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【事件名】中学入試問題「解答と解説」事件
【年月日】令和元年5月15日
 東京地裁 平成30年(ワ)第16791号 著作権に基づく差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成31年3月14日)

判決
原告 株式会社日本入試センター
同訴訟代理人弁護士 中森峻治
同 西田育代司
同 今村昭文
同 牧山美香
被告 株式会社受験ドクター
同訴訟代理人弁護士 大熊裕司
同 島川知子


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙1−1〜1−4記載の著作物を解説する別紙2記載のライブ映像をウェブ上に流すこと及び将来同種のライブ映像をウェブ上に流す行為をしてはならない。
2 被告は、原告に対し、1500万円及びこれに対する平成30年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は、中学校の受験のための学習塾等を運営する原告が、同様に学習塾を経営する被告に対し、被告が、原告の許可なく、別紙1−1及び1−2の各問題及び別紙1−3及び1−4の「解答と解説」と題する各解説を複製して利用した行為が複製権侵害に当たると主張し、また、上記各問題及び上記各解説をインターネット上で動画配信している行為が翻案権侵害に当たると主張し、被告に対し、著作権法112条1項に基づき、上記動画等の配信の差止め及びその予防を求めるとともに、同法114条2項に基づき、損害賠償の一部請求として1500万円及びこれに対する不法行為後の日である平成30年6月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中に掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。)
(1)当事者
ア 原告は、学校法人高宮学園代々木ゼミナールグループの一員であり、中学校受験のためのSAPIX(サピックス)小学部等を運営する株式会社である。
イ 被告は、中学校受験のための学習塾を経営する株式会社である。
(2)原告作成の問題及び解説
 原告は、別紙1−1及び1−2の問題(以下「本件問題」という。甲4の1、5の1)及び別紙1−3及び1−4の「解答と解説」と題する解説(以下「本件解説」という。甲4の2、5の2)を作成した。
(3)被告の行為
 原告は、平成30年4月15日、通塾生及び外部から試験を希望した者を対象に、本件問題を配布してテストを実施し、テスト終了後に本件解説を配布した。被告は、同テストが終了した1時間後に、ウェブ上の動画で本件問題についての解説(以下「被告ライブ解説」という。)を行った(甲1、4、5)。
3 争点
(1)本件問題及び本件解説の著作物性の有無
(2)複製又は翻案該当性
(3)損害の有無及びその額
第3 当事者の主張
1 争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
〔原告の主張〕
(1)本件問題について
ア 本件問題は、その素材の選択及び配列に創作性が認められる編集著作物である。
 本件問題は、第三者の著作物である作品から問題文を二つ選択しているが、その選択の過程において、50作品の中から10作品まで絞った上で、本件問題の2作品を問題題材として選定したものであり、その過程において、作問者の学識、経験、個性等が重要な役割を果たしている。
 また、作問者は、選定した第三者の作品から問題とする部分を検討し、@様々な出題パターンや切り口を用意し、生徒の問題対応力を養う問題とする、A常に新しい視点を盛り込み、実際の入試に向けてその時点で身につけておくべきことや入試までに身につけておくことを提示できる問題とする、B最新の入試動向を反映させ、次年度の予想問題として出題するなどの教育思想、方針に基づき、本件問題を作成しているのであり、本件問題には素材の選択、配列に関する創作性を認め得るものである。
 このように、本件問題は、作問者の学識、経験、個性等が重要な役割を果たしている編集著作物である。
イ 本件問題は、原告の中学受験指導に関する思想ないし理念が表現された著作物である。
 本件問題は、@入試問題を解くために必要不可欠な知識を効率よく身に付けることができるようにし、A出題の切り口を考え、明確な出題意図をもって作成し、Bさまざまな出題パターンや切り口が用意され、新しい視点が盛り込まれているなどの基本理念に基づき、創意工夫がされており、原告の思想又は理念が表現されているものである。
(2)本件解説について
ア 本件解説は、その素材の選択及び配列に創作性が認められる編集著作物である。
 本件解説は、多数の作品から選定された問題素材を元に、学習指導要領、受験校の入試問題、その傾向を踏まえた本件問題に関して、作問者の出題意図、問題文の理解、理解していることを適切に表現する方法を説明、解説したものであって、本件問題と一体となるものである。
 したがって、本件解説も、本件問題と同様、作問者の学識、経験、個性等が重要な役割を果たしている編集著作物であるということができる。
イ 本件解説は、原告の思想ないし考えが表現された著作物である。
 例えば、別紙1−3の国語Aの1は、冒頭で、歩と梶の考え方の違いに着目するよう示唆し、いずれの設問の解説も、物語文の中から解答を導くヒントとなる文章を的確に抽出し、簡潔に説明しており、原告の思想ないし考えが表現されている著作物である。
 同様に、別紙1−4の国語Bの1は、正解に至るまでの具体的な説明を行うものであり、例えば、問1については、「「ほんとうに言いたいのは、コタツのことじゃない。おばあちゃんのこと」(1ページ12行目)とあるように、「わたし」はおばあちゃんに反感を抱いていることを読みとりましょう。」として、具体的に課題文の中からそれを示す文章を拾い上げ結論への導き方を平易に説明している。また、問2〜4についても同様に、本件解説文は、設問をどのように分析して正解に導くかを丁寧に説明しており、そこには出題の意図、出題の基本方針に関する原告の思想が表明されている。
 このように、いずれの設問に対する解説も、正解に導くテクニックを課題文の中から必要な文章を抽出して要領よく簡潔に整理して説明しており、原告の思想ないし考えが表現された著作物である。
〔被告の主張〕
(1)本件問題について
ア 本件問題が編集著作物であることは、否認ないし争う。
 原告は問題素材の選定に「素材の選択」の創作性があると主張するが、既存の様々な素材を利用する著作物がすべて編集著作物とされるわけではなく、相当数の素材を収集し、選択し、配列したものが編集著作物として法的保護が与えられるので、本件問題の作成に当たり、国語の問題題材を一つに限定したことをもって、素材の選択又は配列に創作性があるということはできない。
 また、原告は、「どの部分を問題とするのか」、「何を問うのか」についても「素材の選択」の創作性があると主張するが、これらは問題作成におけるアイデアであって「素材」ではなく、編集著作物における「編集」に該当しない。
イ 本件問題が著作物であることは、否認ないし争う。
 原告は、本件問題は著作物であると主張するが、原告の中学受験指導に関する三つの基本方針や知識をさまざまな角度から問うことや、理解を問うこと、考える力を試すことなどは、アイデアにすぎず、いずれも問題文の作成としてありふれたものであり、およそ創作性が認められるものではない。
 したがって、本件問題は、アイデアにすぎないか、ありふれた表現として創作性が認められないので著作物ではない。
(2)本件解説について
ア 上記(1)アと同様の理由から、本件解説が編集著作物であるということはできない。
イ 本件問題の作成方針を踏襲して作成された本件解説は、アイデアの範疇にとどまるものであり、いずれの解説も題材とした文章を引用して作成された解説文としてありふれたものであって、創作性は認められないので、著作物には該当しない。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
〔原告の主張〕
(1)複製について
 被告は、原告の許可なく、本件問題及び本件解説を複製し利用しており、原告の著作権法21条に基づく権利を侵害している。
 被告のライブ解説(甲1)においては、塾長が全体の進行役を務め、各科目の担当者が解説を行っているところ、被告ライブ解説の国語の解説担当者は、25分間程度ライブ解説を行っており、手元に本件問題及び本件解説の原本又は写しを置き、また、進行役である塾長も同様に同問題及び解説の原本又は写しを手元に置き、解説担当者の解説を傍で注意深く見守っていることは明らかである。さらに、ライブ解説がテスト実施後1時間余り後に行われていることなどを考慮すると、被告は、原告の生徒又は保護者から、テスト実施直後に、本件問題及び本件解説を少なくとも4部は入手していると考えられる。
 仮に、被告が原本を使用してライブ解説をしているか、保護者又は生徒から写しの提供を受けているとしても、保護者又は生徒は、そのような原本又は写しを被告に交付するに当たり、写しを取って手元に置き、又は写しの方を被告に渡して原本を手元に置くなどして、被告ライブ解説を視聴していると考えられる。このような目的をもった保護者又は生徒による複製は、被告自ら複製したことと同視することができる。
 また、複製を行ったのが保護者又は生徒であるとしても、当該複製は、保護者又は生徒に対する指導者としての強い立場を利用した被告の依頼に基づき、やむを得ずになされたものであり、保護者又は生徒は、いわば被告の手足としてこれに応じたものであるから、当該複製は、被告の間接正犯としての複製行為と評価されるべきものである。
 以上のとおり、被告は自社の事業目的を遂行するため、原告の生徒又は保護者から本件問題及び本件解説の交付を受けて自ら複写しているか、仮に、原告の生徒又は保護者が複写したとしても、被告がその費用を負担し、又は何らかの金銭供与ないし便宜供与を伴う働きかけをして複写させたものであるから、原告の複製権を侵害していると評価できる。
(2)翻案について
 被告は、本件問題及び本件解説(ただし、国語Aの1に関する読解対象文章の全般的な捉え方及び問5〜10、2に関する読解対象文章の全般的な捉え方並びに問4、6及び7、国語Bの1の問1、2、3及び5、国語Bの2の問2〜5に関する各解説)を翻案して別紙2の二次的著作物を創作したものであり、原告の翻案権を侵害するものである。
ア 被告ライブ解説は、著作物である本件問題及び本件解説の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる異なる著作物である。
 被告ライブ解説と本件解説の対応関係は、別紙3のとおりであるが、例えば、国語Aの1の問5は、「険のある低い声で祐介が言う」という記述を引用し、その時の祐介の気持ちを尋ねる問題であるが、被告ライブ解説も本件解説も、読解対象文章から過去にいじめられた経験のある歩に対する祐介の気持ちを読み取り、更に梶の言動に対する祐介の気持ちを読み取り、正解に導く点にあるのであり、これが本件解説の本質的特徴である。
 被告ライブ解説は、原告が題材とした文章のみならず、選択肢の文章まで取り上げ、原告の出題意図、文章の理解方法、理解した内容を表現する方法をかみ砕いて説明しているものであり、本件解説と本質的な特徴を共通にしている。
 その他の設問についても、被告ライブ解説と本件解説は同様の問題について、同じ視点から解説したものであり、同じ目的の下、同じ解答に至る考え方を説明したものであるから、その本質的な特徴は同一であり、相違点は、被告ライブ解説においては、本件解説の内容をわかりやすく多角的に敷衍するなどしている点にすぎない。
イ 被告は、原告の著作物である本件問題及び本件解説の解説をライブで行ったのであるから、被告ライブ解説が原告の著作物に依拠してされたことは明らかである。
〔被告の主張〕
(1)複製について
 原告は、被告が本件問題及び本件解説を複製したことを理由に、原告の著作権法21条に基づく権利を侵害したとも主張するが、被告が本件問題及び本件解説を複製した事実はない。被告は、実名は明らかにできないが、原告の経営する塾に在籍する複数の生徒から問題の原本を入手し解説講義を行っており、被告が本件問題を複製した事実は一切なく、生徒から任意に本件問題の原本を入手したものである。
 原告は、保護者又は生徒が被告の手足となって本件問題の複製を行ったものであり、これは被告の間接正犯としての複製行為と評価されるべきであるなどと主張するが、保護者又は生徒が被告から不利益を示されて強要又は脅迫されたなどの事情はなく、また、保護者又は生徒の意思を被告の意思と同視し得るような特別な事情は存在しない。
 したがって、保護者又は生徒の行為をもって被告の行為と同視し得るものではない。
(2)翻案について
 原告は、被告が本件問題及び本件解説を翻案していると主張するが、編集著作物に係る権利侵害は、素材の選択・配列に係る創作性が利用される場合にその侵害が問題となり、個別の素材が利用されているにすぎない場合は、著作権の侵害とはならない。本件問題及び本件解説は原告の著作物ではなく、被告ライブ解説とは「表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分」において同一にすぎないため、表現上の本質的な特徴の同一性が維持されているということはできない。
 また、原告が本件問題及び本件解説について創作的表現であると主張している点は、いずれも出題意図や問題の解き方に関するアイデアを述べているにすぎず、表現ではない。
 さらに、被告ライブ解説は、いずれも問題の解き方に関するアイデアを説明しているだけにすぎず、その表現もありふれていることから、新たな思想又は感情を創作的に表現したとはいえない。
 よって、本件問題及び本件解説の著作物性が認められるとしても、被告は原告の翻案権を侵害していない。
3 争点(3)(損害の有無及びその額)について
〔原告の主張〕
 被告は、被告ライブ解説により、原告学習塾の生徒のうち少なくとも200名を自らの塾生として獲得し、1名当たり月額2万円の授業料を徴収しているので、月額400万円の売上げがある。この売上げから、固定費、一般管理費、講師等の人件費を除いた利益は月100万円を下らないので、被告が過去2年間に得た利益は合計2400万円を下らない。したがって、原告が受けた損害は、著作権法114条2項により2400万円と推定される。
 また、原告が本件訴訟を追行するために必要な弁護士費用は120万円を下らないので、損害額の合計は2520万円となる。
〔被告の主張〕
 否認又は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
(1)証拠(甲4の1、5の1)によれば、本件問題のうち、国語Aの1は物語文の、同2は論説文の読解問題であり、いずれも問1〜10から構成され、国語Bの1は物語文の、同2は説明文の読解問題であり、いずれも問1〜5から構成されていることが認められる。
 また、証拠(甲4の2、5の2)によれば、本件解説には、解答部分、配点部分、解説部分から構成され、解説部分には、設問ごとに、問題の出題意図、題材とされた文章のうち着目すべき箇所、当該箇所に係る文章の理解方法、正解を導き出すための留意点等が記載されている。
 他方、被告ライブ解説(甲1)は、本件問題について、同問題に係るテストの終了後に、被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説をするものであり、本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはない。
(2)著作権法12条は、「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定するところ、被告は、本件問題について、「どの部分を問題とするのか」、「何を問うのか」は問題作成におけるアイデアにすぎないとして、本件問題は編集著作物に該当しないと主張する。
 しかし、国語の問題を作成する場合において、数多くの作品のうちから問題の題材となる文章を選択した上で、当該文章から設問を作成するに当たっては、題材とされる文章のいずれの部分を取り上げ、どのような内容の設問として構成し、その設問をどのような順序で配置するかについては、作問者が、問題作成に関する原告の基本方針、最新の入試動向等に基づき、様々な選択肢の中から取捨選択し得るものであり、そこには作問者の個性や思想が発揮されているということができる。本件問題についても、題材となる作品の選択、題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択、設問の内容、設問の配列・順序について、作問者の個性が発揮され、その素材の選択又は配列に創作性があると認めることができる。
 したがって、本件問題は編集著作物に該当する。
(3)本件解説は、前記のとおり、本件問題の各設問について、問題の出題意図、正解を導き出すための留意点等について説明するものであり、各設問について、一定程度の分量の記載がされているところ、その記載内容は、各設問の解説としての性質上、表現の独自性は一定程度制約されるものの、同一の設問に対して、受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現方法や説明の流れ等は様々であり、本件解説についても、受験者に理解しやすいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており、そこには作成者の個性等が発揮されているということができる。
 したがって、本件解説は創作性を有し、言語の著作物に該当するというべきである。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
(1)複製について
 原告は、被告が本件問題及び本件解説の複製を自ら行っているか、仮に、自ら複製行為を行っていないとしても、保護者又は生徒をいわば手足のように利用して複製をさせているのであるから、被告自身が複製を行ったと同視し得ると主張する。
 しかし、被告は、複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手し解説を行っている事実は認めるものの、問題を複製した事実は否認するところ、本件においては、被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足りる証拠はない。
 また、被告が、指導者としての強い立場を利用し、保護者又は生徒に本件問題等の複製を依頼し、あるいは、複製の費用を負担し、金銭や便宜を供与するなどの働きかけをして保護者や生徒に本件問題等の複製を依頼したとの事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると、仮に、保護者又は生徒が本件問題等の複製を行い、複製した本件問題の写しを被告に交付したとしても、そのことから直ちに被告自身が複製を行ったと同視することはできない。
 したがって、被告が原告の有する複製権を侵害したとの主張は理由がない。
(2)翻案について
ア 著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
イ 被告ライブ解説においては、前記1(1)のとおり、本件問題の全部又は一部の画像を表示しておらず、また、口頭で本件問題の全部又は一部を読み上げるなどの行為もしていない。そうすると、被告ライブ解説は本件問題の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず、被告ライブ解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直接感得することができるということはできない。
 したがって、被告ライブ解説が本件問題を翻案したものであるとは認められない。
ウ 本件解説に関し、原告は、被告ライブ解説と本件解説は同様の問題について、同じ視点から解説したものであり、同じ目的の下、同じ解答に至る考え方を説明したものであるから、その本質的な特徴は同一であると主張する。
 しかし、原告が翻案権侵害を主張する設問について、本件解説と被告ライブ解説の対応する記載を対比しても、表現が共通する部分はほとんどない。例えば、国語Aの1の問5に関する本件解説と被告ライブ解説を比較しても、共通する表現は「険のある」、「祐介」など、ごくわずかな部分にすぎず、被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持しているということはできない。本件解説の他の設問に係る部分についても、本件解説と被告ライブ解説とで表現が共通する部分はほとんど存在せず、当該各設問に係る被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持しているということはできない。
 したがって、本件ライブ解説が本件解説を翻案したものであるとは認められない。
3 結論
 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 佐藤達文
 裁判官 三井大有
 裁判官 遠山敦士は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 佐藤達文

別紙
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