判例全文 | ||
【事件名】メイク専門学校のリーフレット写真事件 【年月日】平成28年10月13日 大阪地裁 平成28年(ワ)第6054号 損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成28年9月30日) 判決 原告 P1 同訴訟代理人弁護士 大久保康弘 被告 有限会社オフイスエス 主文 1 被告は、原告に対し、790万円及びこれに対する平成28年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、1600万円及びこれに対する平成28年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 請求原因 原告は、別紙「請求の原因」のとおり、請求の原因を述べた。 第3 当裁判所の判断 1 被告は、適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を争うことを明らかにしないものと認め、これを自白したものとみなす。 以上の争いのない事実によれば、別紙「請求の原因」の「二」記載のとおり原告が撮影して被告に提供した各写真(以下「本件各写真」という。)について、原告が著作権を有すると認められるところ、同「三」記載の被告の行為によって、上記の著作権が侵害されたと認められる。 2 そこで、原告が被った損害額を検討する。 (1) 著作権侵害による損害 争いのない事実によれば、平成21年11月以降に別紙2の写真の、平成22年11月以降に別紙1及び3の写真の著作権が侵害されたと認められ、原告は、被告に対し、平成27年12月までの6年間に被った損害の賠償を求めている。 そして、原告が著作権を有する本件各写真の内容が別紙1ないし3のとおりであるところ、本件各写真が被告が経営するメイク専門学校及びその関連会社の各ホームページに上記の期間にわたって掲載されたこと、原告が別紙1の写真を撮影し、被告に対してリーフレットでの1年間の使用を許諾するに際し、被告が原告に対して65万円の撮影費用を支払ったこと、原告が別紙2の写真を撮影し、被告に対してプロモーションとして1年間の使用を許諾するに際し、6万円の経費を被告と社員が負担したことは、当事者間に争いがない。また、証拠(甲1)によれば、原告は、平成27年12月22日、被告に対し、本件各写真の無断使用による損害が1か月10万円を下らないとして、6年間の損害額720万円の支払を請求したことが認められる。 これらの事情等を総合して考慮すると、本件各写真の上記各ホームページへの掲載に関して、著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、平均して1か月当たり10万円と認めるのが相当であり、原告は、平成27年12月までの6年間に、720万円の損害を被ったと認められる。これに対し、原告は、1か月当たりの損害額が20万円を下らない旨主張するが、かかる金額の損害が生じたと認めるに足りる証拠はない。 (2) 弁護士費用 原告が、本件訴訟の提起、遂行のために原告訴訟代理人を選任したことは、当裁判所に顕著であるところ、本件訴訟の事案の性質、内容、審理の経過等の諸事情を考慮すると、被告の行為と相当因果関係のある弁護士費用は、70万円と認めるのが相当である。 (3) 合計額 以上によれば、原告に生じた損害は、合計790万円となる。 3 よって、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松宏之 裁判官 田原美奈子 裁判官 林啓治郎 (別紙)請求の原因 一、当事者 1 原告は、写真家である。 被告は、メイク専門学校「P2」を経営する有限会社である。 二、被告に対する写真の提供と使用許諾 1 被告代表者のP3は、平成13年10月18日、プロモーション目的で結婚式場 THE GERDEN OERIENTAL 蘇州園のためのリーフレットを作成することにし、そのリーフレットに使用する目的で原告に写真撮影を依頼した。 2 原告は依頼に応じ写真撮影し、被告に提供した。撮影にかかった費用は合計金65万円であり、被告は平成13年末までに支払った。 3 当該リーフレットは平成13年までに完成したが、蘇州園のためのリーフレットとしては使用できず、平成14年1月から、P4での宣材として使用することになった(別紙1)。当該リーフレットに使用された原告の写真は4枚である。 4 リーフレットに写真を使用する際の合意については、写真の権利は原告に帰属し、使用目的は当該リーフレットの写真に限定して、1年間のリーフレット使用に限り、使用を許諾したものであった。 5 また原告は、同じく被告代表者の依頼により、平成21年8月6日に被告の社員であるP5のヘアメイク作品を撮影し、50点を被告に渡した(経費は金6万円で、被告・P5折半)(うち4枚を別紙2として添付する)。 6 当該50点の写真は、ヘアメイクアーチストであるP5のプロモーションに使用するためのもので、1年間に限り、プロモーションツールとしての使用を許諾した。 三、被告の無断使用 1 被告は、平成21年11月以降、被告が経営するメイク専門学校「P2」のホームページ(●(省略)●)に、原告の前記写真を使用した。 2 この使用は1年間に限って使用を許諾したものであり、原告は平成22年11月以降、前記写真をP2のホームページに使用することは認めていないので、平成22年11月以降は無断使用である。 3 P5のプロモーション用写真についても平成21年11月以降、別紙2の写真が「P2」のホームページに掲載されているが、この写真については、原告は被告のホームページに使用することは認めておらず、無断使用である。 4 他にP2ホームページ内には、「PROFESSIONAL MESSAGE」として、原告の写真が使用されているが(別紙3)、1年間に限り使用を許諾したものであり、22年11月以降は認めておらず無断使用である。 5 平成27年12月15日現在、P2のホームページと「P2」の関連会社である「P6」のホームページには、当該写真が掲載されていた(別紙4)(現在は削除されている)。 四、被告の不法行為 1 前記被告の行為は、原告の撮影した写真を無断使用したものであり、流用期間中、原告に帰属する写真の著作権が侵害されたことになる。 2 前記蘇州園の写真のホームページへの流用は平成21年11月から平成27年12月までの6年間に渡り、その間、被告は原告の写真を無断使用したことになり、原告は損害を被っている。その額は、1ヶ月20万円を下らず、現在までに少なくとも1440万円(20万円×12ケ月×6年)の損害が発生している。 3 さらに原告は本件訴訟提起については、弁護士に依頼せざるを得なかった。その弁護士費用は金160万円を下らない。 五、結論 よって原告は被告に対し、前記損害賠償として、被告に金1600万円を請求すべく、本訴に及んだ。 以上 別紙1〜4(省略) |
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