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【事件名】動画サイトへのAV無断投稿事件
【年月日】平成30年1月23日
 東京地裁 平成29年(ワ)第13897号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成29年12月1日)

判決
原告 株式会社WILL
同訴訟代理人弁護士 竹村公利
同 松下翔
同 岡本順一
同 仲條真以
被告 A


主文
1 被告は、原告に対し、40万円及びこれに対する平成29年5月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その6を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、107万7843円及びこれに対する平成29年5月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、被告に対し、原告は別紙著作物目録記載の映像作品(以下、同目録記載の番号により「本件著作物1」、「本件著作物2」といい、本件著作物1及び本件著作物2を併せて「本件各著作物」という。)の著作権を有する株式会社CAを吸収合併し、同社の権利義務を承継したところ、被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して、民法709条及び著作権法14条3項に基づき、損害賠償金107万7843円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年5月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(裁判所に顕著な事実、当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 原告は、映画・ビデオの映像製作、編集業務、販売及びその企画営業代行業並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である。原告は、平成28年12月1日、株式会社CAを吸収合併し、同社の権利義務を承継した。(甲1)
(2) 氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は、平成26年1月6日に「蒼井そら−ギリギリモザイクはげましセックス−3お姉さん手コキ」と題する動画(以下「本件動画1」という。)のデータを、平成26年1月26日に「集団痴女 12コーナー 4時間」と題する動画(以下、「本件動画2」といい、本件動画1及び本件動画2を併せて「本件各動画」という。)のデータを、いずれもアメリカ合衆国法人であるFC2、Inc.(以下「FC2」という。)が管理する、インターネット上の動画共有サイトである「FC2動画アダルト」(以下「本件動画サイト」という。)のサーバー上にアップロードし、不特定多数の者が閲覧できる状態に置いた。(甲2の1、甲2の2の2、甲2の3の2)
(3) 原告は、平成29年4月26日、本件訴訟を提起した。
2 争点
(1) 株式会社CAは本件各著作物の著作権者であったか
(2) 本件各動画は本件各著作物の複製物であるか
(3) 本件発信者は被告であるか
(4) 損害額
(5) 消滅時効の成否
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(株式会社CAは本件各著作物の著作権者であったか)について
(原告の主張)
 株式会社CAは、本件各著作物の製作に発意と責任を有し、本件各著作物の監督は株式会社CAに対してその製作に参加することを約束した上で本件各著作物を制作し、株式会社CAは本件各著作物の著作権を取得した(著作権法29条1項)。
 そして、その後、原告は株式会社CAを吸収合併し、同社から本件各著作物の著作権及び本件各著作物の著作権侵害により発生した損害賠償請求権を取得した。
(被告の主張)
 株式会社CAが本件各著作物の著作権者であることは否認ないし争う。
(2) 争点(2)(本件各動画は本件各著作物の複製物であるか)について
(原告の主張)
 株式会社CAは、本件各動画と本件各著作物との比較対象を行い、本件動画1は本件著作物1と同一であり、本件動画2は本件著作物2と同一であると確認し、本件各動画の静止画像を保存したこと、このような手順で保存された本件動画1の静止画面は本件著作物1の静止画面と同一であり、本件動画2の静止画面は本件著作物2の静止画面と同一であることから、本件各動画が本件各著作物の複製物であることは明らかである。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
(3) 争点(3)(本件発信者は被告であるか)について
(原告の主張)
ア 原告は、本件動画サイトの管理者であるFC2から本件発信者に関する情報開示を受けたところ、本件発信者の氏名及び住所と被告の氏名及び住所が一致したから、本件発信者が被告であることは明らかである。
イ 被告は、被告が本件発信者ではなく、FC2から開示された情報中に被告の氏名及び住所があるとしても、第三者が勝手に入力したものであると主張する。しかし、FC2が開示した情報は本件発信者が本件動画サイトに登録した情報であるところ、被告以外の第三者が被告の氏名及び住所を登録することは考えられない。
 すなわち、まず、本件動画サイトには無料会員と有料会員があるところ、有料会員として登録する場合には、FC2に対する会費の支払のためにクレジットカード情報を登録する必要がある。また、本件動画サイトでは、ユーザーにアフィリエイト報酬が支払われる場合があるが、アフィリエイト報酬を受領するには、有料会員登録をした上でアフィリエイト登録をする必要がある。アフィリエイト登録をするには、氏名(ローマ字表記も含む。)、居住国、郵便番号、住所の登録が必要であり、さらに、銀行口座又はクレジットカード情報を登録する必要がある。したがって、アフィリエイト登録をした有料会員の登録情報である氏名及び住所等の情報が登録者本人のものではないということはおよそ考えられない。
 次に、本件動画サイトの投稿動画は、有料会員でなければ動画全体を閲覧することができない有料動画に指定することができ、無料会員が有料動画を視聴しようとすると再生時間の短いサンプル動画が再生される。そして、無料会員が有料動画から有料会員登録すると、動画投稿者にアフィリエイト報酬が支払われることになる。したがって、ユーザーが本件動画サイトに有料動画をアップロードする理由はアフィリエイト報酬を得るためであるといえる。
 そして、本件各動画はいずれ有料動画であるから、本件発信者はアフィリエイト報酬を得るために投稿したと考えられる、そうすると、アフィリエイト登録をした本件発信者の登録情報である氏名及び住所等の情報が登録者本人のものではないということはおよそ考えられない。
(被告の主張)
 原告の主張は否認する。
ア 被告は、本件各動画が本件動画サイトに投稿された当時、生活保護を受給しており、パソコン等は所有していなかった。このことは、ケースワーカーが被告宅に訪問して確認している。また、被告は、本件各動画が本件動画サイトに投稿された当時から現在まで、精神障害者2級に認定されており、動画を本件動画サイトにアップロードする知識はないし、意欲もなかった。
イ 本件動画サイトの会員になるには、フリーメールアドレス(無料で利用できる電子メールサービスを使用して作成したメールアドレス)を使用した登録が可能であり、フリーメールアドレスは氏名等の簡易情報を入力することで入手可能である。つまり、本件動画サイトの会員登録手続には本人認証等の仕組みがなく、第三者が他人の氏名や住所を勝手に登録することができる。本件でも、本件発信者の情報として登録されているメールアドレスはフリーメールアドレスである。
ウ 原告は、有料会員になるためにはクレジットカードの情報が必須であると主張するが、本件動画サイトで使用できる「FCポイント」で支払う方法や、銀行振込み等の方法によっても有料会員登録をすることが可能である。また、原告は、本件動画サイトでアフィリエイト登録をするには、氏名、住所の他に、銀行口座又はクレジットカード情報を登録する必要があると主張するが、アフィリエイト登録のキャプチャ画面(甲11)によれば、氏名や住所等は必須の登録情報であるが、銀行口座又はクレジットカード情報の登録は任意となっている。そもそも、被告は、本件各動画が本件動画サイトに投稿された当時、生活保護を受給しており、クレジットカードを所持していなかった。
エ 以上から、本件発信者は被告ではない。
(4) 争点(4)(損害額)について
(原告の主張)
 株式会社CAは取引先との間でコンテンツ提供基本契約を締結していたところ、同契約においては、本件各著作物の使用許諾の対価として●(省略)●を株式会社CAが受け取ることになっているから、同金額に相当する金額が損害額になる(著作権法114条3項)。
 本件各著作物はいずれも動画配信サイトにおいて●(省略)●となる。
 そして、本件動画サイトにおける本件動画1の再生回数は7709回であり、本件動画2の再生回数は1307回であるから、本件動画1に係る株式会社CAの損害額は●(省略)●(7709回×●(省略)●)となり、本件動画2に係る損害額は●(省略)●(1307回×●(省略)●)となる。また、弁護士費用相当額は、上記金額の合計の●(省略)●が相当である。原告は、株式会社CAを吸収合併したことにより、上記株式会社CAが有する損害賠償請求権を取得した。
 したがって、原告は、被告に対し、株式会社CAから承継した著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として、107万7843円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成29年5月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
(5) 争点(5)(消滅時効の成否)
(被告の主張)
 本件動画1がアップロードされた日である平成26年1月6日又は株式会社CAがこの事実を知った日である平成26年1月27日から3年が経過している。また、本件動画2がアップロードされた日である平成26年1月26日又は株式会社CAがこの事実を知った日である平成26年1月28日から3年が経過している。そして、被告は平成29年6月13日の本件第1口頭弁論期日において消滅時効を援用する旨の意思表示をしたから、原告の損害賠償請求権は時効消滅した。
(原告の主張)
 被告の主張は争う。
 不法行為による損害賠償請求は、「損害及び加害者を知った時」から消滅時効が進行するところ(民法724条前段)、「加害者を知った時」とは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な程度にこれを知ったことをいう。
 本件において、株式会社CAは、平成26年7月7日にFC2から本件発信者、すなわち被告の氏名及び住所等の情報の開示を受けたのであり、その時点で損害賠償請求が事実上可能な程度に被告の情報を知った。
 したがって、本件において消滅時効の起算日は平成26年7月7日であるところ、本件訴訟の提起は平成29年4月26日であり、平成26年7月7日から3年以内に請求権の行使をしているから、原告の損害賠償請求権は時効消滅していない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(株式会社CAは本件各著作物の著作権者であったか)について
(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物1は、株式会社CAが製作を企画し、製作に係る負担を負っており、本件著作物1の監督は株式会社CAに対して製作に参加することを約束して本件著作物1を製作したことが認められる(甲7の2、甲14)。
 そうすると、株式会社CAは本件著作物1の製作を企画すると共に製作に係る負担を負ったのであるから、株式会社CAが本件著作物1の製作に発意と責任を有しており、本件著作物1の監督は株式会社CAに対して製作に参加することを約束して本件著作物1を製作したということができる。
 したがって、株式会社CAは本件著作物1の著作権者であったと認められる(著作権法29条1項)。
(2) また、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物2には、4名の監督が製作した6個の映像作品が収録されていること(甲8の1ないし甲8の6、甲9の1ないし6)、本件著作物2に収録されている「美脚美女達の接吻とSEX」と題する映像作品(以下「本件作品」という。)は株式会社CAが製作を企画し、製作に係る負担を負っており、本件作品の監督は株式会社CAに対して製作に参加することを約束して本件作品を製作したこと(甲12、14)が認められる。
 そうすると、株式会社CAは本件著作物2に収録されている本件作品の製作を企画すると共に製作に係る負担を負ったのであるから、原告が本件作品の製作に発意と責任を有しており、本件作品の監督は株式会社CAに対して製作に参加することを約束して本件作品を製作したということができる。
 したがって、株式会社CAは、少なくとも本件著作物2に収録されている本件作品の著作権者であったと認められる。
(3) そして、前提事実(1)のとおり、原告は、平成28年12月1日、株式会社CAを吸収合併し、同社の権利義務を承継したから、本件著作物1及び本件著作物2に収録されている本件作品の著作権を取得し、また、それらの著作物の著作権侵害により発生した損害賠償請求権を取得した。
2 争点(2)(本件各動画は本件各著作物の複製物であるか)について
(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、株式会社CAは、同社の著作物が違法にアップロードされたと考えた場合、アップロードされた著作物が株式会社CAの著作物であるか否かの確認を業者に委託することがあり、本件においても、同確認を業者に委託し、委託先の従業員において、本件動画1は本件著作物1と同一の場面を含み、本件動画2は本件著作物2と同一の場面を含むことを確認し、本件動画1及び本件動画2の一場面の静止画像をそれぞれ保存したこと(甲15)、このような手順で保存された本件動画1の静止画像(甲2の3の2)は本件著作物1の一場面の静止画像(甲2の3の3)と同一であり、本件動画2の静止画像(甲2の2の2)は本件著作物2に収録されている本件作品の一場面の静止画像(甲2の2の3)と同一であること、本件動画1の題名と本件著作物1の作品タイトルである「ギリギリモザイク 蒼井そら はげましセックス」(甲2の3の1)は多くが一致し、本件動画2の題名(前提事実)と本件著作物2の作品タイトル(甲2の2の1)は一致していることが認められる。
 これらによれば、本件動画1は少なくとも本件著作物1の一部と同一の動画であり、本件動画2は少なくとも本件著作物2に収録されている本件作品の一部と同一の動画であると認められ、本件動画1は本件著作物1の複製物であり、本件動画2は本件著作物2の複製物である。なお、本件著作物1の収録時間は約120分であり、本件著作物2の収録時間は約240分であるが(甲2の3の1、甲2の2の1)、本件動画1及び本件動画2の再生時間は明らかではない。
(2) 以上によれば、本件発信者が本件各動画のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為は、株式会社CAの本件各著作物に係る公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると認められる。
3 争点(3)(本件発信者は被告であるか)について
(1) 証拠及び弁論の趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 本件動画サイトについて
(ア) 本件動画サイトの会員には、無料会員と有料会員(会費は1か月当たり1000円又は1年当たり6000円)がある。一般ユーザーが本件動画サイトの会員になれば、会員の種別にかかわらず、本件動画サイトにアップロードされている動画の閲覧や動画のアップロードをすることができるが、無料会員と有料会員では、閲覧する動画の画質、配信速度、視聴回数、アップロードすることができる動画のサイズ、閲覧できる動画の範囲等に違いがある。(甲16の1、乙6)
(イ) 一般ユーザーが本件動画サイトの無料会員に登録するにはメールアドレスを登録する必要があるが、住所を登録する必要はない。有料会員に登録するには、まず無料会員に登録した上で、クレジットカード又は保有するFC2ポイント(本件動画サイト等で有料サービスに使用することができるポイントであり、銀行振込み、クレジットカード、電子マネー等で購入することができるもの)を使用して会費を支払う必要があるが、氏名及び住所を登録する必要があることを認めるに足りる証拠はない。(甲16の1、乙6、乙7)
(ウ) 本件動画サイトへの動画の投稿者は、投稿した動画について本件動画サイトの有料会員でなければ動画全体を視聴することができないという設定をすることができる(以下、このように設定された動画を「有料動画」という。)。無料会員が有料動画を視聴しようとすると再生時間がごく短いサンプル動画のみが再生される。
 無料会員が当該動画全部を視聴したいと考えた場合、同動画から有料会員登録をすることができる。この手順で無料会員が有料会員登録をすれば、動画投稿者等に、後記のアフィリエイト報酬が支払われる。
(エ) 本件動画サイト上の動画から他のユーザーが有料会員登録をした場合、当該動画の投稿者や当該動画を自己のブログ等で紹介したユーザーに対し、アフィリエイト報酬が支払われる。アフィリエイト報酬は「FC2換金可能ポイント」として支払われ、FC2換金可能ポイントは、FC2ポイントと交換すること及び現金化すること等が可能である。(甲16の3)
 本件動画サイト上の動画の投稿者等がアフィリエイト報酬を受領するためには、有料会員となった上でアフィリエイト登録をする必要がある。アフィリエイト登録をするには、氏名(ローマ字表記も含む。)、居住国、郵便番号、住所の登録が必要である。また、アフィリエイト登録画面において銀行口座やクレジットカード等の情報を登録することも可能である。(甲11、甲16の3)
イ 本件動画1及び本件動画2について
 本件動画1及び本件動画2はいずれも有料動画に指定されていた(甲2の2の2、甲2の3の2)。
ウ 本件発信者に関する開示情報
 原告は、平成26年7月7日、アメリカ合衆国連邦地方裁判所ネバダ州地区が発令した開示命令に基づき、FC2から、同社が入手可能な情報であり、本件発信者を特定するために十分な情報として、本件発信者の氏名、住所に関する情報の開示を受けた。
 開示された氏名は、被告の氏名(ただし、平成27年8月4日に婚姻する前のもの)と同一であり、その住所は、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告の従前の住所地であったと認められる。(甲5の1の1、甲5の2の1、甲155の3、甲6)
(2) 検討
ア 上記(1)ア(ウ)及び(エ)のとおり、本件動画サイト上の動画から他のユーザーが有料会員登録をした場合に当該動画の投稿者に対してアフィリエイト報酬が支払われるところ、ユーザーに対して有料会員登録を促し動画の投稿者がアフィリエイト報酬を得るためには、投稿した動画を無料会員が一部しか視聴することができない有料動画とすることが効果的といえるから、本件動画サイトに投稿した動画を有料動画と設定する理由はアフィリエイト報酬を得る目的である場合が多いといえる。そして、本件各動画は有料動画であるところ、本件において上記と異なる目的をうかがわせる特段の事情を認めるに足りず、本件発信者が本件動画サイトに本件各動画をアップロードした目的についても上記に述べたところが該当するといえる。
 また、上記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり、本件動画サイトにおいては、無料会員、有料会員のいずれも会員登録するためには必ずしも氏名や住所等の情報を登録する必要があるとは認められない。他方、アフィリエイト登録の際には氏名、住所等の情報を登録する必要がある。また、FC2は本件発信者の氏名及び住所の情報を保有していた。
 これらによれば、本件発信者はアフィリエイト登録をしていて、FC2が開示した上記(1)ウの本件発信者の氏名及び住所は本件発信者がアフィリエイト登録をする際に入力した情報であると推認するのが相当であり、これを覆すに足りる証拠はない。
 そして、本件発信者がアフィリエイト登録の際に入力した氏名及び住所と被告の氏名及び住所が一致するところ、アフィリエイト報酬を得るためのアフィリエイト登録をする場合、他人の氏名、住所を登録することは通常は考え難いこと、本件においてあえて第三者が被告の氏名、住所を登録したことをうかがわせる事情は全くないことなどからすれば、本件発信者は被告であると推認するのが相当である。
イ これに対し、被告は、被告は本件発信者ではなく、FC2から開示された情報中に被告の氏名及び住所があるとしても、本件発信者である第三者が勝手に入力したものであると主張する。
 しかし、上記のとおりアフィリエイト登録をする場合、他人の氏名、住所を登録することは通常は考え難く、本件においてあえて第三者が被告の氏名、住所を登録したことをうかがわせる事情は全くない。また、本件動画サイトのアフィリエイト登録をするためには、氏名や住所等のほかに銀行口座やクレジットカード等の情報を登録することができ、これらの情報は会費(アフィリエイト登録をするには有料会員であることが必要である。)の支払やFC2換金可能ポイントを現金化するために必要な情報であるところ、本件動画サイトのアフィリエイト登録を行ったユーザーが、第三者の氏名、銀行口座やクレジットカード情報を入力することは通常は考え難いし、本件においてあえて第三者が被告の氏名等を登録したことをうかがわせる事情は全くない。また、ユーザーがFC2ポイントで会費を支払い、かつ、FC2換金可能ポイントを現金化しないことをあえて望む場合には、銀行口座やクレジットカード情報については入力しないことも考えられるが、そのような第三者が架空の氏名等ではなく、あえて被告の氏名等を登録する理由は通常はないし、本件で第三者が被告の氏名等を登録したことをうかがわせる事情は全くない。その他、本件発信者が登録した被告の氏名等について、被告ではなく第三者が勝手に入力したことをうかがわせる事情はなく、被告の主張は採用することができない。
ウ また、被告は、本件各動画が本件動画サイトに投稿された当時、生活保護を受給しており、パソコンやクレジットカードは所持していなかった、精神障害者2級に認定されており、動画を本件動画サイトにアップロードする知識はないし、その意欲もなかった旨主張する。
 証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告は平成24年12月13日から平成26年7月1日まで(省略)から生活保護を受給していたこと(乙2)、平成21年11月27日に(省略)から障害等級2級の障害者手帳の交付を受けたこと(乙3)が認められる。しかし、これらの事実から直ちに被告が動画を本件動画サイトにアップロードすることが不可能ないし困難であったと認めることはできない。
エ 以上によれば、本件発信者は被告であると推認するのが相当であるところ、これを覆すに足りる証拠はないから、本件発信者は被告であると認められ、被告が本件各動画のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為は、株式会社CAの本件各著作物に係る公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると認められる。
4 争点(4)(損害額)について
(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 本件動画サイトの本件各動画には、それぞれの動画ごとに「動画の情報」欄がある。同欄には「再生数」欄があり、数字(以下「表示再生数」という。)が表示されていた。本件動画1は、平成26年1月6日に本件動画サイトに有料動画としてアップロードされ、同月27日時点において表示再生数は7709回であった。本件動画2は、同月26日に本件動画サイトに有料動画としてアップロードされ、同月28日時点において表示再生数は1307回であった。(甲2の2の2、甲2の3の2)
イ 本件各著作物は、いずれも動画配信サイト「DMM.com」において●(省略)●である(甲2の2の1、甲2の3の1)。
ウ 株式会社CA(変更前の商号は株式会社北都)は、取引先との間で、コンテンツ提供基本契約を締結し、取引先に対して映像作品等のコンテンツの配信を許諾していた。ある取引先との契約では、株式会社CAは、●(省略)●が定められていた(甲3の1・2)。
エ 本件動画1及び本件動画2は、株式会社CAの要請によって、上記アの後、本件動画サイトから削除された。
(2) 原告は、上記(1)の本件動画サイトにおける表示再生数の数字は本件動画サイトにおいて当該動画が配信された回数であり、同回数に本件著作物1及び本件著作物2の●(省略)●を受領できたとして著作権法114条3項に基づく損害賠償(本件動画1について●(省略)●、本件動画2について●(省略)●)を請求する。
 しかし、本件動画1及び本件動画2の表示再生数に差があることなどから、本件動画サイトにおける表示再生数が何らかの方法に基づいて計測されたものであることはうかがわれるが、その数字が当該動画の配信以外の理由で増加することがなく配信回数を正確に表したものであることを裏付ける証拠は何ら提出されておらず、その数字が配信回数を正確に表したものであると認めることはできない。また、上記3(1)ア(ウ)のとおり、本件動画サイトの無料会員が有料動画である本件各動画を視聴しようとすると再生時間がごく短いサンプル動画のみが再生されるところ、表示再生数においてこのようなサンプル動画の視聴回数がどのように扱われているかを説明する証拠の提出はなく、全体の視聴回数のうち一定の割合を占めると考えられる無料会員によるサンプル動画の視聴回数が表示再生数に含まれていないとは認められない。そして、サンプル動画については、再生時間の短さやその性質等に照らせば、その配信回数に対し原告主張の金額を乗じた額の損害が発生するとは直ちには認められない。
 そこで、本件動画1について、本件動画1の表示再生数、表示再生数に関する上記に述べた事情、上記(1)ウの事情その他本件に現れた諸事情を考慮し、著作権者に生じた損害額を30万円とするのが相当である。
 また、本件動画2について、本件動画2の表示再生数、表示再生数に関する上記に述べた事情、上記(1)ウの事情その他本件に現れた諸事情を考慮し、著作権者に生じた損害額を5万円とするのが相当である。
(3) 本件に現れた諸事情に照らし、本件における弁護士費用相当額の損害額は5万円とするのが相当である。
5 争点(5)(消滅時効の成否)について
 不法行為による損害賠償請求は、「損害及び加害者を知った時」から消滅時効が進行するが(民法724条前段)、「損害及び加害者を知った時」とは、被害者等において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味するものと解される(最高裁判所昭和48年11月16日判決民集27巻10号1374頁)。株式会社CAは、平成26年7月7日、FC2から本件発信者、すなわち被告の登録時の氏名及び住所等の情報の開示を受けたと認められ(甲5の2の1、甲5の3)、同日、FC2からの情報開示によって損害賠償請求が事実上可能な程度に被告の情報を知ったといえる。
 そして、加害者を知った時である平成26年7月7日から3年以内である平成29年4月26日に本件訴訟は提起されているから(前提事実(3))、原告の損害賠償請求権の消滅時効は完成していないというべきである。
 したがって、被告の消滅時効の主張は理由がない。
6 結論
 よって、原告は、被告に対し、民法709条及び著作権法114条3項に基づき、40万円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成29年5月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 林雅子
 裁判官 大下良仁


別紙 著作物目録
1 本件著作物1
 作品タイトル 『ギリギリモザイク 蒼井そら はげましセックス』
 品番 oned201
 DMM.com上のURL(省略)
 収録時間 約120分

2 本件著作物2
 作品タイトル 『集団痴女 12コーナー4時間』
 品番 mibd033
 DMM.com上のURL(省略)
 収録時間 約240分
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/