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【事件名】“ペンギン”プロフィール画像事件(2) 【年月日】令和元年12月26日 知財高裁 令和元年(ネ)第10048号 損害賠償請求控訴事件 (原審・東京地裁平成30年(ワ)第32055号) (口頭弁論終結日 令和元年11月7日) 判決 控訴人兼被控訴人 X(以下「1審原告」という。) 訴訟代理人弁護士 齋藤理央 被控訴人兼控訴人 Y(以下「1審被告」という。) 訴訟代理人弁護士 栗田勇 同 堀尾純矢 同 大塚晋平 主文 1 1審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 2 1審被告は、1審原告に対し、58万2226円及びうち29万1113円に対する平成28年1月7日から、うち29万1113円に対する同年2月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 1審原告のその余の請求を棄却する。 4 1審原告の控訴を棄却する。 5 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを3分し、その2を1審原告の負担とし、その余を1審被告の負担とする。 6 この判決の第2項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告 (1)原判決を次のとおり変更する。 (2)1審被告は、1審原告に対し、147万8226円及びうち73万9113円に対する平成28年1月7日から、うち73万9113円に対する同年2月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告 (1)原判決中1審被告の敗訴部分を取り消す。 (2)上記部分につき、1審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) 1 事案の要旨 本件は、1審原告が、1審被告が1審原告の著作物である別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の画像データを一部改変の上、オンライン・カラオケサービスのアカウントの自己のプロフィール画像等としてアップロードした行為が1審原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害行為に当たる旨主張して、1審被告に対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、168万9848円及びうち84万4924円に対する平成28年1月7日から、うち84万4924円に対する同年2月18日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は、1審被告に対し、71万2226円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じる限度で1審原告の請求を認容し、その余の請求を棄却した。 原判決に対して、1審原告は、1審原告の敗訴部分のうち、76万6000円及びこれに対する遅延損害金の支払請求を棄却した部分を不服として控訴を提起し、1審被告は、1審被告の敗訴部分全部を不服として控訴を提起した。 2 前提事実 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決2頁12行目の「2羽のペンギンが前後(画面上は左右)」を「別紙写真目録記載の2羽のペンギンが前後(写真上は左右)」と改め、同頁13行目の「原告は、」の次に「別紙原告画像目録記載の」を加える。 (2)原判決2頁16行目の「(以下「原告ウェブサイト」という。)」を「(以下「原告ウェブサイト」という。甲45)」と、同頁24行目の「Smule、Inc.」を「Smule、Inc.(エスミュール・インコーポレイテッド)」と改める。 (3)原判決3頁7行目の「被告のプロフィール画像(以下「被告プロフィール画像」という。)」を「別紙プロフィール画像目録記載1及び2のプロフィール画像(以下、それぞれを「被告プロフィール画像1」、「被告プロフィール画像2」という。)」と改める。 (4)原判決3頁16行目の「被告」を「Smule社」と改める。 3 争点 (1)本件写真の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の成否(争点1) (2)1審原告の損害額(争点2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件写真の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の成否)について (1審原告の主張) 次のとおり訂正するほか、原判決3頁26行目から5頁14行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決3頁25行目末尾に行を改めて「(1)1審被告の侵害行為」を加え、同頁末行の「(1)」を削る。 (2)原判決4頁8行目から9行目にかけての「被告プロフィール画像」から同頁11行目末尾までを「被告プロフィール画像1として丸くトリミングした形で利用し(以下「行為1」という。)、1審原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するとともに、1審原告の著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害した。」と改める。 (3)原判決4頁13行目の「侵害行為1」を「行為1」と、同頁16行目の「プロフィール画像」から同頁18行目末尾までを「被告プロフィール画像2として上記と同様に利用し(以下「行為2」という。)、同様に1審原告の上記著作権及び著作者人格権を侵害した。」と改める。 (4)原判決4頁19行目の「侵害行為1」を「行為1」と、同頁20行目の「侵害行為2」を「行為2」と、同頁25行目の「侵害行為1の際の被告プロフィール画像」を「行為1の際の被告プロフィール画像1」と、同頁末行から5頁1行目にかけての「侵害行為2の際の同画像」を「行為2の際の被告プロフィール画像2」と改める。 (5)原判決5頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「この点に関し原判決は、1審被告の行為1及び2は、本件サービスの1審被告のプロフィール画像に用いるという同一の目的に基づく時期的に近接した行為であり、いずれも本件写真という1個の著作物に係る著作権及び著作者人格権を侵害するものであることからすると、各侵害行為を一連の不法行為と捉えるのが相当である旨判断した。 しかしながら、1審被告は、行為1及び2により、現に平成28年1月7日及び同年2月18日の2度にわたり侵害行為を行っている上、行為1と行為2の間隔は1か月以上開いており、社会通念上一連の行為と評価できるだけの時間的近接性は認められない。特に行為2は、行為1による不法行為が完結した後に、Smule社のインラインリンク切断措置によって、意図せず、必要になった追加的不法行為であって必然性は認められないから、行為1と行為2による独立の2回の不法行為が行われたと評価されるべきである。 したがって、原判決の上記判断は誤りである。 イ 1審被告は、別件の判決(乙9の1、2)を根拠に挙げて、1審被告が被告プロフィール画像1及び2をアップロードするより前に原告画像を加工した画像がインターネット上に存在しており、1審被告は原告画像のトリミングをしていない旨主張する。 しかしながら、1審被告が指摘する判決の事案は、2羽のペンギンが写った状態でトリミングされているなど、本件において1審被告が行った本件写真のトリミングとは態様が全く異なり(甲161、162)、また、1審被告の行為1及び2がされた後の平成28年5月9日及び同年7月5日に作成された記事に起因する侵害行為であるから、1審被告の上記主張は理由がない。」 (6)原判決5頁5行目の「イ」を「ウ」と、同頁8行目の「ウ」を「エ」と改め、同頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「オ 1審被告は、被告画像1ないし4のURL(甲8ないし11)のように十分な長さと複雑さを有したURLを一般公衆が直接ウェブブラウザに入力して被告画像1ないし4のデータを受信することはおよそ考えられないから、被告画像1ないし4と被告アカウントとのインラインリンク切断後においては、公衆送信権の侵害状態は継続していない旨主張する。 しかしながら、1審被告のアップロードによりSmule社が使用するサーバに蔵置された被告画像1ないし4は、平成28年2月13日頃実施された被告アカウントとのインラインリンク切断後も、上記サーバに保存されていた(甲121ないし160)。 そして、1審被告による被告画像1ないし4のURLの公開によって、上記URLを取得することができた者は、被告画像1ないし4にアクセスすることが可能であったから、Smule社が被告画像1ないし4をサーバから削除した時点までは公衆送信権の侵害状態が継続したと評価されるべきである。 したがって、1審被告の上記主張は失当である。」 (1審被告の主張) 次のとおり訂正するほか、原判決5頁16行目から6頁17行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決5頁25行目の「依拠していない。」の後に行を改めて次のとおり加える。 「この点に関し原判決は、1審被告が被告プロフィール画像1及び2をアップロードするより前に原告画像を加工した画像がインターネット上に存在していたと認めるに足りる証拠はないこと、被告プロフィール画像1及び2に写っているのが原告画像に写った左右それぞれのペンギンであることに照らすと、1審被告は、原告画像をダウンロードした上で、トリミング処理をしたと考えるのが合理的かつ自然である旨判断した。 しかしながら、1審原告は、原告画像に関して本件と同様の訴訟を複数提起し、例えば、乙9の1、2の2件の判決においては、「氏名不詳者」が、原告画像をトリミングした画像のデータをサーバ上にアップロードすることによって、不特定多数の者が閲覧できる状態に置いたことなどが認定されており、これらの判決は、1審被告が被告プロフィール画像をアップロードするより前に原告画像を加工した画像がインターネット上に存在していたことを裏付ける証拠であるから、原判決の上記判断は誤りである。」 (2)原判決6頁1行目の「被告プロフィール画像」を「被告プロフィール画像1及び2」と改め、同頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「この点に関し原判決は、Smule社が被告画像1ないし4と被告アカウントとのインラインリンクを切断する措置を講じた後も、少なくともURLを直接入力しさえすれば、自動公衆送信が行われて誰でも被告画像1ないし4を閲覧し得る状態が継続していたのであるから、同措置後にも公衆送信権の侵害状態は継続していた旨判断した。 しかしながら、公衆送信とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信」を行うことをいうところ(著作権法2条1項7号の2)、被告画像1ないし4のURL(甲8ないし11)は、それぞれが、十分な長さと複雑さを有しており、このようなURLを一般公衆が直接ウェブブラウザに入力して被告画像1ないし4のデータを受信することはおよそ考えられないから、少なくともSmule社によるインラインリンク切断後においては、公衆送信権の侵害状態は継続していない。 したがって、原判決の上記判断は誤りである。」 (3)原判決6頁9行目及び16行目の各「被告プロフィール画像」を「被告プロフィール画像1及び2」と、同頁10行目の「著作権侵害」を「複製権及び公衆送信権の侵害」と改める。 2 争点2(1審原告の損害額)について (1審原告の主張) (1)著作権法114条3項に基づく損害額64万8000円 次のとおり訂正するほか、原判決6頁23行目から8頁14行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決6頁23行目の「侵害行為1」を「1審被告の行為1」と、同頁24行目の「侵害行為2」を「1審被告の行為2」と改める。 イ 原判決8頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(当審における1審原告の主張) 原判決は、@1審被告の行為1及び2が一連の不法行為であること、A被告画像1ないし4について、被告アカウントとのインラインリンクの切断措置後にアクセスがあったことを裏付ける証拠がないこと、B1審被告の原告料金表に基づいて使用料が支払われた実例として挙げられているのは2件のみで、それらの事例においても、必ずしも、原告料金表に従った契約がされているものではないことなどを根拠に、原告画像の利用料相当額を1年当たり5万円と認定し、著作権法114条3項に基づく利用料相当損害額を16万2000円と認定した。 しかしながら、上記@の点については、前記1の1審原告の主張(2)イで述べたとおり、1審被告による2回の不法行為があったものと理解されるべきである。 上記Aの点については、少なくとも平成29年2月21日、同年4月26日、平成30年3月5日、同年4月23日及び同年6月13日において、被告各画像にアクセスが可能であったことからすると(甲121ないし160)、被告各画像は、サーバから完全な削除措置が講じられるまで、常にどこからでも誰でもがアクセスすることができたものといえる。 上記Bの点については、1審原告撮影の写真を東京書籍株式会社の紙媒体の教科書(甲59)及びデジタル教科書(甲55)に利用することを許諾した事例において、原告料金表における用途、使用内容、リピート使用による割引等の規定に従って料金額が算定されていることから明らかなように、1審原告は、常に原告料金表に従って利用料を決定しており、その例も豊富に存在する。 さらに、1審原告は、本件と同様に国内サーバにアップロードされた著作権侵害事例では、原告料金表に厳密に従った金額で和解をし、海外サーバにアップロードされた著作権侵害事例では、原告料金表の利用料を1.5倍した金額で和解をしているから(甲92ないし117)、本件の利用料相当損害額を算定するに当たっては、このような事例が参酌されるべきである。 以上の諸事情を総合すれば、1審被告の行為1及び2のそれぞれにつき、少なくとも原告料金表による通常の利用料である5万円を2倍した年間10万円の利用料相当損害額が認められるべきであるから、原判決の上記認定は誤りである。」 (2)内容証明郵便費用 2226円 原判決8頁16行目から21行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (3)発信者情報開示等関係費用 42万円 次のとおり訂正するほか、原判決8頁23行目から10頁9行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決9頁25行目から末行にかけての「KDDI」を「KDDI株式会社(以下「KDDI」という。)」と、同頁末行の「10万8000円」を「4万2000円」と改める。 イ 原判決10頁1行目の「ソフトバンク」を「株式会社ソフトバンク(以下「ソフトバンク」という。)」と、同頁2行目の「原告代理人事務所」を「原告代理人の事務所(以下「原告代理人事務所」という。)」と改め、同頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「したがって、少なくとも原告代理人事務所において任意開示の請求に要した費用である4万2000円(甲76)は、1審被告の各侵害行為と相当因果関係のある損害として認められるべきである。」 (4)著作者人格権侵害による慰謝料 30万円 次のとおり訂正するほか、原判決10頁11行目から23行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決10頁18行目の「損壊しており、」を「損壊し、その侵害態様は苛烈であること、」と、同頁19行目の「虚偽主張をしていること」を「虚偽主張をし、訴訟になっても不合理な弁解を繰り返していること」と改める。 イ 原判決10頁22行目から23行目までを次のとおり改める。 「以上の諸事情に鑑みると、1審被告の著作者人格権侵害行為によって原告が被った精神的損害を慰謝するための慰謝料の額は、30万円を下らない。」 (5)弁護士費用 10万8000円 (6)まとめ 以上によれば、1審原告は、1審被告に対し、本件写真の著作物に係る著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として147万8226円(前記(1)ないし(5)の合計額)及びうち73万9113円に対する平成28年1月7日(1回目の不法行為の日)から、うち73万9113円に対する同年2月18日(2回目の不法行為の日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (1審被告の主張) 次のとおり訂正するほか、原判決10頁末行から12頁2行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決10頁末行を次のとおり改める 「1審原告の損害額の主張は、いずれも争う。」 (2)原判決11頁1行目の「(1)利用料相当損害金について」を「(1)著作権法114条3項に基づく損害額について」と、同頁2行目及び同頁3行目から4行目にかけての各「被告プロフィール画像」を「被告プロフィール画像1及び2」と改める。 (3)原判決11頁9行目から10行目にかけての「著作権侵害」を「複製権及び公衆送信権の侵害」と改め、同頁14行目の「であるから(乙1、2)」を「であり(乙1、2)、被告プロフィール画像1及び2の画質は粗いから」を加える。 (4)原判決11頁16行目から17行目にかけての「認定される損害額」を「著作権法114条3項に基づく損害額」と改め、同頁18行目末に次のとおり加える。 「そして、1審被告は、写真を使用する業界とは無関係な一般私人であり、ペンギンの写真を探して、インターネットの自身の私的な領域であるカラオケアプリにおける自己のプロフィール画像に設定したに過ぎないものである。1審被告のような一般私人が、このようなアプリの自己のプロフィール画像に使用する目的で画像を探す場合、まずは著作権フリーの画像を使用するか、インターネット上で手軽に購入できるPIXTA(乙2)のような業者から画像を購入すれば足り、あえてプロの写真家に対し、原告料金表に記載されたような高額な利用料を支払ってまで画像の利用の許諾を受けることはおよそあり得ない。」 (5)原判決11頁23行目の「KDDI株式会社(以下「KDDI」という。)」を「KDDI」と改め、同頁末行から12頁2行目までを次のとおり改める。 「また、「外国法人の資格証明書」の取得については、実務上マニュアル(乙3)が存在し、数千円程度で容易に取得することができ、あえて弁護士や行政書士等に依頼して取得する必要性に乏しいし、翻訳についても、現在は精度の高い翻訳ソフトを無料で利用することができ、あえて「専門家に依頼」して「1字15円」を支出する必要性も乏しい。米国法人のSmule社に対する仮処分の申立ては、日本法人に対して仮処分の申立てをする場合と難易度及び専門性は変わらない。 さらに、1審原告が保全執行を要したことは、Smule社が裁判所の仮処分命令に従わなかったという異常な事態によるものであるから、保全執行費用は、1審被告の行為と相当因果関係のある損害とはいえない。1審原告提出の保全執行に係る1審原告と原告代理人との委任契約書(甲30)は、マスキング処理がされているが、少なくとも3件分の依頼に相当する委任契約書と推認される。 したがって、1審原告が支出した保全執行費用のうち、本件と相当因果関係がある部分は、多くても3分の1に相当する額である。 (3)著作者人格権侵害による慰謝料について 本来であれば1審原告において1審被告の住所及び氏名を知ることはできなかったが、1審被告が任意にこれを開示し、1審原告と示談することを試みた事情を慰謝料算定に当たって1審被告に十分有利に参酌されなければならない。」 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の1記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決12頁11行目の「原告画像の左右下部に原告氏名表示を施すなどの加工をして、」を「左右下部に原告氏名表示を施すなどの加工をして、別紙原告画像目録記載の原告画像を作成し、」と、同頁17行目の「原告画像の画面上」を「原告画像の2羽のペンギンのうち、」と改める。 (2)原判決12頁20行目の「侵害行為1」を「行為1」と、同頁22行目から23行目にかけての「右のとおりの被告プロフィール画像(以下「被告プロフィール画像1」という。)」を「被告プロフィール画像1」と改め、同頁右下段の画像を削る。 (3)原判決13頁4行目の「被告画像1等」を「被告プロフィール画像1等」と、同頁10行目の「原告画像の画面上」を「原告画像の2羽のペンギンのうち、」と、同頁13行目の「侵害行為2」を「行為2」と、同頁15行目から16行目にかけての「右のとおりの被告プロフィール画像(以下「被告プロフィール画像2」という。)」を「別紙プロフィール画像目録記載2の被告プロフィール画像2」と改め、同頁中段の画像を削る。 2 争点1(本件写真の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の成否)について 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決14頁23行目から15頁11行目までを次のとおり改める。 「(1)著作物の複製(著作権法21条、2条1項15号)とは、著作物に依拠して、その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に再製する行為をいい、著作物の全部ではなく、その一部を有形的に再製する場合であっても、当該部分に創作的な表現が含まれており、独立した著作物性が認められるのであれば、複製に該当するものと解される。 前記1(1)の認定事実によれば、本件写真(別紙写真目録記載の写真)は、1審原告が2羽のペンギンが前後(写真上は左右)に並んで歩いている様子を構図、陰影、画角及び焦点位置等に工夫を凝らし、シャッターチャンスを捉えて撮影したものであり、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、1審原告を著作者とする写真の著作物(同法10条1項8号)に当たるものと認められる。 また、本件写真の2羽のペンギンのうち、右側のペンギンのみを被写体とする部分は、著作物である本件写真の一部であるが、当該部分にも構図、陰影、画角及び焦点位置等の点において、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、独立した著作物性があるものと認められる。同様に、本件写真の2羽のペンギンのうち、左側のペンギンのみを被写体とする部分は、著作物である本件写真の一部であるが、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、独立した著作物性があるものと認められる。 しかるところ、前記1(2)ないし(4)の認定事実によれば、1審被告は、平成28年1月7日頃、1審原告が本件写真を画像データ化した原告画像をインターネットのウェブサイトからダウンロードし、同日頃には、原告画像の2羽のペンギンのうち、右側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をし、原告画像に存在した原告氏名表示を削除した上で、当該画像データを本件サービスの被告アカウントのプロフィール画像として使用するためにアップロードし、同年2月18日頃には、原告画像の2羽のペンギンのうち、左側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をし、原告画像に存在した原告氏名表示を削除した上で、当該各画像データを本件サービスの被告アカウントのプロフィール画像として使用するためにアップロードし、これらのアップロードにより、被告各画像の画像データは、URLが付された状態でSmule社が使用する米国のサーバ内に格納されて、本件写真の一部が有形的に再製され、送信可能化されたものと認められるから、1審被告の上記各行為(行為1及び2)は、それぞれが、1審原告の有する本件写真の複製権及び公衆送信権の侵害に当たるとともに、1審原告の氏名表示権及び同一性保持権の侵害に当たるものと認められる。」 (2)原判決15頁15行目から18行目までを削る。 (3)原判決16頁1行目の「被告プロフィール画像に用いた画像は既に加工された状態で」を「被告プロフィール画像1及び2に用いた画像は既に1羽ずつのペンギンの画像に加工された状態で」と、同頁4行目の「被告プロフィール画像」を「被告プロフィール画像1及び2に使用する画像」と改める。 (4)原判決16頁8行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「これに対し1審被告は、1審原告は、原告画像に関して本件と同様の訴訟を複数提起し、例えば、乙9の1、2の2件の判決においては、「氏名不詳者」が、原告画像をトリミングした画像のデータをサーバ上にアップロードすることによって、不特定多数の者が閲覧できる状態に置いたことなどが認定されており、これらの判決は、1審被告が被告プロフィール画像1及び2をアップロードするより前に原告画像を加工した画像がインターネット上に存在していたことを裏付ける証拠である旨主張する。 しかしながら、証拠(甲161、162)及び弁論の全趣旨によれば、1審被告が指摘する乙9の1の判決(札幌地方裁判所平成30年6月15日判決(平成28年(ワ)第2097号))及び乙9の2の判決(札幌地方裁判所平成30年5月18日判決(平成28年(ワ)第2097号))において認定されたアップロードされた原告画像の加工画像は、いずれも2羽のペンギンを被写体とするものであって、1羽のペンギンのみを被写体とする被告プロフィール画像1及び2、被告各画像とはペンギンの数が異なるものと認められるから、乙9の1、2の2件の判決は、被告プロフィール画像1及び2、被告各画像と同様にトリミングされた画像データが被告プロフィール画像1及び2のアップロード前にインターネット上に存在していたことを裏付けるものではない。 したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。」 (5)原判決16頁9行目及び同行目から10行目にかけての「被告プロフィール画像」を「被告プロフィール画像1及び2」と改め、同頁13行目から24行目までを次のとおり改める。 「しかしながら、前記(1)認定のとおり、本件写真の2羽のペンギンのうち、右側のペンギンのみを被写体とする部分及び左側のペンギンのみを被写体とする部分は、それぞれ著作物である本件写真の一部であるが、当該部分にも構図、陰影、画角及び焦点位置等の点において、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、独立した著作物性があるものと認められる。 そして、被告プロフィール画像1に対応する被告画像1ないし4は、原告画像の画像上右側の1羽のペンギンをその背景とともに切り出したものであり、被告プロフィール画像2に対応する被告画像5ないし8は、原告画像の画像上左側の1羽のペンギンをその背景とともに切り出したものであることに照らすと、上記各画像から本件写真の上記各部分の本質的特徴を感得できるものと認められる。また、被告プロフィール画像1及び2として表示される画像の画質が粗いため、本件写真の上記各部分の本質的特徴を感得することができないとはいえない。 したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。」 (6)原判決17頁2行目の「行っていないから」を「行っておらず、十分な長さと複雑さを有する被告画像1ないし4のURLを一般公衆が直接ウェブブラウザに入力して被告画像1ないし4のデータを受信することはおよそ考えられないから」と改める。 (7)原判決17頁4行目の「しかし、」の次に「一般人が被告画像1ないし4のURLを入力することが困難であるということはできず、」を加える。 (8)原判決17頁8行目から10行目までを次のとおり改める。 「(3)以上によれば、1審被告の行為1及び2は、それぞれが、1審原告の有する本件写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害行為に当たるものであって、その侵害について、1審被告には少なくとも過失があったものと認められるから、1審被告は、1審原告に対し、民法709条に基づき、上記各行為により1審原告が被った損害を賠償する責任を負う。」 3 争点2(1審原告の損害額)について 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の3記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原判決17頁12行目の「(1)利用料相当損害金について」を「(1)著作権法114条3項に基づく損害額について」と、同頁21行目の「に対する2件」を「並びにJRパンフレットに係る3件」と、同頁23行目の「(甲54〜60)」を「(甲54ないし60、116、117)」と改める。 (2)原判決18頁8行目の「使用料相当額」を「著作権法114条3項に基づく損害額(利用料相当額)」と、同頁10行目の「使用料相当額」を「利用料相当額」と改め、同頁11行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「また、前記(1)の認定事実によれば、1審被告の行為1及び2は、独立した行為ではあるが、それぞれ、1個の著作物である本件写真の一部である右側のペンギンのみを被写体とする部分(右側部分)及び左側のペンギンのみを被写体とする部分(左側部分)を複製及び公衆送信化したものであるから、全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価することができる。」 (3)原判決18頁12行目から13行目にかけての「被告プロフィール画像に」を「オンライン・カラオケサービスである本件サービスの被告アカウントの自己のプロフィール画像として」と改める。 (4)原判決19頁6行目から7行目にかけての「原告氏名表示を外しており、」を削り、同頁14行目の「アップロード先」の次に「、1審被告の行為1及び2は、独立した行為ではあるが、それぞれ、1個の著作物である本件写真の右側部分と左側部分をそれぞれ複製及び公衆送信化したものであって、全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価することができること」を加える。 (5)原判決19頁16行目から17行目にかけての「被告による各侵害行為が一連かつ一個の不法行為であると解されること」を「1審被告の侵害行為の態様」と改め、同頁21行目の「16万2000円」を「合計16万2000円」と改める。 (6)原判決19頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「カ これに対し1審原告は、@本件においては、1審被告の行為1及び2による2回の不法行為があったものと理解すべきであること、A少なくとも、平成29年2月21日、同年4月26日、平成30年3月5日、同年4月23日及び同年6月13日において、被告各画像にアクセスが可能であったことからすると(甲121ないし160)、被告各画像は、サーバから完全な削除措置が講じられるまで、常にどこからでも誰でもがアクセスすることができたこと、B1審原告は、常に原告料金表に従って利用料を決定しており、その例も豊富に存在すること、C1審原告は、本件と同様の著作権侵害事例において、国内サーバにアップロードされた事例で原告料金表に厳密に従った金額で和解しており(甲92ないし117)、また、海外サーバにアップロードされた場合に原告料金表の利用料を1.5倍した金額で和解した事例もあることから、このような事例が参酌されるべきであることなどを理由に、1審被告の行為1及び2のそれぞれにつき、原告料金表による通常の利用料である5万円を2倍した年間10万円の利用料相当額が認められるべきである旨主張する。 しかしながら、上記@の点について、前述のとおり、1審被告の行為1及び2は、独立した行為ではあるが、全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価することができる。 上記Aの点については、1審原告が挙げる甲121ないし160から、平成28年2月13日頃のインラインリンクの切断措置後においても被告画像1ないし4がウェブサイト上で公開されていたこと及び1審原告自身によって上記各画像がダウンロードされたことは認められるが、1審原告以外の第三者が実際に被告画像1ないし4にアクセスしたとまで認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 上記Bの点については、証拠(甲55、59、116、117)及び弁論の全趣旨によれば、東京書籍株式会社の紙媒体の教科書及びデジタル教科書並びにJRパンフレットについては原告料金表に従って料金額が算定されたことがうかがわれるものの、他の事例についても、常に原告料金表を厳格に適用して利用料が決定され、その決定された利用料が実際に支払われていたことを認めるに足りる証拠はない。 上記Cの点については、1審原告が挙げる和解事例は、本件写真と異なる被写体の写真に関するものであって、利用の行為態様も本件と異なること、和解に至った具体的な経過が明らかでないことに照らすと、上記和解事例が本件に直ちに妥当するものと認めることはできない。 したがって、1審原告の上記主張は、採用することができない。」 (7)原判決20頁2行目末尾に行を改めて「(3)発信者情報開示等関係費用について」を加え、同頁3行目の「(3)」を「ア」と、同頁4行目の「ア」を「(ア)」と改める。 (8)原判決20頁6行目から7行目にかけての「同額は」から8行目の「であること」までを「1審原告と原告代理人間の委任契約においては、上記着手金27万円には、申立書等の英訳費用やSmule社の資格証明書の取得費用も含むものとし、1審原告が翻訳業者に別途頼まざるを得ない状況が発生したときは着手金の金額を15万円(税別)に減額する旨の合意がされていたこと」と改める。 (9)原判決20頁17行目の「イ」を「(イ)」と改める。 (10)原判決20頁21行目の「要することなどを」から23行目末尾までを次のとおり改める。 「要することが認められる。 しかしながら、他方で、仮処分申立事件において、裁判所に提出する書類の訳文に係る翻訳料は、民事訴訟費用等に関する法律2条8号の費用に該当し、債権者の申立てが認容された場合には債務者が負担することになるから(民事保全法7条、民事訴訟法61条)、本件仮処分事件の債権者であって、その申立てが認容された1審原告は、本来、1審被告ではなく本件仮処分の債務者であるSmule社から、上記の費用の支払を受けるべきものである。そして、前記(ア)の1審原告と原告代理人間の委任契約に係る着手金に含まれるとされる英訳費用相当分について、Smule社ではなく1審被告に負担させるべき特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記英訳費用相当分については、1審被告の不法行為と相当因果関係がある損害と認めることはできない。 (ウ)以上の諸事情を総合考慮すると、1審被告の不法行為と相当因果関係のある本件仮処分申立費用に係る損害額は、15万円と認めるのが相当である。」 (11)原判決20頁24行目の「(4)」を「イ」と改め、同頁25行目の「前記認定事実」を「(ア)前記認定事実」と改める。 (12)原判決21頁13行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(イ)これに対し1審被告は、保全執行に係る1審原告と原告代理人との委任契約書(甲30)は少なくとも3件分の依頼に相当する委任契約書と推認されるから、1審原告が支出した保全執行費用のうち、本件と相当因果関係がある部分は多くても3分の1に相当する額である旨主張する。 しかしながら、甲30(平成29年7月17日付け委任契約書)の第1条の「A」には、本件間接強制申立てに係る間接強制申立事件の弁護士報酬として「B弁護士報酬金10万円(…)税別」と明記されていることに照らすと、1審原告と原告代理人は、甲30をもって、本件間接強制申立てに係る弁護士報酬を10万円(税別)と合意したことが認められるから、1審被告の上記主張は採用することができない。」 (13)原判決21頁14行目の「(5)」を「ウ」と改め、同頁25行目末尾に「また、1審原告が主張する原告代理人事務所において任意開示の請求に要した費用(4万2000円)についても、これと同様である。」を加える。 (14)原判決22頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「エ まとめ 以上によれば、1審被告の不法行為と相当因果関係のある発信者情報開示等関係費用の損害額は、合計25万8000円と認められる。」 (15)原判決22頁2行目の「(6)慰謝料について」を「(4)著作者人格権侵害に係る慰謝料について」と改める。 (16)原判決22頁3行目の「原告画像」を「2羽のペンギンを被写体とする本件写真を電子データ化した原告画像」と改め、同頁5行目の「侵害したものであって、」の次に「改変の程度も大きいことに照らすと、」を加える。 (17)原判決22頁11行目の「その他、」を「その他、1審被告が自己の住所及び氏名を1審原告に自ら開示した経緯等」と、同頁12行目の「10万円」を「10万円(氏名表示権侵害に係る分4万円及び同一性保持権侵害に係る分6万円の合計額)」と改める。 (18)原判決22頁13行目の「(7)」を「(5)」と、同頁14行目の「認容額等」を「認容額、本件訴訟に至る経緯、本件訴訟の審理経過等」と、同頁15行目の「弁護士費用相当損害金として7万円を」を「弁護士費用相当額の損害は、6万円と」と改める。 (19)原判決22頁17行目から20行目までを次のとおり改める。 「(6)小括 以上によれば、1審原告は、1審被告に対し、本件写真の著作物に係る著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として58万2226円(前記(1)ないし(5)の合計額)及びうち29万1113円に対する平成28年1月7日(本件写真の右側部分に係る不法行為の日)から、うち29万1113円に対する同年2月18日(本件写真の左側部分に係る不法行為の日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。」 4 結論 以上によれば、1審原告の請求は、58万2226円及びうち29万1113円に対する平成28年1月7日から、うち29万1113円に対する同年2月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないから棄却すべきである。 したがって、1審被告の控訴の一部は理由があるから、これに基づき原判決を上記のとおり変更することとし、1審原告の控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 大鷹一郎 裁判官 國分隆文 裁判官 筈井卓矢 |
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