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【事件名】雑誌標章“HEART nursing”事件B 【年月日】平成28年11月17日 大阪地裁 平成26年(ワ)第6203号 損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成28年9月2日) 判決 原告 株式会社メディカ出版 同訴訟代理人弁護士 三山峻司 同 清原直己 同 種村泰一 同訴訟復代理人弁護士 矢倉雄太 被告 株式会社医学出版 被告 P1 被告 P2 上記3名訴訟代理人弁護士 中島龍生 同 杉村亜紀子 主文 1 被告株式会社医学出版は、原告に対し、105万5464円及びこれに対する平成26年7月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告P1は、原告に対し、352万9124円及び内金50万円に対する平成23年10月19日から、内金177万3660円に対する平成24年9月15日から、内金125万5464円に対する平成26年7月12日から、それぞれ支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 原告の被告株式会社医学出版及び被告P1に対するその余の請求並びに被告P2に対する請求全てをいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告と被告P2の間に生じたものは原告の負担とし、その余の部分については、これを25分し、その23を原告の負担とし、その余を被告株式会社医学出版及び被告P1の負担とする。 5 この判決は、第1項、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告株式会社医学出版は、原告に対し、1872万円及びこれに対する平成26年7月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告P1及び被告P2は、連帯して、原告に対し、4628万円及び内金50万円については平成23年10月19日から、内金1966万円については平成24年9月15日から、内金740万円については平成24年9月14日から、内金1872万円については被告P1については平成26年7月12日から、被告P2については平成26年7月11日から、それぞれ支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主な購読者とする雑誌(以下「原告雑誌」という。)を出版していた原告は、同雑誌の題号に類似する題号を用い、市場で競合する雑誌(以下「被告雑誌」という。)を出版する被告株式会社医学出版(以下「被告会社」という。)に対し、上記出版行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争に当たると主張して、被告雑誌の出版行為の差止め及び損害賠償を求める訴訟を提起し、原告の請求を認容する内容の判決が控訴審において確定していた(大阪高等裁判所平成24年(ネ)第2044号、同年(ネ)第2655号不正競争行為差止等請求控訴附帯控訴事件。以下、この訴訟を「前件訴訟」といい、控訴審判決を「前件判決」という。)。 本件は、被告会社がその後も、原告雑誌の題号に類似する題号の被告雑誌の出版を継続していたことから、被告会社に加え、被告会社の代表取締役P1及び取締役P2に対し、下記請求をした事案である。 記 【被告会社に対し】 平成25年5月号から平成26年7月号までの被告雑誌の出版行為が、不競法2条1項1号の不正競争に当たることを理由とする不競法4条に基づく1872万円(うち150万円は弁護士費用)の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成26年7月11日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求 【被告P1及び被告P2に対し】 ① 上記被告会社の不正競争についての会社法429条1項に基づく上記被告会社に対すると同額の損害賠償請求(ただし、遅延損害金の起算日は、被告P1につき平成26年7月12日から、被告P2につき平成26年7月11日から) ② 前件判決で対象とした被告会社の不正競争(平成23年9月号から平成25年4月号までの被告雑誌の出版行為)についての会社法429条1項に基づく1966万円の損害賠償及びこれに対する前件訴訟控訴審附帯控訴状送達日の翌日である平成24年9月15日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求 ③ 前件訴訟の提起による弁護士費用相当の損害50万円についての会社法429条1項に基づく損害賠償及びこれに対する前件訴訟訴状送達日の翌日である平成23年10月19日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求 ④ 前件判決で確定した不作為義務に被告会社が違反したことを理由として支払を命じられた間接強制金相当の740万円の損害を原告が受けたと主張して、会社法429条1項に基づく同額の損害賠償請求及びこれに対する平成24年9月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求 なお、上記①については、被告ら全員に対する連帯請求であり、上記②ないし④については被告P1及び同P2に対する連帯請求である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) (1) 当事者 ア 原告は、昭和56年に設立された株式会社であり、医療分野の学術用書籍・専門誌の出版及びDVDの製作並びに各種セミナー及び研究会の開催等を事業目的とし(甲1)、医学・看護などの医療系分野を専門とする出版社である。 イ 被告会社は、昭和57年12月24日、株式会社キャドテックスとの商号で設立された株式会社であり、平成10年1月5日、現商号に変更され、雑誌及び書籍の出版等を事業目的としている。 なお、被告会社は、会社設立後、平成15年2月12日経過による全取締役の任期満了後も取締役の再任を行わず登記手続を全く放置していたため、本件訴訟の係属中の平成27年1月20日、会社法472条1項の規定により解散したものとみなされ、その旨の登記がされていたが、平成28年8月20日に会社継続等の手続を取り、現在、存続している。(当裁判所に顕著な事実) ウ 被告P1は、平成13年2月13日に被告会社の代表取締役に就任して以来、現在も被告会社の代表取締役である。(甲2) エ 被告P2は、被告P1の妹であり、薬剤師の資格を有している者であり、平成13年2月13日付けで被告会社の取締役に就任した旨の登記がされ、その2年の任期終了後も登記が放置されている状態が継続していたが、上記イ後段の経緯で、現在は取締役の地位にはない。(甲2、当裁判所に顕著な事実) (2) 原告雑誌 ア 原告は、循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主な購読者とする「HEART nursing」という題号(以下「原告題号」という。)の原告雑誌を、昭和62年11月1日から出版している。 イ 原告題号は、平成23年8月当時から現在に至るまで、原告の商品の出所を示すものとして需要者に広く認識されている。 (3) 被告会社の行為 ア 被告会社は、平成23年8月15日、同年9月号から循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主な購読者とする原告雑誌と競合する被告雑誌の出版を開始し、以来、毎月1回のペースで被告雑誌を出版し続けている。被告雑誌の販売方法は、書店店頭、インターネット販売のほか、被告会社からの直接販売であり、原告雑誌の販売方法と同じである。 イ 被告雑誌の題号の変遷は次のとおりである。(乙6、乙7、乙8、弁論の全趣旨) (ア) 平成23年9月号から同24年7月号まで 「HEART」(以下「被告題号1」という。) (イ) 同年8月号から平成25年12月号まで 「Heart」(以下「被告題号2」という。) (ウ) 平成26年1月号から同年8月号まで 「Heart magazine」(以下「被告題号3」という。) (エ) 平成26年9月号から 「循環器ナーシング」(以下「変更後被告題号」という。) (4) 前件訴訟 ア 前件訴訟の第1審において、原告は、被告題号1を使用した雑誌を出版した被告会社の行為が、不競法2条1項1号の他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている原告題号と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲渡する行為に当たり、原告の商品(原告雑誌)と誤認混同を生じさせるとして、被告会社に対し、法3条に基づき、被告題号1の使用差止め及び被告雑誌の廃棄等を求めるとともに、不競法4条本文に基づき、弁護士費用相当の損害100万円の損害賠償及びこれに対する平成23年10月19日(同事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた。 イ 前件訴訟の第1審裁判所は、平成24年6月7日、原告の上記差止め及び廃棄等の請求全部と損害賠償の一部を認容する判決を言い渡した。(甲3) ウ 被告会社は、被告雑誌の題号を被告題号2に変更するとともに、上記判決に対して控訴した。これに対し、原告は附帯控訴を行い、使用差止めを求める被告雑誌の題号として原審における請求対象のほか被告題号2を追加するとともに、損害賠償請求において原審で請求した弁護士費用相当の損害とその遅延損害金に加えて、被告雑誌の出版によって生じた原告の逸失利益を主張して損害額を拡張し(附帯控訴状送達日の翌日以降の遅延損害金を含む。)、主位的に不競法5条1項、予備的に同条3項1号に基づいて損害の額を算定し請求した。 エ 前件控訴審は、平成26年1月17日、被告会社の控訴を棄却し、原告の附帯控訴に基づき、原判決を変更し、被告題号1、2の使用差止め、被告雑誌の廃棄等を命じ、損害賠償請求のうち、平成23年9月号から平成25年4月号までの被告雑誌の出版により受けた損害として1966万円及び弁護士費用相当の損害50万円の支払を命じる判決を言い渡し、その頃、確定した。(甲4) (5) 被告会社の不正競争行為 平成23年9月号から平成26年8月号までの被告題号1ないし3は、その変遷にかかわらず、全て原告題号に類似している。 そして原告題号と類似する題号を使用した被告雑誌を出版する行為は、原告の商品又は営業と混同を生じさせる行為であるから、不競法2条1項1号に該当する。 (6) 間接強制決定及び間接強制金の支払命令 原告は、前件訴訟の第1審判決の判決正本に基づき間接強制を申し立てた。 大阪地方裁判所裁判官は、平成24年8月3日、被告会社が、間接強制決定の送達の日の2日後以降、上記判決で命じられた不作為義務に違反したときは、違反した日1日につき20万円の割合による金員支払を命じる決定をした。(甲5) 被告会社は、平成24年8月8日から同年9月13日まで、上記判決で命じられた不作為義務に違反したことを理由として、間接強制金740万円の支払を命じられたが、被告会社は、その支払をしていない。 2 争点 (1) 被告会社の不正競争によって受けた原告の損害額(争点1) (2) 被告P1は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか(争点2) (3) 被告P2は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか(争点3) (4) 被告P1及び同P2は被告会社に支払を命じられた間接強制金相当額が原告の損害であることを前提に会社法429条1項に基づく責任を負うか(争点4) 第3 当事者の主張 1 被告会社の不正競争によって受けた原告の損害額(争点1) (原告の主張) (1) 不競法5条1項の適用による損害 ア 被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版により原告が受けた損害(被告P1及び被告P2に対する請求関係) 原告が受ける原告雑誌1冊当たりの利益の額は820円、上記期間中の被告雑誌の出版部数は●(省略)●冊であるところ、原告は同数量を出版する能力があったから、不競法5条1項の適用による原告の受けた損害の額は上記1冊当たりの利益に被告雑誌の出版部数を乗じた●(省略)●円である。 (計算式) 820円×●(省略)●冊=●(省略)●円 なお、原告は、本件訴訟において被告P1及び被告P2に対し、前件訴訟で確定した損害額1966万円の限度で請求する。 イ 被告雑誌の平成25年5月号から平成26年7月号までの出版により原告が受けた損害(全被告らに対する請求関係) 原告が受ける原告雑誌1冊当たりの利益の額は820円、上記期間中の被告雑誌の出版部数は●(省略)●冊であるところ、原告は同数量を出版する能力があったから、不競法5条1項の適用による原告の受けた損害の額は上記1冊当たりの利益に被告雑誌の出版部数を乗じた1722万円である。 (計算式) 820円×●(省略)●冊=●(省略)●万円 ウ 弁護士費用(全被告らに対する請求関係) 150万円 (2) 不競法5条3項1号の適用による損害(上記アと選択的主張) ア 被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版により原告が受けた損害(被告P1及び被告P2に対する請求関係) 被告会社は被告雑誌を一冊2000円で出版しているところ、上記期間において●(省略)●冊を出版した。被告会社が原告題号を使用することに対し原告の受けるべき金額は、被告雑誌の売上高の20%を下らないから、不競法5条3項1号の適用による原告の受けた損害の額は●(省略)●円である。 (計算式) 2000円×●(省略)●冊×20%=●(省略)●円 イ 被告雑誌の平成25年5月号から平成26年7月号までの出版により原告に受けた損害(全被告らに対する請求関係) 被告会社は被告雑誌を一冊2000円で出版しているところ、上記期間において●(省略)●冊を出版した。被告会社が原告題号を使用することに対し原告の受けるべき金額は、被告雑誌の売上高の20%を下らないから、不競法5条3項1号の適用による原告の受けた損害の額は●(省略)●万円である。 (計算式) 2000円×●(省略)●冊×20%=●(省略)●万円 (3) 被告雑誌の譲渡数量について 上記(1)、(2)で主張した被告雑誌の譲渡数量が認められなくとも、少なくとも以下の限度で認められるべきある。 ア 取次店を介して書店店頭で販売される場合 (ア) 平成23年9月号から平成26年7月号までの、被告雑誌の取次店への出荷納品数は、別紙「取次店への納品数一覧表」の原告第1次主張納品数欄記載のとおり合計●(省略)●冊であり、少なくとも原告第2次主張納品数欄記載のとおり合計●(省略)●冊である。 (イ) 被告らは、当初、同期間の納品数を別紙「取次店への納品数一覧表」の被告当初主張納品欄記載のとおり合計●(省略)●冊としていたが、その記載数量は前件訴訟において、同期間の納品数を開示するものとして被告会社が提出した平成25年8月6日付けの「Heart売上一覧表」(甲89。以下「前件提出に係る売上一覧表」という。)記載のそれとを比較すると、とりわけ納品書を紛失したとする月の齟齬が無視できないほど大きい。したがって、前件提出に係る売上一覧表記載の期間の納品数は、同表の数値を優先すべきであるから、被告雑誌の納品数は、別紙「取次店への納品数一覧表」の被告当初主張納品数欄記載の数量に、その差(別紙「取次店への納品数一覧表」の原告主張加算数欄の数値)を加算した別紙「取次店への納品数一覧表」の原告第1次主張納品数欄記載のとおり合計●(省略)●冊とすべきであり、少なくとも被告らが推定した2012年1月号、2月号、5月号、9月号については前件提出に係る売上一覧表記載の数値を優先して、別紙「取次店への納品数一覧表」記載の原告第2次主張納品数のとおり合計●(省略)●冊とすべきである。 イ インターネット書店を利用して被告会社が直接販売する場合 通信販売による被告雑誌(平成23年9月号から平成26年7月号まで)の被告雑誌のインターネット書店である、Fujisan.co.jpへの出荷納品数は、次のとおり合●(省略)●冊である。 (ア) 定期購読分 a 平成23年7月20日から平成24年7月19日 ●(省略)●冊 b 平成24年7月20日から平成25年7月19日 ●(省略)●冊 c 平成25年7月20日から平成26年7月19日 ●(省略)●冊 d 平成26年7月20日から同年8月15日 ●(省略)●冊 (イ) 一部販売 平成23年7月20日から平成26年8月15日 ●(省略)●冊 ウ 被告会社が直接購入申込みを受けて定期購読等で販売する場合 上記形態による出版部数は、別紙「直接購入分一覧表」の「納品数のうち、2014年7月号までの納品数」欄記載のとおりであり、その合計が736冊である。 エ 返品数 平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の返品数は、別紙「取次店への納品数一覧表」の被告主張返品数欄記載の合計●(省略)●冊から、被告題号2の被告雑誌●(省略)●冊は除かれるべきであるから、その合計数は●(省略)●冊である。 オ まとめ 以上を整理すると、被告雑誌の平成23年9月号から平成26年7月号までの譲渡数量は、●(省略)●冊であり、少なくとも●(省略)●冊が認められるべきである。 (4) 不競法5条1項ただし書の主張について 被告らの主張する不競法5条1項ただし書の主張は、以下のとおり失当である。 ア 定期出版物の雑誌の題号は、需要者の購買動機の最も大きな要因の一つである。原告雑誌の出版部数は、被告雑誌の創刊時から減少しており、両者が相互補完関係にあることは明らかである。購読者が固定しているとか、雑誌の題号に注目しないとか、誤認混同しても買い直すなどの需要者の購買行動についての被告らの主張は、いずれも立証もなく、根拠を欠くものである。 イ 原告雑誌の出版部数は、被告雑誌が原告題号に類似する被告題号1を使用したことにより減少している。 被告らは、被告雑誌が被告題号3の使用を止めた後も、原告雑誌の出版部数が増加していないとするが、被告雑誌の出版部数は減少しているのであり、したがって市場が縮小する中、原告雑誌の出版部数が維持されているのだから、被告雑誌の出版がなければ原告雑誌の出版が増加する関係にあったことは明らかである。 ウ 原告は、被告雑誌が創刊されるとの情報を得て、顧客が奪取されることを防止すべく、原告雑誌の装丁を変えるなどの営業努力によりその出版部数の減少を食い止めた。しかし、原告雑誌も被告雑誌も、循環器疾患にかかる医療に従事する看護師向けの雑誌であり、題号の酷似性とともに、内容は、循環器医療に従事する看護師の関心を引く内容であり、特集テーマや内容は類似しており、実際に、平成24年1月号においては、原告雑誌及び被告雑誌において、同一のテーマを扱うなど、購読者が誤認混同して購入していることは明らかである。 (5) 損害についての被告らの主張が前件訴訟の蒸し返しであること 不競法5条1項に基づく損害額についての審理は、前件訴訟において十分に尽くされたものであり、被告P1及び被告P2も、前件訴訟において被告会社の代表取締役又は取締役として不競法5条1項について主張立証をする機会があったから、被告らが本件において、不競法5条1項の適用に基づく損害額について争うことは、実質的に紛争の蒸し返しであり、信義則に反し許されないというべきである。 (被告らの主張) (1) 不競法5条1項の適用による損害について 原告が受ける原告雑誌1冊当たりの利益の額が820円であることは積極的に争わないが、原告主張に係る被告雑誌の出版部数は否認する。被告雑誌の出版部数は、後記(3)で主張するとおりである。 (2) 不競法5条3項1号の適用による損害について 被告雑誌1冊当たりの販売価格が2000円であることは認め、原告主張に係る被告雑誌の出版部数は否認する。被告雑誌の出版部数は、後記(3)で主張するとおりである。また、原告主張に係る実施料率は争う。原告題号に顧客誘引力はなく、被告雑誌の売上げに寄与しないから、その率は1%程度とすべきである。 (3) 被告雑誌の譲渡数量について ア 平成23年9月号から平成26年7月号まで間に取次店を介して書店に販売した被告雑誌の部数は、別紙「取次店への納品数一覧表」の原告第2次主張納品数欄記載のとおり合計●(省略)●冊の限度で認める。 イ 上記期間にインターネット書店を利用して被告会社が直接販売した被告雑誌の部数が原告主張のとおり合計●(省略)●冊であることは認める。 ウ 上記アの期間に被告会社が購入希望者から直接購入申込みを受け、又は定期購読等で販売した被告雑誌の部数が●(省略)●冊であることは認める。 エ 平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の返品数は合計●(省略)●冊であり、合計●(省略)●冊とする原告の主張は否認する。 オ 以上を整理すると、平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の譲渡数量は、●(省略)●冊である。 (4) 不競法5条1項ただし書の事情の主張 本件については、以下のとおり被告雑誌の譲渡数量だけ原告雑誌を「販売することができないとする事情」があるから、被告会社による不正競争がなければ原告雑誌がより多く販売できた譲渡数量は、多くとも被告雑誌の出版部数の30分の1ないし20分の1程度であると考えるべきである。 ア 原告雑誌や被告雑誌の専門誌は、購読者は多くは固定購読者であり、また雑誌の内容を見て購入するから、題号の誤認混同が売上げに影響することはない。 また題号による誤認混同があったとしても、原告雑誌を購入しようとして誤って被告雑誌を購入したのなら原告雑誌を買い直すであろうし、次回以降誤認混同をすることがなくなるから、原告雑誌の売上げの減少には結びつかない。 イ 原告雑誌の納品数の変動をみると、被告雑誌の創刊5か月目から毎号約300部減少し、その後もさらに漸減傾向にあるのは、購買者が、原告雑誌と被告雑誌を比較して、被告雑誌を選択して購入していることを示している。 被告雑誌が創刊されるまで、循環器領域における看護師向けの雑誌は原告雑誌しかなかったのであるから、被告雑誌創刊後の原告雑誌の減少は、被告雑誌によって原告雑誌の独占市場が崩壊した結果にすぎない。 ウ 被告雑誌の売上げは、被告雑誌の装丁や記載内容の特徴に加え、被告会社の営業努力によるものであるから、被告雑誌を販売しなかったとしても、原告雑誌が販売されたであろうという関係にない。 (5) 損害についての被告らの主張が前件訴訟の蒸し返しではないこと 被告P1は被告会社の代表取締役ではあるが前訴の当事者ではないから、被告P1が、自らが被告として訴訟追行する本件において、前訴における被告会社とは異なる訴訟対応をすることは何ら不合理なことではなく、まして、信義則に反するものということはできず、被告P2も同様である。 2 争点2(被告P1は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか)について (原告の主張) 被告P1は、被告会社の代表取締役として同社出版の雑誌等の編集方針及び題号等を決定する権限があるだけでなく、実際にも編集発行人として一切を取り仕切り決定していた。 被告P1は、被告会社の代表取締役として、被告雑誌の題号を決定するに当たり、被告会社の業務が他人の法益を侵害することがないように注意する義務を負っていたにもかかわらず、不競法違反になることを知りながら、あるいは知らなくとも重大な過失によって、被告会社に不競法違反となる被告雑誌を出版させた任務懈怠行為がある。 したがって、被告P1は、被告会社の不正競争により原告が受けた損害及びその損害賠償請求のために原告会社が前件訴訟提起を余儀なくされたことにより受けた弁護士費用相当の損害50万円について会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (被告P1の主張) (1) 被告題号1(「HEART」)の使用について 被告P1は、弁理士に委任して、平成22年1月21日、「NURSE® HEART ナースハート」との標章を、第16類「雑誌、新聞」を指定商品として出願し登録を受けた(登録第5348154号。以下「本件商標」という。)。本件商標は、同年8月27日に設定登録を受けたのであるから、被告P1は、被告題号1を使用した被告雑誌の出版に当たり、本件商標の出願という方法をもって必要な商標の調査を行い、本件商標が認められたという結果を踏まえて、被告雑誌の題号を決めたのであり、他人の法益を侵害することがないように、十分な注意を払っていたといえる。 被告P1が、被告題号1を使用した被告雑誌の出版が不競法違反になることを知りながら被告会社をして出版させたとの事実はないし、重大な過失も認められない。 (2) 被告題号2(「Heart」)への変更の経緯 前件訴訟の第1審判決を受けて、被告雑誌の題号を変更するに当たり、被告P1は顧問弁護士から、小文字であれば、使用差止めを命じられた被告題号1とは別物となるので法的には問題にならないとのアドバイスを受けたことから、雑誌の題号を被告題号2に変更した。 被告P1が、被告題号2を使用した被告雑誌の出版が不競法違反になることを知りながら被告会社をして出版させたとの事実はないし、重大な過失も認められない。 (3) 被告題号3(「Heartmagazine」)への変更の経緯 前件判決を受けて、被告会社は、被告雑誌の題号を被告題号3に変更した。 被告題号3については、平成25年12月11日に、商標登録の出願をした(商願2013-100949)。この出願については、現在も審査中であり、結論が出ていない。 被告P1は、原告雑誌の題号であるハートないしハートナーシングとは明確に区別される雑誌名として被告題号3を考えて題号変更をしたのである。 被告P1が、被告題号3を使用した被告雑誌の出版が不競法違反になることを知りながら被告会社をして出版させたとの事実はないし、重大な過失も認められない。 (4) したがって、被告会社に不正競争行為が認められようとも、原告の前件訴訟の提起に要した弁護士費用相当の損害を含め、その結果、原告の受けた損害について、被告P1は、会社法429条1項に基づく責任を負わない。 3 争点(3)(被告P2は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか)について (原告の主張) 被告P2は、被告会社の取締役として、代表取締役である被告P1の監視・監督義務を負っている(会社法362条2項2号)から、その義務を悪意又は重過失で怠り被告P1が被告会社に第三者に損害を及ぼすような行為をさせた場合には、第三者が受けた損害について会社法429条1項に基づく責任を負う。 本件において被告P2は、取締役としての職務を全くしなかったというのであるから、被告P1の監視、監督義務を怠って、被告P1をして被告会社に不正競争となる営業をさせ、原告に損害が生じさせたことは明らかである。 したがって、被告P2の監督義務違反と争点(1)で認定される損害との間には相当因果関係が認められ、これにつき、会社法429条1項に基づき、原告会社が前件訴訟提起を余儀なくされたことにより受けた弁護士費用相当の損害50万円の損害賠償責任を負う。 (被告P2の主張) (1) 被告P2が取締役に就任したのは、被告会社の定款の定めにより、取締役を3名選任する必要があったからである。 本件で問題となっている被告雑誌の編集、出版については、編集発行人である被告P1にその決定権限があるのであり、被告会社における雑誌の創刊は、取締役会で決定すべき事項ではない。 (2) 被告雑誌の創刊の時点で被告P1は違法性を認識しておらず、被告P2は被告雑誌の創刊すら認識していなかったから、被告P2が被告雑誌創刊の時点で被告題号1ないし3の使用を中止させるために取締役会を招集することを要求し、あるいは自ら招集することは不可能であった。 また、前件訴訟が提起された後も、被告P2は、前件訴訟が提起されたこと、原告と紛争となっていることを被告P1から知らされていないため、本件訴訟が被告P2に対して提起されるまで、被告P2は原告との争いについて全く知らなかったから、被告P1に取締役会を招集することを要求し、あるいは自ら取締役会を招集して、被告題号1ないし3の使用の中止を求めることは不可能であった。 以上のように、被告雑誌の創刊、題号、体裁の決定等、被告雑誌の出版に関する決定は取締役会の上程事項ではなく、また、被告P2は編集業務にも一切かかわっていないのであり、被告雑誌の出版のみならず、原告雑誌の存在も認知していない。取締役に取締役会上程事項以外の事項についても監視義務が認められるとしても、単なる平取締役にすぎず、実際には会社に出社もしていない被告P2に対して、会社のあらゆる業務に関して監視義務を負わせることはできないのであり、一つ一つの雑誌の出版について不競法違反も含め、何らかの問題がないかを全て確認等することを要求することは取締役として求められる責務の範囲を大幅に超えている。 また、被告題号1ないし3と原告題号の類似性、被告題号1ないし3と原告題号の誤認混同の可能性等については、十分に論争となる事案であり、少なくとも通常人からみて明白に不競法違反であるといえる事案ではない。 したがって、被告P2に不正競争行為に関する監視義務違反はないか、少なくとも重過失が認められる状況にはないから、被告会社に不正競争行為が認められようとも、原告の前件訴訟の提起に要した弁護士費用相当の損害を含め、その結果、原告の受けた損害について、被告P2は、会社法429条1項に基づく責任を負わない。 4 争点(4)(被告P1及び同P2は被告会社に支払を命じられた間接強制金相当額が原告の損害であることを前提に会社法429条1項に基づく責任を負うか)について (原告の主張) (1) 原告は、被告会社に対して、間接強制決定に基づき、被告会社を債務者とする債権差押命令を取得し、被告会社の預金債権に対する債権執行を試みたが、その預金残高はわずか4179円にすぎず、不奏功に終わった。また、前件判決に基づき、被告会社を債務者とする債権差押命令を取得し、預金債権を差押えたが、その残高はわずか4万3305円、43万7776円にすぎず、不奏功に終わった。 (2) これは、被告P1及び被告P2が被告会社に対し、強制執行を回避する策を講じさせたことによるものであることは明らかであり、被告P1及び被告P2はこの点につき、故意による任務懈怠が認められる。 (3) 被告P1は、被告会社の代表取締役として、前件訴訟の第1審判決後、被告会社に直ちに題号を変更させて間接強制金が課せられないようにすべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったことにつき任務懈怠が認められる。 (被告P1及び被告P2の主張) (1) 間接強制とは債務を履行しない義務者に対して、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に定められた間接強制金を課すことを決定することで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払を促すものであり、間接強制金の発生自体は損害ではない。原告は本件訴訟において、間接強制金を発生させた義務違反の事由に基づく損害、すなわち被告雑誌の出版による損害を請求しているのであるから、これに加えて別途被告P1及び被告P2に間接強制金相当額を請求することは、実体的に受けている損害に上乗せをして請求することになる。 また、原告は既に間接強制決定を得ており、間接強制金の強制執行(直接執行)が現在までに奏功していないとしても、それによって新たに損害を受けているわけではない。 仮にその点を措くとしても、被告P1及び被告P2は強制執行の実現を妨げる行為は行っていないのであって原告が主張する任務懈怠は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告会社の不正競争によって受けた原告の損害額)について (1) 前件訴訟との関係について 原告は、被告会社に対する前件訴訟により不競法5条1項を適用して損害額を認定した前件判決が確定していることから、本件において被告らが同項の適用を巡って争うことは紛争の蒸し返しであるように主張するが、そもそも被告P1及び被告P2については前件訴訟の当事者ではないし、また本件においては、前件訴訟で対象とされていない平成25年5月号から平成26年7月号までの被告雑誌の出版を対象とする不正競争も審理の対象とされている。 他方、被告会社については、前件訴訟の当事者であるが、前件訴訟においては、不競法5条1項を巡って審理されているものの、その主張が控訴審において訴えを拡張して加えられたものであるため、その審理は控訴審だけのものとなってしまい、前件判決で確定した範囲に限ってみても被告会社にとっては審級の利益が失われている関係にあるし、そもそも被告会社との関係において本件訴訟で審理されているのは、前件訴訟で対象とされていない期間である。 そうすると、本件において被告らが被告雑誌の出版行為が不正競争に該当することを争わずに争点を損害論に絞って争っていることも考慮すると、被告P1については同人が被告会社の代表取締役として前件訴訟に関与したことを不利益に考慮したとしても、本件において被告P1及び被告P2が不競法5条1項の適用等を争うことが信義則に反するといえないことはもとより、被告会社であってもやはり同様に争うことが信義則に反するということはできないというべきである。 したがって、以下においては、前件判決での判決内容に拘束されることなく判断を進めることとする。 (2) 不競法5条1項の適用による損害について ア 単位数量当たりの利益の額 証拠(甲94)及び弁論の全趣旨によれば、原告が受ける原告雑誌の1冊当たりの利益の額は820円であると認められる。 イ 被告雑誌の譲渡数量について (ア) 原告は、被告雑誌の譲渡数量が、平成23年9月号から平成25年4月号までで●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までで●(省略)●冊であると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。 (イ) 被告雑誌の販売形態は、①取次店を介して書店店頭で販売される場合、②インターネット書店を利用して被告会社が直接販売する場合、③被告会社が購入希望者から直接購入申込みを受けて定期購読等で販売する場合の3通りがあるが、それぞれの出版部数は、以下のとおりと認められる。 a 取次店を介して書店店頭で販売される場合 被告らは、平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の取次店への納品数が、別紙「取次店への納品数一覧表」の原告第2次主張納品数欄記載のとおり合計が●(省略)●冊であるとする限度で認めているところ、原告は、別紙「取次店への納品数一覧表」の被告当初主張納品数欄記載の納品数と、前件訴訟で被告側から提出された出荷納品数との差を指摘し、その差数分は全て納品数に加算すべきであるから、被告雑誌の出荷納品数は少なくとも同別紙「取次店への納品数一覧表」の原告第1次主張納品数欄記載のとおり●(省略)●冊であると主張する。 しかし、前件において被告側が提出した証拠である「前件提出に係る売上一覧表」(甲89)には、「取次出荷合計」欄に出荷納品数が記載されているものの、その裏付けとなる的確な証拠は前件でも本件でも提出されておらず、そもそも前件判決からうかがえる前件訴訟の経緯に鑑み、上記証拠は必ずしも信用性があるものとはいえないから、上記被告らが認める●(省略)●冊に加え、さらに上記「前件提出に係る売上一覧表」(甲89)の「取次出荷合計」と別紙「取次店への納品数一覧表」の被告当初主張納品数欄記載の納品数との差数分を加算することは相当ではない。 したがって、平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の出荷納品数は、被告らが認める●(省略)●冊(平成23年9月号から平成25年4月号までで●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までで●(省略)●冊)の限度で認定するのが相当である。 b インターネット書店を利用して被告会社が直接販売する場合 平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌のインターネット書店であるFujisan.co.jpへの出荷納品数は、下記の①、②のとおり合計●(省略)●冊であることを被告らは認めており、この限度で認定するのが相当である。 そして、被告雑誌の創刊号である平成23年9月号が同年7月20日から出版されていることが認められるから、各月号の出版時期は、前々月の20日と認められ、これを考慮して下記の①bと②を月数割で計算すると、平成23年9月号から平成25年4月号までの出版部数は●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までで●(省略)●冊となる。) 記 ① 定期購読分 a 平成23年7月20日から平成24年7月19日 ●(省略)●冊 b 平成24年7月20日から平成25年7月19日 ●(省略)●冊 c 平成25年7月20日から平成26年7月19日 ●(省略)●冊 d 平成26年7月20日から同年8月15日 ●(省略)●冊 ② 一部販売 平成23年7月20日から平成26年8月15日 ●(省略)●冊 (ウ) 被告会社が購入希望者から直接購入申込みを受けて定期購読等で販売する場合 上記形態による出版部数が736冊であることを被告らは認めており、この限度で認定するのが相当である(なお、被告会社が開示した被告会社から直接購入する取引の内訳の一覧である別紙「直接購入分一覧表」の納品数欄の記載から、平成23年9月号から平成25年4月号までの出版部数は●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までで●(省略)●冊と認められる。) (エ) 返品数 平成23年9月号から平成26年7月号までの、被告雑誌の返品数について、被告は別紙「返品数一覧表」の各号合計欄記載のとおり、合計●(省略)●冊であると主張するところ、原告は、このうち、少なくとも、平成24年9月30日付けの西村書店からの返品分●(省略)●冊については、被告会社において返品処理されていないはずであることから、返品数からこれを控除すべきであり、返品数は合計●(省略)●冊であると主張する。 しかし、上記原告指摘に従い返品数から控除すべきことを認めるに足りる証拠はないから、平成23年9月号から平成26年7月号までの、被告雑誌の返品数は、別紙「返品数一覧表」の各号合計欄記載の●(省略)●冊(平成23年9月号から平成25年4月号までで●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までで●(省略)●冊)の限度で認定するのが相当である。 (オ) 以上によれば、平成23年9月号から平成26年7月号までの被告雑誌の譲渡数量は、合計●(省略)●冊(平成23年9月号から平成25年4月号までの間の被告雑誌の譲渡数量は●(省略)●冊、平成25年5月号から平成26年7月号までの間の被告雑誌の譲渡数量は●(省略)●冊)であると認められる。 (計算式) ① 平成23年9月号から平成25年4月号まで ●(省略)●冊+●(省略)●冊+●(省略)●冊-●(省略)●冊=●(省略)●冊 ② 平成25年5月号から平成26年7月号まで ●(省略)●冊+●(省略)●冊+●(省略)●冊-●(省略)●冊=●(省略)●冊 ③ 合計 ●(省略)●冊+●(省略)●冊=●(省略)●冊 ウ 被告雑誌の譲渡数量が原告の出版能力を超えないこと 上記イで認定した被告雑誌の譲渡数量は、対応期間における原告による原告雑誌の出版能力を超えるものではない(弁論の全趣旨)。 エ 不競法5条1項本文に基づく損害額について 以上を前提に、この段階での不競法5条1項本文のみに基づく損害額を計算すると、次のとおりとなる。 (ア) 被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版による損害 原告が受ける原告雑誌1冊当たりの利益の額は820円、上記期間中の被告雑誌の譲渡数量は●(省略)●冊であるところ、原告は同数量の出版する能力があったから、不競法5条1項本文に基づく損害額は上記1冊当たりの利益に被告雑誌の出版部数を乗じた●(省略)●円である。 (計算式) 820円×●(省略)●冊=●(省略)●円 (イ) 被告雑誌の平成25年5月号から平成26年7月号までの出版による損害 原告が受ける原告雑誌1冊当たりの利益の額は820円、上記期間中の被告雑誌の出版部数は●(省略)●冊であるところ、原告は同数量の出版する能力があったから、不競法5条1項本文に基づく損害額は上記1冊当たりの利益に被告雑誌の譲渡数量を乗じた●(省略)●円である。 (計算式) 820円×●(省略)●冊=●(省略)●円 オ 不競法5条1項ただし書の事情について (ア) 被告らは、原告雑誌及び被告雑誌が内容によって選択されることや、両雑誌の売上げの関係などを指摘して、不競法5条1項ただし書の「被侵害者が販売することができないとする事情」があるから、損害額は同項本文の推定による損害額の30分の1から20分の1程度であると主張する。 (イ) そこで、検討するに、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 a 原告雑誌及び被告雑誌は、ともに循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主要購読者として想定した専門誌である。そして、原告雑誌及び被告雑誌とも、各号の表紙において、その号の掲載記事が一見して分かるよう大きく記載されている。(甲6ないし甲13、甲20、甲51、乙1の1ないし4、乙6、乙7、乙11、乙16、乙17、弁論の全趣旨) b 原告雑誌の納品数の推移は別紙「Heart nursing取次納品数推移一覧表」のとおりであり、被告雑誌創刊後、月当たり300冊程度の出版部数の減少が起き、以後、その状況が続き、被告会社が被告雑誌の題号を原告題号に類似する被告題号3から類似しない変更後被告題号に変更した後も特段増加していない。他方、被告雑誌の出版部数は、その題号を被告題号3から変更後被告題号に変更した後に特段減少していない。なお、原告の場合、取次店への納品数は、前月の出版部数を踏まえて決定されるものである。(甲53、乙53ないし乙60、弁論の全趣旨)。 c 原告雑誌及び被告雑誌の出版部数の一定割合は年単位での定期購読者によるものであるが、割合的には取次店を介して書店店頭で販売されるものが多く、月毎の出版部数の変動が少なからずある。原告雑誌及び被告雑誌を扱う書店では、両雑誌は同じ書棚に並べて販売されている。(甲45) d 被告雑誌が創刊されるまで、循環器領域における看護雑誌は原告雑誌のみであって競合する雑誌はなく、本件で問題とする期間中は、その種の雑誌は、原告雑誌と被告雑誌だけであった。 (ウ) 以上に基づき検討するに、原告雑誌及び被告雑誌は、いずれも専門職種である看護師を主な購読者とし、しかもその対象専門分野も循環器疾患の医療という狭い分野を対象とする専門誌であるから、もともと購読者となる対象は限られているところ、その上で原告雑誌は、競合雑誌がない状態で出版されていたというのであるから、その販売数量でしか同種雑誌の需要者がいなかった、少なくとも顕在化していなかったと認められるところであるが、本件において被告雑誌の創刊後に同種雑誌の需要者が格段に増加したような事情が認められず、しかも被告雑誌は原告雑誌と同一の販売方法をとり、書店では店頭で並べて販売されてさえいたというのに、被告雑誌の創刊後に被告雑誌の販売数量がそのまま原告雑誌の販売数量の減少となっているわけではなく、現実にはその合計数量において増加している関係にある。 また、不競法5条1項本文の推定のとおり、原告題号に類似する題号を使用した被告雑誌の出版がなければその販売数量と同じ数量だけ原告雑誌が販売できた関係にあるというのなら、被告雑誌が原告題号に類似する題号の使用を止めた後は被告雑誌の販売数量分だけ原告雑誌の販売数量が増加することが起きるはずであるが、上記(イ)bのとおり、その後の両雑誌の販売数量に大きな変動はない。 そうすると、これらの事情は、不競法5条1項ただし書の推定を覆滅させる事情として斟酌するのが相当である。 加えて、被告雑誌の題号の変更により被告雑誌の販売数量が減少しているわけではないことや、上記両雑誌の性格からすると、購読者が掲載記事の内容を吟味して購入するという被告らの主張も一般経験則として首肯できる部分もあり、立証がないとして排斥すれば足りるものとは考えられないから、そのような雑誌及び購読者の性格から推認される購読者の購入選択方法の在り様も、不競法5条1項ただし書の推定を覆滅させる事情として斟酌するのが相当である(なお原告は、被告雑誌が原告雑誌の特集テーマ等を真似て出版していることを問題にしているが、そのことは特集テーマ等の選択により購読者の需要が喚起されることを肯定したものという見方もできるのであって、そうであれば原告自身も雑誌の内容を見て購読者が購入するという上記被告らの主張を実質的に肯定しているということができる。)。 そのほか本件で問題とすべき損害は、被告雑誌を原告雑誌と誤認混同して購入することによって受ける損害であるが、そうであれば、少なくとも原告雑誌との誤認混同の結果とは考えにくい被告雑誌の定期購読者の購入分の関係では、原告雑誌を販売することが可能であったとする因果関係の推定の多くは覆滅しているとみるのが相当であり、これも不競法5条1項ただし書の推定を覆滅させる事情の一つとして斟酌すべきである。 したがって、以上を総合すると、本件においては、不競法5条1項の立法趣旨を踏まえて控えめに認定するとしても、被告雑誌の出版部数の8割については、不競法5条1項ただし書の推定を覆滅させる事情があるというべきである。 カ そこで以上に基づき損害額を計算すると、次のとおりとなる。 (ア) 被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版による損害 この期間の不競法5条1項本文に基づく損害額は、上記エ(ア)のとおり886万8300円であるから、この額を8割減じた177万3660円が損害額であると認められる。 (イ) 被告雑誌の平成25年5月号から平成26年7月号までの出版による損害 この期間の不競法5条1項本文に基づく損害額は、上記エ(イ)のとおり477万7320円であるから、この額を8割減じた95万5464円が損害額であると認められる。 (3) 不競法5条3項1号に基づく損害について 原告は、選択的に、不競法5条3項1号に基づく請求をするものであるので検討すると、原告題号は、被告雑誌創刊時に既に周知商品等表示であったものであるが、被告雑誌は、原告題号と全く同一の題号であるというわけではないことに加え、上記(2)オ(イ)で認定した各事実及びこれに基づき上記(2)オ(ウ)で説示したところをも考慮すると、不競法5条3項1号により原告が受けるべき金銭の額は、被告雑誌の販売価格の5%をもって相当というべきである。 そこでこれにより計算すると、平成23年9月号から平成26年7月号までの、被告雑誌の譲渡数量は、前記のとおり合計●(省略)●冊であり、被告雑誌1冊当りの販売額は2000円(税抜)であることから、これら被告雑誌の出版により原告が受けるべき金銭の額は、●(省略)●円であると認められる。 (計算式) ●(省略)●冊×2000円×0.05=●(省略)●円 (4) 小括 原告は、不競法5条1項の適用による損害賠償請求と同条3項1号の適用による損害賠償請求を選択的に主張しているが、上記認定してきたところによれば、前者による認定損害額の方が大きいから、原告の損害額は、被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版による損害額が177万3660円、被告雑誌の平成25年5月号から平成26年7月号までの出版による損害額が95万5464円であると認められる。 2 争点(2)(被告P1は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか)について (1) 証拠(甲41、甲42、甲67ないし甲70、甲79の1、甲85)によれば、被告P1が被告会社以外に事業目的を異にする8社の小規模の株式会社の代表取締役を務めていることが認められること、後記3で認定するとおり被告P2が被告会社の事業に全く関与していなかったことに加え、前記第2の1(1)イ後段の経緯を斟酌すると、被告P1は、被告会社の代表取締役として被告会社の事業内容を全て単独で決していた者であると認められるから、不正競争となる被告題号を選定して被告雑誌を出版することについて悪意又は重大な過失が認められるならば、被告会社の代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失があったものとして、上記不正競争により損害を受けた原告に対し、直接、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。 (2) そこで検討するに、被告会社は、平成23年9月号から被告題号1の題号を用いて被告雑誌の出版を開始したものであるが、その当時、原告雑誌の題号は需要者に広く知られていたものであるから、原告雑誌と類似の題号である被告題号1を使用して、原告雑誌と競合する同種雑誌を出版することが、需要者を誤認混同させるという不正競争法違反に該当する行為となることは容易に予見できたことといえる。 そうであるのに、被告P1は、被告会社代表者として、被告題号1を選定して不正競争となる被告雑誌出版の事業を進めたというのであるから、少なくともその職務を行うについて重大な過失があったことは明らかであり、これにより原告に生じた損害について会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 この点、被告P1は、「NURSE® HEART ナースハート」が商標登録されたことから注意義務違反はない旨の主張をするが、同商標と被告会社が使用した被告題号1とは一見して異なるものであるから、被告P1の上記主張は採用できない。 (3) そして、被告P1は、前件の第1審の判決言渡後間もなく、被告雑誌の題号を被告題号1から被告題号2に変更しているが、前件第1審判決において被告題号1の使用行為が不正競争であると裁判所により既に明確に認定されているのであるから、これを被告題号2のように需要者からみて同一と評価されるような一部小文字化をしたところで、不正競争との法的評価を免れ得ないことは明らかである。 そうであるのに、この程度の題号の変更を施しただけで不正競争となる被告雑誌の出版を継続した被告P1には、少なくともその職務を行うについて重大な過失があったことは明らかというべきであるから、同様に、これにより原告に生じた損害について会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 (4) さらに被告P1は、前件判決の言渡しがなされる直前の時期に、被告雑誌の題号を被告題号2から被告題号3に変更しているが、これまでの訴訟の経緯からみて、被告題号2に雑誌の普通名詞であると理解され得る「magazine」を付加したところで、不正競争との法的評価を免れ得ないことも明らかである。 そうであるのに、この程度の題号の変更を施しただけで不正競争となる被告雑誌の出版を継続した被告P1には、やはり少なくともその職務を行うについて重大な過失があったことは明らかというべきであるから、同様に、これにより原告に生じた損害について会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 (5) そうすると、被告P1は、被告題号1ないし3を使用した被告雑誌の出版という不正競争により原告が受けた上記1で認定した損害全てについて会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うものというべきであり、またそうである以上、その損害賠償請求のため原告が被告会社に対して提起した前件訴訟の訴訟追行のために要した弁護士費用相当額50万円についても損害賠償責任を負うものというべきである。 3 争点(3)(被告P2は被告会社の不正競争及び前件訴訟の提起により原告が受けた弁護士費用相当の損害について会社法429条1項に基づく責任を負うか)について (1) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 被告P2は、昭和16年生まれの被告P1の妹であり、薬剤師資格を有している。被告P2は、大学の薬学部を卒業後、医学部で研究職に就いていたが、結婚を機に退職し、その後、短期のアルバイトを除いて定職に就いたことはなかった。(乙40) イ 被告P2は、被告会社の定款上、取締役の員数が3名とされていることから、兄である被告P1に依頼されて被告会社の取締役に就任することを承諾し、その後、平成13年2月13日に被告会社の取締役に重任され、同月15日にその旨登記された。その後、任期を終了するが、平成27年1月20日に至るまで退任登記をされることはなく、また取締役として再任されることなく、商業登記簿上、登記が残存する状態が継続していた。(甲2、乙62) なお、被告P2は、被告会社の取締役会に出席したことはなく、取締役としての報酬を受けることもなかった。(乙18ないし乙22、乙40) ウ 被告会社は、上記登記後、必要な登記手続を全くしていなかったことから、本件訴訟の係属中である平成27年1月20日、会社法472条1項により解散したものとみなされ、その登記とともに、被告P2は清算人として登記された。 しかし、平成28年8月20日、取締役会設置会社の廃止手続、会社継続の手続、被告P1の取締役及び代表取締役就任手続が取られることにより、平成28年8月22日付けで、上記各手続に対応する登記がなされるとともに、被告P2を清算人とする登記は抹消され、被告P2には会社法346条1項に基づく権利義務もなくなった。(甲2、乙62、当裁判所に顕著な事実) エ 被告P2は、被告会社の他に、被告P1が代表取締役を務める会社である株式会社エコノミスト社の取締役に昭和62年11月20日就任、株式会社科学技術出版の取締役に平成4年11月13日就任、株式会社いきいきライフの取締役に平成13年2月13日重任、株式会社文芸館の取締役に平成14年9月25日就任、株式会社ヴァージン化粧品の取締役に平成14年9月6日に就任、株式会社オープンネットの取締役に平成12年5月26日に就任、株式会社オリーブの取締役に同日就任、株式会社メディカルズ(旧商号は株式会社リョクサイ)の取締役に平成27年4月20日に就任した旨、それぞれ登記され、その後、被告会社におけると同様、任期満了の退任登記をされることもなく、他方、取締役として再任されることなく、登記が残存した状態で放置されている。(甲41、甲42、甲67ないし70、甲79、甲85) (2) 以上に基づき検討するに、被告P2は、被告会社の取締役に就任していた者である以上、代表取締役の業務執行を監督する立場にあり、その監督義務を悪意又は重過失で怠り第三者が受けた損害につき会社法429条1項に基づき賠償責任を負うものといえるが、被告P1が代表取締役を務める他の8社においても取締役に就任し、それら各社でも取締役としての登記が任期満了後も放置されていることも併せ考えると、被告P2は、同人が陳述書(乙40)で説明するように、被告会社の取締役の員数合わせのため代表取締役の親族として取締役に就任しただけの者であって、当初からその業務に関与することは予定されていなかったと認められ、また現実に何ら関与していなかったことも認められる。 そして、本件で問題となる不正競争となる被告会社の業務がなされた期間は、既に被告P2の取締役としての任期が満了してから8年が経過した後に始まるものであるところ、被告P2は、任期満了により退任したとはいえ、その当時に取締役の定款上の員数を満たすため会社法346条1項に基づき新任の取締役が就任するまで取締役としての義務を免れないことになるが、そもそも会社法346条1項に基づく取締役の権利義務は、株式会社の業務の執行が空白になることを防ぐために、新たに選任された取締役が就任するまでの間暫定的に、法律により特別に認められたものであるから、取締役に就任した経緯が上記のとおりであって、そもそも会社の業務に関与しておらず、したがって任期満了後に再任されていないのに会社法346条1項に基づく取締役としての権利義務があることを認識していたともおよそ考えられない被告P2が、任期満了により退任したことになる時期から8年が経過した後に、被告P1の代表取締役としての職務執行を取締役会の開催を求めるなどして監視すべき義務を尽くすことを期待するのは困難であり、被告P2が被告P1のする不正競争となる業務執行を阻止しなかったとしても、これをもって被告P2に重大な過失があるとすることはできないというべきである。 したがって、被告会社の不正競争により受けた原告の損害につき、被告P2に会社法429条1項の責任があるようにいう原告の主張は採用できない。 4 争点(4)(被告P1及び同P2は被告会社に支払を命じられた間接強制金相当額が原告の損害であることを前提に会社法429条1項に基づく責任を負うか)について 被告会社は、平成24年8月8日から同年9月13日までの間、前件判決で確定した不作為義務に違反したことで間接強制金740万円を原告に支払うよう命じられたが、これを原告に支払っていないところ、原告は、その同額の損害を原告が受けたことを前提に被告P1及び被告P2に会社法429条1項に基づく請求をしている。 しかし、間接強制金は、債務名義上の執行債権についての履行命令に違反したことに対する制裁金であるから、執行債権者である原告が、被告会社に対して制裁金としての債権を取得し、さらにこれを回収できなかったとしても、これにより新たに損害が原告に発生したと解する余地はなく、原告の主張がこの趣旨の損害をいうものであれば明らかに失当である。 また原告の主張の趣旨を、上記被告らが任務を故意に怠り原告が被告会社から間接強制金の回収をできないようにしている強制執行妨害による損害の趣旨をいうものに限定して解したとしても、強制執行妨害行為により発生する損害は、強制執行手続のために無駄にされた費用等について観念されるべきものである。原告は、間接強制金の回収手続が奏功しないことを主張するだけであって、そのことが被告P1及び被告P2の行為の結果であるか否かをさて措き、強制執行妨害とする行為の具体的内容や、そのことにより発生したと認められるべき具体的な損害を主張立証しているわけではない。 したがって、原告に間接強制金相当の損害を受けたことを前提とする被告P1及び被告P2に対する会社法429条1項に基づく請求は、その余の点を判断するまでもなく理由はないというほかない。 5 本件訴訟と因果関係のある弁護士費用相当の損害について 上記認定額に加え、本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件と因果関係のある弁護士費用相当の損害額は、被告P1との関係で30万円、被告会社との関係で10万円とするのが相当である。 6 結論 以上によれば、原告の被告会社に対する不競法4条に基づく請求は、平成25年5月号から平成26年7月号までの出版による損害95万5464円及び弁護士費用相当の損害10万円の合計105万5464円並びにこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成26年7月11日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求の限度で理由があり、その余の請求には理由がなく、原告の被告P1に対する会社法429条1項に基づく請求は、平成25年5月号から平成26年7月号までの出版による損害95万5464円及び本件訴訟についての弁護士費用相当の損害30万円の合計125万5464円並びにこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成26年7月12日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求、被告雑誌の平成23年9月号から平成25年4月号までの出版による損害177万3660円及びこれに対する前件訴訟控訴審附帯控訴状送達日の翌日である平成24年9月15日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金請求、並びに前件訴訟の弁護士費用相当の損害50万円及びこれに対する前件訴訟訴状送達日の翌日である平成23年10月19日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求の限度で理由があり、その余の請求には理由がなく、原告の被告P2に対する同条に基づく請求は全て理由がない(なお、上記理由があるとする原告の被告会社及び被告P1に対する損害賠償請求は、被告会社に対する損害賠償請求の限度(ただし、遅延損害金請求は平成26年7月12日を起算日とする限度)で連帯している。)。 よって、被告会社及び被告P1に対する請求については、上記理由のある限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却し、被告P2に対する請求は理由がないからいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法61条、64条、65条1項ただし書を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 森崎英二 裁判官 田原美奈子 裁判官 大川潤子 |
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