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【事件名】ソネットへの発信者情報開示請求事件F 【年月日】令和2年10月23日 東京地裁 令和2年(ワ)第11680号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和2年8月26日) 判決 当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は、別紙3発信者目録の「原告」欄記載の各原告に対し、それぞれ対応する同目録の「日時」欄記載の日時頃に「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスを開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、レコード製作会社である原告らが、インターネット接続プロバイダ事業を営む被告に対して、被告の用いる電気通信設備を経由したファイル交換ソフトウェアの使用によって、原告らがレコード製作者の権利を有するレコードについての送信可能化権(著作権法96条の2)が侵害されたことが明らかであり、上記のソフトウェアの使用者に対する損害賠償請求等のために必要であるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づいて、別紙3発信者目録の「日時」欄記載の日時頃に「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスを使用してインターネットに接続していた者についての氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス(以下、併せて「本件各発信者情報」という。)の開示2を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者 ア 原告らは、レコードを製作の上、これを複製して音楽CD等として発売している株式会社である(弁論の全趣旨)。 イ 被告は、一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている株式会社であり、法2条3号の特定電気通信役務提供者である(争いのない事実)。 (2)原告らの送信可能化権 別紙2レコード目録の「原告」欄記載の各原告は、それぞれ対応する同目録の「実演家」欄記載の各実演家が歌唱する楽曲を録音したレコードを製作し、「CD(商品番号)」欄記載の音楽CDに収録して「発売年月日」欄記載の日に日本全国で発売した(甲3、7、11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75。以下、これらの各音楽CDに対応する楽曲のレコードを、同目録の番号に対応させて「本件レコード1」などといい、併せて「本件各レコード」という。)。 同目録記載の各原告は、それぞれ対応する本件各レコードについて、レコード製作者としての送信可能化権(著作権法96条の2)を有する。 (3)被告は、本件各発信者情報を保有している(争いのない事実)。 3 争点 (1)原告らの送信可能化権が侵害されたことが明らかであるか(争点1) (2)本件各発信者情報は権利侵害に係る発信者情報といえるか(争点2) (3)本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(争点3) 4 争点に関する当事者の主張 (1)争点1(原告らの送信可能化権が侵害されたことが明らかであるか)及び争点2(本件各発信者情報は権利侵害に係る発信者情報といえるか)について (原告らの主張) 氏名不詳者らは、それぞれ、別紙3発信者目録の「日時」欄記載の日時頃、被告のインターネット接続サービスを利用し、対応する「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスの割り当てを受けてインターネットに接続し、ファイル交換ソフトウェアであるBitTorrentを用いて、対応する「レコード」欄記載の本件各レコードにつき、これらを複製したファイルを、不特定多数の他のBitTorrentの利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にした。 上記の各送信可能化行為について、著作隣接権の権利制限事由(著作権法102条。同条1項が準用する同法30条以下を含む。)は存在しないため、これらの行為を行った各氏名不詳者(以下、「本件各発信者」と総称する。)によって、対応する「原告」欄記載の各原告が上記本件各レコードに対して有する送信可能化権が侵害されたことが明らかであり、本件各発信者情報は権利侵害に係る発信者情報に該当する。 (被告の主張) 不知。 (2)争点3(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について (原告らの主張) 原告らは、本件各レコードについての送信可能化権侵害に基づき、本件各発信者に対して損害賠償請求及び差止請求を行う必要があるから、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 (被告の主張) 不知。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らの送信可能化権が侵害されたことが明らかであるか)及び争点2(本件各発信者情報は権利侵害に係る発信者情報といえるか)について (1)証拠(甲2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23、26、27、30、31、34、35、38、39、42、43、46、47、50、51、54、55、58、59、62、63、66、67、70、71、74、75、77)及び弁論の全趣旨によれば、本件各発信者が、本件各レコードについて、それぞれ、別紙3発信者目録の「日時」欄記載の日時頃、被告のインターネット接続サービスを利用し、対応する「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスの割り当てを受けてインターネットに接続し、ファイル交換ソフトウェアであるBitTorrentを用いて、対応する「レコード」欄記載の本件各レコードにつき、これらを複製したファイルを、不特定多数の他のBitTorrentの利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことが認められ、本件全証拠によっても、当該各行為について、原告らによる許諾、著作隣接権の権利制限事由その他の違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は認められない。 (2)以上によれば、本件各発信者の前記各行為に係る情報の流通によって原告らの本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであり、本件各発信者情報は、各権利侵害に係る発信者情報に該当すると認められる。 2 争点3(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について 弁論の全趣旨によれば、原告らは、それぞれ、前記1のとおり自己の送信可能化権を侵害したことが明らかな本件各発信者に対して、損害賠償請求及び差止請求を行う意思を有しており、そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要があると認められるから、それぞれ、自己の権利侵害に係る発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。 3 結論 以上のとおり、本件各レコードの送信可能化に係る侵害情報の流通によって原告らの権利が侵害されたことが明らかであって、本件各発信者情報はこれらの権利侵害に係る発信者情報に該当し、原告らには、それぞれ発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえるから、上記送信可能化に係る通信を媒介した被告は、開示関係役務提供者として、本件各発信者情報を開示すべき義務を負う。 よって、原告らの請求は、いずれも理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 矢野紀夫 裁判官 佐々木亮 別紙1 当事者目録 原告 株式会社ポニーキャニオン(以下「原告ポニーキャニオン」という。) 原告 株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント(以下「原告JVC」という。) 原告 キングレコード株式会社(以下「原告キングレコード」という。) 原告 エイベックス・エンタテインメント株式会社(以下「原告エイベックス」という。) 原告ら訴訟代理人弁護士 林幸平 同 笠島祐輝 同 尋木浩司 同 前田哲男 同 福田祐実 被告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 同訴訟代理人弁護士 横山経通 同 渡邉峻 別紙2 レコード目録 別紙3 発信者目録 |
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