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【事件名】ご当地アイドル“天空音パレード”事件 【年月日】平成30年5月10日 大阪地裁 平成28年(ワ)第5587号 営業権確認等請求事件、平成29年(ワ)第2926号 使用料等請求反訴事件 (口頭弁論終結日 平成30年2月8日) 判決 原告(反訴被告) P1(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士 小林和弘 同 浅井真央 被告(反訴原告) 株式会社モデル屋本舗(以下「被告モデル屋本舗」という。) 被告 P2 上記2名訴訟代理人弁護士 関根良平 主文 1 原告と被告モデル屋本舗との間で、被告モデル屋本舗と別紙本件グループメンバー表記載1ないし7の各メンバーとの間に、各メンバーに対応する別紙契約目録記載1ないし7の各契約が存在しないことの確認を求める訴えを却下する。 2 原告と被告モデル屋本舗との間で、原告の被告モデル屋本舗に対する別紙債務目録記載1の債務が存在しないことの確認を求める訴えを却下する。 3 原告とP2との間で、原告のP2に対する別紙債務目録記載2、3の債務が存在しないことの確認を求める訴えを却下する。 4 原告と被告モデル屋本舗との間で、原告が別紙歌詞目録<添付省略>記載1ないし6の各歌詞について著作権を有することを確認する。 5 原告は、被告モデル屋本舗に対し、160万5500円及びうち86万5500円に対する平成29年3月30日から、うち73万円に対する平成30年2月6日から、うち1万円に対する同月9日から、それぞれ支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 6 原告及び被告モデル屋本舗のその余の請求をいずれも棄却する。 7 本訴・反訴を通じ、原告とP2との間に生じた訴訟費用は、原告の負担とし、原告と被告モデル屋本舗との間に生じた訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の、その余を被告モデル屋本舗の負担とする。 8 この判決は、第5項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告の被告モデル屋本舗に対する本訴請求の趣旨 (1) 原告と被告モデル屋本舗との間において、被告モデル屋本舗と別紙本件グループメンバー表記載1ないし7の各メンバーとの間に、各メンバーに対応する別紙契約目録記載1ないし7の各契約が存在しないことを確認する。 (2) 原告と被告モデル屋本舗との間において、原告の被告モデル屋本舗に対する別紙債務目録記載1の債務が存在しないことを確認する。 (3) 原告と被告モデル屋本舗との間において、原告が、別紙動産目録記載の各動産の所有権を有することを確認する。 (4) 原告と被告モデル屋本舗との間において、原告が、別紙楽曲目録記載の各楽曲についての著作権を有することを確認する。 (5) 原告と被告モデル屋本舗との間において、原告が、別紙歌詞目録記載の各歌詞についての著作権を有することを確認する。 (6) 原告と被告モデル屋本舗との間において、被告モデル屋本舗が原告に対し、別紙不動産目録記載の不動産につき、転借権を有しないことを確認する。 2 被告モデル屋本舗の請求の趣旨に対する答弁 (1) 本件訴えのうち、上記1(1)、(2)に係る訴えを却下する。 (2) 原告のその余の請求を棄却する。 3 原告のP2に対する請求の趣旨 原告とP2との間において、原告のP2に対する別紙債務目録記載2、3の債務が存在しないことを確認する。 4 P2の請求の趣旨に対する答弁 原告の訴えを却下する。 5 被告モデル屋本舗の原告に対する反訴請求の趣旨 原告は、被告モデル屋本舗に対し、931万0500円及びうち622万0500円に対する平成29年3月30日から、うち309万円に対する平成30年2月6日から、それぞれ支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 6 原告の請求の趣旨に対する答弁 被告モデル屋本舗の請求を棄却する。 第2 事案の概要 本件本訴請求事件は、別紙本件グループメンバー表記載のグループ名のアイドルグループ(以下「本件グループ」という。)に属する同表記載1ないし7のメンバー(以下、各メンバーを同表の番号に従い、「メンバー1」などという。)とマネジメント契約を締結している原告が、被告モデル屋本舗に対し、上記第1の1(1)ないし(6)で特定される権利義務の存在ないし不存在の確認を求めるほか、P2に対しては別紙債務目録記載2、3の債務が存在しないことの確認を求めた事案である。 本件反訴請求事件は、上記原告の主張を争う被告モデル屋本舗が、原告に対し、@本件グループの公演1回当たり1万円を支払うとの合意に基づく未払分の197万円、ACDの売上げに伴う支払についての合意に基づく未払分の300万0500円、及びB本件グループが公演場所とする不動産の使用方法の合意の債務不履行に基づく損害434万円の合計額931万0500円並びにうち622万0500円(@の内金102万円、Aの内金220万0500円、Bの内金300万円の合計額)に対する反訴状送達の日の翌日である平成29年3月30日から、内金309万円(@の内金95万円、Aの内金80万円、Bの内金134万円の合計額)に対する反訴請求に係る訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成30年2月6日から、それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の前提となる事実(当事者間に争いがないか、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者 ア 原告は、現在、本件グループの各メンバーとマネジメント契約を締結し、その育成・マネジメント、コンサート、テレビ・ラジオ番組、舞台、イベント等への出演及びCD、DVDその他関連商品の販売等に関する業務を営んでいる者である。 イ 被告モデル屋本舗は、芸能プロダクションの経営等を目的とする株式会社であり、事業所を神戸市において労働者派遣業を営んでいる。 ウ P2は、被告モデル屋本舗の株式を100%保有し、代表取締役を務めている者である。 (2) 本件グループの結成及び活動 ア 本件グループは、平成24年初め頃、<略>商店街を活性化させるためのプロジェクトの一つとして始まったものであり、被告モデル屋本舗において、メンバー募集等の事務を担当するほか、各メンバーとマネジメント契約を締結し、同年7月からグループとしての活動を始めた。 イ 本件グループは、平成26年3月頃、公演等の活動拠点を別紙不動産目録記載のビルの一室(以下「本件不動産」という。)に移転し、グループ名を別紙本件グループメンバー表記載の現名称に変更した。本件不動産は、原告が賃借人として賃借した物件であるが、本件グループの常設イベント会場とするための改装工事及び機材の調達は被告モデル屋本舗が行った。 ウ 本件グループは、本件不動産において、原則として、毎週水曜日、土曜日及び日曜日並びに隔週の木曜日に公演を行い、その間、被告モデル屋本舗が資金を負担してCD、DVDのほか、来場したファン向けのグッズを製作するなどした。 エ 平成26年11月頃、被告モデル屋本舗の代表者であるP2と本件グループのその当時の特定のメンバー(以下「メンバーA」という。)との関係が問題となり、同月25日、メンバーAが本件グループを脱退した。 これを受けて同月28日、原告及びメンバーAを含む本件グループのメンバーとP2の間で話合いがもたれ(以下「本件話合い」という。)、その結果、少なくとも本件グループのメンバーと被告モデル屋本舗との間のマネジメント契約は終了すること、P2は本件グループのメンバーと連絡しないほか、その活動に関与しないことなどを含む、本件グループの事業を巡る一定の合意がされた。 オ 原告は、その後、本件グループのメンバーとマネジメント契約を締結し、その事業運営を行っていたが、平成28年5月までの間、被告モデル屋本舗に対し、同年4月販売分まで本件グループのCD(範囲について争いがある。)の売上げの半額を支払うほか、木曜日以外に本件不動産を使用して本件グループの公演を行った場合につき、1日当たり1万円の金額を毎月支払うなどしていた。 なお、本件話合い直前及びその後に販売されたCDは、別紙CD販売一覧表記載のとおりである。 2 争点 (1) 本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間に、別紙契約目録記載の各契約が存在するか。 (2) 原告は、別紙債務目録記載1の債務を被告モデル屋本舗に対し、同目録記載2、3の債務をP2に対して負っているか。 (3) 原告は、別紙動産目録記載の動産について所有権を有するか。 (4) 原告は、別紙楽曲目録記載の楽曲及び別紙歌詞目録記載の歌詞について著作権を有するか。 (5) 被告モデル屋本舗は、別紙不動産目録記載の不動産について転借権を有するか。 (6) 平成26年11月28日にされた合意又はその債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の原告に対する請求権の存否 第3 当事者の主張 1 争点(1)(本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間に、別紙契約目録記載の各契約が存在するか。) (原告の主張) (1) 原告は、本件グループのマネジメント事業(以下「本件事業」という。)として、平成24年5月頃にメンバー1ないし4の法定代理人親権者と、同年6月頃にメンバー5の法定代理人親権者と、それぞれ各人が原告のために専属的に芸能活動を行う、いわゆる専属マネジメント契約を締結した。 さらに原告は、本件事業として、平成26年9月ないし10月頃、メンバー6(以下、メンバー1ないし5のメンバーと併せて「本件グループオリジナルメンバー」という。)との間で、いわゆる専属マネジメント契約を締結した。なお、メンバー6は、本件話合い当時は、本件グループの正式なメンバーではなく、将来、本件グループのメンバーとなるために準備をしている候補生という位置付けにあった。その後、平成27年4月に本件グループの正式なメンバーとなった。 (2) 仮に、原告と被告らとの間で組合契約(以下「本件組合契約」といい、その組合を「本件組合」という。)、あるいは原告とP2との間で匿名組合契約(以下「本件匿名組合契約」という。)、が締結されており、原告及び被告らと、本件グループオリジナルメンバーとの間にいわゆる専属マネジメント契約が締結されていたとしても、本件話合いによって、本件事業は、本件話合い以降、原告のみによって行われることが合意されたため、被告らと本件グループオリジナルメンバーとの間の各専属マネジメント契約は合意解除された。 (3) 仮に、本件組合契約及び本件匿名組合契約の成立が認められず、本件事業が平成24年4月から被告モデル屋本舗の事業として行われていたとしても、本件話合いによって、被告らは本件事業に関与しないことが合意されているから、同日をもって、その当時の本件グループオリジナルメンバーと被告らとの間のマネジメント契約は合意解除された。 (4) さらに本件話合いの後、原告は平成28年9月頃、メンバー7の法定代理人親権者との間でいわゆる専属マネジメント契約を締結した。なお、メンバー7は、本件グループの正式なメンバーではなく、将来、本件グループのメンバーとなるために準備をしている候補生という位置付けにあった。 (5) 上記経緯にもかかわらず、被告モデル屋本舗は、平成24年4月から現在に至るまで、本件事業は被告モデル屋本舗の事業であると主張し、本件グループオリジナルメンバー及びメンバー7との間にいわゆる専属マネジメント契約が存在するとして争っている。 したがって、原告は被告モデル屋本舗に対し、被告モデル屋本舗と本件グループオリジナルメンバー及びメンバー7との間に別紙契約目録記載の各契約が存在しないことの確認を求める利益がある。 (被告モデル屋本舗の主張) 原告が確認を求める権利義務関係は他人間の権利関係であり、第三者たる原告が被告モデル屋本舗を相手方として当該権利義務関係の確認を求める法律上の利益はない。 また被告モデル屋本舗と本件グループオリジナルメンバーとの間の専属マネジメント契約は、平成26年11月28日の本件話合いの際に合意解除され、現在、被告モデル屋本舗と本件グループオリジナルメンバー及びメンバー7との間に専属マネジメント契約は存在せず、被告モデル屋本舗は、そのことを争っていないから、被告モデル屋本舗と本件グループの各メンバーとの間における専属マネジメント契約の不存在の確認を求める訴えは、確認の利益がない。 したがって、原告の上記訴えはいずれも不適法であり却下されるべきである。 2 争点(2)(原告は、別紙債務目録記載1の債務を被告モデル屋本舗に対し、同目録記載2、3の債務をP2に対して負っているか。) (原告の主張) 平成24年4月頃に、本件事業に関して原告と被告らとの間に締結された契約が組合契約であっても、原告とP2との間に締結された契約が匿名組合契約であったとしても、本件話合いにおいて、原告と被告らとの間で原告は債務を負わない旨の合意、すなわち被告らは組合から脱退するが、原告に対して組合契約に基づく持分の払戻請求をしない旨の合意、あるいは原告とP2との間の匿名組合契約は合意解除されるが、P2は原告に対して出資金の返還請求をしない旨の合意がされた。 しかし、被告らは、本件事業につき支払った金員について、原告に対して返還を求めるように理解される発言を繰り返しているから、原告と被告モデル屋本舗との間で別紙債務目録記載1の債務が存在しないこと、原告とP2との間で同目録記載2、3の債務が存在しないことの確認を求める。 (被告らの主張) 原告と被告らとの間で組合契約は締結されていないし、原告とP2間で匿名組合契約は締結されていないから、本件話合いにおいて、原告と被告らとの間で被告らが組合から脱退した上、被告らが原告に対して組合財産についての払戻請求をしない旨の合意をしたことも、P2と原告との間で匿名組合契約を合意解除した上、P2が原告に対して出資金の返還請求をしない旨の合意をしたこともない。 そうすると、結論において、原告が被告モデル屋本舗に対して別紙債務目録記載1の債務を負っていないこと、P2に対して同目録記載2、3の債務を負っていないことに争いはないといえる。 したがって、原告が確認を求めようとする原告が被告モデル屋本舗に対して別紙債務目録記載1の債務を負っていないこと、あるいは原告がP2に対して同目録記載2、3の債務を負っていないことという訴訟物たる権利関係の存否に争いがないことになるから、確認の利益がなく、原告のこれらの確認を求める訴えはいずれも不適法であって却下を免れない。 3 争点(3)(原告は、別紙動産目録記載の動産について所有権を有するか。) (原告の主張) (1) 動産の製作 被告モデル屋本舗は、第三者に対し、別紙動産目録記載の各動産(以下「本件動産」という。)を発注して製作させた。 (2) 原告の所有権取得原因 ア 本件組合解散による原告の所有権取得 (ア) 原告と被告らとの間には、本件事業を目的として、原告が労務を出資し、被告らが資金を出資する本件組合契約が締結されていた。 (イ) 本件動産は、すべて被告モデル屋本舗が、本件組合の事業として発注したものとして本件組合の財産となり、本件組合の組合員である原告と被告らが共有していた。 (ウ) 本件話合いにより被告らは本件組合を脱退し、本件組合は解散することになったが、その際、被告らは原告に対し、解散した本件組合の残余財産について何ら請求しない旨を約したから、本件組合の財産であった本件動産の所有権は原告に帰属する。 イ 本件話合いによる本件動産の所有権譲渡 仮に本件組合契約が認められず、被告モデル屋本舗が本件動産の所有権を取得していたとしても、本件話合いの結果、本件グループの事業財産は原告に譲渡されたから、本件動産の所有権は原告に帰属する。 ウ 本件匿名組合契約による原告の所有権取得 原告とP2との間には、本件事業を巡って原告を営業者、P2を出資者とする本件匿名組合契約が締結されていた。 本件話合いにより、本件匿名組合契約は合意解除されたが、原告は、匿名組合の営業者として本件動産の所有権を取得したのであるから、その所有権を有している。 (3) 以上より本件動産の所有権は原告が有するから、その旨の確認を求める。 (被告モデル屋本舗の主張) (1) 原告の主張(1)の事実は認める。 (2) 原告の主張(2)の事実はすべて否認ないし争う。 被告モデル屋本舗は、本件グループの事業を営む主体として本件動産の製作を第三者に発注し、その所有権を取得した。 4 争点(4)(原告は、別紙楽曲目録記載の楽曲及び別紙歌詞目録記載の歌詞について著作権を有するか。) (原告の主張) (1) 著作者 ア 別紙楽曲目録記載1ないし13の楽曲(以下「本件楽曲」という。)の著作者は、別紙楽曲目録2の著作者欄記載の者である。 イ 別紙歌詞目録記載1ないし13の歌詞(以下、まとめて「本件歌詞」といい、個別に同目録記載の番号に従い「歌詞1」などという。)の著作者は、別紙歌詞目録2の著作者(原告の主張)欄記載のとおりである。 (2) 原告の著作権取得原因 ア 本件組合解散による原告の著作権取得 (ア) 原告と被告らとの間には、本件事業を目的として、原告が労務を出資し、被告らが資金を出資する本件組合契約が締結されていた。 (イ) 本件楽曲の著作権は、すべて被告モデル屋本舗が、本件組合の事業として譲り受けて本件組合の財産となり、また本件歌詞の著作権は、以下の経緯で本件組合の財産となり、本件組合の組合員である原告と被告らが共有していた。 a 歌詞1ないし6は、原告が本件組合の事業の一環として作詞し、その著作権は本件組合の財産となった。 b 歌詞7は、P3と原告の共同著作であるが、P3の著作権持分については、本件組合の事業として被告モデル屋本舗が譲り受け、原告は本件組合の事業の一環として作詞し、その著作権は本件組合の財産となった。 c 歌詞8は、本件グループのメンバー6名が著作者であるが、原告が本件組合の事業としてその著作権を譲り受け、本件組合の財産となった。 d 歌詞9、10は、P4が著作者であるが、被告モデル屋本舗が本件組合の事業としてその著作権を譲り受け、本件組合の財産となった。 e 歌詞11、12は、P5と本件グループのメンバーの共同著作であるが、被告モデル屋本舗が本件組合の事業としてその著作権を譲り受け、本件組合の財産となった。 f 歌詞13は、P6が著作者であるが、原告が本件組合の事業としてその著作権を譲り受け、本件組合の財産となった。 (ウ) 本件話合いにより被告らは本件組合を脱退し、本件組合は解散することになったが、その際、被告らは原告に対し、解散した本件組合の残余財産について何ら請求しない旨を約したから、本件組合の財産であった本件楽曲及び本件歌詞の著作権は原告に帰属する。 イ 本件話合いによる本件楽曲の著作権譲渡 仮に本件組合契約が認められず、被告モデル屋本舗が本件楽曲及び本件歌詞の著作権を取得していたとしても、本件話合いの結果、本件グループの事業財産は原告に譲渡されたから、本件楽曲及び本件歌詞の著作権は原告に帰属する。 ウ 本件匿名組合契約による原告の著作権取得 原告とP2との間には、本件事業を巡って原告を営業者、P2を出資者とする本件匿名組合契約が締結されていた。 本件話合いにより、本件匿名組合契約は合意解除されたが、原告は、匿名組合の営業者として本件楽曲及び本件歌詞の著作権を取得したのであるから、その著作権を有している。 (3) 以上より本件楽曲及び本件歌詞の著作権は原告に帰属するから、その旨の確認を求める。 (被告モデル屋本舗の主張) (1) 原告の主張(1)アの事実及び同イの事実のうち、歌詞1ないし6、8ないし10、13の著作者は認めるが、同7については原告が共同著作者であること、同11、12については本件グループのメンバーが共同著作者であることは否認する(別紙歌詞目録2の著作者(被告モデル屋本舗の主張)欄参照)。 (2) 原告の主張(2)の事実はすべて否認ないし争う。 被告モデル屋本舗は、本件グループの事業を営む主体として本件楽曲及び本件歌詞の著作権をそれぞれ著作者から譲り受け、その著作権を有している。 5 争点(5)(被告モデル屋本舗は、別紙不動産目録記載の不動産について転借権を有するか。) (被告モデル屋本舗の主張) 本件不動産は、原告が賃借人となって賃貸借契約を締結して借りているが、これは、兵庫県において労働者派遣事業を営んでいる被告モデル屋本舗が大阪市内の本件不動産を賃借すると、新たな事業所の開設となって増資が必要となることから、これを避けるため、本件不動産の使用主体は被告モデル屋本舗であることを前提に、原告名義で賃貸借契約を締結してもらったものである。 そして本件不動産賃借後に、P2の支出負担で改装工事や設備投資がされたが、原告と被告モデル屋本舗の間においては、本件不動産の内装及び設備は、被告モデル屋本舗の所有物であるとの確認がされているし、また本件不動産の賃料の支払については、被告らが賃貸人である株式会社富士コミュニティー(以下「富士コミュニティー」という。)に振り込んで支払う旨の合意もされ、現にそうしていた。 賃貸人である富士コミュニティーも、仲介業者を介して、本件不動産を使用する主体が被告モデル屋本舗であることを認識し、了解していたのであるから、原告と被告モデル屋本舗の間には転貸借契約が締結されていたといえる。 (原告の主張) 本件不動産は、原告が賃借人となって富士コミュニティーと契約を締結して賃借したものであり、その旨の契約書も作成されている。また、原告が賃借人になるから、原告の父にその保証人になってもらっている。 被告モデル屋本舗は、本件不動産の実質的賃借人は被告モデル屋本舗であるとし、原告と被告モデル屋本舗の間には転貸借契約が締結されている旨主張するが否認する。 6 争点(6)(平成26年11月28日にされた合意又はその債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の原告に対する請求権の存否) (被告モデル屋本舗の主張) 本件話合いにおいて、原告及び被告らの間で、本件事業に関連する一切の権利が依然として被告モデル屋本舗に帰属することを前提として、以下の本件合意アないしウがされたが、その未払等があるので以下のとおり請求する。 (1) 本件合意アに基づく請求について ア 本件話合いにおいて、本件事業の運営を原告に一任することになり、かつ、1日当たりの公演で1万円程度の収支差額は見込まれたことから、原告が、本件グループに関して被告モデル屋本舗の保有する権利(本件グループの作品に関する著作権、営業権や、本件不動産の賃借権、本件不動産の備品及び本件グループに関して製作された動産の所有権、並びにP2が選択し購入したメンバーの衣装の所有権及び使用権等を含む。)を使用して候補生が参加しない本件グループの公演等を行った場合には、被告モデル屋本舗に対し、本件不動産での公演1日当たりにつき1万円の金額を支払う旨の合意がされた(以下、この合意を「本件合意ア」という。)。 イ 原告は、平成28年5月分まで、木曜日の公演を除く公演について1日1万円を支払ったが、以下のとおりの未払がある。 (ア) 平成29年3月24日までの間 原告は、平成28年5月まで、木曜日の公演を除き公演1日当たり1万円の金員を被告モデル屋本舗に支払い、その後は支払を一切していないが、その間を含む平成27年4月11日から平成28年9月8日までの間は、候補生2名が正式メンバーに昇格していたから、木曜日の公演であっても支払対象となり、その回数は32回ある。そのほか同年12月1日も木曜日であるが、候補生が出演しない公演であったから支払対象となり、この木曜日の公演を含むと合計33万円の未払がある。 また原告が支払を止めた後、同年6月1日から平成29年3月24日までの間で、木曜日以外の公演が69回開催されているから69万円が未払である。 (イ) 平成29年3月25日から平成30年2月8日まで間この間の候補生が参加した木曜日の公演を除く公演の回数は95回であるから、95万円の未払がある。 ウ したがって、原告は被告モデル屋本舗に対し、本件合意アに基づき、上記未払合計額197万円の支払を求める。 (2) 本件合意イに基づく請求について ア 本件話合いにおいて、原告と被告モデル屋本舗間において、原告が本件グループのCDを販売した場合、原告は、売上代金の半額を被告モデル屋本舗に支払う旨の合意がされた(以下、この合意を「本件合意イ」という。)。 イ 原告は、本件合意イに従い、その支払をしていたが、平成27年5月以降に販売したCD分については、一切の支払をしない。 原告は、別紙CD販売一覧表記載のCDを発売し、同表記載の販売枚数の販売があったから、本件合意イに基づく未払額は300万0500円である。 ウ したがって、原告は被告モデル屋本舗に対し、本件合意イに基づき、未払額300万0500円の支払を求める。 (3) 本件合意ウの債務不履行に基づく請求について ア 本件話合いにおいて、原告と被告モデル屋本舗は、被告モデル屋本舗が本件不動産の賃借権を有することを前提として、本件グループが本件不動産を使用しない日は、被告モデル屋本舗が本件不動産を使用して(被告モデル屋本舗が第三者に使用させることを含む。)収益を上げることを確認し、原告は、被告モデル屋本舗の使用(被告モデル屋本舗が第三者に使用させることを含む。)について必要な協力を行う旨の合意をした(以下、この合意を「本件合意ウ」という。)。 イ(ア) 被告モデル屋本舗は、毎週火曜日、株式会社バッシュエンターテイメント(以下「バッシュ」という。)に対して本件不動産を1回当たり1万円で使用させていたが、原告が、火曜日の公演前に本件不動産の入り口にゴミ袋を放置してバッシュの社長であるP7の気分を害したり、P2への相談なく勝手に本件不動産のミキサーを買い替え、バッシュに対して新しいミキサーの使用を制限したりしたために、バッシュからクレームが入り、平成27年4月は、通常の使用料の半額の1回当たり5000円に減額され、さらに同月をもってバッシュが使用を終了するところとなった。このようにバッシュに対して使用料を減額し、さらにバッシュによる本件不動産の使用が終了するに至ったのは、原告による本件合意ウの債務不履行の結果である。 (イ) また被告モデル屋本舗は、本件不動産を使用して収益を上げることも検討していたが、原告は、本件合意ウに反し、平成27年3月頃、P2に対し、本件不動産の鍵を引き渡すよう要求し、被告モデル屋本舗に対して本件不動産を使用させない態度を明確にした。その結果、被告モデル屋本舗は、事実上、本件不動産を使用することができなくなって収益を上げることもできなくなった。 (ウ) 平成27年3月25日から平成30年2月8日までの間において、被告モデル屋本舗が、本件不動産を使用して収益を上げられたはずの日数は、週3日として合計432日であるから、原告の本件合意ウの債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の損害は、逸失利益432万円に加え、平成27年4月分の減額額2万円の合計434万円を下らない。 ウ したがって、原告は被告モデル屋本舗に対し、本件合意ウの債務不履行に基づき434万円の損害賠償を請求する。 (原告の主張) (1) 本件合意アに基づく請求について ア 原告は、本件不動産内にある被告モデル屋本舗所有の動産を利用する対価として1万円を支払うことを合意したにすぎない。そして原告は、平成28年5月25日付けの通知書でした同動産の賃貸借契約解除の意思表示は、同月28日に被告モデル屋本舗に到達しているから、同日をもって、同動産の賃貸借契約は解除された。したがって、同日以降の公演につき1日当たり1万円を支払う義務はない。 また、木曜日の公演を支払対象外とする合意をしたものであり、それは候補生が参加しなくても同様である。木曜日の公演には、候補生のほか、正式メンバーの一部が出演しており、木曜日の公演の売上げから経費を差し引いた残りは、全て出演したメンバーに給料の補てんとして支払っていた。平成27年4月11日から平成28年9月7日までは候補生がいなかったが、この間行われていた木曜日の公演は、正式メンバー全員の出演ではなく、一部のメンバーによるものであり、経費を差し引いた残金は出演したメンバーに給料として支払っていたため、やはり利益が出ていなかった。原告は、木曜日の公演の趣旨を被告モデル屋本舗に対して本件話合い以前にも伝えていたし、本件話合いの際にも木曜日の公演については1万円の支払をしないことを確認し、その旨合意がされていた。 イ 被告モデル屋本舗の主張(1)イ(ア)につき、平成27年4月11日から平成28年9月8日までの間は正式メンバーで木曜日の公演をしていたこと、同期間の木曜日の公演が32回であることは認め、その余は否認する。また同(イ)につき、平成29年3月25日から平成30年2月8日までの間の候補生が参加した木曜日の公演を除く公演の回数が95回であることは認める。 (2) 本件合意イに基づく請求について ア 被告モデル屋本舗主張の本件合意イをした事実については、本件話合いがされた平成26年11月28日以前に被告らの費用で制作されたCDに限った合意であり、別紙CD販売一覧表記載のうち「タイタン/ナイツオブラウンド」を対象とする限度で認める。本件話合い以降に販売されたCDについては、被告モデル屋本舗は制作費用を負担しておらず、仮に原告が被告モデル屋本舗にCDの売上げの半額を支払うとの合意をしていたとすれば、原告は赤字になりかねず、そのような合意をする合理的な理由はない。 イ 別紙CD販売一覧表のうち「タイタン/ナイツオブラウンド」を1000枚制作し、950枚を販売した限度で認める。残50枚は無償譲渡であり、売上げはない。また、そのCD売上分29万9500円は支払済みである。 別紙CD販売一覧表記載のそのほかのCDについては、タイトル及び販売日は認め、また「シンドバッド/エンマ」及び「ソンゴクウ/ギャンブラー」について800枚を販売したことは認め、その余は否認ないし争う。 (3) 本件合意ウの債務不履行に基づく請求について被告モデル屋本舗主張の本件合意ウをした事実は否認する。 そもそも、本件不動産の賃借権は原告にあり、被告モデル屋本舗にはこれを第三者に転貸する権限はない。 また、本件話合い前に第三者が本件不動産を使用したのは2、3回にすぎず、被告モデル屋本舗のいう損害額に合理的根拠はない。被告モデル屋本舗がバッシュ以外の第三者に使用させて収益を上げる具体的可能性はないし、バッシュが本件不動産を使用しなくなった理由は、被告モデル屋本舗ないしP2がバッシュに対して本件不動産の使用料を1万5000円に値上げすると伝えたことによるものである。 第4 当裁判所の判断 1 本件の経緯について (1) 上記第2の1の各事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、本件の経緯について以下のとおりの事実が認められる。 ア 本件グループの立ち上げから活動開始に至る経緯等 (ア) 平成24年初め頃、<略>商店街を活性化させるためのプロジェクトの一つとして、同商店街を基盤として活動するアイドルグループを作ることとなり、当初、被告モデル屋本舗の事業として、「DIVA FACTORY」の名称で、被告モデル屋本舗所属のモデルでもあるP8が、そのプロジェクトの中心となって事業が進められていた(乙1、乙2、乙25の1、2)。 (イ) 本件グループの立上げには、複数の者が無償でボランティアとして手伝っていたが、原告も、アイドルグループの事業に興味を持って同年5月初旬から本件グループの事業に関与するようになり、マネージャーとしての仕事を担当することになった。 (ウ) 本件グループは、別紙本件グループメンバー表記載の旧名称で平成24年7月からグループとしての活動を始め、同年9月頃には、P8は、本件グループの事業に関与しないようになったが、各メンバーは、被告モデル屋本舗とマネジメント契約を締結し、業界においては、被告モデル屋本舗のアイドルグループと認知されていた。 被告モデル屋本舗においては、本件グループの活動に必要な動産類を、被告モデル屋本舗ないしP2が資金を支出して取得し、また、本件グループの活動に用いる楽曲の作詞者、作曲家との契約処理及び一部の作品についてのJASRACへの作品届等も、被告モデル屋本舗名義でしていた(乙6ないし乙22、乙26)。 (エ) 原告は、平成25年11月15日、本件グループの新しい活動拠点とするため、富士コミュニティーとの間で、平成26年1月1日を始期とする本件不動産の賃貸借契約を締結して、その引き渡しを受けた。なお、本件不動産の賃貸借契約は、原告が賃借人となっているが、これは被告モデル屋本舗が本件グループの活動拠点として本件不動産を賃借すると、労働者派遣業法の問題から2000万円の増資が必要となることから、原告において賃貸借契約を締結したものであり、賃貸人である富士コミュニティー及び原告においても、実質的な賃借人は被告モデル屋本舗であると認識していた(甲3、甲11の1・76頁)。 本件グループは、活動拠点を、常設のイベント会場として設置された「アイドルテラス」(本件不動産)に移転し、グループ名を別紙本件グループメンバー表記載の現名称に変更した。 (オ) 被告モデル屋本舗は、本件不動産につき、費用を負担して、本件グループの常設イベント会場とするため、必要な改装工事を施し、本件グループは、公演用の機材類も備えられた本件不動産を常設のイベント会場として、原則として、毎週水曜日、土曜日及び日曜日並びに隔週の木曜日に公演を行った。また、バッシュが、被告モデル屋本舗に使用料を払って、毎週火曜日に本件不動産を使用したアイドルのイベントを開催していた。 イ 本件話合いの内容 (ア) 平成26年11月頃、P2とメンバーAとの関係が問題となり、同月25日、マネージャーを務める原告の判断でメンバーAが本件グループを脱退することになり、これを受けて同月28日、原告及びメンバーAを含む本件グループのメンバーとP2の間で本件話合いがされた。 (イ) 本件話合いでは、少なくともP2が、本件グループのメンバーと連絡を取らないことなどが求められ、この点はすみやかにP2が承諾するところとなったが、P2は、本件グループの活動に関与しないとしても、単純にすべての資産の寄贈を求めるような原告及び本件グループのメンバーの発言に反発し、本件グループの活動継続を望んでおり、その活動のために購入等した設備、機材類を引き上げる意思もないが、だからといって、そのために費やした資本の回収機会が全くなくなることまでは受け入れようとせず、本件グループの活動が続く限り、月額5万円程度の支払でもされることを求めた。 他方、原告は、当初、P2ないし被告モデル屋本舗が事業用の資産を引き上げることで本件グループの活動に支障が生じることをおそれ、P2に対し、本件グループが解散して活動を止めれば投下資本の回収の余地は全くなくなることを示唆して譲歩を求め、最終的には、少なくとも本件不動産における木曜日を除く公演につき、1 日当たり 1 万円の支払のほか、本件グループのCDの売上げの半額を被告モデル屋本舗に支払う旨、本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間のマネジメント契約が明確に解除される旨が合意された。 本件話合いの場では、P2において、CDの著作権は被告モデル屋本舗が持っているが、その著作権利用料の支払が微々たるものである旨の発言がされ、原告もその発言内容を肯定していた(甲11の1・75頁)。 なお、その当時、本件グループは、事業として収益をあげるような活動ができていたわけではなく、原告自身は、ほとんど無償で稼働していた。 ウ 本件話合い後の状況 (ア) 本件話合い後、原告は、被告モデル屋本舗に対し、平成27年3月頃まで、本件グループの本件不動産における公演につき、その報告をするとともに、木曜日を除き1日当たり1万円を支払うほか、CDの売上げについても、同年4月までの間、本件話合い以前に被告モデル屋本舗の負担で発売に至ったCDにつき、その売上枚数を報告するとともに、その売上げの半額を支払った。ただし、本件不動産での公演に伴う使用料の名目について、原告は、「機材のレンタル代」と表現していた(甲39)。 (イ) バッシュは、1回1万円の使用料を被告モデル屋本舗に支払って本件不動産を毎週火曜日に使用し、同社主催のアイドルのイベントを開催していたが、同イベントを平成27年4月で終了し、その後、本件不動産を使用することを止めた(甲10、乙43の4)。 (ウ) 原告は、平成27年3月7日、本件話合いでされた合意内容を確認するものとして「合意書」と題する文書ファイルを被告モデル屋本舗宛てに送信したところ、P2は、その内容に反発し、同日、被告モデル屋本舗の作成名義で、本件訴訟で対象としている楽曲及び歌詞の著作物(以下「本件著作物」という。)すべてと「天命のプレアデス」という曲名の楽曲の著作権が被告モデル屋本舗にあることを前提に、その使用を認めない旨の通知書を送信した(甲4、乙40)。 (エ) その後、原告の訴訟代理人弁護士が関与して、同代理人と被告らとの間で協議が続けられたが、原告は、平成28年5月、本件不動産内の機材類の賃貸借契約を解除した旨通知し、その機材類を本件不動産内から撤去し、これを別場所で保管するようになり、その状態が継続している(甲9の1、乙41)。 (オ) 原告は、平成28年6月8日、被告らに対し、本件グループの営業権、本件不動産の賃借権、本件動産の所有権、本件著作物の著作権を原告が有し、また匿名組合契約終了に伴う出資金返還債務及び組合解散に伴う持分払戻債務を負わないことの確認を求めて、本件訴訟を提起した。 (2) 以上より検討すると、原告は、まず本件話合い以前の本件グループを巡り、原告と被告らとの間に本件組合契約が締結されていたであるとか、原告を営業者、P2を出資者とする本件匿名組合契約が締結されていたなどと主張しているが、本件グループの活動をしていく上で原告の役割が大きかったことは認められるものの、本件グループの各メンバーは、当初から被告モデル屋本舗と専属マネジメント契約を締結していたものであるし、その楽曲の管理も被告モデル屋本舗名義でされ、活動拠点も被告モデル屋本舗で準備し提供されていたというのであるから、本件グループの事業は、法的には被告モデル屋本舗の事業であるとみるべきであって、原告自身も、その旨を認識していたことは本件話合いにおける発言内容からも十分うかがい知れるところであって、これと異なる本件における原告の主張は採用できない。 そして、本件話合いによりされた合意については、本件組合契約及び本件匿名組合契約を前提とする主張が失当であることをさておき、原告の主張は要するに本件話合い当時に存在した本件グループに関連する事業資産はすべて原告のものであることが合意された趣旨をいうものと理解したとしても、本件話合い当時、P2は被告モデル屋本舗ないしP2においてした出資の回収にこだわっていたことが明らかであって、出資により得られた資産を単純に原告の所有とする包括的な合意がされたとはおよそ認められないから、その話合いの趣旨から認定し得る合意内容は、個別の資産ごとに認定していくべきものである。 なお、本件話合いの結果、本件グループのために調達された資産類を本件グループの活動に従来どおり利用することは許され、被告らは少額の対価を得ることで満足する旨で合意されているということは認められるが、それは本件話合い時に、原告あるいは本件グループのメンバーが示唆したように、本件グループが解散するなどした場合、それらの資産が無価値に帰するのであるから、P2において、それらの資産を利用して本件グループの活動を続け、その売上げから少額でも支払をしてもらえればよいということで妥協しているにすぎず、その対価を得ることで資産が譲渡されたことが推認されるわけではない。 以上を踏まえ、本件話合いでされたという原告主張に係る本件合意アないしウを含め本件の争点について判断する。 2 争点(1)(本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間に、別紙契約目録記載の各契約が存在するか。)について 原告は、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間の契約という原告自身が権利義務の主体でない契約の不存在の確認を求めている。 これは、現在、本件グループの運営主体を巡って原告と被告モデル屋本舗との間に紛争があることから、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間に契約がないことを確定し、もって上記紛争に一定の解決を得ようとするものと解される。 確かに、訴訟物たる権利義務の主体でない者も、その権利義務の存否の確認によって自らの実体法的地位を確保できる関係にあるならば、適格が認められるといえるが、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間の契約が存在しないことが確認されたとしても、原告とメンバー1ないし7との間に契約があることが確認される、すなわち原告の実体法的地位を確保できる関係にあるわけではないから、原告の求める確認の訴えについて、原告に適格があるということはできない。 したがって、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間に各メンバーに対応する別紙契約目録記載1ないし7の各契約の存在しないことの確認を求める原告の訴えはいずれも不適法である。 3 争点(2)(原告は、別紙債務目録記載1の債務を被告モデル屋本舗に対し、同目録記載2、3の債務をP2に対して負っているか。)について (1) 原告は、被告モデル屋本舗との間では、本件組合契約の締結及び被告モデル屋本舗の脱退を前提に、原告の被告モデル屋本舗に対する別紙債務目録記載1の債務が存在しないことの確認を求めている。 しかし、被告モデル屋本舗は、原告との間で組合契約を締結したことを否認して争っており、その組合から脱退することを前提とする持分払戻請求権の存在を原告に対して主張しているわけではないから、被告モデル屋本舗が主張するとおり、現時点において、原告の主張する別紙債務目録記載1の債務の存否について当事者間に争いがあるわけではない。 なお、現時点では、当該債務の前提となる原告主張の本件組合契約締結の事実の存否が確定していないから、同契約の締結及び被告モデル屋本舗の脱退が認められた場合には、その後、被告モデル屋本舗の原告に対する持分払戻請求権の存否が問題にされ得る可能性は残されることになるが、そうであったとしても、少なくともそのような権利関係の争いが、現時点で顕在化しているとはいえない。 したがって、以上の事実関係のもとでは、原告と被告モデル屋本舗との間で別紙債務目録記載1の債務の不存在を確認する利益があるとはいえないから、その確認を求める訴えは不適法である。 (2) また原告は、P2との間で、原告のP2に対する別紙債務目録記載2、3の債務が存在しないことの確認を求めている。 しかし、P2についても、被告モデル屋本舗同様に、原告がP2に対して別紙債務目録記載2、3の債務を負っていると主張しているわけではないから、現時点において、原告の主張する別紙債務目録記載2、3の債務の存否について当事者間に争いがあるわけではない。 なお、現時点では、当該債務の前提となる原告主張の本件組合契約ないし本件匿名組合契約締結の事実の存否が確定していないから、将来的にP2の原告に対する持分払戻請求権、又は匿名組合契約に基づく出資金の返還請求権の存否が問題にされ得る可能性は残されることになるが、そうであったとしても、少なくともそのような権利関係の争いが、現時点で顕在化しているわけではない。 したがって、以上の事実関係のもとでは、原告とP2との間で別紙債務目録記載2、3の債務の不存在を確認する利益があるとはいえないから、その確認を求める訴えはいずれも不適法である。 4 争点(3)(原告は、別紙動産目録記載の動産について所有権を有するか。)について 被告モデル屋本舗が第三者に対し、本件動産を発注して製作させたことは当事者間に争いがないから、本件動産は被告モデル屋本舗の所有物であるということになる。 原告は、以上を前提に、本件話合いにより本件動産が原告の所有であることが合意された旨を主張するところ、原告の主張する組合契約及び匿名組合契約を前提とする主張が失当であり、また本件グループのために取得されたすべての資産類が単純に原告の所有となる旨の包括的合意がされたとは認められないという点は上記1(2)で判示したとおりである。 なお、本件動産は、他の資産類とは異なり、その性質上、本件グループのイベントに来たファンに販売するDVDやグッズの類であり、本件グループの活動が継続する限り、その活動の場で処分されていくものであり、本件話合いにおけるP2の発言にも動産が処分されていくことを前提にした部分があるが(甲11の1・50頁)、その趣旨はその売買代金を資本回収の一部に充てようとする趣旨に解されるものであって、積極的に所有権を原告に譲渡する趣旨であるとは解されない。 そのほか、原告において本件動産の所有権を取得する原因事実の主張立証はないから、これらが原告の所有であることは認められない。 したがって、本件動産が原告の所有であることの確認を求める請求には理由がない。 5 争点(4)(原告は、別紙楽曲目録記載の楽曲及び別紙歌詞目録記載の歌詞について著作権を有するか。)について (1) 本件楽曲の著作権について 本件楽曲の著作者が、別紙楽曲目録2記載のとおりであり、原告は、被告モデル屋本舗が、本件組合の事業としてこれを譲り受け、本件組合の財産になった旨主張するが、本件組合契約が認められないことは上記1(2)で判示したとおりであり、また匿名組合契約についての主張が認められないことも同様であるから、これらは被告モデル屋本舗が主体となって譲り受け、被告モデル屋本舗に帰属したというべきである。 原告は、被告モデル屋本舗の資産であっても、本件話合いによって原告に譲渡されたように主張するが、本件話合いの内容は、上記1(2)のとおりであって、原告が主張するように本件グループの活動に必要な資産が単純に原告に譲渡されるような包括的な合意がされたとは認められず、また楽曲の著作権はJASRACによって管理されているから、上記4で検討したファン向けに販売を予定した動産のように、その管理処分権を原告に与えなければならないような事情も見当たらない。 したがって、本件話合い後も本件楽曲の著作権は、被告モデル屋本舗が有していることに変わりはないから、その権利者であることの確認を求める原告の請求には理由がない。 (2) 本件歌詞の著作権について ア 歌詞1ないし6について 上記歌詞については、著作者が原告であることは当事者間に争いがないから、その原始的な著作権者は原告であるということになる。 被告モデル屋本舗は、原告がその著作権を被告モデル屋本舗に譲渡した旨主張するところ、確かに証拠(乙13、乙15、乙17ないし乙22)によれば、被告モデル屋本舗が、それら歌詞の著作権をJASRACに信託譲渡していることが認められる。 しかし、その前段階である原告から被告モデル屋本舗に対する歌詞1ないし6の著作権譲渡がされたことを示す具体的証拠があるわけではないし、上記信託契約にしても、原告が何らかの形で関わった事実をうかがわせる証拠があるわけではない。また後記検討するように歌詞7、9及び10については、被告モデル屋本舗は、その著作者に対して対価を支払って著作権の譲渡を受けているが、原告著作に係る歌詞の著作権譲渡に関連して、被告モデル屋本舗が原告に対して対価を支払った事実も認められない。そして、証拠(乙39の6ないし14)によれば、原告は、著作権の管理がどのようにされていたかさえ明確に認識していなかった様子がうかがえるから、このことはむしろ、原告から被告モデル屋本舗への著作権譲渡がされた事実がないことを示しているということができる。 そうすると原告から被告モデル屋本舗に著作権が譲渡されたことを認めることができないから、歌詞1ないし6の著作権は、なお原告が有していると認められる。 イ 歌詞7について 上記歌詞については、P3が著作者である限度で当事者間に争いがなく、原告は、これに加えて原告自身も著作者であって共同著作である旨主張する。 しかし、原告作成の陳述書(甲21)には、P3が作成した歌詞に原告が手を加えて作成した旨の記載があるが、それ以上の立証はなく、これでは、その関与の程度が共同著作者足り得るに至っているかを判断するに足りないから、原告をもって共同著作者と認めることはできない。 また原告は、本件組合契約あるいは本件匿名組合契約を前提とする取得原因、あるいは本件話合いにより上記歌詞の著作権を取得した旨も主張するが、それらの前提となる主張が認められないことは上記1で判示したとおりである。 したがって、原告が歌詞7の著作権を有すると認めることはできないから、その確認を求める請求には理由がない。 ウ 歌詞8ないし13について 上記歌詞の著作者が少なくとも原告ではないことは当事者間に争いがないから、ここでは原告の著作権取得原因が問題となる。 しかし、原告の取得原因は、いずれも本件組合契約あるいは本件匿名組合契約を前提とする取得原因、あるいは本件話合いによる取得をいうものであるが、それらの前提となる主張が認められないことは上記1で判示したとおりである。 したがって、原告が歌詞8ないし13の著作権を有すると認めることはできないから、その確認を求める請求には理由がない。 6 争点(5)(被告モデル屋本舗は、別紙不動産目録記載の不動産について転借権を有するか。)について 原告と富士コミュニティーとの間に、本件不動産の賃貸借契約が締結されていることは当事者間に争いがない。 しかしながら、証拠(甲11の1・63頁、乙6、乙27、乙28の1、2)によれば、@原告が賃借人となって賃貸借契約を締結したのは、労働者派遣事業を営む被告モデル屋本舗が、本件グループの活動拠点とするため本件不動産を賃借した場合、事業所を増やしたことになって2000万円の増資をする必要があったことから、これを避けるために原告名義で賃貸借契約を締結したものであって、そのことは原告も了解し、また賃貸人である富士コミュニティーも予め承諾していたこと、A賃借後、本件不動産は被告らの負担によって本件グループの活動拠点として利用できるよう改装され、現に本件グループの活動拠点として利用されてきており、被告モデル屋本舗において鍵を所持して管理していたこと、B本件話合い以前は、被告モデル屋本舗において富士コミュニティーに対する賃料の支払をしていたこと、以上の事実が認められる。 そうすると、本件賃貸借契約は、賃借人は原告であるものの、当初から、賃貸人承諾のもと、被告モデル屋本舗が占有主体となって利用することが予定されていて、現にそのようにされてきており、富士コミュニティー、原告及び被告モデル屋本舗との間では、本件不動産の実質的な賃借人は被告モデル屋本舗との認識で一致していたと認めることができるから、富士コミュニティーと原告との間の賃貸借契約を前提として、この関係を法的に整理するならば、原告と被告モデル屋本舗との間には本件不動産の転貸借契約が存在していることになる。 したがって、その終了事由が主張も立証もされていない以上、被告モデル屋本舗は原告に対して、本件不動産の転借権を有しているということになるから、その不存在の確認を求める原告請求には理由がない。 7 争点(6)(平成26年11月28日にされた合意又はその債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の原告に対する請求権の存否)について (1) 本件合意アに基づく請求について ア 本件話合いにより、本件グループが本件不動産で公演をした場合、1日当たり1万円を支払う旨の合意がされたこと、本件話合い後、平成28年5月まで原告は、被告モデル屋本舗に対し、本件グループの木曜日の公演を除く公演1日につき1万円を支払っていたことは当事者間に争いがない。 しかし、その支払根拠となる合意の趣旨につき、被告モデル屋本舗は、本件グループに関して被告モデル屋本舗の保有する諸々の権利の使用対価の趣旨であると主張して請求しているのに対し、原告は、これを否認し、本件不動産内にある被告モデル屋本舗所有の動産の賃貸借契約の趣旨であり、既に同契約を解除して使用していないとして支払義務を争っている。また、木曜日の公演が除外された趣旨について被告モデル屋本舗は、候補生が参加しない公演についても支払義務があると主張して請求しているが、原告は、本件グループのメンバー全員が揃った公演のみが支払の対象になるとして争っている。 イ そこでまず、公演1日当たり1万円を支払う旨の合意の趣旨について検討する が、本件話合いの会話内容(甲11の1、3)からは、P2は、本件グループの活動に関与できなくなるとしても、本件不動産を常設イベント会場に改装するための費用のほか、それまでの本件グループの活動のために費やした資本を回収できなくなることを問題にし、そこで投下資本の回収方法として、本件グループの公演(売上げが期待できない木曜日の公演を除く。)での売上げを原資として、原告の納得の得られやすい「「テラス」のレンタル料」としての支払を提案したものと認められ、また原告においても、P2が投下資本の回収を問題にし、その手段として上記提案に至ったことを理解した上で、その支払に同意していた様子が認められる。なお、本件話合い中のP2の提案に対する原告の応答の中には、機材を借りる対価であるように表現する部分(甲11の1・68頁)があったりするが、本件話合いの全体の趣旨からすると、合意された内容が、本件不動産内の動産の賃貸借という限定したものでないことは明らかであり、現に原告がP2宛に送信したメール(乙39の2、3、8、13、22)をみると、本件話合い後間もなくは、漠然と「テラス」の「レンタル料」と表現していたことが認められるから、動産の賃貸借契約であるように限定する原告の主張を採用することはできない。 ウ 次いで木曜日の公演を支払対象から除いた趣旨について検討すると、証拠(乙23、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件話合い当時、本件不動産における本件グループの公演には、本件グループのメンバーが全員揃ってする「玉手箱」と称するものと、木曜日に開催される候補生と本件グループのメンバーが数人加わってする「木曜ファンファーレ」と称するものがあり、木曜日の公演では、多くの売上げが望めず、そのことは原告及びP2の共通認識となっていたものと認められ、P2においては、本件グループの活動を維持していくために原告の支払の負担にならないよう木曜日の公演は対象外とすることで提案し、それによって合意となったことが認められる。 そうすると、被告モデル屋本舗が請求対象としている本件グループに候補生がいなくなった期間の木曜日の公演は、本件話合いにおいて支払対象から除外した候補生が参加する公演ではないが、前掲証拠によれば、「木曜ファンファーレ」と称する公演は、本件グループの全員が出演していないために、その売上げが本件グループのメンバー全員が揃う「玉手箱」に劣るであろうことに変わりなく、結局、上記合意の前提とした事情と変わりがあるわけではない。また、P2は、本件グループにおいては、平成27年4月11日に候補生2名が正式メンバーに昇格して、木曜日の公演も本件グループの正式メンバーだけでされていたことを知っていたはずであるが、平成28年5月時点まで原告から公演1日当たり1万円の支払を受けながら、そのことを指摘した事実が認められないから、P2においても、本件グループの活動維持のため木曜日の公演について支払を求めるべきではないという認識は維持されていたものと推認できる。 したがって、原告の未払額については、木曜日の公演を除いて認定するのが相当である。 エ そこで、上記内容の合意であることを前提に原告の未払額について検討すると、証拠(乙23)及び弁論の全趣旨によれば、平成28年6月1日から平成29年3月24日までの間の木曜日以外の公演回数は69回であると認められる。 また、同月25日から平成30年2月8日までの、候補生が出演した木曜日公演5回を除く公演の回数が95回であることは当事者間に争いがないところ、前掲証拠(乙23)によれば、そのほぼ2年前である平成27年4月から平成28年3月までに「木曜ファンファーレ」が23回開催されていることが認められるから、上記対象期間中、本件不動産において木曜日の公演が21回開催されたと推認することができ、これを考慮すると、平成29年3月25日から平成30年2月8日までの木曜日を除く公演回数は74回と認定するのが相当である(なお、同期間の最終日は木曜日であるから公演はなく、最終の公演は「玉手箱」が開催される同月7日と認められる。)。 オ したがって、本件合意アに基づく原告の被告モデル屋本舗に対する未払額は、 平成29年3月24日以前の対象公演69回分に相当する69万円と、同月25日から平成30年2月8日までの対象公演74回分に相当する74万円と認められる。 (2) 本件合意イに基づく請求について ア 原告と被告モデル屋本舗間に、原告が本件グループのCDを販売した場合、原告は、売上代金の半額を被告モデル屋本舗に支払う旨の合意がされたことは当事者間に争いがなく、被告モデル屋本舗は、この対象となるCDが無限定であることを前提に請求しているのに対し、原告は、本件話合い以前に被告モデル屋本舗あるいはP2が制作費を負担したCDだけが対象であると争っている。 この点についても、本件話合いにおける発言内容(甲11の1、3)からすると、P2は、本件グループの活動のために費やした資本の回収を問題にしていたことに加え、その発言内容から、当面の問題としては制作資金を負担したCDの売上げを問題にしていたことがうかがえる。また、被告らの負担で制作されたCDであるなら、当面の紛争解決のため、その売上げの半額を被告モデル屋本舗に支払うということは合意内容として合理的と考えられるが、今後、被告モデル屋本舗が関与しない本件グループの活動において、原告の負担で制作するCDの売上げの半額までも被告モデル屋本舗に支払うという内容は、対象が特定されていないだけではなく、負担として過大であり、むしろ不合理というべきであるから、その内容で原告が同意したとは考えられない。 したがって、本件合意イは、原告の自認限度の合意、すなわち本件話合い以前に被告らの負担で制作されたCDを対象とするものと認定するのが相当である。 イ そこで、上記内容の合意であることを前提に原告の未払額について検討すると、合意内容により原告に支払義務がある対象となるCDは、平成26年11月26日に販売された別紙CD販売一覧表記載の「タイタン/ナイツオブラウンド」のみであり、またその売上げについても、制作した1000枚のうち950枚を販売した事実の限度では当事者間に争いがないが、その余について認めるに足りる証拠はないから、総売上額は95万円となり、上記合意に基づく支払義務のある額は47万5000円となる。 そうすると、これから原告の既払額である29万9500円を控除すると、未払額は平成29年3月24日以前に発生した未払分である17万5500円であり、被告モデル屋本舗の上記合意に基づく請求はその限度で理由がある。 (3) 本件合意ウの債務不履行に基づく請求について 本件合意ウに基づく請求は、要するに被告モデル屋本舗が本件不動産を第三者に利用させて収益を得る機会を原告が妨害したから、その逸失利益の損害賠償を請求するものと理解できる。 しかし、本件不動産を毎週火曜日に使用していたバッシュが、平成27年4月28日を最後として、本件不動産の使用を止めた点については、証拠(甲10、乙42の1ないし5、乙43の1ないし4)によれば、バッシュは、その経営判断で本件不動産の使用を止めたものにすぎないものと認められ、これと異なるP2の供述は具体的な裏付けがあるわけではなく採用できない。 また被告モデル屋本舗は、平成27年3月以降、本件不動産の鍵の返還を求められて事実上使用ができなくなって損害を受けたようにも主張するところ、確かに証拠(乙41)によれば、原告は、平成27年4月3日付け本件訴訟代理人弁護士作成に係る内容証明郵便で被告モデル屋本舗に対して鍵の返還を求めているが、その鍵は返還されているわけではないし、またバッシュが使用を止めた後、それ以外の者による本件不動産の利用希望が具体的にあった事実は認められないから、原告の鍵返還請求のために被告モデル屋本舗としての積極的活動を控えることになったとしても、本件不動産の特殊性に鑑みれば、被告モデル屋本舗の主張するような抽象的な利用可能性をもって逸失利益が生じたとは認められない。 したがって、被告モデル屋本舗主張の本件合意ウの債務不履行を理由とする損害賠償請求は、その余の点の判断に及ぶまでもなく理由がない。 8 まとめ (1) 原告の請求について 原告の請求のうち、原告と被告モデル屋本舗との間で、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間に同メンバーに対応する別紙契約目録記載1ないし7の各契約が存在しないことの確認を求める訴え及び原告の被告モデル屋本舗に対する別紙債務目録記載1の債務が存在しないことの確認を求める訴え、並びに原告とP2との間で、原告のP2に対する別紙債務目録記載2、3の債務が存在しないことの確認を求める訴えは、いずれも不適法であり却下すべきである。 その余の原告の被告モデル屋本舗に対する請求は、原告が歌詞1ないし6について著作権を有することの確認を求める限度で理由があるから、その限度で認容することとし、その余は理由がないから、棄却すべきである。 (2) 被告モデル屋本舗の請求について 被告モデル屋本舗の原告に対する請求は、本件話合いにおける合意に基づき本件グループの本件不動産における本件公演開催に伴う未払額143万円及びCD販売に伴う未払額17万5500円の合計160万5500円並びに本件公演開催に伴う未払額のうち69万円とCD販売に伴う未払額17万5500円に対する反訴状送達による催告の日の翌日である平成29年3月30日から、本件公演開催に伴う未払額73万円に対する反訴請求に係る訴えの変更申立書送達による催告の日の翌日である平成30年2月6日から、本件公演開催に伴う未払額1万円に対する反訴請求に係る訴えの変更申立書を陳述して催告した本件の第2回口頭弁論期日の日の翌日である同月9日から、それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 9 よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判官 野上誠一 裁判長裁判官 森崎英二及び裁判官大川潤子は転補により署名押印することができない。 裁判官 野上誠一 (別紙)本件グループメンバー表 グループ名 旧名称 JSO、 現名称 天空音パレード 1 P9 2 P10 3 P11 4 P12 5 P13 6 P14 7 P15 (別紙)契約目録 1 P9は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 2 P10は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 3 P11は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 4 P12は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 5 P13は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 6 P14は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 7 P15は、被告株式会社モデル屋本舗の専属タレントとして、音楽演奏会、映画、演劇、テレビ、雑誌、写真集、CM、ラジオ、レコード、ビデオテープ、音楽テープ、コンパクトディスク、DVD、インターネットコンテンツ、講演などの芸能に関する出演の他、それに関するすべての活動について、被告株式会社モデル屋本舗の指示に従って上記活動を提供することとし、被告株式会社モデル屋本舗の承諾がない限り、被告株式会社モデル屋本舗の指示する者以外に対して上記活動を提供することができない。 (別紙)債務目録 1 被告モデル屋本舗に対する組合契約の解散に基づく持分の払戻債務 原告の被告モデル屋本舗に対する、平成24年4月頃に原告、P2及び被告モデル屋本舗との間で締結された組合契約の解散に基づく持分の払戻債務 2 匿名組合契約の終了に基づく出資金返還債務 原告のP2に対する、平成24年4月頃に原告とP2との間で締結された匿名組合契約の終了に基づく出資金返還債務 3 P2に対する組合契約の解散に基づく持分の払戻債務 原告のP2に対する、平成24年4月頃に原告、P2及び被告モデル屋本舗との間で締結された組合契約の解散に基づく持分の払戻債務 (別紙)CD販売一覧表
(別紙)歌詞目録2
(別紙)楽曲目録
(別紙)楽曲目録2
(別紙)動産目録
(別紙)不動産目録
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