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【事件名】ビッグローブへの発信者情報開示請求事件C
【年月日】平成29年6月26日
 東京地裁 平成29年(ワ)第5388号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成29年6月12日)

判決
原告 株式会社MAXING
同訴訟代理人弁護士 提箸欣也
同 渡邉俊太郎
同 野口耕治
同 藤沢浩一
同 成豪哲
同 小椋優
同 鶴谷秀哲
被告 ビッグローブ株式会社
同訴訟代理人弁護士 平出晋一
同 橋利昌
同 太田絢子


主文
1 被告は、原告に対し、別紙1発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 本件は、別紙2著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」という。)の著作権者であると主張する原告が、氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト「FC2動画」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした別紙3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)は本件著作物の複製物であるから、本件投稿者による上記アップロード行為により原告の有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使のために本件動画に係る別紙1発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、単に「」という。)4条1項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実等(当事者間に争いがないか、後掲の証拠〔特記しない限り、枝番号の記載は省略する。以下この判決において同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)
(1) 当事者
 原告は、各種ビデオ・DVD・映画・レコード・CD・コマーシャルフィルムの企画・原盤制作・販売及びそれらの著作権の取得並びに管理業務等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
 被告は、インターネットサービス等の電気通信事業を営む株式会社である。
(2) 本件動画のアップロード
 本件投稿者は、別紙3動画目録の「投稿日時」欄に記載の日時頃、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して、同目録の「投稿先URL」欄に記載のとおり、本件動画を本件サイトにアップロードし、公衆の求めに応じて自動的に公衆送信が行われる状態においた。
 本件投稿者が本件動画を本件サイトにアップロードした時点で使用していたIPアドレスは、別紙3動画目録の「IPアドレス」欄に記載のとおりである。
(以上につき、甲3、8ないし10)
3 争点
(1) 原告は、本件著作物の著作権者であるか(争点1)
(2) 本件動画は、本件著作物の複製物であるか(争点2)
(3) 被告は、「開示関係役務提供者」(法4条1項)に当たるか(争点3)
(4) 本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか(争点4)
4 争点に対する当事者の主張
(1) 争点1(原告は、本件著作物の著作権者であるか)について
【原告の主張】
 原告は、本件著作物を原告のウェブサイトで販売しているほか(甲5、15)、本件著作物を収録したDVDを製作し、販売しているところ、同DVDのパッケージには、原告が商標権を有する登録商標や、原告の商号である「MAXING」との文字が表示されており(甲6、13、14)、本件著作物の著作者を示す通常の方法により、原告の名称が表示されているといえる。
 したがって、原告は、著作権法14条により、本件著作物の著作者と推定される。
【被告の主張】
 DVDのパッケージに「MAXING」との表示があることは認めるが、これが著作者を示す通常の方法であるとの点は争う。
(2) 争点2(本件動画は、本件著作物の複製物であるか)について
【原告の主張】
 本件動画は、再生時間21分17秒の動画であって、再生時間約140分の本件著作物の一部と完全に一致する(甲3、4、12)。
 したがって、本件動画は、本件著作物の一部を複製したものであり、本件動画を本件サイトにアップロードする行為は、原告が有する本件著作物の公衆送信権を侵害する行為であることが明らかである。
【被告の主張】
 争う。
(3) 争点3(被告は、「開示関係役務提供者」〔法4条1項〕に当たるか)について
【原告の主張】
 原告は、本件サイトを運営するFC2、Inc.から本件動画をアップロードした際の本件投稿者のIPアドレス及びタイムスタンプの開示を受けたところ、同IPアドレスは被告が保有しており、被告は、本件訴訟に先立ち、本件発信者情報を保有していること、本件投稿者に意見聴取したことなどを認めていたから、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に当たることが明らかである。
【被告の主張】
 被告が上記IPアドレス及び本件発信者情報を保有していること、本件投稿者に意見聴取したことは認め、被告が「開示関係役務提供者」に当たるとの法的評価は争う。
(4) 争点4(本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか)について
【原告の主張】
 原告は、本件投稿者に対し、本件著作物の著作権侵害を原因とする損害賠償を請求する予定であるが、そのためには、本件発信者情報の開示を受ける必要がある。
【被告の主張】
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告は、本件著作物の著作権者であるか)について
 証拠(甲5ないし7、13ないし15)によれば、本件著作物を収録したDVDは、インターネット上のウェブサイト「MAXING」及び「DMM.R18通販」にて通信販売されていること、同DVDのパッケージには、「制作・受審・販売」との文字に続けて、原告が有する商標権に係る次の登録商標(以下「本件商標」という。)に類似した標章が付されていること、上記ウェブサイト「MAXING」のトップバナーには本件商標が表示されていること、上記ウェブサイト「DMM.R18」の本件著作物の販売ページには、「メーカー」として「マキシング」と記載されていることがそれぞれ認められる。

 画像 MAXING

 上記事実によれば、本件著作物が公衆に提供されるに際して、原告の名称が、本件著作物の著作者名として通常の方法により表示されているということができるから、原告は、本件著作物の著作者と推定され(著作権法14条)、同推定を覆すに足りる事情はうかがわれない。
 したがって、原告は本件著作物の著作者と認められ、その後著作権が移転した等の事情もうかがわれないから、原告は、本件著作物の著作権者であると認められる(著作権法17条1項)。
2 争点2(本件動画は、本件著作物の複製物であるか)について
 証拠(甲3ないし7、12)によれば、本件著作物は収録時間約140分の動画であること、本件動画の総再生時間は21分17秒であること、本件サイトにアップロードされていた本件動画の再生前サムネイル画像と本件著作物の再生時間72分23秒付近のスクリーンショットとが一致すること、本件動画の再生中のスクリーンショットと本件著作物の再生時間63分23秒付近のスクリーンショットとが一致すること、本件動画は、本件著作物の再生時間61分頃から83分頃までと一致することがそれぞれ認められる。
 以上の事情及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件動画は、本件著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものとして再製されたもの、すなわち、本件著作物の複製物であると認められる。
3 争点3(被告は、「開示関係役務提供者」に当たるか)について
 最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは、法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に当たると解するのが相当であるところ(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676頁)、前記前提事実(第2、2(2))のと5おり、本件投稿者は、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して、本件著作物の複製物である本件動画を本件サイトにアップロードし、公衆の求めに応じて自動的に公衆送信が行われる状態においたものであるから、これにより原告が有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかである。
 したがって、被告は、法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に当たり、また、同4条1項にいう「開示関係役務提供者」に当たるものと認められる。
4 争点4(本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか)について
 弁論の全趣旨によれば、原告は、原告が有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことを原因として、本件投稿者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するため、本件発信者情報の開示を求めているものと認められるところ、損害賠償請求権を行使するためには、本件投稿者を特定する必要があるから、原告には、同特定のために本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。
5 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 嶋末和秀
 裁判官 天野研司
 裁判官 西山芳樹


(別紙1)発信者情報目録
 別紙3動画目録記載の投稿日時に、同目録記載のIPアドレスを使用していた者の下記情報

 1 氏名又は名称
 2 住所
 3 電子メールアドレス
 以上

(別紙2)著作物目録
 「セル解禁×ムチムチッ!巨乳だけでイイ! 佐山愛」
 以上

(別紙3)動画目録
動画
 投稿先URL http://以下省略
 投稿日時 2016/05/20 05:17:06
 IPアドレス 122.131.166.52
 以上
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