5 当審における訴訟費用は、控訴人と被控訴人有限会社ピー・エム・エー、被控訴人Y1及び被控訴人Y2との間に生じたものは、これを200分し、その1を上記被控訴人らの負担とし、その余を控訴人の負担とし、控訴人と被控訴人株式会社インターステラー及び被控訴人Y3との間に生じたものは、控訴人の負担とする。
6 この判決の第1項は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 ウェブページに係る差止等請求
(1)被控訴人らは、別紙ウェブサイト目録1ないし3記載のウェブサイトの各ウェブページを複製、翻案又は公衆送信してはならない。
(2)被控訴人らは、前記(1)の各ウェブページを削除せよ。
(控訴人は、当審において、別紙ウェブサイト目録3記載のウェブサイトの各ウェブページに係る上記差止請求及び削除請求を追加した。)
3 プログラムデータに係る差止等請求(当審における追加請求)
(1)被控訴人らは、別紙サーバーデータ群目録1ないし7記載の各プログラム等のデータを複製、翻案又は公衆送信してはならない。
(2)被控訴人らは、前記(1)のデータを削除せよ。
4 ユーザーデータに係る差止等請求(当審における追加請求)
(1)被控訴人らは、別紙ユーザー目録記載の各ユーザーのデータを複製、翻案又は公衆送信してはならない。
(2)被控訴人らは、前記(1)のデータを削除せよ。
5 画像データに係る差止等請求(当審における追加請求)
(1)被控訴人らは、別紙画像目録1ないし18記載の各画像のデータを複製、翻案又は公衆送信してはならない。
(2)被控訴人らは、前記(1)のデータを削除せよ。
6 DVD等に係る差止等請求(当審における追加請求)
(1)被控訴人らは、別紙映画目録記載の各DVD等のデータを複製、翻案又は公衆送信してはならない。
(2)被控訴人らは、前記(1)のデータを削除せよ。
7 損害賠償等請求
 被控訴人らは、控訴人に対し、各自6500万円及びこれに対する平成30年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (控訴人は、当審において、著作権侵害及び著作者人格権に基づく損害賠償請求(慰謝料を含む。)を拡張及び追加し、調査費用等請求を拡張した。)
第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)
1 事案の要旨
(1)本件は、被控訴人有限会社ピー・エム・エー(以下「被控訴人ピー・エム・エー」という。)の委託を受けて、「1risekabu.com」ドメインのウェブサイト(以下「原告制作ウェブサイト」という。)を制作した控訴人が、被控訴人ピー・エム・エー及びその取締役である被控訴人Y1、同取締役であった被控訴人Y2、被控訴人株式会社インターステラー(以下「被控訴人インターステラー」という。)及びその取締役である被控訴人Y3に対し、被控訴人らが別紙ウェブサイト目録1記載のウェブサイト(「risekaubu.com」ドメインのウェブサイト。以下「被告ウェブサイト」という。)及び同目録2記載のウェブサイト(「plusone.socialcast.jp」ドメインのウェブサイト。以下「本件動画ウェブサイト」という。)を制作して公開した行為が、控訴人が保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物(イラスト、URL名、タイトル名、写真、プログラム等)の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)の侵害並びに一般不法行為に当たるなどと主張して、著作権法112条1項及び2項に基づき、被告ウェブサイト及び本件動画ウェブサイトの各ウェブページの複製等の差止め及び削除を、民法709条、719条又は会社法429条1項に基づく損害賠償等の一部である1260万円(控訴人と被控訴人ピー・エム・エー間の原告制作ウェブサイト等に関する制作・保守業務委託契約(以下「本件保守業務委託契約」という。)に基づく未払報酬77万7600円及び違約金25万9200円を含む。)及びこれに対する平成30年7月14日(被控訴人らに対する最終の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分(以下、単に「民法所定の年5分」という。)の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
 原審は、@原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権は全て被控訴人ピー・エム・エーに帰属し、また、仮にその一部につき控訴人が著作権を有するとしても、控訴人がその著作権を行使することは権利の濫用に当たる、A本件動画ウェブサイトと原告制作ウェブサイト及び被告ウェブサイトとは、内容も形式も全く異なるから、本件動画ウェブサイトの制作が控訴人の著作権侵害となる余地はない、B控訴人主張の本件保守業務委託契約に基づく未払報酬及び違約金は認められないなどと判断し、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人は、原判決を不服として本件控訴を提起した。
(2)控訴人は、当審において、@原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害に基づく差止等請求として、別紙ウェブサイト目録3記載のウェブサイト(「marqs.co.jp/test/rise_new/」ドメインのウェブサイト。以下「旧被告ウェブサイト」という。)の各ウェブページの複製等の差止請求及び削除請求、別紙サーバーデータ群目録1ないし7記載の各プログラム等のデータ(以下「本件各データ」と総称し、同目録記載の番号に応じてそれぞれを「本件データ1」などという。)の複製等の差止請求及び削除請求、別紙ユーザー目録記載の各ユーザーのデータ(以下「本件会員情報」という。)の複製等の差止請求及び削除請求を追加し、A控訴人が撮影した写真の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)及び著作者人格権(公表権及び氏名表示権)の侵害に基づく差止等請求として、別紙画像目録1ないし18記載の各画像(以下「本件各画像」と総称し、同目録記載の番号に応じてそれぞれを「本件画像1」などという。)のデータの複製等の差止請求及び削除請求を追加し、B控訴人が制作したDVD等の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害に基づく差止等請求として、別紙映画目録記載の各DVD等(以下「本件DVD」という。)の各データの複製等の差止請求及び削除請求を追加し、C損害賠償等請求の請求額を6500万円及びこれに対する遅延損害金に増額(原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権侵害及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求(慰謝料を含む。)、本件各画像の著作者人格権侵害に基づく慰謝料請求、本件DVD等の著作権侵害及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求(慰謝料を含む。)を拡張及び追加並びに調査費用等請求を拡張)する旨の訴えの変更をした。
 これに対し被控訴人らは、答弁書及び「被控訴人ら準備書面1」をもって、上記訴えの変更のうち、本件DVDに係る差止等請求及び損害賠償請求に関する部分について、訴えの変更を認めることは、被控訴人らの審級の利益を害し、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとして異議を述べた。
2 前提事実(証拠の摘示のない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)
(1)当事者
ア 控訴人は、「B」の屋号で、映像製作等を業として営む者である。
イ 被控訴人ピー・エム・エーは、平成12年3月16日に設立された、個人及び企業の経営活性化のための人材育成、研修業務等を目的とする特例有限会社である。
 被控訴人Y1は、被控訴人ピー・エム・エーの取締役(平成21年6月1日から平成30年4月30日までの間は代表取締役)である。
 被控訴人Y2は、平成21年6月1日から平成30年4月30日までの間、被控訴人ピー・エム・エーの取締役であった。
ウ 被控訴人インターステラ―は、平成30年5月1日に設立された、インターネットを利用した各種情報提供サービス業務等を目的とする株式会社である。
 被控訴人Y2は、被控訴人インターステラ−の代表取締役であり、被控訴人Y3は、同取締役である。
(2)原告制作ウェブサイトについて
ア 原告制作ウェブサイトの制作の経緯
(ア)被控訴人ピー・エム・エーは、平成20年頃、株相場等に関する投資知識を教授する会員制のスクール(名称「ライズ株式スクール」。以下「本件スクール」という。)を開設し、本件スクールの広告及び集客用のウェブサイト(以下「旧ウェブサイト」という。甲10)を運営するようになった。
 旧ウェブサイトは、被控訴人ピー・エム・エーの委託により、彩登株式会社(以下「彩登」という。)が制作したものであり、旧ウェブサイトに係るサーバーは株式会社ユウシステム(以下「ユウシステム」という。)が管理していた。
(イ)控訴人は、平成27年11月頃、被控訴人ピー・エム・エーの委託を受けて、旧ウェブサイトに係るサーバーのデータをエックスサーバー株式会社(以下「エックスサーバー社」という。)が管理するレンタルサーバー(「risekabu.xsrv.jp」ドメインのサーバー。以下「本件サーバ」という。)に移行した。本件サーバのレンタル契約は、控訴人が自己の名義でエックスサーバー社と締結した。
(ウ)控訴人と被控訴人ピー・エム・エーは、平成28年1月6日付け「Webサイト制作・保守業務委託契約書」(甲146。以下「本件保守契約書」という。)をもって、本件保守業務委託契約を締結した。
 その後、被控訴人ピー・エム・エーは、同年4月22日付けの「御注文書」(以下「本件注文書」という。甲13)をもって、控訴人に対し、旧ウェブサイトを全面的にリニューアルしたウェブサイトの制作を代金324万円で発注し、控訴人と被控訴人間でその旨の契約(以下「本件制作業務委託契約」という。)を締結した。
 控訴人は、本件制作業務委託契約に基づき、原告制作ウェブサイト(甲46の2)を制作した。
 被控訴人ピー・エム・エーは、同年10月3日、原告制作ウェブサイトを公開した。
 原告制作ウェブサイトのデータは、本件サーバに記録された。
イ 原告制作ウェブサイトの概要
(ア)原告制作ウェブサイトは、控訴人がプログラム言語を「PHP」とし、データベースシステムを「MySQL」として構成されているブログ作成用プログラムであるワードプレス(WordPress)を用いて作成したものであり、原告制作ウェブサイトには、フレームの中に各種文章、図形、画像などが表示されている(甲46の2、59の1ないし5、60の1ないし5、61の1及び2、79の1ないし4、86の1及び2、127、128等)。
 原告制作ウェブサイトの動作を制御するプログラム(以下「本件プログラム」という。)は、「index.php」(甲40)、「common.css」(甲104)、「style.css」(甲36)、「member-top.css」(甲106)、「functions.php」(甲38)、「footer.php」(甲88)などのほか、原告制作ウェブサイト用データベース(以下「本件データベース」という。)を管理する「risekabu_renew.sql」(甲235)などの各種プログラムファイルから構成されている。
(イ)別紙サーバーデータ群目録1ないし7記載の本件各データは、本件プログラムの一部を構成するものである。
 本件データ1は、原告制作ウェブサイトでグーグルマップサービスが利用できるようにするためのAPIキーである(甲40〔16行目〕)。
 本件データ2は、原告制作ウェブサイトでグーグルのサービスにより統計がとれるようにするためのIDである(甲40〔90〜96、617〜620行目〕)。
 本件データ3ないし5(甲86の3、87の1、127等)は、控訴人が原告制作ウェブサイト作成に当たって購入したウェブページのテーマ(ウェブサイトのデザイン部分)に関するプログラムなどワードプレスのプラグインプログラムである。
 本件データ6及び7は、アドビ社が提供するフォントを表示させるためのアカウント及びIDである(甲38〔311〜312行目〕、甲40〔613〜614行目〕、104〔2行目、492行目〕、甲106〔27行目、33行目、66行目〕)。
(ウ)別紙ユーザー目録記載の本件会員情報は、本件データベースに記録されている被控訴人ピー・エム・エーの会員に係る個人情報である(甲97)。
(エ)別紙画像目録1ないし18記載の本件各画像は、控訴人が撮影した写真の画像であり、原告制作ウェブサイトに表示されている(甲44)。
(3)被告ウェブサイト等について
ア 被告ウェブサイト等の制作の経緯
(ア)被控訴人ピー・エム・エーは、平成29年9月頃、MARQS株式会社(以下「マークス社」という。)に委託して、動画の販売及び限定公開機能を有する動画配信システムのソーシャルキャストを利用して本件スクールの授業内容の動画を会員に配信するウェブサイト(「risekabu.socialcast.jp」ドメインのウェブサイト。以下「旧動画ウェブサイト」という。)を制作し、その頃、動画の配信サービスを開始した。
 また、被控訴人ピー・エム・エーは、同月頃、マークス社に対し、原告制作ウェブサイトのリニューアルを依頼し、マークス社は、「marqs.co.jp/test/rise_new/」ドメインのウェブサイト(以下「旧被告ウェブサイト」という。甲336の1ないし12)を制作した。旧被告ウェブサイトに係るデータは、さくらインターネット株式会社(以下「さくらインターネット」という。)が管理するレンタルサーバーに記録された。上記サーバーのレンタル契約は、マークス社が自己名義でさくらインターネットと締結していた(乙33)。
(イ)本件サーバは、平成29年12月12日、同年11月30日利用期限の本件サーバの更新費用の未払のために、エックスサーバー社によって凍結され、原告制作ウェブサイトは、閲覧、利用できなくなった(甲21)。
 被控訴人ピー・エム・エーは、同年12月12日、控訴人に対し、上記更新費用相当額を含む未払金として13万8240円を振込送金し(甲23の1)、原告制作ウェブサイトを復旧するよう求めた。
 これに対し控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対し、本件サーバが凍結されたため、原告制作ウェブサイトの復旧はできない、新たなウェブサイトを制作するほかない旨を伝えた上で、同月13日付け請求書(甲22)をもって、控訴人が新たなウェブサイトを代金432万1600円で制作することを提案したが、被控訴人ピー・エム・エーは、これに応じなかった。
 なお、控訴人は、同年9月頃、被控訴人ピー・エム・エーに対し、同月26日付け「御見積書」(甲19)を示して、本件サーバの利用期限が同年11月30日であること、更新費用は、契約期間が12か月の場合は1万2960円、24か月の場合は2万4624円、36か月の場合は3万4992円であることを伝えていた。
(ウ)被控訴人ピー・エム・エーは、平成29年12月13日頃、マークス社に対し、原告制作ウェブサイトの復旧を依頼した。
 その後、マークス社は、旧被告ウェブサイトの制作過程で取得した原告制作ウェブサイトのデータをコピーして、被告ウェブサイト(「risekabu.com」ドメインのウェブサイト。甲46の3)を制作した。被告ウェブサイトにおいては、原告制作ウェブサイトでは「ログイン」ボタンを押すと、原告制作ウェブサイトの「会員ページ」へリンクする設定がされていたのを、旧動画ウェブサイトのコンテンツが表示されるようハイパーリンクが設定された。
 被控訴人ピー・エム・エーは、平成30年1月、被告ウェブサイトを公開した。
 被告ウェブサイトに係るデータは、さくらインターネットが管理するレンタルサーバーに記録された。上記サーバーのレンタル契約は、マークス社の代表取締役のAが個人名義でさくらインターネットと締結した(乙16、30)。
(エ)被控訴人ピー・エム・エーは、平成30年3月頃、マークス社に委託して、被告ウェブサイトをリニューアルした「risekabu.marqs.co.jp」ドメインのウェブサイト(以下「新被告ウェブサイト」という。甲156の1ないし8)を制作し、公開した。新被告ウェブサイトに係るデータは、さくらインターネットが管理するレンタルサーバーに記録された。上記サーバーのレンタル契約は、マークス社が自己名義でさくらインターネットと締結していた(乙33)。
イ 本件動画ウェブサイトの制作の経緯
(ア)被控訴人インターステラーは、平成30年6月1日、被控訴人ピー・エム・エーから、同被控訴人が行う事業のうち、株式スクールに関する事業の譲渡を受け(乙11)、これに伴い、本件スクールの各会員との会員契約に係る契約上の地位の承継及び旧動画ウェブサイトの譲渡を受け、「株の学校プラスワン」の名称の会員制スクールを開設した。
 その後、被告インターステラーは、平成30年9月3日ころまでに、「株の学校プラスワン」の会員に対し、旧動画ウェブサイトのコンテンツを本件動画ウェブサイト(「plusone.socialcast.jp」ドメインのウェブサイト。甲55)で提供するようになった。
(イ)本件DVDは、旧動画ウェブサイト及び本件動画ウェブサイトで配信されていた。
3 争点
(1)ウェブページに係る差止等請求の可否(争点1)
ア 原告制作ウェブサイトのプログラムの著作物性(争点1−1)
イ 原告制作ウェブサイトのデータベースの著作物性(争点1−2)
ウ 原告制作ウェブサイトの表示等に係る著作物性(争点1−3)
エ 原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権の帰属等(争点1−4)
オ 被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無(争点1−5)
カ 被控訴人らによる著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の有無(争点1−6)
キ 差止めの必要性(争点1−7)
ク 権利の濫用の成否(争点1−8)
(2)プログラムデータに係る差止等請求の可否(争点2)(当審における追加請求)
ア 本件各データの著作物性(争点2−1)
イ 本件各データの著作権の帰属等(争点2−2)
ウ 被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無(争点2−3)
エ 差止めの必要性(争点2−4)
オ 権利の濫用の成否(争点2−5)
(3)ユーザーデータに係る差止等請求の可否(争点3)(当審における追加請求)
ア 本件会員情報の著作物性(争点3−1)
イ 本件会員情報の著作権の帰属等(争点3−2)
ウ 被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無(争点3−3)
エ 差止めの必要性(争点3−4)
オ 権利の濫用の成否(争点3−5)
(4)画像データに係る差止等請求の可否(争点4)(当審における追加請求)
ア 本件各画像の著作物性(争点4−1)
イ 本件各画像の著作権の帰属等(争点4−2)
ウ 被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無(争点4−3)
エ 被控訴人らによる著作者人格権(公表権及び氏名表示権)の侵害の有無(争点4−4)
オ 差止めの必要性(争点4−5)
カ 権利の濫用の成否(争点4−6)
(5)DVD等に係る差止等請求の可否(争点5)(当審における追加請求)
(6)損害賠償等請求の可否(争点6)
ア 被控訴人らの責任の有無(争点6−1)
イ 控訴人の損害額(争点6−2)
ウ 権利の濫用の成否(争点6−3)
エ 被控訴人Y1につき再生計画認可決定確定による権利変更の有無(争点6−4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(ウェブページに係る差止等請求の可否)について
(1)争点1−1(原告制作ウェブサイトのプログラムの著作物性)
【控訴人の主張】
 次のとおり訂正するほか、原判決6頁2行目から7頁3行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決6頁2行目、8行目、10行目、12行目、14行目、18行目及び25行目の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と改める。
イ 原判決7頁2行目の「原告ウェブサイト」を「原告制作ウェブサイトの動作を制御する本件プログラム」と改め、同頁3行目末尾に行を改めて次のとおり加える
 「イ 当審における控訴人の補充主張
 以下に述べるとおり、本件プログラムにおいて、@「style.css」(甲36)及び「functions.php」(甲38)中の著作者氏名の記述、Aファイルに付されたパスワードの記述、B顧客のID、パスワード、メールアドレス、B変数の命名方法、C「style.css」の1行目に「utf-8」を記述しUnicodeによる言語設定を行い、レスポンシブデザインとして、750ピクセル、970ピクセル及び1170ピクセルの3つの横幅設定をしたこと、D「functions.php」の中で説明文をコメントで付したこと、E「common.css」(甲104)で全体のフォントとして「adobeFonts」(甲99)を指定したこと、F「member-top.css」(甲106)で会員専用ページを設定したこと、Gクラスの定義付け、Hモジュールの区分け等は、控訴人独自の創作的表現であるから、本件プログラムには、創作性があり、控訴人の著作物に該当する。
 (ア)著作者氏名
 「style.css」及び「functions.php」中に著作者の氏名として「★X★」と記述したのは、控訴人独自の創作的表現である。
 (イ)パスワード
 「FTP」のパスワード、「Plesk」のパスワード、「rise-db」のパスワード、「rise-eshop」のパスワード、「rise-xoops」のパスワード、ショッピング管理者ページのパスワード(甲9)及びメールアドレスのパスワード(甲137)は、英数字の大文字と小文字と数字を組み合わせた控訴人独自の創作的表現である。
 (ウ)ステートメントの型式
 本件プログラムは、変数の命名方法について、命令の単位ごとに加えて、クラスの単位ごと、変数の定義ごとに変数の命名を行うとともに、その変数がどのような目的で宣言されているのかが分かるように、配列、オブジェクトに関連付けて命名をし、グループ化や関数から呼びやすくするようにした。また、命令や変数が読みやすいように、適宜インデントを挿入したり、どこまでが配列の宣言であるかが分かるように改行や空白ではなく、「、」を用いるなどして、ソースコードの視認性が高まるような記述をした。
 (エ)「style.css」
 「style.css」の1行目に「utf-8」を記述し、多言語を1つのコードで処理可能なUnicodeによる言語設定を最初に行い、文字化け防止を徹底した。また、「utf-16」ではなく、「utf-8」を利用することで4バイトの日本語に着目したプログラムとなっている。
 また、16行目から最終行までのレスポンシブデザインについての命令は、デバイスの想定を大きく3つにした上で、横幅100パーセントを基準として、750ピクセル、970ピクセル及び1170ピクセルと3つのピクセルの横幅設定とした。
 (オ)「functions.php」
 各種モジュールがどのようなものか、そのクラスや変数としてどのようなものを設定するのかを理解しやすくするために、ステートメントを記述する前に、コメントで、そのモジュール類の説明文を具体的に記載した。
 (カ)「common.css」
 2行目で、ユーザーが利用するウェブブラウザのフォントに左右されないようにして、フォントの統一性や可読性を高めるため、原告制作ウェブサイトで利用される全体のフォントを「adobeFonts」とデザイン性も加味したフォントを設定し、文字の表現について独自の表現を指定した。
 (キ)「member-top.css」
 会員制サイトにログインできたユーザーだけが閲覧できるページのデザインを別に設定した。
 (ク)クラス
 「人」をスーパークラスとして定義し、性別、クラス別、拠点別でクラスを創造した。「性別」は「男性」と「女性」の2種とし、「人」の性別は、「男性」と「女性」で完全に説明できる「complete」として定義し、重複がないので「disjoint」と定義付けた。「拠点別」では、学校は統廃合が予想されるため「incomplete、disjoint」と定義付け、「クラス別」では、統廃合や新設など可能性があることから「incomplete」、重複がないわけではないことから「overlapping」と定義付けた。このように、クラスの分類には、その完全性や重複も規定して汎化関係を作り、その継承を効率よく行えるように創意工夫をした。
 (ケ)モジュール
 本件プログラムを、ユーザー検索モジュール(甲38の319〜529行)、イベントモジュール(甲235の22〜147行)等の17個のモジュールに分ける創意工夫をした(甲188)。
 (コ)CSS(CascadingStyleSheet)
 レスポンシブデザインを採用する場合には、基礎CSSを定める必要があるところ、基礎CSSは世界中で様々な物が用意されており、プログラマーは、幅広い選択肢の中から自分の好きなCSSを選択することができる。控訴人は、基礎CSSとして、「Bootstrap」を採用した(甲344の2)。」
【被控訴人らの主張】
 次のとおり訂正するほか、原判決10頁19行目から11頁4行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決10頁23行目の「(甲18、31。以下「本件保守契約書」という。)」を「(本件保守契約書)」と、同頁24行目の「(以下「本件保守業務委託契約」という。)」を「(本件保守業務委託契約)」と改める。
イ 原判決11頁5行目から6行目までを次のとおり改める。
 「イ 当審における控訴人の補充主張に対し控訴人の主張は争う。補足すると以下のとおりである。
 (ア)「style.css」(甲36)については、クライアント側の端末によって表示幅を変更するレスポンシブデザインを採用するためのCSSが通常の構文によって記載されているにすぎず(乙27)、ありふれたものである。
 (イ)「functions.php」(甲38)については、どのような機能をカスタマイズするかについて選択の余地があるとしても、それをウェブページに表示するために記述されるコードそのものは汎用的であり、表現の幅が極めて小さいため、「functions.php」には、特段の事情がない限り創作性が認められないが、控訴人は特段の事情について主張立証していない。
 (ウ)「common.css」(甲104)については、ウェブページに表示されるフォントをウェブページのCSSで別途指定することはよくあることであり、CSS一般の記述方法に従って記載されるものである。「common.css」は、フォントを指定したい部分に表示されるよう通常の構文に従って記載したものであり、ありふれた表現である。
 採用したフォントはアドビ社が作成したものであり、そこに創作性が加わることもない。
 (エ)「member-top.css」(甲106)については、ウェブページに特定の装飾方法を施すことはアイデアであり、かつ、コード自体も通常の構文によって記載されたものにすぎず、控訴人の個性が表れているものではない。
 (オ)CSSについては、ウェブページにレスポンシブデザインを採用することは、今日ではごくありふれたことであり、控訴人の個性が表れているとはいえない。」
(2)争点1−2(原告制作ウェブサイトのデータベースの著作物性)
【控訴人の主張】
ア データベースの全体構成
 本件データベースは、「risekabu_db」、「risekabu_renew」、「risekabu_wp1」、「risekabu_eshop」、「risekabu_xoops」及び「risekabu_xoops2」の6つのデータベースから成り、エックスサーバー社のサーバ内の「mysql1208.xserver.jp」に蔵置されている(甲97、188、221、345の1)。
 「risekabu_db」、「risekabu_renew」及び「risekabu_wp1」の3つのデータベースは、原告制作ウェブサイト(「1risekabu.com」ドメインのウェブサイト)で利用されるデータベースであり、控訴人が新規製作する前のデータとして、「risekabu_db」を設け、控訴人が新規製作するデータベースとして、「risekabu_renew」及び「risekabu_wp1」の2つを設けた。
イ 情報の選択及び体系的構成の創作性
 以下に述べるとおり、本件データベースには、情報の選択又は体系的構成に創作性があり、控訴人の著作物に該当する。
(ア)「risekabu_db」
 「risekabu_db」(甲345の1)は、「rise_t_contact_history」、「rise_t_news」及び「rise_t_user」の3つのテーブル(甲345の2)を有している。
 例えば、「rise_t_contact_history」は、インターネットを介して問合せを行ってきたユーザーの個人情報を格納するテーブルであり、カラム(列)は、氏名、ふりがな、メールアドレス、電話番号、ご希望の日時、質問内容等の15であり、主キーは「contact_history_id」である(甲351、352)。
 また、「rise_t_contact_history」は、既存の顧客の個人情報とは別にインターネット経由で新規の問合せや予約などをしてきたいわゆる見込み客に相当するユーザーの個人情報を蔵置している。既存客と見込み客を峻別することで、何度もインターネットにアクセスする既存顧客と一度だけのアクセスになることが多い見込み客とを分けることで、保守性の向上、不正アクセスからの既存顧客の個人情報の保護、アクセス負荷の分散などを行うことで安定したデータベース運用を行うことができる。
(イ)「risekakbu_renew」
 「risekakbu_renew」(甲347の1)は、104個のテーブル(甲347の2)を有している。
 例えば、「wpstg1_ai1ec_events」は、既存顧客に対して有料講座を実施する際に告知する情報を格納するテーブル(甲354の1)、「wpstg1_better_user_search_meta_keys」は、高速検索ができるように、「birthday」「class」「first_name」「last_name」「School_offices」の5つのインデックスを格納したメタキーインデックスのテーブル(甲354の2)、「wpstg1_ewwwio_images」は、登録された写真メディア、音声メディア、アニメーションGIF、ビデオメディア等のテキストファイル以外のメディアファイルを管理するテーブル(甲347の2、354の3)である。
 また、「risekakbu_renew」のテーブルのエンティティ間の関連性は、別紙ER図(甲358)のとおりである。主キーとして「id」を設定し、各テーブルは、外部キーとして「ID」を参照し、各テーブルの関連性がある。
 さらに、「risekabu_renew」の「wpstg1_better_user_search_meta_keys」テーブルにおける「birthday」、「class」、「first_name」、「last_name」及び「School_offices」の5つの設定(甲354の2)は、インデックス化することで、上記の5つでも検索ができるように創意工夫している。頻繁に更新や削除等が考えられる要素をインデックス化すると、その情報の変更があるたびに、データベースの更新に負荷がかかるため、控訴人は、上記5つを非クラスタ化インデックスとした。
(ウ)「risekabu_wp1」
 「risekabu_wp1」(甲348の1)は、16個のテーブル(甲348の2)を有している。例えば、「wp_posts」は、旧ウェブサイトの全面リニューアル前に控訴人が製作の依頼を受けた関東地区の広告用ページ107件のデータを管理するテーブル(甲348の2、甲355の1)、「wp_terms」は、広告ページのスラッグ(ページ名)の最終案であった2つが格納されているテーブル(甲355の2)、「wp_users」は、ユーザとして控訴人の情報だけが格納されている1行だけのテーブル(甲348の2、355の3)である。
 また、「wp_users」テーブルにロックをかけ(甲235〔1127行目〕)、著作者である控訴人の氏名を第三者によって排除できないようにしたことは、控訴人の個性の独創性の発揮である。
(エ)「risekabu_eshop」
 「risekabu_eshop」(甲346の1)は、株式会社フォセットが製作したショッピングシステムであり、30個のテーブル(甲346の2)を有している。
 例えば、「bak_order_item_070202」は、各商品の情報を格納したテーブル(甲353の1)、「item」は、DVD販売ページで販売されていた「酒田罫線」、「新・一目均衡表」及び「マル秘負けない為の投資スタンス」の3点の商品の情報を格納するテーブル(甲353の4)である。
(オ)「risekabu_xoops」
 「risekabu_xoops」(甲349の1)は、ユウシステムが製作したコミュニティサイトである「ズープス」に関連するデータベースであり、76個のテーブル(甲349の2)を有している。
(カ)「risekabu_xoops2」
 「risekabu_xoops2」(甲350の1)は、77個のテーブルを有する、「risekabu_xoops」を継承したデータベース(甲350の2)である。「risekabu_xoops2」には、文字化けに対処するための「test」テーブルを加え、その他のテーブルは、文字化けの変換を行えるようにして継承した。
(キ)正規化
 控訴人は、本件データベースについて第三正規化まで実施している。第三正規化によって、テーブルの要素の追加・削除・変更を容易に行えるように最適化がされた。
(ク)まとめ
 以上によれば、本件データベースは、情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものといえるから、控訴人が著作した著作物に該当する。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張は争う。
 まず、情報の選択については、顧客の氏名住所等の基礎情報や被控訴人ピー・エム・エーの取引情報といった個人情報を網羅的に選択することは、顧客管理という機能目的からすれば当然であって、控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえない。また、メディアを管理するファイルデータやカスタム記事も、被控訴人ピー・エム・エーのウェブサイトを適切に表示するために必要なメディアファイルのデータを網羅したでもあり、リダイレクションのテーブルデータも、ユーザーを被控訴人ピー・エム・エーの最新のウェブページに誘導するために必要な情報を網羅したものであり、いずれにも情報の選択に控訴人の個性が発揮されているとはいえない。
 次に、控訴人は、本件データベースの体系的な構成について、本件データベースの関連体系が、主として各ユーザーの基礎情報をキーとして特定の顧客を識別し、当該ユーザーの個人情報を参照するものであり、大勢の顧客を有する事業において顧客情報を管理するために、データベースにおいて各顧客にID等の識別符号を付与し、これに紐付けて各顧客の個人情報を管理する手法であることを述べるにすぎない。これは、リレーショナルデータベースにおいて極めて一般的かつ通常用いられる体系的構成であり、控訴人の個性が発揮されているとはいえない。
(3)争点1−3(原告制作ウェブサイトの表示等に係る著作物性)
【控訴人の主張】
 以下に述べるとおり、原告制作ウェブサイトの表示等は、控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものであって、著作物性を有する(甲27)。
ア ウェブページのタイトル
 ウェブページのタイトルは、限られた文字数でページ本文の内容を表現し、検索エンジンを使ってウェブサイトを検索したユーザーをウェブページに誘導するものである。
 控訴人は、検索エンジンで検索結果として表示されたときにクリックされやすいように、ウェブページのタイトルを30文字前後の文字数に収め、また、その30文字の中に検索キーワードとして含まれやすい語句も盛り込むなどの創意工夫をした。
イ URL
 ワードプレスの固定ページにデフォルトで自動生成されるページのURLは、「?」、「=」の記号及び数字で生成され、検索エンジンではページを区別できないためページデータを取得しないが、パーマリンク設定によってこれを変えることができる(甲45の6)。
 控訴人は、パーマリンク設定をして、「/%year%?」で投稿した西暦を4桁で表示するようにし、また、「%monthnum%?」で投稿した月の表示、「/%day%?」で投稿した日の表示及び「%category%?」で記事のカテゴリー名の表示を、「%postname%?」で投稿した記事のタイトル名を表示するようにして創意工夫を加えた。
ウ メタ・ディスクリプション及びメタ・キーワード
 メタ・ディスクリプション及びメタ・キーワードは、検索エンジンの検索結果にウェブサイトやそのページの補足説明を表示させるために追記するページの概要情報である。控訴人は、他のウェブページと同一にならないようにメタ・ディスクリプション及びメタ・キーワードを作成して創意工夫を加えた。
エ「無料株式セミナーについて」のウェブページ
 「無料株式セミナーについて」のウェブページ(甲321)は、控訴人が写真、文章、デザインその他すべての構成を創造したウェブサイトであり、株式投資を伝える内容について創意工夫を加えた。
【被控訴人らの主張】
 次のとおり訂正するほか、原判決11頁8行目から12頁3行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決11頁8行目、14行目、19頁及び末行の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と改める。
イ 原判決11頁12行目の「(ア)」を「ア」と、同頁17行目の「(イ)」を「イ」と、同頁22行目の「(ウ)」を「ウ」と改める。
(4)争点1−4(原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権の帰属等)
【控訴人の主張】
ア 控訴人と被控訴人ピー・エム・エーは、本件制作業務委託契約に際し、原告制作ウェブサイトの成果物の知的財産権が制作者の控訴人に帰属することについて合意し、本件注文書(甲13)の「備考」欄に、その旨を記載した。
 そして、控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーから、原告制作ウェブサイトの構成について一任され、被控訴人ピー・エム・エーの関与の全くないまま、原告制作ウェブサイトを創作した。
 したがって、原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作者は、控訴人であるから、その著作権は控訴人に帰属する。
イ 控訴人は、本件サーバ凍結後、被控訴人Y2に対し、原告制作ウェブサイトの復旧作業について具体的に説明し、平成29年12月15日付け通知書(甲23)をもって、原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権が控訴人に帰属することを確認した。
 また、被控訴人ピー・エム・エーが控訴人との間で本件制作業務委託契約について話し合った際、著作権者を被控訴人ピー・エム・エーにすることや原告制作ウェブサイトの利用を許諾することなどは一切協議されていない。
 したがって、控訴人が被控訴人ピー・エム・エーに対して原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を譲渡した事実及び著作物の利用について許諾した事実はいずれも存在しない。
【被控訴人らの主張】
 ア @原告制作ウェブサイトの制作が被控訴人ピー・エム・エーの委託に基ものであって控訴人の発意に基づくものではないこと、A控訴人自らが使用することは予定せず、被控訴人ピー・エム・エーの企業活動に使用する目的で作成されたものであること、B原告制作ウェブサイトは被控訴人ピー・エム・エーが彩登に制作させた旧ウェブサイトのデザイン、記載内容や色調を基礎としていること、C原告制作ウェブサイトの記載内容は本件スクールを運営する被控訴人ピー・エム・エーの企業活動を紹介するものであること、D被控訴人ピー・エム・エーからされたウェブサイトの仕様や構成に関する指示及び要望に基づき制作されたたものであること、E本件制作業務委託契約において、控訴人が被控訴人ピー・エム・エーに使用を許諾して使用料を収受する形式になっていないこと、F控訴人が原告制作ウェブサイトの保守業務を被控訴人ピー・エム・エーから受託していることに鑑みると、原告制作ウェブサイトの著作権は、被控訴人ピー・エム・エーに帰属するというべきである。
イ 仮に控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を有するとしても、@被控訴人ピー・エム・エーは、控訴人に対し、324万円という高額な制作対価を支払っていること、A原告制作ウェブサイトは、専ら被控訴人ピー・エム・エーが使用するためにその委託によって制作されたものであり、控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作権を保有する必要性及び合理的理由がないこと、B被控訴人ピー・エム・エーは、自身の企業活動に合わせて、原告制作ウェブサイトの内容を変更したり、保守委託先を変更したり、格納サーバを変更したりすることが当然に予定されているにもかかわらず、被控訴人ピーエム・エーが原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を有しないとすれば、その都度、控訴人の許諾を得なければ、これらを実現できず、企業活動が著しく阻害されること、C原告制作ウェブサイトを制作した控訴人が自ら原告制作ウェブサイトに「Copyright?ライズ株式スクールAllRightsReserved」と表示していることからすると、原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権は被控訴人ピー・エム・エーに黙示に譲渡されたというべきである。
 また、仮に控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を被控訴人ピー・エム・エーに譲渡していないとしても、上記@ないしCに鑑みれば、控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対して原告制作ウェブサイトに係る著作物の利用を許諾したというべきである。
 したがって、控訴人は、被控訴人らに対し、原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権に基づく権利を行使することができない。
(5)争点1−5(被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無)
【控訴人の主張】
ア (ア)被控訴人らは、原告制作ウェブサイトのデータをコピーして被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトを制作した。
 そして、原告制作ウェブサイトと被告ウェブサイトとを対比すると、両ウェブサイトは、各ウェブページのタイトル、URL、メタ・ディスクリプション、メタ・キーワード、画像ファイル名やソースコード、ロゴの配置場所、ロゴの大きさ、ページの配色、ボタンの配置場所とその大きさ等が全く同じであり、ページの内容や文章、情報量もほぼ同じである(甲27ないし29)。
 また、原告制作ウェブサイトと旧被告ウェブサイトとを対比すると、両サイトに本件各画像が掲載されているほか、文章とコードがすべて原告制作ウェブサイトのものと同一である(甲336の12)。
(イ)原告制作ウェブサイトと本件動画ウェブサイトとを対比すると、両ウェブサイトは、控訴人が原告制作ウェブサイトで設定した会員のIDとパスワードを共通にしており、これらIDやパスワードを利用してログインして閲覧することができ、CSSがいずれも「Bootstrap」であるほか、「プライバシーポリシー」として全く同じものを表示しているから(甲378、380)、本件動画ウェブサイトは、ウェブサイトの基幹部分となるシステムの動きやその態様について原告制作ウェブサイトをそのまま複製し、原告制作ウェブサイトが利用していたテーマだけを変更したものである。
イ 以上によれば、被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトは、原告制作ウェブサイトの複製物又は翻案物に当たるから、被控訴人らによる被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトの制作及び公開は、控訴人が保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害行為に当たる。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張は争う。
(6)争点1−6(被控訴人らによる著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の有無)
【控訴人の主張】
ア 公表権侵害
 被控訴人らは、本件サーバの更新料未払のため閲覧、利用できなくなったことによって未公表の著作物となった原告制作ウェブサイトを複製して被告ウェブサイトを制作し、これを公衆送信し、控訴人の保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物の公表権を侵害した。
イ 氏名表示権侵害
(ア)被控訴人らは、被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおいて、著作者名として控訴人の名称を表示しなかったから、控訴人の保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物の氏名表示権を侵害した。
(イ)この点に関し被控訴人らは、原告制作ウェブサイトに著作者名として控訴人の名称は記載されていない旨主張する。
 しかし、原告制作ウェブサイトの本件プログラムには、「functions.php」及び「style.css」のプログラムファイルに控訴人の氏名が著作者名として表示されている。
 また、仮に原告制作ウェブサイトに著作者名の表示がされていないとしても、控訴人は、原告制作ウェブサイトが違法に利用されるような場合についてまで氏名表示の省略を承諾していたものではないから、その省略により控訴人が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないとはいえず、又は、公正な慣行に反しないともいえない。したがって、被控訴人らの上記主張は失当である。
ウ 同一性保持権侵害
 原告制作ウェブサイトの「ログイン」ボタン(甲79の1ないし3)を押すと、会員専用ページのログインページ(甲79の4)に遷移するようになっていたが、被告ウェブサイトの「ログイン」ボタン(甲80の1ないし3)を押すと、本件動画ウェブサイトへ遷移するようになっている(甲80の4)。
 したがって、被控訴人らは、原告制作ウェブサイトを控訴人の意に反して改変したものといえるから、控訴人の保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物の同一性保持権を侵害した。
【被控訴人らの主張】
ア 公表権侵害の主張に対し
 原告制作ウェブサイトは、控訴人自身によって一旦公開されており、「著作物でまだ公表されていないもの」(著作権法18条1項)には当たらないから、原告制作ウェブサイトに係る著作物の公表権の侵害が問題となる余地はない。
イ 氏名表示権侵害の主張に対し
(ア)原告制作ウェブサイトの各ウェブページの末尾には「Copyright?ライズ株式スクールAllRightsReserved」と表示されており、控訴人が著作者である旨の表示はされてない。
 そうすると、原告制作ウェブサイトに係る著作物は無名の著作物として扱えば足りるから、原告制作ウェブサイトを複製等する場合には控訴人の氏名を著作者名として表示する必要はない。
 また、仮に無名の著作物とはいえないとしても、原告制作ウェブサイ29トは、専ら宣伝広告を目的とした企業サイトであり、このようなウェブサイトにおいては著作者名が表示されないことが一般的である。
 そうすると、著作者の氏名表示を省略しても、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれはなく、かつ、公正な慣行に反するものではいから、氏名表示を省略できる(著作権法19条3項)。
 したがって、原告制作ウェブサイトに係る著作物の氏名表示権の侵害が問題となる余地はない。
ウ 同一性保持権侵害の主張に対し
 控訴人の主張は争う。
(7)争点1−7(差止めの必要性)
【控訴人の主張】
ア 被告ウェブサイトは、控訴人ピー・エム・エーが平成30年5月末日に事業を停止した後も、インターネット上で公開され続けている。
 また、本件動画ウェブサイトには復習のための動画しか掲載されておらず、会社概要やサービス情報などは一切ないので、被控訴人インターステラーの会員がサービス内容を知るためには、被告ウェブサイトを閲覧するほかない。そして、被告ウェブサイトは、会員が同サイトを閲覧して情報を取得した後、「ログイン」ボタンをクリックして本件動画ウェブサイトに移るように用いられている。
 このように被控訴人らは、現在も被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトを利用して、自己の利益を拡大しているといえるから、控訴人の保有する原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権の侵害の停止又は予防のため、上記各ウェブサイトに係る各ウェブページの複製等の差止め及び削除の必要性がある。
イ この点に関し、被控訴人らは、被控訴人らが被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトの管理者ページにアクセスする権限がない旨主張する。
 しかしながら、控訴人が被控訴人Y2のログイン情報を使用して被告ウェブサイトの管理者ページにログインをすることができたことに照らすと、上記主張は虚偽である。
 また、被控訴人らは、原告制作ウェブサイトで設定されたメールアドレス(被控訴人Y1に付与された(省略)(甲114、314、315)、被控訴人ピー・エム・エーに付与されたメールアドレス及びパスワード(甲124、137、384等))を利用している。
 さらに、Aが被告ウェブサイトの閉鎖を拒否したことについては、Aに対してウェブサイト制作費用の支払をしなかった被控訴人らに責任があり、控訴人とは何の関係もないことであるから、控訴人が被控訴人らに対し、上記各ウェブサイトに係る各ウェブページの複製等の差止め及び削除を求める必要性があることを否定する理由にはならない。
【被控訴人らの主張】
ア 被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトについて
(ア)被告ウェブサイトは、本件スクールのホームページであるところ、被控訴人ピー・エム・エーは、平成30年5月に自主廃業し、破産手続開始の申立てをし、本件スクールの営業をしておらず、その他の被控訴人らも本件スクールを営業していないから、将来的に被控訴人らが被告ウェブサイトの複製等を行う具体的なおそれはない。
(イ)ウェブサイトに関する記録データの複製、翻案又は公衆送信を停止するためには、当該ウェブサイトのドメインの利用を停止し、情報が格納されたサーバーの記録を削除しなければならないから、差止請求の相手方は、現に当該ドメイン及びサーバーを管理している者である。
 しかるところ、被告ウェブサイトのドメイン及びサーバの管理情報はマークス社の代表者のAが有しており、Aは、管理画面のアクセス先や管理に必要なIDやパスワードを被控訴人らに開示していない。
 また、被控訴人ピー・エム・エーは破産に向けて被告ウェブサイトの公開停止あるいは公開停止に必要なIDやパスワード等を開示するよう何度もAに連絡を試みたが、Aはこれに応じず、本件訴訟に至っても被告ウェブサイトの閉鎖を拒否している。被告ウェブサイトのサーバーのレンタル契約の有効期間は平成31年1月9日までであったが、平成31年1月8日、Aは自ら更新料を支払い、レンタルサーバーの利用契約を更新した。
 さらに、被控訴人ピー・エム・エーは、令和元年6月20日、被告ウェブサイトが記録されているサーバーの所有者であるさくらインターネットに対し、被告ウェブサイトの削除請求を行ったが、Aが反対したため実現しなかった。
 このように、被告ウェブサイトは、Aが自らの費用と名義の下に公衆送信しているのであり、侵害行為の主体はAであり、被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイトの利用行為は、遅くとも平成30年11月19日までに終了している。
 以上のとおり、被控訴人らは、被告ウェブサイトを利用しておらず、被告ウェブサイトのドメイン及びサーバーの管理権限もないから、被告ウェブサイトに係る各ウェページの複製等の差止めや削除を実行することはできない。旧被告ウェブサイトのドメイン及びサーバーについても、マークス社によって管理されているから、これと同様である。
イ 本件動画ウェブサイトについて
 本件動画ウェブサイトは、被控訴人インターステラーが、「ソーシャルキャスト」サービスにおいて管理するウェブサイトであるから、被控訴人ピー・エム・エー、被控訴人Y1、被控訴人Y2及び被控訴人Y3は、本件動画ウェブサイトを対象とする差止請求の相手方とはなりえない。
 また、被告ウェブサイトに本件動画ウェブサイトへのリンクがそのまま張られている状態になっているとしても、本件動画ウェブサイトへのリンクの設定及び解除を行うことができるのはAだけであり、現状は、被告ウェブサイトによって本件動画ウェブサイトが無断でリンク先に設定されている状態にすぎない。
 さらに、本件動画ウェブサイトで動画を閲覧するには本件動画ウェブサイトで改めてIDやパスワードを入力しないと結局のところログインすることができない。
ウ まとめ
 以上によれば、控訴人が被控訴人らに対して被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトに係る各ウェブページの差止め及び削除を求める必要性はない。
(8)争点1−8(権利の濫用の成否)
【被控訴人らの主張】
ア 被控訴人ピー・エム・エーが平成29年11月末期限の本件サーバの更新料の支払を遅延したことから、同年12月、本件サーバの利用が凍結されて原告制作ウェブサイトが表示されなくなり、被控訴人ピー・エム・エーが使用していた電子メールも利用できなくなり、被控訴人ピー・エム・エーの業務に著しい支障が生じた。
 そこで、被控訴人ピー・エム・エーは、控訴人に対し、本件サーバの更新料を含む13万8240円を控訴人に支払って、本件サーバの凍結解除の手続をすることを求めた。
 本件サーバは、費用を支払わない場合には一時的に利用が凍結されるものの、早期に未払を解消すれば凍結が解除され、ウェブサイトが復旧されることとなっていた。しかし、控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対し、そのような説明をすることなく、一から新しいウェブサイトを制作するしかないと伝えた。被控訴人ピー・エム・エーは、控訴人から提示された対価である434万1600円が過大であると考えたため、控訴人からの上記提案を断り、控訴人との間の本件保守業務委託契約を合意解除した。
 このため、被控訴人Y1は、やむを得ず、以前、旧ウェブサイト作成に携わっていたAに対し、原告制作ウェブサイトが利用できなくなったことを伝え、旧ウェブサイトのデータを利用して対処できないかと相談したところ、Aが応諾したため、新たなドメインの取得とウェブサイトの公開を依頼した。その際、被控訴人Y1は、Aから、控訴人の承諾を得るように言われたことはない。Aは、「risekabu.com」ドメインを自己名義で取得し、サーバーをレンタルし、平成30年1月12日、被告ウェブサイトを公開した。
 ところが、控訴人は、令和元年5月15日ころ、被控訴人インターステラーの会員に対し、被控訴人インターステラーを誹謗中傷する文書(乙20)を送付し、被控訴人インターステラーが売掛金、給与、税金等を踏み倒したことや、控訴人が用いる本件サーバからデータを搾取したこと、会員らの個人情報が流出する危険性があることなど、上記文書に虚偽の事実を記載して明白な名誉毀損行為を行った。
 また、控訴人は、本件と一切関係のない被控訴人Y1や被控訴人Y2の親族に対し、被控訴人らの名誉を毀損する内容の書面(乙13ないし15)を送り付け、金銭を要求しており、被控訴人Y1や被控訴人Y2の親族を畏怖させて金員を取得しようとしたことは明白であって、控訴人が本件において高額な慰謝料を請求していることを併せ鑑みれば、控訴人は、被告ウェブサイトが原告制作ウェブサイトを基にして複製されていることを奇貨として、多額の金員を取得することを企図したものというべきである。
イ 以上のとおり、誹謗中傷行為を行って自己の要求の実現を図る控訴人の行為は、法の想定する権利救済の範疇を超えるものであることは明らかであるから、控訴人の本件請求は権利の濫用に当たる。
【控訴人の主張】
ア 控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対し、本件サーバの更新費用に関して平成29年9月26日付け見積書(甲19)を提出し、同年10月27日、被控訴人ピー・エム・エーの事務所に出向き、上記費用等について説明を行い、同年11月16日、エックスサーバー社から受け取った契約更新に関するお知らせメールを転送し、サーバ凍結の懸念があり、その影響はホームページだけにとどまらず、メール等のサービスにも影響がある旨の連絡をしたが、同月22日に被控訴人ピー・エム・エーの事務所を訪れると、被控訴人事務所が既に引き払われた後であり、控訴人には引越し先も新しい事務所の電話番号などの連絡先も告知せず、控訴人は、被控訴人らに連絡したくても連絡先が判らず連絡ができない状況になり、被控訴人らの携帯電話に架電しても折り返しの電話はなかった。
 控訴人は、本件サーバの凍結後の同年12月13日、被控訴人Y2と面談してサーバの復旧方法について説明し、同月15日、被控訴人Y1に対し、電話で、全てのデータをバックアップしてはおらず、復旧できる部分は控訴人がバックアップしている分だけに限られることを伝えており、同月19日、被控訴人ピー・エム・エーの事務所に架電し、サーバ復旧に関する提案をしようとし、同月20日、電話での被控訴人Y1からの質問に対し、拒否や黙秘などは行なわず正直に回答し、平成30年1月9日、被控訴人Y2からの電話 に応じ、同人を無視することなく話をしている。
 その後、被控訴人らの携帯電話番号、被控訴人ピー・エム・エーの新事務所の新電話番号に架電してもつながらなくなり、被控訴人ピー・エム・エーも新事務所からも退去し、控訴人は被控訴人らとは音信不通の状態となった。
イ 以上のとおり、控訴人は本件サーバー凍結前に本件サーバーが凍結される可能性があることを事前に繰り返し連絡を入れており、それを無視していたのは被控訴人らである。そして、控訴人は、被控訴人らから連絡があった際には問題解決のための提案を行っていたが、一方で、被控訴人らは、控訴人の著作物を利用して、控訴人の了知しないところで新たなウェブサイトを構築していたのである。
 以上によれば、控訴人の本件請求は権利の濫用に当たらない。
2 争点2(プログラムデータに係る差止等請求の可否)(当審における追加請求)
(1)争点2−1(本件各データの著作物性)
【控訴人の主張】
 本件各データは、プログラムの著作物である本件プログラムの一部を構成するものであるから、プログラムの著作物として保護される。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張は争う。
(2)争点2−2(本件各データの著作権の帰属等)、争点2−3(被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無)、争点2−4(差止めの必要性)及び争点2−5(権利の濫用の成否)
 当事者の主張は、前記1(4)ないし(8)と同旨
3 争点3(ユーザーデータに係る差止等請求の可否)(当審における追加請求)
(1)争点3−1(本件会員情報の著作物性)
【控訴人の主張】
 本件会員情報は、本件データベースに格納された本件プログラムと協働するデータであるから、本件プログラムの著作物の一部として、著作権法で保護される。
 そして、本件会員情報を含む本件スクールの4127名分(退会会員を含む。)の「LoginID」、「Password」、「Email」、「DisplayName」、「Nickname」、「姓」、「名」、「姓のフリガナ」、「名のフリガナ」、「学校拠点」、「クラス」、「電話番号」、「権限」、「誕生日」、「国」、「都道府県」、「郵便番号」、「住所」、「プロフィール情報」、「プロフィール写真」及び「(自分の)ウェブサイト」は、控訴人が創作し又は設定したデータであり、著作物として保護される。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張は争う。
 本件会員情報は、被控訴人ピー・エム・エーの会員の属性等を記述的に表記したものであり、かつ、被控訴人ピー・エム・エーから被控訴人インターステラーへの本件スクールの事業譲渡後は被控訴人インターステラーの顧客情報であるから、本件会員情報を控訴人が創作する余地はない。
(2)争点3−2(本件会員情報の著作権の帰属等)、争点3−3(被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無)、争点3−4(差止めの必要性)及び争点3−5(権利の濫用の成否)
 当事者の主張は、前記1(4)ないし(8)と同旨
4 争点4(画像データに係る差止等請求の可否)(当審における追加請求)
(1)争点4−1(本件各画像の著作物性)
【控訴人の主張】
 本件各画像は、以下のとおり、控訴人が構図の設定やシャッターチャンスの捕捉などに創意工夫を加えて自ら撮影し、又は、他の写真やイラストに文字を加えるなどの加工を加えて創意工夫をして作成したものであるから、控訴人が著作した写真の著作物に当たる。
ア 本件画像1
 本件画像1は、控訴人が、平成24年12月16日に福岡で開催された第24回冬期合同研修会の会場内において、150名程度の参加者が展示物のブースを周回し、展示物の作成者から説明を受けている様子を撮影した写真である。
 控訴人は、会場の左壁側後方から、カメラをやや斜め上方に向けて、会場の地面を構図から削除して、ステージ中央の群衆が中心となるように画角を設定し、会場は照度が少なかったため、被写体と光線との関係は順光を利用し、手振れが起きないようなギリギリまで絞りを開けて、ある特定の箇所にフォーカスするのではなく、俯瞰として全体が視認できるように、フォーカスを広くして撮影を行った。
イ 本件画像2
 本件画像2は、控訴人が、平成26年8月17日に神戸で開催された第27回夏期合同研修会の際、神戸国際会館を撮影した写真である。
 控訴人は、神戸国際会館の外観が最も分かりやすいような撮影ポイントとして、スクランブル交差点の向かい側から対角線上に撮影する画角を選択し、200メートル以上離れ、広角レンズを使用して撮影した。建物の大きさと迫力を伝えるために、地面すれすれにカメラを置き、30度から45度くらいの角度をつけ見上げるようにして撮影した。また、控訴人は、その際、地面との対比を出し、その高さと迫力を見せるために、地面に1割から2割の写真面積を使って水平に映し出し、神戸国際会館の頂上付近を一部切り抜き省略することで、建物本体の写真に対する専有率を高め、建物の大きさや広さを強調できるようにした。
ウ 本件画像3
 本件画像3は、控訴人が、平成26年8月17日に神戸で開催された第27回夏期合同研修会の際、神戸国際会館のビル上層に設置されていたロゴ及び建物名を撮影した写真である。
 控訴人は、ロゴの奥にフォーカスを合わせるとロゴ手前のピンボケが気になるため、カメラと被写体との距離が最も近い場所に焦点を当ててピントを合わせ、建物の高い位置にあることを活用するためロゴの真下にカメラを構え、あおりのある画角にした。その際、ロゴを強調するために他の背景要素はすべて省略し、さらに、左上からやや右下に向けての斜体の表現をすることで文字に奥行と存在感を加えた。
エ 本件画像4
 本件画像4は、控訴人が、平成26年8月17日に神戸で開催された第27回夏期合同研修会の際、神戸国際会館の入口付近の案内標識を撮影した写真である。
 控訴人は、建物の奥行と広がりを表現するために、カメラはアイレベルの高さに構え、さらに斜光をとり入れて陰影を強調させ、立体感も強く感じ取れるようなカメラポジションを選択して撮影した。その際、斜め後方の斜光と斜め前方の斜光が交差するポイントを選択し、さらに、通路の広がりを見せて奥行を強調するために地面と天井の写真における占有率の割合を同比率にした。
オ 本件画像5
 本件画像5は、控訴人が、平成26年8月17日午後1時から神戸で開催された第27回夏期合同研修会の際、神戸国際会館から200メートルほど離れた街路樹の中の花壇を撮影した写真である。
 控訴人は、被写体とカメラとの距離を離して、望遠でクローズアップすることで距離感を感じさせ、高い位置から見下ろしたアングルにすることで第三者がのぞき込むような表現方法をとり、さらに、ブランコ全体を捉え、やや広めの空間を感じさせるようにした。
カ 本件画像6
 本件画像6は、控訴人が平成28年7月18日に三宮センタープラザで開催された第31回夏期合同研修会の会場内において、セミナー参加者の様子を撮影した写真である。
 控訴人は、会場全体の人数の規模やその雰囲気を捉えることを目的として、個人のプライバシーに配慮して大きくフォーカスを外しながら絞りも広げ、照明の明るさも照度100を超えるホワイトオーバーをさせ、また、横に広がる長い机が4つ並んでいることが認識できる程度にピンボケをすることで会場の空間の広さの表現も行った。その際、明るさを重視したため右奥はいわゆる白飛びをしている。
キ 本件画像7
 本件画像7は、本件画像6を背景とし、控訴人において株式セミナーを案内するアイコンを制作し、これと合成した画像である。
 白飛びしている部分は、文字情報が明瞭となり的確に情報伝達できることから、その部分にセミナーの案内の見出しを制作した。
ク 本件画像8
 本件画像8は、控訴人が、平成28年7月18日に三宮センタープラザで開催された第31回夏期合同研修会の会場内において、講演の様子を撮影したものである。
 会場がかなり大きな縦に長い会議室であったため、部屋の最後部の左側面から斜め右方向にレンズを向け、視点が画面の奥に向くように、画角サイズの水平線の位置を上下比率の6:4に定めて、会場の奥に向かって焦点が合うようにした。
ケ 本件画像9
 本件画像9は、本件画像8を背景とし、控訴人において株式セミナーのキャッチコピーを制作し、これと合成した画像である。
 控訴人は、背景画像を半透明の白マットで覆うことで画像の情報を減らし、株式セミナーのキャッチコピーの視認性が高まるようにし、また、「目からウロコの株式投資のコツを伝授!」には、黄色マーカーを下線として加えてキャッチコピーと背景画像の相乗効果を出すようにした。
コ 本件画像10
 本件画像10は、控訴人が、平成27年9月23日に福岡市西区の「のこのしまアイランドパーク」内のゴルフ場において、スタートホールの風景を撮影した写真である。
 晴天であることを活かし、樹木に明るさに焦点をあて、青空は白飛びさせて新緑を強調した。地面に下り勾配があり、斜め右下方向に下がっているが、アイレベルを水平にした結果、勾配が表現されている。
サ 本件画像11
 本件画像11は、本件画像10を背景とし、控訴人において「コミュニケーション活動」のテキストと合成した画像である。
 控訴人画像10の樹木部分だけを抜き出すようトリミング加工した。
シ 本件画像12
 本件画像12は、新緑の画像を背景画像とし、控訴人が、被控訴人ピー・エム・エーのスクール理念と合成した画像である。
 背景になじむように、スクール理念の文字の色に濃紺を用い、文字の輪郭にソフトエッジを採用し、透過度を60パーセントとすることで、徐々にエッジが衰退する表現にして文字の柔らかさを表現している。
ス 本件画像13
 本件画像13は、控訴人が、沖縄を除く東京より西の日本地図をドット絵で加工し、文字、イラスト等をレイアウトして作成した画像である。
 被控訴人ピー・エム・エーのサービス拠点となっている「福岡」、「広島」、「神戸」、「名古屋」、「横浜」、「東京」に位置するドットには、それぞれ、「オレンジ」、「赤」、「青」、「ピンク」、「紫」、「シアン」色で表現し、「ライズ株式スクール」のロゴカラーが緑であることから、同じ緑を用いて「無料株式セミナー」の文字色を装飾し、背景は文字とドット調の日本地図を目立たせるために、明るめのパールオレンジ色を採用している。そして、各地域名には偏った印象を持たれないように中立性をイメージできる黒文字単色で表現した。
セ 本件画像14
 本件画像14は、控訴人が、購入した女性の画像を利用し、自ら制作した吹き出しアイコンを付し、文字をレイアウトして作成した画像である。
 購入した女性の画像をバストショットにトリミングし、吹き出し部分の背景部分は、女性の背景にある薄い青のグラデーションを複製して背景を横長にし、吹き出しの枠線の色は「ライズ株式スクール」のロゴのメインカラーである緑を利用し、さらに、「疑問や不安」、「受講生の皆様の声」の文字を大きくして視認性を高め、コントラスト比を高めるためにキーカラーとなる緑色に装飾した。女性の画像は適切なイメージを持つ女性として控訴人が選択した。また、顧客が、女性の目線で注意を引かれた後、左側の吹き出し内容を読んでもらえるようなデザインとレイアウトを行っており、吹き出し枠には、吹き出しからはみ出た部分の文字を置き、吹き出しに立体表現を取り入れた。
ソ 本件画像15
 本件画像15は、控訴人が、平成27年7月26日横浜駅の歩道橋の上から見える横浜市内の風景を撮影した写真である。
 控訴人は、少し高めの視点からビジネス街の高層ビルを撮影した。その際、好天であったことから、地面は写さずに川を写り込ませながら、ビルと青空に焦点を当てて、感度を上げ、ホワイトバランスを少し崩してシアン側に寄せて撮影した。
タ 本件画像16
 本件画像16は、控訴人が、平成25年11月24日にアクロス福岡で開催された第26回冬期合同研修会において、公開されていた資料を撮影した写真である。
 控訴人は、方眼用紙の罫線が斜めに立つように斜め方向から撮影し、画面中央のみをフォーカスすることによって、画面で広がるチャートが奥行を持つよう被写体深度を深くしており、また、斜めにすることで不安定さを与え、写真としての面白味を加えた。
チ 本件画像17
 本件画像17は、控訴人が、赤、オレンジ、緑のピラミッドのアイコンを制作した後、「ライズ株式スクール」のクラス名の文字を合成して作成した。
 本件画像17は、「ライズ株式スクール」は、「初級」、「中級」、「上級」、「RTC」又は「実践会」というクラスに分かれていたが、伝えたいことを大きく3つのポイントに分けて説明すると相手に伝わりやすいという手法から、これを「基礎」、「応用」又は「発展」の3つに区分することが出来ると考え、ピラミッドのアイコンを背景画像として、@「基礎」、A「応用」及びB「発展」の文字列に、それぞれ、@「初級」、「中級」及び「上級」、A「RTC」並びにB「実践会」を当てはめて、加工、編集した画像である。
ツ 本件画像18
 本件画像18は、控訴人が、平成24年12月16日に福岡で開催された第24回冬期合同研修会の会場内において、会場の様子を撮影した写真である。
 控訴人は、会場の最後部の中央から撮影した。その際、講演者にはスポットライトが当たっているが、縦に長いホールで、聴衆へのスポットライトは弱めに設定されていて光が足りなかったため、フラッシュを使用し、会場全体にピントがあうようにフォーカスの調整をして全体像を撮影した。多目的ホールであることを写真でも認識できるように、各種スポットライトの設置された天井や音響がよりよく響くように設計された凹凸のある両
壁も画角の中に取り入れて、単なる会議室ではなく多目的ホールであることを表現した。
【被控訴人らの主張】
 以下のとおり、本件各画像には、創作性がないから、著作物に該当しない。
ア 本件画像1について
 会場全体が見渡せるように隅から撮影するという本件画像1の構図はありふれており、写っている来場者も雑多で特段の決定的瞬間を写し撮ったものではない。通常、セミナー風景を撮影する写真としては誰が撮影しても同じような写真となるありふれた表現物である。
 したがって、本件画像1に撮影者の個性が表れているとはいえない。
イ 本件画像2について
 建物の外観全体が見渡せる交差点の斜め向かいから撮影するという本件画像2の構図はありふれたものであり、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、被写体となる建物を撮影する写真としてはありふれた表現物である。
 したがって、本件画像2に撮影者の個性が表れているとはいえない。
ウ 本件画像3について
 本件画像3は、単に建物を示す標識部分を通常の方法で撮影したものであり、写真中央部に同標識部分が収まっておりそれ以外の被写体もないという構図はありふれており、特筆すべき決定的瞬間を映したものでもない。
 したがって、本件画像3に撮影者の個性が表れているとはいえない。
エ 本件画像4について
 本件画像4は、単に歩行可能な通路を歩行者の目線から撮影したものであり、その構図はありふれたもので、特筆すべき決定的瞬間を移したものでもない。
 したがって、本件画像4に撮影者の個性が表れているとはいえない。
オ 本件画像5
 中央に置物を配置しこれをほぼ正面から撮影するという本件画像5の構図はありふれたものであり、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもない。
 したがって、本件画像5に撮影者の個性が表れているとはいえない。
カ 本件画像6
 教室全体が見渡せる会場の隅から全体を撮影するという本件画像6の構図は、セミナー風景を撮影するものとしてはありふれている。ぼかしの加工も写真の加工方法としては一般的であり、しかも、ぼかしに強弱がつけられているものではなく全体が均一にぼかされているにすぎず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもない。
 したがって、本件画像6に撮影者の個性が表れているとはいえない。
キ 本件画像7
 本件画像7は、本件画像6を加工した結合著作物であるところ、その文章は、「なぜ今、株を学ぶことが必要とされているのか。」と疑問文として一般的なものであり、被控訴人ピー・エム・エーの株式セミナーの案内部分は、同被控訴人のサービスに係る単語を羅列したに過ぎず、いずれも一般的なフォントと単色色彩でデザインしたものであり、創作性はない。
ク 本件画像8
 会場全体が見渡せるように会場後部から撮影するという本件画像8の構図はありふれており、写っている来場者も一様に聴講し特段の決定的瞬間を写し撮ったものではない。本件画像8は、通常、このようなセミナー風景を撮影する写真としては誰が撮影しても同じようなものとなるありふれた表現物である。
 したがって、本件画像8に撮影者の個性が表れているとはいえない。
ケ本件画像9
 本件画像9は、本件画像8を加工した結合著作物であるところ、その文章は、「無料株式セミナー開催決定!参加者募集中」と単に被控訴人ピー・エム・エーの開催イベントを記述したにすぎず、「目からウロコの株式投資のコツを伝授!」の文字も、宣伝文として極めてありふれた一般的なものに過ぎず、いずれも一般的なフォントと単色色彩でデザインしたものであり、創作性はない。
コ 本件画像10
 風景全体を展望地から写すという本件画像10の構図はありふれたものであり、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもない。
 したがって、本件画像10に撮影者の個性が表れているとはいえない。
サ 本件画像11
 本件画像11は、本件画像10を加工した結合著作物であるところ、その文章は、「コミュニケーション活動」という単語を一般的なフォントと単色色彩でデザインしたものであり、創作性はない。
シ 本件画像12
 本件画像12は、控訴人が購入した画像(甲101・番号8)を加工した結合著作物であるところ、その文章は、単に被控訴人ピー・エム・エーの理念を記述したにすぎず、ありふれた表現の域を出ず、また、背景の画像は控訴人の著作物ではないから、創作性はない。
ス 本件画像13
 本件画像13は、控訴人が購入した画像(甲101・番号15)を加工した結合著作物であるところ、その文章は、単色の下地に一般的なフォントで「無料株式セミナー福岡・広島・神戸名古屋・横浜・東京で開催中!」と事実を記述したにすぎず、開催エリアを示す方法もドットを用いた日本地図についての一般的な表現方法であり、また、背景の画像は控訴人の著作物ではないから、創作性はない。
セ 本件画像14
 本件画像14は、控訴人が購入した画像(甲101・番号9)を加工した結合著作物であり、その文章は、「株式投資で失敗したくない方へあなたの疑問や不安を、これまでの受講生の皆さまの声の中から、ご紹介します!」と受講生の体験等を紹介するものとして一般的な表現に留まるものであり、そして、背景の画像は控訴人の著作物ではないから、創作性は
ない。
ソ 本件画像15
 本件画像15は、建物の外観全体が見渡せる川の対岸から撮影するという構図はありふれたものであり、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、被写体となる建物を撮影する写真としてはありふれた表現物である。
 したがって、本件画像15に撮影者の個性が表れているとはいえない。
タ 本件画像16
 本件画像16は、手書きのチャート図をほぼ画面いっぱいに撮影したものであり、いわば被写体を忠実に写し撮ったものにすぎず、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもない。
 したがって、本件画像16に撮影者の個性が表れているとはいえない。
チ 本件画像17
 本件画像17は、控訴人が購入した画像(甲101・番号14)を抜粋して作成したものであり、ピラミッド状の色彩部分に「発展」「応用」「基礎」の文字を加えたにすぎず、階層やカテゴリーの程度を示す表現としては一般的なものであり、また、背景の画像は控訴人の著作物ではないから、創作性はない。
ツ 本件画像18
 前記クと同旨
(2)争点4−2(本件各画像の著作権の帰属等)
【控訴人の主張】
 本件各画像は、控訴人が原告制作ウェブサイトを制作する前に撮影していた写真であるから、その著作者は控訴人である。
 そして、前記1(4)(争点1−4)の【控訴人の主張】のとおり、控訴人は原告制作ウェブサイトやその素材に係る著作権を被控訴人ピー・エム・エーに譲渡したことはないし、本件サーバ上において公衆送信をすることは許諾していたが、これを複製して利用することを許諾したことはない。
【被控訴人らの主張】
 前記1(4)の【被控訴人らの主張】と同旨
(3)争点4−3(被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無(争点4−3)
【控訴人の主張】
 被控訴人らは、本件各画像を被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおいて本件各画像を公開した。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張は争う。
(4)争点4−4(被控訴人らによる著作者人格権(公表権及び氏名表示権)の侵害の有無)
【控訴人の主張】
 前記1(6)(争点1−6)のア、イの【控訴人の主張】のとおりであり、原告制作ウェブサイトの素材である本件各画像について、公表権及び氏名表示権の侵害がある。
【被控訴人らの主張】
 前記1(6)(争点1−6)のア、イの【被控訴人らの主張】と同旨
(5)争点4−5(差止めの必要性)及び争点4−6(権利の濫用の成否)
 当事者の主張は、前記1(7)及び(8)と同旨
5 争点5(DVD等に係る差止請求の可否)について
【控訴人の主張】
(1)本件DVDは、控訴人が、本件スクールの授業をビデオカメラで撮影した動画データに編集を加え、平成22年6月頃から制作していたものであって、授業の復習をしたい会員に対して販売されたり、そのDVDのデータを本件サーバに記録し原告制作ウェブサイトから視聴を希望する会員に配信されていたものであり、収録時間は2時間から3時間程度である。
 本件DVDは、教室の固定された位置から本件スクールの授業を控訴人が自ら撮影、録音したか又は被控訴人ピー・エム・エーの従業員が控訴人が指定した条件下に撮影、録音した動画データに控訴人による編集が加えられたものである。控訴人は、本件DVDのデータについて、撮影に関し、明るさ、ホワイトバランス、感度、絞り、露出等を調整して適切な明るさの下に自然な色合いを持った高解像度の画像なるようにし、構図に関し、どのような教室でも被写体のバストショットが映るようにし、ズームを使って演出をしたり、パンを使って収まり切らない参加者や移動する被写体を映し出したりし、音声については、明確な音声が収録できるよう各種設定をし、編集に際しては、チャプターに分割し、DVDのパッケージをデザインするなどの創意工夫を加え制作したものであり、映画の著作物である。
(2)控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーから指示を受けることなく、撮影、編集等の本件DVDの全体の製作を自らの企業活動として独自に行っていたものであるから、本件DVDの全体的形成に創作的に寄与した者として、本件DVDの著作者である。
(3)被控訴人らは、平成29年夏頃から、本件DVDのデータをサーバーに記録して複製をするとともに、旧動画ウェブサイト及び本件動画ウェブサイトで本件DVDのデータを会員に配信して公衆送信をしているから、被控訴人らの上記行為は、控訴人の保有する本件DVDのデータに係る著作物の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害に該当する。
【被控訴人らの主張】
 本件DVD等に係る差止等請求及び損害賠償請求を追加する訴えの変更には異議がある。
 原審においては、原告制作ウェブサイトに控訴人の著作権が認められるか等について審理を重ねてきたのであって、本件DVDに係る著作権侵害の有無については全く審理の対象とはなっていなかった。したがって、本件DVDに係る著作権侵害の有無を審理の対象にすれば、被控訴人らの審級の利益を害するとともに、更なる審理を要し著しく訴訟手続を遅滞させるものであるから、訴えの変更は不当である。
6損害賠償等請求等の可否(争点6)
(1)争点6−1(被控訴人らの責任の有無)
【控訴人の主張】
ア 被控訴人ピー・エム・エーと被控訴人インターステラーは、別法人であるが、被控訴人Y2が被控訴人ピー・エム・エーの取締役及び被控訴人インターステラーの代表取締役を兼ねていること、被控訴人ピー・エム・エーが事実上休眠しており、被控訴人ピー・エム・エーの業務、従業員及び会員を被控訴人インターステラーが引き継いだこと、被告ウェブサイトの「ログイン」ボタンを押すと本件動画ウェブサイトに遷移し、両ウェブサイトは一体となってサービスを提供していること等からすると、被控訴人ピー・エム・エーと被控訴人インターステラーは、実質的に同一である。
 そして、被控訴人らは、故意又は過失により、前述のとおり、控訴人が保有する著作物についての著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)を侵害したものであるから、民法709条、719条に基づき、上記侵害行為により控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負う。
 また、被控訴人Y1は、被控訴人ピー・エム・エーの代表取締役、被控訴人Y2は被控訴人ピー・エム・エーの取締役、被控訴人Y3は被控訴人インターステラーの取締役であり、上記被控訴人らは、その職務を行うにつき悪意又は重過失があったから、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人インターステラーと連帯して、会社法429条1項に基づく損害賠償義務を負う。
イ 仮に被控訴人らの行為が著作権侵害又は著作者人格権侵害に当たらないとしても、被控訴人らの行為の悪質性に鑑みれば、被控訴人らは、原告制作ウェブサイト等に係る控訴人の独占的利用権、営業権等の権利を侵害したといえるから、一般不法行為に基づく損害賠償義務を負う。
【被控訴人らの主張】
 控訴人の主張はいずれも争う。
 被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1は、専門業者であるAに原告制作ウェブサイトの復旧について相談し、復旧作業を委託したが、Aからは、その具体的な方法やウェブサイトの著作権等に関する説明や注意は受けなかったこと、ウェブサイトに関する作業を専門業者に委託した場合、委託者は著作権等の侵害を惹起することはないことを期待してしかるべきであることからすると、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1には、故意及び過失はない。
 次に、被控訴人インターステラー、被控訴人Y2及び被控訴人Y3は、被告ウェブサイトの制作の経緯等は知らないから、故意及び過失はない。
 また、被控訴人インターステラーは、被告ウェブサイトを承継しておらず、その管理権限や管理用ID及びパスワードも承継していないこと、本件動画ウェブサイトには、被告ウェブサイトへのリンクは設定されておらず、被控訴人ピー・エム・エーや本件スクールとの関係を示す表示もないことからすると、被控訴人ピー・エム・エーと被控訴人インターステラーが一体となって事業を運営している実態はない。
(2)争点6−2(控訴人の損害額)
【控訴人の主張】
ア 控訴人制作ウェブサイトのウェブページに係る著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)侵害の損害額
(ア)著作権法114条1項に基づく損害額(主位的主張)
 被控訴人らは、被告ウェブサイト、旧被告ウェブサイト及び新被告ウェブサイトをウェブサイトとしてユーザーが利用できるように公開し、公衆送信したから、被控訴人らは、原告制作ウェブサイトを3回譲渡したものといえる。
 そして、原告制作ウェブサイトの譲渡に係る単位数量当たりの利益額は、侵害当時に原告制作ウェブサイトを再制作する際の制作代金434万1600円から売上原価2万5860円を控除した431万5740円であるから、控訴人の著作権法114条1項に基づく損害額は、1294万7220円(431万5740円×3)となる。
(イ)著作権法114条3項に基づく損害額(予備的主張)
 原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の行使について控訴人が受けるべき利用料相当額は、1ウェブサイト当たり、原告制作ウェブサイトの制作代金434万1600円と同額である。
 そうすると、控訴人の著作権法114条3項に基づく損害額は、1302万4800円(434万1600円×3)となる。
イ 本件DVDに係る著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)侵害の損害額
(ア)著作権法114条1項に基づく損害額(主位的主張)
 被控訴人らは、平成29年9月から平成30年5月末日までの間、旧動画ウェブサイトの配信機能を用いて、会員に対し、本件DVDを少なくとも合計3652回受信させて視聴に供した。
 この期間の本件DVDの販売による単位数量当たりの利益額は、本件DVDの平均価格2万5340円に制作者たる控訴人の利益配分率50%を乗じた1万2670円が相当である。
 また、被控訴人らは、同年6月1日から令和2年8月末日までの間、件動画ウェブサイトの配信機能を用いて、平成30年6月1日から令和2年8月末日までの間に、会員に対し、本件DVDを少なくとも合計3652回受信させて視聴に供した。
 この期間の本件DVDの販売による単位数量当たりの利益額は、本件DVDの平均価格3万1500円に制作者たる控訴人の利益配分率50%を乗じた1万5750円が相当である。
 以上によれば、控訴人の著作権法114条1項に基づく損害額は、合計1億0378万9840円(1万2670円×3652+1万5750円×3652)となる。
(イ)著作権法114条3項に基づく損害額(予備的主張)
 本件DVDに係る著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の行使について控訴人が受けるべき利用料相当額は、前記(ア)と同額である。
 したがって、控訴人の著作権法114条3項に基づく損害額は、合計1億0378万9840円となる。
ウ 著作権侵害の慰謝料
 被控訴人らによる著作権侵害によって控訴人が被った精神的損害を慰謝するための慰謝料は、200万円を下らない。
エ 著作者人格権侵害の慰謝料
 被控訴人らによる著作者人格権侵害(原告制作ウェブサイトに係る著作物につき公表権侵害、氏名表示権侵害及び同一性保持権侵害、本件各画像につき公表権侵害及び氏名表示権侵害)によって控訴人が被った精神的損害を慰謝するための慰謝料は、460万円を下らない。
オ 調査費用等
 控訴人は、権利侵害の有無を明らかにするための事実実験公正証書の作成費用、本件訴訟の期日に裁判所に出頭するための旅費、証人Aの旅費日当の予納、訴訟資料の作成、複写をするための費用を支出した。
 これらの調査費用等の合計200万円は、本人訴訟の弁護活動費用として、被控訴人による著作権侵害行為と相当因果関係のある損害に当たる。
カ 本件保守業務委託契約に基づく報酬等
(ア)本件保守業務委託契約に基づく報酬77万7600円
 被控訴人らは、本件保守業務委託契約に基づき、控訴人に対し、平成30年1月から平成32年12月までの間の36か月分の報酬77万7600円(月額税込2万1600円)の支払義務を負う。
 控訴人と被控訴人Y1は、本件保守業務委託契約の合意解約のためには書面による解約の申出が必要であることを確認し、その際、被控訴人Y1は後で書面を送ると述べたが、結局書面は送られなかったから、本件保守業務委託契約は、合意解約されていない。
(イ)違約金25万9200円
 被控訴人らは、本件制作業務委託契約16条に基づき、控訴人に対し、契約違反の違約金として25万9200円の支払義務を負う。
キ まとめ
 以上によれば、控訴人は、民法709条、719条又は会社法429条1項に基づき、被控訴人らに対し、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償等として、主位的には、合計1億2637万3860円の損害額等の一部である6500万円及びこれに対する平成30年7月14日(被控訴人らに対する最終の訴状送達の日の翌日)から支払済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を、予備的には、合計1億2645万1440円の損害額等の一部である6500万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。
【被控訴人らの主張】
ア 控訴人主張の控訴人制作ウェブサイトのウェブページに係る著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)侵害の損害額、著作権侵害の慰謝料、著作者人格権侵害の慰謝料、調査費用等及び本件保守業務委託契約に基づく報酬等は、いずれも争う。
イ 著作財産権侵害(著作権侵害)に基づく損害については、財産的損害の賠償により損害を回復できることから、原則として慰謝料請求は認められない。本件で侵害の対象とされたのは通常の商業用ウェブサイトであり、侵害された財産権が特別の精神的価値を有し、単に侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは到底償い難い程の甚大な精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情もないから、著作財産権の侵害に基づく慰謝料は発生しない。
 したがって、控訴人の著作権侵害の慰謝料の主張は失当である。
ウ 民事訴訟法は自己の権利実現のための訴訟について本人訴訟を原則としており、訴訟費用以外の一切の費用を自己負担とすることを予定している。
したがって、本人訴訟による訴訟活動費用が相当因果関係のある損害と認められる根拠も合理性もない。
 したがって、控訴人の調査費用等の主張は失当である。
エ 被控訴人ピー・エム・エーは、平成29年12月中旬、控訴人に対し、本件保守業務委託契約を解約する旨告知し、控訴人もその後に受託業務を一切行っていないから、本件保守業務委託契約は、同年12月をもって合意により終了している。
 また、仮に合意解約が認められないとしても、被控訴人ピー・エム・エーの代理人弁護士は、平成30年2月23日付け書面(甲30)をもって、控訴人に対し、本件保守業務委託契約終了の意思表示をしたから、同契約は終了した。
 さらに、準委任契約は専ら委任者のためにされる契約であり、受任者が委任事務を履行しないときには報酬は発生しないところ、控訴人は平成30年1月以降被控訴人ピー・エム・エーのために何ら委託業務を行っていないから、同年1月以降の保守業務委託手数料は発生しない。
 したがって、控訴人の本件保守業務委託契約に基づく報酬の主張は失当である。
(3)争点6−3(権利の濫用の成否)
 当事者の主張は、前記1(8)と同旨
(4)争点6−4(被控訴人Y1につき再生計画認可決定確定による権利変更の有無)
【被控訴人らの主張】
ア 被控訴人Y1は、令和元年6月24日、福岡地方裁判所に対し、自己を再生債務者とする小規模個人再生(以下「本件再生手続」という。)の申立てをし、同年8月9日、再生手続開始の決定を受けた(乙39)。
 福岡地方裁判所は、令和元年12月13日、可決された再生計画(以下「本件再生計画」という。乙34)につき認可の決定をし、令和2年1月11日、同決定は確定した(乙35、36)。
 控訴人は、本件再生手続において、本件訴訟に係る請求債権を再生債権として届け出たところ、被控訴人Y1は異議を述べた。
 これに対して控訴人は再生債権評価の申立てをしなかったため、本件再生計画から除外された。
 したがって、控訴人の被控訴人Y1に対する請求債権は本件再生計画における権利変更が適用され、かつ、再生債権評価の申立てをしなかったため再生計画に基づく弁済期間が満了した時点で弁済期が到来する。
イ また、控訴人の被控訴人Y1に対する請求債権は将来の給付の訴えとなったところ、あらかじめその請求をする必要がある場合には当たらないから、被控訴人Y1に対する請求は却下されるべきである。
【控訴人の主張】
 被控訴人Y1の主張は争う。
 控訴人の被控訴人Y1に対する損害賠償請求権は非免責債権であるから、再生計画の効力が及ばない。
第4 当裁判所の判断
1 控訴人の当審における追加請求のうち、本件DVDに係る差止等請求及び損害賠償請求に関する訴えの変更について
 控訴人は、当審において、別紙映画目録記載の本件DVDの著作権侵害及び著作者人格権侵害を理由に本件DVDのデータの複製等の差止等請求及び損害賠償請求を追加する旨の訴えの変更をし、被控訴人らは、これについて異議を述べた。
 そこで検討するに、本件DVDは被控訴人ピー・エム・エーで行われた授業等の様子を録画又は録音したものであり、その数は、タイトル数だけでも58あり、収録授業等は200本を超えるものであること、本件DVDの著作物性及び著作権の帰属等の審理においては、これらのDVD等のそれぞれにつき制作過程やその録画等の内容を確認し、撮影、編集等に関して控訴人において創作的に寄与した部分がどこにあるのかを判別し、著作権侵害の有無及び損害の審理においては、これらのDVD等のそれぞれの配信、販売等の有無やその程度・回数等を認定する必要があり、これらの審理には相当長期間を要することが予想されることに鑑みると、本件DVDのデータの複製等の差止等請求及び損害賠償請求を審理することにより著しく訴訟手続を遅滞させることになるものと認められる。
 したがって、控訴人の当審における追加請求のうち、本件DVDのデータの複製等の差止等請求及び損害賠償請求に関する部分の訴えの変更は、許さない。
2 認定事実
 次のとおり訂正するほか、原判決23頁4行目から29頁13行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決23頁4行目を次のとおり改める。
 「2認定事実
 前記第2の2の前提事実と証拠(甲4、6ないし13、17ないし24、31、32、34、35、63、67、74、75、77、79ないし81、84、86ないし89、98ないし103、110ないし113、115、123、128、146、154ないし156、171ないし173、175ないし177、194、200、237、251、268、269、306、313、328、336、337、381、389、390、乙4ないし8、10ないし12、16、17、19、22、29ないし41(枝番のあるものは、いずれも枝番を含む。)、証人A、被控訴人Y1、控訴人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。」
(2)原判決24頁7行目から9行目までを次のとおり改める。
 「本件保守契約書(甲146)には、次のような定めがある。なお、「甲」は控訴人を、「乙」は被控訴人ピー・エム・エーを指す。
 「第2条(目的及び委託の内容)
 乙は、次の各号に掲げる業務(以下「本件業務」という。)を甲に委託し、甲はこれを受託する。
(1)本件制作業務(請負契約)
(ア)甲が乙に対し、Webサイト設計、デザイン及びコーディングの実施を行うなど、別紙に定めた本件制作業務。
(2)保守業務(準委任契約)
(ア)甲が乙に対し、継続的な運用指導、前号により制作されたWebサイトに関する別紙に定めた保守業務。
(3)前各号に定める業務のほか、甲が必要と判断し、乙が承認を行った業務。
2 本制作業務におけるWebサイト仕様等の具体的内容は、甲が乙にヒアリングした事柄に基づき、分析及び要件定義し、これを乙が承認し、確定した内容とする。
 (以下略)」
 「第5条(契約期間)
 本契約における検収完了日の翌日より保守業務の委任契約を開始する。保守業務の委任期間は、保守業務開始日より5年間とする。
2 前項に定めた期間満了の3か月前までに、契約更新しない旨の意思表示を書面によって当事者のいずれからもなされないとき、本契約は、同一の条件でさらに、5年間自動的に延長されるものとし、以後も同様とする。」
 「第6条(委託料)
 乙が甲に対して支払う本件制作委託料額は、別紙に定めるとおりとする。
2 乙が甲に対して支払う保守業務委託料は別紙に定める。
 (以下略)」
 「第14条(知的財産権等)
 (略)
3 本件成果物の著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)その他の権利は、制作者に帰属するものとする。
 (以下略)」
 「第16条(賠償責任)
  甲及び乙は、本契約に基づく債務を履行しないことが原因で、相手方に現実に損害を与えた場合には、本契約の解除の有無に関わらず、運営業務に対する委託料額の12か月分を限度として、損害賠償責任を負う。本項には相手方の責に帰することのできない事由による一方的な契約解除を含む。」
 「第20条(契約の解除及び期限の利益の喪失)
  甲及び乙は、相手方が次の各号に該当した場合には、予告なく本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1)当事者一方が相手方に対する料金支払い債務、その他一切の債務につき支払い義務を怠ったとき
 (略)
(9)当事者一方が、信用を著しく毀損する行為又は背信的と認められる行為を行ったとき
 (以下略)」
 「(別紙)
 本件業務の詳細
 制作業務委託料¥217、080円(消費税含む)請求済み
 運営業務委託料月額¥20、000(消費税を含まない。)
 (略)
 保守業務、委託業務の詳細
1 Webサイト不具合等の修補
2 管理画面、不具合等の修補60
 (略)
6 Webサイトの運用の指導又は提案又は注意喚起
7 その他、問合せ対応」」
(3)原判決24頁10行目、23行目、同25頁9行目、10行目、11行目、15行目、16行目及び末行の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と改め、同頁14行目の「ピー・エム・エーからの」の次に「控訴人に対する」を加え、同頁末行の「ウェブサイト作成用」を「ブログ作成用」と改める。
(4)原判決26頁1行目から2行目にかけて、6行目、13行目、21行目、25行目及び末行の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と、同頁22行目の「訴外エックスサーバー」を「エックスサーバー社」と改める。
(5)原判決27頁2行目末尾に行を改め次のとおり加える。
 「被控訴人Y1は、同月28日、控訴人に対し、本件保守業務委託契約を解約して控訴人との関係をすべて終了させる旨を電話で伝えたところ、控訴人は、書面による合意でしか契約は破棄できない旨を述べた(甲111、112)。
 控訴人は、平成30年1月18日付け請求書(甲24)で、被控訴人ピー・エム・エーに対し、本件保守委託業務契約16条に基づく違約金として25万9200円を請求した。
 被控訴人ピー・エム・エーの代理人弁護士は、同月25日、控訴人に対し、本件保守業務委託契約は既に終了している、同契約の16条は損害賠償額の上限を定める条項にすぎない旨を記載した書面(乙12)を送付した。
 被控訴人ピー・エム・エーの代理人弁護士は、同年2月23日頃、控訴人に対し、本件保守業務委託契約は終了しているので、控訴人が被控訴人ピー・エム・エーに送付した2018年2月20日付け請求書に係る保守管理費用(2万1600円)の請求には応じられない旨を記載した通知書(甲30)を送付した。」
(6)原判決27頁3行目及び7行目の各「訴外エックスサーバー」をいずれも「エックスサーバー社」と、同頁5行目、9行目、19行目及び末行の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と改め、同頁21行目の「Aが」から22行目末尾までを次のとおり改める。
 「原告制作ウェブサイトのリニューアルを依頼した。
 マークス社は、同月頃、本件サーバに記録されていた原告制作ホームページのデータをコピーして、旧被告ウェブサイトを制作した。旧被告ウェブサイトに係るデータは、さくらインターネットが管理するレンタルサーバーに記録された。上記サーバーのレンタル契約は、マークス社が自己名義でさくらインターネットと締結していた。
 その後、被控訴人Y1は、上記のとおり、同年12月12日に本件サーバが凍結されて、原告制作ウェブサイトが閲覧、利用できなくなり、控訴人からは、原告制作ウェブサイトの復旧はできない旨言われたため、被控訴人Y2と相談の上、同年12月13日頃、Aに連絡し、早急に復旧するよう依頼した。」
(7)原判決28頁3行目の「Aによる新規ウェブサイトの制作」を「マークス社による新被告ウェブサイトの制作」と、同頁6行目、10行目から11行目にかけて、14行目の各「原告ウェブサイト」をいずれも「原告制作ウェブサイト」と改め、同頁7行目の「暫定的に」を削り、同頁21行目の「同年5月1日」から22行目の「相談の上、」までを次のとおり改める。
 「被控訴人Y1は、同月末日限りで被控訴人ピー・エム・エーの事業を停止することとし、被控訴人Y2と相談の上、被控訴人Y2が新会社を設立して被控訴人ピー・エム・エーの事業の一部を当該新会社に承継させることとした。同月1日、被控訴人インターステラ―が設立され、被控訴人Y2が」と改める。
(8)原判決28頁末行の「被告インターステラー」から同29頁2行目末尾までを次のとおり改める。
 「その後、被控訴人インターステラーは、平成30年9月3日ころまでに、「株の学校プラスワン」の会員に対し、旧動画ウェブサイトのコンテンツを「plusone.socialcast.jp」ドメインの本件動画ウェブサイトで提供するようになった。」
(9)原判決29頁13行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「被控訴人Y1は、令和元年6月24日、福岡地方裁判所に対し、自己を再生債務者とする小規模個人再生(以下「本件再生手続」という。)の申立てをし、同年8月9日、再生手続開始の決定を受けた(乙39)。
 控訴人は、債権届出期間内に、被控訴人ピー・エム・エーの著作権侵害に係る会社法429条に基づく1260万円の請求権について再生債権のの届出をしたところ、被控訴人Y1は、全額について異議を述べた(乙37、40)。
 福岡地方裁判所は、令和元年12月13日、可決された再生計画(以下「本件再生計画」という。乙34)につき認可の決定をし、令和2年1月11日、同決定は確定した(乙35、36)。本件再生計画には、次のような記載がある。
 「第1再生債権に対する権利の変更
1 一般条項

(2)権利の変更
 再生債務者は、各再生債権者からそれぞれが有する再生債権について、次のとおり免除を受ける。
ア 再生債権の元本及び再生手続開始決定の日の前日までの利息・損害金の合計額の89.99パーセントに相当する額
イ 再生手続開始決定の日以降の利息・損害金は全額
(3)弁済方法
 再生債務者は、各再生債権者に対し、(2)の権利変更後の再生債権について、次のとおり分割弁済をする。
(分割弁済の方法)
 ■(毎月の分割払い)
 4年間は、再生計画認可決定の確定した日の属する月の翌月から毎月末日限り、2.084パーセントの割合による金員(毎月の支払分・合計48回)…
 ■(少額債権、一括払い)
 ただし、権利変更後の再生債権の額が5万円未満の場合には、再生計画認可決定の確定した日の属する月の翌月末日限り全額(民事再生法229条1項の少額債権)」」
3 争点1(ウェブページに係る差止請求の可否)について
(1)争点1−1(原告制作ウェブサイトのプログラムの著作物性)
ア 著作権法上の「プログラム」は、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2)、プログラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するためには、プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され、その作成者の個性が表れていることが必要であると解される。すなわち、プログラムの具体的記述において、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れていることが必要であると解される。
イ 控訴人は、@本件プログラム中の「style.css」(甲36)及び「functions.php」(甲38)の著作者氏名の記述、Aファイルに付されたパスワードの記述、顧客のID、パスワード、メールアドレス、B変数の命名方法、C「style.css」の1行目に「utf-8」を記述し、Unicodeによる言語設定を行い、レスポンシブデザインとして、750ピクセル、970ピクセル及び1170ピクセルの3つの横幅設定をしたこと、D「functions.php」の中で説明文をコメントで付したこと、E「common.css」(甲104)で全体のフォントとして「adobeFonts」(甲99)を指定したこと、F「member-top.css」(甲106)で会員専用ページを設定したこと、Gクラスの定義付け、Hモジュールの区分け、I基礎CSSとして「Bootstrap」を採用したことは、控訴人独自の創作的表現であるから、本件プログラムは、プログラムの著作物に該当する旨主張する。
 しかしながら、@、A及びDについては、控訴人の氏名である「★X★」との記述は電子計算機に対する指令ではなく、また、ファイルに対するパスワードや顧客のID、メールアドレス、コメント等は指令の組合せではないから、プログラムの著作物としての創作性を認める余地はない。
 Bについては、変数名は電子計算機に対する指令の組合せではなく、変数の命名方法は、電子計算機に対する指令についての創意工夫ではない。
 Cについては、「utf-8」を記述したのはあらかじめプログラム言語に準備されている命令を記述したにすぎず、指令の組合せについての創意工夫ではなく、また、特定のピクセル値で3つの横幅設定をしたこと自体は、表現ではなく、プログラミングに関するアイデアにすぎない。
 EないしIについては、フォントの指定、ページの設定、クラスの定義付け及びモジュールの区分け等自体や、どのようなプログラムを採用するかは、表現ではなく、プログラミングに関するアイデアにすぎず、また、「Bootstrap」は控訴人が作成したプログラムではない、
 したがって、控訴人の上記主張は採用することはできない。
 他に本件プログラムの具体的記述に控訴人の思想又は感情が創作的に表現され、控訴人の個性が表れていること認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上によれば、本件プログラムがプログラムの著作物に該当することを認めることはできない。
(2)争点1−2(原告制作ウェブサイトのデータベースの著作物性)について
ア 「データベースの著作物」は、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」をいい(著作権法12条の2)、データベースをデータベースの著作物として保護するためには、情報の選択又は体系的構成について選択の幅が存在し、その情報の選択又は体系的な構成について作成者の思想又は感情が創作的に表現され、その作成者の個性が表れていることが必要であると解される。
イ 控訴人は、@「risekabu_db」の「rise_t_contact_history」テーブルに、既存の顧客の個人情報とは別にインターネット経由で新規の問合せや予約などをしてきたいわゆる見込み客に相当するユーザーの個人情報を蔵置していること、A「risekabu_renew」の「wpstg1_better_user_search_meta_keys」テーブルにおける「birthday」、「class」、「first_name」、「last_name」及び「School_offices」をインデックス化することでこれら5つでも検索ができるようにしたこと、B「risekabu_wp1」の「wp_users」テーブルにロックをかけ、テーブルに記録されている著作者である控訴人の氏名を第三者によって書き換えられないようにしたこと、C「risekabu_xoops2」に、文字化けに対処するための「test」テーブルを加えるなどして文字化けの変換を行えるようにしたこと、D第三正規化まで実施したことは、控訴人の創意工夫によるものであるから、本件データベースは、データべースの著作物に該当する旨主張する。
 しかしながら、@については、単に既存顧客と見込み客の情報を保存するテーブルを別にしたというだけではテーブル間構造としてはありふれたものにすぎず、体系的な構成に創作性を認めることはできない。
 Aについては、控訴人の主張する5つの属性を非クラスタ化インデックスとしていることについての具体的な主張立証がされていない。
 B及びCについては、テーブルに記録されている情報を書き換えられないようにすることや文字化けに対処するような措置をとることは、情報の選択又は体系的構成における創意工夫とはいえない。
 Dについては、正規化はプログラムにより機械的にも行い得るところ、控訴人は自らがどのような正規化を行ったかを具体的に明らかにしておらず、情報の選択又は体系的構成について控訴人がした創意工夫がどのようなものか不明である。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することはできない。
 他に本件データベースにおける情報の選択又は体系的構成に控訴人の思想又は感情が創作的に表現され、控訴人の個性が表れていることを認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上によれば、本件データベースがデータベースの著作物に該当することを認めることはできない。
(3)争点1−3(原告制作ウェブサイトの表示等に係る著作物性)について
ア 原告制作ウェブサイトのウェブページ(甲46の1、2)は、緑色を基調とし、ヘッダの左側に、「RISeTRADINGSCHOOL」というロゴと図形から成る標章、同右側に緑地に白抜きで問合せ用のフリーダイヤルの番号、メール用のボタン及びオレンジの地に白抜きで「ログイン」というボタンが表示され、その下には、「トップページ」、「ライズ株式スクールとは」、「コース・料金表」、「受講生の声」及び「会社案内」との名称のタブがあり、フッタには、ヘッダと同じ被控訴人ピー・エム・エーのロゴと図形からが成る標章があり、その末尾に、「Copyright?ライズ株式スクールAllRightsReserved」との表示がある。また、画面は、右側にサイドバーを置いた2列の構成である。サイドバーにはバナー等が配置され、メインの画面には各種記事、画像、図形等が配置されている
イ 控訴人は、原告ウェブサイトのウェブページにおいて、@ウェブページのタイトル、AURL、Bメタ・ディスクリプション及びメタ・キーワード、C「無料株式セミナー」のページの表示等は、控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものであるから、著作物に該当する旨主張する。
 しかしながら、@については、ウェブページのタイトルは、当該ページに付せられた表題であり、ページの内容をごく短い短文で簡潔に記述するものであるから、表現の選択の幅はほとんどなく、控訴人が指摘するタイトル(甲27の「タイトル」の項で示されたもの)は、ありふれた表現である。
 Aについては、URLは、当該ページのアドレスを表示するものであり、ページの性質に応じた語で簡潔に記述するものであるから、表現の選択の幅はほとんどなく、控訴人が指摘するURL(甲27の「URL」の項で示されたもの)は、ありふれた表現である。また、URLにパーマリンク設定をしたとしても、設定それ自体は表現行為ではなく、表示された結果は年月日等が表示されるだけのありふれた表現にすぎない。
 Bについては、メタ・ディスクリプション及びメタ・キーワードは、ページ内の文章を適宜抜粋した短文であり、どの部分を抜粋するかはアイデアであり、表示された結果もページでされた表現に新たな思想又は感情を加えるものではない。また、控訴人は、メタ・ディスクリプション及びメタ・キーワードのどのような表現が創作性を有するのかについて具体的な主張立証をしていない。
 Cについては、「無料株式セミナー」のページ(甲321)のどのような表現が創作性を有するのかについて、控訴人は具体的な主張立証をしていない。
 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(4)小括
 以上のとおり、本件プログラム、本件データベース及び原告制作ウェブサイトに係る表示等は、いずれも著作物に該当することを認めることができないから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の被告ウェブサイト、本件動画ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトに係る各ウェブページの複製等の差止等請求は、理由がない。
4 争点2(プログラムデータに係る差止等請求の可否)(当審における追加請求)について
(1)争点2−1(本件各データの著作物性)
 控訴人は、本件各データは、プログラムの著作物である本件プログラムの一部を構成するものであるから、プログラムの著作物として保護される旨主張する。
 しかしながら、本件データ1、2、6及び7は、IDやアカウント等の記号の羅列にすぎないデータであり、控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものと認めることはできない。
 また、本件データ3ないし5については、どのような表現が創作性を有するのかについて、控訴人は具体的な主張立証をしていない。
 さらに、本件プログラムが著作物に該当するものと認めることはできないことは、前記3(1)で説示したとおりである。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
(2)小括
 以上のとおり、本件各データが著作物に該当することを認めることができないから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の本件各データの複製等の差止等請求は、理由がない。
5 争点3(ユーザーデータに係る差止等請求の可否)(当審における追加請求)について
(1)争点3−1(本件会員情報の著作物性)控訴人は、本件会員情報は、本件データベースに格納された本件プログラムと協働するデータであるから、本件プログラムの著作物の一部として、著作権法で保護される旨主張する。
 しかしながら、本件会員情報は、人の属性等を示すデータにすぎず、単にプログラムが処理の対象とするデータにすぎないから、プログラムの著作物であると認めることはできない。
 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(2)小括
 以上のとおり、本件会員情報が著作物に該当することを認めることができないから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の本件会員情報のデータの複製等の差止等請求は、理由がない。
6 争点4(画像データに係る差止請求の可否)(当審における追加請求)について
(1)争点4−1(本件各画像の著作物性)について
ア 写真は、被写体の選択、組合せ、配置、陰影若しくは色彩の配合、構図若しくはトリミング、部分の強調若しくは省略、背景、カメラアングルの設定、シャッターチャンスの捕捉又はシャッタースピード若しくは絞りの選択等の諸要素を結合してなる表現であり、写真を写真の著作物として保護するためには、これら諸要素に撮影者の思想又は感情が創作的に表現され、その撮影者の個性が表されていることが必要であると解される。
また、写真と文字、図形等を組み合わせた画像を著作物として保護するためには、これと同様に、当該画像に作成者の個性が表されていることが必要であると解される。
イ 本件画像1
(ア)本件画像1は、研修会の会場において複数の参加者が展示物をのぞきこんでいる様子を撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、会場における多数の参加者の動きある姿を後方から全体的に俯瞰するように撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像1は、会場全体が見渡せるように隅から撮影するという構図はありふれており、写っている来場者も雑多で特段の決定的瞬間を写し撮ったものではなく、セミナー風景を撮影する写真としては誰が撮影しても同じような写真となるありふれた表現物であり、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像1は、複数の参加者の特定の動きを捉えて撮影したものであり、単に雑多な参加者の姿を会場隅から撮影したというものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ウ 本件画像2
(ア)本件画像2は、神戸国際会館の外観を撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、丸みのある外観を有する大きなビルをその全体が俯瞰できるやや離れた位置からやや見上げるようにして上記ビルの形状や大きさが強調されるように撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当すると認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、建物の外観全体が見渡せる交差点の斜め向かいから撮影するという構図はありふれたものであり、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、被写体となる建物を撮影する写真としてはありふれた表現物であり、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像2は、建物の外観の特徴を強調するように撮影しているのであり、単に建物の外観をやや離れた位置から撮影したというものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
エ 本件画像3
(ア)本件画像3は、神戸国際会館のビル外壁上層に設置されているロゴ及び建物名を表す切り文字の銘板を撮影した写真の画像であり(甲44)、下側から見上げられた当該ロゴ及び文字が左上から右下に向けて斜めになるような角度配置にして撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当すると認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像3は、単に建物を示す標識部分を通常の方法で撮影したものであり、写真中央部に同標識部分が収まっておりそれ以外の被写体もないという構図はありふれており、特筆すべき決定的瞬間を映したものでもないから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像3は、一定の構図を念頭にして撮影しているものであり、単に標識を平面的に撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
オ 本件画像4
(ア)本件画像4は、神戸国際会館内部の案内板が設置されている付近の廊下を撮影した写真の画像であるが(甲44、弁論の全趣旨)、天井の斜光を積極的に画面に取り入れながら曲線形の廊下の形状が奥行きをもって強調されるよう撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像4は、単に歩行可能な通路を歩行者の目線から撮影したものであり、その構図はありふれたもので、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、撮影者の個性が表れているものではない旨主張する。
 しかしながら、本件画像4は、特徴ある廊下の形状が強調されるように撮影した写真の画像であり、単に廊下の様子を撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
カ 本件画像5
(ア)本件画像5は、神戸国際会館近くの街路樹の中の花壇にあった置物を望遠でクローズアップして撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、あたかも深い森の中で雌雄のカップルが逢引きをしている様子を覗くような構図となっている点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像5は、中央に置物を配置しこれをほぼ正面から写す構図はありふれたものであり、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、撮影者の個性が表れているものではない旨主張する。
 しかしながら、本件画像5は、花壇の中にあった置物をそれとは全く異なる姿に構成した上で、撮影しており、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
キ 本件画像6
(ア)本件画像6は、会議室で研修を受けている出席者の姿を撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、意図的に極端にピントをぼかしてホワイトオーバーをさせるなど通常と異なる撮影をしている点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像6は、教室全体が見渡せる会場の隅から全体を撮影する構図は、セミナー風景を撮影するものとしてはありふれており、ぼかしの加工も写真の加工方法としては一般的であり、しかも、ぼかしに強弱がつけられているものではなく全体が均一にぼかされているにすぎず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、撮影者の個性が表れているものではない旨主張する。
 しかしながら、本件画像6のピントのぼかし方はかなり極端なものであり、単にぼかし加工を加えたものとはいえず、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ク 本件画像7
(ア)本件画像7は、ぼやけた複数の人様の姿を背景にして、「なぜ今、株を学ぶことが必要とされているのか。」との文字と、緑色の長方形の枠の中に、金色の勲章を模した図形、「13、000名が受講した」の文字、赤字の四角形を下地とした「無」「料」「株式セミナー」との白抜きの文字、橙色の長方形を下地とした「お申込みはこちら」との白抜きの文字及び黄色の早送りを示す記号並びに「福岡・広島・神戸・大阪・名古屋・横浜・東京で開催!」のとの白抜きの文字を重ね合わせた画像である(甲44)。
 しかるところ、上記案内文は広告宣伝文として特徴のないものであり、文字の字体及び図形のデザインやそれらの配置・配色のいずれもありふれたものである。
 また、背景とされている写真は撮影対象を明瞭に認識することもできないものであるから、特段の思想又は感情を感得させるものではない。
 そうすると、本件画像7に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像7は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し控訴人は、本件画像7の白飛びしている部分は、文字情報が明瞭となり的確に情報伝達できることから、その部分にセミナーの案内の見出しを制作した旨主張するが、そのような制作方法はありふれたものであり、そのような方法をとったことで本件画像7に創作性が生じるとする余地はない。
 控訴人の上記主張は、採用することができない。
ケ 本件画像8
(ア)本件画像8は、会議室で研修を受けている出席者の姿を後方から撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、遠近感を強調して会場の奥方向に視点が向くように撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像8は、会場全体が見渡せるように会場後部から撮影するという構図はありふれており、写っている来場者も一様に聴講し特段の決定的瞬間を写し撮ったものではなく、通常、このようなセミナー風景を撮影する写真としては誰が撮影しても同じようなものとなるありふれた表現物であるから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像8は、遠近感が強調されるようにして会場を撮影しているのであり、単に会場後部から会場の様子を撮影したものとはいえず、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
コ 本件画像9
(ア)本件画像9は、会議室にて研修を受けている出席者の姿を後方から撮影した写真の画像の上に、黒色の「無料株式セミナー開催決定!!」の文字、緑色の「参加者募集中」の文字及び黄色の線の上に書された黒色の「目からウロコの株式投資のコツを伝授!」との文字を重ね合わせた画像である。
 しかるところ、上記案内文は広告宣伝文として特徴のないものであり、文字の字体及び図形のデザインやそれら配置・配色のいずれもありふれたものである。
 また、背景とされている画像は、本件画像8の下半分を薄くぼかしているにすぎず、これにより本件画像8に新たな創作部分が付加されたものとはいえない。
 そうすると、本件画像9に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像9は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し控訴人は、本件画像9は、背景画像を半透明の白マット
で覆うことで画像の情報を減らし、株式セミナーのキャッチコピーの視認性が高まるようにし、「目からウロコの株式投資のコツを伝授!」には、黄色マーカーを下線として加えてキャッチコピーと背景画像の相乗効果を出すようにした旨主張する。
 しかしながら、文字部分の視認性を高めるために背景をぼかしたり、下線を付したりすることは特段の創意を要することではないから、それによって本件画像9に新たな創作的部分が付加されたとはいえない。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
サ 本件画像10
(ア)本件画像10は、ゴルフ場内の風景を撮影した写真の画像であり(甲44、弁論の全趣旨)、樹木や芝生の緑色が強調される一方で青空が白色に近くなるよう撮影して点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像10は、風景全体を展望地から写す構図はありふれたものであり、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもないから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像10は、芝生等の緑を強調し青空を白色に近くなるよう撮影しているのであり、単に風景をそのまま撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
シ 本件画像11
(ア)本件画像11は、本件画像10の上に白色の「コミュニケーション活動」との文字を重ね合わせたものであるが(甲44)、上記文字の字体や装飾・色彩には特徴はなく、この文字部分に創作性があるとは認められない。また、背景とされている本件画像10は本件画像の上側と下側をトリミングしたものであり、これにより本件画像10に新たな創作的部分が付加されたとはいえない。
 そうすると、本件画像11に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像11は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し控訴人は、本件画像11は、樹木部分だけを抜き出すようトリミング加工した旨主張するが、そのような制作方法はありふれたものであり、そのような方法をとったことで本件画像11に創作性が生じるとする余地はない。
 したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
ス 本件画像12
(ア)本件画像12は、控訴人が購入したイラスト(甲101〔番号8〕、甲103)の上に、紺色の「スクール理念」、「株式投資の技術を習得し自分で投資先を選び、売買のタイミングまで判断できる自立した個人投資家の育成を行い、金融教育の普及とともに、各個人の人生の豊かさの実現を提案し続けます。」との文字を重ね合わせた画像である。
 しかるところ、購入したイラストは控訴人の著作物ではない。また、上記文言は、株式投資の知識を教授する学校の設立理念としてごくありふれたものであり、上記文字の字体や色彩にも特徴がないから、この文字部分には創作性は認められず、これにより本件画像12に新たな創作部分が付加されたとはいえない。
 そうすると、本件画像12に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像12は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し控訴人は、本件画像12は、背景になじむように、スクール理念の文字の色に濃紺を用い、文字の輪郭にソフトエッジを採用し、透過度を60パーセントとすることで、徐々にエッジが衰退する表現にして文字の柔らかさを表現している旨主張するが、それらは、ありふれた手法にすぎず、そのような加工を加えたからといって、本件画像12に新たな創作的部分が付加されたとはいえない。
 控訴人の上記主張は、採用することができない。
セ 本件画像13
(ア)本件画像13は、控訴人が購入した日本地図をドットで表したイラスト(甲101の〔番号15〕、甲103)の西日本部分について、その色彩を変え、そこに、緑色で「無料株式セミナー」との文字及び黒色の「福岡・広島・神戸・名古屋・横浜・東京で開催中!」との文字を加え、上記日本地図の東京、横浜、名古屋、神戸、広島、福岡に相当する部分のドットの色を地のドットとは異なる色にしたものである。
 しかるところ、購入したイラストは控訴人の著作物ではない。また、上記文言は、広告宣伝文としありふれたものであり、上記文字の字体や色彩もありふれたものであるから、この文字部分に創作性はなく、さらに、開催地のドットの色を変えたことは本来的にこのイラストが想定しているデザイン変更を実現したにすぎないものであり、ありふれたものである。
 そうすると、本件画像13は原画に新たな創作性が付加されたとはいえず、本件画像13に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像13は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し、控訴人は、本件画像13は、「福岡」、「広島」、「神戸」、「名古屋」、「横浜」、「東京」に位置するドットをそれぞれ異なる色で表現し、「ライズ株式スクール」に緑を用いて「無料株式セミナー」の文字色を装飾し、背景は文字とドット調の日本地図を目立たせるために、明るめのパールオレンジ色を採用し、各地域名には偏った印象を持たれないように中立性をイメージできる黒文字単色で表現した旨主張するが、ごく普通の色彩を適宜に選んだというにすぎず、文字部分及び原画に新たな創作性が付加されたとはいえない。
 控訴人の上記主張は、採用することができない。
ソ 本件画像14
(ア)本件画像14は、控訴人が購入した女性の写真(甲101〔番号14〕、甲103)に、緑色線の吹き出しを加え、その中に、紺色の「\」「株式投資で失敗したくない方へ」「/」、「あなたの」の文字、緑色の太くやや大きい「疑問や不安」の文字、紺色の「を、これまでの」の文字、緑色の太くやや大きい「受講生の皆さまの声」の文字、紺色の「の中から、ご紹介します!」との文字をはめた画像である。
 しかるところ、購入した写真は控訴人の著作物ではない。また、上記文言は、受講生の体験等を紹介する文章の構成としてありふれたものであり、上記文字の字体や色彩にも特徴はないから、この文字部分に創作性はなく、受講生の体験等を紹介する文章の構成として受講生が発言する構成にとることもありふれている。
 そうすると、本件画像14が元の写真に新たな創作性が付加されたものとはいえず、本件画像14に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像14は著作物に該当すると認めることはできない。
 控訴人の上記主張は、採用することができない。
(イ)これに対し控訴人は、女性の画像は適切なイメージを持つ女性として控訴人が選択し、顧客が、女性の目線で注意を引かれた後、左側の吹き出し内容を読んでもらえるようなデザインとレイアウトを行っており、吹き出し枠には、吹き出しからはみ出た部分の文字を置き、吹き出しに立体表現を取り入れた旨主張するが、いずれもありふれた手法であり、元の写真に新たな創作性を付加するようなものではない。
タ 本件画像15
(ア)本件画像15は、横浜駅近くのビル群を撮影した写真の画像であるが(甲44、弁論の全趣旨)、近景に都市の水辺を配置し、遠景にビル群が立つ様子を撮影して水辺とビル群を対比させるよう撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当すると認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像15は、建物の外観全体が見渡せる川の対岸から撮影するという構図はありふれたものであり、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもなく、被写体となる建物を撮影する写真としてはありふれた表現物であるから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像15は、水辺とビル群を近景と遠景に分けて配置するよう撮影しているのであり、単に川の対岸にある建物を撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
チ 本件画像16
(ア)本件画像16は、研修会の会場で掲示されていた資料(グラフ)を撮影した写真の画像であるが(甲44、弁論の全趣旨)、掲示されている資料に対し、左側のごく近接した位置から右側に向け、画面中央にのみ焦点を合わせるようして、資料に立体感と奥行きが与えられるよう撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像16は、手書きのチャート図をほぼ画面いっぱいに撮影したものであり、いわば被写体を忠実に写し撮ったものに過ぎず、カメラワークに特段の工夫も見て取れず、また、特筆すべき決定的瞬間を写したものでもないから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像16は、撮影方向や焦点を調整して資料に立体感と奥行きが生じるよう撮影したものであり、単に図面を平面的に撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ツ 本件画像17
(ア)本件画像17は、控訴人が購入したピラミッド状のイラスト(甲101〔番号14〕、甲103)の上3段分を抜き出し、3段目の色を黄色から黄緑色に変え、元のイラストにあったテキストを削除して、上の段から順に、赤地の段に紫色の「発展」及び黒色の「実践会」の文字、橙色の段に赤色の「応用」及び黒色の「RTC」の文字、黄緑色の段に緑色の「基礎」及び黒色の「初級・中級・上級」の文字をはめ込んだものである。上記文言は、階層又はカテゴリーを示すありふれた語句に被控訴人ピー・エム・エーのクラス名を組み合わせたものにすぎず、それら文字に字体や配色もごく普通のものである。
 そうすると、本件画像17が元の画像に新たな創作的部分が付加されたとはいえず、本件画像17に作成者の個性が表れていると認めることはできないから、本件画像17は著作物に該当すると認めることはできない。
(イ)これに対し控訴人は、本件画像17は、伝えたいことを大きく3つのポイントに分けて説明すると相手に伝わりやすいという手法を応用して、「基礎」、「応用」又は「発展」の3つの区分と本件スクールのクラスとを対応させた旨主張するが、それ自体はアイディアであって表現にすぎず、また、具体的な表現をとしてもありきたりのものであるから、元の画像に新たな創作的部分を付加するものとはいえない。
 控訴人の上記主張は、採用することができない。
テ 本件画像18
(ア)本件画像18は、会議室で研修を受けている出席者の姿を後方から撮影した写真の画像であるが(甲44、弁論の全趣旨)、天井のスポットライトや凹凸ある壁も画面に取り込んで会場の奥行きを強調して撮影している点に撮影者の個性が表れているといえるから、著作物に該当するものと認められる。
(イ)これに対し被控訴人らは、本件画像18は、会場全体が見渡せるように会場後部から撮影するという構図はありふれており、写っている来場者も一様に聴講し特段の決定的瞬間を写し撮ったものではなく、通常、このようなセミナー風景を撮影する写真としては誰が撮影しても同じようなものとなるありふれた表現物であるから、撮影者の個性が表れているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、本件画像18は、スタジオ風の会場の形状を取り込みながら会場の奥行きを強調して同所を撮影しているのであり、単に会場後部から会場の様子を撮影したものではなく、撮影者の個性が表れているといえるから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ト 小括
 以上のとおり、本件各画像のうち、本件画像1から6、8、10、15、16及び18の11枚の画像については、著作物と認めることができる(以下、これらの画像を「本件画像著作物」という。)。
(2)争点4−2(本件各画像の著作権の帰属)について
ア 本件各画像の著作権の取得
 証拠(乙44)及び弁論の全趣旨によれば、本件画像著作物の写真は、控訴人が原告ウェブサイト制作前に自ら撮影したものと認められるから、控訴人が本件画像著作物を創作した者であって、その著作者であると認められる。
 したがって、控訴人は、本件画像著作物について著作者として著作権を取得したものと認められる。
 これに反する被控訴人らの主張は、採用することができない。
イ 本件各画像の著作権の譲渡又は許諾の有無
(ア)被控訴人らは、@被控訴人ピー・エム・エーは、控訴人に対し、324万円という高額な原告制作ウェブサイトの制作対価を支払っていること、A原告制作ウェブサイトは、専ら被控訴人ピー・エム・エーが使用するためにその委託によって制作されたものであり、控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作権を保有する必要性及び合理的理由がないこと、B被控訴人ピー・エム・エーは、自身の企業活動に合わせて、原告制作ウェブサイトの内容を変更したり、保守委託先を変更したり、格納サーバを変更したりすることが当然に予定されているにもかかわらず、被控訴人ピー・エム・エーが原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を有しないとすれば、その都度、控訴人の許諾を得なければ、これらを実現できず、企業活動が著しく阻害されること、C原告制作ウェブサイトを制作した控訴人が自ら原告制作ウェブサイトに「Copyright?ライズ株式スクールAllRightsReserved」と表示していることからすると、原告制作ウェブサイトに係る著作物の一部として本件画像著作物の著作権は、控訴人から被控訴人ピー・エム・エーへ黙示に譲渡された旨主張する。
 しかしながら、前記認定事実によれば、控訴人と被控訴人ピー・エム・エーは、平成28年1月6日付け本件保守契約書(甲146)をもって締結した本件保守業務委託契約に基づいて、同年4月22日付け本件注文書(甲13)をもって、被控訴人ピー・エム・エーが控訴人に対し、旧ウェブサイトを全面的にリニューアルしたウェブサイトの制作を代金324万円で発注する旨の本件制作業務委託契約を締結し、控訴人は、本件制作業務委託契約に基づき、原告制作ウェブサイトを制作したものであるところ、本件保守契約書には、「本件成果物の著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)その他の権利は、制作者に帰属するものとする。」(14条3項)との規定があること、本件注文書の「備考」欄には、「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利は、制作者のBに帰属するものとする。」との記載があることに照らすと、控訴人と被控訴人ピー・エム・エーは、控訴人が制作した原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権は控訴人に帰属することを確認しており、控訴人において上記著作権を被控訴人ピー・エム・エーに譲渡する意思が有していたものとは到底認めることはできない。
 また、控訴人が原告制作ウェブサイトの制作前に著作した本件画像著作物の著作権を被控訴人ピー・エム・エーに譲渡すべき合理的事情はない。
 さらに、原告制作ウェブサイトの内容の変更、保守委託先の変更、格納サーバーの変更の可否は、当事者間の契約の定めによるところであり、ウェブサイトの制作を依頼した委託者において当然に許容されるものではないし、また、原告制作ウェブサイトに「Copyright?ライズ株式スクールAllRightsReserved」と表示は、控訴人と被控訴人ピー・エム・エー間の内部関係を規律する趣旨のものとはいえず、ましてや、本件画像著作物の著作権が被控訴人ピー・エム・エーに帰属することの根拠となるものではない。
 したがって、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
(イ)また、被控訴人らは、仮に控訴人が原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権を被控訴人ピー・エム・エーに譲渡していないとしても、前記(ア)@ないしCに鑑みれば、控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対して原告制作ウェブサイトに係る著作物の利用を許諾したというべきである旨主張する。
 しかしながら、前記(ア)の認定事実に照らすと、被控訴人らの挙げる@ないしCの事情をもって、控訴人が被控訴人ピー・エム・エーに対して本件画像著作物の利用を許諾したものと認めることはできないから、被控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ウ まとめ
 以上によれば、本件画像著作物の著作権は控訴人に帰属するものと認められる。
(3)争点4−3(被控訴人らによる著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)の侵害の有無)について
 証拠(甲44、46の3、甲80の1、甲91の1ないし5、甲336の7及び12)によれば、@被告ウェブサイトに本件画像著作物が掲載されていること、A旧被告ウェブサイトの「スクール会場案内」のページに本件画像2が、「横浜校」として本件画像15が、「神戸校」のページに本件画像2、3及び4が掲載されていることが認められる。
 そして、被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作85物の上記掲載は、本件画像著作物の複製及び公衆送信に当たるものと認められる。また、被控訴人ピー・エム・エーが上記掲載について控訴人の許諾を受けていないことは、前記(2)イ(イ)認定のとおりである。
 したがって、被控訴人ピー・エム・エーによる上記掲載行為は、本件画像著作物の複製権及び公衆送信権の侵害行為に当たるもの認められる。
(4)争点4−4(被控訴人らによる著作者人格権(公表権及び氏名表示権)侵害の有無
ア 公表権侵害の有無について
 控訴人は、被控訴人らが本件画像著作物に係る公表権を侵害した旨主張する。
 しかしながら、本件画像著作物を含む本件各画像は原告制作ウェブサイトの素材として一般に公開されていたものであり、「著作物でまだ公表されていないもの」(著作権法18条1項)に該当しないから、控訴人の上記主張は理由がない。
イ 氏名表示権侵害の有無について
(ア)前記(3)の認定事実と証拠(甲44、46の3、91の1ないし5、336の7及び12)によれば、本件画像著作物は被告ウェブサイトに係るサーバに記録されており、被告ウェブサイトを閲覧するユーザーの端末の画像に表示されることによって公衆へ提供又は提示されるが、その際、控訴人の名称は表示されないこと、本件画像2、3、4及び15は、旧被告ウェブサイトに係るサーバーに記録されており、旧被告ウェブサイトを閲覧するユーザーの端末の画像に表示されることによって公衆へ提供又は提示されるが、その際、控訴人の名称は表示されないことが認められる。
(イ)この点について被控訴人らは、被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトは、専ら宣伝広告を目的とした企業サイトであり、このようなウェブサイトにおいては著作者が表示されないことが一般的であり、著作者の氏名表示を省略しても、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれはなく、かつ、公正な慣行に反するものではないから、氏名表示を省略できる(著作権法19条3項)旨主張する。。
 しかしながら、著作権を侵害する態様で著作物が公衆へ提供又は提示された場合には、当該著作物の著作者が創作者であることを主張する利益を害するものであり、又は、このような態様で著作物を利用するときに著作者名の表示を省略してよい慣行があるとは認められないと解されるところ、被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作物の掲載行為は複製権及び公衆送信権の侵害行為に当たるから、被控訴人らの上記主張は採用することはできない。
(ウ)以上によれば、被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作物の掲載行為は、控訴人が本件画像著作物について有する氏名表示権侵害に当たるものと認められる。
(5)争点4−5(差止めの必要性)について
ア 被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作物の掲載行為が、控訴人が本件画像著作物について有する複製権、公衆送信権及び氏名表示権の侵害行為に当たることは、前記(3)及び(4)のとおりである。
 被控訴人らは、@被告ウェブサイトは、本件スクールのホームページであるところ、被控訴人ピー・エム・エーは、平成30年5月に自主廃業し、破産手続開始の申立てをし、本件スクールの営業をしておらず、その他の被控訴人らも本件スクールを営業していないから、将来的に被控訴人らが被告ウェブサイトの複製等を行う具体的なおそれはない。Aウェブサイトに関する記録データの複製、翻案又は公衆送信を停止するためには、当該ウェブサイトのドメインの利用を停止し、情報が格納されたサーバーの記録を削除しなければならないから、差止請求の相手方は、現に当該ドメイン及びサーバーを管理している者であるところ、被告ウェブサイトのドメイン及びサーバの管理情報はマークス社の代表者のAが有しており、被控訴人らは、被告ウェブサイトを利用しておらず、被告ウェブサイトのドメイン及びサーバーの管理権限もないから、被告ウェブサイトに係る各ウェページの複製等の差止めや削除を実行することはできない、B旧被告ウェブサイトのドメイン及びサーバーについても、マークス社によって管理されているから、これと同様であるとして、控訴人が被控訴人らに対して本件画像著作物のデータの複製等の差止め及び削除を求める必要性はない旨主張する。
 そこで検討するに、前記認定事実によれば、@被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトはA又はAが代表取締役を務めるマークス社がレンタル契約をするサーバに記録されていること、A被控訴人ピー・エム・エーはAに対して平成30年11月から再三にわたり被告ウェブサイトの閉鎖を求めたが、Aはこれを拒否したこと、BAは自ら更新料を負担してサーバのレンタル契約を延長し、被告ウェブサイトの公開を続けていることが認められる。上記認定事実によれば、被控訴人らが独自に被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトを閉鎖することはできないことが認められる。
 また、ウェブサイトを閉鎖することは、A又はマークス社の被控訴人ピー・エム・エーに対するウェブサイト制作料未払金の支払の反対給付ではないから、被控訴人ピー・エム・エーが上記未払金を支払うことは、そのウェブサイトを閉鎖するための前提として被控訴人ピー・エム・エーが先に履行すべきことでも同時に履行すべきことでもない。そして、A又はマークス社が委託者である被控訴人ピー・エム・エーの要請を拒絶して被告88ウェブサイトの公開を継続することは、いかに被控訴人ピー・エム・エーがA又はマークス社に未払金債務を有していたとしても、正当なものとはいえない。
 そうすると、被控訴人ピー・エム・エーが、A及びマークス社に対してウェブサイトの閉鎖の要請があった平成30年11月以降は、被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトを公衆送信している主体は、A又はマークス社というべきであり、被控訴人らではないものと認めるのが相当である。
 以上によれば、控訴人の被控訴人らに対する本件画像著作物のデータの複製等の差止等請求は、差止めの必要性がないものと認められる。
イ これに対し控訴人は、控訴人が被控訴人Y2のログイン情報を使用して被告ウェブサイトの管理者ページにログインをすることができたこと、被控訴人らは、原告制作ウェブサイトで設定されたメールアドレスを利用していること、さらに、Aが被告ウェブサイトの閉鎖を拒否したことについては、Aに対してウェブサイト制作費用の支払をしなかった被控訴人らに責任があり、控訴人とは何の関係もないことであるから、控訴人が被控訴人らに対し、上記各ウェブサイトに係る各ウェブページの複製等の差止め及び削除を求める必要性があることを否定する理由にはならないなどと主張する。
 しかしながら、前記アの認定事実に照らすと、控訴人の上記主張は採用することができない。
(6)小括
 以上のとおり、控訴人の被控訴人らに対する本件画像著作物のデータの複製等の差止等請求は、差止めの必要性がないものと認められるから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の上記差止等請求は理由がない。
7 争点6(損害賠償等請求の可否)について
(1)争点6−1(被控訴人らの責任の有無)
ア 被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1の責任について
 被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作物の掲載行為が、控訴人が本件画像著作物について有する複製権、公衆送信権及び氏名表示権の侵害行為に当たることは、前記6(3)及び(4)のとおりである。
 そこで、被控訴人Y1の責任について検討するに、前記認定事実によれば、@被控訴人Y1は、被控訴人ピー・エム・エーの代表取締役として、被控訴人ピー・エム・エーと控訴人との間で本件保守業務委託契約及び本件制作業務委託契約を締結したこと、A本件保守業務委託契約に係る本件保守契約書には、「本件成果物の著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)その他の権利は、制作者に帰属するものとする。」(14条3項)との規定があること、本件制作業務委託契約に係る本件注文書の「備考」欄には、「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利は、制作者のBに帰属するものとする。」との記載があり、控訴人Y1は、原告制作ウェブサイトに係る著作物の著作権は控訴人に帰属することを確認していること、B被控訴人Y1が平成29年12月15日付け通知書(甲23)で控訴人から原告制作ウェブサイトの著作権が控訴人に属する旨の告知を受けていること、C被控訴人ピー・エム・エーは、本件サーバが凍結された後の平成29年12月13日頃、マークス社に対し、原告制作ウェブサイトの復旧を依頼し、その後、マークス社は、旧被告ウェブサイトの制作過程で取得した原告制作ウェブサイトのデータをコピーして、被告ウェブサイトを制作したことが認められる。
 上記認定事実によれば、被控訴人Y1は、原告制作ウェブサイトの各ウェブページに係る著作物の著作権が控訴人に帰属することを十分に認識しながら、控訴人の許諾を受けることなく、マークス社又はその代表取締役のAに対し、原告制作ウェブサイトをコピーした被告ウェブサイトの制作を依頼したものと認められるから、被控訴人Y1は、故意により、控訴人が本件画像著作物について有する複製権、公衆送信権及び氏名表示権を侵害したものと認められる。
 したがって、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1は、民法709条、719条に基づき、上記侵害行為により控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負うものというべきある。
 これに反する被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1の主張は採用することができない。
イ 被控訴人Y2の責任について
 被控訴人Y2の責任について検討するに、前記認定事実のとおり、被控訴人Y2は、被控訴人ピー・エム・エーの取締役として、被控訴人Y1から、マークス社に対する原告制作ウェブサイトの復旧依頼について事前に相談を受けていること、被控訴人Y1は、平成29年12月15日付け通知書(甲23)で控訴人から原告制作ウェブサイトの著作権が控訴人に属する旨の告知を受けていることに鑑みると、被控訴人Y2は、被控訴人Y1が原告制作ウェブサイトに係る控訴人の著作物を無断で利用しようとしていることを容易に認識することができたものと認められる。
 そうすると、被控訴人Y2は、被控訴人ピー・エム・エーの取締役としての職務を行うについて少なくとも重過失があったものと認められるから、会社法429条1項に基づき、被控訴人ピー・エム・エーによる本件画像著作物についての複製権、公衆送信権及び氏名表示権の侵害行為により控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負うものというべきである。
 これに反する被控訴人Y2の主張は採用することができない。
ウ 被控訴人インターステラー及び被控訴人Y3の責任について
 被控訴人インターステラー及び被控訴人Y3の責任について検討するに、@被控訴人インターステラーは、被控訴人ピー・エム・エーと別法人であること、A被控訴人インターステラー及び被控訴人Y3が、被控訴人ピー・エム・エーによる被告ウェブサイト及び旧被告ウェブサイトにおける本件画像著作物の掲載行為に関与したことを認めるに足りる証拠はないことに照らすと、被控訴人ピー・エム・エーによる本件画像著作物についての複製権、公衆送信権及び氏名表示権の侵害行為により控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負うものと認めることはできない。
 これに反する控訴人の主張は、採用することができない。
エ 一般不法行為に基づく不法行為の責任等について
 控訴人は、被控訴人らの行為の悪質性に鑑みれば、被控訴人らは、原告制作ウェブサイト等に係る控訴人の独占的利用権、営業権等の権利を侵害したといえるから、一般不法行為に基づく損害賠償義務を負う旨主張する。
 しかしながら、控訴人の上記主張は、その根拠となる法律上の根拠及び具体的事実を主張立証するものではないから、理由がない。
 その他営業秘密の侵害など控訴人がるる主張する点は、いずれも採用することができない。
(2)争点6−2(控訴人の損害額等)について
ア 著作権侵害の慰謝料
 控訴人は、被控訴人らによる著作権侵害によって控訴人が被った精神的損害を慰謝するための慰謝料は、200万円を下らない旨主張する。
 しかしながら、財産権侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには、侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解されるところ、本件において、上記特段の事情が存するとまでは認められないから、上記控訴人の主張は採用することができない。
イ 著作者人格権侵害の慰謝料
 前記認定事実によれば、被控訴人ピー・エム・エー、被控訴人Y1及び被控訴人Y2は、被告ウェブサイトを公開したことによる本件画像著作物(11枚)に係る氏名表示権侵害、旧被告ウェブサイトを公開したことによる本件画像2ないし4及び15(4枚)に係る氏名表示権侵害について損害賠償義務を負うものである。
 そして、本件画像著作物が控訴人自身によって無名の著作物として公表されていたこと、その他本件に顕れた諸般の事情に鑑みると、上記被控訴人らの氏名表示権侵害行為により控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、1サイト1枚の使用につき使用期間を問わず1枚当たり1万円と認めるのが相当である。
 したがって、上記慰謝料額は15万円となる。
ウ 調査費用等
 民事訴訟手続の遂行により要した費用のうち、民事訴訟費用等に関する法律第2条各号に掲げられた費目のものについては、専ら訴訟裁判所の裁判所書記官の処分を経て取り立てることが予定されているというべきであるから、当該訴訟における不法行為に基づく損害賠償請求において、民事訴訟費用等に関する法律第2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されないと解される(最高裁判所平成31年(受)第606号令和2年4月7日第三小法廷判決参照)。控訴人は、証人の旅費日当、書記料、自身の出頭費用を不法行為に基づく損害として主張するが、これらは民事訴訟費用等に関する法律第2条4号、6号に定めるものであるから、これら費目を本件において損害賠償として請求することはできない。
 また、控訴人は、事実実験公正証書(甲46の1ないし46の3)の作成費用を損害賠償として請求するが、保全措置の趣旨であるとするものの、平成30年12月11日時点になってようやく行われたものであるから、その作成費用を不法行為と因果関係のある損害と認めることはできない。
 したがって、控訴人の主張する調査費用等の損害は、いずれも認めることができない。
エ 本件保守業務委託契約に基づく報酬等
(ア)控訴人の本件保守業務委託契約に基づく報酬請求は、被控訴人ピー・エム・エーを除くその余の被控訴人らは契約当事者ではないから、その請求は失当であり、被控訴人ピー・エム・エーに対する請求も、前記のとおり、平成29年12月28日に被控訴人ピー・エム・エーから控訴人に対して本件保守業務委託契約を解約する旨の意思表示がされているから、この契約解除後の期間に係る報酬請求は根拠を欠ものである。
(イ)控訴人の本件保守業務委託契約に基づく違約金請求については、本件保守契約書(甲146)には、「相手方に損害を与えた場合には」、「運営業務に対する委託料額の12か月分を限度として、損害賠償責任を負う。」と定めているのであって、実損が生じた場合であっても損害額を保守料の12か月分を限度とするというものであって、これは損害賠償額の予定ではなく損害賠償額の制限規定にすぎないこと、控訴人は、本件保守業務委託契約に関連していかなる損害が生じているのか明らかにしていないことに鑑みると、理由がない。
オ 小括
 以上のとおり、控訴人の損害額等については、本件画像著作物の著作者人格権侵害(氏名表示権侵害)に係る慰謝料15万円が認められる。
(3)争点6−3(権利の濫用の成否)について
ア 被控訴人Y1、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y2は、控訴人の損害賠償請求権の行使は権利の濫用に当たり、許されない旨主張する。
 そこで検討するに、前記認定事実によれば、@控訴人は、原告制作ウェブサイト制作後、本件保守管理業務委託契約に基づき、その保守管理を行い、本件保守管理業務委託契約には、控訴人のウェブサイトの不具合等の修補等の保守義務が定められていたこと、A被控訴人ピー・エム・エーは、平成29年秋の時点で、控訴人に対する原告制作ウェブサイトの制作代金の分割支払金に対する支払を遅滞し、控訴人を介してエックスサーバー社に支払うべき本件サーバの更新料を控訴人に交付していなかったこと、B本件サーバは、平成29年12月12日、同年11月30日利用期限の本件サーバの更新費用の未払のために、エックスサーバー社によって凍結され、原告制作ウェブサイトは、閲覧、利用できなくなったこと、C被控訴人ピー・エム・エーは、同年12月12日、控訴人に対し、上記更新費用相当額を含む未払金として13万8240円を振込送金し、原告制作ウェブサイトを復旧するよう求めたところ、控訴人は、被控訴人ピー・エム・エーに対し、本件サーバが凍結されたため、原告制作ウェブサイトの復旧はできない、新たなウェブサイトを制作するほかない旨を伝えた上で、同月13日付け請求書をもって、控訴人が新たなウェブサイトを代金432万1600円で制作することを提案したが、被控訴人ピー・エム・エーは、これに応じなかったこと、D一方で、本件サーバの規約によれば、更新費用は1万2960円(12か月分)であり、ウェブサイトのドメインが失効した場合、利用期限日から30日以内に更新費用を支払えば、復旧が可能であり、控訴人の説明は本件サーバーの規約と異なる内容のものであったこと、E被控訴人ピー・エム・エーは、同月13日頃、マークス社に対し、原告制作ウェブサイトの復旧を依頼し、その後、マークス社は、旧被告ウェブサイトの制作過程で取得した原告制作ウェブサイトのデータをコピーして、被告ウェブサイトを制作し、平成30年1月頃、公開したことが認められる。
 上記認定事実に鑑みると、控訴人の一連の行為は、本件保守業務委託契約に反するものであり、社会的相当性を逸脱する行為であるとの評価もあり得ないではない。
 しかしながら、他方で、本件画像著作物はウェブサイトの視覚的効果を高めるデザインとして配置された画像にすぎないから、被控訴人ピー・エム・エーの業務継続のため暫定的・臨時的に原告制作ウェブサイトを稼働させるためであれば、それら画像を掲載することは必須のことではない。
 また、被控訴人Y1、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y2に本件画像著作物の著作者人格権侵害に係る程度の賠償責任を負わせることは、想定外に重い負担を負わせるものではない。
 以上によれば、控訴人の権利の行使が被控訴人Y1、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y2の権利又は利益に重大な重大な影響を及ぼすものではないというべきであるから、控訴人の損害賠償請求権の行使が権利の濫用に当たるものと認めることはできない。
 したがって、被控訴人Y1、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y2の上記主張は採用することができない。
(4)争点6−4(被控訴人Y1につき再生計画認可決定確定による権利変更の有無)
 被控訴人Y1は、@控訴人の被控訴人Y1に対する請求債権は本件再生計画における権利変更が適用され、かつ、再生債権評価の申立てをしなかったため再生計画に基づく弁済期間が満了した時点で弁済期が到来する、Aまた、控訴人の被控訴人Y1に対する請求債権は将来の給付の訴えとなったところ、あらかじめその請求をする必要がある場合には当たらないから、被控訴人Y1に対する請求は却下されるべきである旨主張する。
 しかしながら、控訴人の被控訴人Y1に対する損害賠償請求債権は、本件画像著作物の著作者人格権侵害(氏名表示権侵害)に基づく慰謝料請求権であり、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に当たるから、本件再生計画に基づく権利に影響を及ぼさないというべきである(民事再生法229条3項1号)。
 したがって、被控訴人Y1の上記主張は理由がない。
(5)まとめ
 以上のとおりであるから、控訴人は、本件画像著作物の著作者人格権(氏名表示権)侵害の不法行為に基づき、被控訴人ピー・エム・エー及び被控訴人Y1に対し、それぞれ、損害賠償金15万円及びこれに対する被控訴人らに対する最終の訴状送達の日の翌日である平成30年7月14日から支払済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、会社法429条1項に基づき、被控訴人Y2に対し、損害賠償金15万円及びこれに対する同日から支払済みまでに民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。これら被控訴人らの債務は同一の損害を填補するものであるから、不真正連帯債務の関係に立つものである。
第5 結論
 以上によれば、控訴人の当審における追加請求は、被控訴人ピー・エム・エー、被控訴人Y1及び被控訴人Y2に対し、各自、損害賠償金15万円及びこれに対する平成30年7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容することとし、当審における追加請求のうち、本件DVDに係る差止等請求及び損害賠償請求に関する部分の訴えの変更は、著しく訴訟手続を遅滞させることになるので、これを許さないこととし、その余の控訴人の請求(当審における拡張請求及び追加請求を含む。)はいずれも理由がないから棄却すべきである。そして、原判決の判断は、結論において相当であるから、本件控訴を棄却することとする。
 よって、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部
 裁判長裁判官 大鷹一郎
 裁判官 本吉弘行
 裁判官 中村恭


(別紙省略)
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