判例全文 | ||
【事件名】ソネットへの発信者情報開示請求事件 【年月日】平成30年1月30日 東京地裁 平成29年(ワ)第35928号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 平成29年12月19日) 判決 原告 株式会社MAXING 同訴訟代理人弁護士 渡邉俊太郎 同 提箸欣也 同 野口耕治 同 藤沢浩一 同 成豪哲 同 小椋優 同 鶴谷秀哲 被告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 同訴訟代理人弁護士 横山経通 同 桑原秀明 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文第1項と同旨 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用してインターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する映像作品を複製して作成した動画のデータをアップロードした行為により、原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたと主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。 1 請求原因(原告の主張) (1) 原告は、「風俗ちゃんねる14 佐山愛」と題する映像作品(以下「本件著作物1」という。)及び「愛がたっぷり淫語でイカせてあげる。佐山愛」と題する映像作品(以下「本件著作物2」といい、本件著作物1及び本件著作物2を併せて「本件各著作物」という。)を収録したDVDを製作し、販売しているところ、これらのDVDのパッケージにはいずれも原告が商標権を有する登録商標であり、原告の商号である「MAXING」との文字が、著作者を示す通常の方法により表示されていること、これらのDVDが原告のウェブサイトで販売されていることから、原告は本件各著作物の著作者と推定される(著作権法14条)。 (2) 氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は、インターネットプロトコル(IP)アドレス「(省略)」(以下「本件IPアドレス」という。)の割当てを受けてインターネットに接続し、別紙動画目録の「投稿日時」欄記載の日時に、本件各著作物の一部を複製し、それらを結合して作成した別紙動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)のデータを、別紙動画目録の「投稿先URL」欄記載のインターネット上の動画共有サイトにアップロードし、本件動画を不特定多数の者が閲覧できる状態に置いた。 (3) 被告は、本件発信者に対し、本件IPアドレスを割り当ててインターネット接続サービスを提供していた。したがって、被告はプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる。 (4) 被告は、本件発信者についての氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの情報(別紙発信者情報目録記載の情報。以下「本件発信者情報」という。)を保有している。 (5) 原告は、本件発信者に対し、本件各著作物について有する公衆送信権の侵害に基づく損害賠償等の請求を行う必要があるが、本件発信者の氏名、住所等が不明であるため、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 2 被告の認否 請求原因(1)、(2)は不知。 請求原因(3)は争う。 請求原因(4)は認める。 請求原因(5)は不知。仮に、本件発信者についての情報の開示が認められる場合であっても、住所が開示されれば足り、メールアドレスは不要である。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因(1)について 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各著作物を収録した各DVDのパッケージには、いずれもその下部に、原告が商標権を有する登録商標であり、原告の商号と同一の「MAXING」との文字等からなる標章が付されていること(甲4の1・2、甲5)が認められる。 上記事実によれば、本件各著作物が公衆に提供されるに際して、原告の名称が、本件各著作物の著作者名として通常の方法により表示されているということができるから、原告は、本件各著作物の著作者と推定され(著作権法14条)、同推定を覆すに足りる事情はうかがわれない。 したがって、原告は本件各著作物の著作者と認められ、請求原因(1)は認められる。 2 請求原因(2)について 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件動画は別紙対比表のとおり本件各著作物の一部と同一であり(甲10、11)、本件動画は本件各著作物の一部を複製し、それらを結合して作成したものであること、本件発信者が別紙動画目録の「投稿日時」欄記載の日時に、「投稿先URL」欄記載の動画共有サイトに本件動画をアップロードしたこと(甲1の1・2)、上記日時に上記動画をアップロードするために使用されたIPアドレスが本件IPアドレスであることが認められる。 したがって、本件発信者が別紙動画目録の「投稿日時」欄記載の日時に本件IPアドレスを利用して本件各著作物の一部を複製した本件動画をアップロードしたことが明らかであるから、請求原因(2)の事実が認められる。 3 請求原因(3)ないし(5)について 上記のとおり、本件発信者は、原告が著作権を有する本件著作物の一部を複製して作成した本件動画を多数の者に対して送信可能な状態に置いたものであるから、本件発信者が原告の本件著作物に係る公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害したことが明らかであるところ、弁論の全趣旨によれば、本件発信者は被告が提供するインターネット接続サービスを経由して本件動画をアップロードしたと認められるから、被告がプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たること(請求原因(3))は明らかである。 したがって、原告は本件発信者情報を保有する被告(請求原因(4)。当事者間に争いがない。)に対し、その開示を受けるべき正当な理由がある(請求原因(5))。なお、被告は、電子メールアドレスについては開示を受ける必要はないと主張するが、被告が保有する氏名又は名称、住所に関する情報が正確性を欠くなどして発信者の特定が不十分な場合に、電子メールアドレスの情報によって発信者を正確に特定することができる可能性もあるから、電子メールアドレスは、発信者の特定及び原告の権利行使に資する情報といえ、原告には、電子メールアドレスを含めた発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるというべきである。 4 結論 よって、原告の請求は理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 柴田義明 裁判官 萩原孝基 裁判官 大下良仁 (別紙)発信者情報目録 別紙動画目録記載の投稿日時頃に、同目録記載のIPアドレスを使用してインターネットに接続していた者の次の情報 1 氏名又は名称 2 住所 3 電子メールアドレス 以上 |
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