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【事件名】BL同人誌の漫画無断掲載事件(2)
【年月日】令和2年10月6日
 知財高裁 令和2年(ネ)第10018号 損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成30年(ワ)第39343号)
 (口頭弁論終結日 令和2年7月30日)

判決
控訴人・被控訴人 X(以下「一審原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 平野敬
同 高井雅秀
同訴訟復代理人弁護士 笠木貴裕
被控訴人・控訴人 株式会社アクラス(以下「一審被告会社」という。)
被控訴人・控訴人 Y1(以下「一審被告Y1」という。)
被控訴人・控訴人 Y2(以下「一審被告Y2」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 今村憲


主文
1 一審原告の控訴を棄却する。
2 一審被告らの控訴をいずれも棄却する。
3 控訴費用は、一審原告の控訴に係るものは一審原告の負担とし、その余は一審被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 一審原告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)一審被告らは、一審原告に対し、連帯して1000万円及びこれに対する平成30年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 一審被告ら
(1)原判決中、一審被告ら敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る一審原告の請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要等(略語は原判決の例による。)
1 事案の要旨
(1)本件は、一審原告が、一審被告会社は、自らが運営する原判決別紙ウェブサイト目録記載のウェブサイト(本件各ウェブサイト)に、一審原告が著作権を有する原判決別紙著作物目録記載の漫画(本件各漫画)を無断で掲載し、一審原告の著作権(公衆送信権)を侵害したと主張して、一審被告会社に対し、民法709条及び著作権法(以下「法」という。)114条1項に基づき、損害賠償金1億9324万3288円のうち1000万円及びこれに対する不法行為日である平成30年7月7日(本件各ウェブサイトへの掲載日のうち最も遅い日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、一審被告会社の現在の代表取締役である一審被告Y1及び同年8月25日まで代表取締役であったY3(同日死亡。以下「亡Y3」という。)が、一審被告会社の法令順守体制を整備する義務に違反して、一審被告会社が上記著作権侵害行為を行う本件各ウェブサイトを運営することを許容したとして、一審被告Y1及び亡Y3を相続した同人の配偶者である一審被告Y2に対し、会社法429条1項に基づき、一審被告会社と連帯して、上記同額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)原判決は、一審原告の請求を、一審被告らに対し、損害賠償金219万2215円及びこれに対する平成30年7月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却した。
(3)原判決に対し、各当事者は、それぞれ、敗訴部分を不服として控訴した。
2 前提事実
(1)次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」「第2」の2項(原判決2頁25行目から3頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)原判決3頁12行目の末尾に改行して次のとおり加える。
 「(3)本件各漫画の特徴
 本件各漫画は、次のとおりの共通の特徴(以下、「特徴@」のようにいう。)を有する(ただし、本件漫画11は、特徴DEを有さない。)。
@主要な登場人物(以下「主役」という。)は、若い男性二人である。
A主役の名前は、いずれも、有名なシリーズものの漫画又はアニメの登場人物と同一である。本件各漫画のそれぞれに対応する漫画又はアニメ(以下「原著作物」という。)の題号を示すと、別表のB・C列のとおりである。
B主役の顔貌及び体型は、原著作物の主役のそれと酷似している。
Cストーリー中の人間関係や場面設定、図画中の建物や小道具等において、原著作物と同一又は類似のものがみられる(具体例を別表のD列に示す。)。
Dストーリーの中核となるのは、主役二人が性交類似行為又はこれに準じる行為をする場面である。原著作物には、そのような場面は存在しない。
E当該場面のいくつかには、男性器の形態や精液の飛散が描出されている。
F表紙又は奥付の中に、原著作物の題号又は登場人物名に言及する部分がある。」
3 争点
 原判決「事実及び理由」「第2」の3項(原判決3頁13行目から21行目まで)の記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当事者の主張
1 当事者の主張
 争点5についての一審被告らの補充主張及び争点6についての当事者双方の当審における補充主張(いずれも原判決の認定判断の誤りをいうものであり、反対当事者はこれらの主張を争った。)を次項以下に付加するほか、原判決「事実及び理由」「第3」(原判決13頁22行目から16頁26行目まで)の記載のとおりであるから、これを引用する。
2 争点5(信義則違反又は権利濫用)についての補充主張
〔一審被告らの主張〕
(1)本件各漫画の違法性
 本件各漫画は、原著作物に依拠して、原著作物のキャラクターをそのまま利用して、原著作物の著作権者(以下「原著作権者」という。)の許諾なく、ストーリーを同性愛及びわいせつなものに変容したものである。このような本件各漫画は、次のとおり違法なものである。
ア 著作権侵害
(ア)原著作物への依拠
 特徴Fから明白である。
(イ)複製権の侵害
 複製といえるためには、何人も容易に原著作物のキャラクターを知ることができるもの、すなわち、その個性(本質的特徴)が顕れているものの利用であればよく、その判断、認識は、美術の専門家によるものである必要はなく、素人の第一印象でよい。原著作物の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部で一致することを要求するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りる。なお、誰が見ても原著作物の登場人物が表現されていると感得されるようなものであれば、どの回の、どのコマの絵を複製したものであるかを特定する必要はない。
 本件各漫画と原著作物とは、ストーリー及びキャラクターが、特徴A〜Cのとおり、名称、髪型、表情、体型、装身具、人間関係等において一致している。したがって、本件各漫画は、原著作物の複製権を侵害する。
(ウ)翻案権の侵害
 本件各漫画は、原著作物のキャラクター及び場面設定を利用して、そのストーリー及び描写をわいせつな内容等に変容させているが、著作物といえるキャラクターが特徴A〜Cのとおり同じであることから、一般読者に対し、原著作物の表現上の本質的特徴を直接に感得させるものである。したがって、本件各漫画は、原著作物の翻案に当たる。
(エ)同一性保持権の侵害
 原著作物は、いずれも人気作品であり、様々な賞を受けている。このような作品に対して、その内容を特徴DEのようなわいせつな内容に変容することを原著作権者が許諾するはずもなく、本件各漫画は、原著作者の同一性保持権を侵害しており、その侮辱の程度は甚だしいと言える。
イ わいせつ性
 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じない。この点、本件各漫画の創作的部分は、いずれも、特徴DEのとおり、わいせつ性を有することが明らかである。
 刑法で処罰の対象としているわいせつ図画については、そもそも著作権が発生しないと解される。また、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権について、公序良俗に反するものは権利として保護されていないので、同様に、著作権についても公序良俗に反するものは保護する必要がないと解される。
 仮に、わいせつ図画にも著作権が発生すると解した場合でも、わいせつ図画を日本国内において不特定又は多数人に販売することは禁止されており、そのような作品の頒布を目的として著作者がこれを販売することも、民法上公序良俗に違反すると解される。
(2)本件各漫画に法的保護を与えることは許されないこと
ア 以上のとおり、本件各漫画は、原著作物の複製権、翻案権及び同一性保持権を侵害しており、違法な二次的著作物であり、原著作物を侮辱するとともに、わいせつ図画化という公序良俗に反する許容できない変容を加えている。仮に、一審原告の本件請求を認容すれば、裁判所が、このような著作権侵害行為及びわいせつ図画を容認し、違法な同人誌による金儲けを助長することになる。
 したがって、一審原告の得る利益に対して、裁判所が、適法な利益として保護を与えることは許されない。
イ 違法な著作物の著作権行使は信義則違反又は権利濫用に該当すること
 法の改正経緯などに照らして、違法な二次的著作物にも著作権があるとの考え方及び同旨の裁判例がある。他方で、ベルヌ条約2条や米国法103条のように、違法状態を作出した者を保護するべきではないとの価値判断から、違法な二次的著作物には著作権をそもそも発生させず、権利行使をさせないとの考え方もあり、我が国内でも同旨の学説がある。
 しかし、違法な二次的著作物にも著作権があるとの考え方に立っても、その著作権の行使が、信義則に反し権利の濫用となる場合がある。本件各漫画が原著作者の著作権を侵害するものであること、その創作的部分は公序良俗に反し不特定多数人への販売が禁じられるわいせつ図画であることに照らせば、本件各漫画に基づく著作権の行使は、信義則違反又は権利の濫用に当たり、認められない。
3 争点6(損害額)についての補充主張
〔一審原告の主張〕
 法114条1項ただし書に推定覆滅事由として規定された「販売することができないとする事情」は抗弁であって一審被告らが立証すべきところ、次に述べる事情も考慮すれば、その立証は不十分である。
(1)本件ウェブサイトはいずれも、もっぱら女性向けのBL(ボーイズラブ、男性同士の恋愛や性行為の描写を含む作品)同人誌を掲載するものである。よって、本件各ウェブサイトを訪問するのは、もっぱらBL同人誌の愛好家に限られ、本件各ウェブサイトに対するPVは、他のジャンルの作品に対する閲覧を含まない。
 したがって、本件各ウェブサイトに対するPV数が本件各同人誌(本件各漫画を印刷した同人誌をいう。以下同じ。)の潜在的な需要を示すということができ、一審原告が同数を「販売することができないとする事情」があったとはいえない。
(2)本件各同人誌の販売実績は、発売直後から数ヶ月後に低下する傾向にあったが、これは、無料で閲覧できる本件各ウェブサイトが登場したことにより、本件各同人誌を購入するはずであった消費者が購入意欲を減退させて本件各ウェブサイトに流れたことによるものである。
 したがって、販売実績に上記のような傾向があったことは、PV数に相当する本件各同人誌を一審原告が「販売することができないとする事情」には
当たらない。
(3)本件各同人誌の販売実績は、本件各ウェブサイトのPV数の約9分の1程度であるが、これは、本件各ウェブサイトによる影響を受けたものである。
 よって、販売実績とPV数に上記のような関係にあったことは、PV数に相当する本件各同人誌を一審原告が「販売することができないとする事情」には当たらない。
(4)本件各ウェブサイトの閲覧が作品を購入する意図なしに行われるという事実を裏付ける証拠はなく、同事実は立証されていない。
 したがって、同事実をもって、PV数に相当する本件各同人誌を一審原告が「販売することができないとする事情」とすることはできない。
〔一審被告らの主張〕
 本件各同人誌の販売によって一審原告が得た利益は、237万4680円と算定される。本件各同人誌のように即売会での販売が大半である同人誌の販売について、その内容がインターネット上に掲載されたことによる一審原告の損害が、上記金額にほぼ匹敵する金額に上ることはあり得ない。
 したがって、本件においては、法114条の5を適用し、上記金額の約1割に当たる20万円をもって、一審原告の損害額と認定すべきである。
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所は、一審原告の請求は原判決の認容額の限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。その理由は、当審における両当事者の補充主張に対する判断を次項以下に補充するほか、原判決の「事実及び理由」「第4」の1〜7項(原判決17頁1行目から29頁24行目まで)の記載のとおりであるからこれを引用する。
2 争点5(信義則違反又は権利濫用)について
 一審被告らの主張は、次のとおり、採用することができない。
(1)著作権侵害に関する主張について
ア 原著作物への依拠
 特徴Fによれば、本件各漫画は、原著作権に依拠して作成されたものと認定できる。
イ 著作権侵害の有無
 一審被告らは、本件各漫画には原著作物のキャラクターが複製されている旨主張する。
 しかしながら、漫画の「キャラクター」は、一般的には、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから、著作物に当たらない(最高裁判所平成4年(オ)第1443号、同9年7月17日第一小法廷判決、民集51巻6号2714頁)。したがって、本件各漫画のキャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって、これによって著作権侵害の問題が生じるものではない。
 また、原著作物は、シリーズもののアニメに当たるものと考えられるところ、このようなシリーズもののアニメの後続部分は、先行するアニメと基本的な発想、設定のほか、主人公を初めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書きを付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続のアニメは、先行するアニメを翻案したものであって、先行するアニメを原著作物とする二次的著作物と解される。そして、このような二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分について生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である(上記最高裁判所平成9年7月17日判決参照)。そうすると、シリーズもののアニメに対する著作権侵害を主張する場合には、そのアニメのどのシーンの著作権侵害を主張するのかを特定するとともに、そのシーンがアニメの続行部分に当たる場合には、その続行部分において新たに付与された創作的部分を特定する必要があるものというべきである(なお、一審被告らは、東京地裁昭和51年5月26日判決(判例タイムズ336号201頁)に基づいて、登場人物等に関しては、登場シーンを特定する必要はないという趣旨の主張をするが、上記最高裁判所判決に照らし、採用することはできない。)。
 この観点から検討すると、一審被告らの主張のほとんどは、原著作物のどのシーンに係る著作権が侵害されたのかを特定しない主張であって、主張として不十分であるといわざるを得ない。そして、原著作物の特定のシーンと本件各漫画のシーンとを対比させた乙10の1〜7(もっとも、「アニメ版」として掲げられているシーンについて、第何回のどの部分という具体的特定までがされているわけではない。)の内容を検討してみても、原著作物のシーンと本件各漫画のシーンとでは、主人公等の容姿や服装などといった基本的設定に関わる部分以外に共通ないし類似する部分はほとんど見られず(なお、乙10の1〜7の中で、共通点として説明されているものの中には、表現の類似ではなく、アイディアの類似を述べているのに過ぎないものが少なくないことを付言しておく。)、また、基本的設定に関わる部分については、それが、基本的設定を定めた回のシーンであるのかどうかは明らかではなく、結局、著作権侵害の主張立証としては不十分であるといわざるを得ない。
 以上の次第で、一審被告らの著作権侵害の主張は、それ自体失当であるし、現在の証拠関係を前提とする限り、仮に原著作物のシーンが特定されたとしても、著作権侵害が問題となり得るのは、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分(複製権侵害)に限られるものといわざるを得ない(なお、一審被告らは、本件各漫画で描かれた各シーン(ストーリー展開に関わる部分)は、原著作物の基本的設定に関わる部分の翻案に当たり、また、同一性保持権を侵害していると主張するかもしれないが、上記基本的設定に関わる部分は、主人公等の容姿や服装などの表現そのものにその本質的特徴があるというべきであって、ストーリー展開に本質的特徴があるということはできないから、本件各漫画に描かれたストーリー展開が、上記基本的設定に関わる部分の翻案に当たると解する余地はないし、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分に変更がない以上、同一性保持権侵害が問題になる余地もない。)。
ウ 権利行使の可否
 以上によれば、本件各漫画が、原著作物の著作権侵害に当たるとの主張は失当であるし、仮に著作権侵害の問題が生ずる余地があるとしても、それは、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分の複製権侵害に限られるものであって、その他の部分については、二次的著作権が成立し得るものというべきである(なお、本件各漫画の内容に照らしてみれば、主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分以外の部分について、オリジナリティを認めることは十分に可能というべきである。)。
 そうすると、原著作物に対する著作権侵害が認められない場合はもちろん、認められる場合であっても、一審原告が、オリジナリティがあり、二次的著作権が成立し得る部分に基づき、本件各漫画の著作権侵害を主張し、損害賠償等を求めることが権利の濫用に当たるということはできないものというべきである。
(2)わいせつ性の主張について
 一審被告らは、本件各漫画はわいせつ文書に当たるから、そのような文書に基づいて権利行使をすることは許されないと主張するところ、たしかに本件各漫画(本件漫画11を除く。)は特徴DEを有するものであることが認められる。しかしながら、本件各漫画全体を検討してみても、それらが甚だしいわいせつ文書であって、これに基づく著作権侵害を主張し、損害賠償を求めることが権利の濫用に当たるとか、そのような損害賠償請求を認めることが公序良俗に違反するとまで認めることはできない。
3 争点6(損害額)について
(1)一審原告の主張は、原判決が法114条1項ただし書に基づき、本件各漫画のPV数に本件各同人誌の利益額を乗じた額から9割を控除したことについて、原判決の認定判断の不当を種々の観点からいうものである。
 しかしながら、一審原告の主張は採用することができない。その理由は、次のとおりである。
ア 公衆送信行為による著作権侵害の事案において、法114条1項本文に基づく損害額の推定は、「受信複製物」の数量に、単位数量当たりの利益の額を乗じて行うものとされている。そして、本件のように、著作権侵害行為を組成する公衆送信がインターネット経由でなされた事案の場合、「受信複製物の数量」とは、公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された複製物の数量を意味するのであるから(法114条1項本文)、単に公衆送信された電磁データを受信者が閲覧した数量ではなく、ダウンロードして作成された複製物の数量を意味するものと解される。ところが、本件においては、公衆が閲覧した数量であるPV数しか認定することができないのであるから、法114条1項本文にいう「受信複製物の数量」は、上記PV数よりも一定程度少ないと考えなければならない。
 また、本件において、一審被告会社は、本件各ウェブサイトに本件各漫画の複製物をアップロードし、無料でこれを閲覧させていたのに対し、一審原告は、有体物である本件各同人誌(書籍)を有料で販売していたものであり、一審被告会社の行為と一審原告の行為との間には、本件各漫画を無料で閲覧させるか、有料で購入させるかという点において決定的な違いがある。そして、無料であれば閲覧するが、書籍を購入してまで本件各漫画を閲覧しようとは考えないという需要者が多数存在するであろうことは容易に推認し得るところである(原判決27頁において認定されているとおり、本件各同人誌の販売総数は、本件各ウェブサイトにおけるPV数の約9分の1程度にとどまっているが、これも、本件各漫画の顧客がウェブサイトに奪われていることを示すというよりは、無料であれば閲覧するが、有料であれば閲覧しないという需要者が非常に多いことを裏付けていると評価すべきである。)。
イ そうすると、本件各漫画をダウンロードして作成された複製物の数(法114条1項の計算の前提となる数量)は、PV数よりも相当程度少ないものと予想される上に、ダウンロードして作成された複製物の数の中にも、一審原告が販売することができなかったと認められる数量(法114条1項ただし書に相当する数量)が相当程度含まれることになるのであるから、これらの事情を総合考慮した上、法114条1項の適用対象となる複製物の数量は、PV数の1割にとどまるとした原判決の判断は相当である。この点につき、一審原告は種々主張しているが、上記の点に照らし、その主張を採用することはできない。
(2)一審被告らの主張は、法114条1項に基づく損害額の認定を行うこと自体の不当をいうものであるが、PV数と受信複製物数の違いを念頭に置いた上で、更に一審原告が販売できないとする事情を考慮して損害額算定の基礎となる数量を算定し、これに一審原告の利益額を乗じる手法が不合理であるとすべき事情は見当たらないから、法114条1項に基づく損害額の認定は相当であり、「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるとき」として法114条の5を適用する必要はない。
 したがって、一審被告らの主張は採用することができない。
4 結論
 以上によれば、原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がない。

知的財産高等裁判所第3部
 裁判長裁判官 鶴岡稔彦
 裁判官 上田卓哉
 裁判官 都野道紀


別表
A B C D
  本件各漫画 原著作物 筋書き・道具立ての同一・類似
2 魔性のカツ丼 ユーリ!!! on ICE ・ カツ丼
・ 舞台となる温泉旅館「ゆーとぴあかつき」の外観及び家具
・ 主役二人の師弟関係
3 夢うつつ 刀剣乱舞
−ONLINE−
・ 舞台となる和風屋敷の建築様式及び内装
・ 装束及び装身具
7 学ランにほへし 刀剣乱舞 ・ 主役二人の上下関係
5 眩暈 ダイヤのA ・ 野球グラウンド及び部室
・ 主役2人の野球部員としての先輩後輩関係
6 Owl&Cat手コキ特集 ハイキュー!! ・ 体育館
・ 高校バレーボール部員の合同合宿
10 Owl&Catキスがしたいな ハイキュー!! ・ 体育館
・ 高校バレーボール部員の合同合宿
8 MiLK TIGER & BUNNY
13 やきもちあらいぐま TIGER & BUNNY ・ 3人の主役同士の間での互いの呼び方,コン ビの状況及び仕事の成果
1 in the pool Act.5 TIGER & BUNNY
14 下着おじリターンズ TIGER & BUNNY
9 一松さんはオフィスラブした い おそ松さん ・ 男ばかりの六つ子の中の2人が主役
4 ちゃんとしてる大人たち おそ松さん ・ 男ばかりの六つ子の中の2人が主役
12 HUNGRY SPIDER おそ松さん ・ 男ばかりの六つ子の中の2人が主役
・ 「美女薬」を飲んで女性に変身する
・ 六つ子が一列に並んで就寝する
11 とある遥と凛の珍魚図鑑 FREE! ・ 主役二人はそれぞれ「鯖」「鮫」と関連している

 A列の番号は、原判決別紙著作物目録の番号である。
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