判例全文 line
line
【事件名】ソネットへの発信者情報開示請求事件B
【年月日】平成30年5月24日
 東京地裁 平成30年(ワ)第6456号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成30年4月19日)

判決
原告 株式会社ポニーキャニオン
同訴訟代理人弁護士 尋木浩司
同 林幸平
同 亀井英樹
同 塚本智康
同 石坂大輔
同 笠島祐輝
同 佐藤直子
同 佐藤省吾
同 松木信行
同 前田哲 男
被告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 横山経通
同 桑原秀明


主文
1 被告は、原告に対し、平成29年8月3日21時57分15秒頃に「(省略)」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名、住所及び電子メールアドレスを開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、レコード制作会社である原告が、原告が送信可能化権を有するレコードに収録された楽曲を氏名不詳者が無断で複製した上でコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にしたことから、上記送信可能化権が侵害されたことは明らかである等と主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって
容易に認められる事実)
(1) 原告は、録音物等の製造、販売等を目的とする株式会社であり、多数のレコードを制作の上、これらを複製してCD等として発売している。(弁論の全趣旨)
 被告は、電気通信事業等を目的とする株式会社であり、一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている。(弁論の全趣旨)
(2) 原告は、実演家であるMICHIが歌唱する楽曲「リアリ・スティック」を含む全4曲を録音したレコードを制作の上、平成28年5月18日、「リアリ・スティック」との名称を付した商業用音楽CD(商品番号PCCG−70317。以下「本件レコード」という。)を日本全国で発売した。(甲3、弁論の全趣旨)
(3) 被告は、被告から割当てを受けた「(省略)」というインターネットプロトコルアドレス(以下「IPアドレス」という。)を使用して、平成29年8月3日21時57分15秒頃、コンピュータをインターネットに接続した者(以下「本件利用者」という。)の住所、氏名及び電子メールアドレス(以下「本件発信者情報」という。)を保有している。(弁論の全趣旨)
(4) 被告は、本件利用者による本件レコードの送信可能化権侵害との関係でプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する。(弁論の全趣旨)
3 争点及び争点についての当事者の主張
(1) 原告の送信可能化権が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
(原告の主張)
 本件利用者は、本件レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上、被告のインターネット接続サービスを利用し、被告から「(省略)」というIPアドレスの割当てを受け、当該コンピュータをインターネットに接続し、平成29年8月3日21時57分15秒頃、ファイル交換共有ソフトであるShare互換ソフトウェアを利用して、上記ファイルについて、インターネットに接続している不特定のShare互換ソフトウェアの利用者の求めに応じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたのであって、上記行為によって原告の本件レコードに係る送信可能化権が侵害されたことは明らかである。
(被告の主張)
 不知ないし争う。被告が本件利用者に対して本件についての意見照会をしたところ、本件利用者は心当たりがない旨の回答をしている。
(2) 原告に発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(争点2)
(原告の主張)
 原告は、本件利用者に対し、原告の本件レコードに係る送信可能化権の侵害に基づく損害賠償等の請求を行う必要があるところ、本件利用者の氏名や住所等が不明であるから、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
(被告の主張)
 不知ないし争う。本件利用者の住所が開示されるのであれば、電子メールアドレスの開示は不要である。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(送信可能化権の侵害の有無)について
(1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
ア 本件利用者は、平成29年8月3日21時57分15秒頃、被告のインターネット接続サービスを利用し、ファイル交換共有ソフトであるShare互換ソフトウェアを用いて、インターネットに接続している不特定のShare互換ソフトウェア利用者の求めに応じ、「〔EAC〕〔160518〕TVアニメ「クロムクロ」EDテーマ「リアリ・スティック」/MICHI.rar」と題する音楽ファイル(以下「本件音楽ファイル」という。)を、インターネット回線を経由して、自動的に送信し得る状態にした。(甲2、甲5)
イ 本件音楽ファイルに記録されている音は、本件レコードに録音されている全4曲と歌唱の旋律、歌詞、歌唱方法、歌声、伴奏音楽の楽器構成、演奏方法及び歌唱・演奏のタイミングが全て同一であった。(甲3)
(2) 前提事実(2)(第2、2(2))及び上記認定事実によれば、本件利用者が原告の本件レコードに係る送信可能化権を侵害したことは明らかであって、本件記録を精査しても、同送信可能化行為について著作隣接権の権利制限事由が存在することはうかがわれず、その他上記判断を覆すに足りる事情は見当たらない。
 以上によれば、争点1についての原告の主張が認められる。
争点2(開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 上記1の検討によれば、本件利用者が原告の本件レコードに係る送信可能化権を侵害したことは明らかであるところ、本件利用者の氏名、住所等がいずれも不明であることに照らせば、原告が上記侵害に基づく損害賠償請求権等を行使するために、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと認められる。
 これに対し、被告は、本件利用者の住所が開示されるのであれば、電子メールアドレスの開示は不要であると主張するが、事後的に生じた住所変更等によって被告が保有する住所情報と本件利用者の実際の住所に齟齬が生じる可能性もあり得ること等の事情に照らせば、電子メールアドレスについても当事者の特定や交渉のための連絡手段という観点に照らして有益な情報であると評価すべきであって、原告において本件利用者の電子メールアドレスについて開示を受けるべき正当な理由があると認めるのが相当であるから、被告の上記主張は採用することができない。その他、本件記録を精査しても、上記認定を覆すに足りる事情は見当たらない。
 以上によれば、争点2についての原告の主張が認められる。
3 結論
 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 安岡美香子
 裁判官 佐藤雅浩
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/