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【事件名】ビジュアル・アイデンティティ制作事件 【年月日】令和2年1月27日 大阪地裁 平成29年(ワ)第12572号 著作権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結日 令和元年10月28日) 判決 原告 株式会社仮説創造研究所 同訴訟代理人弁護士 坂元英峰 同 千葉直愛 同 根來伸旭 同 田ノ内宏平 同訴訟復代理人弁護士 新留治 株式会社播磨喜水訴訟承継人兼株式会社ナカシマエナジー訴訟承継人 被告 株式会社ナカシマ 同訴訟代理人弁護士 岩波修 同 安部雅俊 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 パッケージデザイン関係 (1)被告は、原告に対し、1260万1440円及びこれに対する平成30年12月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2)被告は、別紙原告制作物目録記載1−1〜1−6の商品パッケージを使用してはならない。 (3)被告は、頒布済みの別紙原告制作物目録記載1−1〜1−6の各制作物についての電子ファイルを回収、廃棄せよ。 2 播磨喜水関連制作物関係 (1)被告は、別紙被告制作物目録記載2のチラシ、同3の商品カタログ及び同4のシェフコラボレシピブックを頒布してはならない。 (2)被告は、別紙被告制作物目録記載5の店頭POPを展示してはならない。 (3)被告は、別紙被告制作物目録記載1のホームページを削除せよ。 (4)被告は、頒布済みの別紙被告制作物目録記載2のチラシ、同3の商品カタログ及び同4のシェフコラボレシピブックを回収せよ。 (5)被告は、別紙被告制作物目録記載2のチラシ、同3の商品カタログ、同4のシェフコラボレシピブック及び同5の店頭POPを廃棄せよ。 (6)被告は、原告に対し、628万0800円及びこれに対する平成30年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (7)被告は、原告に対し、平成29年11月1日から別紙被告制作物目録記載1のホームページを削除するまで月額32万4000円の金員を支払え。 3 ナカシマ関連制作物関係 (1)被告は、別紙被告制作物目録記載6のコーポレートシンボル、同7の事業領域図、同8の椅子用カバー、同9のリクルート用パンフレット及び同10のポスターパネルを使用してはならない。 (2)被告は、別紙被告制作物目録記載9のリクルート用パンフレットを頒布してはならない。 (3)被告は、頒布済みの別紙被告制作物目録記載9のリクルート用パンフレットを回収せよ。 (4)被告は、別紙被告制作物目録記載8の椅子用カバー、同9のリクルート用パンフレット及び同10のポスターパネルを廃棄せよ。 (5)被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する平成30年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、ビジュアル・アイデンティティ(以下「VI」という。)の制作等を目的とする株式会社である原告が、被告並びに被告が後に吸収合併してその権利義務を承継した株式会社ナカシマエナジー(以下「ナカシマエナジー」という。)及び株式会社播磨喜水(以下「播磨喜水」という。)からの依頼を受けて制作、納品した制作物に関して、被告に対し、以下の各請求をする事案である。 (1)別紙原告制作物目録記載1−1〜1−6の各パッケージデザイン(以下、目録記載の番号順に「原告パッケージデザイン1−1」などといい、これらのパッケージデザインを併せて「原告各パッケージデザイン」という。)に関する請求 ア 未払報酬支払請求(前記第1の1(1)) 原告は、播磨喜水からの依頼を受けて制作、納品した原告各パッケージデザインに係る報酬につき、合計1260万1440円(原告パッケージデザイン1−1及び1−2につき405万8000円、同1−3及び1−4につき187万円、同1−5につき326万6000円、同1−6及び1−7につき247万4000円、これらに対する消費税(8%)合計93万3440円)の未払報酬があるとして、播磨喜水を吸収合併した被告に対し、主位的にはデザイン業務委託契約に基づき、予備的には商法512条に基づき、未払報酬合計1260万1440円及びこれに対する平成30年12月28日(訴えの変更申立書送達日の翌日)から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を請求する。 イ 差止等請求(前記第1の1(2)及び(3)) 原告は、播磨喜水及び原告・播磨喜水間の原告各パッケージデザインに係る業務委託契約に基づく播磨喜水の債務を引き受けたナカシマエナジーが原告に前記アの未払報酬を支払うことなく原告各パッケージデザインを利用し続けると明言したことは、上記業務委託契約の違反行為に当たるとして、播磨喜水及びナカシマエナジーを吸収合併した被告に対し、原告各パッケージデザインの使用の差止め及び頒布済みの原告各パッケージデザインに係る電子ファイルの廃棄等を請求する。 (2)別紙対照表1〜5記載の原告の制作物(以下、対照表記載の番号順に「原告制作物1」などといい、これらを併せて「播磨喜水関連原告制作物」ということがある。)に係る請求 原告は、別紙対照表1〜5記載の播磨喜水の制作物(以下、対照表記載の番号順に「被告制作物1」などといい、これらを併せて「播磨喜水関連被告制作物」ということがある。)を制作等した播磨喜水の行為が、播磨喜水関連原告制作物に係る原告の著作権(複製権等)を侵害するとして、被告に対し、以下の各請求をする。 なお、被告制作物1は別紙被告制作物目録2記載のチラシに、被告制作物2は同4のシェフコラボレシピブックに、被告制作物3は同1のホームページに、被告制作物4は同3の商品カタログに掲載されている写真、被告制作物5は同5の店頭POPに各相当する。ア 差止請求(前記第1の2(1)及び(2)) 原告制作物1、2、4、5に係る著作権に基づく被告制作物1、2、4、5についての頒布等の差止請求(著作権法112条1項) イ 廃棄等請求(前記第1の2(3)〜(5)) 原告制作物1〜5に係る著作権に基づく被告制作物1〜5についての廃棄等請求(同条2項) ウ 損害賠償請求1(前記第1の2(6)) 原告制作物1、2、4及び5に係る著作権侵害の不法行為(民法709条、著作権法114条3項)に基づく損害賠償金628万0800円及びこれに対する不法行為後の日である平成30年1月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求 エ 損害賠償請求2(前記第1の2(7)) 原告制作物3に係る著作権侵害の不法行為(民法709条、著作権法114条3項)に基づく平成29年11月1日から被告制作物1であるホームページの削除が完了するまで月額32万4000円の損害賠償金の支払請求 (3)別紙対照表6〜11記載の原告の制作物(以下、対照表の番号順に「原告制作物6」などという。)及び動画(以下「原告制作物12」という。また、これと原告制作物6〜11を併せて「ナカシマ関連原告制作物」ということがある。)に係る請求 原告は、別紙対照表6〜11記載の被告の制作物(以下、対照表の番号順に「被告制作物6」などという。)及び動画(以下「被告制作物12」という。また、これと被告制作物6〜11を併せて「ナカシマ関連被告制作物」ということがある。)を制作等した被告の行為が、ナカシマ関連原告制作物に係る原告の著作権(複製権等)を侵害するとして、被告に対し、以下の各請求をする。 なお、被告制作物6のうち、後記2(3)ウ(ア)bの被告制作物6−1は別紙被告制作物目録記載6のコーポレートシンボルマークに、被告制作物6−2は同9のリクルート用パンフレットに掲載されているコーポレートシンボルマークに、被告制作物7は同7の事業領域図が掲載されているロールタイプポスターに、被告制作物8は同9のリクルート用パンフレットに掲載されている事業領域図、写真及び文章を組み合わせたものに、被告制作物9は同10のポスターパネルの写真に、被告制作物10のうち、後記2(3)ウ(オ)bの被告制作物10−2は同8の椅子用カバーに、各相当する。 ア 差止請求(前記第1の3(1)及び(2)) 原告制作物6〜10に係る著作権に基づく被告制作物6〜10についての使用等の差止請求(著作権法112条1項) イ 廃棄等請求(前記第1の3(3)及び(4)) 原告制作物8〜10に係る著作権に基づく被告制作物6、8〜10についての廃棄等請求(同条2項) ウ 損害賠償請求(前記第1の3(5)) 原告制作物6〜12に係る著作権侵害の不法行為(民法709条、著作権法114条3項)に基づく損害賠償金1100万円及びこれに対する不法行為後の日である平成30年1月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求 2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、本判決において書証を掲記する際には、枝番号の全てを含むときはその記載を省略することがある。) (1)当事者等 ア 原告は、VI(企業や商品のイメージを統一して、字体、色及びマークなどの視覚的なものによって、そのイメージを統一し、もって、企業や商品に対する認知度や好感度を高め、他企業との差別化を図るもの)の制作等を目的とする株式会社である。 イ 被告は、社会インフラ関連の商品販売等を目的とする株式会社であり、P1が代表取締役を務めている。 ナカシマエナジーは、各種エネルギー資源の供給等を目的とする株式会社であり、播磨喜水は、平成27年2月3日に設立された手延べ麺の製造、販売等を目的とする株式会社であって、P1が両社の代表取締役を務めていた。被告、ナカシマエナジー及び播磨喜水は、平成30年9月30日、被告を存続会社、ナカシマエナジー及び播磨喜水を消滅会社とする吸収合併を行い、被告がナカシマエナジー及び播磨喜水の権利義務を承継した。 (2)原告とナカシマエナジー及び播磨喜水間の取引 ア 原告等とナカシマエナジーとの間のブランドコンサルティング契約 原告及び株式会社エフプロモーション(以下「エフプロモーション」という。)は、平成26年11月25日、ナカシマエナジーとの間で、同日付け業務委託契約書(以下「播磨喜水関連契約書1」という。甲5の1)を取り交わして、月額30万円(契約開始月から3か月間は月額10万円)の報酬で、同社が設立する素麺ブランドの新会社(播磨喜水)のブランドコンサルティングを行うことを内容とする業務委託契約(以下「播磨喜水関連業務委託契約1」という。)を締結した。 イ 原告とナカシマエナジーとの間のVI一式の制作等に関する業務委託契約 原告は、平成26年11月25日、ナカシマエナジーとの間で、同日付け業務委託契約書(以下「播磨喜水関連契約書2」という。)を取り交わして、ナカシマエナジーから、1000万円の報酬で、ナカシマエナジーの「素麺のブランディングに関する、企画及びデザイン制作業務」を行うことを内容とする業務委託契約(以下「播磨喜水関連業務委託契約2」という。)を締結した。 ウ 原告による播磨喜水関連原告制作物の制作及び播磨喜水による播磨喜水関連被告制作物の制作 以下のとおり、原告は、播磨喜水関連原告制作物を制作して播磨喜水に納品し、また、播磨喜水は、播磨喜水関連被告制作物を制作した。 (ア)原告制作物1関係 原告は、平成28年6月頃、播磨喜水との制作委託契約に基づき、レシピブック「KISSUI播磨喜水2016SUMMER」(以下「原告レシピブック1」という。)を制作し、播磨喜水に納品した。原告レシピブック1には、別紙対照表1の「●オリジナル画像」及び「●2016レシピブック入稿データ」のとおり、レシピ写真である原告制作物1が掲載されている。 播磨喜水は、平成29年6月頃、別紙対照表1の「●無断使用例」のとおり、原告制作物1を使用したお中元用チラシである被告制作物1を制作し、その画像をフェイスブック及び自社ウェブサイト上にアップロードした。 (イ)原告制作物2関係 原告は、平成29年4月頃、播磨喜水との制作委託契約に基づき、別紙対照表2の「●オリジナルブック」、「●オリジナルブック表紙」、「●コラボレシピブック入稿データ」及び「●オリジナルブックイントロページ」のとおり構成されるレシピブック「HARIMAKISSUIBOOK」(以下「原告レシピブック2」という。)である原告制作物2を制作し、播磨喜水に納品した。 播磨喜水は、同年10月頃、別紙対照表2の「●無断使用例」、「●著作権侵害例@表紙デザイン」、「著作権侵害例A料理写真レイアウト」及び「著作権侵害例_イントロページ」のとおり構成されるレシピブックである被告制作物2を制作し、頒布した。 (ウ)原告制作物3関係 原告は、平成27年12月以降、播磨喜水から、同社のウェブサイトの制作、管理、更新業務を委託され、当該委託契約に基づき、別紙対照表3の「●当社で制作したサイトページ(トップページ)」、「●当社で制作したバナー」、「●当社で制作したサイトページ(KISSUI_LABO)」、「●当社で制作したサイトページ(ご注文について)」、「当社で制作したサイトページ(播磨喜水_白)」、「当社で制作したサイトページ(包装・のしについて)」のとおり構成されるウェブサイトである原告制作物3を制作した。原告及び播磨喜水間の上記委託契約は、平成29年10月31日をもって終了した。 播磨喜水は、同年11月頃、別紙対照表3の「●無断使用例」、「●無断使用」のとおり構成されるウェブサイトである被告制作物3を制作し、同月1日以降、自らのウェブサイトとして公開している。 (エ)原告制作物4関係 原告は、平成29年4月頃、播磨喜水との制作委託契約に基づき、A5サイズの商品カタログ(以下「原告カタログ1」という。)を制作し、播磨喜水に納品した。原告カタログ1には、別紙対照表4の「●当社で制作したカタログ」の「カタログに使用された画像」のとおり、素麺のパッケージを並べた写真である「●当社で制作した商品画像」すなわち原告制作物4が掲載されている。 播磨喜水は、平成29年頃、商品カタログ(以下「被告カタログ1」という。)を制作した。被告カタログ1には、別紙対照表4の「●無断使用例」のとおり、素麺のパッケージを並べた写真である被告制作物4が掲載されている。また、播磨喜水は、同年11月以降、同社のウェブサイトにおいて、別紙対照表4の「●無断使用例(ウェブサイト)」のとおり、被告制作物4を掲載している。 (オ)原告制作物5関係 a 原告は、平成27年10月頃、播磨喜水との制作委託契約に基づき、同社の姫路店店頭用POP(以下「原告POP」という。)を制作し、播磨喜水に納品した。原告POPには、原告制作物5のうち、別紙対照表5の「●ポップデザイン例」のとおり構成される写真及び文章(以下「原告制作物5−1」という。)が掲載されている。 また、原告は、同年11月頃、播磨喜水との制作委託契約に基づき、A4サイズの商品カタログ(以下「原告カタログ2」という。)を制作し、播磨喜水に納品した。原告カタログ2には、原告制作物5のうち、別紙対照表5の「●商品カタログ」、「●カタログのページ全体」、「●当社で制作したカタログのアップ(播磨喜水_白)」、「●当社で制作したカタログのアップ_(播磨喜水_黒)」、「●当社で制作したカタログのアップ_(播磨喜水_赤)」のとおり構成される写真及び文章(以下「原告制作物5−2」という。)が掲載されている。 b 播磨喜水は、平成29年頃、別紙対照表5の「●無断使用例(セトレ)」、「●無断使用例(ホテルプラダ)」、「●無断使用例(神戸みなと温泉蓮)」のとおり、原告制作物5−1及び5−2の写真及び文章を組み合わせて使用したPOPである被告制作物5を制作し、姫路店以外の店舗に陳列した。 (3)原告・被告間の取引 ア 原告と被告との間のブランドコンサルティングに係る業務委託について 原告と被告は、播磨喜水関連契約書1と同趣旨のブランドコンサルティングに係る業務委託契約書を取り交わしていない。 しかし、原告は、平成28年2月3日以降、被告に対し、月額15万円の支払を請求し、被告は、同年3月から平成29年9月までの間、原告に対し、当該請求に応じて「コンサルティング料」名目で月額15万円を支払った。 なお、原告と被告との間における、播磨喜水関連業務委託契約1と同趣旨のコンサルティング契約(以下「ナカシマ関連業務委託契約1」という。)の成否については、当事者間に争いがある。 イ 原告と被告との間のVI一式の制作等に関する業務委託契約 原告は、平成28年2月3日、被告との間で、同日付け業務委託契約書(以下「ナカシマ関連契約書」という。)を取り交わして、1000万円の報酬で、被告の「コーポレートアイデンティティにおけるVIデザインの企画及びデザイン制作業務」を行うことを内容とする業務委託契約(以下「ナカシマ関連業務委託契約2」という。)を締結した。 ウ 原告によるナカシマ関連原告制作物の制作及び被告によるナカシマ関連被告制作物の制作 以下のとおり、原告は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、ナカシマ関連原告制作物を制作して被告に納品し、また、被告は、ナカシマ関連被告制作物を制作した。 (ア)原告制作物6関係 a 原告は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、別紙対照表6の「●コーポレートシンボル」のとおり構成されるコーポレートシンボルである原告制作物6を制作し、被告に納品した。 b 被告は、遅くとも平成29年7月頃、別紙対照表6の「●著作物侵害例/NWAVEロゴタイプ」及び「●著作物侵害例/N-WAVEホームページ」のとおり、原告制作物6を利用して、ロゴマーク(以下「被告制作物6−1」という。)を制作し、その事業に係る営業ツールやウェブサイト等で使用した。 また、被告は、平成28年12月頃〜平成29年3月頃、リクルート用の会社案内パンフレット(以下「被告パンフレット」という。)を制作し、使用した。被告パンフレットの表紙には、別紙対照表6の「●著作物侵害例/リクルート用会社案内パンフレット表紙」のとおり、原告制作物6を利用して制作されたロゴマーク(以下「被告制作物6−2」という。)が掲載されている。 (イ)原告制作物7関係 原告は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、被告の会社案内(以下「原告制作会社案内」という。)を制作し、被告に納品した。原告制作会社案内には、別紙対照表7の「●会社案内事業領域図」のとおり構成される事業領域図である原告制作物7が掲載されている。 被告は、遅くとも平成29年7月頃、ロールタイプポスター(以下「被告ポスター1」という。)を制作し、使用した。被告ポスター1には、別紙対照表7の「●無断使用例ロールタイプポスター」のとおり、原告制作物7を使用した被告制作物7が掲載されている。 (ウ)原告制作物8関係 原告制作会社案内には、別紙対照表8の「●当社で制作した会社案内パンフレット」のとおり、事業領域図である原告制作物7に加え、写真及び被告の3つの事業領域に関する文章を組み合わせた原告制作物8が掲載されている。 被告パンフレットには、別紙対照表8の「●著作物侵害例/リクルート用会社案内パンフレット」のとおり、原告制作物8を使用した被告制作物8が掲載されている。 (エ)原告制作物9 a 原告は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、平成28年2月頃、原告制作物9のうち、別紙対照表9の「●ナカシマ日経新聞全15段広告」のとおり、「ナカシマの事業領域」と題する事業領域図のプロトタイプ(以下「原告制作物9−1」という。)及び「ナカシマの新規事業『播磨喜水』」と題する写真及び文章(以下「原告制作物9−2」という。)を制作し、被告に納品した。被告は、その頃、原告の許諾を得て、これらを日本経済新聞の15段広告に使用した。 b 被告は、その頃、原告の許諾を得ることなく、上記広告の画像データ及び掲載された上記広告の写真である被告制作物9を自社のウェブサイト及びフェイスブックにアップロードした。 (オ)原告制作物10 a 原告制作会社案内には、別紙対照表10の「●当社オリジナル写真」のとおり、原告が撮影した海の写真である原告制作物10が掲載されている。 b 被告は、遅くとも平成29年3月頃、被告制作物10のうち、別紙対照表10の「●無断使用例椅子カバー」のとおり、椅子用カバー(以下「被告制作物10−1」という。)を制作した。被告制作物10−1には、原告制作物10が複製されている。 また、被告は、その頃、ロールポスター(以下「被告ポスター2」という。)を制作した。被告ポスター2には、別紙対照表10の「●無断使用例ロールタイプポスター」のとおり、原告制作物10が複製されている(被告ポスター2の当該部分を「被告制作物10−2」という。)。 (カ)原告制作物11 原告は、平成28年11月頃、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、原告制作物6、写真及び文章を掲載したポスターである原告制作物11を制作した。 被告ポスター2は、ロールタイプのポスター(以下「被告制作物11」という。)であるところ、被告制作物11は、別紙対照表11の「●無断使用例ロールタイプポスター」のとおり、原告制作物6、写真及び文章が改変されずに掲載されている。 (キ)原告制作物12 原告は、平成28年2月頃、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、コーポレート・アイデンティティ(以下「CI」という。)の社内発表用の映像(以下「原告制作物12」という。)を制作し、被告に納品した。 被告は、その後、原告の許諾を得ることなく、自社のウェブサイト及び動画共有サイトに、原告制作物12を改変することなくアップロードした(以下、アップロードされたものを「被告制作物12」という。)。 (4)原告各パッケージデザインに関する取引 ア 原告パッケージデザイン1−1及び1−2 原告は、平成27年8月頃、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−1及び1−2の制作を委託され、同年9月頃、これらを納品した。播磨喜水は、同月30日、その報酬として、140万円及びこれに対する消費税を支払った。 その後、播磨喜水が原告パッケージデザイン1−1を追加で1万個印刷したことから、原告は、播磨喜水に対し、その報酬として、70万円及びこれに対する消費税の支払を求めた。被告は、令和元年10月16日、原告に対し、上記報酬及び消費税を支払った。 イ 原告パッケージデザイン1−3及び1−4 原告は、平成27年10月頃、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−3及び1−4の制作を委託され、これらを納品した。播磨喜水は、その報酬として、原告に対し、100万円及びこれに対する消費税を支払った。 ウ 原告パッケージデザイン1−5 原告は、同年11月頃、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−5の制作を委託され、同年12月3日、これを納品した。播磨喜水は、その報酬として、1万円及びこれに対する消費税を支払った。 エ 原告パッケージデザイン1−6 原告は、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−6の制作を委託され、これらを納品したことから、播磨喜水に対し、その報酬として、15万円及びこれに対する消費税の支払を求めた。これに対し、ナカシマは、令和元年10月16日、原告に対し、その報酬として、15万円及びこれに対する消費税を支払った。 3 争点 (1)播磨喜水関連原告制作物に係る請求関係(争点1) ア 請求原因(争点1−1) イ 抗弁1(譲渡又は利用許諾。争点1−2) ウ 抗弁2(権利の濫用。争点1−3) (2)ナカシマ関連原告制作物に係る請求関係(争点2) ア 請求原因(争点2−1) イ 抗弁1(譲渡又は利用許諾。争点2−2) ウ 抗弁2(権利の濫用。争点2−3) (3)原告各パッケージデザインに係る請求関係(争点3) ア 原告と播磨喜水との合意内容(争点3−1) イ 商法512条の適用の有無(争点3−2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1−1(請求原因) (原告の主張) 別紙「争点1−1に関する当事者の主張」の「原告の主張」欄記載のとおりである。 また、原告には、弁護士費用相当額として、60万円の損害が生じている。 (被告の主張) 別紙「争点1−1に関する当事者の主張」の「被告の主張」欄記載のとおりである。 弁護士費用相当損害額については、争う。 2 争点1−2(譲渡又は利用許諾) (被告の主張) (1)播磨喜水関連原告制作物が、播磨喜水関連契約書2に列挙された成果物に含まれないことに鑑みると、播磨喜水関連原告制作物については、播磨喜水関連契約書2の規定は適用されない。また、原告と播磨喜水との間に、播磨喜水関連原告制作物の利用態様を制限する合意はない。 播磨喜水は、原告に対し、自身の商品の宣伝広告、販促物、広報資料として播磨喜水関連原告制作物の制作を委託したことに鑑みると、同社が播磨喜水関連原告制作物のデザインを宣伝広告、販促物、広報資料として複製、利用することは、同社のみならず原告も当然の前提としていた。その際の複製又は利用態様につき制限を課すような合意もない。 また、播磨喜水は、原告に対し、播磨喜水関連原告制作物の制作の対価として相当な金額を支払っている。しかも、播磨喜水関連原告制作物に関するデザイン制作委託契約においては、納品後の播磨喜水による追加印刷及び利用に係る追加料金の支払に関する合意はない。他方で、原告各パッケージデザインのデザイン制作委託契約については、原告と播磨喜水とは、そのような場合における個数に応じた追加料金の支払を合意している。 さらに、デザインの制作委託契約においては、当該デザインが注文者の事業により継続して使用されることが想定されており、かつ、注文者が請負人に対し当該デザイン制作の相当の対価を支払っている場合は、仮に注文者による明示的な利用許諾がなくとも、契約の趣旨、目的に照らし、注文者により想定されている事業での使用については、請負人から注文者に対する黙示の無償での利用許諾が認められるものと考えられている。 以上の事情を踏まえると、原告と播磨喜水との間には、播磨喜水関連原告制作物に関するデザイン制作委託契約において、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権につき、原告から播磨喜水に対する譲渡の合意、又は、播磨喜水が、播磨喜水関連原告制作物を、自身の商品の宣伝広告、販促物又は広報資料として複製、利用することにつき、これに必要な範囲での利用を許諾する旨の合意が黙示的に存在する。 ここで、播磨喜水関連原告制作物を構成する播磨喜水の商品の画像及び説明、当該商品を使用した料理の画像及びレシピ説明等を複製ないし改変して、自社商品のカタログ等の宣伝広告等に使用することは、一般の事業者による宣伝広告等として通常想定される範囲内であるし、その画像等を自社ウェブサイト等にアップロードする行為も同様である。 したがって、本件において、播磨喜水関連原告制作物のいずれについても仮に著作物性が認められたとしても、播磨喜水によるその利用すなわち播磨喜水関連被告制作物の制作は、いずれも、播磨喜水の著作権の行使として、又は原告による許諾の範囲内の行為として、許容される。 (2)原告が指摘する播磨喜水の言動は、原告がブランディングの名目で、デザイン制作物の利用だけでなく、播磨喜水等の営業方針等についてまで逐一事前相談を要求してくることに辟易としていたことの表れであって、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権を利用することについて、原告から個別に許諾を得る必要があったことを裏付けるものではない。 (原告の主張) 否認する。 播磨喜水関連原告制作物については、基本契約としての性格を持つ播磨喜水関連契約書2の規定が適用される。したがって、播磨喜水関連原告制作物の著作権は原告が有するとともに、播磨喜水は、原告から利用許諾を受けなければ、播磨喜水関連原告制作物を、納品された物とは違う形で利用することができない。このことは、播磨喜水関連業務委託契約1及び2の締結に際し、原告からナカシマエナジーに対して説明をし、同社はこれを了承したこと、播磨喜水が、原告に対し、播磨喜水関連原告制作物の利用に際して事前に許諾を得ようとしていたことから明らかである。 すなわち、原告と播磨喜水との間で、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権の譲渡ないし利用許諾の黙示の合意はない。 3 争点1−3(権利の濫用) (被告の主張) 播磨喜水は、原告に対し、播磨喜水関連原告制作物の制作の対価として、相当な金額を支払った上で、本来の用途に従い、自身の宣伝広告、販促、広報活動において、一般的に想定される利用態様の範囲内で、播磨喜水関連原告制作物を利用している。これが制約されることにより、播磨喜水の事業活動には著しい支障を来すことになる。他方、播磨喜水による宣伝広告等の利用行為は、原告の利益を不当に害するものではない。にもかかわらず、原告の損害賠償請求が認められるならば、原告は、播磨喜水との契約に基づき定めた委託料以上の対価を不当に取得することになる。 これらの点に鑑みると、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権侵害があることを前提とした原告の請求は、権利濫用である。 (原告の主張) 播磨喜水が、原告に対し、播磨喜水関連原告制作物に関して支払った費用は、制作費用の対価としての趣旨であり、著作権譲渡又は利用許諾の対価としての趣旨は含まれない。 また、播磨喜水による著作権侵害行為は、多数回にわたり、これによる損害額も甚大である。 これらの点に鑑みると、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権侵害があることを前提とした請求は権利濫用に当たらない。 4 争点2−1(請求原因) (原告の主張) 別紙「争点2−1に関する当事者の主張」の「原告の主張」欄記載のとおりである。 また、原告には、弁護士費用相当額として、100万円の損害が生じている。 (被告の主張) 別紙「争点2−1に関する当事者の主張」の「被告の主張」欄記載のとおりである。 弁護士費用相当損害額については、争う。 5 争点2−2(利用許諾) (被告の主張) ナカシマ関連業務委託契約2において、当該契約に基づき原告が制作した成果物の著作権は原告が取得することとされているのに対し、被告によるその利用については、明示的な定めはない。もっとも、ナカシマ関連業務委託契約2は、被告が、自身を表示する識別標章の制作を委託したものであり、その成果物である原告制作物6は、被告の識別標章である。そうである以上、被告が、これを自身の事業活動(宣伝広告、販促、広報活動を含むが、これらに限られない。)のために複製し利用することは、当該契約において当然の前提とされていた。 また、被告は、ナカシマ関連原告制作物の制作につき、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき相当な対価を支払っているところ、その他に、原告と被告との間で、その複製、改変又は利用に関する追加支払の合意はない。 このような事情に照らせば、ナカシマ関連業務委託契約2においては、その成果物であるナカシマ関連原告制作物につき、被告が、これを自身の事業活動において通常想定される範囲内で複製、改変又は利用することにつき、原告がこれを許諾する旨の合意が黙示的に存在する。 さらに、会社の識別標章を各種宣伝広告、販促物、広報資料等に表示するに当たり、その媒体の種類、性質、サイズ、色彩等の違いに応じて、表示する当該識別標章のサイズ、色彩等を改変することは一般的に行われており、また、媒体や内容に応じて、付記表示の有無及びこれを構成するロゴ、マーク、文章等をその都度変えることも、一般的に行われている。 ナカシマ関連被告制作物は、いずれも、その使用態様等に鑑みると、被告の事業活動において通常想定される範囲内での複製、改変又は利用ということができる。 したがって、本件において、ナカシマ関連原告制作物のいずれについても仮に著作物性が認められたとしても、被告によるその利用すなわちナカシマ関連被告制作物の制作は、いずれも、原告による許諾の範囲内の行為として、許容される。 (原告の主張) 否認する。 ナカシマ関連原告制作物については、ナカシマ関連契約書の規定が適用される。したがって、ナカシマ関連原告制作物の著作権は原告が有するとともに、被告は、原告から利用許諾を受けなければ、ナカシマ関連原告制作物を、納品された物とは違う形で利用することができない。このことは、ナカシマ関連業務委託契約1及び2の締結に際し、原告から被告に対して説明をし、被告はこれを了承したこと、被告が、原告に対し、ナカシマ関連原告制作物の利用に際して事前に許諾を得ようとしていたことから明らかである。 すなわち、原告と被告との間で、播磨喜水関連原告制作物に係る著作権の利用許諾の黙示の合意はない。 6 争点2−3(権利の濫用) (被告の主張) 被告は、原告に対し、ナカシマ関連原告制作物の制作の対価として、相当な金額を支払った上で、本来の用途に従い、自身の事業活動において、一般的に想定される利用態様の範囲内で、ナカシマ関連原告制作物を利用している。これが制約されることにより、被告の事業活動には著しい支障を来すことになる。他方、被告による宣伝広告等の利用行為は、原告の利益を不当に害するものではない。にもかかわらず、原告の損害賠償請求が認められるならば、原告は、被告との契約に基づき定めた委託料以上の対価を不当に取得することになる。 これらの点に鑑みると、ナカシマ関連原告制作物に係る著作権侵害があることを前提とした原告の請求は、権利濫用である。 (原告の主張) 被告が、原告に対し、ナカシマ関連原告制作物に関して支払った費用は、制作費用の対価としての趣旨であり、著作物の利用許諾の対価としての趣旨は含まれない。 また、被告ナカシマによる著作権侵害行為は、多数回にわたり、これによる損害額も甚大である。 これらの点に鑑みると、ナカシマ関連原告制作物に係る著作権侵害があることを前提とした請求は権利濫用に当たらない。 7 争点3(原告と播磨喜水との合意内容等) (原告の主張) (1)原告と播磨喜水との合意内容(争点3−1) 原告パッケージデザイン1−1及び1−2について、原告は、播磨喜水が追加印刷を継続的に行うことを条件として、播磨喜水と、単価70円、合計140万円とするデザイン業務委託契約を締結したものであり、播磨喜水が追加印刷を継続的に行わない場合には、140万円ではなく追加印刷を前提としない本来のデザイン料の料金体系に従ってそのデザイン料を支払う旨の明示又は黙示の合意があった。この合意によれば、原告パッケージデザイン1−1及び1−2に関するデザイン料は、615万8000円(税別)となる。 原告パッケージデザイン1−3〜1−6に係る契約についても同様に、原告と播磨喜水との間では、播磨喜水が追加印刷を継続的に行わない場合には、追加印刷を前提としない本来のデザイン料の料金体系に従ってそのデザイン料を支払う旨の明示又は黙示の合意があった。これによれば、原告は、原告パッケージデザイン1−3及び1−4については287万円、同1−5については327万6000円、同1−6については262万4000円(いずれも税別)となる。 (2)商法512条の適用(争点3−2) 仮に、上記(1)に係る合意がないとしても、上記料金体系は、業界慣行に即した適正なものであることに鑑みると、これに従って算出された代金額は、相当な報酬額にほかならない。したがって、原告は、商法512条に基づき、上記代金額の支払を請求することができる。 (被告の主張) (1)原告と播磨喜水との合意内容について(争点3−1) 否認する。 (2)商法512条の不適用(争点3−2) 原告が商法上の商人であることは認め、その余は争う。 商法512条は、契約当事者間に報酬支払合意が存在しない場合の規定である。原告と播磨喜水との間においては、原告各パッケージデザインの制作代金について、播磨喜水が追加印刷を行った場合には個別計算に基づいて算定されたデザイン料及び追加印刷個数に応じて追加料金を支払うという合意が存在したのであるから、本件において、商法512条の適用はない。 第4 当裁判所の判断 1 原告制作物2に係る請求について(複製の有無) (1)データベースを除く編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護される(著作権法12条1項)。編集著作物においては、素材の選択又は配列によって具現された編集方法が保護の対象となるのであって、具体的な編集物を離れた、編集方法それ自体はアイデアであって保護の対象とはならない。したがって、具体的な配列を離れた配置方針や分類が類似していても、それは表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって、編集著作物の複製権を侵害しないというべきである。 (2)証拠(甲10の1及び2)によれば、原告制作物2及び被告制作物2は、別紙対照表2のとおりの内容を含むものであると認められる。原告制作物2は、スペイン料理のシェフとコラボしたレシピブックであり、料理やシェフの写真、料理のレシピを選択、分類し、料理ごとに配列したものであり、編集物の素材である料理等の写真及びレシピの選択及び配列には、一応、編集者の個性が表れているものといえる。 もっとも、被告制作物2と原告制作物2を対比すると、別紙対照表2のとおり、選択された素材である人物、料理等の写真及びレシピ情報そのものが異なることはもちろん、それぞれの表紙及び裏表紙並びに1頁〜2頁の構成や基調となる配色は異なる。また、それぞれの料理画像の背景が一部を除き白く、料理画像を配したことにより生じる空白部分にレシピ情報を配置していること、多くは1頁当たり1レシピ情報を掲載するものの、各5頁及び6頁は見開き2頁全面を用いて料理画像及びレシピ情報が配置されている点は、配置方針としては共通するものの、具体的な配置の在り方は、原告制作物2と被告制作物2とで異なる。レシピ情報のうち、料理の名称を材料及び料理方法に関する情報より大きめのフォントで記載するといったレシピ情報の構成についても同様である。しかも、料理の名称部分の配色については、原告制作物2においては料理ごとに異ならないと見られるのに対し、被告制作物2においては、料理ごとに異なる配色がされている。加えて、原告制作物2にはシェフの手書きを思わせるイラストによる料理イメージも各料理に併せて配置されているのに対し、被告制作物2には、そのようなイラストは存在しない。 これらの事情に鑑みると、被告制作物2は、原告制作物2の編集著作物としての創作性を再現したものとは見られない。 (3)したがって、被告制作物2は、その余の点を検討するまでもなく、原告制作物2に係る著作権(複製権)を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物2に係る請求については、いずれも理由がない。 2 原告制作物3に係る請求について(著作物性の有無) 証拠(甲11の1)及び弁論の全趣旨によれば、別紙対照表3のとおり、原告制作物3である原告作成の被告のウェブサイトには、@トップページの上部に大きく料理の写真を配置し、その下に商品を宣伝するための説明文章を配置していること(なお、麺の茹で方に関する説明書きが配置されていることは認められない。)、Aトップページの上部に大きく配置した料理の写真は、オリジナルレシピの料理を選択しており、それが別のオリジナルレシピの料理の写真と自動的に入れ替わるように設定していること、Bトップページの下部に意図的に余白部分を多く取り、その上で、見出しコピー、説明コピー及び各コンテンツのグラフィック画像を、整理してレイアウトしていることが認められる。 しかし、証拠(乙29の2、30の4)及び弁論の全趣旨によれば、@〜Bの特徴は、料理やその素材を販売するウェブサイトにはしばしば見られる構成であることが認められる。そうすると、原告制作物3は、料理の素材を販売するウェブサイトとして、素材の選択及び配列のいずれについても、創作性を有するとはいえず、著作物性は認められない。 したがって、被告制作物3は、その余の点を検討するまでもなく、原告制作物3に係る著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物3に係る請求については、いずれも理由がない。 3 原告制作物4に係る請求について(翻案の有無) (1)翻案(著作権法27条)とは、他人の著作物に新たな創作性を付与して別個の著作物を作成する行為であり、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、翻案には当たらないと解される。 (2)原告は、原告制作物4につき、被写体の配置、構図、カメラアングルの設定、被写体と光線の関係、陰影の付け方、色彩の配合、背景等に工夫を凝らしたことをもって、その創作性の表れと主張するものと思われる。 しかし、写真に創作性が付与されるのは、被写体の独自性によってではなく、撮影や現像等における独自の工夫によって創作的な表現が生じ得ることによるものであり、被写体の選択や配置上の工夫は、写真の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分ではない。したがって、原告が指摘する被写体の配置、構図、背景については、写真の著作物の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分とはいえないから、これらの点が共通しても翻案とはならない。 また、原告制作物4と被告制作物4が類似するか否かは、原告制作物4の創作性を基礎付けるに足りる本質的特徴部分である、カメラアングルの設定、被写体と光線の関係、陰影の付け方、色彩の配合が共通するか否かを考慮して判断する必要があるところ、証拠(甲13の1及び2)によれば、原告制作物4及び被告制作物4は、別紙対照表4のとおりの内容を含むものであると認められる。これによれば、原告制作物4と被告制作物4とは、カメラアングルは共通するといい得るものの、被写体と光線の関係、陰影の付け方及び色彩の配合は相違する。 したがって、被告制作物4は、原告制作物4の本質的特徴部分を直接感得できる程度に類似したものということはできない。そうすると、被告制作物4は、原告制作物4を翻案したものであるとは認められないから、その余の点を検討するまでもなく、原告制作物4に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物4に係る請求については、いずれも理由がない。 4 事実関係 前記前提事実(第2の2)のほか、争いのない事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)原告と被告等との商談 被告は、素麺のブランドを立ち上げようと考えていたことから、原告に対し、ブランドコンサルティングを依頼しようと考え、平成26年9月以降、被告側からは被告、ナカシマエナジー及び播磨喜水いずれの代表取締役でもあったP1等が、原告側からは代表取締役であるP2や、原告とビジネスパートナーの関係にあったエフプロモーションの代表取締役等が参加して、打合せを重ねた(甲39、乙34)。 (2)播磨喜水関連 ア 播磨喜水業務委託契約1及び2の締結 (ア)原告は、平成26年11月25日、エフプロモーションと共に、ナカシマエナジーとの間で、素麺のブランディングに関するブランディングパートナー契約である播磨喜水関連業務委託契約1を締結した。その契約内容は、以下のとおりである。なお、ナカシマエナジーが契約当事者となったのは、当時、手延べ麺の製造、販売事業を行う播磨喜水が設立未了であったことによる。 ・ナカシマエナジーは、同社が設立する素麺ブランド新会社(後の播磨喜水)の相談内容に応じ、そのブランドコンサルティングを行うため、ナカシマエナジーと原告及びエフプロモーションは原則として月1回ミーティングを行い、また、その他必要に応じてミーティングを行う。(1条) ・ナカシマエナジーは、原告及びエフプロモーションに対し、委託費として、契約開始月より3か月間は月額10万円、4か月目以降は月額30万円を支払う(いずれも税別)。(2条) ・ナカシマエナジーは、ブランディングに係る内容に関しては、原告及びエフプロモーションに相談する。原告及びエフプロモーションは、ナカシマエナジーから相談された内容に対し、専門知識と誠意をもって対応する。(6条1項、2項) (イ)また、原告は、同日、単独で、ナカシマエナジーとの間で、素麺のブランディングに係る制作物等のデザイン業務に関する業務委託契約である播磨喜水関連業務委託契約2を締結した。その契約内容は、以下のとおりである(甲5の2)。 ・ナカシマエナジーは、その素麺のブランディングに関する、企画及びデザイン制作業務(以下、本項において「本業務」という。)を原告に委託し、原告は、これを受託し、提供する。本業務の詳細は、「ブランディング成果物A(プランニング)」として、「ブランドコンセプト&ストーリー」、「社名ネーミング、商品ネーミング」を、また、「ブランディング成果物B(デザイン)」として、「VI基本デザイン(ロゴマーク、タグライン、シグネチャーシステム、カラーシステム、ガイドライン)」、「VI展開デザイン(名刺、封筒など、WEBサイトイメージ)」である。(1条) ・ナカシマエナジーは、原告に対し、その委託費として、1000万円(税別)を支払う。(2条) ・原告がナカシマエナジーに完成品として納品した成果物に、著作権が含まれる場合は、その著作権は原告に帰属する。(6条1項) ・本業務による著作物は、ナカシマエナジー及び原告の合意の上での変更修正以外は、ナカシマエナジー又は第三者による変更修正はできない。(6条5項) ・本業務による著作物を、本契約以外に使用しようとする場合は、ナカシマエナジー及び原告が協議した上で使用を検討する。(6条6項) イ 播磨喜水関連原告制作物の制作 (ア)原告制作物1関係 a 原告は、平成28年6月頃、原告レシピブック1を制作し、播磨喜水に納品した。播磨喜水は、同月頃、原告から「オリジナルレシピブランディング料」40万円、撮影関係費60万円、「KUSSUIBOOK(夏)制作費一式」170万円及び消費税を請求され、その頃、同額を支払った(甲7の8、乙8)。 原告レシピブック1は、「手延べ麺のカクテル」などと題する手延べ麺を使った料理を、レシピとともに原告制作物1等の写真で紹介しながら、播磨喜水の姫路店の所在地や取扱商品を紹介する内容となっている(甲9の1)。 b 播磨喜水は、平成29年6月頃、原告制作物1を利用して被告制作物1を制作した。 被告制作物1は、原告制作物1である「手延べ麺のカクテル」の写真を背景にしつつ、平成29年夏の「お中元ペアセット」等の商品を紹介する内容となっている (甲9の2)。 (イ)原告制作物2関係 原告は、平成29年4月頃、原告制作物2を制作し、播磨喜水に納品した。播磨喜水は、同月頃、原告から「アートディレクション料」30万円、「撮影料」30万円、「撮影セッティング料」10万円、「デザインレイアウト&コピー料」96万円、「データ制作」10万円、「実費」10万円及び消費税を請求され、その頃、同額を支払った(甲7の9、乙18、20)。 原告制作物2は、スペイン料理のシェフとコラボして、「そうめん“セビヤン”スタイル」などと題する手延べ麺を使った料理を、レシピと共に写真で紹介するとともに、播磨喜水の取扱商品を紹介する内容となっている(甲10の1)。 (ウ)原告制作物3関係 原告は、平成27年12月以降、播磨喜水から、月額30万円の報酬で、同社のウェブサイトの制作、管理、更新業務を委託され、原告制作物3を制作した。原告及び播磨喜水間の同社のウェブサイトに関する業務委託契約は、平成29年10月31日をもって終了した。 (エ)原告制作物4関係 原告は、平成29年4月頃、原告カタログ1を制作し、播磨喜水に納品した。原告カタログ1は、贈答用に包装した播磨喜水の商品を複数組み合わせて陳列するなどした写真である原告制作物4等の写真を掲載しながら、同社の取扱商品を紹介する内容となっている(甲13の1)。 (オ)原告制作物5関係 a 原告は、平成27年10月頃、原告POPを制作し、播磨喜水に納品した。その制作費は15万円である(甲7の4)。 原告POPには、手延べ麺の束が複数個並べられた写真や、「播磨喜水HARIMAKISSUI」のキャッチコピーである原告制作物5−1を構成の一部に組み入れつつ、播磨喜水が取り扱う手延べ麺の製造等に関する同社の考え方を宣伝する内容となっている(甲14の1の1)。 また、原告は、同年11月頃、原告カタログ2を制作し、播磨喜水に納品した。原告カタログ2は、「食卓を笑顔に、播磨喜水。」で始まる同社製造に係る素麺に関する文章その他の宣伝用の文章や、ギフトボックスセットを含む取扱商品を写真と共に紹介する内容となっている(これらの文章や写真のうち、別紙対照表5で取り上げられているものが原告制作物5−2である。甲14の1の2)。 b 播磨喜水は、平成29年頃、原告制作物5−1及び5−2を利用して被告制作物5をそれぞれ制作した。被告制作物5は、原告制作物5−1の手延べ麺の束が複数個並べられた写真と共に、「喜ばれる、播磨のごちそう。」で始まる同社製造に係る素麺に関する文章その他の文章を記載するものをはじめ、原告制作物5−2の宣伝文句をそのまま利用したPOPとなっており、これを播磨喜水の姫路店以外の店舗で陳列した(甲14の2)。 (3)被告関連 ア VI一式の制作に係る業務委託契約の締結 (ア)被告は、創業70周年記念誌を魅力的なものにすることや、創業70周年に当たってCIを刷新することを考えたことから、平成28年2月3日、原告との間で、被告のCIに係る制作物等のデザイン業務に関する業務委託契約であるナカシマ関連業務委託契約2を締結した(甲6の2、39、乙34)。その内容は、以下のとおりである。 ・被告は、「被告のコーポレートアイデンティティにおけるVIデザインの企画及びデザイン制作業務」(以下、本項において「本業務」という。)を原告に委託し、原告はこれを受託し提供する。本業務の詳細は、「ナカシマVIプランニング」として、「VIコンセプト&ストーリー」、「英文社名標記」、「ナカシマVIデザイン」のうち「VI基本デザイン」として、「シンボルマーク」、「英文社名ロゴタイプ」、「ロゴマーク」、「タグライン」、「シグネチャーシステム」、「カラーシステム」、「ガイドライン」、「VI展開デザイン」として、「VIプロモーション映像」、「70周年ロゴマーク」、「名刺、封筒類」、「会社案内(12頁)」、「社内告知用ポスター」である。(1条) ・原告が被告に完成品として納品した成果物に著作権が含まれる場合は、その著作権は原告に帰属する。(6条1項) ・本業務による著作物は、原告と被告の合意の上での変更修正以外は、被告又は第三者による変更修正はできない。(6条5項) ・本業務による著作物を、本契約以外に使用しようとする場合は、原告と被告が協議したうえで使用を検討する。(6条6項) イ 原告によるナカシマ関連原告制作物の制作及び被告によるナカシマ関連被告制作物の制作 以下のとおり、原告は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、ナカシマ関連原告制作物を制作して被告に納品し、また、被告は、ナカシマ関連被告制作物を制作した。 (ア)原告制作物6関係 a 原告は、コーポレートシンボルである原告制作物6を制作し、被告に納品した。 b 被告は、原告制作物6の右側に、いずれも英文字で「N-WAVE」、「PresentedbyNakashima」を二段に書したものを配置して成る被告制作物6−1を制作し、その事業に係る営業ツールやウェブサイト等で使用した(甲15の2の1)。 また、被告は、原告制作物6に子供の顔写真を複数はめこんだ被告制作物6−2を制作し、被告パンフレットの表紙に使用した(甲15の2の2)。 (イ)原告制作物7関係 a 原告は、原告制作会社案内を制作し、被告に納品した。原告制作会社案内には、別紙対照表7の「●会社案内事業領域図」のとおり構成される事業領域図である原告制作物7が掲載されている。 b 被告は、被告ポスター1を制作し、使用した。被告ポスター1には、別紙対照表7の「●無断使用例ロールタイプポスター」のとおり、原告制作物7を使用した被告制作物7が掲載されている(甲15の2の3)。 (ウ)原告制作物8関係 a 原告制作会社案内には、別紙対照表8の「●当社で制作した会社案内パンフレット」のとおり、画像を背景とした「ナカシマはライフライン事業を中心に、暮らしの核となる多数の事業を展開しています。」というキャッチコピー、事業領域図(原告制作物7)、「3つの事業領域」として「住環境分野」、「産業ソリューション分野」及び「生活産業分野」について紹介する写真及び文章が記載されている(甲15の1の2)。 b 被告は、被告パンフレットを制作した。被告パンフレットには、被告制作物8として、原告制作物8で使用されているものと同一と思われる画像を背景として、同一内容のキャッチコピー、事業領域図(原告制作物7)、「3つの事業領域」として「住環境分野」、「産業ソリューション分野」及び「生活産業分野」について紹介する写真(3枚のうち2枚は、原告制作物8のものと同一である。)及び文章が記載されている(甲15の2の2)。 (エ)原告制作物 a 原告は、事業領域図のプロトタイプである原告制作物9−1及び「ナカシマの新規事業『播磨喜水』」と題する写真及び文章である原告制作物9−2を制作し、被告に納品した。被告は、その頃、原告の許諾を得て、これらを日本経済新聞の5段広告に使用した。 b 被告は、その頃、原告の許諾を得ることなく、上記広告の画像データ及び掲載された上記広告の写真である被告制作物9を、自社のウェブサイト及びフェイスブックにアップロードした(甲16の2の1、16の2の2)。 (オ)原告制作物10 a 原告制作会社案内には、海を撮影した写真である原告制作物10が掲載されている。 b 被告は、原告制作物10を複製して被告制作物10−1及び10−2を制作し、これらを用いた椅子用カバー及び被告ポスター2をリクルート会場で使用した(甲16の2の3)。 (カ)原告制作物11 a 原告は、原告制作物6、写真及び文章を掲載したポスターである原告制作物11を制作した。 b 被告ポスター2(被告制作物11)は、原告制作物6、写真及び文章が改変されずに掲載されており、被告は、これをリクルート会場で使用した。 (キ)原告制作物12 a 原告は、原告制作物12を制作し、被告に納品した。 b 被告は、自社のウェブサイト等に、原告制作物12を改変することなく、被告制作物12をアップロードした。 ウ ブランドコンサルティングに係る業務委託契約 証拠(甲21、22、39、乙34、原告代表者、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成28年2月3日以降、被告に対し、ブランドコンサルティング業務を行っていたこと、被告は、原告からの請求に応じて、その報酬として月額15万円を支払っていたことが認められる。これらの事情に鑑みると、原告と被告との間には、正式な契約書は取り交わされなかったものの、月額15万円の報酬で、原告が被告のブランドコンサルティングを行うことを内容とする業務委託契約(ナカシマ関連業務委託契約1)が成立していたことが認められる。これに反する被告の主張は採用できない。 (4)原告と播磨喜水間の取引 ア 原告パッケージデザイン1−1及び1−2 原告は、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−1及び1−2の制作の依頼を受けたことから、平成27年6月頃、生産個数1万個までとしての設定金額であるとしつつ、合計500万円の見積りを提示した(甲7の2)。これに対し、播磨喜水から値下げの打診があったことから、原告は、播磨喜水に対し、同年8月17日付け「播磨喜水ブランディング関連見積書」(甲7の3)を提示した。同見積書には、「商品パッケージデザイン料(印刷個数による計算)」として、原告パッケージデザイン1−1が70万円(10、000個×70円)、原告パッケージデザイン1−2が70万円(10、000個×70円)、合計140万円(税別)との見積額が記載されるとともに、「パッケージデザイン料は発注累計個数で計算します。」として、単価について、5000個の場合が100円、1万個の場合が70円、2万個の場合が60円、5万個の場合が50円、10万個以上の場合が40円(いずれも1個当たり)である旨も記載されていた。 播磨喜水は、同年9月30日、原告に対し、原告パッケージデザイン1−1及び1−2の制作報酬として140万円及び消費税を支払った。これを受けて、原告は、播磨喜水に対し、原告パッケージデザイン1−1及び1−2のデータを入稿した。 その後、播磨喜水は、原告パッケージデザイン1−1を追加で1万枚印刷した。被告は、令和元年10月16日、原告に対し、その報酬として70万円及び消費税を支払った。 イ 原告は、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−3及び1−4の制作の依頼を受けたことから、同社に対し、同年10月27日付け「播磨喜水ブランディング関連見積書」(甲7の5)を提示した。同見積書には、「商品パッケージデザイン料(印刷個数による計算)」として、原告パッケージデザイン1−3が70万円(1万個×70円)、原告パッケージデザイン1−4が30万円(3000個×100円)との見積額が記載されるとともに、「パッケージデザイン料は発注累計個数で計算します。」として、上記同年8月17日付け「播磨喜水ブランディング関連見積書」と同じく、単価について、5000個の場合が100円、1万個の場合が70円、2万個の場合が60円、5万個の場合が50円、10万個の場合40円(いずれも1個当たり)である旨も記載されていた。 播磨喜水は、原告に対し、原告パッケージデザイン1−3及び1−4の制作報酬として100万円及び消費税を支払った。これを受けて、原告は、播磨喜水に対し、原告パッケージデザイン1−3及び1−4のデータを入稿した。 ウ 原告は、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−5の制作の依頼を受けたことから、同社に対し、同年11月30日付け「播磨喜水ブランディング関連見積書」(甲7の7)を提示した。同見積書には、「商品パッケージデザイン料(印刷個数による計算)」として、原告パッケージデザイン1−5が1万円(200個×50円)との見積額が記載されていた。 播磨喜水は、原告に対し、原告パッケージデザイン1−5の制作報酬として1万円及び消費税を支払った。これを受けて、原告は、播磨喜水に対し、原告パッケージデザイン1−5のデータを入稿した。 エ 原告は、播磨喜水から、原告パッケージデザイン1−6の制作の依頼を受けたことから、同社に対し、印刷発注個数に応じたデザイン料として15万円(1000枚×150円)の見積額を提示した。 原告は、平成28年8月10日、播磨喜水に対し、原告パッケージデザイン1−5のデータを入稿した。被告は、令和元年10月16日、原告に対し、その報酬として15万円及び消費税を支払った。 5 原告制作物1及び5に係る請求について(争点1−2) (1)原告制作物1 ア 原告制作物1は、原告レシピブック1を構成する料理の1つを撮影した写真であるところ、これは、播磨喜水関連業務委託契約書2の目的とされている成果物のいずれにも該当しない。また、原告制作物1の制作に当たっては、播磨喜水から原告に対し、その対価が、播磨喜水業務委託契約2所定の報酬とは別個に、播磨喜水から原告に対して対価が支払われている。したがって、原告制作物1の制作については、播磨喜水関連業務委託契約2は適用されないと解される。原告は、播磨喜水関連業務委託契約2は基本契約の性質を有し、原告制作物1にも適用されると主張する。しかし、上記のとおり、この点に関する原告の主張は採用できない。 イ 原告レシピブック1に係るデザイン制作委託契約において、その成果物の著作権の帰属に関する明示的な合意の存在は認められない。 そこで、当事者の合理的な意思を解釈するに、播磨喜水は、原告に対し、播磨喜水のブランドイメージの向上及びレシピ情報の提供と組み合わせた取扱商品の紹介等を通じた販売促進等を企図して原告レシピブック1の制作を依頼したものと理解される。原告レシピブック1を構成する画像データ及び文章等は、直接的には原告レシピブック1に用いられるものであるとはいえ、その後の播磨喜水の事業遂行に当たり、その統一性ないし継続性の観点から、原告レシピブック1の内容と整合する形で、同社のブランドイメージの形成、向上や販売促進活動が行われることは、播磨喜水はもちろん、原告も当然想定していたものと見るのが合理的である。また、こうしたその後の事業遂行に当たり、著作権との関係から、原告レシピブック1を構成する画像データ等の利用に先立ち個別的に原告の許諾を要することとすることは、事業活動の機動性及び円滑性等の観点から、合理的とは思われない。もっとも、このような観点からは、委託者である播磨喜水が成果物の著作権を有するまでの必要はなく、当該著作権は原告に留保し、播磨喜水によるその利用につき原告の許諾があれば、所期の目的は達成される。 他方、原告レシピブック1の性質上、原告レシピブック1又はこれを構成する原告制作物1等のデータ等を原告が自ら利用したり、第三者に利用を許諾したりすることは、およそ想定されていないと考えられる。 そうすると、原告レシピブック1のデザイン制作委託契約においては、明示的な合意はないものの、その成果物の著作権は受託者である原告に留保しつつ、委託者である播磨喜水が、自身の商品の宣伝広告、販促物又は広報資料としてその成果物を構成する画像データ等を複製、利用することにつき、これに必要な範囲での利用を許諾する旨の合意が黙示的に存在すると考えるのが当事者の合理的意思に沿うというべきである。 ウ これに対し、原告は、播磨喜水が、播磨喜水関連原告制作物の利用に際して事前に原告の許諾を得ようとしていたことや、原告が、改変困難な形で、播磨喜水に対し播磨喜水関連原告制作物のデータを入稿していたことを指摘して、上記のごとき黙示の合意も存在していなかったと主張する。 しかし、例えば甲30の2及び30の3のやり取りを見ると、播磨喜水が、「注文を受けた商品に、案内欲しいというご要望があるので、冊子が出来るまではとりあえずはこの2枚を少し改良して箱の中に封筒に入れて送ればどうかと思います。」、「どうですか?」と問い合わせをしたのに対し、原告は、「はい。ご案内あった方が良いと思いますので、そうしてください。」と応答している。これは、播磨喜水が、播磨喜水関連原告制作物を原告が納品した際の直接的明示的な用途以外の用途に利用することについて許諾を得ようとしたやり取りというより、顧客対応に関するアドバイスを播磨喜水が求め、原告がこれに応じたもの、すなわちコンサルティング業務の一環として理解するのが相当である。甲31に見られる原告と播磨喜水とのやり取りについても、同様に理解される。これらの事情に加え、播磨喜水関連業務委託契約1に基づき原告と播磨喜水とがブランドコンサルティングを目的とする継続的な契約関係にあったことを考慮すると、播磨喜水関連原告制作物の利用に当たり、播磨喜水が原告に対しその意向を確認していたことをもって、上記認定に係る黙示の合意がなかったことを示す事情とはいえない。 また、入稿した播磨喜水関連原告制作物のデータが改変困難な形式であったとしても、証拠(甲33、乙25、33)及び弁論の全趣旨によれば、そのようなデータ形式はいわゆる文字化けを防ぐ趣旨で利用されるものと位置付けられていること、データの改変等がおよそ不可能というわけではないことが認められることから、そのような事情をもって、上記認定のかかる黙示の合意がなかったことを示す事情とは必ずしもいえない。 以上の事情その他原告が指摘する事情を考慮しても、なお上記黙示の合意の存在を認めるのが当事者の合理的意思にかなうというべきであるから、この点に関する原告の主張は採用できない。 エ 原告レシピブック1は、「2016SUMMER」との記載から、平成28年の夏期における播磨喜水の販促活動に使用されるものであるところ、被告制作物1は、「2017SUNNER」、「きちんと、夏のご挨拶」などといった記載のあるお中元用チラシに掲載されたものであるから、平成29年の夏期における播磨喜水の販促活動に使用されるものといえる。原告制作物1と被告制作物1の具体的な使用態様を比較しても、後者においては、その配置との関係で、原告制作物1の一部が欠けているものの、その点を除き改変が加えられた点は見当たらない。 そうすると、被告制作物1は、播磨喜水が、自身の商品の宣伝広告、販促物又は広報資料として原告制作物1を、これに必要な範囲で利用したものということができる。したがって、その利用については、著作権者である原告による利用許諾の範囲内にあるものということができる。 以上より、お中元用チラシ(フェイスブック及びウェブサイトへアップロードされたものを含む)における被告制作物1の利用は、原告制作物1に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物1に係る請求については、いずれも理由がない。 (2)原告制作物5について ア 原告制作物5−1は、商品POPを構成する写真及び文章であり、原告制作物5−2は、商品カタログを構成する写真及び文章であるところ、これらはいずれも、播磨喜水関連業務委託契約書2で対象とされているものには該当しない。また、その制作については、いずれも、播磨喜水から原告に対し、その対価が、播磨喜水関連業務委託契約2で定められている報酬とは別個に支払われている(甲7の4)。これらの点に鑑みると、原告制作物5については、播磨喜水関連業務委託契約書2の適用はないと解される。これに反する原告の主張は採用できない。 イ また、原告制作物1に係るデザイン制作委託契約の場合と同様に、原告制作物5に係るデザイン制作委託契約においても、前記(1)アと同趣旨の黙示の合意が存在するものと解するのが合理的であり、これに反する原告の主張は採用できない。 ウ 被告制作物5は、いずれも、播磨喜水の姫路店以外の店舗で使用された商品POPであり、販売促進活動に用いられるものであることは明らかである。また、播磨喜水は、原告制作物5の写真及び文章自体には改変を加えることなく、これらを組み合わせて被告制作物5を制作し、これを陳列したものであり、販売促進という目的に必要な範囲を逸脱するような態様ではない。 そうすると、被告制作物5は、播磨喜水が、自身の商品の宣伝広告、販促物又は広報資料として原告制作物5を、これに必要な範囲で利用したものということができる。したがって、その利用については、著作権者である原告による利用許諾の範囲内にあるものということができる。 以上より、被告制作物5の利用は、原告制作物5に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物5に係る請求については、いずれも理由がない。 6 争点2−2について (1)原告制作物6〜12がナカシマ関連業務委託契約2に基づき制作されたものであることは、当事者間に争いがない。したがって、原告制作物6〜12については、ナカシマ関連業務委託契約2に基づき、その著作権は原告に帰属する。 (2)ナカシマ関連業務委託契約2では、当該契約に基づく成果物である著作物については、原告と被告が合意の上での変更修正以外は、被告又は第三者による変更修正はできないとされる一方で、当該契約以外にこれを使用しようとする場合は、原告と被告が協議した上でその使用につき検討することとされている。 「コーポレートアイデンティティにおけるVIデザインの企画及びデザイン制作業務」を内容とする当該契約における「使用」の具体的な意味に関する定義はないものの、当該契約に基づき制作される成果物は「シンボルマーク」等であり、いずれも、その性質上、被告の事業遂行における様々な局面で、様々な媒体において使用されるものであるから、宣伝広告、採用活動を含む被告の事業全般のために幅広く使用されることが当然想定されるものである。そうすると、当該契約による「使用」とは、被告の営む事業全般における使用を意味するものと解される。このように理解することは、事業活動における機動性及び円滑性の要請にもかなう。 また、「変更修正」に関しては、原告が契約書の文案作成に当たり参照したという公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会作成に係るデザイン制作契約約款(甲32)において、「依頼者は、使用目的…の範囲内で、制作物をその種類・性質等に応じ排他的に複製使用することができます。」との規定が置かれていることをも参酌すると、「変更修正」とは、著作権法上の「複製」といえる程度を超える改変を意味すると解される。 そうすると、ナカシマ関連業務委託契約2においても、原告が著作権を有するその成果物の被告による利用につき、明示的ないし直接的には定められてはいないものの、委託者である被告が、自身の宣伝広告、採用活動その他事業遂行上、その成果物を構成する画像データ等を複製、利用することにつき、これに必要な範囲での利用を許諾する旨の合意が黙示的に存在するものと解するのが相当である。これに反する原告の主張は、前記5(1)イと同様に、採用することができない。 (3)個別的検討 ア 原告制作物6 原告制作物6は、被告のロゴマークとして制作されたものである。他方、被告制作物6−1は、営業ツールやウェブサイト等で使用されているから、被告の事業に使用されたものと認められる。また、被告制作物6−1は、原告制作物6の形状はそのままに、これに「N-WAVE」というロゴタイプを付加して創作性を有しない程度の変更を加えただけであり、「複製」といえる程度を超える改変に至らないものである。したがって、被告制作物6−1における原告制作物6の利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 また、被告制作物6−2は、被告パンフレットの表紙に使用するロゴマークとして制作され、使用されたものであり、被告の事業に使用されたものと認められる。また、被告制作物6−2は、原告制作物6の形状はそのままに、その輪郭の内部に複数の子供の顔写真をはめ込んだものであるところ、このような改変は創作性を付加したものといい難い(原告も、翻案権侵害を主張する一方で、このような改変は創作性を有しない旨を主張する。)。 そうすると、被告制作物6−2における原告制作物6の利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上によれば、被告制作物6−1及び6−2の制作、利用は、原告制作物6に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物6に係る請求については、いずれも理由がない。 イ 原告制作物7 原告制作物7は、被告の事業内容を分かりやすく説明するために制作された被告の事業領域図であるところ、被告制作物7は、被告ポスター1の制作に当たって、原告制作物7を何ら改変することなく複製したものと認められる。また、被告ポスター1は、リクルート会場で使用されているから、被告の事業に使用されたものと認められる。 そうすると、被告制作物7の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物7の制作、利用は、原告制作物7に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物7に係る請求については、いずれも理由がない。 ウ 原告制作物8 原告制作物8は、被告の事業内容を分かりやすく説明するために制作された事業領域図等や写真及び文章であるところ、被告制作物8は、被告パンフレットの制作に当たって、「3つの事業領域」部分の3枚の写真のうち1枚を原告制作物8のものと入れ替えるとともに、原告制作物8を構成する要素の配置を変更した点を除くと、原告制作物8のデータをそのまま使用していることが認められる。また、上記変更部分については創作性を付加したものといい難い(原告も、翻案権侵害を主張する一方で、このような改変は創作性を有しない旨を主張する。)。また、被告パンフレットは採用活動の際の資料として使用されることが想定されており、被告の事業に使用されたものと認められる。 そうすると、被告制作物8の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物8の制作、利用は、原告制作物8に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物8に係る請求については、いずれも理由がない。 エ 原告制作物9 原告制作物9は、被告の事業内容を宣伝広告するために制作された事業領域図のプロトタイプ(原告制作物9−1)や写真及び文章(原告制作物9−2)であるところ、被告制作物9は、被告の宣伝広告の一環として、原告制作物9を何ら改変することなく被告のウェブサイト及びフェイスブックにアップロードしたものである。 そうすると、被告制作物9の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物9の制作、利用は、原告制作物9に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物9に係る請求については、いずれも理由がない。 オ 原告制作物10 原告制作物10は、原告制作会社案内の制作に当たり、被告のブランドイメージに沿う写真として制作、使用されたものである。他方、被告制作物10は、椅子用カバー及び被告ポスター2に使用され、リクルート会場に設置されたものであるから、被告の事業に使用されていると認められる。また、被告制作物10は、原告制作物10を複製したものである。 そうすると、被告制作物10の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物10の制作、利用は、原告制作物10に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物10に係る請求については、いずれも理由がない。 カ 原告制作物11は、被告のCIないし事業理念を伝えるものとして制作されたポスターであり、原告が業界の展覧会に出品した後、被告に交付したものである。他方、被告ポスター2である被告制作物11は、被告の事業理念を伝えるポスターとしてリクルート会場に展示されたものであるから、被告の事業に使用されたものと認められる。さらに、被告制作物11は、原告制作物11を何ら改変することなく複製したものである。 そうすると、被告制作物11の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物11の制作、利用は、原告制作物11に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物11に係る請求については、いずれも理由がない。 キ 原告制作物12は、被告のCIの社内発表用の映像であるところ、被告制作物12は、被告の事業内容を伝える動画として、原告制作物12を何ら改変することなく、自社ウェブサイト及び動画共有サイトにアップロードされたものである。 そうすると、被告制作物12の制作、利用は、ナカシマ関連業務委託契約2に基づく利用許諾の範囲内である。 以上より、被告制作物12の制作、利用は、原告制作物12に係る原告の著作権を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。 よって、原告制作物12に係る請求については、いずれも理由がない。 7 争点3 (1)原告パッケージデザイン1−1及び1−2について ア 原告と播磨喜水との合意内容について 前記4で認定した交渉経過に鑑みると、原告と播磨喜水は、原告パッケージデザイン1−1及び1−2について、単価70円、各1万個により合計140万円とし、後に追加印刷があった場合は、発注累計個数に応じた定まる単価に従って追加代金が決まるという合意をしたものということができる。 これに対し、原告は、播磨喜水との間では、播磨喜水が追加印刷を継続的に行わない場合には、140万円ではなく追加印刷を前提としない本来のデザイン料の料金体系に従って算出した615万8000円を代金とする旨の合意があったと主張する。 しかし、これを明示的に裏付ける記載のある書面は存在しない。また、いったん原告主張に係るデザイン料の料金体系に従って原告が見積書を提出したからといって、その後の交渉経過においてもその内容が黙示的に前提とされることには当然にはならないし、当事者の意思をそのように解すべき合理性もない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。 イ 商法512条の適用について 上記のとおり、原告と播磨喜水との間には、単価70円、各1万個により合計140万円とし、後に追加印刷があった場合は、発注累計個数に応じた定まる単価に従って追加代金が決まるという合意がある。そうである以上、原告パッケージデザイン1−1及び1−2につき、商法512条の適用はない。この点に関する原告の主張は採用できない。 ウ 小括 以上によれば、被告に原告パッケージデザイン1−1及び1−2に係る未払報酬はないから、原告の未払報酬支払請求には理由がない。また、原告の原告パッケージデザイン1−1及び1−2の差止等請求については、被告に原告パッケージデザイン1−1及び1−2に係る未払報酬があることを前提とするものであるから、前提を欠くものであり、理由がない。 (2)その余の原告各パッケージデザインについて 前記4で認定した交渉経過に鑑みると、原告と播磨喜水は、その余の原告各パッケージデザインについても、原告パッケージデザイン1−1及び1−2と同様の考え方により報酬額が定まる契約を締結したものと認められる。そうである以上、上記(1)と同じく、原告と播磨喜水とは、播磨喜水が追加印刷を継続的に行わない場合には、追加印刷を前提としない本来のデザイン料の料金体系に従って算出された代金を支払う旨の合意はなく、また、商法512条の適用もない。 以上によれば、被告にその余の原告各パッケージデザインに係る未払報酬はないから、原告の未払報酬支払請求には理由がない。また、原告のその余の原告パッケージデザインの差止等請求については、被告にその余の原告各パッケージデザインに係る未払報酬があることを前提とするものであるから、前提を欠くものであり、理由がない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。 第5 結論 よって、原告の各請求はいずれも理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎 別紙 原告制作物目録 別紙 被告制作物目録 別紙 対照表1〜11 別紙 争点1−1に関する当事者の主張(原告制作物1と被告制作物1) 別紙 争点1−1に関する当事者の主張(原告制作物2と被告制作物2) 別紙 争点1−1に関する当事者の主張(原告制作物3と被告制作物3) 別紙 争点1−1に関する当事者の主張(原告制作物4と被告制作物4) 別紙 争点1−1に関する当事者の主張(原告制作物5と被告制作物5) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物6と被告制作物6) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物7と被告制作物7) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物8と被告制作物8) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物9と被告制作物9) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物10と被告制作物10) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物11と被告制作物11) 別紙 争点2−1に関する当事者の主張(原告制作物12と被告制作物12) |
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