判例全文 | ||
【事件名】NTTコムへの発信者情報開示請求事件H 【年月日】令和元年12月12日 東京地裁 平成31年(ワ)第11185号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和元年10月28日) 判決 原告 SODクリエイト株式会社 同訴訟代理人弁護士 鶴谷秀哲 被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 同訴訟代理人弁護士 松田真 主文 1 被告は、原告に対し、別紙1発信者情報目録記載の情報を開示せよ。 2 被告は、原告に対し、別紙2発信者情報目録記載の情報を開示せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文と同旨 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告のインターネット接続サービスを介してインターネット上のウェブサイトに投稿された別紙動画目録1及び2記載の動画(以下「本件各動画」という。なお、個別の動画をいうときには、別紙動画目録の番号を用いて、「本件動画1」などという。)は、原告が著作権を有する動画の一部を抜き出し繋ぎ合わせたものであり、原告の上記動画に係る公衆送信権を侵害するものであることが明らかであるとして、経由プロバイダである被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件各動画の投稿に関する別紙1及び2の各「発信者情報目録」記載の情報(以下、これらを併せて「本件各発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、末尾の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。なお、枝番号の記載を省略したものは、枝番号を含む(以下同様)。) (1)当事者 ア 原告は、主にアダルトビデオの制作、販売を業とする株式会社である。 イ 被告は、インターネットサービス等の電気通信事業を営む株式会社であり、本件各動画の投稿に係る法4条1項の開示関係役務提供者に当たる。 (2)本件各動画の投稿等 ア 氏名不詳者は、別紙動画目録1及び2の「投稿日時」欄記載の日時において、インターネット上のウェブサイトである「FC2動画アダルト」(以下「本件サイト」という。)に本件各動画を投稿した(甲1、2、9)。 イ 原告は、別紙原告作品目録記載の各動画作品(以下「原告各作品」といい、同目録記載1の作品を「原告作品1」、同目録記載2の作品を「原告作品2」という。)の著作権者である(甲5、6、10)。 (3)被告は本件各発信者情報を保有している。 2 争点 (1)権利侵害の明白性 (2)開示を受けるべき正当な理由の有無 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(権利侵害の明白性)について 【原告の主張】 (1)本件動画1について 原告作品1においては、その非現実的な設定や、各出演者の非現実的かつ特異的な台詞、表情、カメラアングル等の随所に表現性が見られるところ、本件動画1は、氏名不詳の発信者が、別表1記載のとおり、このような原告作品1の各シーンをそれぞれ切り抜いてそのまま繋げたものである。しかして、同人が本件動画1を本件サイトのサーバにアップロードした行為につき、著作権法に規定された権利制限事由は認められないから、同行為が、原告作品1に係る原告の公衆送信権を侵害することは明らかである。 (2)本件動画2について 原告作品2においても、その非現実的な設定や、各出演者の非現実的かつ特異的な台詞、表情、カメラアングル等の随所に表現性が見られるところ、本件動画2は、氏名不詳の発信者が、別表2記載のとおり、このような原告作品2の各シーンをそれぞれ切り抜いてそのまま繋げたものである。しかして、同人が本件動画2を本件サイトのサーバにアップロードした行為につき、著作権法に規定された権利制限事由は認められないから、同行為が、原告作品2に係る原告の公衆送信権を侵害することは明らかである。 【被告の主張】 本件各動画は、原告各作品と比して、いずれも再生時間が著しく短いものであることなどに照らし、原告の上記主張は、いずれも成り立たない。 2 争点2(開示を受けるべき正当な理由の有無)について 【原告の主張】 原告は、本件各動画をアップロードした発信者に対して、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるところ、この権利を行使するためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受けることが必須である。 【被告の主張】 原告の上記主張は、争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(権利侵害の明白性)について (1)証拠(甲9、10)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 原告作品1は、総再生時間が2時間の動画であるところ、本件動画1は、別表1の再生時間において、原告作品1の一部と一致する。 イ 原告作品2は、総再生時間3時間12分9秒の動画であるところ、本件動画2は、別表2の再生時間において、原告作品2の一部と一致する。 (2)ア 上記(1)アの認定事実並びに証拠(甲3、9、10)及び弁論の全趣旨によれば、本件動画1は、別表1の再生時間において、原告作品1の一部を抜き出しそのまま繋ぎ合わせたものであり、総再生時間は原告作品1に比して短いものの、繋ぎ合わせた各シーンの内容等に照らし、原告作品1と実質的に同一のものであるといえる。 イ 上記(1)イの認定事実並びに証拠(甲4、9、10)及び弁論の全趣旨によれば、本件動画2は、別表2の再生時間において、原告作品2の一部を抜き出しそのまま繋ぎ合わせたものであり、総再生時間は原告作品2に比して短いものの、繋ぎ合わせた各シーンの内容等に照らし、原告作品2と実質的に同一のものであるといえる。 (3)前記第2の1(2)及び上記(2)によれば、氏名不詳の発信者は、原告各作品と実質的に同一のものである本件各動画をそれぞれ本件サイトのサーバにアップロードして、公衆に送信し得る状態に置いたものであるところ、本件において、発信者の上記行為について著作権法に規定された権利制限事由が存在することを示す事情を認めるに足りる証拠はなく、本件各動画の投稿により、原告の公衆送信権が侵害されたことは明らかである。 2 争点2(開示を受けるべき正当な理由の有無)について 前記第2の1(1)及び(3)記載のとおり、被告は、本件各動画の投稿につき、法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当し、本件各発信者情報を保有している。そして、上記1で説示したとおり、本件各動画の投稿により原告の公衆送信権が侵害されたことは明らかであるから、原告が本件各動画の投稿者に対する損害賠償請求等を行うために、被告に対して本件各発信者情報の開示を求めることには正当な理由がある。 3 結論 以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 田中孝一 裁判官 奥俊彦 裁判官 本井修平 別紙1 発信者情報目録 別紙2 発信者情報目録 別紙動画目録1 別紙動画目録2 別紙 原告作品目録 別表1 別表2 |
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