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【事件名】ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件C
【年月日】平成30年4月13日
 東京地裁 平成30年(ワ)第274号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成30年3月7日)

判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士 清水陽平
被告 ソフトバンク株式会社
同訴訟代理人弁護士 五十嵐敦
同 梶原圭
同 小塩康祐
同 丸住憲司
同 稲葉大輔
同 中山祥
同 藤井康太
同 大山貴俊
同 菅野邑斗
同 四方岳
同 丸山駿


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
 本件は、原告が、氏名不詳者がインターネット上のブログに投稿した記事は原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから、同行為により原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項の開示関係役務提供者である被告に対し、同項に基づき、被告の保有する発信者情報の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。)
(1) 被告は、電気通信事業を営み、インターネット接続サービスを提供する株式会社である。
(2) 氏名不詳者による画像の投稿
 氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は、別紙投稿記事目録1〜5記載の各日時において、インターネット上のブログ「livedoor Blog」(以下「本件ブログ」という。)に同別紙記載の各記事(以下、同目録記載の番号に従い「本件記事1」などといい、これらを併せて「本件各記事」という。)を投稿し、不特定多数に送信した。
 別紙著作物目録記載の各写真(以下、同目録記載の番号に従い「原告画像1」などといい、これらを併せて「原告各画像」という。)のうち、本件記事1には原告画像1〜3(ただし、同写真3については上下を切除する加工がされている。)、本件記事2には原告画像4及び5(ただし、同各写真については両端を切除する加工がされている。)、本件記事3には原告画像6(ただし、同写真についてはハート型に切り取られる加工がされている。)、本件記事4には原告画像7並びに本件記事5には原告画像8がそれぞれ掲載されている。
(甲1の1〜5、甲8の1〜3)
(3) 被告による情報の保有
 被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の開示関係役務提供者に該当し、別紙発信者情報目録記載の各発信者情報を保有している。
2 争点
(1) 権利侵害の明白性
(2) 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(権利侵害の明白性)について
〔原告の主張〕
 原告各画像はいずれも原告が著作権を有する著作物であり、同各画像に係る原告の権利(同各画像について著作権、原告画像6については予備的に肖像権)が侵害されたことは明らかである。
(1) 原告各画像は、原告自身が被写体の配置、ポーズ、調光等を考えて撮影したものであり、思想又は感情を創作的に表現したものである。
(2) 原告画像6は、原告のスマートフォンを夫に一時的に貸与して撮影してもらったものであり、その著作権は原告の夫から原告に対して黙示的に譲渡されている。
(3) 本件各記事に原告各画像を掲載することは、私的使用(著作権法30条1項)や引用(同法32条1項)その他の制限事由に該当しない。
(4) 仮に原告画像6の著作権が原告に帰属しないとしても、同画像には原告の容姿が写っており、肖像権侵害を構成する。
〔被告の主張〕
(1) 原告画像1〜8は、人物の全身若しくは上半身又は物品(洋服、バッグ、時計、靴等)の全部若しくは一部をありふれた構図で撮影した写真であり、著作物の要件である創作性を有しない。
(2) 原告各画像のうち、原告画像6については、仮に原告の夫が撮影したものであるとしても、原告に対してインスタグラムへの投稿の限度でのみ使用許諾した可能性を否定できず、その著作権が原告に帰属するとはいえない。
(3) 本件各写真に著作物性が認められ、その著作権が原告に帰属しているとしても、著作権法30条以下に定める制限事由がいずれも存在しないことが明らかとはいえない。
(4) 原告画像6に関する肖像権侵害の主張については、同画像は被写体の顔が不鮮明である上、原告がインスタグラムにおいて自ら公開している画像であり、同画像の掲載について原告の同意が得られていないことが客観的に証明されていないので、肖像権侵害が明らかとはいえない。
2 争点(2)(発信者情報の開示を受けるべき正当理由の有無)について
〔原告の主張〕
 原告は、本件発信者に対して著作権侵害に基づく損害賠償を請求するため、被告に対し、本件発信者の本件発信者情報の開示を求めるものであり、正当理由の要件を充足している。
 被告は電子メールアドレスの開示を不要と主張するが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令は、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報としている。被告の保有する住所、氏名が必ずしも正確とは限らず、電子メールアドレスで発信者を特定することができる可能性もあるのであるから、電子メールアドレスの開示は必要である。
〔被告の主張〕
 本件各発信者の氏名又は名称及び住所の開示があれば、損害賠償請求等を行うことは可能であるから、これに加えて、電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由は存在しない。
第4 争点に対する判断
1 争点1(権利侵害の明白性)について
(1) 氏名不詳者が本件ブログに原告各画像の掲載された本件各記事を投稿し、不特定多数に送信したとの事実が認められることは、前記第2の1(2)のとおりである。
(2) 被告は、原告各画像はありふれたものにすぎず創作性を有しないと主張するが、原告各画像はその被写体につき構図や撮影角度、被写体との距離など目的に応じた撮影方法を選択しているものと認められ、撮影者の思想、感情が創作的に表現されたものであるということができるので、原告各画像はいずれも著作権法2条1項1号の「著作物」に当たる。
(3) 被告は、原告画像6の著作権が原告に帰属することを争うが、証拠(甲2、弁論の全趣旨)によれば、同画像は原告の夫が原告の依頼に基づき撮影したものであり、撮影に使用したのは原告のスマートフォンであるとの事実を認めることができる。これによれば、同画像6の著作権は原告の夫から原告に黙示的に移転しているものということができるので、同画像の著作権は原告に帰属する。
(4) 被告は、著作権法30条以下に定める制限事由がいずれも存在しないことが明らかであるとはいえない旨主張するが、原告各画像に係る著作権を制限する事由が存在すると認めるに足りる証拠はない。
(5) したがって、本件各記事が本件ブログに掲載されたことによって原告の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。
2 争点2(発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無)について
 原告が本件発信者に対して原告各画像の複製権及び公衆送信権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使するためには、その発信者情報の開示が必要であると認められる。
 開示すべき発信者情報に関し、被告は、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張するが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者の実際の住所が、被告が本件発信者の住所として所持しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできない。
 したがって、原告には被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認められる。
3 結論
 よって、本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 佐藤達文
 裁判官 遠山敦士
 裁判官 勝又来未子は転補により署名押印することができない。
裁判長裁判官 佐藤達文


別紙 発信者情報目録
 別紙投稿記事目録記載の各アイ・ピー・アドレスを、同目録記載の日時ころに被告から割り当てられていた契約者に関する以下の情報
1 氏名または名称
2 住所
3 電子メールアドレス
 以上

別紙  投稿記事目録 《投稿記事目録添付の各写真は添付省略》
1 URL:http://以下省略
  投稿日時:2017-10-14 20:19:20
  IPアドレス:省略
2 URL:http://以下省略
  投稿日時:2017-10-22 19:20:46
  IPアドレス:省略
3 URL:http://以下省略
  投稿日時:2017-10-22 18:59:23
  IPアドレス:省略
4 URL:http://以下省略
  投稿日時:2017-10-31 19:05:47
  IPアドレス:省略
5 URL:http://以下省略
  投稿日時:2017-10-31 19:06:21
  IPアドレス:省略

別紙 著作物目録 《1ないし5の写真は添付省略》
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