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【事件名】ハードオフのピクトグラム事件 【年月日】令和元年5月21日 東京地裁 平成29年(ワ)第37350号 標章使用差止請求反訴事件 (口頭弁論終結日 平成31年1月18日) 判決 反訴原告 有限会社エス・オー・ディ A 上記訴訟代理人弁護士 藤巻元雄 同 犬井純 上記補佐人 牛木理一 反訴被告株式会社 ハードオフコーポレーション B 上記訴訟代理人弁護士 高橋善樹 同 伊藤真 同 平井佑希 同 丸田憲和 主文 1 反訴原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は反訴原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1(1)反訴被告は、別紙反訴原告標章目録1ないし5記載の各標章及び同反訴原告ピクトグラム目録0、同1ないし5記載の各ピクトグラム並びに同反訴原告関連標章目録0、同1ないし4記載の各標章を展示し、宣伝用のカタログ、パンフレット、名刺、封筒に付して頒布し、車輌に表示し、テレビコマーシャル、ウェブサイトに掲出してはならない。 (2)反訴 被告は、その本店及び事務所、店舗、倉庫、車輌、ロードサイド看板から、別紙反訴原告標章目録1ないし5記載の各標章及び同反訴原告ピクトグラム目録0、同1ないし5記載の各ピクトグラム並びに同反訴原告関連標章目録0、同1ないし4記載の各標章を抹消せよ。 2(1)反訴被告は、別紙反訴被告標章目録1ないし5記載の各標章を展示し、宣伝用カタログ、パンフレット、名刺、封筒に付して頒布し、車輌に表示し、テレビコマーシャル、ウェブサイトに掲出してはならない。 (2)反訴被告は、その本店及び事務所、店舗、倉庫、車輌、ロードサイド看板から、別紙反訴被告標章目録1ないし5記載の各標章を抹消せよ。 3(1)反訴被告は、別紙反訴原告関連標章追加目録0記載の各標章及び同反訴原告関連標章追加目録1記載の各標章並びに同反訴原告ピクトグラム追加目録0及び1記載の各ピクトグラムを展示し、宣伝用のカタログ、パンフレット、名刺、封筒に付して頒布し、車輌に表示し、テレビコマーシャル、ウェブサイトに掲出してはならない(なお、平成30年4月27日付け反訴請求の趣旨拡張の申立書には「反訴原告ピクトグラム追加目録0記載のピクトグラム」と記載されているが、これは「反訴原告ピクトグラム追加目録0及び1記載の各ピクトグラム」の明白な誤記であると認める。)。 (2)反訴被告は、その本店及び事務所、店舗、倉庫、車輌、ロードサイド看板から、別紙反訴原告関連標章追加目録0記載の各標章及び同反訴原告関連標章追加目録1記載の各標章並びに同反訴原告ピクトグラム追加目録0及び1記載の各ピクトグラムを抹消せよ。 4(1)反訴被告は、別紙反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムを展示し、宣伝用カタログ、パンフレット、名刺、封筒に付して頒布し、車輌に表示し、テレビコマーシャル、ウェブサイトに掲出してはならない。 (2)反訴被告は、その本店及び事務所、店舗、倉庫、車輌、ロードサイド看板から、別紙反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムを抹消せよ。 5 訴訟費用は反訴被告の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、別紙反訴原告標章目録、同反訴原告関連標章目録及び同反訴原告関連標章追加目録記載の各標章(ただし、反訴原告標章目録0記載の標章を除く。)並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録及び同反訴原告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムの著作権者であると主張する反訴原告が、反訴原告が作成した上記各標章及びピクトグラム並びにそれらに類似等する反訴被告が作成等した別紙反訴被告標章目録記載の各標章(ただし、反訴被告標章目録0記載の標章を除く。)及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムを使用する反訴被告に対し、反訴原告及び反訴被告間の合意、著作権法112条又は商標法29条に基づき、別紙反訴原告標章目録、同反訴原告関連標章目録、同反訴原告関連標章追加目録及び同反訴被告標章目録記載の各標章並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録、同反訴原告ピクトグラム追加目録及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムについて、展示その他の使用行為の差止め及び店舗における表示の抹消等を求める事案である。 なお、反訴被告は、反訴原告に対し、本件訴訟で対象とされている標章及びピクトグラムの一部について著作権法112条1項及び2項に基づく差止請求権が存在しないことの確認を求める債務不存在確認請求訴訟(当庁平成29年(ワ)第24964号)を提起していたが、第7回弁論準備手続期日において同訴訟を取り下げ、反訴原告はそれに同意した。 2 前提事実(争いのない事実については証拠番号を付さない。以下同じ。) (1)反訴原告代表者は、昭和62年頃、デザイン事務所エス・オー・ディを開設し、平成5年頃に同事務所を法人化して反訴原告を設立し、それ以降、インテリア、家具、地元企業のロゴ及びサイン、広告、印刷物などのデザインを行っていた。反訴原告代表者は、公益社団法人日本インテリアデザイナー協会の正会員で、ジャパンデザイナーズにも登録している。(乙1の1、乙53の1、弁論の全趣旨) 反訴被告は、古物の売買及び受託販売等を目的とする株式会社である。反訴被告は、日本全国で、映像機器等を取り扱う「ハードオフ」、ブランド品、衣類、生活雑貨等を取り扱う「オフハウス」、玩具等を取り扱う「ホビーオフ」、衣類等を取り扱う「モードオフ」、車用品等を取り扱う「ガレージオフ」、酒類等を取り扱う「リカーオフ」という名称を用いて、商品の買取り及び販売を行う店舗を運営している。各業態の店舗数は、平成29年5月31日時点でハードオフが343店(直営店89店、フランチャイズ店254店)、オフハウスが314店(直営店85店、フランチャイズ店229店)、モードオフが28店(直営店24店、フランチャイズ店4店)、ガレージオフ16店(直営店9店、フランチャイズ店7店)、ホビーオフが113店(直営店35店、フランチャイズ店78店)、リカーオフが5店(直営店4店、フランチャイズ店1店)、ブックオフが51店(直営店51店、フランチャイズ店0店)であった。 (2)反訴原告は、平成4年10月以降平成29年5月31日までに反訴被告が開店した全ての反訴被告の直営店及びフランチャイズ店(以下、これらを「既存店舗」ということがある。)について、開店等に当たっての店舗デザイン設計監理業務の委託を受け、既存店舗の店舗デザイン設計、監理業務を行った。また、反訴原告は、反訴被告のために、既存店舗等で使用する別紙反訴原告標章目録0、1ないし5記載の各標章(以下、個別の標章を「反訴原告標章0」などと表記することがある。)、別紙反訴原告ピクトグラム目録0、1ないし5記載の各ピクトグラム(以下、個別のピクトグラムを「反訴原告ピクトグラム0−01」などと表記することがある。)、別紙反訴原告関連標章目録0、1ないし4記載の各標章(以下、個別の標章を「反訴原告関連標章0−1」などと表記することがある。)、別紙反訴原告関連標章追加目録0、1記載の各標章、別紙反訴原告ピクトグラム追加目録0、1記載の各ピクトグラムを作成し、これらを反訴被告に納品した(以下、反訴原告が作成した反訴原告標章0を除く上記標章の全てを「反訴原告標章」と、反訴原告が作成した上記ピクトグラムの全てを「反訴原告ピクトグラム」と、それぞれ総称することがある。)。 (3)反訴被告は、平成29年6月1日以降に新規出店した直営店及びフランチャイズ店(以下「新規店舗」と総称する。)では、反訴原告ではなく、反訴原告を同年5月20日に退社したCが設立した株式会社アークスペース(以下「アークスペース」という。)に対し、その開店等に当たっての店舗デザイン設計監理業務を委託するようになった。 (4)反訴被告は、平成29年6月1日以降、使用する標章やピクトグラムの一部を変更し、新規店舗では、反訴原告が作成した標章やピクトグラムを使用せず、反訴被告が新たに作成した標章やピクトグラムを使用する方針を決定した。 (弁論の全趣旨) (5)反訴被告は、既存店舗においては、反訴原告標章(ただし、反訴原告関連標章1−6を除く。後期第3、1(12)アのとおり反訴原告が反訴原告関連標章1−6を完成させ、それを反訴被告に対して納品した事実が認められるものの、反訴被告は、反訴原告関連標章1−6の使用等を否認し、これを使用している事実を認めるに足りる証拠はない。)及び反訴原告ピクトグラムを、その店舗、看板、店内、車輌などに複製、展示し、カタログやパンフレット等の配布物に複製、頒布し、テレビコマーシャルやウェブサイトに掲出することなどによりしており、現在も使用している。 他方、反訴被告は、新規店舗では、反訴原告が作成した反訴原告標章ではなく、別途作成等した別紙反訴被告標章目録1ないし5記載の各標章(以下、個別の標章を「反訴被告標章1」などと表記する。なお、反訴原告標章3及び4と反訴被告標章3及び4は同一のものである。)、別紙反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラム(以下、個別のピクトグラムを「反訴被告ピクトグラム0−01」などと表記する。)を使用している(以下、反訴被告が作成した反訴被告標章0を除く上記標章の全てを「反訴被告標章」と、反訴被告が作成等した上記ピクトグラムの全てを「反訴被告ピクトグラム」と、それぞれ総称することがある。)。 3 争点 (1)反訴被告と反訴原告の間において、反訴被告が反訴原告に対する店舗デザイン設計監理業務の委託を止めた場合には、反訴原告の反訴被告に対する反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの無償使用許諾が終了し、反訴被告が反訴原告に上記各標章や各ピクトグラムの制作料及び使用料を支払うという合意があったか(争点1) (2)ア 反訴原告標章が著作物(著作権法2条1項1号)に該当するか(争点2−1) イ 反訴被告標章の作成、使用等が反訴原告標章の著作権(複製権又は翻案権)を侵害するか(争点2−2) (3)ア 反訴原告ピクトグラムが著作物に該当するか(争点3−1) イ 反訴被告ピクトグラムの作成、使用等が反訴原告ピクトグラムの著作権(複製権又は翻案権)を侵害するか(争点3−2) (4)反訴原告と反訴被告の間において、反訴原告が作成したロゴ及びピクトグラムの制作料及び使用料等は、「店舗デザイン設計一式」などの名目の料金に含まれており、その支払がされた後は、反訴被告が当該ロゴ及びピクトグラムを使用し続けることを認める旨の合意(包括的使用許諾)があったか(争点4) (5)反訴原告は、反訴被告との間における反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについての無償使用許諾契約を、反訴被告の債務不履行を理由として解除することができるか(争点5) 4 争点に関する当事者の主張 (1)争点1について (反訴原告の主張) 反訴原告と反訴被告の間には、反訴原告が反訴被告から直営店、フランチャイズ店の店舗デザイン設計監理業務の委託を止めることを停止条件として、反訴被告が反訴原告に対して標章やピクトグラムの制作料、使用料を支払う旨の合意が存在していた。 この合意は、反訴原告が反訴被告から直営店及びフランチャイズ店の店舗デザイン設計監理業務の委託を受ける限り、反訴原告は反訴被告に対して上記各標章、ピクトグラムの使用を無償で許諾し、これらの制作料、使用料を請求しないという合意、反訴被告が反訴原告に直営店及びフランチャイズ店の店舗デザイン設計監理業務の委託を止めた場合には、反訴原告の反訴被告に対する上記各標章、ピクトグラムの無償使用許諾は終了し、反訴被告が反訴原告にそれらの制作料、使用料を支払うという合意を内容としている(以下、反訴原告が主張する上記合意を「反訴原告主張合意」という。)。 そして、反訴被告は、平成29年6月1日以降、反訴被告の店舗デザイン設計監理業務をアークスペースに委託したのであるから、反訴原告主張合意の内容に照らし、反訴原告の反訴被告に対する無償使用許諾は終了し、反訴被告は新規店舗においてはもとより、既存店舗でも反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを使用できない。また、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムは、いずれも反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムと同一であるか、又は著しく類似するものである。 したがって、反訴原告は、反訴原告主張合意に基づき、反訴被告に対し、反訴原告標章、反訴被告標章、反訴原告ピクトグラム及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを求める権利を有している。 (反訴被告の主張) 反訴被告は、反訴原告に対し、ハードオフやオフハウスなどの業態ごとにチェーン展開することが予定されている店舗のデザインを包括して依頼したものであり、当該店舗の店舗デザインに際して新たなロゴやピクトグラムが必要になる場合には、反訴原告においてそれらを作成することが当然に予定されていた。すなわち、各業態の第1号店の店舗デザインにおいては当然に新たなロゴやピクトグラムを作成することになり、第2号店以降においても必要に応じて新たなロゴやピクトサインを追加して作成することが依頼の内容とされていた。そして、反訴原告と反訴被告との間では、そのようにして作成されたロゴやピクトグラムはその後に開店する店舗でも使用されることが予定されていた。 反訴原告は、上記の事情を認識した上で反訴被告に対して「店舗デザイン設計一式」などの名目で料金を請求し、反訴被告はこれを支払い、その後は反訴原告が作成したロゴやピクトグラムについて何ら制約を受けることなく使用しており、反訴原告からそれらの使用料等についての請求を受けることはなかった。 これらの事情に照らせば、反訴原告と反訴被告の間では、反訴原告が作成したロゴ及びピクトグラムの制作料及び使用料等は「店舗デザイン設計一式」などの名目の料金に含まれており、その支払がされた後は、当該ロゴ及びピクトグラムについて反訴被告が包括的に使用することを認める旨の合意がなされていたというべきである(以下、反訴被告が主張する上記の合意を「反訴被告主張合意」という。)。 (2)争点2について ア 争点2−1について (反訴原告の主張) 反訴原告標章は、別紙「反訴原告標章説明文」の記載のとおり、いずれも作成者の個性が発揮されたものであり、著作物であるといえる。仮に、反訴被告が主張するように、著作物として保護を受けるためには美的創作性を感得できることが必要であると解しても、反訴原告標章はいずれも美的創作性を感得できるから、著作物であるという結論は左右されない。 (反訴被告の主張) 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定されており、そこでは個性が現れているか否か(創作性)だけでなく、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」ことが必要とされている。個性が発揮されていれば著作物であるという反訴原告の主張は失当である。 反訴原告標章の著作物性は、そのデザイン的要素において「美術」の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できるか否かによって判断されるべきである。そして、反訴原告が、反訴原告標章を作成するに際して工夫したなどと主張する点は、いずれも文字を見やすく適切に配置するという文字の情報伝達機能を実現するための工夫に過ぎず、「美術」の著作物と同視し得る美的創作性を感得できるものではない。 また、「H君」(「H」の文字を人間に見立て、両足、顔、耳、口、両手を連想させる装飾を施した部分をいう。)(反訴原告標章1、反訴原告関連標章1−1ないし1−4、反訴原告標章2、反訴原告関連標章2−1ないし2−4)、ボックスボイテル型の瓶のシルエット(反訴原告標章5)、エレキギターの黒塗りイラスト(反訴原告関連標章0−8)については、仮に美術の範囲に属するものであったとしても、いずれもありふれた表現であって創作性が認められない。 イ 争点2−2について (反訴原告の主張) 反訴被告標章1及び2は、反訴原告標章1及び2の「H君」を反訴原告が作成した書体の「H」の文字に置き換えただけであり、全体の文字の幅、文字の書体や色、背景の色は同じであるから、反訴被告標章1及び2は反訴原告標章1及び2の複製物又は翻案物である。 反訴被告標章3及び4は、反訴原告標章3及び4と同一であり、それらの複製物である。 反訴被告標章5は、反訴原告標章5から瓶のシルエットを除いた点以外は同一であるし、また、反訴原告標章5−2と同一であるから、それらの複製物である。 これらの事情に照らせば、反訴被告標章の作成、使用等は、反訴原告標章の著作権(複製権又は翻案権)を侵害するものであるといえる。 (反訴被告の主張) 反訴被告標章が反訴原告標章と同一又は類似のものである事実は認め、法的評価は争う。 (3)争点3について ア 争点3−1について (反訴原告の主張) 反訴原告ピクトグラムは、別紙「反訴原告ピクトグラム説明文」及び「反訴原告追加ピクトグラム説明文」の記載のとおり、いずれも作成者の個性が発揮されているから、著作物であるといえる。仮に、反訴被告が主張するように、著作物として保護を受けるためには美的創作性を感得できることが必要であるとしても、反訴原告ピクトグラムは実用的機能を離れてそれ自体としても美的創作性を感得できるものであるから、著作物であるといえる。 (反訴被告の主張) 反訴原告ピクトグラムの著作物性は、客観的外形的に観察して、それを見る者の審美的要素に働きかける創作性があり、純粋美術と同視し得る程度のものであるか否かにより判断されるべきである。 そして、反訴原告が、反訴原告ピクトグラムを作成するに際して工夫したなどと主張する点については、対象物の選択はアイデアにすぎず、その点を措くとしてもその対象物の選択はありふれたものであるし、対象物の表現方法や配置、配色等もありふれたものであるから、純粋美術と同視し得る程度にそれを見る者の審美的要素に働きかける創作性があるとはいえず、反訴原告ピクトグラムは著作物であるとはいえない。 イ 争点3−2について(反訴原告の主張) 反訴被告ピクトグラムは、別紙「反訴原告ピクトグラム対比表」記載のとおり、いずれも反訴原告ピクトグラムを模倣したに過ぎないものであるから、反訴被告ピクトグラムの使用等は、反訴原告ピクトグラムの複製権又は翻案権を侵害するものである。別紙「反訴原告ピクトグラム対比表」に記載がない反訴被告ピクトグラム0−23と反訴原告ピクトグラム0−22の対比についても同様である。 (反訴被告の主張) 反訴原告ピクトグラムに著作物性が認められるとしても、創作性が低い著作物であるから、デッドコピー又はそれに類する程度のものに限り保護に値するというべきである。 別紙「反訴被告ピクトグラム対比説明書」記載のとおり、反訴被告ピクトグラムと反訴原告ピクトグラムの具体的な表現はいずれも異なるものであり、反訴被告ピクトグラムの表現から反訴原告ピクトグラムの表現の本質的な特徴を直接感得することはできないから、反訴被告ピクトグラムの作成や使用等は、反訴原告ピクトグラムの複製権又は翻案権を侵害するものではない。別紙「反訴被告ピクトグラム対比説明書」には記載がない反訴被告ピクトグラム0−23と反訴原告ピクトグラム0−22の対比についても同様である。 (4)争点4について (反訴被告の主張) 争点1における反訴被告の主張のとおり、反訴原告と反訴被告の間では、反訴被告主張合意が成立しており、反訴被告は、反訴原告が作成したロゴ及びピクトグラムを使用し続けることができる。(反訴原告の主張)争点1における反訴原告の主張のとおり、反訴原告と反訴被告の間では、反訴原告主張合意が成立していて、反訴被告主張合意は成立していない。 (5)争点5について (反訴原告の主張) 反訴被告が、平成29年6月1日以降、アークスペースに対して店舗デザイン設計監理業務を依頼したこと及び反訴被告が同日以降に反訴原告標章、反訴原告関連標章及び反訴原告ピクトグラムの使用料を支払わないことは反訴被告の債務不履行である。 反訴原告は、平成30年3月8日の弁論準備手続期日における反訴原告第3準備書面の陳述をもって、反訴被告に対し、上記各標章及びピクトグラムについての無償使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした。 (反訴被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 (1)反訴被告代表者は、プレイヤー、スピーカー、カラーモニター、パソコンなどを扱う反訴被告(当時の商号は株式会社サウンド北越)やパソコンを販売する株式会社北越テクニカを経営していた。(乙7、乙53の1) 反訴被告及び株式会社北越テクニカは、新潟県内(新発田市、新潟市、三条市)に複数の店舗を出店していたが、平成4年頃になると、売上げが減少した。そこで、反訴被告代表者は、「ブックオフ」にフランチャイジーとして加盟するとともに、反訴被告が運営する店舗名をハードオフとすることを計画した。(争いがない、乙25、乙32の1及び2、反訴被告代表者〔2、9頁〕) (2)反訴原告代表者は、昭和62年頃、デザイン事務所を開設し、平成5年頃、反訴原告を設立して、各種のデザインの業務を行っていた。 反訴原告代表者と反訴被告代表者は、昭和62年頃、勉強会で知り合い、その後、反訴原告代表者は当時、サウンド北越という商号であった反訴被告で使用されていたマークの改良を提案し、反訴被告は、それらのマークを採用して20万円のデザイン料を支払った。反訴被告が反訴原告に対しそれらのマークの使用料を支払うことはなかった。反訴原告は、平成元年9月頃、反訴被告代表者から、同年12月に開店する予定の反訴被告の新潟紫竹山店の外部サインのデザイン作成の依頼を受けた。(以上につき、前提事実(1)、乙33の1ないし3、乙53の2、反訴原告代表者〔36頁〕、反訴被告代表者〔1、2、9頁〕、弁論の全趣旨) (3)反訴被告代表者は、平成4年頃、反訴原告に対し、反訴被告は「ブックオフ」にフランチャイジーとして加盟して、ハードオフという名称で家電のリサイクル品を扱う店舗を開きたいと考えており、それを手伝ってほしいこと、ハードオフでは原色のビニールクロスを使ってできるだけ安くカラフルで楽しい店にしてほしいことなどを伝えた。(反訴被告代表者〔2、3頁〕、乙53の2、弁論の全趣旨) (4)反訴原告は、平成4年10月頃、反訴被告の依頼を受けて、ハードオフの直営1号店(紫竹山店)の店舗及び看板のデザイン設計や、ハードオフで使用するロゴの作成を始め、同年12月までに、反訴被告に対し、ロゴである反訴原告標章0、反訴原告関連標章0−1ないし0−5の各標章の作成と、その店舗及び看板のデザイン設計を行い、これらを反訴被告に納品した。この段階では、反訴原告と反訴被告との間で、ロゴや店舗デザインの制作料は決まっていなかった。(乙53の2、反訴被告代表者〔3ないし5頁〕) 平成5年2月11日、ハードオフの直営1号店(紫竹山店)が開店した。(反訴原告代表者〔5頁〕、反訴被告代表者〔3頁〕) 反訴被告は、上記直営1号店を開店した直後に、直営2号店(寺尾前通店)及び直営3号店(北越三条店)の出店を決定し、反訴原告に対してそれらの店舗デザインを依頼した。(乙53の2) 反訴原告は、上記直営1号店について、平成5年3月26日、反訴被告に対し、「看板・店舗デザイン料一式」として、反訴被告代表者が提示した50万円を請求し、翌月頃その支払を受けた。(乙12の1、反訴原告代表者〔4、5頁〕) 反訴原告は、上記直営2号店について、反訴被告代表者の提示に基づき、平成5年4月30日に「サイン看板デザイン料一式」として35万円、同年5月31日に「店舗内装デザイン料一式」として35万円をそれぞれ請求し、翌月頃その支払を受けた。(乙12の2及び3、乙53の2) 反訴被告代表者は、この頃、反訴原告代表者に対し、今後もハードオフの店舗を開店していく予定であることを伝え、その協力を依頼した。(反訴被告代表者〔12頁〕) (5)反訴原告と反訴被告は、反訴原告が反訴被告のフランチャイズ店の店舗デザイン設計監理業務を行うことを前提として、その料金について協議をし、平成12年頃までに、店舗デザイン設計料(工事業者への入札説明、入札事務、落札業者との交渉、工事業者との調整、監理業務等を含む。)や看板デザイン設計料(標章やピクトグラムを外部の看板に落とし込む業務を含む。)の取り決めをした。具体的には、単独業態の店舗デザイン設計監理料は一式70万円とし、2業態が同一建物内で複合の場合は一式100万円とし、3業態が同一建物内で複合の場合は一式130万円とし、4業態が同一建物内で複合の場合は一式150万円とし、売場面積が300坪を超える場合又は複層階の場合はプラス20万円とし、売場面積が300坪を超えかつ複層階の場合はプラス30万円とし、既存店舗を店舗改装する場合のデザイン設計監理料は一式30万円以上とするなどの取り決めをした。(乙9の1) フランチャイズ店の店舗デザイン料は、反訴原告とフランチャイズ加盟店との間の契約により、上記の取り決めに従って定められ、その金額が値下げされることはなく、反訴原告は、それらの設計監理料の支払を受けた。(乙42の1及び2、証人D〔2、3頁〕、反訴原告代表者〔7頁〕) 反訴被告の直営店の店舗デザイン料は、反訴原告と反訴被告の間でその都度協議して決定し、契約書は作成されなかった。反訴原告は、直営店の店舗設計デザイン料について、平成15年頃から見積りを提出するようになったが、見積りに記載した金額から概ね10パーセントから30パーセントの範囲で値引きされることが多かった。(乙18の1ないし21、証人D〔3、4頁〕、反訴被告代表者〔5、13頁〕、弁論の全趣旨) (6)反訴原告は、反訴被告の店舗で扱う商品を示す表示として、平成7年頃までは文字で記載された説明文の中にイラストを添えるような形の表示を作成していたが、平成7年頃、イラストを中心とした反訴原告ピクトグラム0−01ないし0−35を作成した。反訴被告は、平成9年頃には上記の各ピクトグラムを店舗の外壁にも大きく表示するようになった。(乙12の7ないし11、乙53の2、反訴原告代表者〔6頁〕、反訴被告代表者〔4頁〕) (7)反訴被告は、平成10年初旬、反訴原告に対し、一般的なリサイクル品を取り扱う「オフハウス」を展開することとし、その1号店の店舗及び看板のデザイン設計や印刷物のデザイン設計などを依頼した。(乙53の2)反訴原告は、平成10年3月初旬頃、反訴被告に対し、反訴原告標章1、反訴原告関連標章1−1ないし1−4、反訴原告ピクトグラム1−04、1−05、1−07、1−08、1−10、1−13、1−20、1−23、1−24(合計9個)を作成し、納品した。(乙34の4、乙53の2、反訴原告代表者〔9頁〕) 反訴原告は、平成10年3月下旬頃、オフハウスのフランチャイズ1号店(オフハウス戸祭店)の店舗及び看板のデザイン設計などを完了し、同年3月31日、反訴被告に対し、「店舗デザイン設計料および印刷物デザイン料一式」として100万円を請求した。(乙13の1) 反訴被告は、平成10年11月頃、反訴原告に対し、オフハウスの直営1号店(オフハウス柏崎店)の店舗及び看板のデザイン設計などを依頼し、反訴原告は、同年9月下旬頃にそれらの設計などを完了し、同月30日、反訴被告に対し、「内外装及びサイン工事のデザイン設計料一式」として60万円を請求した。(乙13の2) 反訴原告は、オフハウスの取扱商品が拡大する都度、新たなピクトグラムを作成してこれを反訴被告に納品しており、平成24年頃には、オフハウスで使用されるピクトグラムは反訴原告ピクトグラム1−01ないし1−25の合計25個になっていた。(乙53の2) (8)反訴被告は、平成13年5月頃、反訴原告に対し、洋服を中心として取り扱う「モードオフ」を全国展開することとし、その直営1号店(古町店、モードオフとブックオフの2店舗複合店)の店舗デザイン設計及び上記直営1号店で使用するロゴなどの作成を依頼した。(乙53の2、反訴原告代表者〔14頁〕) 反訴原告は、平成13年7月頃、反訴被告に対し、反訴原告標章4−0と反訴原告ピクトグラム4−01ないし4−08を作成し、これらを納品した。(乙53の2、反訴原告代表者〔14頁〕) 反訴原告は、上記直営1号店の店舗のデザイン設計などを完了し、平成13年7月31日、反訴被告に対し、「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料一式」として70万円を請求し、その支払を受けた。(乙16の1、反訴原告代表者〔15頁〕) 反訴被告では、平成21年5月頃、新しいモードオフのイメージを出すこととし、反訴被告は、反訴原告に対し、新しいモードオフのロゴの作成と新潟駅南口店(モードオフとブックオフの複合店)の店舗デザイン設計を依頼した。(乙53の2、反訴原告代表者〔15頁〕) 反訴原告は、約80種類のロゴを作成したものの、採用には至らず、オリジナルの書体を創作するなどして、平成21年7月頃に反訴原告標章4及び反訴原告関連標章4−1を作成し、反訴被告に納品した。(乙3の1、反訴原告代表者〔15頁〕) また、反訴原告は、平成21年9月下旬、上記新潟駅南口店の店舗デザインを完了し、同月30日、反訴被告に対し、「新築工事デザイン設計料一式」として100万円を請求し、その支払を受けた。(乙16の2、乙53の2) (9)反訴被告は、平成13年6月頃、反訴原告に対し、車用品を取り扱う「パーツランド」を展開することとし、その1号店として、フランチャイズ店(八王子堀之内店)の店舗デザイン設計及び上記1号店で使用するロゴなどの作成を依頼した。(乙53の2、反訴原告代表者〔10頁〕) 反訴原告は、平成13年8月下旬頃、反訴被告に対し、「パーツランド」のロゴやピクトグラムを引き渡した。(乙14の1及び2、乙53の2、反訴原告代表者〔9ないし11頁〕) 反訴原告は、上記1号店について、平成13年10月31日、反訴被告に対し、「基本デザイン料一式」として30万円を請求した。(乙14の3、反訴原告代表者〔11頁〕) 反訴被告代表者は、パーツランドという名前が気に入らないなどと述べ、平成14年2月頃、反訴原告に対し、パーツランドとは別に車用品のリユース店を全国展開するためのロゴ(ガレージオフ)や直営1号店(新潟近江店)の店舗及び看板デザイン設計などを依頼し、反訴原告は、反訴原告標章3や店舗及び看板デザインを作成して反訴被告に納品し、同年4月30日、反訴被告に対して「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料一式」として50万円を請求して支払を受けた。(乙14の4、乙53の2、弁論の全趣旨) 反訴被告は、上記のパーツランドの八王子堀之内店のロゴを、ガレージオフに変更した。(乙53の2) 反訴被告は、平成14年3月頃、反訴原告に対し、ガレージオフの直営2号店(新発田店)の店舗及び看板のデザイン設計を依頼し、反訴原告は、これらを同年5月下旬に完成させて、反訴被告に納品し、同月31日、反訴被告に対して「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料一式」として50万円を請求して支払を受けた。(乙14の5、乙53の2、弁論の全趣旨) 反訴被告は、平成14年6月頃、反訴原告に対し、ガレージオフとハードオフの複合店であるフランチャイズ店(庄和店)の店舗及び看板のデザイン設計を依頼し、反訴原告は、これらを同年7月頃に完成させて納品し、同月31日、「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料一式」として90万円、交通費として10万円、合計100万円を請求してその支払を受けた。(乙14の6、乙53の2、弁論の全趣旨) 反訴原告は、反訴被告の依頼を受けて、反訴原告関連標章3−1ないし3−3、反訴原告ピクトグラム3−01ないし3−08を作成し、反訴被告に納品した。(弁論の全趣旨) (10)反訴被告は、平成15年12月頃、反訴原告に対し、おもちゃを取り扱う「ホビーオフ」を全国展開することとし、直営店3店舗(竹尾店はオフハウス店、ホビーオフ店及びボックスショップ店の複合店、長岡古正寺西店はホビーオフ店及びガレージオフ店の複合店、新潟近江店は単独店である。)の店舗デザイン設計を依頼するとともに、全国展開をするためのロゴなどの作成を依頼した。(乙53の2、反訴原告代表者〔13頁〕) 反訴原告は、平成16年2月頃、反訴原告標章2、反訴原告関連標章2−1ないし2−4及び反訴原告ピクトグラム2−01ないし2−12を作成し、反訴被告に納品した。(乙35、乙53の2、反訴原告代表者〔13頁〕) 反訴原告は、平成16年4月下旬、上記直営店3店舗の店舗デザイン設計などを完成させ、それらを反訴被告に納品し、同年4月30日、反訴被告に対して「デザイン設計監理料一式」として80万円(竹尾店)、100万円(長岡古正寺西店)、50万円(新潟近江店)をそれぞれ請求してその支払を受けた。(乙15の1、乙53の2、反訴原告代表者〔13頁〕) 反訴被告は、平成16年3月頃、反訴原告に対し、ホビーオフ店、ボックスショップ店及びブックオフ店の3店舗複合店であるフランチャイズ店(八王子大和田店)の店舗及び看板のデザイン設計監理を依頼し、反訴原告は、これを同年5月下旬に完成させて納品し、同月31日に「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料の前金一式」として60万円、交通費の前金として5万円、同年6月30日に「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料の後金一式」として60万円、交通費の後金として5万円の合計130万円を反訴被告に対して請求し、その支払を受けた。(乙15の2及び3、乙53の2、弁論の全趣旨) 反訴原告は、反訴被告の依頼を受けて、反訴原告ピクトグラム2−13ないし2−24を作成し、反訴被告に納品した。(弁論の全趣旨) (11)反訴被告は、平成25年3月頃、反訴原告に対し、酒類を扱う「リカーオフ」を全国展開することとし、直営1号店(高円寺純情商店街店)の店舗デザイン設計を依頼するとともに、全国展開をするためのロゴなどの作成を依頼した。(乙53の2、反訴原告代表者〔16頁〕) 反訴原告は、平成25年5月頃、反訴原告標章5及び5−2、反訴原告ピクトグラム5−01ないし5−06を作成し、反訴被告に納品した。(乙53の2) 反訴原告は、上記直営1号店の店舗デザイン設計などを完成させ、それらを反訴被告に納品し、平成25年6月30日、反訴被告に対して「店舗内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料一式」として50万円、交通費一式として10万円を請求し、その支払を受けた。(乙17の1、乙53の2) 反訴被告は、平成26年8月頃、反訴原告に対し、リカーオフ店のフランチャイズ1号店(大須万松寺通店)の店舗デザイン設計監理を依頼し、反訴原告はこれを同年10月頃に完成させて納品し、同年10月31日に「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料の前金一式」として35万円、交通費の前金として10万円、同年11月30日に「内外装及びサイン工事のデザイン設計監理料の後金一式」として35万円、交通費の後金として10万円の合計90万円を反訴被告に対して請求し、その支払を受けた。(乙17の2及び3、乙53の2) (12)反訴被告は、上記以外にも、下記のとおり、新しいタイプの店舗やコーナーを開設した際に、反訴原告に対してロゴやピクトグラムの作成を依頼した。 ア 反訴被告は、平成24年12月又は平成25年1月頃、反訴原告に対してオフハウス店内に食品コーナーとリカーコーナーを設けるためのロゴやピクトグラムの作成を依頼し、反訴原告は、平成25年1月頃、反訴原告関連標章1−5及び1−6(別紙反訴原告関連標章追加目録1記載)、反訴原告ピクトグラム1−26ないし1−36(別紙反訴原告ピクトグラム追加目録1記載)を完成させて納品した。(乙22、乙53の2、反訴原告代表者〔17頁〕) イ 反訴被告は、平成26年3月頃、反訴原告に対し、ハードオフのオーディオサロン1号店を出店するためのロゴの作成を依頼し、反訴原告は、反訴原告関連標章0−6及び0−7(別紙反訴原告関連標章追加目録0記載)を完成させて反訴被告に納品した。(乙23の1、乙53の2、反訴原告代表者〔17頁〕) ウ 反訴被告は、平成28年1月中旬、反訴原告に対し、ハードオフの楽器スタジオ店1号店を出店するためのロゴやピクトグラムの作成を依頼し、反訴原告は、反訴原告関連標章0−8及び0−9(別紙反訴原告関連標章追加目録0記載)、反訴原告ピクトグラム0−36ないし0−45を完成させて反訴被告に納品した。(乙23の1、乙53の2、反訴原代表者〔18頁〕) エ 反訴被告は、平成28年2月頃、反訴原告に対し、ハードオフのレトロコーナーを作るためのピクトグラムの作成を依頼し、反訴原告は反訴原告ピクトグラム0−46ないし0−51を完成させて反訴被告に納品した。(乙53の2、反訴原告代表者〔18頁〕) これらのピクトグラムについて、反訴原告は、平成28年3月、反訴被告代表者に事前に打診することなく、反訴被告に対してその制作料として20万円の見積りを提出したが、反訴被告はその支払を拒否した。(乙18の17、乙53の2、証人D〔15頁〕、反訴原告代表者〔18頁〕、反訴被告代表者〔30頁〕) オ 反訴被告は、平成28年8月頃、反訴原告に対し、ハードオフのオーディオサロン2号店と楽器スタジオ2号店の複合店である吉祥寺店を開店するためのピクトグラムの作成を依頼し、反訴原告は反訴原告ピクトグラム0−52ないし0−67(別紙反訴原告ピクトグラム追加目録0記載)を完成させて反訴被告に納品した。(乙53の2、反訴原告代表者〔19頁〕) (13)反訴原告は、平成26年以降、経営状態が苦しくなり、平成28年頃、反訴被告に対し、前記で取り決められたフランチャイズ店についての店舗デザイン設計監理料の値上げを要請した。(証人D〔4頁〕、反訴原告代表者〔20頁〕) その際、反訴原告代表者は、反訴被告代表者に対し、反訴被告からの要請で反訴原告が費用を負担して行ったアメリカへの視察旅行が有益ではなかったこと、アルバイトが出席するような細かな打合せまで反訴原告に出席を求めないでもらいたいこと、反訴被告の野球大会やマラソン大会に出席を求めないでもらいたいことなどを伝えた。(反訴被告代表者〔15頁〕) 反訴原告と反訴被告は、平成28年8月25日、前記の店舗デザイン設計監理業務の料金についての取り決めを一部値上げすることにし、単独業態の店舗デザイン設計監理料は一式80万円、2業態が同一建物内で複合の場合は一式110万円などと定められた。(乙9の2及び3) 反訴原告は、反訴被告に対し、平成28年8月25日、同年9月28日、同年10月24日、同年12月26日、平成29年3月3日に、直営店についても改定後の取り決めに従った金額を見積りに記載して提出したところ、反訴被告から値引きの要求はなかった。もっとも、反訴被告は平成29年3月3日より後の見積りについては値引きを要求するようになった。(乙19の1ないし15、乙20の1ないし7、証人D〔3、8ないし9頁〕、反訴被告代表者〔13、25頁〕) (14)反訴被告代表者は、反訴原告を反訴被告のチームの一員として取り扱っており、反訴原告は反訴被告の主要な会議に全て出席することが求められ、それらの出席に伴う費用を負担していた。(乙40、乙41の1ないし9、反訴被告代表者〔4頁〕) 後記(15)までの間、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用料について反訴原告と反訴被告の間で話し合われたことはなく、その請求がされたこともなかった。また、反訴原告と反訴被告の間で、反訴被告が、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを使用することができなくなる場合があることについて話されたこともなかった。(証人D〔16頁〕、反訴原告代表者〔21頁〕、反訴被告代表者〔7頁、32及び33頁〕、弁論の全趣旨)) (15)Cは、平成29年3月中旬、反訴原告代表者に対し、反訴原告を同年4月で退社したいと述べ、反訴原告の他の従業員2名とともに、同年5月20日をもって退社することになった。(乙53の3) 反訴原告は、平成29年4月10日、反訴被告代表者に対し、今後は反訴原告の従業員であったCほか2名に反訴被告の店舗デザイン設計監理業務を引き継がせたいと申し入れ、反訴被告はそれを承諾した。(乙53の3) 反訴原告は、平成29年4月26日、反訴被告に対し、反訴原告標章と反訴原告ピクトグラムの制作料及び使用料として、新規出店する店舗数に応じて1店当たり10万円を10年間支払い、その後の支払額と支払期間については改めて協議することや、反訴原告が作成した反訴被告の店舗に関する図面、写真等のデータやそれらを作成するために必要なパソコン、ソフトウェア、机等の機器類及び物品を合計3000万円で買い取ることなどを求めたが、反訴被告はそれを拒否した。(甲4の1、反訴原告代表者〔21頁〕、弁論の全趣旨) (16)反訴原告は、平成29年12月1日、反訴被告らに対し、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムのデザイン料、使用料相当額の損害賠償金、従業員引き抜きの不法行為による損害賠償金などの支払を求める訴訟を新潟地方裁判所新発田支部に提起した(同庁平成29年(ワ)第76号事件)。 2 反訴原告と反訴被告との間の合意について (1)反訴原告は、反訴原告と反訴被告との間で、反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章、反訴被告ピクトグラムについて、反訴原告は反訴被告に対して、上記各標章及び各ピクトグラムの使用を無償で許諾し、これらのデザイン制作料、使用料を請求しないが、反訴被告が反訴原告に直営店、フランチャイズ店の店舗設計業務の委託を止めた場合、反訴原告の反訴被告に対する上記各標章、ピクトグラムの無償使用許諾は終了する旨の合意である反訴原告主張合意があると主張する(争点1、5関係)。 これに対し、反訴被告は、反訴原告と反訴被告との間で、反訴原告が作成した反訴原告標章、反訴原告ピクトグラムについて、反訴被告がそれらを今後も使用し続けることを認める旨の反訴被告主張合意があると主張する(争点4関係)。 そこで、反訴原告と反訴被告との間の合意の内容について、まず検討する。 (2)反訴原告は、反訴原告と反訴被告との間に反訴原告主張合意があったと主張するが、反訴原告主張合意を記載した書面は作成されていない。 他方、反訴被告は、反訴原告と反訴被告との間に、反訴被告主張合意があったと主張するが、反訴原告標章、反訴原告ピクトグラムの使用に関して反訴原告及び反訴被告間で何らかの書面が作成されたことは認められない。 (3)そこで、反訴原告と反訴被告の取引その他の状況についてみる。 ア 反訴原告は、前提事実(2)及び(5)のとおり、平成4年以降、平成28年頃まで、反訴被告のため、反訴原告標章のほか、反訴原告標章や多数の反訴原告ピクトグラムを作成して、これを反訴被告に納品し、反訴被告は、これを長年にわたり使用してきた(反訴原告関連標章1−6を除く。)。 ここで、反訴原告は、前記1(15)のような紛争が生じるまで、反訴被告に対して一貫して反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用料を請求することはなかった。また、基本的にそれらの制作料を書面で請求することはなかった。かえって、反訴原告が、ピクトグラムの制作料を書面で請求した場合には、反訴被告は、明示的にその支払を拒んだ。そして、前記1(12)オ及び(13)のとおり、そのような支払の拒絶があった後も、反訴原告は新たにピクトグラムを作成し、反訴被告に納品し、前記1(15)の紛争が生じるまで制作料、使用料等の請求をすることはなかった。反訴原告は、口頭で制作料の請求をしたことがあった旨も主張するが、仮にそのような事実があったとしても、反訴原告は反訴被告に対し、前記1(4)、(7)ないし(11)、(13)のとおり、長年にわたり、「デザイン料」などを多数回請求してその支払を受け、また、店舗のデザイン料についての交渉等をして反訴原告の希望に沿った値上げがされたこともあったにもかかわらず、上記のとおり、使用料を請求せず、書面による制作料の請求を基本的にしなかった。 これによれば、反訴原告と反訴被告間では、反訴被告は、反訴原告標章や反訴原告ピクトグラムを別途制作料や使用料を支払わずにこれらを使用し続けることができることを前提としていたとみるのが相当である。したがって、反訴原告と反訴被告間では、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを、別途制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認めることが相当である。 イ 反訴原告標章は、反訴被告の店名等を示すロゴであり、企業や店舗のブランドイメージを形成する重要な要素として相当期間使われることが想定されるものであり、反訴原告は、現にこれをカタログ、パンフレット、テレビコマーシャル、ウェブサイトなどに使用してきた(前提事実(5))。また、反訴原告ピクトグラムは反訴被告の店舗における取り扱い商品を示すものであり、それらがカタログ、パンフレット、テレビコマーシャル、ウェブサイトなどに使用されるほか、反訴原告の設計にも基づき、店舗の外観に大きく表示される形でも用いられ(前提事実(5)、前記(6))、反訴被告の企業や店舗のブランドイメージを形成する一要素となり得るものとして使用されていた。 このように、反訴原告標章や反訴原告ピクトグラムは、反訴被告の営業にとり極めて重要なものであり、これを使用することができなくなると反訴被告に直ちに大きな不利益をもたらすものであることは反訴原告及び反訴被告にとって明らかであった。それにもかかわらず、反訴原告標章や反訴原告ピクトグラムを使用することができなくなる場合があることが、反訴原告と反訴被告間で話されたことがあるとは認められない。 反訴原告は、反訴被告が、上記標章などを制作時にこれからも出店する店舗(直営店、フランチャイズ店)の店舗設計業務を全て反訴原告に委託するのでデザイン制作料、使用料は請求しないように述べたことを挙げて、反訴被告が反訴原告に直営店、フランチャイズ店の店舗設計業務の委託をやめた場合、反訴原告標章および反訴原告ピクトグラムの無償使用許諾が終了する旨の反訴原告主張合意があった旨主張する。しかし、仮に上記発言があったとしても、その発言等の際に、店舗設計業務の委託がなくなると、使用料の請求をすることができることや、反訴被告が反訴原告標章を使用できなくなることが反訴原告と反訴被告との間で話し合われたことは一切うかがわれない。また、反訴原告代表者供述中には、反訴被告が店舗の設計の依頼をしないのであればデザイン料を支払う旨反訴被告代表者が述べたとする部分もあるが(反訴原告代表者〔13頁〕)、その内容の書面もないほか供述もあいまいであり、デザインの納品より後にデザイン料を支払わなければならなくなる場合があるか否かという重要な内容について、反訴原告と反訴被告の間の合意が成立していたとは認められない。 このことからすると、前記アのとおりの反訴原告と反訴被告との間の反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて反訴被告が別途、制作料、使用料を支払わない旨の合意について、何らかの条件が成就した場合にこれが終了することについて、当事者間で合意が成立したと認めることはできない。反訴被告代表者が、反訴被告からの制作料の支払に対し、仮に反訴被告が反訴原告に対して店舗デザインを委託することを述べたとしても、それは、反訴原告反訴被告間で別途締結する契約があることを挙げた上で、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの制作料、使用料等については別途支払わないことを述べたものであって、反訴原告もこれを承諾したとするのが相当であり、かつ、上記の状況に照らし、将来、それらの店舗デザインに関する契約を締結しなかった場合に制作料、使用料等についての上記合意が変更されるという関係があったとは認められない。なお、平成4年以降、平成28年頃までの期間を通じると、反訴被告のフランチャイズ店は各業態の合計で573店舗にのぼり、反訴原告は、それらの新設工事の際に前記1(5)又は(13)のとおり定められた店舗デザイン設計監理料を得たほか(乙42の1及び2、弁論の全趣旨)、各業態の合計で297店舗あった直営店についても新設工事や改装工事の店舗デザイン設計監理料等を得ていたことを考慮すると(乙18の1ないし21、乙19の1ないし15、乙20の1ないし7、弁論の全趣旨)、反訴原告が主張するように直営店に関する設計監理料については値引きが常態化していたとしても、反訴原告は相当の額に及ぶ売上げを得ていたことが優に認められ、反訴原告は、反訴被告の直営店、フランチャイズ店に関するデザイン設計料に関する契約に基づき、相当の利益を享受したということができる。 3 反訴原告反訴被告間の合意に基づく反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めの可否(争点1)について (1)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて検討すると、前記2のとおり、反訴原告と反訴被告間には、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを、別途制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認められ、反訴原告が主張する、反訴原告が反訴被告から店舗デザインの委託を受けなくなれば、反訴被告がそれらを使用することができなくなるとの内容の合意である反訴原告主張合意があったとは認められない。 そうすると、反訴原告と反訴被告と間に反訴原告主張合意があることを前提として、合意に基づいて反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求は理由がない。 (2)反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムについて検討すると、これらは、反訴原告が制作したものではなく、平成28年9月以降、反訴原告に委託することなく制作されたものである。 反訴原告は、反訴原告主張合意があることを前提として、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムが反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムと同一であるか著しく類似すると主張して、反訴被告に対して、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを請求するが、前記のとおり、反訴原告主張合意は認められないから、その主張は前提を欠くものである。 したがって、反訴原告と反訴被告との合意に基づいて反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用の差止めを求める反訴原告の請求には理由がない。 4 著作権法112条等に基づく反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めの可否(争点2ないし5)について (1)反訴原告は、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムは反訴原告の著作物であるから、平成29年6月1日以降に反訴被告が反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムを使用等することは、反訴原告の著作権を侵害するなどと主張する。 (2)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用についてみると、反訴原告標章や反訴原告ピクトグラムについて著作権が認められるものがあるとしても、前記2のとおり、反訴原告と反訴被告の間では、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを別途制作料、使用料を支払うことなく使い続けられる旨の合意があったと認められる。 したがって、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴原告標章3及び4と同一である反訴被告標章3及び4は、その合意に基づき反訴被告はそれらについて使用するとができると認められる。 (3)反訴原告は、標章やピクトグラムについて反訴被告との間で無償使用許諾契約があったとしても、平成29年6月1日以降はアークスペースに対して店舗デザイン設計監理業務を委託したこと及び反訴被告が同日以降に反訴原告標章、反訴原告関連標章及び反訴原告ピクトグラムの使用料を反訴原告に支払わないことが反訴被告の債務不履行に該当するとして、無償使用許諾契約が解除された旨を主張する。 しかしながら、反訴原告と反訴被告との間で、反訴被告には店舗デザイン設計監理業務を反訴原告以外の業者には依頼しないことが合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。 また、反訴原告は、平成29年6月1日以降に反訴被告が標章やピクトグラムの使用料を支払わないことが反訴被告の債務不履行であるとも主張するが、前記2で認定のとおり、反訴原告と反訴被告の間では、反訴被告が反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを、別途制作料、使用料を支払うことなく使用することができるという合意があったと認めるのが相当である。したがって、平成29年6月1日以降にそれらの使用料が発生していることを前提とする反訴原告の主張には理由がない。 (4)以上によれば、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴被告標章3及び4については、前記2及び前記(3)で認定したとおり、反訴原告と反訴被告との間には別途の制作料、使用料を支払うことなく使い続けられる旨の合意があり、それについて解除されたとは認められないから、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの著作物性について判断するまでもなく、著作権法11条に基づき反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴被告標章3及び4の使用等の差止めなどを求める反訴原告の請求には理由がない。また、反訴原告は商標法29条に基づく請求もするところ、同条が請求の根拠となるかを検討するまでもなく、上記と同様の理由から、反訴原告の請求には理由がない。 (5)ア 反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムについてみると、これらは、反訴原告において制作したものではなく、前記2で認定した合意の対象となっているとは認められない。 そこで、これらが、反訴原告の著作権を侵害するものであるかについて検討する。 イ 反訴被告標章1、2及び5の作成、使用等によって、反訴原告標章1、2及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討するため、反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分についてみると、これらは、深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字が配置されていること、そのアルファベット文字の書体、大きさ、文字間の間隔及び配置のバランス、全ての文字が円の構成要素とされていること、「OFF」と「USE」の アルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くような装飾が施されていることなどで共通している。 アルファベット文字について著作物性を肯定するためには、その文字自体が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであることは反訴原告が主張するとおりであるとしても、それらの工夫による反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は、いずれも「オフハウス」という名称をよりよく周知、伝達するという実用的な機能を有するものであることを離れて、それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えるに至っているとは認められない。また、その余の共通点については、いずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり、仮にアイデアの組合せを新たな表現として評価する余地があるとしても、それらはありふれたものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。 したがって、反訴原告標章1と反訴被告標章1は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから、仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても、反訴被告標章1を作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また、上記と同様の理由から、反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。 ウ 反訴被告ピクトグラムの作成、使用等により反訴原告ピクトグラムについての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは、いずれも、反訴被告で取り扱う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そして、これらは、Tシャツの前部中央に表示された表現が異なる反訴原告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ないし4−03を除く全てについて、具体的な形状が異なる製品を選択してこれを表現したものである。したがって、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは、基本的に、同じジャンルの製品を選択してその外観を表している点において共通するにとどまるといえるものである。また、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて、選択された製品の配置の角度、複数の製品の種類の選択、レイアウトにおいて共通するものはあるが、これらは、いずれも、アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得るありふれた表現といえるものであり、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また、反訴原告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ないし4−03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが、これらは極めてありふれたTシャツの形状であり、その形状についての表現に創作性があるとは認められない。 これらを考慮すると、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから、仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著作物であるとしても、反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。 (6)以上によれば、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの著作物性について判断するまでもなく、反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの作成、使用等は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえないから、著作権法112条1項に基づき反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求には理由がない。また、反訴原告は商標法29条に基づく請求もするところ、上記と同様の理由から、同条が請求の根拠となるかを検討するまでもなく、反訴原告の請求には理由がない。 第4 結論 よって、反訴原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 柴田義明 裁判官 安岡美香子 裁判官 佐藤雅浩 (別紙省略) |
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