判例全文 | ||
【事件名】カラオケ動画の“YouTube”公開事件 【年月日】平成28年12月20日 東京地裁 平成28年(ワ)第34083号 著作隣接権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結日 平成28年11月24日) 判決 原告 株式会社第一興商 同訴訟代理人弁護士 龍村全 同 川野智弘 被告 A 主文 1 被告は、別紙動画目録記載の動画を送信可能化してはならない。 2 被告は、別紙動画目録記載の動画の電磁的記録を、同記録が入力されている被告の占有に係るハードディスクその他の記録媒体から消去せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告に対し、被告が原告の作成したカラオケ音源を用いてカラオケ歌唱を行っている様子を自ら動画撮影した動画の電磁的記録をインターネット上の動画共有サイトにアップロードした行為が、原告の上記カラオケ音源に係る送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たると主張して、同法112条1項及び2項に基づく上記動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の消去を求める事案である。 1 原告は、請求原因事実として次のとおり主張した。 (1) 原告は、業務用通信カラオケ機器の製造販売等を業とする株式会社であり、業務用通信カラオケ機器「DAM」シリーズの販売を行っている。 (2) 原告は、平成28年8月17日に発売された女性ボーカルグループ「Little Glee Monster」のCDシングル「私らしく生きてみたい/君のようになりたい」に含まれる楽曲「私らしく生きてみたい」のカラオケ用音源(以下「本件DAM音源」という。)を作成した。原告は本件DAM音源につきその音を最初に固定したレコード製作者として送信可能化権(著作権法96条の2)を有する。 (3) 被告は、カラオケ店舗において、DAMの端末を利用して、上記楽曲のカラオケ歌唱を行い、その際に自身が歌唱する様子を動画撮影し、本件DAM音源の音が記録された動画(以下「本件動画」という。)を同年9月7日にインターネット上の動画共有サイトである「YouTube」にアップロードした(以下、この行為を「本件行為」という。)。 (4) 本件行為は、原告の本件DAM音源に係る送信可能化権を侵害する行為に当たる。なお、本件動画は既に「YouTube」上から削除されているものの、被告が他の動画共有サービスを用いるなどして本件動画の電磁的記録を送信可能化する可能性がある。また、被告による原告の送信可能化権侵害を防ぐためには、被告が管理する本件動画の電磁的記録を消去する必要がある。 よって、原告は被告に対して本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求める。 2 被告は、陳述したとみなされた答弁書において、次のとおり主張した。 被告は自主的に本件動画を「YouTube」上から削除した。そもそも、本件動画は主として被告自身の歌唱の様子を撮影したものであって、原告の利益を明確に侵害したとはいい難いものであるから、差止請求等の訴訟を提起することは適切でなく、原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきであった。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1〜5)及び弁論の全趣旨によれば、原告主張の請求原因事実を全て認めることができる。そうすると、本件行為は本件DAM音源に係る原告の送信可能化権の侵害に当たるから、原告は被告に対し本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めることができる。 これに対し、被告は上記のとおり主張するが、本件動画が「YouTube」上から現時点では削除されているとしても、本件の証拠上、本件動画の電磁的記録が被告の有する記録媒体から消去されたことはうかがわれないから、原告の上記請求につき差止め等の必要性を欠くとみることは相当でない。 2 以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとし、主文第2項についての仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二 裁判官 林雅子 裁判官 中嶋邦人 ※別紙動画目録添付省略 |
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