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【事件名】“マリカー”不正競争事件(2) 【年月日】令和元年5月30日 知財高裁 平成30年(ネ)第10081号 不正競争行為差止等請求控訴事件、 平成30年(ネ)第10091号 著作権侵害差止請求権不存在確認請求反訴事件 (原審・東京地裁平成29年(ワ)第6293号 不正競争行為差止等請求事件) (口頭弁論終結日 平成31年3月12日) 中間判決 控訴人・被控訴人・反訴被告(一審原告) 任天堂株式会社(以下「一審原告」という。) 同訴訟代理人弁護士 松田俊治 同 田島弘基 同 小槻英之 控訴人・被控訴人・反訴原告(一審被告) 株式会社MARIモビリティ開発(以下「一審被告会社」という。) 同訴訟代理人弁護士 長沢幸男 同補佐人弁理士 正林真之 同 齋藤拓也 同 被控訴人(一審被告) Y(以下「一審被告Y」という。) 一審被告ら訴訟代理人弁護士 内田公志 同 鮫島正洋 同 高瀬亜富 同 永島太郎 主文 1 一審原告の一審被告らに対する、一審被告会社及び別紙店舗目録記載の各店舗における原判決別紙被告標章目録第1記載の標章、同被告標章目録第2記載のコスチューム及び人形を使用する行為並びに同ドメイン名目録記載のドメイン名を使用する行為についての不正競争防止法違反を理由とする損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がある。 2 反訴請求に係る訴えは不適法である。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。原判決中の別紙を「原判決別紙」と読み替える。 第1 当事者の求めた裁判 1 一審原告 原判決主文1、2、5~7項を次のとおり変更する。 (1)一審被告会社は、営業上の施設及び活動において、原判決別紙被告標章目録第1記載1~4の各標章を使用してはならない。 (2)一審被告会社は、前項記載の標章を、前項記載の営業上の施設、広告宣伝物及びカート車両から抹消せよ。 (3)一審被告会社は、原判決別紙ドメイン名目録記載1~4の各ドメイン名を使用してはならない。 (4)一審被告会社は、原判決別紙ドメイン名目録記載2のドメイン名の登録を抹消せよ。 (5)一審被告らは、一審原告に対し、連帯して、5000万円及びこれに対する平成30年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(一審原告は、当審において、原審における1000万円の損害賠償請求を5000万円に拡張するとともに、遅延損害金の起算日を平成30年3月31日に繰り下げた。)。 2 一審被告会社 (1)原判決のうち一審被告会社敗訴部分を取り消す。 (2)上記の部分につき、一審原告の請求をいずれも棄却する。 (3)一審原告の当審において拡張した請求を棄却する。 (4)一審原告は、一審被告会社が別紙コスチューム目録1~4記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を公衆送信する行為について、別紙反訴被告表現物目録1~4記載の表現物に関する複製権及び公衆送信権に基づき、これを差し止める権利を有しないことを確認する。 第2 事案の概要 1 事案の経緯等 (1)本件は、一審原告が、一審被告会社による①一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告文字表示(原告文字表示マリオカート及び原告文字表示マリカー)と類似する被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が、不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に、②一審原告が著作権を有する原告表現物と類似する部分を含む本件各写真及び本件各動画を作成してインターネット上のウェブサイトへアップロードする本件掲載行為が、一審原告の著作権(複製権又は翻案権、自動公衆送信権及び送信可能化権)侵害に、③一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告表現物又は原告立体像と類似する商品等表示である被告標章第2を使用する行為である本件宣伝行為(本件掲載行為、従業員のコスチューム着用行為及び店舗における人形の設置行為からなる行為)が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に、④一審原告の特定商品等表示である原告文字表示と類似する本件各ドメイン名の使用が、不競法2条1項13号の不正競争行為に、⑤原告表現物の複製物又は翻案物である本件各コスチュームを利用者に貸与する本件貸与行為が、一審原告の著作権(貸与権)侵害に、それぞれ該当すると主張し、一審被告らに対して以下の各請求をした事案である。 ア 一審被告会社に対し (ア)不競法3条1項及び2項に基づき、上記①につき被告標章第1の使用差止め、同抹消及び商号登記の抹消登記手続、上記③につき被告標章第2の使用差止め並びに本件各写真及び本件各動画の削除及びデータ廃棄、上記④につき本件各ドメイン名の使用差止め及び本件ドメイン名2、4の登録抹消。著作権法112条1項及び2項に基づき、上記②につき原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信、送信可能化の各差止め並びに本件各写真及び本件各動画の削除及びデータ廃棄、上記⑤につき本件貸与行為の差止め。 イ 一審被告らに対し 一審被告会社に対し、不競法4条、5条3項1号及び4号又は民法709条及び著作権法114条3項に基づき、一審被告Yに対し、会社法429条1項に基づき、損害賠償の一部請求として、1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年3月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払。 (2)原判決は、要旨、以下のア~キのとおり判断し、前記(1)の各請求について、被告標章第1の使用差止め及び同抹消(外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシについてのものを除く。)、被告標章第2の使用差止め、本件各動画のデータ廃棄、本件各ドメイン名の使用差止め(外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合を除く。)並びに一審被告会社に対する損害金1000万円及びこれに対する不正競争行為の最終日である平成30年3月31日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した。 ア 一審被告会社による被告標章第1の使用行為について、原告文字表示マリカーが日本語を解しない者の間で周知であったとは認められないから、外国語のみで記載されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用の差止及び抹消請求は理由がないが、その余の行為は、不競法2条1項1号の不正競争行為に該当するから、使用の差止及び抹消請求は理由がある。一審被告会社が商号を変更したため、商号登記の抹消登記手続請求は理由がない。 イ 本件宣伝行為(ただし、本件写真1に関するものを除く。以下、「本件制作行為」、「本件掲載行為」、「本件宣伝行為」というときには、その中には本件写真1に関するものは含まれないこととする。)は、不競法2条1項1号の不正競争行為に該当するから、被告標章第2の使用差止請求は理由がある。本件各写真及び本件各動画は既に削除されているため削除請求は理由がなく、本件各写真のデータについては、不正競争行為とならない利用法があるから、その廃棄請求は理由がないが、本件各動画のデータの廃棄請求は理由がある。 ウ 本件各ドメイン名の使用行為は、不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するが、本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為は、一審原告の営業上の利益を侵害するものではない。また、一審被告会社は、本件ドメイン名4の登録を抹消している。したがって、本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為の差止請求は理由がないが、その余の本件各ドメイン名の使用差止請求は理由がある。本件ドメイン名2の登録抹消請求は、上記のとおり差止めが認められない場合があることからすると、理由がなく、本件ドメイン名4の登録抹消請求は理由がない。 エ 差止めの必要性を認めるに足りる立証がないから、原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信及び送信可能化の各差止請求はいずれも理由がない。 オ 被告標章第2の2・3・5・6・8・10のコスチュームと本件各コスチュームは同じものであり、不競法に基づく被告標章第2の使用差止めの中には本件貸与行為の禁止が含まれるから、上記差止請求と選択的併合の関係にある著作権に基づく本件貸与行為の差止請求を判断する必要はない(以下、被告標章第2の1~10のコスチュームを併せて「被告標章第2のコスチューム」ということがある。)。 カ 一審被告Yについて、一審被告会社の職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったとは認められないから、一審被告Yに対する会社法429条1項に基づく請求は理由がない。 キ 一審被告会社に対する損害賠償請求は、その全額(1000万円)について理由がある。遅延損害金は、不正競争行為の最終日である平成30年3月31日から生じる。 (3)一審原告は、原判決のうち、①外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用の差止請求並びに外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシからの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分、②本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為の差止請求及び本件ドメイン名2の登録抹消請求を棄却した部分、③一審被告Yに対する損害賠償請求を棄却した部分を不服として控訴を提起するとともに、損害賠償請求の金額を1000万円から5000万円に増額し、併せて遅延損害金の起算日を平成30年3月31日に繰り下げた。 他方、一審被告会社は、一審被告会社の敗訴部分を不服として控訴を提起するとともに、反訴を提起し、一審被告会社が別紙コスチューム目録記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を公衆送信する行為について、一審原告が、別紙反訴被告表現物目録1~4記載の表現物に関する複製権及び公衆送信権に基づき、これを差し止める権利を有しないことの確認を求めたが、一審原告は、同反訴の提起については同意しない旨述べた。 原判決のうち、本件写真1の作成・アップロードが不正競争行為又は著作権(複製権、翻案権、自動公衆送信権、送信可能化権)侵害に該当しないとした部分、カート車両以外の自動車、自転車及び軽車両からの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分、一審被告会社の商号登記の抹消登記手続請求を棄却した部分、本件各写真及び本件各動画の削除並びに本件各写真のデータの廃棄請求を棄却した部分、本件ドメイン名4の登録抹消請求を棄却した部分並びに原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信、送信可能化の差止請求を棄却した部分は、当審における審理判断の対象となっていない。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1)当事者 ア 一審原告は、娯楽用品、運動具、音響機器及び乗物の製造及び販売、ゲーム、映像及び音楽等のコンテンツの制作、製造及び販売、キャラクター商品の企画、製造及び販売並びに知的財産権の許諾等を業とする株式会社である(甲1)。 イ 一審被告会社は、自動車等の売買、リース、レンタル等を業とする株式会社であり、平成27年6月4日に設立された(甲2)。 ウ 一審被告Yは、一審被告会社の代表取締役である(甲2)。 (2)一審原告によるゲームソフト「マリオカート」シリーズの開発販売 ア 一審原告は、平成4年8月27日、ゲーム機種スーパーファミコン用のゲームソフトとして「スーパーマリオカート」を発売し、平成29年4月28日までの間に、合計9イトルの「マリオカート」シリーズのゲームソフトを販売した(甲7、甲8の1~9)。 「マリオカート」は、「マリオ」、「ルイージ」、「ヨッシー」、「クッパ」等のキャラクターが、カートに乗車して様々なコースを走行し、レース等を繰り広げることを特徴とするゲームシリーズである(甲8の1~9)。 イ 原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパは、人物又は生物のイラストで、絵画の著作物であり、一審原告が著作権を有する。原告表現物は、「スーパーマリオブラザーズ」をはじめとする一審原告の一連のゲームシリーズである「マリオ」シリーズ等に登場し、「マリオカート」シリーズにもカートの運転手として登場するキャラクターであるマリオ、ルイージ、ヨッシー及びクッパの人物又は生物としての表現上の特徴を再現したといえるものである。(甲7、甲8の1~9、甲94の1~4)。 (3)一審被告会社等による公道カート等のレンタル事業 ア 一審被告会社は、設立時である平成27年6月4日から、少なくとも品川組合の組合契約の効力が発生する日の前日である平成28年6月23日までの間、「MariCAR」との屋号を用いて、本件貸与行為を含む公道を走行することが可能な公道カートのレンタル及びそれに付随する事業からなる本件レンタル事業を営んでいた(甲62の1、弁論の全趣旨)。 イ 別紙店舗目録記載のとおり、①「MariCAR」との屋号を用いて営業している品川第1号店、渋谷店、秋葉原第1号店、大阪店及び沖縄店の5店舗(甲143の1~5、以下、併せて「MariCAR店舗」という。)、②「STREET KART」との表示をウェブサイト等で用いている品川第2号店、秋葉原第2号店、東京ベイBBQ店、横浜店及び京都店の5店舗(甲143の6~8・10・11)と「SAMURAI」という表示をウェブサイト等で用いている浅草店(甲143の9、以下、品川第2号店、秋葉原第2号店、東京ベイBBQ店、横浜店、京都店及び浅草店を併せて「STREET KART店舗」という。)、③富士河口湖店(甲6の2、乙116)並びに④六本木店の合計13店舗(以下、上記各店舗を併せて「本件各店舗」という。)が存した。 ウ 一審被告ら主張に係る本件レンタル事業に関係する組合や会社等として、品川組合(平成28年6月24日組合契約の効力発生、平成29年12月20日解散)及び品川観光有限責任事業組合(平成29年12月20日組合契約の効力発生)、秋葉原組合(平成29年6月13日組合契約の効力発生)、沖縄組合(平成29年6月26日組合契約の効力発生)、新木場カート有限責任事業組合(平成29年6月19日組合契約の効力発生。以下「新木場組合」という。)、株式会社マリカー大阪(平成28年10月14日設立。以下「マリカー大阪」という。)、株式会社PLAN-S(平成28年6月8日設立。以下「PLAN-S」という。)、エコカート合同会社(平成27年1月22日設立。以下「エコカート」という。)、合同会社STREET・KART(以下「STREET・KART」という。)、侍カート浅草がある(甲121の1~4、乙48の1~5、乙112、弁論の全趣旨。以下、これらを総称して「関係団体」という。)。 (4)一審被告会社、MariCAR店舗、富士河口湖店における被告標章第1、被告標章第2及び本件各ドメイン名の使用 ア 一審被告会社 (ア)一審被告会社は、平成27年6月4日の設立時から平成30年3月21日まで、被告標章第1の1を含む「株式会社マリカー」との商号を用いていたが、同月22日付けで、その商号を「株式会社MARIモビリティ開発」に変更した(乙84)。 (イ)一審被告会社は、平成29年2月23日当時、本件ドメイン名2を用いて、被告会社サイトを開設しており、同サイト上に、①「マリカー・ハロウィンイベント実施」、「マリカーAmazon店が正式OPEN」、「マリカーYahoo!Japanショッピング店が正式」、「マリカーに乗って道路を走っていると自然と笑顔になる。」との被告標章第1の1を含む記載をするとともに、②被告標章第1の3の「MARICAR」との文字及びカートに乗った人物を組み合わせた本件ロゴを複数掲載し、また、③黄色の文字で、被告標章第1の2を含む「MariCar.jp」との記載がある公道カートの写真を掲載して同標章を表示していた(甲6の3)。 なお、本件ロゴは、カートの図形部分と被告標章第1の3の文字部分を明示的に区別して認識できる上、被告標章第1の3の文字部分は、文字で目立ちやすいことを考え併せると、被告標章第1の3の文字部分は要部であり、また、「MariCar.jp」の「.jp」には、識別力がないか乏しいから、「MariCar.jp」の要部は「MariCar」である。 イ MariCAR店舗 (ア)品川第1号店 a ウェブサイトにおける被告標章第1の使用 (a) 品川第1号店は、本件ドメイン名1を用いて品川第1号店サイト1を開設しており、平成29年2月23日当時、同サイトには、①「マリカーとは?」、「マリカーは、日本最大級の公道カートのレンタル&ツアーサービスです」、「みんなで日本一の公道カート『マリカー』を楽しんじゃってください!!ぜひ日本最大級のマリカーに遊びに来て下さい!」と被告標章第1の1を含む記載がされていた上、②本件ロゴが記載されていた(甲6の1)。 (b) 品川第1号店は、本件ドメイン名4を用いた品川第1号店サイト2も開設している。 品川第1号店サイト2には、平成29年8月10日及び同年11月14日当時、①「私たち、マリカーは、毎日通常通りに営業を行っております。マリカーは法律を遵守しており、今後も法律に則って運営して参ります。」、「マリカーに合わせて楽しいオプションをご用意。」として被告標章第1の1を含む記載がされていた上、②本件ロゴが記載されていた(甲74、甲102の1)。 ((c) 原判決後、品川第1号店サイト1及び2の中から日本語表記はなくなり、品川第1号店サイト2は、英語や中国語等の外国語での表記のみで構成されることになったものの、平成30年11月12日時点及び同月29日時点では、本件ロゴが冒頭部分に記載されていた(甲143の1、乙93の1、弁論の全趣旨)。 b 本件チラシにおける被告標章第1の使用 平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されていた本件チラシには日本語版と英語版の2種類があり、日本語版には、①「マリカーは、普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタル&ツアーサービスです。」、「マリカーは普通運転免許(AT可)が必要なアクティビティです!」との被告標章第1の1を含む記載があり、日本語版と英語版の双方に、②その左上部分に本件ロゴが記載されており、③右上部分に「maricar.com」との記載がされていた(甲3、4)。 なお、「maricar.com」の「.com」には識別力がないか乏しいから、「maricar.com」の要部は「maricar」である。 c 本件名刺における被告標章第1の使用 品川第1号店においては、平成28年11月15日当時、本件ロゴが印刷された本件名刺が配布されていた(甲4、57)。 d 本件貸与行為 品川第1号店は、遅くとも平成28年1月11日頃から現在までの間、本件貸与行為を行っている(甲6の1・4、甲39、甲42の13、甲43の13、甲75の1、甲105の1、甲106の5・8、乙92の1、弁論の全趣旨)。 e 本件マリオ人形(被告標章第2の11)の使用行為 品川第1号店においては、遅くとも平成28年6月4日頃から平成29年2月24日頃までの間、店舗内の入口付近に、入口側に背を向ける方向で、身長120㎝ほどの本件マリオ人形が設置されていた(甲4、84、甲108の1・2)が、本件マリオ人形は、遅くとも同年6月16日までに撤去された(弁論の全趣旨)。 (イ)秋葉原第1号店 a ウェブサイト上における被告標章第1の使用 (a) 秋葉原第1号店は本件ドメイン名1、4を用いて二つのウェブサイトを開設しており、平成29年10月2日当時は秋葉原第1号店サイト2に、平成30年5月7日当時は秋葉原第1号店サイト1及び2に、前記の品川第1号店サイト2の記載と同一の記載がされていた(甲132の1・2、乙41の6)。 (b) 原判決後、前記(ア)a⒞の品川第1号店サイト2と同様に秋葉原第1号店サイト2から日本語表記はなくなったものの、平成30年10月10日、同年11月12日時点及び同月29日時点で本件ロゴが秋葉原第1号店サイト2上に記載されていた(甲143の2、甲144の1、乙93の2、弁論の全趣旨)。 b 本件貸与行為 秋葉原第1号店においては、現在も本件貸与行為が行われている(甲137、乙92の1、弁論の全趣旨)。 (ウ)渋谷店 a ウェブサイト上における被告標章第1の使用 渋谷店は、本件ドメイン名4を用いて渋谷店サイトを開設しており、平成29年10月2日当時、同サイト上には、前記(ア)a(b)の品川第1号店サイト2と同一の記載がされていた(乙41の7)。 原判決後、前記(ア)a(c)の品川第1号店サイト2と同様に渋谷店サイトからは日本語表記がなくなったものの、平成30年11月12日時点及び同月29日時点で、本件ロゴが渋谷店サイト上に記載されていた(甲143の3、乙41の7、乙93の3)。 b 本件貸与行為 渋谷店においては、現在も本件貸与行為が行われている(乙92の1、弁論の全趣旨)。 (エ)大阪店 a ウェブサイト上における被告標章第1の使用 大阪店は、本件ドメイン名4を用いて大阪店サイトを開設しており、平成29年10月2日当時、同サイト上には、前記(ア)a(b)の品川第1号店サイト2と同一の記載がされていた(乙41の8)。 原判決後、前記(ア)a(c)の品川第1号店サイト2と同様に大阪店サイト上から日本語表記がなくなったものの、平成30年10月12日、同年11月12日時点及び同月29日時点で、本件ロゴが大阪店サイト上に記載されていた(甲143の4、甲144の3、乙93の4)。 b 本件貸与行為 大阪店は、遅くとも平成29年5月27日頃から現在までの間、本件貸与行為を行っている(甲105の3、甲106の7、乙92の2、弁論の全趣旨)。 (オ)沖縄店 a 沖縄店は、本件ドメイン名4を用いて沖縄店サイトを開設しており、平成29年10月2日当時、同サイト上には、前記(ア)a(b)の品川第1号店サイト2と同一の記載がされていた(乙41の9)。 前判決後、前記(ア)a(c)の品川第1号店サイト2と同様に沖縄店サイトから日本語表記がなくなったものの、平成30年10月12日、同年11月12日時点及び同月29日時点で、本件ロゴが沖縄店サイト上に記載されていた(甲143の5、甲144の4、乙93の5)。 b 本件貸与行為 沖縄店は現在も本件貸与行為を行っている(甲145、乙92の3、弁論の全趣旨)。 ウ 富士河口湖店 (ア)ウェブサイト上における被告標章第1の使用 平成29年2月23日当時、富士河口湖店は、本件ドメイン名3を用いて河口湖店サイトを開設しており、同サイト上には、①「マリカーとは?」、「マリカーは、日本最大級の公道カートのレンタル&ツアーサービスです」、「日本最大級のマリカーに遊びに来て下さい!」と被告標章第1の1を含む記載がされていた上、②本件ロゴが記載されていた(甲6の2)。 (イ)本件貸与行為 富士河口湖店は、遅くとも平成29年2月23日頃から同年11月15日頃までの間、本件貸与行為を行っていた(甲6の2、甲102の2、甲105の2、弁論の全趣旨)。 (ウ)本件写真2及び3の掲載 本件写真2及び3は、遅くとも平成29年2月23日までに、河口湖店サイトに掲載されたが、遅くとも同年6月16日までに削除された(甲6の2、弁論の全趣旨)。 エ 公道カートにおける被告標章第1の使用 MariCAR店舗及び富士河口湖店において使用されている公道カートの中には、①平成28年11月15日頃から平成30年11月15日頃までの間、その前部や側面に、黄色又は白色の文字で被告標章第1の2を含む「MariCar.com」若しくは「MariCar.jp」又は被告標章第1の4を含む「fuji-maricar.jp」との表示がされ、②平成28年11月15日頃から平成30年11月29日頃まで間、その前部や側面に本件ロゴが表示されているものがあった(甲4、甲6の1~4、甲74、甲85の3、甲102の1、甲105の1~3.甲106の1・6~8、甲132の1・2、甲134の2、甲143の1~5、乙85、乙92の1・3、乙93の1~3、弁論の全趣旨)。 なお、「MariCar.com」の「.com」には識別力がないか乏しいから、「MariCar.com」の要部は「MariCar」であり、また、「fuji-maricar.jp」の「.jp」には識別力がないか又は乏しく、「fuji」と「maricar」が「-」で結合されていて、「fuji」と「maricar」の間に観念上の関連がないことからすると、「maricar」は「fuji-maricar.jp」の要部である。 オ 従業員によるコスチュームの着用行為 本件レンタル事業においては、公道カートをレンタルした利用者がガイドに案内されて東京都内を走行するツアーが用意されていたところ、平成27年6月4日頃から平成29年6月16日頃までの間、「マリオ」、「ルイージ」、「ヨッシー」及び「クッパ」の各コスチュームを着用した従業員が公道カートに乗車して利用者を先導することより、ガイドを務めていた(甲4、甲42の13・16、甲43の13・16、乙63、弁論の全趣旨)。 (5)本件各動画の掲載 ア 本件動画1は平成27年11月2日に、本件動画2は同月3日に、本件動画3及び本件動画4は同月4日に、本件動画5は同月22日に、本件動画6は同月23日に、本件動画7は同年12月5日に、本件動画8は同月22日に、本件動画9及び10は同月26日に、本件動画11は平成28年1月6日に、本件動画12は同月10日に、本件動画13は同月11日に、本件動画14は同月26日に、本件動画15は同年8月15日に、本件動画16は平成29年1月12日に、それぞれインターネット上の動画共有サービスであるYouTubeにアップロードされた (弁論の全趣旨)。 本件各動画のうち、本件動画1~12及び16は、本件レンタル事業の利用者らが、コスチュームを着用し、公道カートに乗車して東京都内を走行する様子等を撮影して作成されたものであり、本件動画13~15は、本件レンタル事業について放映されたテレビ番組を録画して作成されたものである(甲42の1~16、甲43の1~16)。 イ 本件各動画は、遅くとも平成29年6月16日までにYouTubeから削除された(弁論の全趣旨)。 (6)本件各ドメイン名の取得等 ア 一審被告会社は、平成27年5月26日に本件ドメイン名2につきドメイン名登録機関から登録を受け、前記(4)のとおり、被告会社サイトにこれを使用していた(甲6の3、甲55の2、甲209の1)。 イ 一審被告会社は、平成27年6月17日以降、本件ドメイン名4を保有していたが、遅くとも平成30年1月31日までの間に、本件ドメイン名4を第三者に移転した(甲55の4、甲209の2・3、乙56、弁論の全趣旨)。 前記(4)のとおり、本件ドメイン名4は、MariCAR店舗が開設している各ウェブサイトに使用されており、第三者に本件ドメイン名4が移転された後も、MariCAR店舗は、引き続き本件ドメイン名4を使用している。 ウ ゼント社は、平成27年4月9日に本件ドメイン名1について、平成28年6月1日に本件ドメイン名3について、それぞれドメイン登録機関から登録を受けた(甲55の1・3、甲209の1)。 前記(4)のとおり、本件ドメイン名1は、品川第1号店と秋葉原第1号店によって使用されていたほか、本件ドメイン名3は、富士河口湖店において使用されていた。 (7)登録商標 一審被告会社は、ゼント社が平成27年5月13日に商標登録出願した「マリカー」の標準文字からなる本件商標について、商標登録出願により生じた権利を遅くとも同年10月13日までにゼント社から譲り受け、現在まで本件商標に係る下記の商標権を有している(甲66の1~3、乙21)。 登録番号 第5860284号 出願日平 成27年5月13日 登録日 平成28年6月24日 登録商標 マリカー(標準文字) 指定商品及び指定役務並びに商品及び役務の区分 第39類 船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供等 3 争点 (1)STREET KART店舗において、本件レンタル事業が実施され、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか(争点1) (2)富士河口湖店及び六本木店において、現在、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか(争点2) (3)一審被告会社が、平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して、本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して、被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか(争点3) (4)不競法に基づく請求 ア 被告標章第1関係 (ア)被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか(争点4) (イ)登録商標の抗弁の成否(争点5) (ウ)使用差止め及び抹消請求の可否及び範囲(争点6) イ 被告標章第2関係 (ア)本件宣伝行為及び本件貸与行為が、不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか(争点7) (イ)使用差止め及び抹消請求の可否及び範囲(争点8) ウ 本件各ドメイン名関係 (ア)本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか(争点9) (イ)使用差止め及び登録抹消請求の可否及び範囲(争点10) (5)著作権に基づく請求 ア 本件写真2及び3並びに本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たり、本件制作行為及び本件掲載行為が一審原告の複製権、翻案権、自動公衆送信権、送信可能化権を侵害するか(争点11) イ 本件各コスチュームが原告表現物の複製物又は翻案物に当たり、本件貸与行為が、一審原告の貸与権を侵害するか(争点12) (6)一審被告Yに対する損害賠償請求の可否(争点13) (7)一審原告の損害額(争点14) (8)反訴請求の可否(争点15) 4 争点に対する当事者の主張 (1)争点1(STREET KART店舗において、本件レンタル事業が実施され、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか)について (一審原告の主張) ア STREET KART店舗のウェブサイトの構成は、MariCAR店舗のウェブサイトと同様であり、車両欄には「MariCAR」という記載が明記されている上、浅草店以外の店舗のウェブサイトにおいて利用されているロゴは、MariCAR店舗で利用されているロゴの「MARICAR」の部分を「STREET KART」に変更しただけで、MariCAR店舗で利用されているロゴに酷似している(甲143の6~11)。 イ 秋葉原第2号店について、平成30年10月19日に、秋葉原第2号店近くの駐車場に本件ロゴ等が記載された公道カートが多数駐車されており、秋葉原第2号店で用いられているシールや販売されているグッズに「MARICAR」という本件ロゴが利用されるなどしていて、被告標章第1が使用されていた上、被告標章第2のコスチュームも使用されていた(甲157、甲216の1・2)。 ウ 京都店の宣伝動画等(甲199、甲200の1・2、甲220)から被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが京都店で使用されていることは明らかである。また、京都店は、大阪店と車両の共有やウェブサイトの統一的な作成等をしながら、一体的に広告宣伝をしている(甲143の4・11、甲221、222)。 エ 浅草店においても、ツイッターにおける投稿(甲158の1~4)、利用者が投稿した動画(甲201の1・2)によると、被告標章第1の4が公道カートに付されたり、被告標章第2のコスチュームが使用されたりしている。品川第2号店、東京ベイBBQ店及び横浜店についても、利用者の投稿(甲218の1、甲219の1~4、甲223の1)から被告標章第1や被告標章第2のコスチュームが使用されている。 オ 以上のとおり、STREET KART店舗においても、現在に至るまで継続して、①被告標章第1を、店舗及び公道カートに表示するなどして本件レンタル事業において使用する不競法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為、②被告標章第2のコスチュームの使用という不競法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為が行われている。 (一審被告らの主張) STREET KART店舗は、本件レンタル事業を実施しておらず、不競法2条1項1号又は2号に該当するような態様で被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームを使用していない。 ア 被告標章第1について (ア)ウェブサイト等において被告標章第1の使用はないこと STREET KART店舗では、被告標章第1を商号に使用しておらず、本件ロゴも使用していない(乙118、乙119の1~3)。現在は、STREET KART店舗のウェブサイトにおいて、「MariCAR」という表示は存在しない(乙113の1~6)。 (イ)公道カートにおいて被告標章第1の使用はないこと 甲143の6~11、乙119の3の公道カートの写真では、公道カート上に被告標章第1の表示は存在しないため、STREET KART店舗の公道カートには被告標章第1の表示が存在しないことが強く推認される。 浅草店のツイッターにおける投稿の公道カートの「MariCar.com」の表示は、停車中の公道カートに近寄らないと判読できない程度に小さく、同カートを公道上で目撃する需要者が直ちに認識できるものではないため、商品等表示として使用されているものではない。 一審原告は、秋葉原第2号店近くの駐車場に本件ロゴ等が記載された公道カートが駐車されていると主張するが、それが秋葉原第2号店で使用されている公道カートかどうかは不明である。 (ウ)グッズの販売は商品等表示としての使用に該当しないこと 一審原告は、秋葉原第2号店において、本件ロゴを使用したグッズが販売されていると主張するが、当該販売は、一審原告が問題とする本件レンタル事業とは無関係である。 イ 被告標章第2のコスチュームについて 一審原告は、STREET KART店舗における被告標章第2のコスチュームの割合について、何ら主張立証しておらず、秋葉原第2号店と浅草店の2店舗において、被告標章第2のコスチュームが貸与されていることを指摘するのみであり、この事実のみからは、被告標章第2のコスチュームについて、STREET KART店舗における不正競争行為が成立するとはいえない。 また、京都店では、事業開始当初より、被告標章第2のコスチュームのいずれも貸与していない(乙118)。 (2)争点2(富士河口湖店及び六本木店において、現在、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか)について (一審原告の主張) ア 一審被告らは、原審において、「一審被告会社からカート車両の提供を受け、MariCARという屋号を用いて本事業を運営している」店舗として、MariCAR店舗の他に、富士河口湖店及び六本木店があることを自認している。したがって、富士河口湖店及び六本木店においても、MariCAR店舗と同様に、被告標章第1及び被告標章第2のコスチューム並びに本件各ドメイン名を使用する不正競争行為がされていたと認められる。 イ 富士河口湖店について、ツイート(甲212の1)では、平成30年8月31日及び同年9月1日に本件各コスチューム等を着た集団の写真や車体前面に「富士MARICAR」、側面に「fuji-maricar.jp」と記載された公道カートの写真が掲載されている。また、富士河口湖店のフェイスブックのトップページのカバー写真には「富士MARICAR」と大きく記載された広告が利用されており(甲212の2)、現時点においても、富士河口湖店において被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用行為が継続していることは明らかである。 ウ 六本木店について、一審被告らが提出した六本木店のウェブサイト(乙117)では、「R」というロゴの後に「maricargarage」という表題が付され、「rmaricar.tokyo」というドメイン名が使われており、さらに、本件各コスチュームを着用した人物等の写真が掲載されており(甲213の1~3、乙117)、現在に至るまで、六本木店において被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されている。 また、六本木店のフェイスブックにおける投稿(甲165)から、六本木店が平成31年1月1日に営業していた様子が確認できる。 (一審被告らの主張) ア 富士河口湖店は、現在、本件ドメイン名3を含む本件各ドメイン名はもとより、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームのいずれも使用しておらず(乙94、116)、少なくとも現時点において、一審原告が不正競争行為と主張する行為を行っていない。 イ 六本木店は、本件各ドメイン名のいずれも使用せず、独自のウェブサイトを保有している(乙117)。また、本件ロゴを使用しておらず、平成30年11月15日時点で閉店中である(乙92の1)。 (3)一審被告会社が、平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して、本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して、被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各 ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのかについて(争点3) (一審原告の主張) ア 一審被告会社は、平成27年6月4日に設立された後、本件レンタル事業を開始し、現在まで、顧客に対して、有償で公道カート、本件各コスチュームその他の機器・物品等をレンタルする本件レンタル事業を本件各店舗において営んでいる。また、本件制作行為や本件宣伝行為等についても、これを自ら行っている。 イ 仮に、一審被告会社が、関係団体に本件レンタル事業を形式的に移管したと認められるとしても、一審被告会社は、同事業の具体的な内容及び手順等を実質的に管理・支配することにより、これら関係団体を自らの手足又は道具として侵害行為を行っているにすぎないから、侵害行為の実質的又は規範的な主体と評価されるべきである。 ウ 一審被告会社が本件レンタル事業に深く関与しており、本件各店舗における本件レンタル事業の営業は、それぞれが独立したものでなく、一審被告会社の関与の下で現在においても統一的に実施されていることなどからすると、一審被告会社は、平成28年6月24日以降、少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施している。 (一審被告らの主張) ア 一審被告会社は、本件レンタル事業を立ち上げたものの、品川組合に係る組合契約の効力が発生した平成28年6月24日以降、本件レンタル事業を関係団体へ移管し、同日以降は関係団体が同事業を実施している。すなわち、品川組合及び品川観光有限責任事業組合が品川第1号店及び品川第2号店並びに渋谷店を、秋葉原組合が秋葉原第1号店及び秋葉原第2号店を、沖縄組合が沖縄店を、新木場組合が東京ベイBBQ店及び横浜店を、侍カート浅草が浅草店を、マリカー大阪が大阪店を、PLAN-Sが富士河口湖店を、エコカートが六本木店を、STREET KARTが京都店をそれぞれ運営している。 また、六本木店を運営するエコカート、富士河口湖店を運営するPLAN-S及び大阪店を運営するマリカー大阪は、一審被告会社とは法人格が異なる別会社であって、資本関係もない。 以上のとおり、一審被告会社は、平成28年6月24日以降は、関係団体に対し、公道カートを販売したり、メンテナンスの業務を提供したり、可能な範囲で事業運営に関するアドバイス等を行ったり、自己の有する登録商標の使用を許諾したりして本件レンタル事業に関与していたにすぎず、本件各店舗において、本件レンタル事業を主体として運営していたものではない。 イ 一審原告は、一審被告会社が関係団体を管理・支配していたと主張するが、安全面等について関係者で協力し、情報共有しているというだけの話であり、管理・支配関係は存在しない。 ウ さらに、一審被告会社は、平成29年11月16日までに、組合の全てから脱退しているから、遅くとも同日以降においては、一審被告会社が関係団体と共同して本件レンタル事業を実施していると認定することはできない。 (4)争点4(被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか)について (一審原告の主張) ア 原告文字表示に関する不正競争行為該当行為について (ア)原告文字表示の周知性又は著名性 a 原告文字表示マリオカートは、一審原告が開発販売する著名なゲーム作品である「マリオ」シリーズに登場する「マリオ」をはじめとするキャラクターがカートレースを繰り広げるアクションレースゲームの名称である。「マリオカート」シリーズは、平成4年8月27日に第一作目が発売されて以降、平成28年12月末日時点でシリーズ合計8作の全世界での累計販売本数は1億1000万本を超え、世界有数のゲームシリーズである上、一審原告によるライセンス商品の広告・宣伝及び販売並びにコラボレーション活動を通じて、非常に高度な知名度を獲得した。 また、原告文字表示マリカーは、「マリオカート」を「マリオ」と「カート」の二単語に分け、それぞれの冒頭二文字を切り出し、再度結合して作られた「マリオカート」の略称であり、遅くとも平成8年頃から現在に至るまで、様々なメディア(ゲーム雑誌、テレビ番組、漫画作品等)や多数のユーザーにおいて広く一般に使用されている。 したがって、原告文字表示マリオカート及びその略称である原告文字表示マリカーは、一審原告の周知かつ著名な商品等表示である。 b 一審被告らは、本件レンタル事業の需要者(以下「本件需要者」という。)が、訪日外国人(外国人旅行者、在日米軍関係者又は在日大使館員など)に限定されると主張するが、証拠によると、原判決後も日本人が一審被告会社の本件レンタル事業を利用できる状況は続いており(甲146、157、171~173)、日本語のウェブサイトも存在している(甲143の6~11)から、本件需要者には日本人が含まれている。 また、一審被告らの主張は、訪日外国人が日本語を理解できないことを前提としているが、在日米軍関係者や在日本大使館員など、日本に居所があり一定期間居住している外国人の中には、片仮名の読み書きができる者が相当程度存在する上、本件レンタル事業を利用する訪日外国人は、日本文化、とりわけ一審原告の「マリオ」シリーズに強い関心を持つ者であるから、これらの者には日本語に理解のある者も相当程度存在し、訪日外国人が日本語を理解できないという経験則はない。 c 証拠(甲76、77)によると、ゲームに関心を有する層に極めて多くの人が含まれることは明らかである。 一審被告らは、日本においてゲームに関心を有する層のうち未成年者は本件需要者になり得ないなどと主張するが、原判決の認定は、日本全国のゲームに関心を有する層に、観光の体験等で公道カートを運転してみたい一般人(本件需要者)も含まれるというものであるから、本件需要者に未成年者が含まれないという一審被告らの上記主張を前提としても原判決の認定は否定されるものではない。 一審被告らは、インドアのゲームとアウトドアの公道カートが真逆の性質を持ち、双方に関心を有する者はごく一部に限られると主張するが、同主張は証拠に基づかない裏付けを欠いた主張であるし、ゲームがインドアという前提も誤っている。また、本件需要者は「マリオカート」シリーズ等の一審原告の作品のファンで、これを現実の世界で体験したいと考えている者が多数含まれていることから、本件需要者と一審原告が販売する「マリオカート」シリーズ等のゲームの需要者は大きく重複している。 (イ)被告標章第1と原告文字表示との類否 a 被告標章第1の1は、原告文字表示マリカーと外観、称呼、観念が同一であり、類似することは明らかである。 また、被告標章第1の2~4は、原告文字表示マリカーと称呼において同一であり、「Mari」「MARI」及び「mari」は「マリオ」の省略形である「マリ」の英語表記、「カー」は「カート」の称呼の省略形であるか、「カート」を含んだ車両という意味の上位概念である「カー」(「Car」「CAR」及び「car」)を指すものと理解されることからすると、「マリオカート」の略称である「マリカー」を連想させ、観念においても同一又は極めて類似している。さらに、一審被告会社は、被告標章第1の2~4を「マリオ」シリーズのキャラクターの写真や動画とともに使用しているのであるから、取引者又は需要者は、当該具体的な使用態様の下においては、被告標章第1の2~4と原告文字表示マリカーを類似のものとして受け取る。 b また、被告標章第1は、前記のとおり「マリオカート」の略称である「マリカー」を連想させるといえるから、同時に原告文字表示マリオカートを想起させる。 (ウ)混同を生じさせるおそれの有無 a 一審被告会社の営む本件レンタル事業は、需要者から「マリオカート」を公道上においてリアルに体験するものであると評価されており、同事業の平均的な需要者が、一審被告会社が、一審原告の関連会社であるか、一審原告との間に知的財産権に関するライセンスを受けるといった緊密な営業上の関係、その他の同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存在していると理解することは確実であるから、一審被告会社による被告標章第1の使用行為は、「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」に該当する。 b 一審被告らが主張する、①店舗における本件各コスチュームの利用割合が低いこと、②利用者による本件各コスチュームの着用率も高くないこと、③打ち消し表示の存在によって、「混同のおそれ」の要件が否定されることはない。 上記①及び②についての、乙92の1~3、乙93の事実実験(以下「本件事実実験」という。)は、5店舗のみについてされたものであって、全く「抜き打ち」と評価できるものではなく、店舗外に存したコスチュームの種類と数が不明であるなど手法に問題がある上、他の証拠(甲137、156、甲166の1・2、甲167の1・2、甲168の1~3、甲169)と矛盾していて信用できない。 上記③については、以下のとおりである。 (a) 公道カートの車体の一審被告らが主張する打ち消し表示についても、そのような表示がされていないカートが現在も存在していること(甲170)、当該表示がされるのがレース車両で運営企業名等が表示される位置であることや表示されるのが一審原告の企業名そのものであること、高速で走行するカートを見た一般人が適切に全体を認識できないものであること、当該表示が商標登録出願されていること(甲188、189)からすると、同表示は打ち消し表示に当たるものではなく、それによって不正競争行為該当性が否定されるようなことはない。 (b) ウェブサイトでの一審被告らが主張する打ち消し表示についても、ウェブサイトにおける表示は、小さな文字で長文の記載がされているにすぎず、全体を読み終えなくても「OK」ボタンをクリックすることで直ちに削除することが可能である上(乙57)、2回目以降に当該ウェブサイトを開く場合には文章が表示されず、需要者は容易に読み飛ばして表示を確認しないままにウェブサイトを閲覧でき、打ち消し表示として機能するものではない。 (c) 店舗の内外に表示されている一審被告らが主張する打ち消し表示も店舗の外観からは全く確認することはできない(乙92の1~3)し、その他の一審被告らが主張する店舗内の打ち消し表示は、被告標章第1が顧客吸引力を発揮し、需要者に混同を生じさせて需要者をして一審被告会社の利用を決定させ、店舗に入店させた後で表示されるものであるから、需要者における混同のおそれや営業上の利益侵害のおそれを解消する要因とはなり得ない。 (エ)外国語のみで記載されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用行為も、不正競争行為に該当すること 原判決は、原告文字表示マリカーが、日本語を解しない者の間では一審原告の商品等表示として広く知られていたとは認められず、かつ、一審被告会社の外国語のみで記載されたウェブサイト及びチラシ(以下、併せて「ウェブサイト等」ということがある。)は、日本語を解しない者のみを対象とするものであるとして、外国語のみで記載されたウェブサイト等における被告標章第1の使用が、不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当しないとした。 しかし、①本件需要者の中には、外国語を解する日本人と日本語を解する外国人のように、日本語と外国語の双方を解する者が存在すること、②日本語を解する本件需要者が、日本で行われている本件レンタル事業について、外国語のみで記載されたウェブサイト等にアクセスすることが可能であること、③「日本語のウェブサイト等がある状況では外国語のみで記載されたウェブサイト等は日本語を解しない者のみを対象とする」という原判決の判断は、日本語のウェブサイト等が存在しなくなった原判決の後、既に成立しなくなっている上、そもそもそのような違法な日本語のウェブサイト等が存在していることを判断の前提とすべきではなかったこと、④原判決後、一審被告会社のウェブサイトは、外国語のもののみとなったものの、依然として日本語を解する者を対象に本件レンタル事業が運営されていること、⑤現在の一審被告会社のウェブサイト等が、ローマ字や平易な英語(又は外国語)により記載され、図が挿入されるなど視覚的にわかりやすく説明されていることやGoogle翻訳をはじめとするスマートフォン用のアプリによって、本件レンタル事業の内容、料金や連絡先等の情報を理解することは、英語又は外国語に堪能でなくとも可能であり、外国語のみで記載された一審被告会社のウェブサイトやチラシによって、誤認混同のおそれを生じさせる「日本語を解し、外国語も解する者」の範囲は広範にわたることからすると、外国語のみで記載されたウェブサイト等における被告標章第1の使用は、不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当する。 イ「MARIO KART」という商品等表示(以下「MARIO KART」表示という。)に関する不正競争行為該当性 (ア)「MARIO KART」表示の周知性又は著名性 一審原告の販売する「マリオカート」シリーズのゲーム作品は、世界有数のヒット作品であり、ギネス世界記録にも認定される特筆すべき売上本数を誇り、世界的に周知かつ著名な作品である。「マリオカート」は英語では「MARIO KART」と表記され、「マリオカート」シリーズのゲーム作品が外国で発売される際には、その英語表記として当該表示が用いられるから(甲8)、「MARIO KART」表示は、世界中の需要者にとって周知かつ著名な一審原告の商品等表示である。 (イ)被告標章第1と「MARIO KART」表示の類否 「MARIO KART」と被告標章第1に含まれる「MariCar」、「MARICAR」又は「maricar」とを比べると、①称呼について、「MARIO KART」を発音する際に、「MARIO」の「O」及び「KART」の「T」はいずれも弱く発音されることから、強調されるのは「MARI」(マリ)及び「KAR」(カー)の部分であり、「MARICAR」等の称呼である「マリカー」と「MARIO KART」のうち強く発音される部分である「マリ」「カー」は同一であることから、両者は類似しているといえる。また、②観念についても、「MARIO KART」は一審原告の著名なゲームキャラクターである「マリオ」(MARIO)の乗る「カート(車)」(KART)というような観念を有するのに対し、上記「MARICAR」等も、特定の語に「CAR」(カー)という単語を結合すると、例えば、「SUPERCAR」(スーパーカー)や「SIDECAR」(サイドカー)のように、特定の特徴を有する車という意味になることからすると、「MARIO」(マリオ)の「O」を省略した「MARI」と「CAR」を結合することで、「マリオ」の乗る「車」といった意味を有し、観念も類似する。③外観も、「MARICAR」等を構成する7文字のうち、「C」を除く6文字が「MARIO KART」と同一であり、かつ、両者の共通部分は同じ順番で配置されており、類似している。したがって、外国人にも周知かつ著名な一審原告の商品等表示である「MARIO KART」表示と被告標章第1に含まれる「MariCar」、「MARICAR」及び「maricar」は、称呼、観念及び外観のそれぞれにおいて類似しているといえる。 (ウ)混同のおそれ 一審被告会社が、外国語のみで記載された一審被告会社のウェブサイト等において、被告標章第1を使用した場合も、一審被告会社の提供する役務がまさしく「Kart」のレンタルサービスの宣伝のためのウェブサイトやチラシであることも踏まえると、これに接した日本語を解しない本件需要者に対し、一審原告の周知かつ著名な商品等表示である「MARIO KART」表示を連想させ、その営業が一審原告又は一審原告と関係があると誤信させるおそれがある。 現に、外国語を用いている外国人においても、被告標章第1の使用によって「MARIO KART」を連想させ、誤認混同のおそれが生じている例が存在する(甲150、151)。 (一審被告らの主張) ア 原告文字表示に関する不正競争行為該当性について (ア)原告文字表示の周知性又は著名性 a 本件需要者は、外国人旅行者、在日米軍関係者又は在日大使館員などの訪日外国人であるところ、一審原告は、原告文字表示マリオカート及び原告文字表示マリカーが訪日外国人において周知かつ著名であることについての主張立証を行っていない。 訪日外国人に対するアンケート調査(乙54)によると、原告文字表示「マリカー」を一審原告のゲームソフトの名前として認知している者の割合は、わずか0.4%(228名中1人)にすぎず、原告文字表示は、訪日外国人において周知かつ著名ではない。 b 原判決は、本件需要者に「日本語を解する者も当然に含まれる。」と認定したが、本件事実実験では、本件レンタル事業の利用者は、全て外国人であり、日本語のウェブサイト等は現時点では存在しないなど、原判決が上記認定に使用した各証拠は、現在では、日本語を解する者が含まれないことを前提とした内容に変化するなどしており、少なくとも現在では、本件需要者は全て訪日外国人であり、原判決の認定は誤りである。 c 原判決は、本件需要者を「観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人」と認定しているが、そのような認定の場合、原判決のように需要者を細分化すべきではなく、需要者全体において、原告文字表示マリカーの周知性等について判断されなければならない。そして、証拠(乙14の1、乙15の1・2)によると、原審の口頭弁論終結時点で需要者のほぼ全てが日本語を解さない者で占められているから原告文字表示マリカーに周知性はなく、これに反する原判決の認定判断は不当である。 d 原判決は、日本全国のゲームに関心を有する層が相当広範囲にわたっており、本件需要者がそこに含まれると認定しているが、これは論理の飛躍を含んだ認定である。 本件需要者から運転免許を有しない未成年者は除外される。また、インドアのアクティビティであるゲームと、アウトドアのアクティビティである公道カートは、真逆の性質を持ち、その両方に関心を有する者はごく一部に限られるから、単純に、後者が前者に含まれるとするのは困難である。したがって、仮にゲームに関心を有する層を上記のように認定し、原告文字表示マリカーが一審原告の「マリオカート」を意味する商品等表示として広く知られていたとしても、本件需要者である「観光の体験等で公道カートを運転してみたい一般人」に同様のことが当てはまるとはいえない。 (イ)被告標章第1と原告文字表示との類否 本件需要者である訪日外国人にとって、片仮名の原告文字表示と被告標章第1が同一でないことはもちろん、類似もしないことは明らかである。 (ウ)混同を生じさせるおそれの有無 原判決は、本件レンタル事業において、マリオカートに登場するキャラクターのコスチュームを利用者が着用することを混同のおそれを認定した根拠とするが、実際にMariCAR店舗の各店舗でレンタルされている本件各コスチュームの割合は、全てのコスチュームのうち3.5%にすぎず、利用者が本件各コスチュームをレンタルする割合も23.8%にすぎない(乙92の1~3)。原判決の事実認定にはその前提に誤りがある。 また、現在、本件需要者は全て日本語を解さない訪日外国人であるから(乙92の1~3)、少なくとも現在においては、原判決はその前提を誤っており、混同のおそれを認めることはできない。 一審被告会社の商号はすでに変更され(乙84)、チラシはすでに存在しない(乙92の1~3)。現時点で、被告標章第1が使用されているのは、MariCAR店舗のウェブサイト、公道カートの車体及び店舗であるが、①MariCAR店舗のウェブサイトは、ウェブサイトを開いた時に、最初に打ち消し表示が表示され、それを確認しないとウェブサイトの内容を確認できないようになっており(乙57)、混同のおそれの原因とはなりえない。②公道カートの車体にも、一見してその打ち消し表示の内容を把握可能な、「任天堂は無関係」、「Unrelated to Nintendo」という大きな文字を使用した多数の打ち消し表示のステッカーが車体の全体に貼られる予定である(乙93の1~5)。③関係団体のMariCAR店舗の内外には、目立つ態様で打ち消し表示がされている(乙92の1~3)。また、本件レンタル事業に係るサービスを利用したいと思った者が、当該ツアーを電子メールで申し込もうとした場合に返信されてくる最初の電子メールの内容には打ち消し表示が含まれ(乙85)、その他にも、本件レンタル事業と一審原告及び一審原告の「マリオカート」とが無関係であることがタブレット端末に表示され、利用者はそれを確認した上で署名しないと、本件レンタル事業の役務の提供を受けることができず(乙92の1~3)、混同のおそれが生じる余地はない。 イ「MARIO KART」表示に関する不正競争行為該当性について (ア)「MARIO KART」表示が周知著名でないこと 一審原告が「MARIO KART」表示の周知著名性の根拠とするのは主にゲームソフトの「出荷本数」であって、実際に消費者の手に渡った数である「販売数」ではない。また、その出荷本数についても、70億人を超える世界人口との比率からすれば、その数は微々たるものである。さらに、ゲームソフトの購入者と本件需要者は、前記のとおり、重複しない。したがって、本件需要者において、「MARIO KART」表示が周知かつ著名とはいえない。 (イ)被告標章第1と「MARIO KART」表示の類否 a 「MARIO KART」表示からは、「まりおかーと」との称呼を生じ、他方、被告標章第1のうち、英文字表記の三つの表示からは、「まりかー」又は「まりかぁ」の称呼が生じ、両者の称呼は類似していない。 b 被告標章第1の2~4は造語であり、特定の観念を生じず、「MARIO KART」表示と被告標章第1は、観念においても非類似である。 c 「MARIO KART」表示は全て大文字であり、5文字の英文字と、空白を挟んで、4文字の英文字から構成される。他方、被告標章第1の2~4は、全て、7文字の英文字から構成されており、「MariCar」は1文字目と5文字目が大文字で残りは小文字、「MARICAR」は全て大文字、また、「maricar」は全て小文字であり、「MARIO KART」表示のように、文字の間に空白を挟むものはなく、「MARIO KART」表示と被告標章第1は外観においても異なる。 (ウ)混同のおそれについて 乙54のアンケート調査では、被告標章第1の2~4を「任天堂のビデオゲーム」の名前であると回答したものが、全体の228人中わずか9人(3.9%)存在したが、そのうち、「ストリートゴーカートショップ」という回答も併せて選択した者は1名にとどまり、混同が生じていないことが示されている。むしろ、上記アンケート調査では、被告標章第1の2~4を見て、「ストリートゴーカートツアーショップ」の名前と回答した者は、周知性を認めてよいとされる10%(乙115)を超える全体の10.1%(23人)を占める。この点からすると、むしろ、被告標章第1は、関係団体による本件レンタル事業を意味するものとして認識されている。 (5)争点5(登録商標の抗弁の成否)について (一審被告らの主張) ア 一審被告会社は、本件商標の商標権者であるから、一審被告会社及び同社から使用を許諾された関係団体は、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有する。 登録商標の抗弁を定めた平成5年法律第47号による改正前の不競法6条(以下「旧6条」という。)は削除されたが、周知表示の存在にもかかわらず商標権者側が登録商標を使用することが可能であることを前提とする商標法32条2項及び商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有することを規定した同法25条からすると、一審被告会社は登録商標の抗弁を主張することができ、仮に被告標章第1の1(マリカー)の使用が不正競争行為に該当し得るとしても、不競法3条1項に基づく差止請求や同法4条に基づく損害賠償請求は認められない。 イ 原判決は、本件商標の出願日(平成27年5月13日)よりも前の平成22年頃には、原告文字表示マリカーは一審原告の商品を識別するものとして需要者の間に広く知られていたから、一審被告会社が本件商標に係る権利を有することを主張することは権利の濫用とする。 しかし、原判決が需要者として認定したのは、本件需要者たる「観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人」であるところ、過去においては本件需要者の大部分が訪日外国人であり、現在では全てが訪日外国人である。訪日外国人は日本語を解することができないのであるから、原告文字表示マリカーが、本件需要者の間に周知であったということはない。 また、前記のとおり、仮に原告文字表示マリカーが一審原告の商品等表示として、「日本全国のゲームに関心を有する者の間で、広く知られ」、「ゲームに関心を有する層は相当広範囲にわたっている」としても、そこに本件需要者が含まれるとするのは論理の飛躍がある。 (一審原告の主張) ア 旧6条の削除後においては、不競法に基づく主張と商標権に基づく主張との調整は、権利の行使は濫用にわたらない限り許されるとの一般原則により行われることになる。そして、原告文字表示が本件商標の出願時において一審原告の周知かつ著名な商品等表示となっていたこと、本件商標の出願そのものが他人の業務上の信用・顧客吸引力を利用する意図を持ってされたこと及び一審被告会社による被告標章第1の使用が、一審原告の周知かつ著名な原告文字表示が有する顧客吸引力を利用する意図の下にされたことからすると、一審被告会社による商標権の行使は、権利の濫用として許されない。 イ 一審被告らは、原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間で周知ではなく、登録商標の抗弁は権利濫用とはならないと主張するが、原告文字表示マリカーが、本件需要者間で周知でないという主張は、被告標章第1の使用行為が不競法2条1項1号所定の不正競争に該当しないという主張であり、請求原因(不正競争行為の存在)が認められた場合を前提とした登録商標の「抗弁」の成否に関する主張となる余地はない。また、本件需要者は、過去においてはその大部分が訪日外国人であり、現在では全てが訪日外国人であるという一審被告らの主張は誤りである。 (6)争点6(使用差止め及び抹消請求の可否及び範囲)について (一審原告の主張) ア 一審被告会社による被告標章第1の使用行為は、本件訴訟提起後も継続しており、一審原告は、長年の営業努力によって獲得した営業上の信用にただ乗りされ、営業上の信用が損なわれることによって、営業上の利益を侵害されている。 イ(ア)一審被告らは、原判決が、営業上の施設及び活動において被告標章第1の使用を差し止めたことは不特定又は過剰な差止めであるなどと主張する。 しかし、「本件レンタル事業」の定義は、「公道を走行することが可能なカート・・・のレンタルとそれに付随する事業」(原判決6頁8行~10行)であり、原判決が「本件販売整備事業」と定義する一審被告会社の事業も「本件レンタル事業等に供される公道カートのメンテナンスサービス」というものであるから(原判決7頁7行~11行)、被告標章第1を本件レンタル事業に使用する場合も、カートのレンタルに付随して本件レンタル事業に提供される公道カートのメンテナンスサービス事業に使用する場合も、誤認混同のおそれが認められる以上、営業上の施設及び活動における使用全般を差し止めた原判決は正当なものである。 (イ)一審被告らは、原判決が「外国語のみで記載されたウェブサイト等」のみを差止めの対象から除外したことが過剰であるなどと主張するが、前記のとおり、そもそも「外国語のみで記載されたウェブサイト等」を差止めの対象から除外する理由は存在しない。 (ウ)一審被告らは、被告標章第1を抹消すべき範囲として挙げられている「カート車両」の特定が不十分であること等について主張しているが、被告標章第1を「カート車両」で不正競争行為に該当する態様で使用する限り、そのような用途で用いられる被告標章第1は抹消されて然るべきであるから、一審被告らの主張するような事情があったとしても、そのような主張は失当である。 また、原判決の主文2項により抹消すべき被告標章第1の範囲は特定されており、過剰でもない。そして、前記のとおり、一審被告会社が本件レンタル事業に主体的に関与し、少なくとも、関係団体を実質的に支配して、同団体と共同して本件レンタル事業を実施していることからすると、形式的には同団体がカート車両を所有していたとしても、一審被告会社が当該カート車両に記載された被告標章第1を抹消する義務を負うことは当然である。 (一審被告らの主張) ア 前記のとおり、ウェブサイト、公道カート及び店舗には打ち消し表示がされ、さらに、電子メールやタブレット端末にも打ち消し表示がされるなど、関係団体が様々な態様により打ち消し表示を行っていることからすると、被告標章第1の使用行為により、一審原告の営業上の利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあるとはいえない。 イ 差止めの対象となるのは、混同の結果を発生させる行為であって、当該行為以外の行為の差止めは許されないが、以下のとおり、被告標章第1の使用差止めに係る原判決主文1、2項は、差止対象が不特定であるか、過剰な差止めである。 (ア)原判決主文1項は、全ての営業と使用行為について差止めを認めている。このような広範な差止めは、不特定であるか、過剰な差止めであって許されない。具体的には、原判決自身が、被告標章第1に係る誤信発生の場面を「ゲームシリーズ『マリオカート』に登場するキャラクターのコスチュームを利用者が着用するなどして公道カートを運転する」場合に限定しているのであるから、このような具体的な事業内容による限定が必要である。 (イ)日本語における被告標章第1の使用についても、日本人が本件レンタル事業の提供するサービスを利用できないことの案内は、不正競争行為に該当しない。また、関係団体の店舗の住所の記載に被告標章第1を用いることも、日本語の記載があった方が日本人に道を尋ねる際に便利であるし、住所の記載が日本語であったからといって、需要者において混同の結果を発生させる行為に該当しないことは明らかである。 (ウ)日本語を解しない本件需要者については、被告標章第1が混同のおそれを生じさせないとした原判決の判断を前提とすると、被告標章第1に付随して、本件レンタル事業のサービス内容が日本語で説明されているかどうかが重要なのであって、ウェブサイトやチラシなどといった標章の使用態様自体は差止めの範囲とは無関係である。また、関係団体の店舗においては、警察の指導の下、外国語のみで案内される交通安全ルールの動画や雑誌、漫画等も提供されており、除外されるのが外国語のみで記載されたウェブサイト及びチラシの態様に限定されるべきではない。 (エ)大使館の敷地、米軍基地内での使用について 関係団体は、大使館や米軍からの依頼により、大使館の敷地や米軍基地内において、本件レンタル事業のサービスを提供することがある(乙104の1・2)。これらの場所では日本語を解する者がいないことから、このような場所での被告標章第1の使用が不正競争行為に該当しないことは明らかであるが、そのような態様の使用についてまで差止めの対象とするのは過剰である。 (オ)原判決主文2項は、被告標章第1の抹消の対象を「カート車両」としているが、これは、特定として不十分であるか、過剰な差止めである。 すなわち、「カート車両」には、外形的に異なる複数の種類が存在するが(乙105)、このうちの一部のみが判決主文2項の対象となることは明らかである。したがって、この点を特定しない原判決主文2項は過剰な差止めを認めるものであって、許されない。 また、被告標章第1は、公道カートの車台番号やフレーム番号、エンジンの型式等に含まれており打刻・表示されている(乙106)。原判決主文2項に従えば、公道カートから、これらの表示を削除しなければならなくなるが、このような行為は、公道カートを盗難車と同様の状態にしてしまうため問題があり、差止めの対象から除外される必要がある。 そして、一審被告会社は、修理等のために第三者から公道カートの車両を預かることもあるが、同車両から被告標章第1の削除を行うことは第三者の所有権侵害となり違法であるため、同車両の所有者については、一審被告会社に限定される必要がある。 (7)争点7(被告標章第2を使用する本件宣伝行為及び本件各コスチュームを貸与する本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか)について (一審原告の主張) ア 原告表現物及び原告立体像の商品等表示該当性及び周知性又は著名性 (ア)原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパは、いずれも一審原告が販売する主要かつ著名なゲーム作品である「スーパーマリオブラザーズ」等に登場し、その商品化事業を通じて、一審原告の周知かつ著名な商品等表示となった。 なお、被告は、原告表現物が商品等表示に該当するためには特別顕著性等が必要であると主張するが、実用性や機能性の観点から選択されて本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではない商品の形態とは異なり、原告表現物は、一審原告が製造販売する「マリオカート」シリーズを含む「マリオ」シリーズのゲームソフト商品に登場するキャラクターが、それぞれ3Dイラスト的に具体的に表現された表現物であり、原告表現物を構成する要素は実用性や機能性の観点から選択されるものではない。株式会社不二家の「ペコちゃん」などのいわゆる企業キャラクターのような表現物は、企業等の出所表示機能を当然に果たすことが期待され得るものであり、商品の形態とは、性格を全く異にしている。一審原告も、実際に原告表現物を、一審原告の商品やサービスの出所を表示するものとして、様々な一審原告の商品のパッケージや、当該商品を取り上げた書籍や雑誌記事等における一審原告の宣伝広告に用いている(甲8、10、甲11の4、甲17~19、45、94等)。したがって、商品等表示該当性に関して、本来的に商品等表示に該当しない「商品の形態」と原告表現物を含むキャラクターを同視する基礎は全く存在しない。 また、一審原告のライセンシーが販売する商品やその広告には「ⓒNintendo」及び「Licensed by Nintendo」等の表示を付す等しているのであって(甲16の1の2~4、甲16の2、甲16の3等)、原告表現物が一審原告の商品、役務の出所を表示する機能を営んでいることは明らかである。 (イ)原告立体像は、「マリオ」シリーズのキャラクターである原告表現物を三次元のコスチュームに立体的に具体化したものであり、一審原告が商品の広告宣伝活動に原告立体像を積極的に活用してきたことに照らすと、一審原告の周知かつ著名な商品等表示である。 (ウ)一審被告らは、一審原告が販売した「マリオブラザーズ」及び「スーパーマリオブラザーズ」における「マリオ」や「クッパ」の容姿が原告表現物マリオ及び原告表現物クッパと異なり、原告表現物に周知性がないと主張する。 しかし、一審被告らが指摘する例は、多数の「マリオ」シリーズのうち稀な例だけを取り出したものにすぎない。 一審原告は、ゲームキャラクターの商品化を行うライセンシーに対し、原告表現物の特徴を備えた「マリオ」及び「クッパ」を提示し(甲110別紙1及び別紙2、甲112、115)、「マリオ」シリーズのゲームを紹介する一審原告の公式ウェブサイトにおけるキャラクター紹介においても、上記特徴を備えた「マリオ」及び「クッパ」を含む原告表現物を掲示するなど(甲181)、上記特徴を備えた「マリオ」、「クッパ」等を、いわばそれぞれのキャラクターの標準的なものとして対外的に示している。 イ 原告表現物及び原告立体像と被告標章第2との類否 (ア)原告表現物及び原告立体像と、一審被告会社が本件宣伝行為及び本件貸与行為で使用し、従業員に使用させた被告標章第2のコスチュームとを比較すると、以下のとおり類似している。 a 「マリオ」については、いずれも①全体的に膨らみをもって、正面に半円形のつばがついた形状をして、正面に白い丸のなかに赤字で大きくMと書かれた赤い帽子をかぶり、②両腕と胸の一部が赤い長袖シャツ様の模様になっており、③赤い長袖シャツ様になっている部分以外は青色で、かつ太い肩紐のような部分があり、胸の部分に黄色く大きな丸いボタンの柄がついたオーバーオール様の模様になっているという点又は①~③の主要な点において類似している。 b 「ルイージ」については、①全体的に膨らみをもって、正面に半円形のつばがついた形状をして、正面に白い丸の中に緑色の字で大きくLと書かれた緑色の帽子をかぶり、②両腕と胸の上部の一部が緑色の長袖シャツ様の模様になっており、③緑色の長袖シャツ様になっている部分以外は青色で、かつ太い肩紐のような部分があり、胸の部分に黄色く大きな丸いボタンの柄がついたオーバーオール様の模様になっているという点又は①~③の主要な点において類似している。 c 「ヨッシー」については、①頭部は鼻の部分が丸くて大きな緑色の球体になっており、その後ろに頭部の大半を占めるように白い縦長の丸を二つ重ねた中にそれぞれ黒目を置いた目があり、その周りをなぞるように緑色の縁取りがなされるような形状で頭部が形成されており、頬に当たる部分は白くて丸みを帯びてやや膨らんでいて、後頭部に半円形の朱色の背びれのようなものがついた恐竜をユーモラスにしたような生物の顔のかぶり物をして、②四肢と脇腹の部分は緑色、それ以外の腹部前面等の部分は白色をしており、背中に大きな赤い丸を白く縁取った模様があり、円錐に近い形の短い尻尾を付けているという点又は①及び②の主要な点において類似している。 d 「クッパ」については、①牛のような二本の角が生えていて、鼻と唇は一体になっており分厚く肌色で、口の中には牙が生えており、目は鋭くつり上がっていて赤く豊かな眉を生やしており、頭頂部から後頭部にかけて赤く豊かなたてがみが生えているかぶり物をして、②胴体の中心にはお腹から胸にかけて大きく縦長の円に複数の横線が入った肌色の模様があり、それ以外の四肢と脇腹の部分は黄色く、首並びに左右の手首及び上腕部には複数の銀色のとげのような飾りの付いた黒い首輪及び腕輪をしており、③後ろから見ると複数本の太くて白いとげがあり、白い縁のついた緑色の甲羅を背負っていて、円錐に近い形の黄色く短い二本のとげのついた尻尾を有するという点又は①~③の主要な点において類似している。 (イ)一審被告会社が品川第1号店に設置していた本件マリオ人形は、前記aで述べた点で原告表現物マリオと類似しているから、原告表現物及び原告立体像の「マリオ」と本件マリオ人形は類似している。 (ウ)a 一審被告らは、原告表現物マリオのうち、特別顕著性ひいては商品等表示該当性が認められ得る部分は顔の部分に限られ、被告標章第2のコスチュームには顔に該当する部分が存在しないから、一審原告の商品等表示と被告標章第2は同一又は類似ではないと主張するが、前記のとおり、原告表現物を「商品の形態」と同視して、商品等表示に該当するために特別顕著性等の要件が必要であるとする一審被告らの主張は誤りであり、原告表現物の全体が周知性を有する商品等表示である。また、被告標章第2のうち、「ヨッシー」のコスチューム、「クッパ」のコスチューム及び本件マリオ人形(被告標章第2の7~11)には原告表現物マリオ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの顔に該当する部分が存在する。そして、顔に該当する部分が存在しないとしても、一審原告の商品等表示である原告表現物と類似のものであると認識することは、証拠により裏付けられている(甲46、47、50~54)。 b 一審被告会社の当初の宣伝文句と本件レンタル事業において本件各コスチュームが高い割合で使用されていることからすると、本件レンタル事業の利用者は、「マリオカート」を公道上においてリアルに体験するという「リアルマリオカート」を体験する目的で、ゲームキャラクターになりきろうとして、本件各コスチュームの貸与を受けて本件レンタル事業を利用しているといえる。ここからしても、本件各コスチュームが、原告表現物マリオ又は原告表現物ルイージと類似した、「マリオ」又は「ルイージ」等のコスチュームであると認識されていることが裏付けられる。 c 被告標章第2のコスチュームは、一審原告による詳細な資料提供及び細部に至るまでの詳細な監修に基づき、商品化ビジネスのプロである一審原告のライセンシーによって商品化されたものである(甲110)。 ウ 被告標章第2の商品等表示としての使用の有無 (ア)一審原告の周知かつ著名な原告表現物及び原告立体像と類似する被告標章第2のコスチュームを使用することは、視聴者に対して自他商品識別機能を発揮しているから、これらを表示することは「商品等表示としての使用」に該当する。 一審被告会社は、本件各動画には運営主体を示す本件ロゴが付されていると主張するが、本件ロゴが映し出されるのは冒頭の数秒である上、本件ロゴの「MARICAR」は、一審原告の周知かつ著名な商品等表示である原告文字表示マリオカート又は原告文字表示マリカーを使用するものであり、一審原告の商品又は営業と誤認を生じさせる行為に該当するのであるから、本件ロゴの表示をもって被告標章第2の使用が「商品等表示としての使用」に該当しないということはできない。 本件マリオ人形についても、品川第1号店が「マリオ」シリーズに登場するキャラクターによって装飾されている状況に照らすと、入口部分に設置された同人形には、他の店舗装飾と一体となって同店舗で提供するサービスの宣伝広告のために使用されているといえる。 (イ)一審被告らは、現在は本件各コスチューム以外の多数のコスチュームを多数用意していることなどから、本件各コスチュームの使用は、商品等表示としての使用に該当しないなどと主張する。 しかし、一審被告らは、原判決前の過去の行為については何らの反論もしておらず、原審の口頭弁論終結日までの一審被告会社による不正競争行為の態様に何ら影響を及ぼすものではない。また、前記のとおり、本件事実実験が信用できず、一審被告会社の顧客における本件各コスチュームの利用率は原判決の後も極めて高い状態が続いていることやTripAdvisorという観光情報に関するウェブサイト上における品川第1号店の紹介文や利用者の投稿(甲183)からしても、現在も本件レンタル事業の利用者が、本件各コスチュームの貸与を受けられることを理由に本件レンタル事業を利用していることは明らかである。 (ウ)一審被告らは、不競法の他の条項の文言等から、不競法2条1項1号の「使用」には「貸与」は含まれないと主張する。 a しかし、商品等表示の「使用」(不競法2条1項1号)とは、「他人の商品等表示を自他識別機能又は出所識別機能を果たす態様で」、「商品又は営業に用いることを指す」のであり、この定義からは、他人(一審原告)の商品等表示である原告表現物に類似した本件各コスチュームを貸与する方法により営業に用いることも含まれる。 b 不競法の条項の文言についても、不競法2条1項1号における「使用」の対象が商品等表示それ自体である一方、「譲渡し、引き渡し・・・」の対象が「商品等表示を付した『商品』」であって、対象がそれぞれ異なっているから、「使用」から「譲渡し、引き渡し・・・」という行為態様を除外するという一審被告会社の解釈は誤りであり、むしろ、「使用」に「譲渡し、引き渡し・・・」という行為態様が含まれると解釈することが素直かつ適切である。 また、不競法2条1項1号と同項4号~10号及び10条は全く異なる行為を規制する類型であり、他人の商品等表示に係る違法行為の外延と不正取得した営業秘密に係る違法行為の外延を同一にすべきであるという要請が働くものでなく、営業秘密に関する条文の文言が「使用」(同法2条1項1号)の解釈に影響を与えることはない。 さらに、不競法2条1項3号に掲げる不正競争を行った場合の損害額推定規定である同法5条3項2号では、行為類型として「当該侵害に係る商品形態の『使用』」としか掲げられていない一方、同法2条1項3号では、行為類型として「譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する」行為が掲げられているが、「使用」という文言はない。両条項を整合的に解するためには、不競法5条3項2号にいう「使用」は、「譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する」という行為を含む広い概念と理解するほかなく、同法2条1項3号が「使用」に「貸与」が含まれないことの根拠となるものではない。 エ 混同を生じさせるおそれの有無 (ア)一審被告会社は、本件レンタル事業における広告宣伝に被告標章第2を使用し、本件写真2、3及び本件各動画を利用し、従業員に一審原告のキャラクターのコスチュームを着用させて公道カートの先導等の接客業務を行わせ、品川第1号店の入口部分に本件マリオ人形を設置し、本件貸与行為をすることで、一審原告のキャラクターを自社の事業に利用していて、これらの行為は、「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」に該当する。 (イ)一審被告らは、一審被告会社が被告標章第2を使用したとしても、需要者において「混同のおそれ」が生じないと主張する。 しかし、原告表現物は、いずれも、世界的に著名性を獲得しており、「混同のおそれ」の要件はそもそも不要である。 仮に著名性が認められないとしても、以下のとおり、一審被告会社が被告標章第2を使用することによって「混同のおそれ」が生じることは明らかである。 a 使用許諾関係に関する誤信も「混同のおそれ」に含まれること不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には、「自己と他人との間に同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存するものと誤信させる行為をも包含」する。 一審原告がブランド価値を低下させるような企業に対して使用許諾等することはあり得ず、一審原告が展開しているライセンス商品等に接した需要者は、一審原告又は一審原告のグループ会社が品質管理に関与していると考えるはずであるから、使用許諾関係があるとの誤信にとどまる場合に、商品・役務に関する品質の決定、管理主体に誤信がないとする一審被告会社の主張は誤っている。 b 一審被告らは、①店舗における本件各コスチュームの割合が低いこと、②利用者による本件各コスチュームの着用率も高くないこと及び③公道カートの車体に打ち消し表示を付したことを理由として、一審被告会社が被告標章第2を商品等表示として使用しても、混同のおそれは生じないと主張するが、前記のとおり、それらにより混同のおそれが生じなくなるものではない。 (一審被告らの主張) ア 原告表現物及び原告立体像の商品等表示該当性及び周知性又は著名性について (ア)「キャラクター」は、商品の「形態」と同様、①特別顕著性、②周知性が認められ、セカンダリーミーニングとしての出所表示機能を備えた箇所に限り「商品等表示該当性」を論じるべきものであるところ、「マリオ」のうち洋服の部分は一般的なオーバーオール等の形状そのものであって、「マリオ」における顕著な特徴は「顔」の部分にのみあり、「マリオ」の顔を含まない洋服部分のみでは特定の出所を表示する「商品等表示」足り得ない。 (イ)一審原告が提出する証拠は、いずれも日本国内で放映されたテレビコマーシャルであり、本件需要者である訪日外国人の間で原告立体像が周知又は著名であったとは認められない。 原判決は、時代やゲームによって「マリオ」の容姿や洋服が異なっている証拠が多数提出されている点を看過し、漫然と原告表現物目録の「マリオ」全体が使用されている旨及び周知である旨を判示しており、証拠に基づく事実認定を行っていない。この点だけからしても、原告表現物目録の「マリオ」が商品等表示に該当することはない。ルイージ、ヨッシー、クッパについても同様である。 イ 原告表現物及び原告立体像と本件宣伝行為との類否 被告標章第2のコスチュームには特別顕著性ひいては商品等表示該当性が認められる「顔」に該当する部分が存在しないから、被告標章第2のコスチュームは、原告表現物のうち商品等表示該当性が認められる部分と同一又は類似ではない。 ウ 被告標章第2の商品等表示としての使用の有無 (ア)本件動画4を除く本件各動画の冒頭においては、関係団体の自己識別表示であり、一審原告を想起させるような記載がない本件ロゴが表示されていることに加え、本件宣伝行為におけるコスチュームを着用した人物の使用は、「コスプレをして公道をカートで走る」という本件レンタル事業の内容を説明するためのものであり、「商品等表示としての使用」には当たらない。 また、本件マリオ人形は、店舗内に販売目的で設置されていた商品である。 (イ)本件事実実験やSNSであるインスタグラム(乙120)から明らかなとおり、本件各コスチュームは、関係団体が貸与するコスチューム群のごく一部を構成するものであり、利用者は、コスチューム着用の有無や本件各コスチューム以外に多数用意された他のコスチュームを自由な好みにより選択できる。したがって、本件各コスチュームは、関係団体が提供する役務の出所を表示する機能を果たしておらず、関係団体は、本件各コスチュームを、本件レンタル事業を構成する一要素の一部の種類として使用しているだけで、商品等表示として使用していない。 (ウ)以下のとおり、不競法2条1項1号の「使用」には、「貸与」は含まれないと解すべきである。 不競法2条1項1号は、規制対象行為について、「商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して」と規定しているところ、「使用」とそれ以降の「・・・譲渡し、引き渡し・・・」が「又は」でつながれて、区別されていることからすると、後者の行為は商品に関する占有又は支配関係が移転するか(譲渡、引渡し)、当該移転の準備行為(譲渡又は引渡しのための展示)形態の行為が列挙されていることの対比から、前者(使用)は、商品に関する占有又は支配関係が移転しない態様での行為を意味すると解釈するのが自然である。 また、不競法2条1項4号~10号、10条1項は、「使用」と「開示」を分けて規定し、第三者に情報が移転する形態を「開示」とし、第三者に情報が移転しない態様の行為を「使用」としている。 さらに、不競法2条1項3号は、禁止される行為態様として、「貸し渡し」を明示しており、不競法は、「貸与」を禁止する場合には「貸し渡し」という文言を使ってその旨を表現している。 エ 混同を生じさせるおそれの有無 (ア)キャラクターは商品等の品質を表示するものではなく、当該商品等の品質は、当該キャラクターが使用された商品や役務を提供する事業者(ライセンシー)に由来するから、周知なキャラクターが使用されているという商品というだけで混同が生じるものではない。とりわけ、グループ会社か否か等に関わらず広範囲の者にキャラクターの使用を許諾するビジネスが展開されている場合、需要者は、当該キャラクターが使用された商品等であることをもって「キャラクター自体の権利を有する特定の者(ないし特定のグループ)」を出所とする商品等であると認識することはない。単に、「キャラクターの権利者から使用許諾を受けた事業者を出所とする商品等」としか認識しない。 なお、原判決は、「一審原告から使用許諾を受けている関係が存する」旨の誤信をも「混同のおそれ」を認める根拠としているが、単に使用許諾関係があるとの誤信があるにとどまる場合には、商品・役務に関する品質の決定、管理主体については誤信がないのであって、不競法2条1項1号による規制の趣旨は妥当せず、「混同のおそれ」は認められるべきではない。 (イ)一審原告が、グループ会社か否かを問わず、広く「マリオ」等の使用を許諾しており(甲16の1の1~6、甲16の2の1~3、甲16の3、甲16の4の1、甲16の5)、日本マクドナルド株式会社(甲16の3)やメルセデス・ベンツ日本株式会社(甲16の4の1)等の例に明らかなように、「マリオ」等のキャラクターは、一審原告や一審原告のグループ会社を出所とする表示としては機能していない。 (ウ)関係団体は、本件レンタル事業の出所について混同が生じないよう細心の注意を払って本件レンタル事業を運営している。すなわち、本件事実実験によると、本件レンタル事業において利用者にレンタルされている本件各コスチュームの割合は、全てのコスチュームのうち3.5%にすぎず、利用者が本件各コスチュームをレンタルする割合も23.8%にすぎない。また、公道カートの車体には明確な打ち消し表示が付されることにより、利用者が本件各コスチュームを着用していたとしても、明確に、本件レンタル事業と一審原告との関連性は否定される。現実にも本件需要者は混同していない。 (8)争点8(使用差止め及び抹消・廃棄請求の可否及び範囲)について (一審原告の主張) ア 一審被告会社による被告標章第2の使用は本件訴訟提起後も継続しており、一審原告は、長年の営業努力によって獲得した営業上の信用にただ乗りされ、営業上の信用が損なわれることによって、営業上の利益を侵害されている。 イ 一審被告会社は、原判決の主文3項に関して、不競法2条1項1号に係る使用の差止めは、不特定又は過剰な差止めであると主張するが、商品等表示の「使用」(不競法2条1項1号)は、前記のとおりそれ自体明確な概念である(甲191)。 一審被告会社は、原判決の主文によると、関係団体が、商店街や米軍に対するイベントにおいてコスチュームを貸与するという本件訴訟に無関係な行為が禁止されることになり問題であるなどとも主張するが、このような行為も、一審原告と一審被告会社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存在すると誤信させる行為に該当する以上、禁止されて当然である。 (一審被告らの主張) ア 本件各写真及び本件各動画は既に削除され、本件マリオ人形も撤去され、関係団体は、現在では本件各コスチュームを着用しての接客は行っていない。 イ 原判決は、不競法に基づく請求の趣旨6項(主文3項)の請求には「コスチュームを使用(貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され」るとしており、弁論主義に反する違法があるし、著作権法に基づく請求と不競法に基づく請求は、差止めが認められる範囲が異なり、これを選択的併合とするのは誤りである。 また、抽象的な「使用」を禁止する原判決主文3項は、「不特定」又は「過剰」な差止めであり、関係団体が、店舗周辺で開催される商店街のイベントや、米軍のイベント等の際に、当該商店街や米軍からの要望に応じて本件各コスチュームを含む様々なコスチュームを貸与したり、8人のツアー客の一人に対してのみ本件各コスチュームを貸与したりするような不正競争行為に該当しない行為まで差止めの対象になってしまう さらに、上記請求の趣旨6項(主文3項)に関する「使用」の差止めに関する判断は、原判決が、著作権法に基づく「複製」禁止請求(請求の趣旨4項)について、差止めの対象が不特定であることを一つの理由にこれを棄却していることともバランスを失する。 (9)争点9(本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか)について (一審原告の主張) ア 本件各ドメイン名と原告文字表示及び「MARIO KART」表示との類否 本件各ドメイン名の要部は、いずれも「maricar」であるところ、前記のとおり、取引者又は需要者からすると、原告文字表示と「maricar」表示を類似のものとして受け取るおそれがあり、原告文字表示と本件各ドメイン名は類似する。 また、前記で検討したとおり、本件各ドメイン名の要部「maricar」は、「MARIO KART」表示とも類似する。 イ 図利加害目的の有無 一審被告会社は、「maricar」表示を使用し、本件各ドメイン名を使用して開設したウェブサイトにおいて本件掲載行為を行うなど一審原告の有する顧客吸引力を不正に利用しており、他人の顧客吸引力を不正に利用して事業を行う目的を有していたと認められる。 ウ 本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合も不正競争行為に該当すること (ア)原判決は、原告文字表示マリカーは、日本語を解しない者の間では周知性が認められず、一審原告に生じる営業上の利益侵害は、一審被告会社が本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合には認められないことを理由に本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合には、本件各ドメイン名の使用の差止めは認められず、さらに、本件ドメイン名2(「maricar.co.jp」)に係る登録抹消請求は認められないと判示している。 しかし、①ドメイン名の登録が先着順でされ、同じドメイン名を登録することはできないことから、不競法2条1項13号は、特定商品等表示に化体した信用等の保護に加え、ドメイン名の登録制度に乗じた営業妨害行為を防ぐという目的を有しているから、保護対象を周知性又は著名性のあるものに限定する必要はないこと、②ドメイン名はサイバー空間で用いられるため地域性が問題とならないこと、③米国法、ICANNが平成11年10月に制定したドメイン名統一紛争処理方針(UDRP)及び一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)がUDRPを日本にローカライズして制定したJPドメイン名紛争処理方針(JPDRP)においても周知性は要件とされていないこと等の理由から、不競法2条1項13号は、その立法時に、周知性又は著名性の要件が不要とされた(甲153)ものである。 また、原判決の判示によると、日本語の特定商品等表示に類似するドメイン名を不正の利益を得る目的で取得した者が、外国人向けのウェブサイトに当該ドメイン名を使用して不正の利益を得る場合には、特定商品等表示を有する者が何らの措置を講じることもできないことになる。また、どのようなドメイン名であろうと、通常は、特定商品等表示について周知性が認められない者が需要者との関係では存在し得るのであって、周知性が認められない者がいる場合に限り、抹消請求が認められないということであるとすると、不競法2条1項13号を立法した意味がなくなってしまい、不当である。 (イ)仮に日本語を解しない者との関係で周知性が認められないことが、これらの請求を棄却する根拠となり得る余地があるとしても、前記(4)で述べた事情及び「MARIO KART」表示との関係でも不正競争行為該当性が肯定し得ることからすると、それによって本件各ドメイン名を使用する行為が不正競争行為に該当しなくなることはない。 (一審被告らの主張) ア 本件各ドメイン名と原告文字表示の類否 現在の本件需要者である訪日外国人は、日本語を解さず、過去においても本件需要者の大部分は日本語を解さない者であったから、本件需要者が、原告文字表示及び「MARIO KART」表示と一審原告が本件各ドメイン名の要部と主張する「maricar」とを類似のものとして受けとるおそれはない。 イ 図利加害目的の有無 (ア)一審被告会社が、他人の顧客吸引力を不正に利用して事業を行う目的を有していたのであれば、当該他人の表現と同一か類似のドメイン名を使用するのが自然であるところ、原告文字表示及び「MARIO KART」表示と本件各ドメイン名は、同一でも類似でもないから、上記目的は認められない。 (イ)本件需要者に日本語を解する者が含まれた過去においても、本件需要者の大部分は日本語を解さない者であった。このような本件需要者が本件各ドメイン名を見ても、一審原告又は一審原告の「マリオカート」を連想することはないから、原判決の「本件各ドメイン名を使用することにより、同文字表示が有する高い知名度を利用し、一審原告の公認あるいは協力の下で本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し」との認定は前提が誤っている。 また、原判決は、本件ドメイン名1~3を使用したウェブサイト上の表示や記載内容から、一審被告会社の意図(ゲーム世界の現実世界での体験を売りにした顧客の吸引)を推認し、原告文字表示マリカーと本件各ドメイン名の類似性から、さらに、本件各ドメイン名の使用意図を推認している。しかし、前記のとおり、そもそも原告文字表示マリカーと本件各ドメイン名は非類似であり、そのような推認は前提を誤っている。 そして、原判決が、「不正の利益を得る目的」を認定するために使用した甲6の1~3の各ウェブサイト上の表示は、現時点において、全て、日本語を使用しないものに変わっているほか、原判決にあるような写真や日本語の記載も存在しない(乙93の1~5)。また、一見して、一審原告の「マリオカート」のキャラクターのコスチュームを着用している人物が写っていることが分かる写真や動画も、一切存在しない。それどころか、当該各ウェブサイトを表示しようとした場合、まず、打ち消し表示が表示される(乙57)。 このような現在のウェブサイトの表示内容からすると、一審被告会社において、一審原告の「『マリオカート』シリーズにおけるゲームの世界を現実世界で体験することを売りにして顧客を惹きつけようとする」意図を認定することはできない。 ウ 本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合は不正競争行為に該当しないことなど (ア)日本語を解しない本件需要者は、片仮名で表記された原告文字表示マリカーを読めず、その呼称や意味を理解できない(乙54)。したがって、本件需要者は、原告文字表示マリカーと本件各ドメイン名が同一又は類似すると判断できず、本件需要者との関係では「同一若しくは類似のドメイン名」という要件を充足せず、不正競争行為に該当しない。 (イ)不競法3条1項の営業上の利益が侵害される場合とは、信用・名声・ブランド価値等を含む、現存する経済的価値が侵害される場合であるところ、このような経済的価値の侵害が生じるかどうかは、問題となる特定商品等表示がどれくらい需要者に知られているかにかかっており、営業上の利益の侵害の有無を検討するに当たって周知性を検討することは当然である。一審原告は、不競法3条の「営業上の利益の侵害」の解釈について、同条の解釈によることなく、別の条文である同法2条1項13号の趣旨を根拠に誤りであると主張を展開しており、誤っている。 また、一審原告が挙げる例示及びそれに基づく主張は、日本語を解する者を基準とした議論であり、片仮名表記を読めない外国人には、前記のとおり類似かどうかの判断もできないから、不正の利益を得る目的は認められない。 (10)争点10(使用差止め及び登録抹消請求の可否及び範囲)について (一審原告の主張) 一審被告会社は、本件各ドメイン名を使用して開設したウェブサイトにおいて本件掲載行為を行うことによって本件レンタル事業を行っているのであり、一審原告の営業上の利益が侵害されている。 (一審被告らの主張) 一審被告会社又は関係団体が本件各ドメイン名を使用しているとしても、前記のとおり、様々な態様により打ち消し表示を行っていることからすると、当該使用行為により、一審原告において、事業活動に対する信用等の営業上の利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあるとはいえない。 また、原判決主文5項は、差止めの対象から、「外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合」を除外しているが、一切の日本語の使用を禁止している点で過剰な差止めである。すなわち、原判決は、「原告に生じる前記営業上の利益侵害は、被告会社が本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合には認められない」とするが、そのように判断した理由を主文5項に反映していない点において、大きな問題がある。本件レンタル事業のサービス内容とは直接関係ない部分に日本語が使用されていたとしても、不正競争行為に該当しないから、サービス内容の記載と関連させることなく、一律に日本語の記載を排除する判決主文5項は、過剰な差止めである。 (11)争点11(本件写真2及び3並びに本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たり、本件制作行為及び本件掲載行為が一審原告の複製権、翻案権、自動公衆送信権、送信可能化権を侵害するか)について (一審原告の主張) ア 原告表現物マリオは、①赤い帽子をかぶり、赤い長袖シャツと青いオーバーオールを着た人物であり、②赤い帽子は全体的に膨らみをもって、正面に半円形のつばがついた形状をしており、帽子の正面には白い丸の中に赤字で大きくMと書かれた部分があり、③赤い長袖シャツは、両腕部分及びオーバーオール(つなぎ)に覆われていない首に近い部分が見えており、④ゆったりとしたサイズの青いオーバーオールは、長ズボン部分と、正面の胸当てからなる前面部と、背中部分と当該前面部と背中部分とをつなぐサスペンダー(太い肩紐からなるズボンつり部分)から構成され、赤い長袖シャツが見えている部分を除いた足首から肩にかけての全身を覆い、⑤オーバーオールの胸あてのあたりにあるサスペンダーのすぐ下の部分には黄色く大きな丸いボタンのようなものがついているという特徴を有する。 より詳細には、まず、上記①については、帽子と長袖シャツの赤色は少し朱色がかった明るく鮮やかな赤色(PANTONE●●●●●又は当該商品の素材等による色味等の制約の下でそれと同様の印象を与える色、以下の色名の説明においても、いずれも当該商品の素材等による色味等の制約の下でそれと同様の印象を与える色を含むものとする。)で、オーバーオールの青色は明るくしっかりとした青色(PANTONE●●●●●)で描かれており、上記②については、帽子の正面に描かれた白い丸は、完全な円ではなく、帽子のつばの縁に沿って円の下方部が切り取られた形状の少し横に広い楕円であり、白い丸の中に描かれた赤いMのマークは、帽子及び長袖シャツと同一色である赤色であり、Mを上からつぶして横に広げたような形状で中央のへこみは浅く描かれ、両端の辺の部分は上部に向けて幅が狭く、他方で下部に向けて広がるように、全体的に鋭角的に描かれており、帽子の膨らみについては、額の上に当たる部分に大きな膨らみをもたせるとともに、後頭部に当たる部分に小さな膨らみをもたせ、双方の膨らみの間にくぼみを設けたうえで、正面から見たときに横に広い印象を与えないように描かれている。また、上記④については、オーバーオールのお腹の部分は、小太りの男性が着用したようにゆったりと膨らむように描かれており、胸当てもズボン部分と幅において一体化し、一般的なオーバーオールよりも極端に横に広く大きく、胸のあたりまでをほぼ全て覆うように描かれていて、サスペンダーも一般的なオーバーオールよりも極端に太く短めに描かれている。上記⑤については、オーバーオールの胸当てとサスペンダーの下部が重なるように描かれており、当該重なりの部分をほぼ占めるように、一般的なオーバーオールに使用するには極端に大きく、目立ちすぎる原色の黄色(PANTONE●●●●●●●)の円形のボタンがついている。 本件写真2及び本件動画1~16には、上記主要な特徴を同じくするコスチュームを着た人物が写っているから、その部分は、一審原告の著作物である原告表現物マリオの表現内容及び形式を覚知させるに足りるものであり、少なくともそれらの本質的特徴を直接感得させるものであることは明らかである。 イ 原告表現物ルイージは、①緑色の帽子をかぶり、緑色の長袖シャツと青いオーバーオールを着た人物であり、②緑色の帽子は全体的に膨らみをもって、正面に半円形のつばがついた形状をしており、帽子の正面には白い丸のなかに緑色の字で大きくLと書かれた部分があり、③緑色の長袖シャツは、両腕部分及びオーバーオールに覆われていない首に近い部分が見えており、④ゆったりとしたサイズの青いオーバーオールは、長ズボン部分と正面の胸当てからなる前面部と背中部分と当該前面部と背中部分とをつなぐサスペンダーから構成され、緑色の長袖シャツが見えている部分を除いた足首から肩にかけての全身を覆い、⑤オーバーオールの胸のあたりにあるサスペンダーのすぐ下の部分には黄色く大きな丸いボタンのようなものがついているという特徴を有する。 より詳細には上記①については、帽子及び長袖シャツの緑色は明るく鮮やかな緑色(PANTONE●●●●)で、オーバーオールの青色は「マリオ」のオーバーオールよりも暗めで色の濃い、紺色に近い青色(PANTONE●●●●●)で描かれており、上記②については、帽子の正面に描かれた白い丸は、完全な円ではなく、帽子のつばの縁に沿って円の下方部が切り取られた形状のわずかに横に広い楕円であり、白い丸の中に描かれた緑色のLのマークは、帽子及び長袖シャツと同一色である青色であり、縦の辺と横の辺が接合する箇所に向けてだんだんとやや狭く、接合箇所と反対方向に向けてやや太くなっていくうえに、縦の辺と比べて横の辺が若干太くなるように描かれていて、帽子の膨らみについては、額の上に当たる部分に大きな膨らみをもたせるとともに、後頭部に当たる部分に小さな膨らみをもたせ、双方の膨らみの間にくぼみを設けたうえで、正面から見たときに横に広い印象を与えないように描かれている。また、上記④については、オーバーオールのお腹の部分は若干ゆったりと膨らむように描かれており、胸当てもズボン部分と幅において一体化し、一般的なオーバーオールよりも極端に横に広く大きく、胸のあたりまでをほぼ全て覆うように描かれていて、サスペンダーも、一般的なオーバーオールよりも極端に太く短めに描かれている。上記⑤については、オーバーオールの胸当てとサスペンダーの下部が重なるように描かれて、当該重なりの部分をほぼ占めるように、一般的なオーバーオールに使用するには極端に大きく目立ちすぎる色の黄色(PANTONE●●●●)の円形のボタンがついている。 本件写真2及び本件動画1~4、6~10、12~16には、上記主要な特徴を同じくするコスチュームを着た人物が写っているから、その部分は、一審原告の著作物である原告表現物ルイージの表現内容及び形式を覚知させるに足りるものであり、少なくともそれらの本質的特徴を直接感得させるものであることは明らかである。 ウ 原告表現物ヨッシーは、①緑と白を基調とした二足歩行の恐竜をユーモラスにしたような架空の生物であり、②正面から見ると、頭部は鼻の部分が丸くて大きな緑色の球体になっており、その後ろに頭部の大半を占めるように白い縦長の丸を二つ重ねた中にそれぞれ黒目を置いた目があり、その周りをなぞるように緑色の縁取りがなされるような形状で頭部が形成されており、頬に当たる部分は白くて丸みを帯びてやや膨らんでいて、四肢と脇腹の部分は緑色、それ以外の腹部前面等の部分は白色をしており、③後ろから見ると、頭部の後ろに半円形で朱色の背びれ様のものが付いていて、背中に大きな赤い丸を白く縁取った模様があり、円錐に近い形の短い尻尾があって、両頬の部分と尻尾のうち地面に面した部分が白くそれ以外が緑色であるという特徴を有する。 より詳細には、上記①については、皮膚等の緑色は黄緑色に近い緑色(PANTONE●●●●)であり、頬やお腹及び甲羅の縁の白色は通常の白色(PANTONE●●●●●)でそれぞれ描かれており、上記②については、頭部のうち目については、正面から見ても鼻で目が隠れないよう、白目、黒目及び緑色の縁取りは十分な高さをもって描かれるとともに、白目の下端は、横から見ても白目がはっきりと見えるよう、白い部分がやや幅をもって描かれており、その形状は、楕円の下方部分がつぶれたようになっており、頬の部分は白い部分が真後ろから見てもはっきり分かるように後頭部に至る程度にまで一定の広がりと十分な膨らみをもって描かれていて、腹部前面の白い部分は、首から胸部及び腹部を経由し股のあたりまでを広く覆うように描かれている。上記③については、背びれは、オレンジ色に近い朱色(PANTONE●●●●●)をしており、半円に近い形で相応の高さをもって描かれており、甲羅に当たる部分の背中の大きな赤い丸を白く縁取った模様のうち、甲羅の赤色は少し朱色がかった明るく鮮やかな赤色(PANTONE●●●●●)であり、甲羅の白い縁取りも丸みをもって立体的に描かれていて、尻尾は根元の部分が太く、横又は後ろから見たときに底面の白い部分が十分見えるように描かれている。 本件写真3及び本件動画1、3、7、8、11~16には、上記主要な特徴を同じくするコスチュームを着た人物が写っているから、その部分は、一審原告の著作物である原告表現物ヨッシーの表現内容及び形式を覚知させるに足りるものであり、少なくともそれらの本質的特徴を直接感得させるものであることは明らかである。 エ 原告表現物クッパは、①顔と甲羅が主に緑色で、黄色い胴体を有する二足歩行の怪物のような生物であり、②正面から見ると、(a)緑色の頭部には牛のような二本の角が生えていて、鼻と唇は一体になっており分厚く肌色で、口の中には牙が生えており、目は鋭くつり上がっていて赤く豊かな眉を生やしており、頭頂部から後頭部にかけて赤く豊かなたてがみが生えていて、(b)胴体の中心にはお腹から胸にかけて大きく縦長の円に複数の横線の入った肌色の模様があり、それ以外の四肢と脇腹の部分は黄色く、首並びに左右の手首及び上腕部には複数の銀色のとげのような飾りの付いた黒い首輪及び腕輪をしており、③後ろから見ると複数本の太くて白いとげがあり、白い縁のついた緑色の甲羅を背負っていて、円錐に近い形の黄色く短い二本のとげのついた尻尾を有するという特徴を有する。 より詳細には、上記①については、顔の緑色は少し明るく薄めの緑色(PANTONE●●●●)である一方、甲羅の緑色はより深く、濃く鮮やかな緑色(PANTONE●●●●)であり、胴体の黄色は少し黄土色っぽい濃く明るめの黄色(PANTONE●●●●)でそれぞれ描かれおり、上記②については、頭部の角は、甲羅のトゲと同様に肌色に近いクリーム色がかった白色(PANTONE●●●●●)であり、その根元部分は薄めの茶色(PANTONE●●●●)で描かれており、目の上部に豊かな眉を生やしており、その色はオレンジ色に近い赤色(PANTONE●●●●●)であり、鼻と唇については少し黄色に近い肌色(PANTONE●●●●●)であり、鼻が高くなりすぎないように、また鼻の下の唇の割れ目が深くなりすぎないように描かれているとともに、黒色の瞳孔の周りは少しオレンジ色に近い赤色(PANTONE●●●●●)で縁取るように瞳の虹彩の部分が描かれていて、たてがみは後ろに流れるように、頭頂部から後頭部までを覆うように描かれており、その色はオレンジ色に近い赤色(PANTONE●●●●●)であり、上腕部の腕輪は肩に近い部分についているように描かれている。上記③については、甲羅についているとげの白色は、角と同一の色で肌色に近いクリーム色がかった白色(PANTONE●●●●●)であり、角と同様に根元が薄めの茶色(PANTONE●●●●)で描かれており、甲羅の周りの縁部分の白は通常の白色(PANTONE●●●●●)であって、丸みをもって立体的に描かれている。 本件写真3並びに本件動画1、3、4、7、8、11、12、14及び16には、上記主要な特徴を同じくするコスチュームを着た人物が写っているから、その部分は、一審原告の著作物である原告表現物クッパの表現内容及び形式を覚知させるに足りるものであり、少なくともそれらの本質的特徴を直接感得させるものであることは明らかである。 オ 以上のとおり、本件写真2及び3並び本件各動画は、一審原告の著作物である原告表現物の複製物又は翻案物であるから、本件制作行為は、一審原告の複製権及び翻案権を侵害し、本件掲載行為は一審原告の自動公衆送信権又は送信可能化権を侵害する。 (一審被告らの主張) ア 一審原告が原告表現物マリオ及び原告表現物ルイージの特徴として主張する前記特徴①~⑤は、そもそも表現ではないアイデアか、創作性が認められないありふれた表現であり、表現上の本質的特徴ではない。すなわち、前記特徴②はかぶっている「キャスケット」と呼ばれる種類の帽子の形状をありのままに表現したものにすぎず、前記特徴③及び④はオーバーオールと長袖シャツを着た場合に当然に生じる状態をありのままに表現したものにすぎず、特徴⑤はオーバーオールという種類の洋服の特徴をありのままに表現したものにすぎない。 イ 具体的表現から離れた抽象的概念としてのキャラクターには著作物性は認められないところ、一審原告が原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの特徴として主張する前記特徴①~③は、具体的表現である原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの3点のイラストを離れた抽象的概念としての「ヨッシー」及び「クッパ」を観念し、その特徴を述べるものである。 さらに、本件写真2及び3並びに本件各動画に写っているのは「緑と白を基調とした服を着た人間」あるいは「肌色及び白を基調とした服を着た人間」であり、一審原告が原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの特徴として主張する前記特徴①~③を直接感得することはできない。 (12)争点12(本件各コスチュームが原告表現物の複製物又は翻案物に当たり、一審原告の貸与権を侵害するか)について (一審原告の主張) ア 本件各コスチュームは、キャラクターへのコスプレ等をするために着用することを望む利用者のために、一審原告による正規の商品化ライセンスに基づいて作成されたものである。一般的な衣料とは大きく異なる表現上の特徴がコスチュームに確実に再現されるように、一審原告が、ライセンシーに対して様々な資料を事前に交付し、サンプル品の提供を受けて検査し、詳細な修正指示を行うなど詳細な監修を行って製作されたものである。 イ 原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの本質的特徴は前記(11)ア~エで述べたとおりであるところ、本件各コスチュームは、それらの特徴をいずれも備えており、原告表現物の本質的特徴を直接感得させ、本件各コスチュームは、一審原告の著作物である原告表現物の複製物又は翻案物であるから、本件貸与行為は一審原告の貸与権を侵害する。 (一審被告らの主張) ア 前記(11)アで述べたとおり、一審原告が主張する原告表現物マリオ及び原告表現物ルイージの特徴①~⑤は表現上の本質的特徴とはいえず、本件コスチューム1~4から原告表現物マリオ及び原告表現物ルイージの本質的特徴は看取できない。 原告表現物マリオを「マリオ」たらしめている表現上の本質的な特徴は、極めて特徴的に描かれている①大きな目、②大きくて丸い鼻、③目や鼻の下部に沿って生え、その両端が通常の人間ではありえないほどに上向いた髭、④への字型の眉等といった顔部分であり、「マリオ」が着用している衣服ではない。 一審原告が主張する原告表現物マリオの前記特徴①~⑤のうち①及び②は帽子の、①及び③~⑤は、衣服の特徴をいうものであるが、このような帽子や衣服のデザインに著作権法の保護を与えると、新規性や創作容易性といった厳格な要件をクリアしたもののみ20年に限って独占的実施を認める意匠制度の存在意義がなくなってしまう。 イ 前記(11)イで述べたとおり、一審原告が原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの特徴として主張する前記特徴①~③は、具体的表現である原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの表現上の本質的特徴を主張するものではない。 また、一審原告が主張する原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパと本件コスチューム5及び6の共通点は、いずれもアイデアであるか、恐竜、悪役怪獣等をイラスト化又はキャラクター化する際に一般的に用いられるありふれた表現であって、これらの点が共通するからといって、本件コスチューム5及び6が、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパの複製物又は翻案物となるものではない。 (13)争点13(一審被告Yに対する損害賠償請求の可否)について (一審原告の主張) 以下のとおり、一審被告Yは、一審被告会社の代表取締役として、一審被告会社をして第三者である一審原告に対して不法行為(不正競争行為又は著作権侵害行為)を行ってきたのであり、任務懈怠につき、悪意又は重大な過失があるから、会社法429条1項に基づき、一審被告会社と連帯して損害賠償責任を負う。 ア 一審被告Yの一審被告会社における立場及び一審被告Yの任務懈怠について 一審被告Yが、一審被告会社の唯一の取締役かつ同社の代表取締役として、一審被告会社が実施する本件レンタル事業を含む業務執行全般について、単独で意思決定を行っていたことからすると、一審被告会社が悪意又は重過失をもって不正競争行為又は著作権侵害行為という違法行為を行っているのであれば、一審被告Yについて、その任務懈怠につき悪意又は重過失が認められ、会社法429条1項に基づく責任を負う。 イ 被告標章第1及び本件各ドメイン名の使用行為について 一審被告Yは、一審被告会社での事業を開始した平成27年6月4日の段階で、原告文字表示が、一審原告の周知かつ著名な商品等表示であり、「株式会社マリカー」を商号とする一審被告会社において本件レンタル事業に関して被告標章第1や本件各ドメイン名を使用する行為が、原告文字表示と同一又は類似の標章やドメイン名の使用に該当することを当然に認識していたというべきであるから、一審被告Yには、その任務懈怠につき悪意又は重過失が認められる。 また、一審原告の知的財産に対する不当な攻撃の一環として、一審被告会社が、剽窃的な出願によって登録を受けた「マリカー」の標準文字からなる本件商標を保有し、不正な利益を得る目的で本件各ドメイン名を使用していたことからしても、一審被告会社の唯一の取締役である一審被告Yについても悪意を認定できるし、少なくとも重過失が認められるべきである。 さらに、一審被告Yが、一審被告会社のチラシやウェブサイト等において、「リアルマリオカート」などと、一審被告会社の事業と「マリオカート」シリーズが関連することを意識した記載をしていたこと(甲3、甲6の1、甲35、39)などからしても、一審被告Yの認識は裏付けられる。 ウ 被告標章第2の使用行為について 一審被告会社が本件レンタル事業を開始した平成27年6月4日の段階で、一審被告Yは、原告表現物及び原告立体像が、一審原告の周知かつ著名な商品等表示であって、一審被告会社が本件レンタル事業において使用する被告標章第2が、原告表現物及び原告立体像と同一又は類似の標章に該当することを当然に認識していた。そして、一審被告Yは、一審被告会社の唯一の取締役かつ同社の代表取締役として、本件レンタル事業において被告標章第2を使用する意思決定を行い、一審被告会社は被告標章第2の使用という不正競争行為をしているのであるから、一審被告Yには、その任務懈怠につき悪意又は重過失が認められる。 エ 一審被告Yが、関係団体においても本件レンタル事業に深く関与する地位にあったこと 一審被告Yが、関係団体である各有限責任事業組合において、同組合の組合員である一審被告会社の職務執行者として、本件レンタル事業に関与していた事実からしても、一審被告会社の本件レンタル事業における被告標章第1、被告標章第2及び本件各ドメイン名の使用という不正競争行為又は著作権侵害行為について、一審被告Yにおいて当然に認識を有していたという事実が裏付けられ、一審被告Yに任務懈怠につき悪意又は重過失が認められる。 オ 一審被告Yのテレビ番組における行為 一審被告Yが、テレビ番組において、「マリオ」のコスチュームを着用してインタビューを受け、同コスチュームのまま公道カートに乗車して公道を走行することにより本件レンタル事業を宣伝するなどしていた(甲42の13、甲43の13、甲108の1・2)ことからすると、一審被告Yは、一審原告の顧客吸引力を不正に利用することについて積極的に認識・認容していたと認められる。 カ 本件訴訟の提起後現在に至るまで一審被告会社による侵害行為が継続していること 一審被告会社は、本件訴訟の提起後、訴訟を長期化させながら、少しずつ違法行為の態様を変化させているが、これは、一審被告会社の代表者である一審被告Y自身が、一審被告会社の違法行為を認識している証左である。 また、一審被告会社は、平成28年8月22日付で通知書(乙9)を受領して以降、審で侵害の心証が開示され、さらに、被告標章第1、被告標章第2及び本件各ドメイン名の使用が不正競争行為に該当することを判示した原判決が言い渡されてもなお、代表者である一審被告Yによる意思決定の下、不正競争行為又は著作権侵害行為を続けているのであり、一審被告Yは、当初から侵害行為に当たることを認識しながら、侵害行為を計画的に推進してきたといえる。 (一審被告らの主張) 以下のとおり、一審被告Yに対する会社法429条1項に基づく請求は認められない。一審原告が主張する各行為が不正競争行為又は著作権侵害行為に該当するかについては、過去に類似の裁判例も存在せず、特許庁は、本件商標に対する一審原告の異議申立てを排斥しているのであるから、一審被告Yが違法性を認識することは困難であって、一審被告Yについて、一審被告会社の職務を行うにつき、任務懈怠及び悪意又は重大な過失があったとは認められず、一審被告Yは損害賠償義務を負わない。 ア 一審原告が任務懈怠に関する主張を行っていないこと 会社法429条1項に基づく主張が認められるためには、取締役が負う具体的な義務の内容と、その義務の懈怠を裏付ける具体的な事実の存在を主張立証しなければならないが、一審原告は、一審被告Yが負う具体的な義務の内容や、その義務の懈怠を裏付ける具体的な事実については全く主張しておらず、一審原告の「悪意」又は「重過失」に関する主張も、その対象が特定できていない失当なものとなっている。 イ 被告標章第1及び本件各ドメイン名の使用行為について 原判決を前提とするなら、被告標章第1等の使用の一部はそもそも不正競争行為ではなく、本件は、不正競争行為の該当性の判断が微妙な事案である。 また、登録商標についての権利濫用の再抗弁は、原告文字表示マリカーの周知性を理由とするものであり、一審被告Yの主観とは無関係であるし、不競法2条1項13号の主観的要件(不正の利益を得る目的)と、会社法429条1項の悪意又は重過失の内容(任務懈怠についての悪意又は重過失)は、全く異なるから、不競法2条1項13号の主観的要件の存在は、そのまま会社法429条1項の悪意又は重過失の存在を帰結するものでもない。 ウ 被告標章第2の使用行為 コスチュームの使用については、その不正競争行為該当性につき、過去に類似の裁判例が存在するわけでもなく、原告表現物及び一審原告立体物と被告標章第2のコスチュームが、同一又は類似であるとの一審被告Yの認識をもって、一審被告Yについて悪意又は重過失が認められるとするのは誤りである。 エ 本件各店舗の運営への関与 一審被告Yは、一審被告会社が各組合の全てから脱退した平成29年11月6日以降は関係団体が運営する本件各店舗の運営に関与する余地がないし、当初より、運営には関与していない。また、仮に、一審被告Yにおいて、店舗運営への関与があったとしても、当該事実と悪意及び重過失は全く別次元の話であって、一審原告の主張には論理の飛躍がある。 オ 本件訴訟提起後の対応はむしろ任務懈怠を否定する事情であること 一審被告会社が、商号を変更し、関係団体である各事業会社が、一審原告から問題があると主張された写真や動画をそのウェブサイト等から削除し、また、同ウェブサイト、公道カート、店舗等に打ち消し表示を表示しているのは、無用の紛争を回避するための合理的な行動であり、一審被告Yについて任務懈怠に該当する行為があったことや、悪意又は重過失があったことを推認させるものではない。 (14)争点14(一審原告の損害額)について (一審原告の主張) ア 不競法5条3項1号、4号又は著作権法114条3項に基づく損害額等 一審被告会社には前記の不正競争行為及び著作権侵害行為について、少なくとも過失が認められる上、前記のとおり、一審被告Yは、任務懈怠につき悪意又は重過失があるから、一審被告会社は不競法4条又は民法709条に基づき、一審被告Yは会社法429条1項に基づき、連帯して損害賠償責任を負う。 一審原告は、不競法5条3項1号、4号又は著作権法114条3項により、商品等表示の使用又はドメイン名の使用若しくは著作権の行使について受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として主張する。 (ア)売上額 損害賠償額算定の基礎となる売上額は、13店舗ある本件各店舗の売上げの全てである。 a 一審被告会社設立時(平成27年6月4日)から本件訴訟提起時(平成29年2月24日)までの売上額 一審被告会社において、同行ガイド付きの2時間ツアーの料金は1時間当たり8000円であるところ、利用者が平均5人1組で来店し、上記ツアーを選択したとすると、1組当たりの売上額は4万円(8000円×5名)となる。そして、一審被告会社が、順次店舗数を拡大していたことを勘案して、一審被告会社の設立から本件訴訟提起までの期間について平均した場合、本件各店舗を通じて、1日当たり10組が利用したとすると、1日当たりの一審被告会社の売上額は、少なくとも40万円(4万円×10組)となる。一審被告会社の設立から本件訴訟提起までの期間は1年9か月(630日)であるから、当該期間における売上額は2億5200万円(40万円×630日)となり、2億5000万円を下らない。 b 本件訴訟の提起(平成29年2月24日)から平成30年10月31日までの一審被告会社の売上額 店舗数が13店舗に拡大している上、一審被告会社が本件レンタル事業に供する公道カートの台数も増加し、一審被告会社は、現時点において、本件各店舗で少なくともそれぞれ約30台程度の公道カートを保有して、本件レンタル事業を実施している。 したがって、現在、一審被告会社が主体的に関与し、少なくとも、関係団体と共同して本件レンタル事業を実施している13ある本件各店舗において、利用者が平均5人1組で、全店舗を通じて少なくとも1日30組(1店舗平均1日2組~3組)、一審被告会社の公道カートレンタルサービスを利用したと仮定しても、1日に稼働する公道カートはのべ150台分となる。 また、利用者が約2時間のツアーを選択したと仮定すると、現在、一審被告会社の提供するサービスの料金は、1人当たり9000円(甲143の1・6)であり、1組当たりの利用金額は4万5000円となる。したがって、一審被告会社の1日当たりの本件各店舗全てを通じた売上額は、控え目に見積もっても、135万円(4万5000円×30組)を下らない。 そして、店舗数及び車両数の拡大に照らして、平成29年2月24日以降現時点まで、少なくとも上記の1日当たりの売上げが継続していたというべきであり、これを基礎として計算すると、平成29年2月24日以降平成30年10月31日までの約20か月(約600日)の期間における一審被告会社の売上額は、約8億1000万円(135万円×600日)を下らない。 (イ)実施料率 一審原告の商品等表示の著名性及び顧客吸引力の強さ、一審原告の著作権の重要性並びに同商品等表示及び著作権に関連する約定実施料からすると、本件における実施料率は10%を下らない。 (ウ)受けるべき金銭の額に相当する額 以下の計算式のとおり、1億0600万円を下らない。 10億6000万(2億5000万円+8億1000万円)×0.1=1億0600万円 イ 弁護士費用 一審被告らによる不正競争行為又は著作権侵害行為と相当因果関係ある弁護士費用相当損害金は1060万円を下らない。 ウ 小括 よって、一審被告会社は、不競法4条又は民法709条に基づき、一審被告Yは会社法429条1項に基づき、連帯して1億1660万円(1億0600万円+1060万円)の損害賠償義務を負うところ、一審原告は、一審被告らに対し、その一部である5000万円の支払を求める。 エ LLP法15条に基づく抗弁について 一審原告は、本件レンタル事業の運営主体である一審被告会社の行為が不正競争行為及び著作権侵害行為に該当し、一審被告会社が損害賠償債務を負うと主張しているのであり、組合員である一審被告会社が組合の債務として損害賠償義務を負うと主張していない。 (一審被告らの主張) ア 不競法5条3項1号、4号又は著作権法114条3項に基づく損害額等 一審被告会社に過失があることは争う。また、本件での損害額算定についての主張は以下のとおりである。 (ア)売上額 a 損害額算定の根拠となる売上額は、一審被告会社が本件レンタル事業を立ち上げた後、関係団体にこれを移管するまでの期間(平成27年6月4日から平成28年6月23日)の売上額に限られる。本件レンタル事業等に供される公道カートのメンテナンスサービス(本件販売整備事業)から得た売上額は算定の基礎とされるべきではない。 したがって、損害額算定の基礎となる金額は●●●●●●●●●円となる。 一審原告による本件レンタル事業の売上額に関する主張は、対象店舗、1日の平均来客数、一人当たりの平均ツアー料金及び対象期間といった各要素について、恣意的に数字等を選択した根拠のないもので合理性がない。 前記のとおり、STREET KART店舗、富士河口湖店及び六本木店は、一審原告が問題視する形態での本件レンタル事業を行っておらず、これらの店舗の売上げは、売上額の基礎から除外されるべきである。 b 原判決は、一審被告会社が、平成28年6月24日以降も少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を行い、その過程で不正競争行為を行ったと認定しているが、前記のとおり、遅くとも、一審被告会社が平成29年11月6日に沖縄組合を脱退した日以降は、上記のような認定は行えない。 また、原判決は、本件レンタル事業に係るサービスを提供する店舗につき、平成29年2月23日までに、9店舗に拡大したと認定しているが、「MariCAR」の屋号を用いて本件レンタル事業を行っている秋葉原店は、秋葉原第1号店1店舗のみであり(乙93の2)、9店舗に拡大したとの認定は誤っている。 そして、原判決の1日当たりの売上額の推計について、①売上額の基礎が事業開始時から計算されていない点、②平成28年7月1日以降の1日当たりの売上額は、その直近6か月の1日当たりの売上額の2倍は下らないとしている点で、合理性がない。 (イ)実施料率 a 本件レンタル事業は、公道カートやサービス自体の魅力、営業努力により、それ自体が高い顧客吸引力を有しており、原告文字表示マリカー等の売上げに対する寄与は低い。 また、本件販売整備事業については、その取引相手は関係団体であって、同団体は一審被告会社と一審原告の間に何らの取引関係も存在しないことを理解しているから、一審原告の顧客吸引力が上記事業の売上げに寄与することはあり得ない。 したがって、原告文字表示マリカー等に係る実施料率はゼロか大幅に減額されるべきである。 b 現在、MariCAR店舗に用意されているコスチュームのうち、本件各コスチュームの割合は3.5%にすぎず(乙92の1~3)、公道カートツアーの状況を見た者が、一審原告と、関係団体が提供している公道カートツアーサービスに関連性があると誤信することはないから、本件各コスチュームの売上げに対する寄与率はゼロである。 また、関連団体のウェブサイト上においても、現在、打ち消し表示が表示されるほか、本件各コスチュームに係る写真や動画は一切存在しないから(乙93の1~5)、同ウェブサイトからも、上記関連性の存在を誤信することはない。 少なくとも現時点において、被告標章第2の売上げへの寄与率は極めて低く、原判決が認定した「8%」という数字は不当に大きな数字であるから、より低い数字かゼロにされるべきである。 c 原判決は、被告標章第1及び本件各ドメインの使用に関して不正競争行為が認められるのは日本語を解する者を対象にする場合に限られると認定しながら、その点を実施料率に反映しておらず、不合理である。 イ 弁護士費用 争う。 ウ LLP法15条に基づく抗弁 一審被告会社は、関係団体である各組合の業務に関し、一審原告に対して損害賠償責任を負うとしても、その範囲は、一審被告会社が各組合の組合員であった期間に生じた債務に限られ、かつ最大でも組合に出資した金額(品川組合、秋葉原組合及び沖縄組合に対し●●●●円)が限度となる。 (15)争点15(反訴請求の可否) (一審被告会社の主張) ア(ア)別紙コスチューム目録記載のコスチュームからは、反訴被告表現物目録記載の各キャラクターの表現上の本質的特徴を感得することはできない。したがって、一審原告が主張する複製権、翻案権、自動公衆送信権、送信可能化権の侵害の主張には理由がなく、一審原告は、一審被告会社が上記各コスチュームを着用した人物を撮影した写真や映像をインターネット上のウェブサイトにアップロードする行為について、著作権法112条1項に基づく差止請求権を有していない。 (イ)一審被告会社は、関係団体が安全のための対策を適切に講じていることの紹介として、一審被告会社のウェブサイトに以下にあるような写真を掲載することを検討しているが、仮に一審原告が主張するとおり、別紙コスチューム目録記載のマリオのコスチュームをウェブサイトにアップロードする行為が、原告表現物マリオの著作権を侵害するものであるとすると、一審被告会社が、自社のウェブサイトで以下にあるような写真を掲載することは違法ということになってしまうから、別紙コスチューム目録記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を自社サイトに掲載することにつき、一審原告が著作権法112条1項に基づく差止請求権を有さない旨を確認することにより保護される権利利益がある。 イ 本件反訴は、本訴の目的である請求と関連する請求であるし、防御の方法と関連する請求ともいえる(民訴法146条1項)。 また、一審原告と一審被告会社は、原審において本件各コスチュームが、原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否かについて十二分に主張を戦わせてきたから、一審原告の審級の利益を害することはなく、一審原告の同意は不要である。 (一審原告の主張) ア 一審原告は、一審被告会社による控訴審での反訴提起に同意しない。 イ ①一審被告会社が、審理を求める範囲に含まれる写真及び映像の数は、極めて多数かつ多種多様に及び、本件反訴が、原審で審理されていない写真及び映像を含む、より広範な審理対象を設定するものであること、②本件反訴が、手続の遅延を目的としたものであること、③本件反訴について、確認の利益がないことからすると、同意は必要であるし、本件反訴の提起は、著しく訴訟手続を遅滞させるものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(STREET KART店舗において、本件レンタル事業が実施され、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか)について (1)前提事実 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。 ア STREET KART店舗の全てに共通する事情について (ア)STREET KART店舗のウェブサイト上には、平成30年11月27日当時、「各店舗ではそれぞれがオリジナルのコースを提供しています。違うコースも試してみたくなったら、他の店舗も試してみてはいかがでしょう。」との日本語の記載があり、ウェブサイト上の「他店舗」のボタンをクリックすると、MariCAR店舗である品川第1号店、秋葉原第1号店、渋谷店、大阪店及び沖縄店並びにSTREET KART店舗である品川第2号店、秋葉原第2号店、東京ベイBBQ店、横浜店、京都店及び浅草店が、特に区別されることなく、「他店舗」として併せて紹介されるようになっていた(甲143の6~11、甲155、弁論の全趣旨)。 (イ)MariCAR店舗とSTREET KART店舗のウェブサイトは、外国語の表記しかないか(MariCAR店舗のウェブサイト)、日本語の表記もあるか(STREET KART店舗のウェブサイト)という違いはあるものの、基本的なウェブサイトのデザインや記載内容は概ね同一であって、酷似しており、MariCAR店舗のウェブサイトとSTREET KART店舗のウェブサイトの双方で、レンタルコスプレのサービスを提供する旨の記載がされている(甲143の1~11、乙93の1~5、乙113の1~6)。 (ウ)浅草店以外のSTREET KART店舗で主に使用されているロゴは、本件ロゴのうち、「MARICAR」の部分を「STREET KART」に変更したものである(甲143の6~8・10・11、乙113の1~3・5・6。以下「STREET KART店舗ロゴ」という。)。また、本件ロゴ及びSTREET KART店舗ロゴで共通に用いられているカートの図形については、一審被告会社が商標権者となっている(甲214)。 イ 秋葉原第2号店について (ア)平成30年10月17日に実施された現地調査の報告書(甲157)によると、同日、秋葉原第2号店の店内では、本件ロゴを付したタオル等が販売されていたほか、客に配布するステッカーにも本件ロゴが付されており、マリオ、ルイージ、ヨッシー及びクッパのコスチュームのレンタルも行われていた。 また、秋葉原第2号店の近くの駐車場には、前面やウィング部分に白や黄色の文字で「MariCar.com」と記載され、前面に本件ロゴが付されたカートが駐車されていた。 (イ)TripAdvisorには、平成30年11月20日に、本件ロゴが付されたTシャツと帽子を身に着けた利用者の写真が投稿された(甲216の1、弁論の全趣旨)。 (ウ)平成30年11月20日と同月23日に秋葉原第2号店の利用者によって投稿された写真では、マリオやルイージのコスチュームを着用した人物が撮影されている(甲216の1・2)。 ウ 品川第2号店について (ア)品川第2号店を利用した利用者は、平成30年11月21日にルイージ、ヨッシーのコスチュームを着用して公道カートを運転する様子等が撮影された写真をTripAdvisorに投稿した(甲218の1)。 (イ)品川第2号店の利用者が、平成30年10月28日にTripAdvisorに投稿した写真においては、マリオのコスチュームを着用した人物が、本件ロゴの付された公道カートに乗っている姿が撮影されている(甲218の2)。 (ウ)平成30年9月24日にTripAdvisor上に投稿された品川第2号店に関する質問に関し、MariCARJAPANと名乗る品川第2号店の代表者が、自分達の沖縄店で、質問者の望むサービスが受けられることを回答した(甲210の8、甲218の3、弁論の全趣旨)。 エ 東京ベイBBQ店について (ア)平成30年11月11日及び同年12月28日に、東京ベイBBQ店の利用者が、マリオ、ルイージ、ヨッシーのコスチュームを着用して公道カートを運転する様子を撮影した写真をTripAdvisorに投稿した(甲219の1・2)。 (イ)東京ベイBBQ店の利用者が平成30年4月19日に投稿した写真中には、側面に黄色の文字で「maricar.com」と記載し、座席の後部にも黄色の文字で同様の記載をした公道カートが確認できる(甲219の3)。 (ウ)東京ベイBBQ店の利用者が平成30年2月16日に投稿した写真中には、前面に黄色及び白色の文字で「MariCar.com」と記載された公道カートやマリオ、ルイージ、ヨッシーのコスチュームを着用して運転している利用者が確認できる(甲219の4)。 オ 京都店について (ア)京都店が宣伝のためにフェイスブックに投稿した動画中では、側面に黄色の文字で「maricar.com」と記載され、かつ座席の後部にも黒字で「maricar」と記載され、さらに、前面や側面に本件ロゴが記載された公道カートや、マリオとルイージのコスチュームを着用した人物が公道カートを運転している様子が見られた(甲200の1・2)。 (イ)Attractive Japanというウェブサイトの京都店の予約ページにはルイージ、ヨッシーのコスチュームを着用した者らを撮影した写真が用いられている(甲220)。 (ウ)京都店が使用している公道カートの中には、リアウィングに白色の文字で「maricar.com」と記載され、本件ロゴが前面に付されているものがあった(甲222)。 (エ)TripAdvisorには、大阪店の利用者が、京都店での50%割引を提示された旨の記載があった(甲221、弁論の全趣旨)。 カ 横浜店について (ア)平成30年8月に横浜店を利用した者が、「マリオ」のコスチュームを着用して公道カートを運転している様子を撮影した写真を同月15日にTripAdvisorに投稿した(甲223の1)。 (イ)平成30年9月24日にTripAdvisorに投稿された横浜店に関する質問に関し、MariCARJAPANと名乗る横浜店の代表者が、自分達の大阪店又は沖縄店で、質問者の望むサービスが受けられることを回答していた(甲210の12、甲223の2、弁論の全趣旨)。 キ 浅草店について (ア)浅草店が平成29年8月27日に投稿したツイートでは、レンタルコスチュームとしてマリオ、ルイージ及びヨッシーのコスチュームが他のコスチュームと同程度に多数用意されている写真(甲158の3)が掲載され、浅草店が平成30年2月18日と同年9月27日に投稿したツイートには、マリオ、ルイージ、ヨッシー、クッパのコスチュームを着用した人物らの写真(甲158の2・4)が掲載され、浅草店が同年2月3日に投稿したツイートには、利用者が乗っている公道カートの側面に黄色の文字で「MariCar.com」との記載がされていた(甲158の1、弁論の全趣旨)。 (イ)浅草店の利用者が平成30年3月7日にYouTubeに投稿した動画では、「Mario Kart」という文字を表示した上で、マリオのコスチュームを着用した人物が、公道カートを運転する様子が撮影されていた(甲201の1・2)。 (ウ)浅草店を紹介するTripAdvisorの写真には、マリオのコスチュームを着用して公道カートを運転する人物の写真が掲載されていた(甲210の11)。 (エ)TripAdvisorには、平成31年1月19日に、浅草店の利用を考えている者からマリカーと侍カートは別会社かという質問がされたところ、MariCARJAPANと名乗る浅草店の代表者が、侍カートは自分たちの浅草支店の名前である旨回答した(甲210の11、甲217の1、弁論の全趣旨)。 また、平成30年9月24日にTripAdvisorに投稿された質問に対し、上記MariCARJAPANと名乗る浅草店の代表者が、自分たちの大阪店及び沖縄店で質問者の望むサービスが受けられることを回答した(甲217の2)。 (2)判断 ア 前記(1)ア(ア)~(ウ)、イ(イ)、ウ(ウ)、エ(イ)(ウ)、オ(ア)(ウ)(エ)、カ(イ)、キ(ア)(エ)で認定した各事実に照らすと、STREET KART店舗とMariCAR店舗については、一体となって一つのグループを形成するかのような表示が対外的にされているといえ、現に一審被告らもSTREET KART店舗とMariCAR店舗の一部(品川第1号店、品川第2号店及び渋谷店、秋葉原第1号店及び秋葉原第2号店)が同一の主体によって運営されていることを認めていることも踏まえると、STREET KART店舗は、MariCAR店舗と同様の態様で本件レンタル事業を営んでいるものと推認することができる。 これに加え、前記第2の2(4)イで認定したように、MariCAR店舗では本件貸与行為が実施されている上、前記(1)イ(ア)、ウ(ア)(イ)、エ(ア)(ウ)、オ(ア)、カ(ア)、キ(ア)~(ウ)で認定したように、STREET KART店舗の全店で本件各コスチュームの貸与が行われていたことを裏付ける事実が存在していることを考え併せると、STREET KART店舗においても、MariCAR店舗と同様に本件貸与行為が行われているものと認められる。 イ 前記(1)イ(ア)の認定事実からすると、本件ロゴが秋葉原第2号店で販売されているタオル等や客に配布したりするステッカーに付されていたと認められる。また、前記(1)イ(ア)、エ(イ)(ウ)、オ(ア)(ウ)、キ(ア)で認定した事実からすると、①秋葉原第2号店で使用されている公道カートの中には本件ロゴや「MariCar.com」が車体に付されているものが、②浅草店で使用されている公道カートの中には「MariCar.com」が車体に付されているものが、③東京ベイBBQ店で使用されている公道カートの中には「maricar.com」や「MariCar.com」が車体に付されているものが、④京都店で使用されている公道カートの中には本件ロゴや「maricar.com」が付されているものがあったと認められる。 これらの事実に照らすと、被告標章第1の2~4のいずれかが、STREET KART店舗のうち、品川第2号店と横浜店を除く各店舗において使用されていたものと認められ、前記ア認定のSTREET KART店舗とMariCAR店舗の一体性に照らすと、品川第2号店及び横浜店においても使用されていたものと推認することができる。 ウ 一審被告らは、①京都店では事業開始当初より本件貸与行為はされていない(乙118)、②STREET KART店舗における本件各コスチュームの使用割合は主張立証されていない、③秋葉原第2号店の近くの駐車場にあった公道カートは秋葉原第2号店で使用されているものか不明である、④浅草店における公道カートの「MariCar.com」の表示は小さいもので、商品等表示としての使用に当たらない、⑤グッズの販売等は商品等表示としての使用に当たらないと主張する。 しかし、上記①について、乙118の陳述書は、前記(1)で認定したとおり、京都店自身がマリオやルイージのコスチュームを着用した動画を投稿していたことや前記(1)オ(イ)のとおり、京都店の予約ページの写真には、マリオ、ルイージ、ロッシーのコスチュームを着用した者らを撮影したものが用いられていることに照らすと、信用できるものではない。 上記②について、後記6(2)エのとおりである。 上記③について、証拠(甲157)によると、公道カートが保管されていた駐車場は秋葉原第2号店から近い場所にあり、かつ同駐車場内にあった公道カートにはSTREET KART店舗である秋葉原第2号店を想起させる「Street Kart Tour」という文字が付されていた。そして、一審被告らが、秋葉原第2号店が使用している駐車場が甲157とは別の場所であることを積極的に主張立証していないことも踏まえると、甲157の駐車場で保管されていた公道カートは秋葉原第2号店で使用されていたものであると推認することができる。 上記④について、証拠(甲158の1)によると、浅草店における公道カートの「MariCar.com」の表示は、停止している状態で、利用者や周囲にいる者が明瞭に認識できる程度の大きさのものと認められるから、それをもって商品等表示に当たらないということはできない。 上記⑤について、秋葉原第2号店におけるタオル等の販売やステッカーの配布は、本件レンタル事業の一環としてされていると認められるから、これらにおける使用は、同事業の商品等表示としての使用に当たるものと認められる。 したがって、一審被告らの上記①~⑤の主張はいずれも採用することができない。 2 争点2(富士河口湖店及び六本木店において、現在、被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか)について (1)富士河口湖店について ア 証拠(甲212の1)によると、富士河口湖店の利用者がヨッシーやクッパのコスチュームを着用しているところを平成30年8月31日に撮影した写真がツイッターに投稿されていたことが認められることからすると、富士河口湖店においては、前記第2の2ウで認定した平成29年11月以降においても本件貸与行為が継続されているものと認められる。 イ 証拠(甲102の2、甲212の1・2)によると、平成29年11月及び平成30年8月31日当時、富士河口湖店が使用していた公道カートの中には、前面や側面に白字や黒字で「fuji-maricar.jp」、「富士MARICAR」と記載されたものがあったこと、富士河口湖店が開設したフェイスブックのページに「富士MARICAR」と表示されていたことがそれぞれ認められる。そして、前記第2の2(4)エのとおり、「fuji-maricar.jp」から被告標章第1の4である「maricar」部分を要部として抽出することができ、また「富士MARICAR」は、漢字とアルファベットで表記されたもので、「富士」と「MARICAR」の間に観念上の関連性がないことからすると、被告標章第1の3である「MARICAR」部分を要部として抽出することができる。したがって、富士河口湖店は、被告標章第1の3、4を使用しているものと認められる。 ウ 乙94、116は、上記ア、イの認定を左右するものではない。 (2)六本木店について ア 一審被告らは、原審で提出した平成29年10月6日付け第3準備書面で、六本木店が「MariCAR店舗」と同様に「MariCAR」という屋号を用いて公道カートのレンタル事業を行っていることを認めており、前記第2の2(4)イで認定したMariCAR店舗と同様の形態での本件レンタル事業が、六本木店でも実施されていたものと推認することができる。そして、証拠(甲213の1~3、乙117)によると、六本木店においては、その後も本件貸与行為がされていることが認められる。 イ また、六本木店のウェブサイト(乙117)には、以下に示すとおり、その冒頭部分にデザイン化されて大きく記載されたRの横に「maricar」、「Garage」が2段に分けて記載された標章が表示されており、その構成からして、同標章から被告標章第1の4である「maricar」を要部として抽出することができるから、六本木店は被告標章第1の4を使用しているといえる。 ウ 一審被告らは、六本木店は閉店中であると主張している。 乙92の1には、公証人が平成30年11月15日に赴いたところ六本木店が営業していなかった旨の記載があるが、証拠(甲165)及び弁論の全趣旨によると、六本木店は平成31年1月1日から同月3日までの間、営業していたことが認められるから、六本木店が閉店したとは認められない。 3 争点3(一審被告会社が、平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して、本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して、被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか)について (1)前提事実 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると、前記第2の2の事実に加えて、以下の事実を認めることができる。 ア 一審被告会社の代表者である一審被告Yは、平成28年1月頃に品川第1号店のオーナーという立場でNHKのTV番組の取材を受け、マリオのコスチュームを着用して公道カートを運転し、本件レンタル事業の宣伝を行った(甲42の13、甲43の13、弁論の全趣旨)。 イ 一審被告会社は、平成28年2月1日、公道カートをレンタルする際に適用される日本語で書かれた「マリカー利用規約」(本件利用規約、甲5)を作成した。本件利用規約には、公道カートのレンタルを受ける利用者は、運営会社と定義される一審被告会社から車両及び附属品等を借り受ける旨の記載があり、本件利用規約は、平成28年11月15日当時、品川第1号店の入口の窓ガラスに掲示されていた(甲4)。 ウ 平成28年6月24日、品川組合に係る組合契約の効力が生じ、同組合の組合員は、一審被告会社及びX-Kart株式会社の2社であった(甲62の1・5)。 一審被告会社は、平成29年10月23日に品川組合を脱退し、その後、品川組合は、同年12月6日、組合の名称を東京観光有限責任事業組合に変更し、同月20日に解散し、同日、品川観光有限責任事業組合の組合契約の効力が生じた(甲121の1、甲122)。 エ 一審被告会社は、平成28年9月28日、本件ロゴに関する商標登録の出願をした(乙29)。 オ 株式会社ディー・エヌ・エーが開設するFind Travelという観光情報に関するウェブサイトは、平成28年9月28日、「マリオカートをレンタルして公道で走れるって知ってた?実は気軽にできる面白体験をご紹介!」と題する記事を掲載し、その中で、品川第1号店を「リアルマリオカートをレンタルできるお店の株式会社マリカー(X-Kart正規店)品川店」と紹介した(甲39、弁論の全趣旨)。 カ 一審被告会社は、平成28年10月4日頃、本件レンタル事業を行う各店舗における店長等を募集する求人広告をした。同広告において、一審被告会社は、同社の事業内容を「普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタル」等と、また「日本最大級の公道カートのレンタル&ツアーサービスとして、国内外で大きな注目を集める株式会社マリカー。東京での増店と、大阪・山梨・沖縄での新店オープンが決定しているため、『店長』『メンテナンススタッフ』を募集します。」、「当社はこれまでの1年でビジネスの運用を固め、大きな実績を残しましたので、ここから爆発的に事業規模を拡大させます。」とし、勤務地として「東京・沖縄などのマリカー各店 グローバルな職場です 入社後は東京の店舗にて研修予定」と記載した(甲59の1、弁論の全趣旨)。 キ 品川第1号店においては、平成28年11月15日当時、前記イのとおり一審被告会社の作成した本件利用規約が掲示されていたほか、一審被告会社の会社名(株式会社マリカー)が記載された本件名刺が配布され、同名刺には「車両レンタル・車両販売・カスタム整備・広告企画」と記載されていた(甲4、57)。 また、品川第1号店においては、平成28年11月15日当時、本件レンタル事業に係るレンタル料金の支払につき、一審被告会社名で領収証が発行されていた(甲4、57、58)。 ク 一審被告会社は、平成29年2月23日当時、被告会社サイトにおいて、自社を「公道カート総合サービスを提供する株式会社マリカー」、「日本最大級の公道カート!レンタル/販売/整備・カスタム/広告宣伝」と紹介するとともに、同社の事業として「レンタル事業・広告宣伝事業」と「販売事業・整備陸送事業」の二つを挙げ、「レンタル事業」については「日本全国へレンタル加盟店を展開」、「公道カートを製造販売できる強みを生かし、レンタル事業の整備も行っております。」と、「販売事業」については「レンタル事業で公道カートの認知度を上げ、最低価格保証で公道カートを販売。」と記載した(甲6の3)。 ケ 平成29年6月13日、秋葉原組合に係る組合契約の効力が生じ、当初の秋葉原組合の組合員は、一審被告会社及びX-Kart株式会社の2社であったところ、一審被告会社は、同年10月24日に秋葉原組合を脱退した(甲121の3、乙48の1)。 コ 平成29年6月19日、新木場組合に係る組合契約の効力が生じ、当初の新木場組合の組合員は、一審被告会社及びX-Kart株式会社の2社であったところ、一審被告会社は、同年11月1日に新木場組合を脱退した(乙112)。 サ 平成29年6月26日、沖縄組合に係る組合契約の効力が生じ、当初の沖縄組合の組合員は、一審被告会社及びX-Kart株式会社の2社であったところ、一審被告会社は、同年11月6日に沖縄組合を脱退した(甲121の4、乙48の4)。 シ MariCAR店舗及び富士河口湖店について、平成29年2月23日当時、品川第1号店サイト1及び河口湖店サイトのデザイン、本件レンタル事業に係る説明等の記載は概ね同一であった(甲6の1・2)。平成29年10月2日当時についても、品川第1号店サイト2、秋葉原第1号店サイト2、渋谷店サイト、大阪店サイト及び沖縄店サイトは、いずれも本件ドメイン名4を使用して開設されたもので、その記載内容も概ね同一であった(乙41の1~9)。原判決後も、本件ドメイン名4を使用して開設されたMariCAR店舗の各ウェブサイトは、そのデザインや記載内容が概ね同一のものとなっている(甲143の1~5、乙93の1~5)。 ス 一審被告らが六本木店の運営主体であるとするエコカートは、平成30年12月5日に、「東京都内だけでも4店舗、大阪、沖縄、富士にも展開している日本最大級の公道レンタルゴーカートのグループ」であるとして求人募集をしていた(甲198)。 セ 富士河口湖店は、平成31年2月当時、自己のフェイスブック上に「富士MARICAR」、「富士マリカー」と記載し、「StreetKartTourthruTokyo、mt.fuji.Osaka、Okinawa.」、「#maricar」、「#マリカー」などと記載された過去の投稿を表示していた(甲212の2・3)。ソ渋谷円山町会の公式ウェブサイトには、平成30年12月26日の時点で、一審被告会社が渋谷店の営業主体であると表示されていた(甲197)。 (2)以上を前提に、設立時から現在までの一審被告会社による本件レンタル事業の実施やそれに伴う被告標章第1及び被告標章第2の使用について検討する。 ア 一審被告会社の設立時から平成28年6月23日までについて 前記第2の2(3)のとおり、一審被告会社は、平成27年6月4日から平成28年6月23日までの間、「MariCAR」という屋号を用いて本件レンタル事業を自ら営んでいた。 上記に加えて、前記(1)アのとおり、平成28年1月頃に、一審被告Yが、品川第1号店のオーナーという立場で自らマリオのコスチュームを着てNHKのTV番組の取材を受けていること、関連団体の設立時期が前記第2の2(3)のとおりであること及び弁論の全趣旨からすると、一審被告会社の設立時から同年6月23日まで、一審被告会社は、その当時存した本件各店舗を運営し、それに関して被告標章第1の使用行為、本件動画1~14の制作やアップロード、本件貸与行為などの被告標章第2の使用行為等をしていたと認められる。 イ 平成28年6月24日以降について (ア)前記第2の2(4)アのとおり、一審被告会社は、平成28年6月24日以降も引き続き「株式会社マリカー」との商号を使用して被告標章第1の1を使用し、本件ドメイン名2を使用して開設した被告会社サイトにおいて、被告標章第1の1及び2を表示しており、本件ロゴを被告会社サイト上に掲載することによって被告標章第1の3を使用していた。 (イ)次に、平成28年6月24日以降、一審被告会社が自らは又は関係団体と共同して本件各店舗を通じて本件レンタル事業を行い、それによって一審原告が不正競争行為、著作権侵害行為に該当すると主張する行為を行ったのかについて更に検討する。 a 前記第2の2(4)イ、ウ、前記第3の1、2で認定したように、本件各店舗のいずれにおいても、一審被告会社が平成28年6月23日まで自ら行っていたのと同様の本件貸与行為等からなる本件レンタル事業が実施されてきている。 b MariCAR店舗においては、一審被告会社が用いていた「MariCAR」の屋号が現在もそのまま用いられている上、その他のSTREET KART店舗、富士河口湖店及び六本木店においても、前記1、2認定のとおり、代表者が「MariCARJAPAN」を名乗ったり、「MariCar」、「MARICAR」、「maricar」を含む表示を使用しているのであるから、一審被告会社が用いていた屋号そのもの又はそれと類似する表示は、本件各店舗において、統一的に使用されているということができる。 c 前記(1)シで認定したとおり、MariCAR店舗のウェブサイトは、いずれも本件ドメイン名4を用いて概ね同内容のものが開設されている上、前記1で認定したとおり、MariCAR店舗とSTREET KART店舗のウェブサイトのデザインやその記載内容がいずれも酷似したものであるなど、MariCAR店舗とSTREET KART店舗が併せて一つのグループを形成しているかのような表示が対外的にされており、実際に一部のMariCAR店舗とSTREET KART店舗(品川第1号店及び品川第2号店並びに渋谷店、秋葉原第1号店及び秋葉原第2号店)は、一審被告らの主張によっても同一の主体によって運営されている。 また、富士河口湖店や六本木店についても、前記(1)ス、セ認定のとおり、MariCAR店舗と同一のグループに属するかのような表示を自らしていた上、前記(1)シ認定のとおり、MariCAR店舗と富士河口湖店のウェブサイトの内容は概ね同一であった。 d 前記(1)で認定したとおり、平成28年6月24日以降も、①一審被告会社が、被告会社サイトにおいて、自社を「公道カート総合サービスを提供する株式会社マリカー」とし、一審被告会社の事業の一つとして日本全国への加盟店の展開によるレンタル事業を掲げ、レンタル事業について「公道カートを製造販売できる強みを生かし」て運営することができると記載していたこと(前記(1)ク)、②一審被告会社が、求人広告において、爆発的に事業規模を拡大する予定であり、自らが雇用主であるかのように記載して、大阪店、富士河口湖店、沖縄店等の新規に立ち上げる店舗において同事業に従事する店長等の従業員を募集していたこと(前記(1)カ)、③一審被告会社が、自社が組合員となって本件レンタル事業を運営する四つの有限責任事業組合を立ち上げたこと(前記(1)ウ、ケ~サ)、④品川第1号店において、一審被告会社を運営会社とする本件利用規約が掲示され、一審被告会社名の入った本件名刺や領収書が存在したこと(前記(1)キ)、⑤品川第1号店や渋谷店の運営主体が、一審被告会社であると認識されていたこと(前記(1)オ、ソ)といった事情が存在する上、証拠(甲214、乙29)及び弁論の全趣旨によると、一審被告会社は、本件ロゴ(出願日:平成28年9月28日)及び本件ロゴとSTREET KART店舗ロゴに共通する図形(出願日:平成29年3月4日)について、商標登録をし、同商標がMariCAR店舗及びSTREET KART店舗において使用されてきたと認められるが、これらは同日以降も、一審被告会社が、本件レンタル事業の運営に積極的に関与し、本件各店舗の運営に深く関与していることを強く推認させるものといえる。 e 以上のa~dを考え併せると、一審被告会社は、平成28年6月24日以降も、自ら又は少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施しており、自ら又は関係団体と共同して、後記認定の不正競争行為を行っていると認められる。 (3)一審被告らは、①一審被告会社の平成29年1月1日以降の売上げに本件レンタル事業に係る売上げが含まれていないのに対し、品川組合の同時期の売上げのほとんどが本件レンタル事業によるものであること(乙2、6)、品川組合が、本件レンタル事業に供する公道カートを所有し、同業務を行わせるアルバイトを雇用したこと(乙4の1~3、乙5の1~3)などを挙げ、一審被告会社は、平成28年6月24日以降、本件レンタル事業を行っていない、又は②少なくとも一審被告会社が全ての組合から脱退し、関係団体との関係性が一切なくなった平成29年11月6日以降、一審被告会社は、本件レンタル事業を行っていないと主張し、それに沿う一審被告Yやマリカー大阪の代表者の陳述書(乙106、107)を提出する。 しかし、一審被告らが主張する上記売上げやアルバイト雇用等の事実は、一審被告会社が関係団体と共同して本件レンタル事業を営んでいる場合にもあり得るものであって、前記(2)の認定と矛盾するとはいえない。 また、一審被告会社が全ての組合から脱退した平成29年11月6日以降も、前記(2)の認定の基礎となった事情に有意な変更があったとは認められず、単に全組合から形式的に脱退したことをもって、前記(2)の認定が覆るものではない。 上記各陳述書も、一審被告会社自身が、自らが雇用主であるかのような記載をして、大阪に新たな店舗を開設するための社員募集をしていたことなどの前記(2)で検討した事情に照らすと信用できず、前記(2)の認定を左右するものではない。 したがって、一審被告らの上記主張には理由がない。 4 争点4(被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか)について (1)本件需要者について まず、本件需要者について検討する。 ア 原判決の口頭弁論終結前に一審被告会社が単独又は関係団体と共同でしていた本件レンタル事業を巡る状況について (ア)MariCAR店舗及び富士河口湖店について、日本語、英語、中国語、フランス語、韓国語で記載されたウェブサイトがあり、いずれのウェブサイトにおいても、本件レンタル事業の内容や料金が説明され、公道カートの利用に当たって、まず空き状況を確認すること等の予約の流れや、具体的な利用方法が説明されていた。また、店舗(いずれも日本国内)の地図が表示され、最寄り駅から店舗への道順なども表示された。日本語のサイトには、「公道カートで忘れられない体験を」、「マリカーでは、普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタルや観光ツアーを提供しています。」、「マリカーでは、訪日旅行客向けに国際免許で運転できる一人乗りの公道カートの観光ツアーを提供しています。(中略)ここでしか体験できない最高の思い出作りに、公道カート『マリカー』を楽しんじゃってください!」などという利用者を勧誘する文章が記載されていた(甲6の1~4、乙41の1~9)。 (イ)品川第1号店で配布されていた本件チラシは、日本語と英語が両面印刷されたものであり、日本語の記載部分には、料金や店舗の所在地等のほか、「マリカーは、普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタカー&ツアーサービスです。」などと記載されていた(甲3)。 (ウ)本件レンタル事業を利用する利用者に記入を求めていたアンケート用紙は、日本語と英語が両面印刷されたものであり、どの地域から来たのか、マリカーに乗るのが何回目であるか、マリカーをどのように知ったかなどの項目があった(甲4、乙14の1・2、弁論の全趣旨)。 上記アンケート調査によると、利用者には外国人旅行客が多く含まれており、かつ利用者の大部分は20歳から49歳であり、その多くが比較的若年の成年層であったが、利用者の中には日本人も少なからずいた(乙14の1)。 (エ)Find Travelでは、日本語で、「東京観光」の一体験として被告会社による本件レンタル事業の内容、品川第1号店の所在地、営業時間、地図等が紹介され、「このカート、専用の技術がある人しか乗れないんじゃないの、なんてがっかりしている人に朗報です。普通自動車第一種免許があれば、誰でも乗ることができちゃうんです!」など掲載されていた(甲39)。 イ 前記アの認定事実からすると、本件需要者は、日本において観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人、とりわけ、比較的若年の成年層であり、原判決の口頭弁論終結前の時点において、一審被告らのいうところの訪日外国人(外国人旅行者、在日米軍関係者、在日大使館員など)に限られることはなく、日本人も需要者であったと認められる。 ウ 一審被告らは、原判決後、本件需要者が、全て日本語を解しない訪日外国人になったと主張する。 しかし、①証拠(甲140~142)及び弁論の全趣旨によると、一審被告らのいう訪日外国人のうち、日本に在住している者の中には、日本語を一定程度解する者が相当程度いると認められるし、日本に居住していない者についても日本に何かしらの興味関心を抱いて日本を訪れている者であるから、その中には日本語を解する者が当然に含まれていると考えられる。また、②前記1(1)ア(イ)のとおり、STREE TKART店舗について、日本語の表記があるウェブサイトが存在している上、品川第1号店、渋谷店、秋葉原第1号店、大阪店及び富士河口湖店についても日本語で取扱いプランが紹介されているウェブサイトが存在している(甲173の1~4、乙116)。さらに、③一審原告による調査結果(甲145、157、222)も考え併せると、原判決後も依然として日本人が本件各店舗を利用することが可能な状況は継続していると認められる。 したがって、以上の事実からすると、一審被告らの上記主張は採用できず、原判決後もなお、本件需要者の中には、日本語を全く解さない訪日外国人以外の者が含まれているものと認められる。 エ また、一審被告らは、本件需要者とゲームの需要者が異なるとも主張する。 しかし、①平成29年3月の一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)発行の「2017CESA一般生活者調査報告書」(甲76)によると、平成26年から平成28年にかけて、日本国内における家庭用ゲームのアクティブユーザー(対象の家庭用ゲーム機をプレイすることがある人)の数は、3000万人程度で推移しており、男性の約8割程度が20歳以上、女性の約8割5分程度が20歳以上となっていて、20歳から49歳までの者が高い割合を占めていること、②エンターテインメントソフトウェア協会の「2015 ESSENTIAL FACTS ABOUT THE CONMPUTER AND VIDEO GAME INDUSTRY」(甲77)でも、平成26年における米国のゲームユーザーは1億5500万人で、平均年齢が35歳、18歳以上が74%となっていることからすると、今日では、ゲームに関心を有する需要者は、一審被告らが主張するようなインドアの活動を好む一部の者というような限られたものではなく、相当広範囲に及んでおり、かつ比較的若年の成年層がその多数を占めているものと認められる。 そして、本件需要者が、前記イで認定したように観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人で、しかも実際の利用者の主たる年齢層が、ゲームの主たる需要者の年齢層とほぼ一致していること、後に6(2)エで判示するように平成29年2月までの間においてマリオ等のコスチュームをレンタルする本件貸与行為を前面に出して本件レンタル事業の宣伝が行われ、かつ現在でも本件貸与行為が本件レンタル事業において重要な位置を占めていると認められることからすると、本件需要者とゲームに関心を有する需要者が相当に重複していることは明らかであり、ゲームに関心を有する需要者の方が、本件需要者より母集団としては、はるかに大きいと考えられることも踏まえると、ゲームに関心を有する需要者と本件需要者は同視できるものといえる。 オ 以上の検討をまとめると、一審被告らの主張するとおり、確かに本件需要者には訪日外国人が多く含まれていると認められるが、日本人も本件需要者に含まれており、かつ日本語を解する外国人も一定程度含まれていると認められる。また、本件需要者とゲームに関心を有する需要者は同一視することができる。 (2)原告文字表示及び「MARIO KART」表示の周知性・著名性について ア 前提事実 (ア)一審原告は、平成4年8月27日に「マリオカート」シリーズの第一作目として、ゲーム機種スーパーファミコン用ソフト「スーパーマリオカート」を発売し、平成8年12月14日にゲーム機種NINTENDO64用ソフト「マリオカート64」を、平成13年7月21日にゲーム機種ゲームボーイアドバンス用ソフト「マリオカートアドバンス」を、平成15年11月7日にゲーム機種ニンテンドーゲームキューブ用ソフト「マリオカートダブルダッシュ!!」を、平成17年12月8日にゲーム機種ニンテンドーDS用ソフト「マリオカートDS」を、平成20年4月10日にゲーム機種Wii用ソフト「マリオカートWii」を、平成23年12月1日にゲーム機種ニンテンドー3DS用ソフト「マリオカート7」を、平成26年5月29日にゲーム機種WiiU用ソフト「マリオカート8」を、平成29年4月28日にゲーム機種NintendoSwitch用ソフト「マリオカート8デラックス」を、それぞれ発売した(甲7、甲8の1~9)。 (イ)前記各ゲームソフトの出荷本数は、平成28年12月31日時点において、概ね以下のとおりであった(甲7、9、10)。
(エ)前記各ゲームソフトのうち第1作目である「スーパーマリオカート」は、発売直後である平成4年9月から10月にかけて、ゲーム雑誌の人気ランキングにおいて1位を獲得し、第8作目である「マリオカート8」もまた、発売直後である平成26年6月及び同年7月において、人気ランキング1位を獲得し、一般雑誌のゲームに関する記事においても「誰もが一度はプレイしたことがある『マリオカート』シリーズの8作目」と紹介された(甲11の2~5、甲12の4・6、甲13の2)。 (オ)一審原告は、前記各ゲームソフトのうち第8作目である「マリオカート8」の発売前後である平成26年5月から8月にかけて、主要地上波テレビ局において少なくとも84回テレビコマーシャルを放映し、一審原告の放映した「マリオカート」シリーズに係る国内のテレビコマーシャルの放送回数合計は、平成27年7月時点で583回となった(甲14、15)。 (カ)「マリオカート」シリーズの作品が海外で発売される場合、いずれのタイトルでも「MARIOKART」の表記が用いられており、海外でテレビコマーシャルが放映されることもあった(甲8の1~5、甲95の4、弁論の全趣旨)。「スーパーマリオカート(SUPER MARIO KART)」は、平成21年2月に発行された「ギネス世界記録2009ゲームプレーヤー版」(Guinness World Records 2009GAMER'S EDITION)の家庭用ゲーム機向けソフトの部門で1位を獲得した(甲147)。平成29年7月に発行された「ギネス世界記録2018ゲームプレーヤー版」(Guinness World Records2018 GAMER’S EDITION)では、「マリオカート(MARIO KART)」は、最も長く続くカートシリーズであって、「伝説級(LEGENDS)」として紹介された(甲148)。 (キ)一審原告は、「マリオカート」シリーズについて、平成19年から平成28年にかけて、株式会社タカラトミー、株式会社バンダイナムコゲームス、株式会社サンアート、日本マクドナルド株式会社、メルセデス・ベンツ日本株式会社、日本道路公団中部支社及び名古屋高速道路公社とライセンス契約を締結し、それらは、「マリオカート」に関する玩具、文具、アーケードゲーム等のライセンス商品を販売したり、販売促進活動や国道の通行止めに関するテレビコマーシャルに「マリオカート」シリーズに登場するマリオ等のキャラクターを使ったりしていた(甲16の1の1~6、甲16の2の1~3、甲16の3、甲16の4の1・2、甲16の5、甲16の6の1~7、弁論の全趣旨)。 (ク)「マリカー」は、遅くとも、平成8年12月13日発行のゲーム雑誌「ファミマガ64」において、「マリオカート」の略称として、「今や遅しと手ぐすね引いて『マリカー』を待っているファンに贈る徹底ガイド。」、「プレイに必要な『マリカー』のすべてを解説するぞ。」という形で使用された。また、例えば、平成13年10月1日発行のゲーム雑誌「電撃GBアドバンス」において、「ジワジワと販売本数を伸ばしていった、今までの『マリカー』シリーズの売れ方を考えると・・・」という形で使用され、平成15年11月1日発行のゲーム雑誌「電撃ゲームキューブ」において、「1人乗りだったマシンが『マリカーDD』では2人乗りに大きく変更された。」という形で使用された(甲17~19)。 (ケ)「マリカー」は、平成22年から平成28年にかけて発行された3作の漫画作品中で、「マリカーの訓練を・・・」、「あの2人から家賃もらった日はマリカーハイスコアが出るんよねえ・・・」、「いや~結局マリカー対決10周・・・」、「マリカーのキラー状態じゃねーか!!」といった台詞において、何らの注釈を付することもなく「マリオカート」の略称として使用された(甲21の1・2、甲22、甲23の1・2)。 (コ)ツイッターにおいては、一審被告会社が設立される前日である平成27年6月3日、「マリカー」を「マリオカート」の略称として使用するツイートが600以上投稿された(甲24)。 また、「マリオカート8デラックス」が発売される旨の報道がされた平成29年1月13日には、同様のツイートが約3000に上った(甲25)。 (サ)平成28年6月4日に放映された一審被告Yを取材したテレビ番組において、出演したタレントが「僕らだって昔からマリオカートゲームでやってて『マリカーやった?』『マリカーやった?』って」と言っていた旨発言した(甲108の1・2)。 (シ)氏名不詳の一般人複数名は、本件訴訟提起に係る報道がされた平成29年2月23日から同月26日までの間、一審被告会社について、ツイッターに、「会社名からしてまんますぎると思うんだ」、「会社名までマリカーだしさすがになんかの許可もらってるんだと思ってた。」、「まぁ何にせよ会社名からしてもそうだし、(中略)任天堂に許可を求めなきゃダメだよね。」、「マリカーとまで社名名乗ってんのに任天堂には許可もらってないとか」、「任天堂の許可貰って営業してたんじゃないの?違うの?だったら会社名からしてアウトだよ。」、「社名にマリカーとまで書いておいて全く許可その他諸々クリアしてなかったのがある意味すごいわ」、「社名が『マリカー』、かつマリオの衣装貸して公道でカート走らせといて任天堂に許可取ってなかったんかい。。。そらアカンやろ。」等と投稿した(甲81の1・3~7・9)。 イ まず、原告文字表示マリオカートの周知性・著名性について検討するに、①「マリオカート」シリーズのソフトの国内累計出荷本数が約●●●●●本で、歴代の国内出荷本数ランキングにも同シリーズから複数の作品がランクインし、人気ゲームとして雑誌に複数回取り上げられていること、②「マリオカート」シリーズに関してテレビコマーシャルが相当数放送されていること、③「マリオカート」シリーズに関して、複数のライセンス商品が販売されたり、販売促進活動等に使われたりしている上、それらの中にはゲームとの関連性が薄い自動車販売や道路に関するものが含まれていることからすると、本件商標が出願された平成27年5月13日の時点で、日本国内において、原告文字表示マリオカートは、マリオ等のキャラクターが登場する一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズを表すものとして、「著名な商品等表示」(不競法2条1項2号)になり、これが現在でも継続していると認められる。 ウ(ア)「MARIO KART」表示についても、一審原告表示マリオカートが、前記イのとおり日本国内において著名であったところ、日本国内において原告文字表示マリオカートが「MARIO KART」や「MARIOKART」の表示と併せて表示されている事例が数多く見かけられる上(甲8の1~9、甲11の4、甲16の1の2~5、甲16の2の2、甲16の4の1・2、甲16の6の1~7)、「MARIO KART」が英語として平易なもので、「MARIO KART」表示が、「マリオカート」の英語訳であることは誰でも容易に理解できるものであることからすると、「MARIO KART」表示についても、上記平成27年5月13日には、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズを表すものとして、日本国内において、「著名な商品等表示」になり、これが現在も継続していることが認められる。 (イ)また、①「マリオカート(MARIO KART)」シリーズの国内・世界累計出荷本数が前記ア(イ)のとおり1億1150万本に上っていること、③「マリオカート(MARIO KART)」シリーズの中で最もヒットした「マリオカートWii(MARIO KART Wii)」の国内・世界累計出荷本数は、3526万本で世界歴代ミリオン出荷タイトル3位となっていること、③ギネス世界記録において、「スーパーマリオカート(SUPER MARIO KART)」が、家庭用ゲーム機向けソフトの部門で1位を獲得し、「マリオカート(MARIO KART)」シリーズが、伝説級のゲームとして紹介されていたこと、④「マリオカート(MARIO KART)」シリーズについて海外でテレビコマーシャルが放映されることもあったことからすると、「MARIO KART」表示は、上記平成27年5月13日の時点で、日本国外のゲームに関心を有する需要者、すなわち、日本国外の本件需要者(一審被告らが主張する訪日外国人を含む。以下同じ。)の間でも、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズを表すものとして、「著名な商品等表示」になり、これが現在でも継続していると認められる。 (ウ)一審被告らは、「出荷数」と「販売数」が異なるものであって、出荷本数についても70億人を超える世界人口との比率からすると微々たるものものであることからすると、「MARIO KART」表示が周知著名ではないと主張する。 しかし、需要がないのに極めて大量の商品が市場に供給されるとは考え難く、出荷数と販売数の間には相関関係があると認められる。また、家庭用ゲームの需要者は、世界の総人口と比べた場合には小規模なものであると考えられる上、単体のゲームソフトとして最も出荷本数の多いものでも8000万本程度であること(甲9)も踏まえると、被告の上記主張は前記の認定を左右するものではない。 エ なお、原告文字表示マリカーの周知性についても検討しておくに、原告文字表示マリカーは、一審原告自身が「マリオカート」シリーズを表すものとして用いていたものではないものの、①ゲームソフト「マリオカート」の略称として、遅くとも平成8年頃には、ゲーム雑誌において使用されるようになっており、②平成22年頃には、ゲームとは関係性の薄い漫画作品においても何らの注釈を付することなく使用されることがあった。また、③一審被告会社が設立される前日である平成27年6月3日には、その1日をとってみても、「マリオカート」を「マリカー」との略称で表現するツイートが600以上投稿されたことが認められる。そして、一審被告会社の設立後においても、テレビ番組において、タレントが、一審原告のゲームシリーズである「マリオカート」の略称として「マリカー」を使用していたと発言し、本件訴訟提起に係る報道が出された後には、複数の一般人から、一審被告会社の社名である「マリカー」が一審原告のゲームシリーズ「マリオカート」を意味するにもかかわらず、一審被告会社が一審原告から許可を得ていなかったことに驚く内容の投稿がされた事実が認められる。 以上の事実からすると、原告文字表示マリカーは、一審原告のカートレーシングゲームシリーズである「マリオカート」を示すものとして、遅くとも平成22年頃には、日本国内のゲームに関心を有する需要者、すなわち日本国内の本件需要者の間で、広く知られていたと認められる。 オ 以上のとおり、「MARIO KART」表示は日本の国内外の本件需要者の間で、原告文字表示マリオカートは日本国内の本件需要者の間で、それぞれ著名であったものと認められる。 (3)原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否 ア 前記(2)で検討したとおり、原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示は、マリオ等のキャラクターが登場する一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズを表すものとして著名となっているものである。 他方、前記第2の2(4)、第3の1、2で認定したとおり、被告標章第1は、公道カートのレンタル等からなる本件レンタル事業に関して使用されているものである。 したがって、本件での類否判断に当たっては、上記のような取引の実情を考慮した上で類否判断を行うのが相当である。 イ 原告文字表示マリオカートと被告標章第1の1(マリカー)について (ア)外観 原告文字表示マリオカートは、6文字からなるところ、被告標章第1の1(マリカー)は、4文字である。 しかし、被告標章第1の1は、それを構成する4文字全てを原告文字表示マリオカートと共通にしており、語順も同一である。 また、原告文字表示マリオカートは、「マリオ」と「カート」を結合したものと理解できる。被告標章第1の1も造語であって、自動車の一種である公道カートに関連して使用されているものであるから「マリ」と自動車を表す英語である「カー」を結合したものであると理解できるものであるところ、上記のとおり原告文字表示マリオカートと被告標章第1の1について、前半部分が「マリオ」と「マリ」、後半部分が「カート」と「カー」で、前半後半それぞれに類似している点があることが分かる。 したがって、原告文字表示マリオカートと被告標章第1の1は、外観上、一定程度似ているということができる。 (イ)称呼 称呼について、原告文字表示マリオカートからは、「まりおかーと」という6音の称呼が生じ、被告標章第1の1からは「まりかー」という4音の称呼が生じ、印象に残りやすい語頭の「まり」を共通にしていて、「かー」も共通にしているから、一定程度似ているということができる。 (ウ)観念 原告文字表示マリオカートからは、「マリオのカート」という観念のほか、前記(2)で検討したとおり、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズとの観念が生じる。他方、被告標章第1の1は、上記ゲームシリーズ「マリオカート」を示すものとして周知であるから、日本国内の本件需要者の間では、被告標章第1の1からは、「マリオの車」という観念のほか、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズという原告文字表示マリオカートと同一の観念も生じる。 (エ)以上の検討からすると、日本国内の本件需要者との関係で、原告文字表示マリオカートと被告文字表示第1の1(マリカー)は類似している。 ウ 「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否 (ア)外観 「MARIO KART」表示はアルファベット9文字及びスペースから構成され、被告標章第1の2~4(MariCar、MARICAR、maricar)は、いずれもアルファベット7文字から構成されるものである。 もっとも、「MARIO KART」表示が、「MARIOKART」と一連に表示されたり、大文字と小文字で「Mario Kart」などと表示されることがあること(甲8の1~9、甲9)からすると、スペースの有無や大文字と小文字といった点から顕著な相違が生じるとはいえず、むしろ、「MARIO KART」表示と被告標章第1の2~4は、「MARI」と「AR」という6文字を共通にしており、その語順も同一である。 また、前記イ(ア)と同様に、「MARIO KART」表示と被告標章第1の2~4(MariCar、MARICAR、maricar)がそれぞれ、「MARIO」と「KART」、「Mari」と「Car」、「MARI」と「CAR」、「mari」と「car」が結合したものであると解されるところ、前半部分と後半部分にそれぞれ外観上の類似点がある。 したがって、「MARIO KART」表示と被告標章第1の2~4(MariCar、MARICAR、maricar)は外観上、一定程度似ているということができる。 (イ)称呼 「MARIO KART」表示からは「まりおかーと」という称呼が生じ、被告標章第1の2~4からは、いずれも「まりかー」という称呼が生じるとで検討したとおり、その称呼は一定程度似ているということができる。 (ウ)観念 a 「MARIO KART」表示からは、「マリオのカート」という観念のほか、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズとの観念が生じる。 他方、被告標章第1の2~4について、前記イ(ウ)と同様に、日本国内の本件需要者との関係では、「マリカー」が上記ゲームシリーズ「マリオカート」を示すものとして周知であることから、「マリオの車」という観念に加えて、一審原告の人気カートレーシングゲームシリーズとの観念も生じ、「MARIO KART」表示と同一の観念を生じる。 b 次に、日本国外の本件需要者との関係について検討するに、①前記アのとおり、被告標章第1の2~4が、いずれも公道カートのレンタル事業である本件レンタル事業について用いられていることからすると、それぞれ、「Mari」と「Car」、「MARI」と「CAR」、「mari」と「car」が結合したものであると解されること、②「MARIO KART」表示がマリオ等のキャラクターが登場するカートレーシングゲームを示すものとして日本の国内外で著名であること、③「Mari」、「MARI」、「mari」が「MARIO」と語順を同じくし、かつ最後の「O」の有無の点だけで異なったものであることからすると、本件レンタル事業に関して用いられている被告標章第1の2~4に接した日本国外の本件需要者は、「Mari」、「MARI」、「mari」から「MARIO」を想起し、被告標章第1の2~4から「マリオの車」という観念を生じるものと認められる。そして、「MARIO KART」表示からは、「マリオのカート」という観念を生じるところ、「車」が「カート」を含む上位概念であることからすると、日本国外の本件需要者との関係でも「MARIO KART」表示と被告標章第1の2~4(MariCar、MARICAR、maricar)は観念において類似するものといえる。 (エ)以上の検討からすると、日本国内外の本件需要者全てとの関係で、「MARIO KART」表示と被告標章第1の2~4は類似している。 エ なお、一審被告らは、乙54のアンケートにおいて、被告標章第1から一審原告のデオゲームを想起した者が少数にとどまると主張しているが、同アンケートは、被告標章第1が本件レンタル事業と結び付いて使用されているなどの取引の実情を前提として、原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と被告標章第1の類否を問題としたものではないから、同アンケ―トの結果が、前記イ、ウの判断を左右するものではない。 (4)小括 以上の検討のとおり、原告文字表示マリオカートは著名であって、被告標章第1の1の需要者である日本国内の本件需要者との関係で被告標章第1の1と類似しており、「MARIO KART」表示は著名であって、被告標章第1の2~4の需要者である日本国内外の本件需要者との関係で被告標章第1の2~4と類似するものである。 また、前記第2の2(4)、第3の1~3で認定した一審被告会社が単独又は関連団体と共同で行っている被告標章第1の使用行為は、いずれも被告標章第1を、自己がしている本件レンタル事業という役務を表示するものとして使用するものといえる。 そして、不競法2条1項2号は、著名表示をフリーライドやダイリューションから保護するために設けられた規定であって、混同のおそれが不要とされているものであるから、一審被告らが主張するような打ち消し表示の存在や本件各コスチュームの使用割合が低いこと(ただし、この点についての一審被告らの主張を採用できないことは、後記6(2)エのとおりである。)といった事情は、何ら不正競争行為の成立を妨げるものではない。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1を前記第2の2(4)、第3の1~3で認定したとおり使用する一審被告会社の行為は、外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることも含めて不正競争行為に該当するものである。 5 争点5(登録商標の抗弁の成否)について 一審被告らは、一審被告会社は、「マリカー」の標準文字からなる本件商標を有しており、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから、仮に被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても、差止請求や損害賠償請求は認められない旨主張する。 しかし、本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ、前記4(2)で検討したとおり、その頃までには、原告文字表示マリオカート及び「MARIOKART」表示は日本国内で著名となっており、かつ原告文字表示マリカーも、「マリオカート」を示すものとして、日本国内の本件需要者の間で周知になっていて、かつ後記8のとおり、一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知っていたものと認められる。 これに加え、①一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」としていたこと、②平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されていた本件チラシには、「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状態!!」と記載されていたこと(甲3、4)、③平成28年8月12日当時に品川第1号店サイト1には、「みんなでコスプレして走れば、リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されるとともに、「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が同記載に併せて掲載され、また、平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト1に「みんなでコスプレして走れば、リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されていたこと(甲6の1、甲35)、④平成29年2月23日当時に、河口湖店サイトに「スーパーマリオのコスプレをして乗れば、まさにリアルマリオカート状態!!」と記載されていたこと(甲6の2)、⑤後記6認定のとおり、一審原告の著名な商品等表示である原告表現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ、特に、平成27年11月2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1、甲43の1)の0:05秒時点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され、かつ同音声について、「マリオカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると、一審被告会社は、周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと推認することができる。 したがって、一審被告会社が、一審原告に対し、本件商標に係る権利を有すると主張することは権利の濫用として許されないというべきであり、一審被告らの上記主張は理由がない。 なお、一審被告らは、原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間では周知ではないと主張するが、これまで検討してきたとおり、本件需要者は訪日外国人に限られないから、一審被告らの主張はその前提を欠いており、採用することができない。 6 争点7(本件宣伝行為及び本件貸与行為が、不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか)について (1)原告表現物の著名性について ア 前提事実 (ア)原告表現物(原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパ)は、人物又は生物のイラストである。原告表現物は、「スーパーマリオブラザーズ」をはじめとする一審原告の一連のゲームシリーズである「マリオ」シリーズ等に登場するキャラクターである「マリオ」、「ルイージ」、「ヨッシー」及び「クッパ」の人物又は生物としての表現上の特徴を再現したものといえる。 (イ)「マリオ」は、一審原告が昭和58年9月9日に発売したゲームソフト「マリオブラザーズ」のメインキャラクターである。一審原告は、昭和56年にリリースされたアーケードゲーム「ドンキーコング」を皮切りに、世界的に大ヒットとなった「スーパーマリオブラザーズ」をはじめとする「マリオ」シリーズやそれ以外の「マリオ」が登場するゲーム作品を多数発表し、その全世界における累計販売本数は、平成28年8月当時で少なくとも3億2000万本以上に及んでいた(甲9、45、46、48、甲94の1~10、乙35)。 また、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が平成28年7月に発行した「2016年CESAゲーム白書」において、上記「マリオ」シリーズのゲーム作品のうち、「スーパーマリオブラザーズ」は国内歴代ミリオン出荷タイトルの1位(681万本)に、「Newスーパーマリオブラザーズ」は2位(649万本)に、「NewスーパーマリオブラザーズWii」は11位(467万本)に、「スーパーマリオランド」は15位(419万本)に、「スーパーマリオブラザーズ3」は21位(384万本)に、「スーパーマリオワールド」は30位(355万本)に、「スーパーマリオランド2:6つの金貨」は45位(270万本)に、「スーパーマリオブラザーズ2【書き換え・ディスク】」は48位(265万本)に、それぞれランクインした(甲9)。 同様に、「スーパーマリオブラザーズ」は世界歴代ミリオン出荷タイトルの2位(4024万本)に、「Newスーパーマリオブラザーズ」は5位(3072万本)に、「NewスーパーマリオブラザーズWii」は7位(2846万本)に、「スーパーマリオワールド」は14位(2061万本)に、「スーパーマリオランド」は16位(1814万本)に、「スーパーマリオブラザーズ3」は18位(1728万本)に、「スーパーマリオギャラクシー」は25位(1213万本)に、「スーパーマリオ64」は27位(1191万本)に、「スーパーマリオランド2:6つの金貨」、「スーパーマリオ64DS」、「スーパーマリオ3Dランド」、「スーパーマリオコレクション」及び「Newスーパーマリオブラザーズ2」は、31位ないし35位(1118万本、1101万本、1063万本、1055万本及び1004万本)に、「マリオパーティDS」は39位(931万本)に、「マリオパーティ8」は42位(885万本)に、それぞれランクインした(甲9)。 (ウ)「マリオ」は、「ギネス世界記録」(GuinnessWorldRecords)が平成23年2月頃に発表した「ゲーム史上最も有名なゲームキャラクターTop50」において、1位を獲得した(甲48)。 (エ)「マリオ」シリーズにおいて、「ルイージ」は昭和58年9月9日に発売された「マリオブラザーズ」から、「クッパ」は昭和60年9月13日に発売された「スーパーマリオブラザーズ」から、「ヨッシー」は平成2年11月21日に発売された「スーパーマリオワールド」から登場する(甲45)。 また、「ルイージ」を主役とするゲーム作品として、平成13年9月14日に「ルイージマンション」が、平成25年3月20日に「ルイージマンション2」がそれぞれ発売され、このうち「ルイージマンション2」は前記国内歴代ミリオン出荷タイトルの173位(118万本)、世界歴代ミリオン出荷タイトルの96位(475万本)にランクインした(甲9、45)。 「ヨッシー」を主役とするゲーム作品として、平成7年8月5日に「スーパーマリオヨッシーアイランド」が発売され、同ゲームは前記国内歴代ミリオン出荷タイトルの90位(177万本)、世界歴代ミリオン出荷タイトルの108位(412万本)にランクインした(甲9、45)。 (オ)平成28年8月に開催されたリオ五輪の閉会式では、安倍晋三首相がマリオのコスチュームを着用して登場し、東京五輪のアピールを行った(甲46、47)。 また、平成30年12月の「日本商品化権大賞2018」において、「スーパーマリオ(SUPERMARIO)」が、「海外及び国内で日本発のキャラクターで顧客吸引力を高めた施策を実行した団体、個人」を表彰するものである「グローバル部門」の賞を受賞した(甲184、205)。 (カ)「ヨッシー」は、「ギネス世界記録」が発表した前記「ゲーム史上最も有名なゲームキャラクターTop50」において、21位を獲得した(甲48)。 また、「クッパ」は、「ギネス世界記録」が平成25年1月頃に発表した「ビデオゲーム史に名を残す悪役トップ50」において、1位を獲得した(甲49)。 (キ)「マリオ」、「ルイージ」及び「クッパ」の造形は、登場当初から現在までの間に多少の変遷があり、かつ、登場するゲーム作品によっては、その中で、本件訴訟における原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ及び原告表現物クッパとは異なる造形がされることがあったものの、原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ及び原告表現物クッパについて、後記(2)アで述べるような人物又は生物としての特徴と全く同一かほとんど同じ特徴を備えた造形が、「マリオ」、「ルイージ」及び「クッパ」のキャラクターの代表的な造形として前記平成4年8月27日に発売された前記「スーパーマリオカート」をはじめとするゲーム作品の画面やパッケージ、当該作品を取り上げた書籍、雑誌記事、国内外で放送されたテレビコマーシャル等で長年にわたって繰り返して用いられてきた。 「ヨッシー」については、前記平成2年11月21日に発売された「スーパーマリオワールド」での初登場以降、その造形に大きな変化はなく、後記(2)で後述する原告表現物ヨッシーの生物として特徴と同じか、ほとんど同じ特徴を備えた造形が、「マリオ」などと同じように「ヨッシー」のキャラクターの造形としてゲーム作品等で長年にわたって繰り返して用いられてきている。 (「マリオ」について、甲8の1~9、甲10、甲11の1・3~6、甲16の1の1・2・3・5・6、甲16の2の2・3、甲16の3、甲16の4の2、甲16の5、甲16の6の1~7、甲17、19、20、45、甲69の2、甲78、甲94の1~10、甲95の1~4、甲110、112、181、乙35、98~100及び弁論の全趣旨、「ルイージ」について、甲8の2・6・7、甲11の3・4、甲16の1の1・2・3・6、甲16の3、甲16の4の1・2、甲16の5、甲16の6の3・7、甲18、19、甲69の4・5、甲94の1~8・10、甲95の2、甲110、113、181、乙99及び弁論の全趣旨、「ヨッシー」について、甲8の2・7、甲11の4、甲16の1の1・3・6、甲16の3、甲17、甲94の1~6、甲95の1~3、甲110、114、181及び弁論の全趣旨、「クッパ」について、甲8の2・7、甲11の4、甲16の1の1・2・3、甲16の3、甲16の6の3、甲17、甲94の1~9、甲95の3、甲110、115、181、乙35、100及び弁論の全趣旨) イ 前記アの前提事実によると、原告表現物マリオは、その人物のイラストとしての基本的な表現上の特徴を同じくする「マリオ」が登場する一審原告のゲームソフト作品の長年にわたる販売及び人気並びにそれに伴う宣伝等により、一審原告の商品の出所を表示する商品等表示となり、遅くとも、国内出荷本数ランキングで2位を、国内及び世界における出荷本数ランキングで5位を獲得した「Newスーパーマリオブラザーズ」が発売された平成18年5月には、日本国内で、一審原告の商品等表示として著名となっており、それが現在でも継続していると認められる。また、遅くとも、「マリオ」が「ギネス世界記録」が発表した「ゲーム史上最も有名なゲームキャラクターTop50」において1位を獲得した平成23年2月頃には、日本国外のゲームに関心を有する需要者の間でも著名となっており、それが現在でも継続しているものと認められる。 原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパについても、その人物又は生物のイラストとしての基本的な表現上の特徴を同じくする「ルイージ」、「ヨッシー」及び「クッパ」が登場する一審原告のゲームソフト作品の長年にわたる販売及び人気並びにそれに伴う宣伝等により、一審原告の商品の出所を表示する商品等表示となったというべきであり、遅くとも、「NewスーパーマリオブラザーズWii」が発売された平成21年12月には、日本国内で一審原告の商品等表示として著名となっており、それが現在でも継続していると認められる。また、①「スーパーマリオカート」をはじめとする「ルイージ」、「ヨッシー」及び「クッパ」が、「マリオ」と共に登場する「マリオ」シリーズ及び「マリオカート」シリーズが日本国内のみならず海外においても大きな売上げを記録したこと、②「ルイージ」や「ヨッシー」を主役とするゲーム作品も世界歴代ミリオン出荷タイトルの96位及び108位にランクインしていること、③「ヨッシー」は「ギネス世界記録」が平成23年2月頃に発表した「ゲーム史上最も有名なゲームキャラクターTop50」において21位を、「クッパ」も同じく「ギネス世界記録」が平成25年1月頃に発表した「ビデオゲーム史に名を残す悪役トップ50」において1位をそれぞれ獲得したことからすると、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパもまた、遅くとも、前記ギネス記録が発表された平成25年1月までには、日本国外のゲームに関心を有する需要者の間で著名となり、それが現在まで継続しているものと認められる。 ウ 一審被告らは、この点について、①キャラクターが商品等表示足り得るためには、特別顕著性及び周知性が必要とされるところ、原告表現物マリオで顕著な特徴があるのは「顔」の部分のみである、②原告表現物については時代やゲームによって造形が異なっている証拠が多数提出されているから原告表現物全体が周知著名とは認められないと主張する。 (ア)上記①について、本来的に商品の出所表示機能を有さない商品の形態とは異なり、キャラクターが商品等表示足り得るためには、その性質上、特別顕著性は必ずしも必要ないというべきであって、一審被告らの主張はその前提を欠く。 また、(2)アで後述するような特徴を備えた原告表現物マリオは、「顔」以外にも赤い帽子と長袖シャツ、帽子に描かれた「M」のマーク、青のオーバーオール、白い手袋、茶色の靴といったものが複数組み合わされることによっても特徴付けられていて、「顔」も含めた全体に特徴があるものといえ、一審被告らが主張するように、「顔」以外の部分がありふれたもので何ら特徴的ではないということはできず、一審被告らの主張はこの点でも採用することができない。 (イ)上記②について、原告表現物について、時代やゲームによって造形が異なるものがあるとしても、前記ア認定のとおり、原告表現物の特徴と同一かほぼ同一の特徴を備えた「マリオ」、「ルイージ」、「ヨッシー」、「クッパ」が、長年にわたって繰り返し一審原告のゲーム作品等に用いられてきたことからすると、原告表現物は著名となり、それが現在まで継続していると認められる。 (2)本件宣伝行為及び本件貸与行為の不正競争行為該当性 ア 原告表現物の特徴 (ア)原告表現物マリオは原判決別紙原告表現物目録記載1のとおりである。 その人物のイラストとしての表現上の特徴として、(A)赤い帽子をかぶり、赤い長袖シャツと青いオーバーオールを着た人物であり、(B)顔は、目は楕円形を縦長にした形で瞳はより小さな青色と黒色の楕円形で表現され、つり上がった「へ」の字型の眉をし、大きな横長の楕円形の鼻と、その下に両端が上を向き下が波形になった形のひげを生やし、(C)帽子は正面前方に大きな膨らみと後方に小さな膨らみをもたせ、双方の膨らみの間にくぼみを設け、正面に半円形のつばがついた形状であり、正面中央につばの縁に沿って円の下方部が切り取られた横長の楕円状の白い丸があり、その中に帽子及び長袖シャツと同色の赤色でM(上からつぶして横に広げたような形状で中央のへこみは浅く描かれ、両端の辺の部分は上部に向けて幅が狭く、下部に向けて広がる形状)と書かれた部分があり、(D)赤い長袖シャツは、両腕部分及びオーバーオールに覆われていない首下部分が表面に見えており、(E)オーバーオールは、長ズボン部分と、正面の胸当てからなる前面部と、背中部分と、当該前面部と背中部分とをつなぐサスペンダー(太い肩紐からなるズボンつり部分)から構成され、赤い長袖シャツが見えている部分を除いた足首から肩にかけての全身を覆い、腹部はゆったりと膨らんで前方にせり出し、胸当てとサスペンダーの下部が重なるように描かれ、当該重なり部分に、サスペンダーの幅と直径が概ね一致する大きさの円形の黄色いボタンが付され、(F)白い手袋をし、(G)茶色の靴を履いているという特徴がある(甲112。以下、これらを「原告表現物マリオの特徴(A)」などといい、その他の原告表現物の特徴についても同様にいうことがある。)。 (イ)原告表現物ルイージは原判決別紙原告表現物目録記載2のとおりである。その人物のイラストとしての表現上の特徴として、(A)緑色の帽子をかぶり、緑色の長袖シャツと紺色に近い青いオーバーオールを着た人物であり、(B)顔は、目は楕円形を縦長にした形で瞳はより小さな青色と黒色の楕円形で表現され、つり上がった「へ」の字型の眉をし、大きな横長の楕円形の鼻と、その下に両端が上を向き下が弧を描く形のひげを生やし、(C)帽子は正面前方に大きな膨らみと後方に小さな膨らみをもたせ、双方の膨らみの間にくぼみを設け、正面に半円形のつばがついた形状であり、正面中央につばの縁に沿って円の下方部が切り取られた横長の楕円状の白い丸があり、その中に帽子及び長袖シャツと同色の緑色でL(縦の辺と横の辺が接合する箇所に向けてだんだんとやや狭く、接合箇所と反対方向に向けてやや太くなっていく形状)と書かれた部分があり、(D)緑色の長袖シャツは、両腕部分及びオーバーオールに覆われていない首下部分が表面に見えており、(E)オーバーオールは、長ズボン部分と、正面の胸当てからなる前面部、と背中部分と、当該前面部と背中部分とをつなぐサスペンダーから構成され、緑色の長袖シャツが見えている部分を除いた足首から肩にかけての全身を覆い、腹部はゆったりと膨らんで前方にせり出し、胸当てとサスペンダーの下部が重なるように描かれ、当該重なり部分に、サスペンダーの幅と直径が概ね一致する大きさの円形の黄色いボタンが付され、(F)白い手袋をし、(G)茶色の靴を履いているという特徴がある(甲113)。 (ウ)原告表現物ヨッシーは原判決別紙原告表現物目録記載3のとおりである。その生物のイラストとしての表現上の特徴として、(A)黄緑に近い緑と白を基調とした二足歩行の恐竜をユーモラスにしたような生物であり、(B)正面から捉えたイラストでは、頭部は鼻の部分が丸くて大きな緑色の球体になっており、その後ろに頭部の大半を占めるように白い縦長の丸を二つ重ねた中にそれぞれ黒目を置いた目があり、その周りをなぞるように緑色の縁取りがなされるような形状で頭部が形成されており、頬に当たる部分は白くて丸みを帯びてやや膨らんでいて、四肢と脇腹の部分は緑色、それ以外の腹部前面等の部分は白色をしており、腹部前面の白い部分は、首から胸部及び腹部を経由し股のあたりまでを広く覆うように描かれ、(C)後ろ及び横方向から捉えたイラストでは、後頭部に半円形で朱色の背びれ様のとげが三つ付いていて、背中には大きな赤い丸及びこれを白く縁取った甲羅様の突起物があり、尻尾は根元が太く、円錐形に近い形で短く、先端が背中の甲羅様の部分とほぼ水平になる位置まで上を向き、(D)茶色のブーツを履いているという特徴がある(甲114)。 (エ)原告表現物クッパは原判決別紙原告表現物目録記載4のとおりである。その生物のイラストとしての表現上の特徴として、(A)顔と甲羅が主に緑色で、黄色い胴体を有する二足歩行の怪物のような生物であり、(B)正面から捉えたイラストでは、(a)緑色の頭部には牛のような二本の角(全体が肌色で根元部分に茶色の縁取りがある)が生えていて、鼻と唇は一体になっており分厚く肌色で、口の中には白い牙が生えており、目(虹彩部分はオレンジに近い赤色、瞳孔部分は黒色)は鋭くつり上がっていて赤く豊かな眉を生やしており、頭頂部から後頭部にかけて赤く豊かなたてがみが生えていて、(b)胴体の中心にはお腹から胸にかけて大きく縦長の円に複数の横線の入った肌色の模様があり、それ以外の四肢と脇腹の部分は黄色く、首並びに左右の手首及び上腕部には複数の銀色のとげ様の飾りの付いた黒い首輪及び腕輪をしており、(C)後ろ及び横方向から捉えたイラストでは、複数本の太いとげ(頭部と同様に全体が肌色で根元部分に茶色の縁取りがある)があり、白い縁のついた緑色の甲羅を背負っていて、尻尾は根元が太く、円錐形に近い形で短く、上側に尻尾と同色の短い二本のとげを有するという特徴がある(甲115)。 イ 本件写真2及び3について (ア)本件写真2及び3の内容 本件写真2には、公道カートに乗車した人物が2名表示されているところ、手前の人物は、少なくとも、原告表現物マリオの特徴(C)ないし(E)を備えているコスチューム(以下、同様の特徴を備えたコスチュームを「本件マリオコスチューム」という。)を着用している。本件写真3には、公道カートに乗車した人物が2名表示されているところ、手前の人物は、原告表現物ヨッシーの特徴(A)及び(B)を備えているコスチューム(以下、同様の特徴を備えたコスチュームを「本件ヨッシーコスチューム」という。)を着用している。 (イ)営業表示が原告表現物のようなキャラクターである場合にも、ある営業表示が不競法2条1項2号にいう他人の営業表示と類似のものに当たるか否かについては、具体的な取引の実情を考慮した上で判断するのが相当である。 この点、本件写真2及び3中の本件マリオコスチュームと本件ヨッシーコスチュームを着用した各人物の表示は、原告表現物マリオ及びヨッシーの特徴のいくつかを上記のとおりそれぞれ備えているものであり、その外観は原告表現物マリオ及びヨッシーと類似している。また、前記4(2)で述べたところからすると、「マリオカート」シリーズは、「マリオ」や「ヨッシー」等によるカートレーシングゲームとして日本国内外で著名であるということができるから、公道カートに乗り、本件マリオコスチュームや本件ヨッシーコスチュームを着用した各人物の表示を見た本件需要者は、そこから原告表現物マリオ及びヨッシーを想起するものといえる。 したがって、原告表現物マリオと本件マリオコスチューム及び本件ヨッシーコスチューム並びにそれらを着用した人物の表示はそれぞれ類似しているといえる。 (ウ)そして、本件写真2及び3は、平成29年2月23日までに河口湖店サイトに掲載されたものであり、富士河口湖店が、公道カートのレンタルや本件貸与行為等からなる本件レンタル事業を営んでいることからすると、本件写真2及び3は、単に本件レンタル事業の内容を説明するものではなく、一審被告会社によって自己の商品等表示として用いられたものと認められる。 (エ)したがって、本件写真2及び3を河口湖店サイトに掲載することは不競法2条1項2号の不正競争行為に該当するというべきである。 ウ 本件各動画について (ア)本件各動画の内容 本件各動画については、少なくとも、以下のとおり、原告表現物の特徴の少なくとも一部を備えたコスチュームを着た人物が表示されている。 a 本件動画1 本件動画1は「MARICAR」との表示を含む本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」、「公道カート東京ツアーbyマリカー」との表示がある画面から始まり、本件動画1の0:09秒及び0:13秒時点には、原告表現物クッパの特徴(A)ないし(C)を備えたコスチューム(以下、同様の特徴を備えたコスチュームを「本件クッパコスチューム」という。)を着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「マリカー」による「カート」ツアーの利用者として表示されている(甲42の1、甲43の1)。 b 本件動画2 本件動画2は本件ロゴと「マリカー公道カート東京ツアー」との表示がある画面から始まり、本件動画2の0:07秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「マリカー」による「カート」ツアーの利用者として表示されている(甲42の2、甲43の2)。 c 本件動画3 本件動画3は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画3の0:59ないし1:09秒時点には、本件クッパコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の3、甲43の3)。 d 本件動画4 本件動画4の3:09秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して、公道カートに乗車する人物が表示されている。本件動画4には「ハロウィンの当日にあの『マリカー』で渋谷を走ってみたら大変なことになった」との表示が挿入されており、上記人物は「マリカー」による公道カートのツアーの利用者として表示されている(甲42の4、甲43の4)。 e 本件動画5 本件動画5は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画5の12:57秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者としてとして表示されている(甲42の5、甲43の5)。 f 本件動画6 本件動画6は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画6の1:50秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の6、甲43の6)。 g 本件動画7 本件動画7は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画7の0:09秒時点には、本件ヨッシーコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の7、甲43の7)。 h 本件動画8 本件動画8は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画8の0:19ないし0:20秒時点には、本件クッパコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の8、甲43の8)。 i 本件動画9 本件動画9は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画9の0:17秒時点には、原告表現物ルイージの特徴(C)ないし(E)の少なくとも一部を備えたコスチューム(以下、同様の特徴を備えたコスチュームを「本件ルイージコスチューム」という。)を着用して、公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の9、甲43の9)。 j 本件動画10 本件動画10は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画10の0:16秒時点には、本件ルイージコスチュームを着用して、公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の10、甲43の10)。 k 本件動画11 本件動画11は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画11の0:03秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の11、甲43の11)。 l 本件動画12 本件動画12は本件ロゴと「PUBLIC ROAD GO-KARTING TOKYO TOUR」との表示がある画面から始まり、本件動画12の0:03秒時点には、本件マリオコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「KARTING」のツアーの利用者として表示されている(甲42の12、甲43の12)。 m 本件動画13 本件動画13の0:27~0:32秒時点には、本件ヨッシーコスチュームを着用して公道カートに乗車しようとする人物が表示されている。本件動画13は品川第1号店による本件レンタル事業の内容を取材して作成されたものであり、上記人物は同事業によるカートレンタルサービスの内容を実演する者として表示されている(甲42の13、甲43の13)。 n 本件動画14 本件動画14の1:22秒時点には、本件クッパコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。本件動画14の中において、上記人物は「マリカー」によるカートツアーの利用者とされ、本件レンタル事業の概要が説明されている(甲42の14、甲43の14)。 o 本件動画15 本件動画15の0:33ないし0:36秒時点には、本件ヨッシーコスチュームを着用して本件ロゴ等が記載された公道カートに乗車する人物が表示されており、「マリオカートの運転手」と説明されている(甲42の15、甲43の15)。 p 本件動画16 本件動画16は本件ロゴと「Street Go-Karting Tour」との表示がある画面から始まり、本件動画16の0:14秒時点には、本件ルイージコスチュームを着用して公道カートに乗車する人物が表示されている。上記人物は「MARICAR」による「Karting」のツアーの利用者として表示されている(甲42の16、甲43の16)。 (イ)本件各動画は、いずれもYouTubeにアップロードされたものであり、本件動画1~3、5~12及び16については、その冒頭において本件ロゴが表示されるなどして一審被告会社が行う本件レンタル事業に関する動画であることが表示されている。また、本件動画4は、本件レンタル事業に係る利用者がコスチュームを着用して公道カートを運転する様子が撮影された動画であり、本件動画13及び14は本件レンタル事業について紹介するテレビ番組の当該紹介部分を切り取って作成された動画であり、本件動画15は本件ロゴ等が記載された公道カートを運転する本件レンタル事業の利用者を撮影したテレビ番組の当該部分を切り取って作成された動画であり、いずれも一審被告会社が単独又は関係団体と共同して、本件レンタル事業を広く紹介するためにYouTubeにアップロードしたものと認められる。 (ウ)そして、前記イと同様に、本件各動画中において、本件マリオコスチューム、本件ルイージコスチューム、本件ヨッシーコスチューム及び本件クッパコスチューム並びにそれらのコスチュームを着用した人物の表示は、いずれも原告表現物の特徴の一部を備えていて、外観上、原告表現物と類似することや「マリオカート」シリーズが、「マリオ」や「ヨッシー」等によるカートレーシングゲームとして日本国内外の本件需要者の間で著名であることからすると、本件各動画中の上記表示と原告表現物は類似するといえる。 (エ)前記イと同様に、一審被告会社が、公道カートのレンタルや本件貸与行為からなる本件レンタル事業を営んでいること及び本件各動画の前記内容からすると、本件各動画は、単に本件レンタル事業の内容を説明するものではなく、自己の商品等表示として用いられたものと認められる。 (オ)したがって、本件各動画をYouTubeにアップロードすることは、不競法2条1項2号にいう不正競争に該当するというべきである。 (カ)一審被告らは、本件各動画のほとんどには冒頭に本件ロゴが表示されており一審原告を想起させるような表示はないから、商品等表示としての使用には該当しない旨主張するが、本件ロゴには、原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と類似する被告標章第1の3(MARICAR)が含まれているから、一審被告らの主張は前提を欠いており、採用することができない。 エ 本件貸与行為について (ア)前記第2の2(4)イ、前記第3の1、2からすると、本件各店舗において本件貸与行為がされていると認められるところ、証拠(甲110~115)及び弁論の全趣旨によると、本件貸与行為で用いられている本件各コスチュームは、ライセンシーが一審原告の許諾・監修のもとに作成したものであって、前記アで認定した原告表現物の特徴の全部又はその大部分を備えていて、原告表現物に類似するものである。 (イ)次に、前記5で認定したとおり、平成29年2月までの間において、「スーパーマリオのコスプレをして乗れば、まさにリアルマリオカート状態!!」などと、本件貸与行為を強調し、それを前面に出して本件レンタル事業の宣伝が行われてきた。 また、原判決が本件貸与行為は不正競争行為に該当すると判断した後も、本件各店舗において本件貸与行為が継続されていること及び前記1(1)判決後の平成31年2月17日の時点で京都店がルイージやヨッシーのコスチュームを着用した者らの写真をウェブサイトの予約ページで用いていること(甲220)からすると、現時点でも本件貸与行為は、一審被告会社がしている本件レンタル事業を特徴付けるものとして、従来と同じく重要な地位を占めているものと推認することができる。 したがって、一審被告会社は、本件各コスチュームを自己の商品等表示として使用しているものと認められる。 (ウ)以上からすると、本件貸与行為は、不競法2条1項2号の定める「使用」に当たるものとして、同号の不正競争行為に該当するというべきである。 (エ)この点について、一審被告らは、①本件事実実験の結果やインスタグラムにおける投稿(乙120)からすると、本件各コスチュームは、コスチューム群のごく一部を構成するものにすぎず、商品等表示としては使用されていない、②不競法2条1項1、2号にいう「使用」には貸与は含まれない、③本件各コスチュームの割合が低いことや打ち消し表示の存在等により本件では混同のおそれがないと主張する。 a しかし、上記①について、本件事実実験の結果(乙92の1~3)は前記(イ)で認定したこれまでの宣伝や本件レンタル事業の実体に沿わないものである。現に沖縄店については、本件事実実験時の店内の様子とその約3週間前に行われた一審原告による調査時の店内の様子が異なっている上、本件事実実験について記載した公正証書中には一審原告による上記調査時にあったヨッシーのコスチュームが見受けられない(甲145、乙92の3)。また、本件事実実験では、実施する日の午前中に一審被告会社に対して連絡がされていたと認められ、完全な抜き打ち調査ではなかった上、本件事実実験における利用者の着用コスチュームの調査は、公証人が店舗に滞在した2~3時間の間に遭遇した、ごく限られた利用者について調査したものにすぎず、本件各コスチュームの着用割合も店舗によって8%~66.7%と大きくばらついている。これらのことからすると、本件事実実験の信用性は、全体として乏しいものといわざるを得ない。 インスタグラム(乙120)についても、それらが、どのような基準で、どのような母集団の中から選別されたものであるかが不明であり、それをもって、実際に利用されている本件各コスチュームの割合を推認することはできない。 したがって、一審被告らの上記①の主張は採用することができない。 b 上記②について、一審被告らは、不競法2条1項1、2号が、「使用」と「譲渡」等を区別していること、同項4号~10号、10条1項が「使用」と「開示」を分けていて、同法2条1項3号も「貸し渡し」を明示していることからすると、不競法2条1項1、2号の「使用」には、商品に関する占有や支配関係が移転する「貸与」は含まれないと主張する。 しかし、不競法2条1、2号は「商品等表示」について「使用」の語を、「商品等表示を使用した商品」について「譲渡」等を用いているのであり、一審被告らが指摘するのは、単に対象の相違に由来する表現の差異にすぎず、それが一審被告らの主張するような上記解釈の根拠となるものではない。 不競法2条1項4~10号、10条1項も、本件とは異なる営業秘密に関する規定であり、一審被告らの主張するような解釈の根拠となるものではない。 不競法2条1項3号についても、上記と同様に対象が「商品」であることから「貸し渡し」という文言を用いているものと解され、そこから直ちに「使用」に占有や支配が移転する場合を含まないと解することはできない。 したがって、一審被告らの上記②の主張は採用することができない。 c 上記③について、不競法2条1項2号について、混同のおそれの要件は不要であるから、打ち消し表示などのために混同のおそれが生じないとする一審被告らが主張するところは、不正競争行為該当性の判断に影響を及ぼすものではない。 オ 本件マリオ人形の使用行為 (ア)公道カートのレンタルや本件貸与行為を含む本件レンタル事業を行っていた品川第1号店において、本件マリオ人形を、前記第2の2(4)で認定したとおり店舗の入口付近に設置することは、前記イ~エと同様に本件マリオ人形を自己の商品等表示として用いるものということができる。 そして、本件マリオ人形は、前記アで認定した原告表現物マリオの特徴をいずれも備えており、本件マリオ人形が原告表現物マリオに類似することは明らかであるから、本件マリオ人形の設置行為は不競法2条1項2号の不正競争行為に該当する。 (イ)一審被告らは、本件マリオ人形は販売目的で設置されていたから、商品等表示としての使用には該当しないと主張するが、販売目的であったことを認めるに足りる証拠はないし、その使用態様や一審被告会社の提供していた役務(本件レンタル事業)との関連性等からすると、仮に販売目的であったとしても、それと商品等表示としての使用は併存し得るといえるから、一審被告らの上記主張を採用することはできない。 カ 従業員によるコスチュームの着用行為 証拠(甲4、甲42の13・16、甲43の13・16、乙63)及び弁論の全趣旨によると、従業員が着用していたのは被告標章第2のコスチュームであると認められるところ、被告標章第2のコスチュームは、前記アで認定した原告表現物の特徴の一部を備えており、かつ、これらのコスチュームを着用し、カートツアーの先導者として公道カートに乗車することは、本件需要者をしてゲームシリーズ「マリオカート」に登場する「マリオ」、「ルイージ」、「ヨッシー」及び「クッパ」を想起させるといえ、原告表現物と上記各コスチューム及び同コスチュームを着用して先導を行う従業員らの表示はいずれも類似するといえる。 そして、上記のように従業員に被告標章第2のコスチュームを着用させる行為は、自己の商品等表示としてこれを使用するものといえるから、従業員に被告標章第2のコスチュームを着用させて、カートツアーのガイドをさせる行為は不競法2条1項2号の不正競争行為に該当する。 キ なお、一審原告は、①原告立体像との関係で、本件宣伝行為や本件貸与行為が不正競争行為に該当する、②本件制作行為及び本件掲載行為が原告表現物の複製権、翻案権、自動公衆送信権、送信可能化権を侵害する、③本件貸与行為が原告表現物の貸与権を侵害するとの主張もしている。 しかし、上記①~③の主張は、いずれも原告表現物との関係で本件宣伝行為や本件貸与行為が不正競争行為に該当するとの主張と選択的併合に立つものであるから、上記①~③の主張については判断しないこととする。 なお、一審被告らは、不競法と著作権法では、要件が異なると主張するが、選択的併合かどうかは、請求の趣旨(主文)によって判断されるものであって、請求の趣旨(主文)が重なり合う以上、選択的併合ということを妨げないものである。 7 争点9(本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか)について (1)本件各ドメイン名と原告文字表示の類否 ア 本件各ドメイン名のうち「.jp」、「.co.jp」及び「.com」部分は、多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから、出所を表示する機能を有する部分は「maricar」又は「fuji-maricar」であり、同部分が本件各ドメイン名の要部と認められる。このうち本件ドメイン名1、2、4の「maricar」部分は、前記4(3)で述べたとおり、一審原告の特定商品等表示である「MARIO KART」表示と類似するものである。 また、本件ドメイン名1、2、4の「maricar」からは一審原告の特定商品等表示である原告文字表示マリカーと同じ「まりかー」との称呼が生じる。また、「maricar」からは、前記4(3)のとおり、「マリオの車」という観念が生じるところ、同観念は、原告文字表示マリカーから生じる観念と同一であるから、本件ドメイン名1、2、4の「maricar」は、原告文字表示マリカーとも類似する。 イ 本件ドメイン名3「fuji-maricar」についても、前記第2の2(4)エのとおり、「fuji」と「maricar」が「-」で結合されていて、「fuji」と「maricar」の間に観念上の関連性がないことからすると、「maricar」部分を要部として抽出することができるから、前記アと同様、本件ドメイン名3「fuji-maricar」も、原告文字表示マリカー及び「MARIO KART」表示と類似するものといえる。 (2)図利加害目的の有無 前記5で認定した各事実及び前記6で検討したように、一審被告会社が、「マリオカート」シリーズに登場する一審原告の著名な商品等表示である原告表現物に類似した本件各コスチュームの貸与行為を現在まで継続していることを考え併せると、前記5と同様に、一審被告会社は、周知又は著名な原告文字表示マリオカート及び同マリカー並びに「MARIO KART」表示の高い顧客吸引力を利用して、不当に利益を上げる目的で、本件各ドメイン名を使用しているものと認められ、不競法2条1項13号にいう「不正の利益を得る目的」を有していたと認めることができる。 (3)一審被告らの主張について 一審被告らは、本件需要者が日本語を解さない訪日外国人であること、原判決後に日本語の表記がウェブサイトから削除されたこと、原判決が「不正の利益を得る目的」を認定するために使用した甲6の1~3のウェブサイトの記載や同ウェブサイト上の写真、本件各動画が削除されていること及び打ち消し表示の存在からすると、原告文字表示及び「MARIO KART」表示と本件各ドメイン名は非類似であって、「不正の利益を得る目的」は認められないと主張する。 しかし、既に判示したとおり、本件需要者に日本語を解する者が含まれる上、前記(1)のとおり、本件各ドメイン名は、日本の国内外で著名である「MARIO KART」表示とも類似するものであるから、本件需要者が日本語を解さない訪日外国人であることに基づく一審被告らの上記主張は前提を欠くものである。また、原判決で認定の根拠とされた記載や写真が存在しなくなったからといって、原告文字表示及び「MARIO KART」表示の高い顧客吸引力を利用しようとする一審被告会社の上記意図がなくなったとは認められない。そして、打ち消し表示の存在によって、上記(1)、(2)の認定判断が左右されるものでないことは明らかである。 したがって、一審被告らの上記主張は採用することができない。 (4)小括 以上のとおり、一審被告会社は、不正の利益を得る目的をもって、一審原告の特定商品等表示である原告文字表示及び「MARIO KART」表示と類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるから、同行為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当し、一審原告の営業上の利益を害するものであるということができる。営業上の利益が侵害されない旨の一審被告らの主張を採用することはできない。 8 争点13(一審被告Yに対する損害賠償請求の可否)について (1)前記5、7で認定したとおり、一審被告会社は、周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示の高い顧客吸引力を利用して不当に利益を上げようとの意図で、一審被告会社の設立当初から敢えて「マリカー」との商号を用い、さらに本件商標に係る権利を取得し、本件各ドメイン名を利用するなどしていた。また、前記6のとおり、一審被告会社は、一審原告の著名な原告表現物に類似する本件各コスチュームを本件レンタル事業の利用者に貸与する等の不正競争行為も行っていた。 そして、証拠(甲6の3)及び弁論の全趣旨からすると、一審被告会社は、もともとは小規模な会社であったと認められる上、一審被告Yが一審被告会社の設立当初から現在まで一審被告会社の唯一の取締役兼代表取締役であったことも踏まえると、一審被告Yは、上記のような一審被告会社の商号の決定、本件商標に係る権利の取得、本件レンタル事業の遂行における被告標章第1及び被告標章第2並びに本件各ドメイン名の使用といった重要な事項に関する意思決定に関与していたものと認めることができる。 そして、一審被告Yが、前記4(1)のゲームに関心を有する需要者層に合致する比較的若年の成年者であり、かつ、テレビ番組の中で過去に「マリオカート」シリーズをプレイしていたことを自認していたこと(甲6の3、甲42の13、甲43の13、甲108の1・2)からすると、一審被告Yは、原告文字表示マリオカート、「MARIO KART」表示及び原告表現物の著名性や原告文字表示マリカーが「マリオカート」を示すものとして周知であることを知悉していたと認められ、前記3(1)で認定したとおり、一審被告Yは自ら「マリオ」のコスチュームを着用して本件レンタル事業の宣伝を行っている。 取締役としては、会社が不正競争行為を行わないようにする義務があるところ、上記検討によると、一審被告Yにはそのような義務に違反した点について、悪意又は少なくとも重過失があるものといえ、一審被告Yは、会社法429条1項に基づく責任を負うというべきである。 (2)一審被告らは、①被告標章第1については特許庁で一審原告からの本件商標に対する異議申立てが排斥され、原判決も不正競争行為該当性を否定するなど判断が微妙な事案であり、被告標章第2の使用行為も類似の裁判例がなく、一審被告Yが違法性を認識することは困難であった、②一審被告Yは、組合の全てから脱退した平成29年11月6日には本件各店舗の運営に関与していないし、仮に関与していたからといって直ちに悪意又は重過失があるわけではない、③本件訴訟提起後は、商号を変更し、本件各動画等を削除するなど無用な紛争を回避するために行動しているとして、一審被告Yについて悪意又は重過失は認められないと主張する。 しかし、原告文字表示、「MARIO KART」表示及び原告表現物についての一審被告Yの識は、上記(1)のとおりであったと認められ、原判決前であっても、被告標章第1、被告標章第2及び本件各ドメイン名を一審原告に無断で本件レンタル事業に用いることについて、法的問題があり得ることについて十分認識することができたというべきである。 そして、原判決で違法と判断された点を含めて、現在まで本件各店舗で不正競争行為が継続されていることは既に判示したとおりである。 一審被告らが主張する特許庁の決定(乙90)についても、同決定は、平成29年2月に本件商標の有効性について判断したものにすぎず、それによって本件レンタル事業全般について、適法に行い得るとの認識が基礎付けられるようなものではない。 また、一審被告会社が全組合から脱却した平成29年11月6日以降も、一審被告会社が、自らは又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業をしていたことは、前記3で認定したとおりである。 以上に照らすと、一審被告らの主張はいずれも採用することができない。 9 争点14(一審原告の損害額)について (1)一審被告らの責任 前記1~7で検討したとおり、一審被告会社は不正競争行為を行ったと認めることができ、このうち被告標章第1及び被告標章第2の使用は不競法2条1項2号所定の不正競争行為に、本件各ドメイン名の使用は同項13号所定の不正競争行為に、それぞれ該当し、これらの行為によって一審原告の営業上の利益が侵害されたものと認められる。また、一審被告会社には、これらの行為について少なくとも過失が認められる。したがって、一審被告会社は、一審原告に対し、不競法4条に基づき、一審原告の請求に係る一審被告会社が設立された平成27年6月4日から平成30年10月31日までの間に一審原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 また、一審被告Yについては、悪意又は重過失による任務懈怠が認められるから、一審被告Yは、一審被告会社と連帯して上記損害を賠償する責任を負う。 (2)LLP法15条に基づく抗弁について 一審被告らは、一審被告会社が各組合の行った不正競争行為について損害賠償責任を負うとしても、その範囲は、LLP法15条に基づき、最大でも一審被告会社が各組合の組合員として出資した金額(●●●●●●円)が限度となる旨主張する。 しかし、LLP法15条は「組合員は、その出資の価額を限度として、組合の債務を弁済する責任を負う。」と規定し、有限責任事業組合の事業活動によって生じた組合の債務について、組合員は出資の価額を限度として弁済を負う旨を定めているところ、一審原告は、一審被告会社の行為のみを請求原因として主張しており、各組合の行為によって同組合が損害賠償義務を負い、各組合の組合員である一審被告会社が組合の債務を弁済する債務を負うとの主張をしていないから、一審被告会社の上記主張は、同社の債務の発生を一部阻止する抗弁となるものではない。 したがって、一審被告らの上記主張は、時機に後れた攻撃防御方法に当たるか否か等、その余の点を判断するまでもなく、失当である。 10 争点15(反訴請求の可否)について 一審被告会社は、控訴審たる当審において平成30年12月26日に反訴を提起したが、相手方である一審原告は、上記反訴の提起に同意しない(民訴法300条1項)。 上記反訴請求の別紙コスチューム目録記載のコスチュームが、別紙反訴被告表現物目録記載の表現物の複製物かという争点については、原審でも争われた本件各コスチュームが、原告表現物の複製物かという争点と実質的に同じものであると解される。しかし、①上記のような反訴請求について確認の利益があるのか、②一審被告会社が公衆送信することを考えている写真又は映像にはどのようなものが含まれ、仮に上記各コスチュームが、複製物といえる場合に、どのような写真や映像を掲載することが複製権、公衆送信権の侵害となり得るのかという争点については、原審では当事者間で全く主張立証がされておらず、上記反訴の提起について相手方である一審原告の審級の利益を害さないものとは認められないから、一審原告の同意を不要とすることはできない。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、一審被告会社の上記反訴の提起は不適法である。 11 結論 よって、主文のとおり中間判決をする。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 森義之 裁判官 佐野信 裁判官 熊谷大輔 (別紙)店舗目録 第1 MariCAR店舗 1 品川第1号店 2 渋谷店 3 秋葉原第1号店 4 大阪店 5 沖縄店 第2 STREET KART店舗 1 品川第2号店 2 秋葉原第2号店 3 東京ベイBBQ店 4 横浜店 5 京都店 6 浅草店 第3 その他の店舗 1 富士河口湖店 2 六本木店 (別紙)反訴被告表現物目録 |
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