判例全文 line
line
【事件名】JASRAC VS 音楽教育を守る会 楽曲使用料事件
【年月日】令和2年2月28日
 東京地裁 平成29年(ワ)第20502号、同第25300号 音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不存在確認事件
 (口頭弁論終結日 令和元年12月13日)

判決
 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり


主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 別紙請求目録記載のとおり
第2 事案の概要
1 本件は、著作権等管理事業法(平成12年法律第131号)に基づく文化庁長官の登録を受けた著作権管理事業者である被告が、被告の管理する著作物の演奏等について、音楽教室、歌唱教室等からの使用料徴収を平成30年1月1日から開始することとし、平成29年6月7日、文化庁長官に対し、使用料規程「音楽教室における演奏等」の届出を行ったところ、音楽教室を運営する法人及び個人であって、教室又は生徒の居宅において音楽の基本や楽器の演奏技術・歌唱技術の教授を行っている原告らが、原告らの音楽教室における楽曲の使用(教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生)は、「公衆に直接…聞かせることを目的」とした演奏(著作権法22条)に当たらないことなどから、被告は、原告らの音楽教室における被告の管理する楽曲の使用にかかわる請求権(著作権侵害に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権)を有しないと主張して、被告に対し、同請求権の不存在確認を求める事案である。
2 請求の趣旨について
(1)主位的請求について
(請求の趣旨第1項について)
 請求の趣旨第1項は、録音物を使用せず、生徒及び教師の演奏のみが行われるレッスン(別紙著作物使用態様目録1)に関する請求であり、このうち、同項(1)@は、教師と10名程度以下の複数の生徒との間で行われるレッスンであり、かつ、楽曲を一曲通して演奏することがない場合について、同項(1)Aは、教師と10名程度以下の複数の生徒との間で行われるレッスンであり、かつ、楽曲を一曲通して演奏することがある場合について、同項(2)@は、教師1名対生徒1名で行われるレッスンであり、かつ、楽曲を一曲通して演奏することがない場合について、同項(2)Aは、教師1名対生徒1名で行われるレッスンであり、かつ、楽曲を一曲通して演奏することがある場合についての請求である。原告らは、上記各態様のレッスンは全ての原告が行っているとして、全ての原告と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第2項について)
 同第2項は、生徒及び教師の演奏に加えて、市販のCD等の録音物の再生が行われるレッスン(同目録2)に関する請求であり、同項(1)@A、(2)@Aの区別は第1項の場合と同様である。原告らは、同目録記載の使用態様のレッスンを行っている全ての原告(別紙A記載の者。以下「原告ら(別紙A)」という。)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第3項について)
 同第3項は、生徒及び教師の演奏に加えて、マイナスワン音源(生徒が演奏する楽器のパートのみを除いた合奏が録音されたCD等)の録音物の再生が行われるレッスン(同目録3)に関する請求であり、同項(1)@A、(2)@Aの区別は第1項の場合と同様である。原告らは、同目録記載の使用態様のレッスンを行っている全ての原告(別紙B記載の者。以下「原告ら(別紙B)」という。)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第4項について)
 同第4項は、生徒の居宅において、教師が生徒に対して個人レッスン(同目録4)を行う場合に関する請求であり、このうち、同項(1)は、楽曲を一曲通して演奏することがない場合について、同項(2)は、楽曲を一曲通して演奏することがある場合についての請求である。原告らは、同目録記載の使用態様のレッスンを行っている全ての原告(別紙C記載の者。以下「原告ら(別紙C)」という。)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(2)予備的請求について
 予備的請求である第5項ないし第8項は、レッスンの種類による区分ではなく、参加人数(生徒の人数)、演奏者(教師及び生徒)、演奏対象(小節数)、再生対象(市販CD等とマイナスワン音源)により細かく態様を分けたものであり、同第1項ないし第4項の一部請求である(第7回弁論準備手続調書)。
(同第5項について)
 同第5項は、同第1項と同様の使用態様のレッスンに関する請求であり、このうち、同項(1)は、教師と10名程度以下の複数の生徒との間で行われるレッスンであり、同項(2)は、教師1名対生徒1名で行われるレッスンであり、いずれも@生徒の、連続して3小節以上の演奏、A教師の、連続して3小節以上の演奏、B生徒の、連続して2小節以内の演奏、C教師の、連続して2小節以内の演奏の各場合について、全ての原告と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第6項について)
 同第6項のうち、同項(1)は、教師と10名程度以下の複数の生徒との間で行われるレッスンであり、同項(2)は、教師1名対生徒1名で行われるレッスンであり、いずれも同目録2記載の市販のCD等の録音物の再生演奏について、原告ら(別紙A)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第7項について)
 同第7項のうち、同項(1)は、教師と10名程度以下の複数の生徒との間で行われるレッスンであり、同項(2)は、教師1名対生徒1名で行われるレッスンであり、いずれも同目録3記載のマイナスワン音源の録音物の再生演奏について、原告ら(別紙B)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(同第8項について)
 同第8項は、原告ら(別紙C)と被告との間において、@生徒の、連続して3小節以上の演奏、A教師の、連続して3小節以上の演奏、B生徒の、連続して2小節以内の演奏、C教師の、連続して2小節以内の演奏の各場合について、原告ら(別紙C)と被告との間で、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(3)原告らの分類等について(なお、以下、原告らのうち、原告一般財団法人ヤマハ音楽振興会を以下「原告ヤマハ」といい、原告河合楽器製作所を「原告河合」、原告島村楽器を「原告島村」、原告山野楽器を「原告山野」、原告株式会社レゼルを「原告レゼル」という。)
 原告らが経営する音楽教室は、@原告ヤマハが運営する「ヤマハ音楽教室」又は「ヤマハ大人の音楽レッスン」(以下、併せて「ヤマハ音楽教室等」という。)、A原告河合が運営するカワイ音楽教室、B原告ヤマハとの間でヤマハ製品の継続的販売取引基本契約を締結している販売店(以下「ヤマハ特約店」という。)が独自に運営する音楽教室、C@ないしB以外の原告(別紙原告グループC目録記載の者)が独自に運営する音楽教室に分類される。
 原告らのうち、原告ヤマハについては、ヤマハ音楽教室等の生徒募集及び会場での設営等を自ら行う場合と、ヤマハ特約店にヤマハ音楽教室等の募集業務、受講料の徴収管理、生徒の安全管理、教室会場の設営等の業務を委託する場合がある。このいずれの場合であっても、生徒との間で締結する受講契約の当事者は原告ヤマハであり、原告ヤマハが派遣した教師が同原告のメソッドに従いレッスンを行うものであることから、ヤマハ音楽教室等についての権利不存在の確認は、ヤマハ特約店に委託して行うものも含め、原告ヤマハが求めるものである。
 ヤマハ特約店である原告らは、原告ヤマハとは無関係に、自らが契約主体となって、独自の音楽教室を営んでおり、自らが契約主体となる独自の音楽教室についてのみ権利不存在の確認を求めるものである。
3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。)
(1)当事者
ア 原告ら
(ア)原告らは、音楽を教授する契約及び楽器の演奏技術・歌唱技術を教授する契約(以下「本件受講契約」という。)を締結した生徒に対して、音楽及び演奏技術等を教授することを目的として、雇用契約又は準委任契約を締結した教師をして、または個人事業主である原告については自らが上記の教授を行うレッスンを実施する音楽教室を運営する者である。
(イ)原告ヤマハとヤマハ特約店は、本件受講契約を締結する生徒(又はその保護者)に係る生徒の募集業務、受講料の徴収管理、生徒の安全管理、教室会場の設営等の業務に関する継続的業務委託契約を締結している。
 なお、原告河合は、音楽教室について他者に業務委託をしていない。
イ 被告
 被告は、著作権等管理事業法に基づく文化庁長官の登録を受けた著作権管理事業者であり、作詞者、作曲家及び音楽出版社等の著作権者から著作権等につき信託を受けるなどしてこれを管理し、各種の分野における音楽の利用者に対して、被告が管理する音楽著作物(以下「被告管理楽曲」という。)の利用を許諾し、その対価として著作物使用料を徴収するとともに、これを著作権者に分配することを主たる目的とする一般社団法人である。
 被告は、被告管理楽曲の演奏利用につき、利用者団体との協議を経て、昭和46年から社交ダンス教授所、昭和60年からヤマハ音楽教室の発表会、平成23年4月からフィットネスクラブ、平成24年4月からカルチャーセンター、平成27年4月から社交ダンス教授所以外のダンス教授所、平成28年4月からカラオケ教室及びボーカルレッスンを含む歌謡教室の管理を開始した。
(2)本件使用料規程の新設に係る経緯
ア 被告は、平成29年2月9日頃、原告ヤマハに対し、音楽教室において被告管理楽曲を演奏、上映又は伝達する際の使用料として、被告が定める使用料規程に「音楽教室における演奏等」の項目を新設し(以下、使用料規程のうち当該項目の部分を「本件使用料規程」という。)、同規程に基づき、平成30年1月1日から使用料徴収を開始する予定である旨通知し、平成29年6月7日、文化庁長官に対し、本件使用料規程の新設等に係る変更の届出をした。(甲1、4、乙47)
イ 本件使用料規程に定められた使用料の算定方法は複数あるが、例えば、年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合の1施設当たりの年額使用料は、受講料収入算定基準額の2.5/100の額である。ここにいう「受講料収入算定基準額」とは、前年度に当該施設で行われた被告管理楽曲を利用した講座の受講料収入(講座ごとの受講料の合計)の合計額をいい、被告管理楽曲を利用した講座が特定できない場合は、音楽を利用した全ての講座の受講料収入の合計額の50/100の額である。(乙47の60頁)
ウ 原告らは、音楽教室における演奏からの著作物使用料徴収に反対すべく、「音楽教育を守る会」を発足し、平成29年12月21日、著作権等管理事業法24条1項に基づき、同会を申請者として、文化庁長官に対し、本件訴訟の判決が確定するまで、本件使用料規程の実施を保留することを求める裁定申請を行った。これに対し、文化庁長官は、平成30年3月7日、同会が求める実施の保留は行わず、本裁定の日をもって本件使用料規程の実施の日とする旨の裁定を行った。(乙52、53)
エ 被告は、平成30年4月1日、楽器メーカーや楽器店が運営する楽器教室を対象として、演奏等の許諾手続を開始した。(乙48)
(3)原告らの音楽教室における演奏態様
 原告らの音楽教室における演奏態様の概要は、以下のとおりである。(甲6、13、18〜21、25、27、乙19〜21、弁論の全趣旨)
ア 全ての原告が共通して行う演奏態様は、別紙著作物使用態様目録1記載のとおりであり(以下「本件使用態様1」という。)、原告らが設営した教室において、教師及び生徒が1対1の個人レッスン又は1対最大10名程度以下のグループレッスンにおいて、課題曲を教師及び生徒が演奏するものであり、録音物の再生は行われない。
イ 原告ら(別紙A)が行う態様は、別紙著作物使用態様目録2記載のとおりであり(以下「本件使用態様2」という。)、上記アにおける教師及び生徒の演奏に加え、教師の伴奏の代わりに、生徒の演奏の合奏の相手とするために、市販のCD等の録音物の再生が行われる。
ウ 原告ら(別紙B)が行う態様は、別紙著作物使用態様目録3記載のとおりであり(以下「本件使用態様3」という。)、上記アにおける教師及び生徒の演奏に加え、教師の伴奏の代わりに、生徒の演奏の合奏の相手とするために、マイナスワン音源の再生が行われる。
エ 原告ら(別紙C)が行う態様は、別紙著作物使用態様目録4記載のとおりであり(以下「本件使用態様4」という。)、生徒の居宅において、教師及び生徒が1対1のレッスンにおいて、課題曲を教師及び生徒が演奏するものであり、録音物の再生は行われない(以下、原告ら(別紙C)が運営する音楽教室を「個人教室」という。)。
(4)ヤマハ音楽教室等の運営状況
ア 原告ヤマハの提供するレッスンの種類、生徒数など
 原告ヤマハは、幼児から小学生までの子供を対象とする「ヤマハ音楽教室」及び中学生から成人までを対象とする「ヤマハ大人の音楽レッスン」を全国に展開し、また、海外の40以上の国及び地域においても音楽教室を展開しており、平成29年度における会場数、講師数及び生徒数は、以下のとおりである。(乙3の1・3、23〜27、56、59)
  会場数 講師数 生徒数
ヤマハ音楽教室 3100会場 8300人 27万1000人
ヤマハ大人の音楽レッスン 1300会場 4500人 10万7000人
海外 1200会場 7000人 19万9000人
イ ヤマハ音楽教室等の基本理念及び特徴
 原告ヤマハは、昭和29年に、現在の「ヤマハ音楽教室」に相当する音楽教室を開講して以来、「すべての人々が持っている音楽性を育み、創造的な音楽能力を養うこと」を基本理念とし、独自のメソッドによる音楽教育を行っている。(乙56)
 具体的には、「ヤマハ音楽教室」のカリキュラムの特徴は、楽譜を読んで弾くことに主眼を置くのではなく、まず聞き取ったメロディーを「そら」で歌えるようにし、覚えた旋律を「ドレミ」で歌い、次にそれを弾いてみるという「きく→うたう→ひく→よむ→つくる」の順序で子供に音楽を教えるという点にあり、また、グループレッスンにより、参加者全員で音楽を感じ合い、お互いの個性や表現の違いを認め合うことが重視されている。(甲17、乙23、34、41)
ウ 教師の採用及び育成
 原告ヤマハは、上記の基本理念に基づいた教育手法を実現するため、ヤマハ音楽能力検定制度(ヤマハグレード)を設け、教師の採用に当たっては、グレードに即して試験を実施するとともに、教師の年次、年齢、取得グレード、指導内容、指導成果等に応じて、ライセンスを付与する制度(ヤマハ講師ライセンス制度)を設けており、所定の時期までに一定のグレードのライセンスを獲得しなければ、教師としての稼働ができなくなる。また、同原告は、教師に対し、各種の研修を行い、カリキュラム等の指導のためのマニュアルを交付している。(甲17、乙34、56、58、証人D2〜3頁)
エ レッスンにおける課題曲の選択
 子供を対象とする「ヤマハ音楽教室」、中高生以上を対象とする「ヤマハ大人の音楽レッスン」のいずれにおいても、レッスンにおいて使用する教材は、テキストとレパートリー集(曲集)である。これらの生徒が演奏する課題曲は、レパートリー集の中から、教師が生徒のレベルに応じて選曲するが、生徒の希望する曲を使用することもある。(甲33、34、36、37、乙3の3、26、27、54、証人E9〜10頁、証人F3〜4頁)
オ 生徒との受講契約等
 原告ヤマハの提供するレッスンを受講しようとする生徒は、「教室入会申込書兼レッスン受講契約書」に受講を希望するコース名、曜日、受講会場等を記載し、レッスン料を支払うことを約して申込みを行う。レッスンは、原告ヤマハ又はヤマハ特約店が設営した教室において当該教室に備え付けられた設備、装置を使用して行われるが、楽器については、生徒が持参又は購入するほか、同原告が用意したものをレンタルすることもある。レッスンに用いる楽譜は生徒が購入する。
 また、同契約書には、レッスンの会場、クラス、講師の変更があり得る旨、また、レッスンは、原告ヤマハ又は生徒からの申し出がない限り、1か月間で自動更新となる旨の記載がある。(以上、甲18、乙20、54、証人F2〜3頁)
カ 音楽教室事業の採算性
 原告ヤマハの関連会社であるヤマハ株式会社は、平成17年の投資家向けの「楽器事業説明会質疑応答」(乙37)において、音楽教室事業について、楽器製品の需要を創造する活動として展開し、製品の販売に寄与しているほか、楽器レンタル事業なども開始しており、国内では採算がとれている旨説明している。
(5)カワイ音楽教室の運営状況
ア 原告河合の提供するレッスンの種類、会場数など
 原告河合は、子供を対象とするコース及び大人を対象とするコースの音楽教室を開講しており、平成29年時点において、音楽、体育を含む教室数は6000教室程度である。(甲19、乙3の2、29、30、38のスライド17)
イ カワイ音楽教室の基本理念及び特徴
 子供を対象とするピアノの演奏技術を学ぶ教室では、小学校の中学年頃からピアノを始める子供のために作られた原告河合のオリジナル教材であるサウンドツリーが用いられる。サウンドツリーは、主教材であるテキスト、ワークブック及びCDがセットになっており、楽譜を見ながら弾く能力を育むのみならず、子供がピアノと積極的に触れ合う活動をカリキュラムに取り入れている。サウンドツリーを使ったレッスンを担当する教師は、原告河合が定める研修を受講した者である。(甲19)
ウ 生徒との受講契約等5
 原告河合の提供するレッスンを受講しようとする生徒は、「カワイ音楽教室等入学申込書」に受講を希望する教室、コース名、曜日等を記載し、レッスン料を支払うことを約して申込みを行う。レッスンは原告河合が設営した教室において、当該教室に備え付けられた設備・装置を使用して行われる。また、同申込書には、講師の変更があり得る旨の記載がある。(甲19、乙21、22)
エ 音楽教室事業の採算性
 原告河合は、平成29年3月期の決算説明会において、「販売、アフター、音楽教室」の「三位一体体制」を経営戦略と位置付け、同月期の連結業績について、楽器事業の売上高357億2000万円、営業利益2億2000万円、教育関連事業の売上高167億2000万円、営業利益10億2000万円と報告している。(乙38のスライド4・29・30)
(6)現行著作権法22条の立法経緯
ア 昭和40年5月の著作権制度審議会第1小委員会審議結果報告(以下「昭和40年報告」という。乙6の2の124頁)には、有形複製と無形複製とを区分することなく、「教育の課程における利用については、たとえば、教室内における利用は、その性質上当然に自由利用を認めてしかるべき利用であるが、それとともに、教室という閉鎖的な場における特定の人的範囲による使用ということからすれば、…著作権の行使が制限されるべき範囲における使用=公でない使用に該当するものと解される。」、「学芸会における使用も、その目的からして著作権の制限の措置を講ずることとしてさしつかえない使用と考えられるが…収益を目的としない興行のための使用について措置する場合には、通常の学芸会等はこれに該当するものと解される」と記載されている。
イ 昭和41年4月の著作権制度審議会答申等(以下「昭和41年答申」という。乙7)には、有形複製及び無形複製の区別に言及することなく、「学校教育および社会教育を通じ、教育の過程における使用については、原則として、自由利用を認めるのが相当であるが、その使用の態様からすれば、公でない使用あるいは収益を目的としない上演、演奏等として取り扱うこととし、この使用のために特別の措置を講じないことが適当である。」と記載されている(37頁)。
 また、同答申は、公になされた上演、演奏等に当たらない無形複製について、「(一)観衆または聴衆が家庭的範囲等特定かつ少数である場合、(二)観衆または聴衆が比較的多数であっても、その範囲が明確に限定され、かつ、それらの者が相互に個人的に結合されている場合」を挙げ、「観衆または聴衆が不特定であっても少数の場合には、営利性との関連等その使用の目的、態様からして、社会通念上「公の演奏」には当たらないものとすべきものがある」としている(36頁)。
 そして、同答申の付属書である著作権制度審議会答申説明書(以下「答申説明書」という。乙8)には、上記(一)の例として「家庭内における音楽の演奏」、「数人の同好者を聴衆とする場合等観衆や聴衆が特定かつ少数である場合」が、上記(二)の例として「通常の結婚式の披露宴における演奏等」が挙げられ、また、「オーケストラの練習の場合のように、演奏者等のほかには、聴衆等のいない場合が、公の演奏等にあたらないことは、もとよりである」と説明されている(61〜62頁)。
ウ 昭和41年10月の「著作権及び隣接権に関する法律草案(文部省文化局試案」(以下「昭和41年試案」という。乙9)には具体的な条項が設けられているが、同試案は、2条1項11号において「公衆又は特定かつ相当程度に多数の者」を「公衆等」と略称した上で、30条(公の意義)において「著作物の上演、演奏、口述、伝達…、展示又は上映は、公衆等によって直接視聴されることを目的として行なう場合において、公であるものとする」と規定している(4、13頁)。
 他方、同試案33条1項(私的使用のための複製等)は、有形複製につき、「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、個人的に又は学校の学級内その他閉鎖的な範囲内において使用する場合には、小部数に限り、複製し、録音し、又は録画することができる。ただし、著作権者の経済的利益を不当に害する場合には、この限りでない。」と規定している(14頁)。
 同試案に関する文部省文化庁の著作権法法案コンメンタール(以下「試案コンメンタール」という。乙10)には、試案30条の趣旨について、「著作物の利用のうち、複製、録音および録画の有形的な利用にあっては、当初は限局された目的のためのものであっても、ひとたび複製物等が作成されれば、その有体物は未来永劫に残りうるものであり、将来における反復使用の可能性を常に有する。一方、これに対し、上映、演奏等の無形的な利用にあっては、それが録音・録画される場合を除き、たとえば、家庭内における利用等のように限局された目的のものである限り、その著作物の経済的効用を問題にする余地のない性格のものであり、かつ、それが将来において他の者の利用を招来する危険もない。」、「本条は…実体的な意味においては、著作物の有形的利用に関する著作者の権利を“私的利用”の場合に制限する第33条第1項の規定と同様な効果を意図するものである。…もっとも、原理的にいえば、本条は著作者の権利が本来的に及ばない範囲を定めるものであり、第33条第1項は原則的には及ぶ著作者の権利を一定の条件下において制限する旨を定めるものである点において、異なる」と説明されている(30〜1ないし30〜3頁)。
 その上で、同条が「公衆等によって直接視聴されることを目的」を要件とする趣旨について、「著作権の経済的利益性に着眼し、著作物の提示の対象とする者の範囲・人数等がこのように著作物の利用による経済的効用を認めるにたりる場合であることを要求するものである」と説明している(30〜4頁)。
 また、同コンメンタールは、「個人的結合関係」を要件とすることについて、「通常の結婚式の披露宴」を設例として挙げ、「「個人的結合関係」の有無を法律上規定することは、かえって「公」の概念を不明確にするおそれがあり、むしろ、立法論としては、設例の場合をも原則的には「公」の演奏等に含ましめたうえで、著作権者による権利行使の自主的抑制を期待するか、あるいは“著作権の制限”として例外的措置を講ずるかのいずれかを選ぶことが適当である」としている(30〜4・5頁)。
エ 昭和43年に作成された著作権法の法案では、@有形複製につき、学校その他の教育機関の授業についての権利制限規定として現行著作権法35条に当たる規定が設けられ、A無形複製につき、「この法律にいう「公衆」には特定かつ多数の者を含むものとする。」との規定が設けられた上、「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」との規定が設けられ、B営利を目的としない演奏等に関する権利制限については、現行著作権法38条と同様の規定が置かれている。(乙11、13、弁論の全趣旨)
(7)現行著作権法の立法経緯における「社会教育」の意義
ア 昭和38年11月の「著作権制度審議会各小委員会審議状況について(中間報告)」の第1小委員会審議結果概要(乙16)には、「社会教育における利用について」において「社会教育のための学級・講座における利用については、教育委員会、公民館等の開設するものに関しては、ある程度、著作物の利用を容易にするための措置を講じてさしつかえないものと考える。」と記載され(90頁)、第2小委員会審議結果概要には「大学の公開講座、美術館の美術講座等において講義に際し著作物を利用する場合については、厳格に公共的性格が維持されるときに限って、自由としてさしつかえない。」と記載されている(95頁)。
イ 昭和40年5月21日の著作権制度審議会各小委員会審議結果報告の第5小委員会の報告(乙18)には、著作隣接権の保護の例外について「学校教育および組織的に社会教育を行なう教育委員会、学校、公民館等が、直接その教育活動に利用するために、自己の固定手段をもって固定する場合には、そのことに係る放送事業者および実演家あるいはレコード製作者の権利が制限されるものとしてさしつかえない。」と記載されている(215頁)。
ウ 前記(6)イ記載のとおり、昭和41年答申には、「学校教育および社会教育を通じ、教育の過程における使用については、原則として、自由利用を認めるのが相当である」との記載があり、「答申説明書」(乙8)にも、教育の過程における著作物の無形的及び有形的複製についての取扱いは「学校教育における場合のほか、社会教育をも含め、広く教育の過程における使用についても同様とする。」と記載されている(64頁)。
4 争点
(1)原告ら(別紙C)についての確認の利益の有無(争点1)
(2)音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるか(争点2)
(3)音楽教室における演奏が「聞かせることを目的」とするものであるか(争点3)
(4)音楽教室における2小節以内の演奏について演奏権が及ぶか(争点4)
(5)演奏権の消尽の成否(争点5)
(6)録音物の再生に係る実質的違法性阻却事由の有無(争点6)
(7)権利濫用の成否(争点7)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告ら(別紙C)についての確認の利益の有無)について
〔原告らの主張〕
 被告は、原告ら(別紙C)のような個人教室について、楽器メーカー等の運営する音楽教室の管理水準が一定のレベルに達するまでの間、使用料を請求しないと主張するが、これは個人教室に対して今後一切著作物の使用料を請求しないという趣旨ではなく、被告は、いずれは個人教室を著作権管理の対象とする意思があることを表明している。被告の同方針は、管理体制上の事情から、まずは大手の楽器メーカー等が運営する音楽教室から使用料の徴収をすることとしたというものにすぎず、何らの拘束力も有しないので、原告ら(別紙C)の法律上の地位に不安ないし危険が現存しているということができる。
 したがって、個人教室である原告ら(別紙C)についても確認の利益が認められる。
〔被告の主張〕
 個人教室である原告ら(別紙C)については、以下のとおり、即時確定の現実的必要がなく、確認の利益が認められない。
 被告は、個人が運営する音楽教室のうち、楽器メーカーや楽器店が運営するものではない個人教室については、楽器メーカー等が運営する音楽教室の管理水準が一定のレベルに達するまでの間、著作権管理の対象としないこととし、将来的に著作権管理の対象とする個人教室についても、インターネット上のホームページ等を利用して不特定多数の生徒を常時募集する形態で運営されているものとする旨の方針を機関決定して公表している(乙32、48)。
 楽器メーカー等の音楽教室に対する管理水準が一定のレベルに達し、被告が個人教室の管理を開始するのが何年後になるかを現時点で予測することは困難であり、その時期が到来したとしても、その時点で原告ら(別紙C)が上記のような形態で個人教室の経営を継続しているかどうかを予測することも困難である。
 したがって、原告ら(別紙C)については、本件訴えについて実体判決をしてみても、その判決が無意味になることもあり得るのであり、即時確定の現実的必要があるということはできないから、確認の利益がない。
2 争点2(音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるか)について
〔被告の主張〕
 以下のとおり、音楽教室における音楽著作物の利用主体は、音楽教室事業者である原告らであり、原告らからみて音楽教室の生徒は不特定多数の者であるので、音楽教室における演奏は「公衆」に対するものに当たる。
(1)音楽教室における音楽著作物の利用主体は音楽教室事業者である原告らであること
ア 音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるかについては、利用主体を確定した上で、その利用主体との関係で決すべきであり、このことは、最高裁昭和59年(オ)第1204号同63年3月15日第三小法廷判決・民集42巻3号199頁(以下「クラブキャッツアイ事件最高裁判決」という。)以降の裁判例を踏まえ、最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁(以下「ロクラクU事件最高裁判決」という。)によって確定された判例法理である。
 著作権法において「公衆」に当らないとされるのは、特定かつ少数の者のみであるから、本件における問題点は、音楽教室事業を経営していて音楽教室における演奏という形態で音楽著作物を利用する主体である原告らからみて、音楽教室の生徒が特定かつ少数の者ということができるかどうかにある。
イ ロクラクU事件最高裁判決は、利用主体の判断を単に物理的・自然的に観察すれば足りるという立場を排斥して、規範的利用主体論に立つことを再確認した判例である。そして、複製という形態での利用主体の評価根拠事実のうち、従前「管理・支配」の要素とされていたものにつき、@複製の対象、A複製の方法、B複製への関与の内容、C複製への関与の程度、の4つの要素を抽出した上で、誰が当該著作物の複製をしているかを判断するのが相当であるとした。なお、同判決は「利益の帰属」の要素について言及していないが、その理由について、同判決の補足意見が、同事件では「管理・支配」の要素のみによってサービス提供者の利用主体性を優に肯定できるからであると説明しているとおり、「利益の帰属」を考慮することが排除されたものではない。
ウ これに対し、原告らは、物理的な演奏行為者が自明である場合には、著作物の利用主体を規範的に判断することは相当ではなく、また、物理的行為者以外の者に著作権侵害の責任を負わせるには、物理的行為者に支分権該当行為が認められることが前提となるとし、クラブキャッツアイ事件最高裁判決もそのような立場に立っていると主張する。
 しかし、原告らの上記主張は、音楽教室における音楽著作物の利用主体が物理的な演奏行為をする教師又は生徒のみであるという主張を別な形で言い換えたものにほかならない。また、クラブキャッツアイ事件最高裁判決は、スナックの経営者による歌唱と同視し得る客等の歌唱が公衆に直接聞かせることを目的とするものである旨を判示したにすぎず、その後の裁判例及び最高裁判例においても、原告らの主張するような考え方を採るものはない。
エ 以下のとおり、原告らと雇用契約又は準委任契約を締結している教師の演奏であれ、原告らと本件受講契約を締結している生徒の演奏であれ、演奏という形態による音楽著作物利用の管理・支配は音楽教室を経営する原告らによって行われ、また、演奏という形態による音楽著作物利用の利益は、音楽教室を経営する原告らに帰属する。
(ア)音楽教室事業者である原告らに採用された教師は、原告らが創設し、発展させてきた教育方法に従って、原告らと本件受講契約を締結した生徒を教育する義務を負っているのであり、音楽教室において教師のする演奏及び録音物の再生は、原告らに対する当該義務の履行の一環であるから、原告らの管理・支配の下にある。
 特に、原告ヤマハについては、ヤマハメソッドなる教育システムを開発し、教育メソッドの開発、教材の作成、採用した教師に対する研修、教師用指導書の提供等を行っており、教師の演奏に対する強度の管理・支配がされている(乙34)。また、個人の原告については、自らが教師となるので、当該原告が利用主体であることは明らかである。
(イ)音楽教室における生徒の演奏は、@原告らと締結した本件受講契約におけるレッスンの一環としてされるものであり、本件受講契約に基づくレッスンの受講と無関係に演奏するものではないこと、A原告ら自身(個人の原告の場合)又は原告らが採用した教師の指導の下、教育効果の観点から必要と考えられる場合にその限度でされること、B原告らとの間で締結された本件受講契約によって特定されたレッスンのコースで使用されるテキストにおいて課題曲として指定された音楽著作物を、教師の指導・指示の下で演奏することを原則とするものであること、C楽器を演奏するのに適した場所として原告らが費用を負担して設営した教室(施設)において、原告らの管理下にある設備・装置(音響設備、録音物の再生装置等)、録音物、楽器等を利用してされるものであることからすれば、生徒の演奏についても、原告らの管理・支配が及んでいる。
(ウ)原告らは、営利事業として音楽教室を営み、音楽著作物の演奏の教授に特化した者であり、音楽教室事業が音楽著作物を利用せずに楽器の演奏技術を教授することは不可能であることに照らすと、顧客である生徒(又はその保護者)が原告らに対して本件受講契約に基づき支払う受講料の中に、音楽著作物の利用の対価部分が含まれているということができる。音楽教室事業における教師又は生徒との演奏の量と原告らの営業上の利益とは正比例の関係にあり、演奏という形態による音楽著作物利用の利益が原告らに帰属していることは明らかである。
 また、原告らの音楽教室の生徒が学習用に楽器と楽譜を購入することがあるという事実は、原告ら音楽教室事業者が、被告管理楽曲を利用した音楽教室事業それ自体により利益を得ているのみならず、その親会社が営む楽器の販売、レンタル事業にも寄与していることを示している(甲17、乙37〜40、54、71〜73)。原告ヤマハの親会社、原告河合及びヤマハ特約店である他の大多数の原告らは、音楽教室を経営し、教師の勧めにより顧客である生徒に高額な楽器を販売するという楽器販売のビジネスモデルを確立し、利益を上げている。
(エ)以上のとおり、音楽教室における教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生について、音楽教室事業者である原告らには演奏利用の管理・支配及び利益の帰属が認められるから、演奏の利用主体は原告らである。
オ 録音物の再生演奏に関し、原告らは、その必要性を判断するのは教師であると主張するが、録音物の再生演奏の主体を決するに当たり最も重要な点は、これをレッスンの手段として取り入れるという決定を誰がしているかである。教師が行う録音物の再生について、録音物の再生を行うこと自体を選択しているのが原告らであることは、原告らが主張する別紙著作物使用態様目録1〜4において、録音物を使用する者と使用しない者がいることからも明らかである。
(2)利用主体である原告らからみて、生徒は「公衆」に当たること
ア 不特定の者に対するものであること
 著作権法における「公衆」とは、不特定の者と特定かつ多数の者が含まれ(著作権法2条5項)、「公衆」に当たらないとされるのは、特定かつ少数の者のみである。そして、同項にいう「特定」とは、利用主体との間に個人的な結合関係がある者をいうと解されるところ、特定か否かは、事前の人的結合関係の強弱によって区別されるものであり、事後の人的関係、すなわち、本件に即していうと、本件受講契約の締結後の事情は問題とならない。
 原告らが経営する音楽教室は、契約をすれば誰でもレッスンを受講することができ、生徒を募集する時点では、生徒との間に個人的な結合関係は要求されないので、演奏の主体である原告らからみて、生徒は不特定の者である。
 これに対して、原告らは、特定か否かは契約締結後の時点を基準に判断すべきであると主張するが、最高裁平成21年(受)第653号同23年1月18日第三小法廷判決・民集65巻1号121頁(以下「まねきTV事件最高裁判決」という。)は、「まねきTV」というサービスの利用者がその提供者からみて公衆に当たるかについて、何人もサービス提供者との関係等を問題とされることなく上記サービスを利用する契約を締結することにより当該サービスを利用することができるから、利用者は不特定の者に当たると判示し、サービス提供者との間で契約関係に入るのに先立って個人的な結合関係があるか否かを検討している。
 仮に、本件受講契約の締結後の事情に着目してみても、原告らと生徒との関係は、継続的契約に伴う一般的な信頼関係にすぎず、原告ら音楽教室事業者は生徒が契約関係から離脱することを織り込んで音楽教室を経営している。すなわち、原告らの音楽教室は、原告らと契約しさえれば音楽教室の生徒になることができる一方、いつでも辞めることができる(原告ヤマハの基本会則(乙19)によれば、本件受講契約の期間は1か月とされている。)。また、生徒側の都合により他の曜日、時間帯のクラスや他の地域の教室に移動することがあり、音楽教室側の事情により教師が交代することがある(乙19、20)ほか、そもそも3か月間のみのコースを用意する音楽教室もあるのであり(乙45)、生徒との間に原告らが主張するような特別の人的結合関係があるわけではない。
イ 多数の者に対するものであること
 原告らは事業として組織的、継続的に音楽教室のレッスンを行っており、累積的に多数の生徒にレッスンを施すことになるから、音楽教室事業者である原告らからみて生徒は「多数」の者である。
 この点、原告らは、音楽教室のおける演奏は毎回異なるから「累積に多数」とは評価できないと主張するが、実演としての演奏が全く同一でないとしても、被告管理楽曲を演奏していることには変わりがない。
ウ 名古屋高判平成16年3月4日判例時報1870号123頁(以下「社交ダンス教室事件控訴審判決」という。)は、同原審判決を引用し、「著作権の公衆に対する使用行為に当たるか否かは、著作物の種類・性質や利用態様を前提として、著作権者の権利を及ぼすことが社会通念上適切か否かという観点を勘案して判断するのが相当である」とした上で、「ダンス教室の人数及び本件各施設の規模という人的、物的条件が許容する限り、何らかの資格や関係を有しない顧客を受講者として迎え入れることができ、このような受講生に対する社交ダンス指導に不可欠な音楽著作物の再生は、組織的、継続的に行われるものなので、社会通念上、不特定かつ多数の者に対するもの、すなわち、公衆に対するものと評価するのが相当である。」と判示しているが、同判決に示された考え方を本件にあてはまると、原告らのサービスの提供を受ける生徒は不特定かつ多数の者であるということができる。
エ 以上のとおり、音楽教室における演奏については、音楽著作物の利用主体は原告らであり、原告らからみて、生徒は不特定かつ多数の者であるから、音楽教室における演奏は「公衆」に対するものに当たる。
(3)現行著作権法の立法過程について
ア 原告らは、本訴の当初の段階では、現行著作権法の立法過程において、学校教育のみならず社会教育における使用につき、「公でない使用」又は「収益を目的としない演奏」として取り扱うものとされ、原告らの経営する音楽教室事業における音楽教育は「社会教育」に該当するので、音楽教室における演奏についても演奏権が及ばないと整理されたと主張していた。
 しかし、原告らが依拠する昭和40年報告及び昭和41年答申においては、教室内における使用が公でない演奏に当たる旨の記載はされているものの、「公衆」という概念は用いられず、これらに基づき具体的な条文案が策定されることはなかった。
 その後、昭和41年試案においては、観衆又は聴衆が特定であっても相当程度に多数であれば、「公」の演奏等として著作権が及ぶこととし、昭和41年答申のなお書き(観衆又は聴衆が「不特定であっても少数の場合」には、公の演奏等に当たらないものとすべき場合があるという記載)を除外することによって、「不特定であっても少数の場合」につき、「公衆」の例外として取り扱うという考え方を採らないことを明らかにした。
 こうした議論を踏まえ、昭和43年法案においては、無形複製につき、現行著作権法2条5項に当たる「この法律にいう『公衆』には特定かつ多数の者を含むものとする。」との規定が設けられた上、現行著作権法22条に当たる規定が設けられた結果、特定かつ少数の者に対するものでない限り、公の演奏等に該当することとされ、学校その他の教育機関の教室内における演奏等については、現行著作権法38条(営利を目的としない上演等)に当たる規定によって権利制限される要件が定められることとされた。このことは、立法担当者等の記述した文献等(乙11〜15)からも明らかである。
 以上の立法経緯によれば、既に昭和41年試案の段階で昭和41年答申の考え方は変容してしまっているから、同答申の考え方が現行著作権法に承継されたということはあり得ない。
イ 昭和40年及び昭和41年当時において、「社会教育」という用語は教育委員会や公民館等が行う公共的な教育を指していたのであって、営利目的が明白な原告らの音楽教室事業が社会教育として認識されていた事実はない。
ウ 原告らは、答申説明書に、「オーケストラの練習のように、演奏者等のほかに、聴衆等のいない場合には、公の演奏等にあたらない」との記載があることをもって、原告らの音楽教室における演奏についても、聴衆がいないから「公衆」に対する演奏に当たらないと主張する。
 しかし、オーケストラの楽団員による練習のための演奏が公衆性を有しないのは、演奏の利用主体がオーケストラの運営者であり、当該運営者以外に演奏を聞く者がいないからである。これに対して、音楽教室における演奏は、利用主体である原告らが公衆である生徒に対してするものなので、オーケストラの事例とは異なる。
(4)以上のとおり、音楽教室における被告管理楽曲の演奏は、「公衆」に対するものに当たる。
〔原告らの主張〕
 以下のとおり、音楽教室における音楽著作物の利用主体は、教師及び生徒である原告らであり、音楽教室における演奏は、特定かつ少数の生徒に対するものであって、音楽教室における演奏は「公衆」に対するものに当たらない。
(1)音楽教室における音楽著作物の利用主体は教師及び生徒であること
 以下のとおり、音楽教室における演奏による音楽著作物の利用主体は、物理的に演奏行為を行っている教師及び生徒であって、音楽教室を経営する原告らではない。
ア 著作物の利用主体が誰であるかは、個々の事案における具体的な著作物の利用態様をみて個別具体的に判断されるべきものである。過去の裁判例の中には、著作物の利用主体を規範的に解釈したものがあるが、このような規範的解釈は、具体的な利用態様に照らして過度に擬制的な場合や、主体の不当な拡張となる場合は採用し得ない。
イ 著作物の利用主体を規範的に解釈した過去の裁判例には、(@)直接の行為者が誰であるかが自明でない場合に行為主体の解釈をしたもの(例えば、ロクラクU事件最高裁判決)、又は(A)直接の行為者とは別の背後にいる関与者を著作物の利用の主体と判断したもの(例えば、クラブキャッツアイ事件最高裁判決)がある。音楽教室における演奏については、直接的な行為者は自明であるから、上記(@)の類型には当たらない。
ウ 上記(A)の類型の裁判例のように、直接的な行為者とは別の関与者を侵害の主体と認める解釈は、実質的には間接侵害とみるべき場合であるから、直接的な行為者による直接侵害行為がある場合に限って認められるべきである。これは、民法上の使用者責任において被用者による不法行為の存在が前提となり、刑事事件の間接正犯の成立に直接の実行行為者による構成要件該当行為の存在が前提となっているのと同様の考え方である。
 本件のように、著作物の利用行為を行った直接の行為者が自明である場合において、直接利用行為を行っていない音楽教室事業者である原告らを行為の主体と評価するためには、@直接行為者の行為が演奏権の及ぶ行為であること(間接侵害についてのいわゆる従属説)、A直接行為者の演奏権が及ぶ行為への関与の程度が高く、それによって利益を得ているなど、上記の評価を正当化できる事情が必要である。
 クラブキャッツアイ事件最高裁判決も、「客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法22条参照)は明らかであり」と判示しており、直接的行為者である客の歌唱が「公衆に直接聞かせることを目的」とするものであると認定した後に、カラオケ店経営者が利用主体として責任を負うかどうかを判断しており、上記の従属説的な見解に立つものであると理解できる。
エ 上記@の要件に関し、問題とされるべき行為は、単なる演奏行為ではなく、「公衆に直接…聞かせることを目的として」演奏する行為である。音楽教室において演奏を聞く者は、特定かつ少数の者であり、その演奏は「聞かせる目的」を欠くので、音楽教室における教師や生徒の演奏は直接侵害を構成しない。
 次に、上記Aの要件に関し、音楽教室の生徒は、何らかの義務として演奏するものではなく、生徒自身の演奏技術の向上のために任意に演奏するものであり、また、教師は、音楽的、教育的見地からのその裁量に基づいて教授を行うのであって、個別のレッスンにおける教師の演奏について原告らが関与することはない。このため、教師及び生徒の演奏についての原告ら音楽教室事業者の関与の程度は低く、原告らを演奏主体と評価し得る事情は存在しない。
オ 被告は、管理・支配及び利益の帰属という2つの要素により行為主体性を判断すべきであると主張するが、管理・支配という要素は、直接的な行為者の行為が著作権法22条の演奏に該当する場合に、その責任を間接的な行為者に負わせることができるかを判断する際に考慮すべきであり、著作物の利用主体の認定にそのような考慮要素を持ち込むのは誤りである。
 仮に、被告が管理・支配及び利益の帰属の具体的な根拠として挙げる事情を踏まえても、以下のとおり、原告らには、音楽著作物の利用について管理・支配も利益の帰属も認められない。
(ア)音楽教室の教師は、法人である原告らとの間の雇用契約又は準委任契約に基づいて、生徒に対し演奏技術等を教授する義務を負うが、音楽的、教育的見地から裁量に基づき教授を行うものである。教師の演奏は、教授の一環として、模範を示すために行われ、生徒の演奏技術の理解度、習熟度、練習状況等を踏まえて、指導上の必要やその場の状況に応じて教師の判断により臨機応変に行われる。原告らは、教師がレッスンで演奏するかどうか、どのような演奏をどの程度するかについての管理はしていない。カリキュラムについても、そもそも原告らの中でカリキュラムを有する音楽教室事業者は少なく、カリキュラムを有する者においても、教師が演奏するかどうか、演奏するとしてどのように行うかの管理はしておらず、演奏を行うことを義務付けるものでもない。
 このように、個別のレッスンにおける教師の演奏について原告らが関与することはない。
 これに対し、被告は、原告ヤマハが教師に対して指導書を交付していることや研修を実施していることなどを指摘して、教師の演奏に原告ヤマハの管理・支配が及ぶと主張するが、研修、指導書の交付などは、教師の資質、能力等の維持、向上のために行っているものであり、個別のレッスンにおける演奏を行うか否か、具体的にどのような演奏をどの程度行うかについて義務付けるようなものではないから、同原告の管理・支配があるということはできない。
(イ)音楽教室における生徒の演奏に関し、課題曲については、生徒の演奏技術の習得、上達のために、生徒のレベルに合った、上達するために適切なものという観点から教師がその選曲を行うとしても、あくまで生徒本人が楽譜を読んで課題曲を奏でることを要する。生徒は、何らかの義務として演奏するものではなく、自身の演奏技術の向上のために任意かつ主体的に演奏するのであり、原告らが教室や設備を用意し、教師が指導を行うとしても、生徒の演奏が、何らの強制によらず、主体的に行われることに変わりはない。
 また、レッスンにおいて最も重要な楽器は、大型のピアノ、エレクトーン等を除き、生徒が購入等して用意し、楽譜も生徒自身が購入することからすると、生徒の演奏について、原告ら音楽教室事業者を演奏主体と評価することが正当化できるほどに強い管理・支配はないというべきである。
(ウ)原告ら音楽教室事業者は生徒からレッスン料の支払を受けるが、これは生徒が教師から演奏技術等の教授を受けることの対価であって、教師の演奏や他の生徒の演奏を聞くことの対価ではないから、原告らは、教師や生徒に演奏させることによって直接的に営業上の利益を得ているものではない。
 また、教師による演奏は、数小節ごとなど細切れのもので、本来の楽曲としての価値を楽しめるようなものではなく、生徒の演奏についても未熟な演奏技術による練習としての演奏であり、本来の楽曲としての価値を楽しめるものではないから、教師の演奏や生徒の演奏が原告ら音楽教室事業者の営業上の利益を増大させているという事情もない。
(エ)したがって、原告らには、音楽著作物の利用について「管理・支配」も「利益の帰属」もない。
カ 音楽教室においては、CD等の録音物の再生演奏が行われる場合もあるが、この再生演奏は、教師による演奏技術の教授の一環として、教師自らの演奏の代りに補助的に行われるものであり、教師自ら演奏を行う場合と同様に、生徒の演奏技術の理解度、習熟度、練習状況等を踏まえて、その場の状況に応じて教師の判断により臨機応変に行われる。また、その演奏は、楽曲の一部のみの再生又は適宜テンポ等を変えての再生であって、機械的で同質な再生ではなく、個性のあるものであることから、再生演奏の主体は教師である。
(2)利用主体である教師及び生徒からみて、演奏を聞く生徒が「公衆」に当たらないこと
ア 演奏行為の主体と公衆の人的結合関係の有無の基準時特定かつ少数の者に対する著作物の利用は「公衆」に対する利用ではないところ、「公衆」に該当するかどうかは、音楽教育を遂行する教師と生徒との人的結合関係の強弱、内容及び著作物の種類、性質や利用態様等を考慮し、社会通念に従って個別具体的に判断されるべきである。
 音楽教室においては、単に原告ら事業者と契約関係にあるのみで特定の教師や生徒の演奏を聞くこととなるのではなく、教師が生徒を担任することにより初めてその演奏を聞くこととなるので、原告らが生徒と本件受講契約を締結し、受講を開始して以降の個人的な結合関係の有無が問題となる。
 このため、音楽著作物の利用行為が公衆に対するものであるかどうかは、具体的な利用行為である個々の演奏行為の時点を基準として判断されるべきである。その際、事前の結合関係がある場合にはそれが考慮されるものの、その後に人的関係が形成され、それが継続することが予定されている場合には、事後的な関係が考慮されることは当然である。
イ 特定の者に対するものであること
 音楽教室では、生徒が受講するコースが決まると、グループレッスンであれ個人レッスンであれ、以後は、特定の教師の下で継続的にレッスンを受けることになる。
 例えば、ヤマハ音楽教室等では、@生徒が受講するコースが決まると、以後は特定の教師のもとで、固定された曜日・時間に会場でレッスンを受けることとなり、A生徒の都合によってレッスンを休んだ場合は、補講や他クラスへの振替えを原則しておらず、B学齢に応じた進級制度を設け、C本件受講契約は自動更新されるなど、固定された教師が、個々の生徒に合わせたレッスンを継続的に行うことにより、生徒との間で相互に信頼関係が築かれ、個人的な結合関係が醸成される(甲18)。
 また、著作物の利用態様についても、毎回のレッスンにおける教師及び生徒の演奏は、ほとんどが楽曲の一部の小節のみであり、一曲通して演奏されるのは最初と全フレーズの練習が終わった後のみであって、その演奏の内容は、同じ楽曲であっても、個々の生徒の技量、進捗度、理解度等に合わせて生徒ごとに異なり、同じ生徒であっても毎回異なるなど、極めて個性的である。
 さらに、音楽教室において、担任教師とそのクラスに属する特定の生徒のほかはレッスンが行われる教室内への入室を許されないため、生徒や教師の演奏を聞くのは、生徒の演奏については同じクラスの他の生徒、教師の演奏及び録音物の再生についてはそのクラスの生徒に限られる。
 こうした実態は、他の原告(原告河合につき甲19、乙21、原告島村につき甲20、原告山野につき甲21)についても同様である。
 このように、音楽教室における教師又は生徒の演奏は、特定の教師と特定の生徒との間で構築された密接な人的結合関係に基づいてなされるものなので、特定の者に対する演奏であるということができる。
ウ 少数の者に対するものであること
 「多数」の者に対する演奏であるかについては、音楽教室における演奏は、すべて個性のある演奏であり、レッスンでの演奏を聞く者は現にそのレッスンの行われている教室内にいる者のみであり、その他の者が聞くことは想定されないから、教室にいる者の人数で決せられるべきである。
 原告らの音楽教室では、レッスン時に教室に入室を許されるのは当該クラスに属する生徒と担任の教師のみであるところ、個人レッスンでは、生徒は1名であり、また、グループレッスンでも通常3名ないし5名程度、最大でも10名程度であるから、いずれにせよ教室で演奏を聞く者は少数である。
 被告は、累積的にみて多数の生徒に対する演奏であると主張するが、音楽教室のレッスンにおいて行われる生徒及び教師の演奏は、レッスンごとに毎回異なる個性的なものであって、原告ら音楽教室事業者によるレッスンが組織的、継続的に行われたとしても、同じ演奏が組織的、継続的に行われるものではないから、累積的に「多数」の者に対する演奏と評価することはできない。
エ 被告は、社交ダンス教室事件控訴審判決に言及するが、同判決は、特定性の要件については、事前に受講料に相当するチケットを購入し、営業時間中は予約さえ取れればいつでもレッスンを受けることができることも根拠としているのであって、この点において音楽教室とは前提となる事実関係が異なる。また、多数性の要件についても、ダンス教室における演奏は、再生装置による録音物の機械的な再生演奏であることから、「累積的に多数」に対する演奏と観念し得るという趣旨にすぎず、この点においても音楽教室における演奏とは異なる。
オ 以上のとおり、音楽教室における演奏の直接行為者である生徒及び教師からみて、演奏を聞く生徒は、特定かつ少数の者であり、「公衆」に対する演奏ということはできない。
(3)仮に原告ら音楽教室事業者が利用主体に当たるとしても、生徒は「公衆」に当たらないこと
 仮に音楽教室事業者が利用主体であるとみても、原告ら音楽教室事業者は生徒との間で音楽や楽器の演奏技術を教授する継続的な契約を締結し、生徒は、定期的に教室に通って(あるいは自宅に訪問を受けて)レッスンを受講、継続し、幼児や学齢期の生徒をはじめとして、10年以上などの長期にわたって契約関係が続いていくものなので、原告ら音楽教室事業者と生徒の間には強い人的結合関係が生じるのであり、原告らからみても、生徒は「特定」の者であると認められる。
 また、上記(2)ウと同様の理由から、音楽教室における演奏が「多数」の者に対する演奏ということもできない。
 以上のとおり、原告ら音楽教室事業者が利用主体に当たるとしても、音楽教室における演奏は、「公衆」に対する演奏ではない。
(4)現行著作権法の立法過程について
ア 音楽の演奏のような無形複製につき、昭和40年報告及び昭和41年答申においては、学校の教室内における利用は「公でない使用」に、学芸会等における利用は「収益を目的としない使用」として自由使用ができるものと整理されている。
 その後、昭和41年試案により、多数であれば特定の関係があっても「公衆」とされ、不特定であれば少数であっても「公衆」とされた点で、「公」の概念が変更されたことは被告の主張するとおりである。
 しかし、学校等の授業であっても、教室にいる生徒数が1名ないし10名程度であれば「公衆」に該当しないので、この点については、学校の教室であろうと民間の音楽教室であろうと変わりがなく、学校その他の教育機関の教室内における演奏等について、営利を目的としない上演等に関する規定により権利を制限するとの整理がされたわけではない。
 つまり、現行著作権法の立法過程においては、学校等の教室の授業における演奏は、同法22条の「公衆に直接聞かせることを目的」としない演奏又は教室の授業が多数に対する場合であっても同法38条1項の営利を目的としない演奏として権利が及ばないとされ、この整理は、昭和45年の著作権法案にも引き継がれた(甲14、15)。
 また、原告らは、必ずしも、音楽教室におけるレッスンが著作権法22条の立法過程における「社会教育」に該当するから直ちに音楽著作物を自由に利用できると主張するものではないが、社会教育法2条は、「社会教育」を「学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動」と定義しているところ、現在の我が国において音楽教育を組織的に行う機関は市井の音楽教室を除いてほかにはなく、原告らの音楽教室は社会教育そのものである。昭和40年報告は、社会教育のための利用についても、教育機関における利用と同様に取り扱うべきと明示しているが、原告らの音楽教室は、昭和45年の著作権法の立法当時から既に社会教育として認識されていたものである。
イ 現行著作権法の制定過程において、オーケストラの練習のように、演奏者等のほかに聴衆等のいない場合には「公衆」が存在しないため、公の演奏に当たらないと解されていた(乙8)。音楽教室における教師と生徒も、各自が楽器を手にして演奏する演奏者であり、レッスンの場に演奏者以外の聴衆はいない(甲6、13)。音楽教室においては、常に教師及び生徒の全員が演奏するわけではないが、自ら演奏せず教師や他の生徒の演奏、録音物の再生を聞いている生徒も、自らの演奏の待機をしているにすぎず、単なる聴衆になるわけではない。このように、音楽教室における演奏がされるレッスンの場には公衆が存在しないから、オーケストラの練習の場合と同様に「公衆」に対する演奏に当たらない。
 また、楽団が公演のための準備として行う毎回の練習での演奏と同様に、音楽教室におけるレッスンは、教師や生徒が発表会等において他人に聞かせる準備として行うものなので、毎回のレッスンでの演奏について著作物利用料は発生しない。
(5)したがって、音楽教室における被告管理楽曲の演奏は、「公衆」に対するものに当たらない。
3 争点3(音楽教室における演奏が「聞かせることを目的」とするものであるか)について
〔被告の主張〕
(1)著作権法22条における「聞かせることを目的として」の要件は、単純に演奏を聞かせる(知覚させる)目的意思があれば足り、演奏の態様や巧拙によって演奏権が及ぶ対象行為を限定するものではない。
 利用主体である原告らが、音楽教室における教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生を公衆である生徒に聞かせる目的意思を有していることは、原告らが音楽教室を設営し、生徒を募集し、教師が演奏して生徒に聞かせ、生徒に課題曲の演奏をさせたり聞かせたりして、営利事業としてレッスンを行っているという外形的事実に明確に表れている。
 また、原告ヤマハは、音楽教室のパンフレット等において、「幼児期には徹底的に「きく」力を鍛える」(乙23)、「講師の生演奏を聴いたりすることによってお子さまの情緒を育みます」(乙3の1)、「この時期に本物の音楽に触れることで豊かな感性が育まれ、聴く力や、積極的に表現する力の素地を身につけることができます」(乙24)、「仲間と音楽をともに演奏することで…グループならではの音楽の楽しみ方がひろがります。」(乙27)などと謳い、原告河合も、そのパンフレット等に、「心に響く生の音を繰り返し聴くことで、聴く力が豊かに育ち、表現する力も育まれます。」(乙3の2)などと記載している。
 このように、国内最大手の音楽教室である原告ヤマハ及び原告河合は、「聞く」という行為が大切であることを強調した上で、レッスンにおいて質の高い音楽に触れることにより、豊かな感性や表現力が育まれ、子供たちが成長し、成人も音楽を楽しむことができると謳っているのであり、他の音楽教室事業者についても同様であると考えられることに照らしても、原告らに演奏を聞かせる目的意思があることは明らかであり、このことは録音物の演奏についても同様である。
(2)原告らは、「聞かせることを目的」として演奏するとは、聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏や、音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏をいうと主張する。
 この点に関する原告らの主張は本訴を通じて変遷しており、「聞き手に官能的な感動を与えること」と「音楽の著作物としての価値を享受させること」が同義とは考えられないが、いずれも、演奏者の主観的な意図に踏み込んで判断しなければ演奏権侵害の有無の判断ができないこととなり、著作権法22条の文言にない制限を理由もなく付加するものであるので、文理解釈の観点からも採用の余地はない。
 そのほか、原告らは、上記の目的について、「本来の演奏」、「聞き手が聞きたいと思うような演奏」、「表現としての演奏」、「一定の完成度のある演奏」など様々な表現をするが、このような演奏態様や巧拙は「聞かせることを目的」とするか否かとは無関係であり、かつ、法律の適用によってその内容を確定できるものではない。
 また、仮に、原告らの主張によるとしても、上記(1)のパンフレット等の記載によれば、原告らの音楽教室事業における教師や生徒の演奏は、聞き手である生徒に「官能的な感動を与えることを目的」としているということができる。
(3)原告らは、音楽教室のレッスンで行われる演奏は、教師や生徒にとって本質的に公開を望まない性質のものであり、「聞かせることを目的」としていないと主張するが、生徒が相手に聞かれたくないと思うとは限らず(証人E4頁)、そのように一概に決めつけることはできない。また、原告らの同主張は、音楽教室事業者である原告らではなく教師及び生徒が利用主体であることを前提とする主張であり、これを前提とできないことは前記のとおりである。
(4)原告らは、生徒は、自分自身や他の生徒に聞かせるために演奏しているものではなく、教師に演奏を確認、指導してもらうために演奏するのであって、表現として演奏するものではないから、「聞かせることを目的」とするものではないと主張する。
 しかし、生徒の演奏技術の向上という観点からして最も重要な聞き手は演奏している生徒本人であり、ともにレッスンを受けている他の生徒である。演奏する生徒が自分の演奏をしっかり聞かなければ、教師の演奏と自分の演奏との違いや、以前の自分の演奏との違いを感得することができず、演奏技術の上達に困難を来すことは明らかであり(乙57の58頁以下、乙67の196頁、証人E15頁、証人G12頁)、この点、東京高判平成11年7月13日判決・判例時報1696号137頁(以下「カラオケボックスビッグエコー事件控訴審判決」という。)も「顧客が…歌唱を行ってこれを聴くこと」と判示し、歌唱をする顧客が当該歌唱を聴く立場にある旨の説示をしている。
(5)原告らは、著作権法30条の4が「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」と規定していることも根拠とするが、そもそも、権利制限規定の文言から支分権発生の構成要件を解釈することは構造的に誤ったものである。また、立法担当者の解説(乙44)では、漫画の作画技術を身に付けさせることを目的として、民間のカルチャーセンター教室で購入した漫画を手本として受講者が模写する行為につき、その主たる目的が作画技術を身に付ける点にあるとしても、一般的に同時に「享受」の目的もあると認められる旨指摘されており、仮に主たる目的が享受以外にあったとしても、同時に享受の目的もあることが否定されるものではない。
 「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」(「公に」)という要件は、著作権法22条の2(上映権)、23条2項(伝達権)、24条(口述権)、25条(展示権)において共通の要件とされている。一つの法律における共通の要件は同一の概念として理解されるのが本来であるが、例えば、24条の適用の対象となる講演や英会話の録音テープの再生が「官能的な感動を与える目的」で行われるとは考え難いので、この観点からも原告らの主張は採用し得ない。
(6)したがって、音楽教室における教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生は「聞かせることを目的」とするものということができる。
〔原告らの主張〕
(1)著作権法22条が「聞かせることを目的」との要件を設けた趣旨は、著作物の公正利用の観点から、多様な演奏のうち、演奏権の対象となる範疇を設けたことにある。この目的要件を、単に演奏による音波が物理的に届くようにすることなどと形式的に解するときは、あえて目的要件を設けて公正利用との調整を図ろうとした著作権法の趣旨を没却することとなるから、実質的に解釈すべきである。
 「聞かせることを目的」との目的要件を実質的に解釈すると、「聞かせることを目的」とした演奏とは、聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏、すなわち音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏と解される。「聞かせる目的」は、主観的要件であり、演奏者の内心の状態であるが、その内心の状態が外形的に現れたと考えられる外形的な演奏の態様からも判断される。
 演奏者に主観的に聞かせる目的がない演奏及び外形的にみて演奏者が著作物の価値を享受させる目的での演奏でないもの、すなわち聞き手に聞かせたいと思う演奏(換言すれば「演奏者の本来の演奏」あるいは「表現としての演奏」)でないものについては、「聞かせる目的」はないと判断される。
 聞かせる演奏の典型例はコンサートやライブであり、カラオケ演奏、BGMも「聞かせることを目的」とする演奏に該当する。
(2)これに対し、音楽教室で行われる教師の演奏は、生徒が自分で演奏できるようにするための教育の場であるレッスンにおいて、生徒に理解しやすいように課題や手本を示すための演奏であって、コンサートなどで聴衆を前にして、自分の持てる演奏技術を駆使して聴衆を感動させるために表現として演奏するものとは異なる。
 教師は、生徒にわかりやすいように、わざと大げさに弾いたり、生徒に悪い手本を見せたり、数小節のみを部分的に演奏するほか、音を声に出したり説明しながら演奏することもあるが、このような教える目的又は練習させる目的の演奏は、楽曲の特徴を理解させたり、正しい演奏として模倣させるためのものであり、当該教師の本来の演奏(教師がその曲をこのようなものであると聴衆に伝えたいと考えている演奏)とは異なる態様のものなので、音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏には当たらない。
 被告は、原告らのパンフレット等を根拠に、音楽教室における演奏が幼児の情緒を育むことなどを目的としていると主張するが、かかる演奏はリズム感やメロディーによる情動を体得させ、演技技術の習得が容易になるように脳を発育させることが目的であり、結果的に子供が感動することがあったとしても、感動させること自体を目的とする演奏ではない。
(3)音楽教室で行われる生徒の演奏は、演奏技術の習得や上達のための過程である練習における未完成の拙い演奏であり、その演奏技術は未熟であり、一曲を通すとしても、たどたどしく、拙い、不完全な演奏であって、「表現」という以前のものである。一般に、演奏技術の未熟な者は、練習しているところを不特定の他人に見られたり聞かれたくないと思うものなので、練習としての演奏は本質的に公開を望まない性質のものである。
 そして、その演奏態様も教師の演奏をまねるものや、数小節の短いフレーズの繰り返しがほとんどであり、教師の手指の動かし方を手本として目で学ぶことになるが、演奏の途中で教師により演奏を止められたりすることもある。
 一般に、表現のための演奏や人に聞かせるための演奏であれば、特定の一部分を繰り返し弾くようなことはないのであり、レッスンでこのような演奏をするのは、楽譜を見て音で再現し、さらには表現としての演奏をするために必要な技術を習得するための練習としての演奏であるからである。このような態様の演奏は、音楽の著作物としての価値を享受させるための演奏ではない。
(4)生徒は、教師に対して演奏するのであり、その生徒自身に対して演奏するのではなく、他の生徒に対して演奏するのでもない。特に、個人レッスンの場合には、生徒の演奏は、公衆としての聞き手は存在しないので、「公衆」に対する演奏とはなり得ない。
 この点については、被告は、カラオケボックスビッグエコー事件控訴審判決などに言及しつつ、生徒は自ら聞く立場にあると主張するが、カラオケボックスにおいて客は表現として歌唱するので、歌唱している客自身が歌唱を聞く立場にあるということは首肯できるが、音楽教室のレッスンにおいては、生徒は教師に対して演奏するのであり、生徒自身に対する演奏をしているわけではなく、表現として演奏するものでもないから、生徒自身が聞く立場にあるということはできない。
(5)音楽教室で行われる録音物の再生は、生徒に録音物の再生に合わせて演奏させるために行われ、教師自らが行う伴奏に代えて用いられる。教師は、録音物の再生中も、録音物を用いないレッスンのときと同様に、終始、音やリズムをガイドしながら再生している。録音物を音楽として鑑賞させるために再生するのであれば、このように音やリズムをガイドすることや、生徒に録音物の再生に合わせて演奏させることはしないので、教師が生徒に当該音楽著作物の価値を享受させるために再生しているということはできない。
(6)著作権法は、形式的にみれば支分権に該当し得る著作物の利用行為であっても、実質的にみれば著作権を及ぼすべきでない行為として、複数の権利制限規定(著作権法30条〜49条)を設けており、その中には、形式的には支分権に該当する著作物の利用行為であっても、著作権が及ばない行為態様を規定しているものがある。
 例えば、平成30年の著作権法改正(平成30年法律第39号)により新たな権利制限規定として設けられた同法30条の4第1号(技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用)は、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に権利制限を認める規定であるが、このような規定が設けられたことに照らしても、「聞かせることを目的」とする著作権法22条の解釈に当たっては、実質的に権利を及ぼすべき利用であるか否かを判断するために、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とする利用態様であるかどうかを考慮するべきである。
 なお、被告は、「公に」との要件を有する他の条項との整合性を問題にするが、同一の法における同じ文言であっても、利用行為が異なる場合には相対的に解釈せざるを得ないのであり、他の条項における「公に」との文言の解釈は著作権法22条の解釈に影響しない。(7)以上によれば、音楽教室における教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生が「聞かせることを目的」とするものであるということはできない。
4 争点4(音楽教室における2小節以内の演奏について演奏権が及ぶか)について
〔被告の主張〕
 原告らは、別紙請求目録記載の請求の一部請求である別紙予備的請求目録記載の予備的請求のうち、請求の趣旨第5項及び第8項における2小節以内の演奏につき、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求めている。
 しかし、そもそも音楽教室のレッスンにおける2小節以内の演奏と3小節以上の演奏を区分することに合理性はなく、一部請求を特定する指標として機能しない。原告らは、2小節を独立した個別の演奏行為と評価すべきであると主張するが、1回のレッスンにおける演奏や再生演奏は、常に不可分一体のものとしてレッスン単位で捉えるべきものであり、演奏者や客体(2小節以内の演奏かどうか等)による細分化が不可能であることは、原告ら自身が第6準備書面8頁で主張するとおりである。
 また、原告らの手足又は原告ら自身である教師が課題曲の2小節以内の演奏を行う場合、当該2小節はあくまでも課題曲を構成する一部分であり、教師は、当該2小節が一曲の中で担っている役割を説明して生徒に理解させ、どのように演奏すると当該課題曲の特性を的確に表現することができるのかという問題意識の下に指導し、生徒は教師のそのような指導を前提として当該2小節を練習するのである。しかも、レッスンの間、当該2小節のみを繰り返すわけではなく、課題曲が一曲通して演奏され又はまとまったフレーズが演奏されるのが音楽教室の実態であり、当該2小節の前後の小節も演奏されるのが通常である。
 さらに、2小節以内の演奏であるからといって、当該音楽著作物が演奏されていることに違いはなく、2小節以下の演奏でもほとんどの場合には演奏されている楽曲を特定できるので、その著作物性は認められる。
 したがって、音楽教室における2小節以内の演奏であっても演奏権は及ぶので、上記各予備的請求は失当である。
〔原告らの主張〕
 原告らの音楽教室におけるレッスンにおいては、教師が生徒に手本を示すために課題曲の一部を演奏し、あるいは生徒が教師の指導に従って課題曲の一部を演奏する際に、2小節以内の演奏がよく行われる(甲27)。
 音楽著作物の2小節以内のフレーズでは、あまりにも短く、それだけではどの楽曲を使用しているのかを特定できない場合も多い上、そのような短い音階からは創作的表現を感得することはできないので、楽曲の2小節以内の部分は、演奏権の対象となる著作物に当たらない。被告は、2小節が課題曲の一部であることを認識して演奏する以上、2小節だけの演奏であっても、この部分を課題曲から切り離すことはできないと主張するが、演奏権による保護の対象となる著作物かどうかを判断する対象は、楽曲の全部ではなく、あくまで実際に演奏された部分である。
 また、このような2小節以内の演奏については、著作物としての価値を享受する態様の演奏ということはできないので、「聞かせることを目的」とするものということはできない。
 したがって、被告は、別紙予備的請求目録記載の請求の趣旨第5項及び第8項のうち、2小節以内の演奏について、被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しない。
5 争点5(演奏権の消尽の成否)について
〔原告らの主張〕
(1)本件使用態様1〜4のとおり、原告らの音楽教室において、生徒は、レッスンで演奏する曲の楽譜や教則本を購入しており、教師もレッスンで演奏する曲の楽譜を保有している。楽譜及び教則本は、これを用いて演奏することが当然に想定されているものであり、被告は、楽譜の譲渡の際に当該楽譜を用いての演奏に対する対価を含めた金額を徴収することが可能であったことに照らすと、楽譜についての譲渡権(著作権法26条の2第2項)のみならず、演奏権についても消尽していると評価することができる。
(2)本件使用態様3のとおり、原告ら(別紙B)の音楽教室において、マイナスワン音源の再生が行われる。マイナスワン音源は、演奏が除かれている特定の楽器のレッスンの際に、教師の伴奏に代わり、生徒の演奏の合奏の相手とするための補助手段(教材)として再生されることが当然に想定されるものであり、被告は、マイナスワン音源のCD等の譲渡の際に、当該CD等の再生に対する対価を含めた金額を徴収することが可能であったので、演奏権についても消尽していると評価することができる。
(3)譲渡権の消尽に係る著作権法26条の2第2項の規定は、確認的な規定にすぎず、最高裁平成13年(受)第952号同14年4月25日第一小法廷判決・民集56巻4号808頁(以下「中古ゲームソフト事件最高裁判決」という。)は、権利消尽の規定の存在しない頒布権(著作権法26条)についても消尽を認めているから、演奏権の消尽について明文の規定がないことは、上記のような解釈をする妨げとはならない。
(4)被告は楽譜等の譲渡の段階で演奏に係る対価を上乗せすることは困難であると主張するが、ここでは対価取得の機会の保障があったか否かが問題であり、実際にそのような機会を利用して対価を取得したか否かを考慮するものではない。使用料の算定が困難であるかどうかどうかと、対価の取得の機会があるかどうかは別の問題であるし、特に、教則本及びマイナスワン音源については、音楽教室における教師又は生徒の演奏以外の態様の演奏に用いられることの方が例外的であるから、使用料の算定が困難であるとの被告の主張は疑わしいというべきである。
(5)したがって、原告らの音楽教室における演奏のうち、当該楽譜を用いてされる教師及び生徒の演奏並びに録音物のうちマイナスワン音源の再生に対して被告が著作権を行使することは許されない。
〔被告の主張〕
(1)原告らは、音楽教室において、教師及び生徒はレッスンで演奏する曲の楽譜を購入、保有していること、マイナスワン音源は楽器のレッスンの際に補助的な手段として再生されることが当然に想定されるものであることなどを理由に、当該楽譜を用いた演奏及びマイナスワン音源の再生についての演奏権は消尽すると主張するが、著作権法上、消尽の対象になっているのは譲渡権のみであり(著作権法26条の2第2項)、演奏権が消尽するとの明文の規定はない。
(2)原告らが引用する中古ゲームソフト事件最高裁判決の判決要旨は、「家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は、いったん適法に譲渡された複製物について消尽し、その効力は、当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。」というものであって、本件にその射程は及ばない。
(3)クラブキャッツアイ事件最高裁判決は、カラオケテープの製作に当たり、著作権者に対して使用料が支払われているとしても、それは音楽著作物の複製のための使用料であるから、カラオケテープの再生とは別の利用形態である客等の歌唱についてまで、カラオケ伴奏とともにするという理由のみによって著作権者の許諾なく自由にできるものではない旨判示し、複製権と演奏権とは別個独立に権利処理がなされるべきであると判断している。
 本件においても、音楽著作物の教則本又は楽譜への登載及び著作物のCD等への録音(いずれも複製権)と、音楽教室のレッスンにおける演奏(演奏権)とは、別個の支分権に係る別個の行為であるから、行為ごとに権利処理されなければならない。
(4)被告は文化庁長官に届け出た使用料規程により利用態様に応じて区分された使用料を徴収しており、使用料規程は、楽譜の複製、音楽教室における演奏、コンサート等の演奏会等の各利用態様に応じて区別し、管理楽曲の利用により得られる経済的な価値等に応じて算出した著作物使用料を定めているが、複製物のその後の利用態様による区分を設けていない。
 楽譜の複製権に係る使用料を算定する時点で、当該楽譜の購入者が楽譜を用いて演奏権の及ぶ態様で演奏するかどうかを確認することはできないので、演奏権に係る使用料は算定不能であり、徴収することはできない。このため、楽譜等について被告に事前に演奏権に係る対価取得の機会が保障されているということはできない。
 また、楽譜の複製権の処理に際し、演奏に係る使用料を何らかの方法で算出して上乗せすると、楽譜の購入者は、楽譜を用いて演奏権が及ばない態様で演奏する場合においても、その分の使用料を負担せざるを得なくなり、本来負担する必要のない支払を余儀なくされることになってしまう。
(5)したがって、原告らの音楽教室における楽譜等を用いた演奏及びマイナスワン音源の再生に及ぶ演奏権は、消尽しない。
6 争点6(録音物の再生に係る実質的違法性阻却事由の有無)について
〔原告らの主張〕
 音楽教室のレッスンでは、生徒全員が、レッスンで使用する楽曲の音源を事前に購入している(原告ヤマハにつき甲37、乙54の16頁、証人D9頁、証人E1頁、原告河合につき甲19)。レッスンの場にいる全員が、レッスンで使用する楽曲の音源を再生して自らが聞くことについての権利を有しているので、それを全員がいる場で再生しても、著作権者の利益を損なうおそれはなく、著作権侵害としての実質的違法性を欠く。
〔被告の主張〕
 音楽著作物のCD等への録音(複製権)と音楽教室のレッスンにおける著作物の演奏(演奏権)とは、別個の行為であり、別個の支分権に係る行為であるから、当該行為ごとに権利処理が行われなければならず、前者の行為について使用料を支払っていることから、後者についての実質的違法性が阻却されるものではない。
 また、原告らが経営する音楽教室において、レッスンの場にいる全員が事前に音源を購入していることを示す証拠はないから、原告らの主張は前提を欠いている。
7 争点7(権利濫用の成否)について
〔原告らの主張〕
(1)原告らは、レッスンにおいて教師及び生徒が演奏する楽曲については、教材の教則本又は楽譜登載曲を使用し、その楽譜に基づいて演奏を行っているところ、楽譜を記載した教則本やレッスンで使用するCD等の録音物を制作する際や、生徒による発表会など著作権が及ぶ使用については、被告に申請をし、楽譜出版複製権及び演奏権についての著作物使用料を支払っている。
 これらの教材は、音楽教室におけるレッスンにおいて教師や生徒が教授や練習のために演奏することを前提にし、生徒による発表会も、レッスンにおける教師による教授及び生徒の練習の成果の発表の場であり、音楽教室において教師や生徒が教授や練習のために演奏することを前提にしている。それにもかかわらず、被告が、そのようなレッスンにおいて教師や生徒により教授や練習のために行われる演奏であって、人的結合関係のある教師と少人数の生徒しか耳にすることのない演奏について演奏権が及ぶと主張して、著作物使用料を徴収することは、過度の負担を強いるものであり、合理性を欠く。
(2)音楽教室のレッスンにおける演奏に対して著作物使用料が発生することになれば、その萎縮効果として、被告管理楽曲を使用せずに、あるいは使用する楽曲数を減らしてレッスンを行う音楽教室事業者が現れることが予想され、これまで著作権者に還元されていた上記の楽譜等の複製や発表会における演奏に係る著作物使用料も発生しなくなるばかりか、楽曲が世に広まる機会が失われることとなり、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与するという著作権法1条の目的に反することとなる。
 したがって、被告が音楽教室における被告管理楽曲の演奏について演奏権が及ぶと主張することは、権利の濫用として許されない。
(3)被告は、音楽教室における演奏に演奏権が及ばないと理解していたからこそ、現行著作権法が施行された昭和46年から、平成15年に原告ヤマハに協議を申し入れるまで、約32年もの間、音楽教室における演奏について権利を行使しなかったのであり、現在に至って権利行使を主張することは社会的相当性を欠き、権利の濫用又は権利失効として許されない。
〔被告の主張〕
(1)音楽著作物の教則本又は楽譜への登載及び著作物のCD等への録音(いずれも複製権)並びに音楽教室事業者が主宰する発表会における著作物の演奏及び音楽教室のレッスンにおける演奏(いずれも演奏権)は、別個の支分権に係る別個の行為であるから、行為ごとに支分権が及ぶのは当然であり、被告の権利主張は権利濫用に当たらない。
 また、音楽教室の生徒が音楽教室事業者主催の発表会に参加するかどうかは任意である。音楽教室におけるレッスンは、発表会での演奏の準備ではなく、情操教育やレッスン自体を楽しむために行われるものである。
(2)原告らは、音楽教室のレッスンにおける演奏に対して著作物使用料が発生することになれば、被告管理楽曲を使用しなくなり、音楽文化の発展を妨げることとなると主張するが、例えば、受講料収入が年額300万円、被告管理楽曲を使用するレッスンが10パーセントの音楽教室に関し、音楽教室事業者が被告と年間包括利用許諾契約を締結した場合、その使用料は年額7500円(月額625円)となるのであり、その使用料の負担は音楽教室事業を圧迫するようなものではない。
(3)現行著作権法が施行された昭和45年1月1日当時、音楽教室のレッスンにおいて、教師及び生徒による演奏に加え、録音物の再生演奏が行われていたのであるが、その当時、録音物の再生演奏につき、著作権法附則14条により著作権者の権利が制限されていたことを考慮して、被告は、音楽教室のレッスンにおける演奏権の管理を控えることとしていた。しかし、平成12年1月1日の同附則の廃止を受けて、被告は、音楽教室における著作権管理を開始することとし、平成15年11月13日及び平成16年2月18日、音楽教室業界の中心的な存在であった原告ヤマハに対し、協議開始の申入れを行う書簡を発出したが(乙1の1・2)、原告ヤマハは協議に応じようとしなかった。
 このように、被告は、限られた人的物的資源を用いて著作権管理業務を遂行しつつ、著作権法附則14条が廃止された後、合理的期間内に音楽教室事業に係る演奏権使用料の徴収について原告ヤマハに協議の申入れを行っているのであり、音楽教室事業に係る著作権管理が円滑に進まなかったのは原告ヤマハの協議拒否の姿勢によることが大きい。協議に入ることすら拒否してきた原告ヤマハが被告に対して著作物使用料の徴収を長年にわたって放置してきたと主張するのは筋違いである。
 したがって、被告の本件における権利主張は権利濫用又は権利失効に当たらない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告ら(別紙C)についての確認の利益の有無)について被告は、楽器メーカー等が運営する音楽教室の管理水準が一定のレベルに達するまでの間、個人教室は著作権管理の対象としないこととし、将来的に著作権管理の対象とする個人教室についても、インターネット上のホームページ等を利用して不特定の生徒を常時募集する形態で運営されているものとする旨の方針を機関決定して公表しているので、これに該当しない原告ら(別紙C)については、即時確定の現実的必要がなく、確認の利益が認められないと主張する。
 しかし、被告の上記方針は現時点のものであって法的拘束力はなく、被告は、いずれは個人教室を著作権管理の対象とする意思があることを表明し、本訴においても、原告ら(別紙C)による本件使用態様1及び4の態様の被告管理楽曲の演奏について、使用料請求権を有する旨の主張をしているので、原告ら(別紙C)の法律上の地位に危険又は不安が現存しているということができる。
 したがって、原告ら(別紙C)について確認の利益がないことを理由に訴えの却下を求める被告の主張には理由がない。
2 争点2(音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるか)について
(1)著作権法22条の立法経緯等
 著作権法22条は、「著作権者は、その著作物を、公衆に直接…聞かせることを目的として(以下「公に」という。)…演奏する権利を専有する。」と規定しているところ、「公衆」の意義について、同法2条5項は「特定かつ多数の者を含む」と定めているので、同法22条に基づき演奏権について著作権者の権利が及ばないのは、演奏の対象が「特定かつ少数の者」の場合ということになる。
 著作権法22条の「公衆」の上記意義については当事者間に争いがないが、本訴の少なくとも当初の段階においては、同条の立法経緯に関する理解について原告らと被告との間で争いがあったので、まず、この点を確認しておくこととする。
ア 著作権法22条の立法の経緯については、前記第2の3(6)記載のとおりであり、これによれば、昭和40年報告及び昭和41年答申の段階においては、教育課程における著作物の利用については、「教室という閉鎖的な場における特定の人的範囲による使用」という点が考慮されて、有形複製と無形複製を区別することなく「公でない使用」に該当するとされ、また、無形複製については、「特定かつ多数」の場合や「不特定かつ少数」の場合にも「公の演奏」に当たらない場合があり得ることが示唆されていたと認められる。
 しかし、昭和41年試案においては、「教室という閉鎖的な場における特定の人的範囲による使用」であることから、教育課程における著作物の利用について一般的に著作権が及ばないという考え方は採られていない。
 また、試案コンメンタールでは、無形複製について、「個人的結合関係」の有無を法律上規定することは「公」の概念を不明確にするおそれがあるとの指摘がされ、同試案2条1項11号は「公衆等」を「公衆又は特定かつ相当程度に多数の者」と定義しているので、「特定かつ多数」の者や「不特定かつ少数」の者も「公衆等」に当たるとの考え方を前提としているものと考えられる。そして、このような考え方は、昭和43年に作成された著作権法の法案にも承継され、同法案において「公衆」は「特定かつ多数の者を含む」と定義されている。
 以上の立法経緯に照らすと、現行著作権法は、著作物の演奏等について、学校その他の教育機関の授業における著作物の使用かどうかを問わず、特定かつ少数の者は「公衆」に当たらないと整理した上で、学校等における著作物の演奏等については、同法22条の要件を充足する場合には同条により、また、より一般的には、営利を目的としない上演、演奏等に関する規定により著作権が制限されることとなったものと解される。
イ 著作権法の立法経緯における「社会教育」の意義については、前記第2の3(7)記載のとおりであり、これによれば、昭和41年答申及び答申説明書にいう「社会教育」とは、教育委員会、公民館等が行う公共的な教育を意味していたものと認められ、その当時、音楽教室事業者による営利を目的とする音楽教育が「社会教育」に当たると認識されていたとは考え難い。いずれにしても、昭和41年試案及びそれに続く昭和43年法案においては、社会教育に関する特別の権利制限規定は置かれていないので、営利を目的とする音楽教室事業者による音楽著作物の利用に著作権が及ぶかどうかは、同法22条の要件を充足するかどうかにより決せられることとなる。
ウ 以上のとおり、著作権法22条の立法過程においては、「公衆」の意義等について考え方の変遷はあったものの、学校その他の教育機関の授業における著作物の無形複製について一般的に著作権が及ばないという考え方は採られず、また、音楽教室事業者による営利を目的とする音楽教育は「社会教育」には当たらず、社会教育についての特別の権利制限規定も設けられていないので、営利を目的とする音楽教室事業者による音楽著作物の利用に著作権が及ぶかどうかは、上記のとおり、同法22条の要件を充足するかどうかにより決せられることとなる。
(2)音楽教室における音楽著作物の利用主体
 原告らの経営する音楽教室における被告管理楽曲の演奏が著作権法22条の要件を満たすかどうかについては、音楽著作物である被告管理楽曲を演奏という形態で利用している主体が誰かという点についての判断が前提となるところ、この点について、被告は、被告管理楽曲の利用主体は原告ら音楽教室事業者であると主張するのに対し、原告らは、その利用主体は同音楽教室の教師及び生徒であると主張する。
ア 著作物の利用主体の判断基準
 そこで検討するに、本件において原告らの経営する音楽教室事業は、原告らが設営した教室又は生徒の居宅(個人教室の場合)において、原告らと雇用契約又は準委任契約を締結した教師又は原告ら自身(個人の原告の場合)が、原告らと本件受講契約を結んだ生徒に対し、レッスン料を収受して楽器等の演奏技術を教授し、そのレッスンにおいて、教師及び生徒による課題曲の演奏並びに市販のCD等(本件使用態様2の場合)又はマイナスワン音源(本件使用態様3の場合)の再生演奏が行われるというものである。
 このように、原告らの音楽教室のレッスンにおける教師及び生徒の演奏は、営利を目的とする音楽教室事業の遂行の過程において、その一環として行われるものであるところ、音楽教室事業の上記内容や性質等に照らすと、音楽教室で利用される音楽著作物の利用主体については、単に個々の教室における演奏の主体を物理的・自然的に観察するのみではなく、音楽教育事業の実態を踏まえ、その社会的、経済的側面も含めて総合的かつ規範的に判断されるべきであると考えられる。
 かかる観点からすると、原告らの音楽教室における音楽著作物の利用主体の判断に当たっては、利用される著作物の選定方法、著作物の利用方法・態様、著作物の利用への関与の内容・程度、著作物の利用に必要な施設・設備の提供等の諸要素を考慮し、当該演奏の実現にとって枢要な行為がその管理・支配下において行われているか否かによって判断するのが相当である(クラブキャッツアイ事件最高裁判決、ロクラクU事件最高裁判決参照)。また、著作物の利用による利益の帰属については、上記利用主体の判断において必ずしも必須の考慮要素ではないものの、本件における著作物の利用主体性の判断においてこの点を考慮に入れることは妨げられないと解すべきである(ロクラクU事件最高裁判決の補足意見参照)。
イ 本件における被告管理楽曲の利用主体について
 上記アで判示した諸要素に照らして、原告らの音楽教室における音楽著作物の利用主体について、以下検討する。
(ア)利用される著作物の選定方法
 前記第2の3(4)エのとおり、音楽教室のレッスンで演奏される課題曲の選定に関し、ヤマハ音楽教室等においては、教師が、原告ヤマハが作成したレパートリー集の中から、生徒の演奏の技量、習熟度等を考慮し、自ら又は生徒の希望も踏まえて、教育的な観点から課題曲を選定するものと認められる。
 また、カワイ音楽教室においても、前記第2の3(5)イのとおり、子供を対象とするピアノの演奏技術を学ぶ教室において、原告河合が作成したテキスト、ワークブック及びCDなどが使用されており、同教室の教師は、原告河合が作成した教材の中から課題曲を選定しているものと認めるのが相当である。
 さらに、他の原告らにおいても、原告ヤマハ及び原告河合と同様、生徒の演奏の技量、習熟度等を踏まえ、教師が、自ら又は生徒の希望も踏まえて、教育的な観点から課題曲を選定しているものと推認され、これを覆すに足りる証拠はない。
 ところで、音楽教室において利用される音楽著作物である課題曲の選定が演奏の実現にとって枢要な行為であることはいうまでもないところ、上記のとおり、音楽教室で演奏させる課題曲は、音楽教室事業者である原告らの作成したレパートリー集等の中から選定され、このようなレパートリー集を有しない原告らについては、同原告らと雇用契約又は準委任契約を締結し、同原告らと同視し得る立場にある教師によって選定されることになるので、音楽教室のレッスンで演奏される課題曲の選定については、原告らの管理・支配が及んでいるということができる。
 これに対し、原告らは、教師が課題曲の選定をするとしても、課題曲を演奏するのは生徒本人であり、生徒は、その演奏技術の向上のために任意かつ主体的に演奏するので、原告らの管理・支配が及ぶものではないと主張する。しかし、生徒が任意かつ主体的に演奏するとしても、生徒が演奏する課題曲については、原告らと同視し得る教師が教育的な観点から選定する以上、音楽教室において演奏させる音楽著作物の選定に原告らの管理・支配が及んでいることは否定し得ないというべきである。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
(イ)著作物の利用方法・態様
a 音楽教室においては、教師が演奏する場合と生徒が演奏する場合があるが、教師は、原告らとの雇用契約又は準委任契約に基づき、その義務の履行としてレッスンを行うので、音楽教室において教師のする演奏及び録音物の再生については、教師に一定程度の裁量があるとしても、原告らの管理・支配が及ぶというべきである。また、個人の原告については、教師は同原告自身であるから、教師の演奏について同原告の管理・支配が及ぶことは明らかである。
 これに対し、原告らは、教師がレッスンで演奏するかどうか、どのような演奏をどの程度するかについて、原告らは管理をしていないと主張する。しかし、音楽教室のレッスンにおける演奏について、教師に一定の裁量が付与されているとしても、教師は、原告らとの雇用契約又は準委任契約に基づき、その義務の履行として演奏技術等を生徒に教授するのであるから、前記判示のとおり、教師による演奏は原告らによる演奏と同視し得るというべきである。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
b 音楽教室における生徒は、原告らとの間で締結した本件受講契約に基づき、自らの希望に加え、演奏技術の技量、習熟度等を考慮し、参加するコースを選択した上で、当該コースを担任する教師の指導に従って演奏等を行うこととなる。
 原告らの音楽教室における生徒の演奏態様の概要は、別紙著作物使用態様目録1〜4各記載のとおりであるが(前記第2の3(3))、例えば、同目録1記載の演奏態様は「生徒が課題曲を初めて演奏する際等に、…教師が一曲を通してまたは部分的に課題曲を演奏して課題を示し、課題曲を、当該曲の課題を含む数小節ごとに区切って、生徒が教師に対して演奏し、生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明し、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、教師の指導を聞いた上で、再度生徒が演奏するということを繰り返し行った後に、ひとつひとつの課題を達成したかの確認のために、練習してきた部分を…、または一曲通して生徒が演奏する」というものである。
 音楽教室における演奏態様は演奏行為そのものであるから、演奏行為にとって枢要であることはいうまでもないところ、上記記載からも明らかなように、音楽教室における生徒の演奏は、原告らと同視し得る教師の指導に従って行われるものなので、その演奏について原告らの管理・支配が及んでいるということができる。
c 原告らは、音楽教室におけるCD等の録音物の再生演奏について、教師自らの演奏の代りに補助的に行われるものであり、教師の判断により臨機応変に行われるものであって、適宜テンポ等を変えるなど、機械的で同質な再生ではないので、その演奏主体は教師であると主張する。
 しかし、原告らにはCD等の録音物の再生演奏を行う者と行わない者がいることから明らかなとおり、自らの経営する音楽教室においてCD等の録音物の再生演奏を行うかどうかは、音楽教室事業者の判断によるのであり、また、教師が原告らと同視し得る立場にあることは前記判示のとおりであるから、CD等の録音物の再生演奏が教師によりテンポを変え、臨機応変に行われるものであるとしても、CD等の録音物の再生演奏の主体は原告らであるというべきである。
(ウ)著作物の利用への関与の内容・程度
 音楽教室のレッスンで使用する課題曲の選定及びレッスンにおける演奏態様に関する原告らの関与の内容・程度は、上記(ア)(イ)で判示したとおりであるが、更に、原告ヤマハについては、前記第2の3(4)ウのとおり、ヤマハ音楽能力検定制度(ヤマハグレード)を設け、グレードに応じた教師の採用試験を実施するとともに、教師の年次、年齢、取得グレード、指導内容、指導成果等に応じて、ライセンスを付与する制度(ヤマハ講師ライセンス制度)を設けているほか、教師に対する各種の研修を実施し、カリキュラム等の指導のためのマニュアルを交付しているとの事実が認められる。
 また、原告河合については、その教師に対する研修等を行っているものと認められ(前記第2の3(5)ウ)、原告レゼルの経営するJ音楽教室についても、独自に体系化・システム化したメソッドに従ったレッスンが行われ、新人教師に対するレッスンガイドの配布や独自の教本選定基準の作成が行われているなどの事実が認められる(甲35、乙63、64(3、17枚目)、証人H4、10、11頁)。
 以上のとおり、原告ヤマハ、原告河合及び原告レゼルについては、教師の能力の維持・向上や生徒に対する指導方針・内容に対する関与の程度は高いということができるが、教師に対する指導マニュアルの作成や研修等が行われていない原告らについても、教師がその委任者又は雇用者の指導理念や方針等に従った指導を行うのは当然であるので、その生徒に対し、同各原告らの指導理念や方針に従った指導が行われていると推認するのが相当である。
 これに対して、原告らは、研修、指導書の交付などは、教師の資質、能力等の維持、向上のために行っているものであり、個別のレッスンにおける演奏を原告らは管理していないと主張する。しかし、教師に対する研修は、教師が原告らの理念や指導方針に沿った指導を行うことを目的として実施するものであり、指導マニュアルは教師がその内容に沿った指導を行うことを目的として作成するものなので、教師に対する研修を実施し又は教師に指導マニュアルを交付している音楽教室事業者については、レッスンの方針や指導内容等に対する強い管理・支配が及んでいるものというべきである。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
(エ)著作物の利用に必要な施設・設備の提供
 音楽教室における音楽著作物の演奏については、当該演奏を行う施設(教室)及び演奏に必要な設備(音響設備、録音物の再生装置等)の確保が不可欠であるが、本件使用態様1〜3については、原告らが地域等を選定した上でその費用において教室を設営し、当該教室において同原告らが備え付けた設備・装置を使用して行われるものであると認められる。そうすると、著作物の利用に必要な施設、設備等についても、原告らの管理・支配が及んでいるということができる。
 これに対して、原告らは、楽器は一部を除き生徒が用意し、楽譜も生徒自身が購入しているので、原告ら音楽教室事業者に強い管理・支配はないと主張するが、生徒が演奏に使用する楽器や楽譜は、本来的には受講する生徒自身が用意すべきものであり、教室の開設・運営に必要な施設・設備ということはできない。前記のとおり、音楽教室の運営に必要な教室及び設備については、原告らがその費用で設営・設置しているので、著作物の利用に必要な施設、設備等は原告らの管理・支配下にあるというべきである。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
(オ)著作物の利用による利益の帰属
 原告らが営利を目的として音楽教室事業を経営していることについては当事者間に争いがないが、原告らは、生徒から収受するレッスン料は、生徒が教師から演奏技術等の教授を受けることの対価であって、教師の演奏や他の生徒の演奏を聞くことの対価ではないから、原告らには音楽著作物の利用による利益は帰属しないと主張する。
 しかし、音楽教室事業における演奏技術の指導にとって、教師及び生徒が音楽著作物の演奏をすることは不可欠であり、かかる演奏をすることなく演奏技術を教授することは困難であることに照らすと、音楽教室の生徒が原告らに対して支払うレッスン料の中には、教師の教授料のみならず、音楽著作物の利用の対価部分が実質的に含まれているというべきである。
 したがって、音楽教室における音楽著作権の利用による利益は原告らに帰属していると認めるのが相当である。
(カ)小括
 上記(ア)ないし(オ)のとおり、原告らの音楽教室で演奏される課題曲の選定方法、同教室における生徒及び教師の演奏態様、音楽著作物の利用への原告らの関与の内容・程度、著作物の利用に必要な施設・設備の提供の主体、音楽著作物の利用による利益の帰属等の諸要素を考慮すると、原告らの経営する音楽教室における音楽著作物の利用主体は原告らであると認めるのが相当である(なお、原告ら(別紙C)の経営する個人教室は、生徒の居宅においてレッスンを行っているので、著作物の利用に必要な施設・設備についての管理・支配は認められないが、原告ら(別紙C)は原告ら自身が教師として課題曲の選定、レッスンにおける演奏等をしているので、同原告らが利用する音楽著作物の利用主体は同原告らであると認められる。)。
ウ 原告らの主張する音楽著作物の利用主体の判断基準(従属説)について
 原告らは、音楽教室における音楽著作物の利用主体について、民法の使用者責任や刑事法の間接正犯の考え方を参照しつつ、直接利用行為を行っていない音楽教室事業者である原告らを行為の主体と評価するためには、直接行為者の行為が演奏権の侵害に当たることが前提であり、これが肯定される場合において上記の評価を正当化し得る事情が存在する場合には、直接利用行為を行っていない者にその責任を負わせることができると主張する。
 しかし、原告らの上記主張は、音楽教室で利用される音楽著作物の利用主体について、規範的な観点を捨象して、物理的・自然的に観察することにより行為主体を判断すべきというに等しく、そのような考え方が採用し得ないことは前記判示のとおりである。音楽教室における著作物の利用主体については、音楽教育事業の実態を踏まえ、その社会的、経済的側面も含めて総合的かつ規範的に検討した上で、音楽教室事業者が同著作物の利用主体であるかどうかを端的に判断すべきであり、それで足りるというべきである。
 また、原告らは、クラブキャッツアイ事件最高裁判決が「客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法22条参照)は明らかであり」と判示している部分を捉え、原告らの上記主張と同様の見解に立つものであると主張する。しかし、この判示部分は、カラオケスナックの客の歌唱は「公衆に直接…聞かせることを目的」とするものではないとの主張を排斥したものにすぎず、その前後の説示に照らしても、原告らの上記主張と同様の考え方に立つものとは理解し得ない。
 以上のとおり、原告らの上記主張は採用し得ない。
(3)利用主体である原告らからみて、生徒は「公衆」に当たるかどうかについて
ア 不特定の者に対するものかどうかについて
(ア)前記2(1)記載のとおり、著作権法22条に基づき演奏権について著作権者の権利が及ばないのは、演奏の対象が「特定かつ少数の者」の場合であるところ、「特定」の者に該当するかどうかは、利用主体との間に個人的な結合関係があるかどうかにより判断すべきである。
 これを本件に即していうと、音楽教室における音楽著作物の利用主体である原告ら音楽教室事業者からみて、その顧客である生徒が「特定」の者に当たるかどうかは、原告らが音楽教室のレッスンの受講を申し込むに当たり、原告らとその生徒との間に個人的な結合関係があったかどうかにより判断することが相当である。
 原告らが経営する音楽教室は、受講申込書に所定事項を記入するなどして受講の申込みをし、原告らとの間で受講契約を締結すれば、誰でもそのレッスンを受講することができるので、原告らと当該生徒が本件受講契約を締結する時点では、原告らと生徒との間に個人的な結合関係はない。
 したがって、音楽教室事業者である原告らからみて、その生徒は「不特定」の者に当たるものというべきである。
(イ)これに対し、原告らは、特定の者に当たるか否かは契約締結後の時点を基準に判断すべきであり、原告らが生徒と本件受講契約を締結し、受講を開始して以降の個人的な結合関係の有無を問題とすべきであると主張する。
 しかし、著作権法22条が「公衆に直接…聞かせることを目的」とする場合に演奏権等が及ぶとしているのは、著作権の経済的利益性に着眼し、そのような場合には、著作物の提示の対象とする者の範囲・人数等が著作物の利用による経済的効用を認めるに足りるものであるからと解される(試案コンメンタール(乙10)30〜4頁)。このような同条の趣旨も考慮すると、「特定」の者かどうかは、著作物の提示の対象となり得る者、これを本件に即していうと、音楽教室において申込みをすることができる対象者が特定の者に限定されているかどうかという観点から決するべきであり、音楽教室事業者と契約を締結した後の個人的な結合関係の有無やその強弱は問わないと解するのが相当である。
 したがって、特定の者に当たるか否かを契約締結後の時点を基準に判断すべきであるとの原告らの主張は採用し得ない。
イ 多数の者に対するものかどうかについて
(ア)音楽教室における音楽著作物の利用主体である原告ら音楽教室事業者からみて、その顧客である生徒が「多数」の者に当たるかどうかは、上記ア(イ)で記載した著作権法22条の趣旨に照らすと、一時点のレッスンにおける生徒の数のみではなく、音楽教室事業の実態を踏まえ、社会通念に照らして、その対象が「多数」ということができるかという観点から判断するのが相当である。
(イ)原告ら音楽教室事業者の一つの教室における生徒の数は、本件使用態様1などにみられるとおり、グループレッスンで最大10人程度と認められるが、音楽教室事業者は、継続的・組織的にレッスンを行っており、場合によっては、異なる地域に複数の教室を展開し、一定期間内(例えば、一月のうち)に異なる生徒を対象とする複数のレッスンを開講することもあるほか、生徒の中には受講を辞める者もいれば、新たに受講する者もいるなど、生徒の入れ替わりも生じ得る。
 実際のところ、前記第2の3(4)アのとおり、ヤマハ音楽教室等は、平成29年度において、国内のみで4000を超える会場を有し、30万人を超える生徒を擁していたとの事実が認められる。また、原告河合についても、体育教室も含む数字ではあるが、平成29年時点において6000の教室を有していることは、前記第2の3(5)アのとおりである。
 他の原告については、原告ヤマハや原告河合ほどの会場数や生徒数を有していないと考えられるものの、生徒に対して継続的にレッスンを行っていることは同様であり、原告らの主張によれば本件使用態様1はすべての原告にあてはまるので、少なくとも3〜5名程度のグループレッスンは行っているものと認められる。また、レッスンの数や開催頻度は、施設の状況や生徒数にもよるが、一定期間内(例えば、一月のうち)に異なる生徒を対象とする複数のレッスンを開講することもあり、継続的にレッスンを行う過程において生徒の入れ替わりもあるものと推認される。
 以上のとおり、原告らによる音楽教室事業の実態を踏まえると、原告らからみて、その顧客である生徒は「多数」であると認めるのが相当である。
(ウ)これに対して、原告らは、音楽教室における教師及び生徒演奏並びに録音物の再生演奏は、すべて個性のある演奏であり、レッスンでの演奏を聞く者は現にそのレッスンの行われている教室内にいる者のみであることから、「多数」の者に対するものかどうかは、教室内の人数で決せられるべきであると主張する。
 しかし、音楽教室事業の上記実態を踏まえると、一つの教室における一時点の生徒数のみを捉えて多数かどうかを判断することは相当でないことは前記判示のとおりであり、また、音楽教室における教師及び生徒の演奏並びに録音物の再生演奏がレッスンごとに異なるとしても、その内容の個性や差異は、演奏の対象の数が多数かどうかの評価・判断を左右しないというべきである。
ウ 原告らは、現行著作権法の制定過程において、オーケストラの練習のように、演奏者等のほかに聴衆等のいない場合には、「公衆」が存在しないため、公の演奏に当たらないと解されていたことを指摘し、音楽教室におけるレッスンについても、レッスンの場に演奏者以外の聴衆(公衆)はいないので、オーケストラの練習の場合と同様に、公の演奏には当たらないと主張する。
 しかし、オーケストラの楽団員による練習のための演奏が公衆に対するものではないとされるのは、その楽団員は全てオーケストラの運営者と同視し得る者であるからである。これに対し、音楽教室における演奏は、原告らが利用主体であり、生徒が公衆に当たるのでレッスンの場に公衆が存在することになり、この点において、オーケストラの楽団員による練習とは異なるものというべきである。
 また、原告らは、音楽教室におけるレッスンは、教師や生徒が発表会等において他人に聞かせる準備として行うものなので、毎回のレッスンでの演奏について著作物利用料は発生しないと主張するが、音楽教室におけるレッスンは必ずしも発表会等への参加を前提とするものではなく、その目的は演奏技術等を学ぶことにあるので、原告らの主張は失当である。
エ 小括
 したがって、音楽教室における生徒は、利用主体たる原告らにとって、不特定の者であり、また、多数の者にも当たるから、「公衆」に該当する。
3 争点3(音楽教室における演奏が「聞かせることを目的」とするものであるか)について
(1)著作権法22条は、「公衆に直接…聞かせることを目的」とすることを要件としているところ、その文言の通常の意義に照らすと、「聞かせることを目的とする」とは、演奏が行われる外形的・客観的な状況に照らし、音楽著作物の利用主体から見て、その相手である公衆に演奏を聞かせる目的意思があれば足りるというべきである。
 原告らの音楽教室における演奏態様の概要は、別紙著作物使用態様目録1〜4各記載のとおりであるが(前記第2の3(3))、例えば、同目録1記載の演奏は、@生徒が課題曲を初めて演奏する際などには、生徒が演奏する前に、教師が課題曲を演奏して課題を示し、A生徒が、それを聞いた上で、教師に対して、課題曲を数小節ごとに区切って演奏すると、B生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明するとともに、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、C生徒は、教師の注意や演奏を聞いた上で、再度演奏するということを繰り返し行った後に、D最後に、生徒が練習してきた部分又は一曲を通して演奏するという形で行われるものと認められる。
 このように、原告らの音楽教室におけるレッスンは、教師が演奏を行って生徒に聞かせることと、生徒が演奏を行って教師に聞いてもらうことを繰り返す中で、演奏技術の教授が行われるが、このような演奏態様に照らすと、そのレッスンにおいて、原告ら音楽教室事業者と同視し得る立場にある教師が、公衆である生徒に対して、自らの演奏を注意深く聞かせるため、すなわち「聞かせることを目的」として演奏していることは明らかである。
 また、生徒の演奏技術の向上のために生徒自身が自らの演奏を注意深く聞く必要があることは、例えば、ピアノ指導法に関する書籍(乙57の58頁)に「自分の音を聴ける子供に育てる」、「雑な演奏になってしまうのはなぜでしょう。…その子供は自分の音を聞いていないのです。」などと記載されていることからもうかがわれるところであり、また、グループレッスンにおいては、他の生徒の演奏を聞くことが自らの演奏技術の向上にとって必要であると認められる(証人E15頁)。
 音楽教室における生徒の演奏は、原告らの管理・支配下で行われることから著作物の利用主体による演奏と同視し得るところ(クラブキャッツアイ事件最高裁判決参照)、上記のとおり、自ら又は他の生徒の演奏を聞くことの必要性、有用性に照らすと、その演奏は、公衆である他の生徒又は演奏している生徒自身に「聞かせることを目的」とするものであると認めるのが相当である。
(2)これに対し、原告らは、著作権法22条が「聞かせることを目的」との要件を設けた趣旨は、著作物の公正利用の観点から、多様な演奏のうち演奏権の対象となる範疇を設けたことにあるとした上で、「聞かせることを目的」との目的要件を実質的に解釈すると、「聞かせることを目的」とするとは、「聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏」すなわち「音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏」をいうと主張する。
 しかし、試案コンメンタールに「上映、演奏等の無形的な利用にあっては、…たとえば、家庭内における利用等のように限局された目的のものである限り、その著作物の経済的効用を問題にする余地のない性格のものであり、」との記載があることなども考慮すると、「聞かせることを目的」とする要件は、家庭内での演奏など、公衆が存在せず、外形的・客観的にみて公衆に聞かせる目的があるとは考えられない状況下での演奏等を除外する趣旨で設けられたものと解するのが相当である。このため、「聞かせることを目的」とするかどうかは、外形的・客観的にみて公衆に聞かせる目的意思が存在するかどうかにより決するのが相当である。
 これに対し、「聞かせることを目的」とすることの意義を「聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏」あるいは「音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏」と解することは、著作権法22条の文理及び立法趣旨とも整合せず、同条の文言にない制限を付加することになる上、「官能的な感動」や「価値を享受させる」などの意義も抽象的かつ曖昧であり、演奏者の主観的な意図に踏み込んで判断しなければ演奏権侵害の有無の判断ができないこととなって相当ではない。
(3)また、仮に、原告らの解釈によるとしても、ヤマハ音楽教室等のパンフレットには「講師の生演奏を聴いたりすることによってお子さまの情緒を育みます」(乙3の1)、「この時期に本物の音楽に触れることで豊かな感性が育まれ、聴く力や、積極的に表現する力の素地を身につけることができます」(乙24)などと記載され、カワイ音楽教室のパンフレットにも、「心に響く生の音を繰り返し聞くことで、聴く力が豊かに育ち、表現する力も育まれます。」(乙3の2)などと記載されている。これによれば、原告らの音楽教室におけるレッスンは、「聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏」や「音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏」に該当するということができる。
(4)原告らは、音楽教室における教師の演奏は、当該教師の本来の演奏とは異なるものであること、生徒の演奏は、未熟で拙く、数小節の短いフレーズの繰り返しがほとんどであること、録音物の再生も、終始、音やリズムをガイドしながら再生していることなどを理由として、これらの演奏は、音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏には当たらないと主張する。
 しかし、原告らの主張は、「聞かせることを目的」とするとは、単に公衆に演奏を聞かせる目的意思があれば足りるのではなく、「聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏」あるいは「音楽の著作物としての価値を享受させることを目的とする演奏」であることを要するとの見解を前提とするものであるところ、そのような主張を採用し得ないのは、前記判示のとおりである。
(5)原告らは、生徒自身はその演奏を他人に聞かれたくないと思うものなので、「聞かせることを目的」とするものではないと主張する。
 しかし、そもそも、生徒がその演奏を他人に聞かれたくないと思うかどうかは、その生徒の個性や性格にもよるのであり、一般的に他人に聞かれたくないと断定し得るかどうかは疑問である。このことは、ヤマハ音楽教室等の教師として多数の生徒に教えた経験のあるE証人の「慣れ親しんだクラスの仲間の前でピアノ、エレクトーンを弾くことは、…当たり前の習慣となっていて、…友達に聴いてほしいだとか、…恥ずかしいから聴かれたくないとか、そういうようなことはなさそうです。」(証人E4頁)との証言からもうかがうことができる。
 また、その点はおくとしても、「聞かせることを目的」とするかどうかは、外形的・客観的に判断すべきであり、個々の生徒が自らの演奏を他人に聞いてほしくないと内心で思っていたとしても、そのことは、「聞かせることを目的」とするかどうかの判断を左右するものではない。音楽教室における生徒の演奏は、音楽著作物の利用主体である原告らの演奏と同視し得るものとして、他の生徒又は自らに向けられたものであり、演奏する生徒が自らの演奏を聞いて課題を自覚し、あるいは、グループレッスンにおいて他の生徒に聞かせるためのものなので、その演奏は、公衆である生徒に「聞かせることを目的」とするものであるということができる。
(6)原告らは、生徒は、教師に対して演奏するのであり、その生徒自身や他の生徒に対して演奏するのではないので、生徒の演奏は、「公衆」である生徒に対する演奏とはなり得ないと主張する。
 この点については、上記(1)及び(5)で判示したとおり、生徒の演奏技術の向上のためには、生徒自身が自らの演奏を注意深く聞く必要があり、グループレッスンにおいては、他の生徒の演奏を聞くことも自らの演奏技術の向上にとって必要であることからすると、音楽教室における生徒の演奏は、教師のみならず他の生徒又は自らにも向けられたものであって、聞き手としての公衆は存在するというべきである。
 原告らは、カラオケボックスにおいて客は表現として歌唱するので、歌唱している客自身が歌唱を聞く立場にあるが、音楽教室のレッスンにおいては、生徒は教師に対して演奏するのであり、表現として演奏するものでもないから、生徒自身が聞く立場にあるということはできないと主張するが、カラオケボックスの客も音楽教室の生徒もいずれも公衆に当たる者であり、自らが歌唱又は演奏すると同時に、その歌唱又は演奏を聞く立場にある点で実質的な差異はないというべきである。
(7)原告らは、「聞かせることを目的」とする著作権法22条の解釈に当たっては、同法30条の4第1号の規定も参照しつつ、実質的に権利を及ぼすべき利用ということができるかという観点から、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とする利用態様であるかどうかを考慮すべきであると主張する。
 しかし、著作権法22条と30条の4第1号とは、その目的、趣旨、規律内容を異にする条項であり、同法30条の4第1号の規定の趣旨又はその文言を参酌して、同法22条の「聞かせることを目的」とするとの文言の意義を解釈すべき合理的な理由はない。
 また、著作権法30条の4の立法担当者の解説(乙44)においては、漫画の作画技術を身に付けさせることを目的として、民間のカルチャーセンター教室で購入した漫画を手本として受講者が模写する行為につき、その主たる目的が作画技術を身に付ける点にあるとしても、一般的に同時に「享受」の目的もあるとされていることは、被告の指摘するとおりであって、音楽教室における演奏の目的が演奏技術の習得にあるとしても、同時に音楽の価値を享受する目的も併存し得る。
(8)したがって、音楽教室における演奏は、音楽著作物の利用主体である原告らとの関係で、「公衆に直接…聞かせることを目的として」(公に)との要件を充足する。
4 争点4(音楽教室における2小節以内の演奏について演奏権が及ぶか)について
 原告らは、音楽教室における2小節以内の演奏については、短すぎるため、どの楽曲を演奏しているかを特定することができず、著作者の個性が発揮されているということはできないから、著作物に当たらず、また、聞かせる目的もないとして、請求の趣旨第5項及び第8項において、被告が被告管理楽曲の使用に係る請求権を有しないことの確認を求める。
 しかし、原告らの音楽教室におけるレッスンにおいては、終始、特定の2小節以内の小節のみを繰り返し弾くことはなく、課題曲を一曲通して弾くこともあれば、ある程度まとまったフレーズを弾くこともあり、当該小節を弾く場合においても、そのレッスン中に当該小節の前後の小節も演奏されるのが通常であると考えられる。このように、原告らの音楽教室のレッスンにおいては、課題曲が様々な形で連続的・重畳的に演奏されるので、原告らが第6準備書面8頁で自認するとおり、一回のレッスンにおける演奏及び再生演奏は常に不可分一体であると解すべきであり、その一部である2小節以内の演奏のみを切り取り、これを独立したものとして、その著作物性を否定することは相当ではないというべきである。
 また、一回のレッスンにおける上記の演奏態様に照らすと、教師から指示された特定の2小節以内の小節を演奏する生徒は、当該部分が課題曲の一部であると十分に認識し、その楽曲全体の本質的な特徴を感得しつつ、その特徴を表現することを企図して演奏をするのであり、その演奏を聞いている他の生徒も同様に当該部分が課題曲の一部であると認識しつつ聞くものと考えられる。そうすると、生徒による2小節以内の演奏であるとしても、当該演奏は他の生徒等に「聞かせることを目的」とするものであるというべきである。
 したがって、2小節以内の演奏について、著作物性及び聞かせることを目的とするとの要件を充足しないとする原告らの主張は採用し得ない(なお、予備的請求第5項及び第8項における3小節以上の演奏並びに予備的請求6及び7に係る演奏については、前記判示のとおり、「公衆に直接…聞かせることを目的」とするものと認められるから、被告の演奏権が及ぶと認められる。)。
5 争点5(演奏権の消尽の成否)について
 原告らは、音楽教室のレッスンで使用する楽譜等及びマイナスワン音源は、教師及び生徒に購入された後に演奏に用いられることが当然に想定され、被告は、これらが譲渡される際に、複製権のみならず演奏権の対価を含めて使用料を徴収する機会があるから、演奏権についても消尽すると主張する。
 知的財産権の消尽は、特許権及び著作権法の頒布権について判例によって認められ(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成18年(受)第826号同19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁、中古ゲームソフト事件最高裁判決参照)、著作権法26条の2第2項等において明文で認められている。
 このような知的財産権の消尽が認められる根拠は、@権利の対象となる商品について譲渡を行う都度権利者の許諾を要することとなると、市場における商品の自由な流通が阻害され、取引の安全を害し、A権利者は自ら譲渡する際に譲渡代金又は使用料を取得するなどして代償を確保する機会が保障され、二重の利得を得させる必要がないという点にあり、このような場合に知的財産権の権利者の権利行使を制限することを認める趣旨は、取引の安全と権利者に排他的権利に基づく利得の機会を保障することとの間の調和を図ることにあると解される。
 以上のような消尽が認められる根拠、趣旨に照らし、本件において消尽が認められるかについて検討すると、楽譜等やマイナスワン音源は、その性質からして、購入後に演奏に用いられることがあり得るとしても、楽譜等やマイナスワン音源の購入者が、これらの楽譜等を使用して「公衆に直接…聞かせることを目的として」演奏するとは限らず、購入者の家庭内における演奏に使用しあるいは著作権法38条1項などの権利制限規定により演奏権が及ばない態様で演奏される可能性も当然あり得ることである。そうすると、音楽教室のレッスンで使用する楽譜等及びマイナスワン音源が、購入された後に演奏に用いられることが当然に想定されているということはできない。
 また、音楽著作物の楽譜への登載及び著作物のCD等への録音(いずれも複製権)と、音楽教室のレッスンにおける演奏(演奏権)とは、支分権が異なる別個の行為であり、著作物の利用形態も異なるものなので、行為ごとに権利処理することが許されると解するのが相当である。そして、著作権法が、同じ著作物であってもその利用態様ごとに対応する支分権を定めていることに照らしても、異なる支分権である複製と演奏のそれぞれについて対応する使用料を取得したとしても、著作権者が不当に二重の利得を得ていると評価することはできない。
 さらに、原告らは、被告には演奏権の対価を含めて使用料を徴収する機会があったことも根拠として挙げるが、楽譜等の複製権に係る使用料を算定する際に、当該楽譜等の購入者がその後に演奏権の及ぶ態様で演奏するかどうかを把握することは困難であると考えられることからすると、楽譜等について被告に事前に演奏権に係る対価取得の機会が保障されているということはできない。
 以上によれば、講師や生徒が楽譜及びマイナスワン音源を購入することにより、音楽教室における演奏に係る演奏権が消尽するということはできない。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
6 争点6(録音物の再生に係る実質的違法性阻却事由の有無)について
 原告らは、音楽教室においては、レッスンの場にいる全員が、レッスンで使用する楽曲の音源を再生して自らが聞くことについての権利を有しているので、それを全員がいるレッスンの場で再生しても、著作権侵害の実質的な違法性を欠くと主張する。
 しかし、前記判示のとおり、音楽著作物のCD等への録音(複製権)と音楽教室のレッスンにおける著作物の演奏(演奏権)とは、支分権が異なる別個の行為であり、著作物の利用形態も異なるものなので、仮に、レッスンに参加する教師や生徒がレッスンで使用する楽曲の音源を再生して自らが聞く権利を有しているとしても、当該著作物の演奏権侵害について実質的違法性が阻却されるということはできない。
 また、前記判示のとおり、原告らの音楽教室における録音物の利用主体は、原告らであって、教師及び生徒ではないから、仮にレッスンに参加する教師及び生徒の全員が録音物に記録された楽曲の音源を各自購入しているとしても、それによって、原告らによる演奏権侵害行為の違法性が阻却されるということはできない。
 したがって、原告らの上記主張は採用し得ない。
7 争点7(権利濫用の成否)について
(1)原告らは、教則本やレッスンで使用するCD等の録音物を制作する際や、生徒による発表会など著作権が及ぶ使用については被告に使用料を払っているので、音楽教室における演奏について著作物使用料を徴収することは、過度の負担を強いるものであり、権利の濫用に当たると主張する。
 しかし、前記判示のとおり、教則本の製作のための音楽著作物の複製と、レッスンにおける演奏とは、支分権が異なる別個の行為であり、著作物の利用形態も異なるものなので、それぞれの支分権について対応する使用料を被告が取得したとしても、それをもって権利の濫用ということはできない。
 また、原告らは、生徒による発表会はレッスンにおける練習の成果の発表の場であると主張するが、音楽教室の生徒が音楽教室事業者主催の発表会に参加するとは限らず、音楽教室におけるレッスンを発表会の準備と位置付けることもできないので、発表会についての使用料に加え、レッスンについての使用料を被告が徴収したとしても、それをもって権利の濫用ということはできない。
(2)原告らは、音楽教室のレッスンにおける演奏に対して著作物使用料が発生することになれば、その萎縮効果から、被告管理楽曲は使用しなくなり、ひいては文化の発展に寄与するという著作権法1条の目的に反することとなると主張する。
 しかし、本件使用料規程の内容は、前記第2の3(2)イのとおりであり、例えば、年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合の1施設当たりの年額使用料は、受講料収入算定基準額(前年度に当該施設で行われた被告管理楽曲を利用した講座の受講料収入の合計額)の2.5パーセントである。
 もとより、音楽教室事業者の規模は様々であるので、音楽教室のレッスンにおける演奏に対して著作物使用料が徴収された場合の使用料額は異なることになるが、上記の負担が音楽著作権者の保護の要請との均衡を失するほど過大であり、文化の発展に寄与するという著作権法1条の目的に反するということはできない。
 したがって、被告が音楽教室のレッスンにおける演奏に対して使用料を課すことが権利の濫用であるとの原告らの主張は採用し得ない。
(3)原告は、現行著作権法が施行された昭和46年から、平成15年に原告ヤマハに協議を申し入れるまでの約32年もの間、被告は、音楽教室における演奏について権利を行使してこなかったから、今に至って演奏権が及ぶとの権利主張をすることは、権利の濫用に当たり、又は権利失効の原則に照らし許されないと主張する。
 しかし、証拠(乙1、2、36、55、証人I)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、現行著作権法が施行された昭和46年1月1日当時、録音物の再生演奏につき、著作権法附則14条により著作権者の権利が制限されていたことを考慮して、音楽教室のレッスンにおける演奏権の管理を控えていたが、平成12年1月1日に同附則が廃止されたことから、音楽教室における著作権管理を開始することとし、平成15年11月13日及び平成16年25月18日、音楽教室業界の中心的な存在であった原告ヤマハに対し、協議開始の申入れを行う書簡を発出したものの、原告ヤマハは協議に応じなかったとの事実が認められる。
 上記によれば、被告が著作権法附則14条の廃止に至るまで権利行使をしなかったことについては合理的な理由があり、同附則が廃止された後には原告ヤマハに対して協議を開始することを申し入れているので、権利行使が容易であるにもかかわらず、被告がこれを長期間にわたって放置したと評価することはできない。
 そうすると、現行著作権法が施行された昭和46年から、平成15年に原告ヤマハに協議を申し入れるまでの間、音楽教室における演奏について権利を行使しなかったとしても、それをもって、被告が原告らの音楽教室における演奏について演奏権が及ぶと主張することが権利の濫用に当たり、又は権利失効の原則により許されないということはできない。
8 結論
 以上によれば、原告らの音楽教室における被告管理楽曲の使用にかかわる請求権(著作権侵害に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権)が被告との間で存在しないことを求める原告らの請求(予備的請求を含む。)はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 佐藤達文
 裁判官 吉野俊太郎
 裁判官 今野智紀


(別紙)請求目録
1(1)@各原告と被告との間において、被告は、各原告が生徒との間で締結した音楽の教授及び演奏(本判決を通じ、歌唱を含む。)技術の教授にかかる契約(本件受講契約)に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがない場合に限る。)について、被告が著作権者から著作物の使用料の徴収を目的として著作権の信託譲渡又は徴収の委任を受けて有するところの著作物(被告管理楽曲)の使用にかかる請求権を有しないことを確認する(本判決を通じ、「レッスン」とは、音楽教室における30分ないし60分間程度の1コマの授業をいう。)。
A各原告と被告との間において、被告は、各原告が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(2)@各原告と被告との間において、被告は、各原告が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
A各原告と被告との間において、被告は、各原告が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
2(1)@別紙Aに記載される各原告(原告ら(別紙A))と被告との間において、被告は、原告ら(別紙A)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
A原告ら(別紙A)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙A)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(2)@原告ら(別紙A)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙A)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
A原告ら(別紙A)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙A)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
3(1)@別紙Bに記載される各原告(原告ら(別紙B))と被告との間において、被告は、原告ら(別紙B)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
A原告ら(別紙B)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙B)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師と10名程度以下の複数の生徒の間で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(2)@原告ら(別紙B)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙B)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
A原告ら(別紙B)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙B)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき、教師1名対生徒1名で行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の演奏及び再生演奏(このうち、楽曲を一曲通して、演奏又は再生演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
4(1)別紙Cに記載される各原告(以下「原告ら(別紙C)」という。)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙C)が生徒との間で締結した本件受講契25約に基づき行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録4記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがない場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(2)原告ら(別紙C)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙C)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき行われるレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録4記載の演奏(このうち、楽曲を一曲通して演奏することがある場合に限る。)について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。

(別紙)予備的請求目録
5 各原告と被告との間において、被告は、各原告が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき行われるレッスンにおける、次の演奏について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(1)教師と10名程度以下の複数の生徒との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の
@生徒の、連続して3小節以上の演奏
A教師の、連続して3小節以上の演奏
B生徒の、連続して2小節以内の演奏
C教師の、連続して2小節以内の演奏
(2)教師1名対生徒1名との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録1記載の
@生徒の、連続して3小節以上の演奏
A教師の、連続して3小節以上の演奏
B生徒の、連続して2小節以内の演奏
C教師の、連続して2小節以内の演奏
6 原告ら(別紙A)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙A)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき行われるレッスンにおける、次の演奏について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(1)教師と10名程度以下の複数の生徒との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の録音物の再生演奏
(2)教師1名対生徒1名との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録2記載の録音物の再生演奏
7 原告ら(別紙B)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙B)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき行われるレッスンにおける、次の演奏について、被告管理楽曲の使用にかかる請求権を有しないことを確認する。
(1)教師と10名程度以下の複数の生徒との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の録音物の再生演奏
(2)教師1名対生徒1名との間のレッスンにおける、別紙著作物使用態様目録3記載の録音物の再生演奏
8 原告ら(別紙C)と被告との間において、被告は、原告ら(別紙C)が生徒との間で締結した本件受講契約に基づき行われるレッスンにおける、次の演奏について、被告管理楽曲の使用にかかわる請求権を有しないことを確認する。
 別紙著作物使用態様目録4記載の
@生徒の、連続して3小節以上の演奏
A教師の、連続して3小節以上の演奏
B生徒の、連続して2小節以内の演奏
C教師の、連続して2小節以内の演奏

(別紙)著作物使用態様目録1
(録音物の再生を行わないレッスンでの使用)
 音楽教室のレッスン(録音物の再生は行われない。)における下記の態様での演奏。
(レッスンが行われる場所)
 各原告が設営した、教師並びに生徒及びその保護者以外の者の入室が許されない教室
(レッスンの構成員)
 生徒と担任教師が1対1の個人レッスンと複数名の生徒を1名の担任教師が指導するグループレッスンがあり、グループレッスンの場合でも、受講する生徒の人数は、通常3名ないし5名であり、最大でも10名である。
 特定の教師が、特定の生徒に対し、各生徒の特性や個性を把握して継続的に指導を行う。特別な事情がない限り、クラスにおいて教師が変更されることはない。
(演奏態様)
 生徒が課題曲を初めて演奏する際等に、必要に応じて、生徒が演奏する前に、教師が一曲を通してまたは部分的に課題曲を演奏して課題を示し、
 課題曲を、当該曲の課題を含む数小節ごとに区切って、生徒が教師に対して演奏し(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)、
 生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明し、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、
 教師の指導を聞いた上で、再度生徒が演奏するということを繰り返し行った後に、
 ひとつひとつの課題を達成したかの確認のために、練習してきた部分を(一曲を通して行うものではない)、または一曲通して生徒が演奏する(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)
という練習及び指導の過程で行われる、あらかじめ購入していた楽譜を使用しての生徒及び教師の演奏。

(別紙)著作物使用態様目録2
(市販のCD等の録音物の再生を行うレッスンでの使用)
 音楽教室のレッスン(生徒及び教師の演奏に加え、生徒が演奏する楽器のパートを含む全てのパートの演奏が含まれた市販のCD等の録音物の再生演奏が行われる。)における下記の態様での演奏。
(レッスンが行われる場所)
 各原告が設営した、教師並びに生徒及びその保護者以外の者の入室が許されない教室
(レッスンの構成員)
 生徒と担任教師が1対1の個人レッスンと複数名の生徒を1名の担任教師が指導するグループレッスンがあり、グループレッスンの場合でも、受講する生徒の人数は、通常3名ないし5名であり、最大でも10名である。
 特定の教師が、特定の生徒に対し、各生徒の特性や個性を把握して継続的に指導を行う。特別な事情がない限り、クラスにおいて教師が変更されることはない。
(演奏態様)
1 生徒が課題曲を初めて演奏する際等に、必要に応じて、生徒が演奏する前に、教師が一曲を通してまたは部分的に課題曲を演奏して課題を示し、
 課題曲を、当該曲の課題を含む数小節ごとに区切って、生徒が教師に対して演奏し(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)、
 生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明し、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、
 教師の指導を聞いた上で、再度生徒が演奏するということを繰り返し行った後に、
 ひとつひとつの課題を達成したかの確認のために、練習してきた部分を(一曲を通して行うものではない)、または仕上げとして一曲通して生徒が演奏する(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)
という練習及び指導の過程で行われる、あらかじめ購入していた楽譜を使用しての生徒及び教師の演奏。
2 市販のCD等の録音物の再生演奏
 教師の伴奏の代わりに、生徒の演奏の合奏の相手とするために、
 授業の進捗や生徒の習熟度、理解度に応じて、楽曲を1小節ないし数小節の単位で、または一曲を通して、また音程、テンポその他の要素を変えて行われる
 生徒が演奏する楽器のパートを含む全てのパートの演奏が含まれた市販のCD等の録音物の再生演奏。

(別紙)著作物使用態様目録3
(マイナスワンの再生を行うレッスンでの使用)
 音楽教室のレッスン(生徒及び教師の演奏に加え、生徒が演奏する楽器のパートのみを除いた合奏の演奏が録音されたCD等の録音物(マイナスワン音源)の再生演奏が行われる。)における下記の態様での演奏。
(レッスンが行われる場所)
 各原告が設営した、教師並びに生徒及びその保護者以外の者の入室が許されない教室
(レッスンの構成員)
 生徒と担任教師が1対1の個人レッスンと複数名の生徒を1名の担任教師が指導するグループレッスンがあり、グループレッスンの場合でも、受講する生徒の人数は、通常3名ないし5名であり、最大でも10名である。特定の教師が、特定の生徒に対し、各生徒の特性や個性を把握して継続的に指導を行う。特別な事情がない限り、クラスにおいて教師が変更されることはない。
(演奏態様)
1 生徒が課題曲を初めて演奏する際等に、必要に応じて、生徒が演奏する前に、教師が一曲を通してまたは部分的に課題曲を演奏して課題を示し、
 課題曲を、当該曲の課題を含む数小節ごとに区切って、生徒が教師に対して演奏し(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)、
 生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明し、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、
 教師の指導を聞いた上で、再度生徒が演奏するということを繰り返し行った後に、
 ひとつひとつの課題を達成したかの確認のために、練習してきた部分を(一曲を通して行うものではない)、または一曲通して生徒が演奏する(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)
という練習及び指導の過程で行われる、あらかじめ購入していた楽譜を使用しての生徒及び教師の演奏。
2 録音物(マイナスワン音源)の再生演奏
 教師の伴奏の代わりに、生徒の演奏の合奏の相手とするために、
 授業の進捗や生徒の習熟度、理解度に応じて、楽曲を1小節ないし数小節の単位で、または一曲を通して、また音程、テンポその他の要素を変えて行われる
 生徒が演奏する楽器のパートのみを除いた合奏の演奏が録音されたCD等の録音物(マイナスワン音源)の再生演奏。

(別紙)著作物使用態様目録4
(録音物の再生を行わない個人教室のレッスンでの使用)
 音楽教室のレッスン(録音物の再生は行われない。)における下記の態様での演奏。
(レッスンが行われる場所)
 生徒の居宅かつ教師並びに生徒及びその保護者以外の者の入室が許されない場所
(レッスンの構成員)
 特定の教師が、特定の1名の生徒に対して、当該生徒の特性や個性を把握して継続的に指導を行う。
(演奏態様)
 録音物の再生演奏が行われない状況下において、
 生徒が課題曲を初めて演奏する際等に、必要に応じて、生徒が演奏する前に、教師が一曲を通してまたは部分的に課題曲を演奏して課題を示し、課題曲を、当該曲の課題を含む数小節ごとに区切って、生徒が教師に対して演奏し(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)、
 生徒の演奏を目の前で聞いた教師が、生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明し、必要に応じて当該部分の演奏の例を示し、
 教師の指導を聞いた上で、再度生徒が演奏するということを繰り返し行った後に、ひとつひとつの課題を達成したかの確認のために、練習してきた部分を(一曲を通して行うものではない)、または一曲通して生徒が演奏する(生徒の演奏の伴奏として教師が演奏する場合がある)
という練習及び指導の過程で行われる、あらかじめ購入していた楽譜を使用しての生徒及び教師の演奏。

(別紙A)
1 一般財団法人ヤマハ音楽振興会
2 株式会社河合楽器製作所
3 株式会社開進堂楽器
4 島村楽器株式会社
5 株式会社宮地商会
6 株式会社山野楽器
7 株式会社アール・シー・シー
8 株式会社アイバ楽器
13 株式会社アダチ音研
15 株式会社アツタ
16 あぽろん株式会社
18 株式会社アルペジオ楽器
19 株式会社イー・エス・ピー
22 株式会社イケダ光音堂
24 有限会社イシイ楽器
26 株式会社イシカワ
27 X1
28 株式会社伊藤楽器
31 株式会社井村
33 有限会社ウィングスミュージック
34 株式会社上野楽器
35 株式会社うつのみや
37 エークラスミュージック株式会社
38 株式会社エヌ・エス・エス
39 X2
40 株式会社エルム楽器
41 株式会社オアシス楽器店
44 株式会社大阪屋
45 株式会社大道時計楽器店
46 有限会社大川楽器店
48 株式会社岡定楽器店
50 株式会社オクターヴ
51 株式会社オグチ楽器
52 合資会社小椋商会
53 株式会社帯広旭楽器商会
54 株式会社小宅楽器
55 株式会社オリエント楽器
56 株式会社オワリヤ楽器
57 有限会社尾張屋時計店
58 X3
59 株式会社音教楽器店
60 有限会社オンダ楽器
61 有限会社甲斐楽器
64 有限会社カジタ楽器店
65 株式会社楽器の店カネキ
66 楽器晴海堂株式会社
67 株式会社川上楽器店
68 有限会社川上商会
69 株式会社煥乎堂
71 有限会社北上正時堂
72 株式会社キノシタ楽器
73 株式会社木下楽器
74 株式会社木下楽器店
75 株式会社キハラ楽器
76 協葉ピアノ株式会社
80 株式会社クシダエンタプライズ
84 株式会社グルーヴィン
85 有限会社暮田商会
86 株式会社黒崎楽器
88 京浜楽器株式会社
89 株式会社現代ギター社
90 コウキ商事株式会社
91 有限会社高知楽器
92 有限会社コサカ楽器
95 株式会社小成
101 X6
102 合資会社佐々木時計楽器店
103 株式会社さしかわ
104 株式会社サトー
105 株式会社佐藤商会
106 株式会社さわ楽器
107 株式会社沢田楽器
109 株式会社山響楽器店
110 株式会社山陽こだま楽器
114 X7
115 株式会社十字屋
118 株式会社松栄堂楽器
119 株式会社正時堂
120 株式会社松栄楽器
122 昭和堂楽器株式会社
123 株式会社進駸堂楽器
124 新響株式会社
126 真和楽器株式会社
127 株式会社菅野時計店
129 有限会社スガワラ楽器
130 株式会社スガワラ楽器
131 菅波楽器株式会社
132 株式会社スズキ楽器
133 鈴木楽器株式会社
134 スター楽器株式会社
135 すみやグッディ株式会社
138 有限会社精琴堂楽器店
141 株式会社第一楽器
142 大東楽器株式会社
143 株式会社ダク
144 タケダ楽器株式会社
145 株式会社田澤
147 株式会社谷田楽器店
148 株式会社玉田ピアノ商会
149 株式会社丹澤楽器店
150 株式会社中国楽器
151 株式会社塚本楽器
152 株式会社ツルタ楽器
154 株式会社東山堂
155 株式会社東音楽器
156 株式会社東京堂
157 トーオー楽器株式会社
158 株式会社富岡本店
159 有限会社トミヤ楽器店
160 株式会社トリイ
163 株式会社長井理研
165 株式会社新堀ギターアカデミー
167 日響楽器株式会社
173 株式会社ハセガワ楽器
177 株式会社花井商会
179 株式会社ハマヤ
183 株式会社ビート楽器
184 株式会社ヒオキ楽器
185 株式会社兵藤楽器店
188 株式会社福田
190 有限会社フミヤ楽器
193 株式会社フレンド楽器
194 株式会社文化堂
195 株式会社文化堂
197 有限会社文化堂楽器
200 星川楽器株式会社
201 株式会社ホックミュージックグループ
202 株式会社北海道教育楽器
203 北海道テクニカルシステムエンジニア株式会社
207 株式会社松木屋
209 株式会社マナブミュージック
210 株式会社丸石楽器店
211 株式会社マルシン
213 有限会社丸越楽器
214 三木楽器株式会社
215 有限会社ミヤコ楽器店
216 有限会社宮内オリエント商会
217 有限会社宮崎ピアノ技術センター
218 株式会社ミューズポート
219 株式会社ミュージックストアナガト
222 株式会社グランドミック
223 株式会社ミリオン楽器
224 株式会社ムラコシ楽器店
225 有限会社もちづき楽器
226 株式会社八重洲ピアノ社
228 株式会社ヤマハミュージックリテイリング
229 合資会社山西楽器店
230 有限会社山屋楽器
231 有限会社ユー・ワンミュージック
232 株式会社横浜日本屋樂器
233 有限会社横浜屋
235 有限会社吉松楽器店
236 X9
237 有限会社よしや商事
238 株式会社ヨネザワ楽器
239 有限会社米山楽器店
240 ヨモギヤ楽器株式会社
243 ロマン楽器株式会社
245 株式会社若林楽器店
246 株式会社わたじん
247 株式会社ワタナベ楽器店
248 株式会社ワタナベ楽器店
249 株式会社ワタナベミュージックラボ
252 株式会社アオイ楽器店

(別紙B)
1 一般財団法人ヤマハ音楽振興会
2 株式会社河合楽器製作所
3 株式会社開進堂楽器5
4 島村楽器株式会社
5 株式会社宮地商会
6 株式会社山野楽器
7 株式会社アール・シー・シー
8 株式会社アイバ楽器
13 株式会社アダチ音研
16 あぽろん株式会社
18 株式会社アルペジオ楽器
19 株式会社イー・エス・ピー
22 株式会社イケダ光音堂
26 株式会社イシカワ
27 X1
28 株式会社伊藤楽器
37 エークラスミュージック株式会社
38 株式会社エヌ・エス・エス
39 X2
40 株式会社エルム楽器
44 株式会社大阪屋
45 株式会社大道時計楽器店
46 有限会社大川楽器店
48 株式会社岡定楽器店
50 株式会社オクターヴ
51 株式会社オグチ楽器
53 株式会社帯広旭楽器商会
54 株式会社小宅楽器
55 株式会社オリエント楽器
57 有限会社尾張屋時計店
59 株式会社音教楽器店
60 有限会社オンダ楽器
61 有限会社甲斐楽器
64 有限会社カジタ楽器店
66 楽器晴海堂株式会社
67 株式会社川上楽器店
69 株式会社煥乎堂
71 有限会社北上正時堂
72 株式会社キノシタ楽器
73 株式会社木下楽器
74 株式会社木下楽器店
75 株式会社キハラ楽器
76 協葉ピアノ株式会社
80 株式会社クシダエンタプライズ
84 株式会社グルーヴィン
85 有限会社暮田商会
86 株式会社黒崎楽器
88 京浜楽器株式会社
89 株式会社現代ギター社
90 コウキ商事株式会社
91 有限会社高知楽器
92 有限会社コサカ楽器
94 株式会社こだま楽器
95 株式会社小成
99 相模楽器株式会社
101 X6
103 株式会社さしかわ
104 株式会社サトー
105 株式会社佐藤商会
106 株式会社さわ楽器
107 株式会社沢田楽器
109 株式会社山響楽器店
110 株式会社山陽こだま楽器
115 株式会社十字屋
118 株式会社松栄堂楽器
119 株式会社正時堂
120 株式会社松栄楽器
122 昭和堂楽器株式会社
126 真和楽器株式会社
127 株式会社菅野時計店
131 菅波楽器株式会社
132 株式会社スズキ楽器
134 スター楽器株式会社
135 すみやグッディ株式会社
137 有限会社誠音堂楽器店
141 株式会社第一楽器
142 大東楽器株式会社
143 株式会社ダク
145 株式会社田澤
147 株式会社谷田楽器店
148 株式会社玉田ピアノ商会
149 株式会社丹澤楽器店
150 株式会社中国楽器
152 株式会社ツルタ楽器
153 鶴岡楽器株式会社
154 株式会社東山堂
155 株式会社東音楽器
157 トーオー楽器株式会社
159 有限会社トミヤ楽器店
160 株式会社トリイ
161 内藤楽器株式会社
165 株式会社新堀ギターアカデミー
167 日響楽器株式会社
175 有限会社長谷川楽器店
177 株式会社花井商会
178 有限会社パナムジカ
179 株式会社ハマヤ
182 有限会社ピアノプラザ
185 株式会社兵藤楽器店
190 有限会社フミヤ楽器
194 株式会社文化堂
195 株式会社文化堂
197 有限会社文化堂楽器
200 星川楽器株式会社
202 株式会社北海道教育楽器
203 北海道テクニカルシステムエンジニア株式会社
206 株式会社マツイシ楽器店
207 株式会社松木屋
209 株式会社マナブミュージック
210 株式会社丸石楽器店
211 株式会社マルシン
213 有限会社丸越楽器
214 三木楽器株式会社
215 有限会社ミヤコ楽器店
216 有限会社宮内オリエント商会
218 株式会社ミューズポート
219 株式会社ミュージックストアナガト
222 株式会社グランドミック
223 株式会社ミリオン楽器
224 株式会社ムラコシ楽器店
226 株式会社八重洲ピアノ社
228 株式会社ヤマハミュージックリテイリング
229 合資会社山西楽器店
230 有限会社山屋楽器
231 有限会社ユー・ワンミュージック
233 有限会社横浜屋
238 株式会社ヨネザワ楽器
239 有限会社米山楽器店
240 ヨモギヤ楽器株式会社
243 ロマン楽器株式会社
244 株式会社WRLD
246 株式会社わたじん
247 株式会社ワタナベ楽器店
248 株式会社ワタナベ楽器店
249 株式会社ワタナベミュージックラボ
252 株式会社アオイ楽器店

(別紙C)
250 Y1
251 Y2

(別紙)原告グループC目録
7 株式会社アール・シー・シー
9 合資会社愛曲楽器
10 青山ハープ株式会社
12 株式会社旭堂楽器店
13 株式会社アダチ音研
18 株式会社アルペジオ楽器
19 株式会社イー・エス・ピー
20 有限会社飯国ピアノセンター
27 X1
33 有限会社ウィングスミュージック
39 X2
49 株式会社オクムラ楽器
54 株式会社小宅楽器
58 X3
62 有限会社鹿児島音楽教室
68 有限会社川上商会
77 株式会社キワヤ商会
78 株式会社銀座十字屋
82 X4
89 株式会社現代ギター社
94 株式会社こだま楽器
96 株式会社レゼル
104 株式会社サトー
110 株式会社山陽こだま楽器
115 株式会社十字屋
125 新日本ミュージック株式会社
128 株式会社須賀楽器駿台音楽院
143 株式会社ダク
144 タケダ楽器株式会社
146 有限会社タナカピアノ
151 株式会社塚本楽器
165 株式会社新堀ギターアカデミー
170 日本ピアノホールディング株式会社
174 ハセガワ楽器有限会社
175 有限会社長谷川楽器店
178 有限会社パナムジカ
180 株式会社ハモンド・スズキ
182 有限会社ピアノプラザ
187 株式会社福助屋商店
191 ピアスコア株式会社
192 X8
199 株式会社北陸楽器
201 株式会社ホックミュージックグループ
203 北海道テクニカルシステムエンジニア株式会社
204 有限会社ホリエ
206 株式会社マツイシ楽器店
208 有限会社マツヤマ楽器
209 株式会社マナブミュージック
212 丸一商店株式会社
213 有限会社丸越楽器
217 有限会社宮崎ピアノ技術センター
218 株式会社ミューズポート
221 有限会社ミュージックハウス小川
230 有限会社山屋楽器
238 株式会社ヨネザワ楽器
242 ローレンスMUSIC株式会社
244 株式会社WRLD
250 Y1
251 Y2

(別紙)当事者目録
 (なお、原告番号81、130、140、168は欠番である。)
1 原告 一般財団法人ヤマハ音楽振興会
2 原告 株式会社河合楽器製作所
3 原告 株式会社開進堂楽器
4 原告 島村楽器株式会社
5 原告 株式会社宮地商会
6 原告 株式会社山野楽器
7 原告 株式会社アール・シー・シー
7 原告 株式会社アイバ楽器
8 原告 合資会社愛曲楽器
10 原告 青山ハープ株式会社
11 原告 株式会社あきたや楽器店
12 原告 株式会社旭堂楽器店
13 原告 株式会社アダチ音研
14 原告 株式会社厚木楽器
15 原告 株式会社アツタ
16 原告 あぽろん株式会社
17 原告 株式会社有明楽器
18 原告 株式会社アルペジオ楽器
19 原告 株式会社イー・エス・ピー
20 原告 有限会社飯国ピアノセンター
21 原告 いけぶくろ楽器株式会社
22 原告 株式会社イケダ光音堂
23 原告 株式会社石岡楽器
24 原告 有限会社イシイ楽器
25 原告 有限会社イシオカ楽器
26 原告 株式会社イシカワ
27 原告 X1
28 原告 株式会社伊藤楽器
29 原告 株式会社イトオ楽器店
30 原告 有限会社井上楽器店
31 原告 株式会社井村
32 原告 有限会社岩根楽器店
33 原告 有限会社ウィングスミュージック
34 原告 株式会社上野楽器
35 原告 株式会社うつのみや
36 原告 株式会社エイト楽器
37 原告 エークラスミュージック株式会社
38 原告 株式会社エヌ・エス・エス
39 原告 X2
40 原告 株式会社エルム楽器
41 原告 株式会社オアシス楽器店
42 原告 大森楽器株式会社
43 原告 株式会社大村楽器店
44 原告 株式会社大阪屋
45 原告 株式会社大道時計楽器店
46 原告 有限会社大川楽器店
47 原告 株式会社岡楽器店
48 原告 株式会社岡定楽器店
49 原告 株式会社オクムラ楽器
50 原告 株式会社オクターヴ
51 原告 株式会社オグチ楽器
52 原告 合資会社小椋商会
53 原告 株式会社帯広旭楽器商会
54 原告 株式会社小宅楽器
55 原告 株式会社オリエント楽器
56 原告 株式会社オワリヤ楽器
57 原告 有限会社尾張屋時計店
58 原告 X3
59 原告 株式会社音教楽器店
60 原告 有限会社オンダ楽器
61 原告 有限会社甲斐楽器
62 原告 有限会社鹿児島音楽教室
63 原告 有限会社柏屋楽器
64 原告 有限会社カジタ楽器店
65 原告 株式会社楽器の店カネキ
66 原告 楽器晴海堂株式会社
67 原告 株式会社川上楽器店
68 原告 有限会社川上商会
69 原告 株式会社煥乎堂
70 原告 株式会社キクヤ楽器店
71 原告 有限会社北上正時堂
72 原告 株式会社キノシタ楽器
73 原告 株式会社木下楽器
74 原告 株式会社木下楽器店
75 原告 株式会社キハラ楽器
76 原告 協葉ピアノ株式会社
77 原告 株式会社キワヤ商会
78 原告 株式会社銀座十字屋
79 原告 株式会社ギンゲツ楽器
80 原告 株式会社クシダエンタプライズ
82 原告 X4
83 原告 栗原楽器株式会社
84 原告 株式会社グルーヴィン
85 原告 有限会社暮田商会
86 原告 株式会社黒崎楽器
87 原告 X5
88 原告 京浜楽器株式会社
89 原告 株式会社現代ギター社
90 原告 コウキ商事株式会社
91 原告 有限会社高知楽器
92 原告 有限会社コサカ楽器
93 原告 株式会社コダマ楽器
94 原告 株式会社こだま楽器
95 原告 株式会社小成
96 原告 株式会社レゼル
97 原告 株式会社コマキ楽器
98 原告 株式会社サカエ楽器
99 原告 相模楽器株式会社
100 原告 株式会社サクライ楽器
101 原告 X6
102 原告 合資会社佐々木時計楽器店
103 原告 株式会社さしかわ
104 原告 株式会社サトー
105 原告 株式会社佐藤商会
106 原告 株式会社さわ楽器
107 原告 株式会社沢田楽器
108 原告 株式会社三立
109 原告 株式会社山響楽器店
110 原告 株式会社山陽こだま楽器
111 原告 株式会社シノダ楽器
112 原告 株式会社島津
113 原告 株式会社下倉楽器
114 原告 X7
115 原告 株式会社十字屋
116 原告 株式会社JEUGIA
117 原告 株式会社十字屋
118 原告 株式会社松栄堂楽器
119 原告 株式会社正時堂
120 原告 株式会社松栄楽器
121 原告 株式会社昭和楽器
122 原告 昭和堂楽器株式会社
123 原告 株式会社進駸堂楽器
124 原告 新響株式会社
125 原告 新日本ミュージック株式会社
126 原告 真和楽器株式会社
127 原告 株式会社菅野時計店
128 原告 株式会社須賀楽器
129 原告 株式会社スガワラ
131 原告 菅波楽器株式会社
132 原告 株式会社スズキ楽器
133 原告 鈴木楽器株式会社
134 原告 スター楽器株式会社
135 原告 すみやグッディ株式会社
136 原告 セイワ楽器株式会社
137 原告 有限会社誠音堂楽器店
138 原告 有限会社精琴堂楽器店
139 原告 関山楽器株式会社
141 原告 株式会社第一楽器
142 原告 大東楽器株式会社
143 原告 株式会社ダク
144 原告 タケダ楽器株式会社
145 原告 株式会社田澤
146 原告 有限会社タナカピアノ
147 原告 株式会社谷田楽器店
148 原告 株式会社玉田ピアノ商会
149 原告 株式会社丹澤楽器店
150 原告 株式会社中国楽器
151 原告 株式会社塚本楽器
152 原告 株式会社ツルタ楽器
153 原告 鶴岡楽器株式会社
154 原告 株式会社東山堂
155 原告 株式会社東音楽器
156 原告 株式会社東京堂
157 原告 トーオー楽器株式会社
158 原告 株式会社富岡本店
159 原告 有限会社トミヤ楽器店
160 原告 株式会社トリイ
161 原告 内藤楽器株式会社
162 原告 株式会社中村書店
163 原告 株式会社長井理研
164 原告 株式会社行木堂
165 原告 株式会社新堀ギターアカデミー
166 原告 株式会社西村楽器
167 原告 日響楽器株式会社
169 原告 株式会社日本屋楽器
170 原告 日本ピアノホールディング株式会社
171 原告 株式会社ニュースター楽器
172 原告 株式会社のりき楽器
173 原告 株式会社ハセガワ楽器
174 原告 ハセガワ楽器有限会社
175 原告 有限会社長谷川楽器店
176 原告 有限会社白光堂楽器店
177 原告 株式会社花井商会
178 原告 有限会社パナムジカ
179 原告 株式会社ハマヤ
180 原告 株式会社ハモンド・スズキ
181 原告 株式会社坂野楽器
182 原告 有限会社ピアノプラザ
183 原告 株式会社ビート楽器
184 原告 株式会社ヒオキ楽器
185 原告 株式会社兵藤楽器店
186 原告 株式会社フカノ楽器店
187 原告 株式会社福助屋商店
188 原告 株式会社福田
189 原告 二葉商事株式会社
190 原告 有限会社フミヤ楽器
191 旧商号プラスアド株式会社 原告 Piascore株式会社
192 原告 X8
193 原告 株式会社フレンド楽器
194 原告 株式会社文化堂
195 原告 株式会社文化堂
196 原告 文教楽器株式会社
197 原告 株式会社文化堂楽器
198 原告 株式会社北勢堂
199 原告 株式会社北陸楽器
200 原告 星川楽器株式会社
201 原告 株式会社ホックミュージックグループ
202 原告 株式会社北海道教育楽器
203 原告 北海道テクニカルシステムエンジニア株式会社
204 原告 有限会社ホリエ
205 原告 株式会社マスハラ楽器
206 原告 株式会社マツイシ楽器店
207 原告 株式会社松木屋
208 原告 有限会社マツヤマ楽器
209 原告 株式会社マナブミュージック
210 原告 株式会社丸石楽器店
211 原告 株式会社マルシン
212 原告 丸一商店株式会社
213 原告 有限会社丸越楽器
214 原告 三木楽器株式会社
215 原告 有限会社ミヤコ楽器店
216 原告 有限会社宮内オリエント商会
217 原告 有限会社宮崎ピアノ技術センター
218 原告 株式会社ミューズポート
219 原告 株式会社ミュージックストアナガト
220 原告 株式会社ミュージックプラザオグチ
221 原告 有限会社ミュージックハウス小川
222 原告 株式会社グランドミック
223 原告 株式会社ミリオン楽器
224 原告 株式会社ムラコシ楽器店
225 原告 有限会社もちづき楽器
226 原告 株式会社八重洲ピアノ社
227 原告 株式会社矢木楽器店
228 原告 株式会社ヤマハミュージックリテイリング
229 原告 合資会社山西楽器店
230 原告 有限会社山屋楽器
231 原告 有限会社ユー・ワンミュージック
232 原告 株式会社横浜日本屋樂器
233 原告 有限会社横浜屋
234 原告 有限会社吉岡楽器店
235 原告 有限会社吉松楽器店
236 原告 X9
237 原告 有限会社よしや商事
238 原告 株式会社ヨネザワ楽器
239 原告 有限会社米山楽器店
240 原告 ヨモギヤ楽器株式会社
241 原告 有限会社ロータリー楽器
242 原告 ローレンスMUSIC株式会社
243 原告 ロマン楽器株式会社
244 原告 株式会社WRLD
245 原告 株式会社若林楽器店
246 原告 株式会社わたじん
247 原告 株式会社ワタナベ楽器店
248 原告 株式会社ワタナベ楽器店
249 原告 株式会社ワタナベミュージックラボ
250 原告 Y1
251 原告 Y2
252 原告 株式会社アオイ楽器店
253 原告 株式会社コンドー楽器
原告ら訴訟代理人弁護士 青木一男
同 関根修一
同 田中成志
同 平出貴和
同 板井典子
同 山田徹
同 澤井彬子
同 沖達也
上記原告一般財団法人ヤマハ音楽振興会、同株式会社河合楽器製作所、同株式会社開進堂楽器、同島村楽器株式会社、同株式会社宮地商会、同株式会社山野楽器、同株式会社伊藤楽器、同株式会社エルム楽器、同株式会社サクライ楽器、同株式会社JEUGIA、同新響株式会社、同菅波楽器株式会社、同大東楽器株式会社、同三木楽器株式会社、同株式会社ヤマハミュージックリテイリング、同Y1及び同Y2訴訟代理人弁護士 三村量一
同訴訟復代理人弁護士 野瀬健悟
被告 一般社団法人日本音楽著作権協会
同訴訟代理人弁護士 田中豊
同 中野雅也
同 堀井敬一
同 小川まゆみ
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/