判例全文 | ||
【事件名】ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件D 【年月日】平成30年6月15日 東京地裁 平成30年(ワ)第5939号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 平成30年5月9日) 判決 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は、別紙対象目録の「原告」欄記載の各原告に対し、それぞれ対応する同目録の「日時」欄記載の日時頃に「IPアドレス」欄記載のインターネットプロトコアドレスを使用してインターネットに接続していた者の「発信者情報」欄記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 本件は、別紙対象目録に係る各レコードの送信可能化権を有すると主張する原告らが、氏名不詳者が上記各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信し得る状態にした行為により上記送信可能化権を侵害されたことが明らかであり、権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、経由プロバイダである被告に対し、上記発信者情報の開示を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。) (1)被告は、一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている株式会社である。 (2)別紙対象目録の「レコード製作者」欄記載の者は、それぞれ対応する同目録の「実演家」欄記載の実演家が歌唱する「楽曲」欄記載の楽曲を録音したレコード(以下「本件各レコード」と総称する。)を製作し、「発売年月日」欄記載の日に「CD(商品番号)」欄記載の商業用12センチ音楽CDに収録して日本全国で発売した。(甲3の1〜12) 2 争点 (1)権利侵害の明白性 (2)発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(権利侵害の明白性)について 〔原告らの主張〕 氏名不詳者(以下「本件各発信者」という。)は、本件各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上、被告の提供するインターネット接続サービスを利用して、それぞれ対応する同目録の「IPアドレス」の割当てを受けてインターネットに接続し、「日時」記載の日時頃、ファイル交換共有ソフトウェアであるShare互換ソフトウェアにより、インターネットに接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じて同ファイルをインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置き、もって、本件各レコードの送信可能化権を侵害した。 〔被告の主張〕 送信可能化されたファイルが本件各レコードの複製物であるかは客観的な証拠がなく、不知である。 2 争点(2)(発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無)について 〔原告らの主張〕 原告らは、本件各レコードの送信可能化権を侵害した本件各発信者に対して、損害賠償請求権や差止請求権を行使する必要があるから、本件各発信者について別紙対象目録の「発信者情報」欄記載の各情報(以下「本件各発信者情報」と総称する。)の開示を受ける正当な理由がある。 〔被告の主張〕 損害賠償請求権や差止請求権を行使するには住所及び氏名が判明すれば十分であり、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないから、電子メールアドレスについては正当な理由は認められない。 第4 争点に対する判断 1 争点1(権利侵害の明白性)について 被告は送信可能化されたファイルが本件各レコードの複製物でことを争うが、証拠(甲2の1〜12、甲3の1〜12)によれば、本件各発信者は、本件各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上、被告の提供するインターネット接続サービスを利用し、同ファイルを自動的に送信し得る状態に置いたとの事実が認められる。 したがって、同行為により、原告らが有する本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであると認められる。 2 争点2(発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無) 上記1によれば、原告らは本件各発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ、原告らが本件各発信者に対してその権利を行使するためには、本件各発信者情報の開示が必要である。 そして、本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、本件各発信者情報を保有しているものと認められる(甲4の1〜12)。そうすると、原告らは、被告に対して、本件各発信者情報の開示を求めることができる。 開示すべき発信者情報に関し、被告は、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張するが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者の実際の住所が、被告が本件発信者の住所として保有しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできない。 したがって、原告らには被告から本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 3 結論 よって、本訴請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 今野智紀 別紙 対象目録
別紙 当事者目録 原告 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ 原告 (株)フライングドッグ 原告 株式会社アニプレックス 原告 エイベックス・エンタテインメント株式会社 原告 キングレコード株式会社 原告 株式会社トイズファクトリー 上記6名訴訟代理人弁護士 尋木浩司 同 林幸平 同 笠島祐輝 同 前田哲男 被告 ソフトバンク株式会社 同訴訟代理人弁護士 金子和弘 |
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