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【事件名】スマホケースの独占的利用許諾事件
【年月日】平成28年9月28日
 東京地裁 平成27年(ワ)第482号 販売差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成28年7月22日)

判決
原告 A(以下「原告A」という。
原告 B(以下「原告B」という。
原告 C(以下「原告C」という。
原告 D(以下「原告D」という。
原告 株式会社フォックスジャム(以下「原告会社」という。
上記五名訴訟代理人弁護士 神田知宏
同 田村有加吏
同訴訟復代理人弁護士 山崎臨在
被告 株式会社LUXE
同訴訟代理人弁護士 齋藤健太郎


主文
1(1) 被告は、別紙1被告商品目録記載1の各商品を製造し、又は譲渡してはならない。
(2) 被告は、別紙1被告商品目録記載1の各商品を撮影した写真データを送信可能化し、又は自動公衆送信してはならない。
(3) 被告は、別紙1被告商品目録記載1の各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄せよ。
(4) 被告は、原告Aに対し、4万0500円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2(1) 被告は、別紙1被告商品目録記載2の各商品を製造し、又は譲渡してはならない。
(2) 被告は、別紙1被告商品目録記載2の各商品を撮影した写真データを送信可能化し、又は自動公衆送信してはならない。
(3) 被告は、別紙1被告商品目録記載2の各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄せよ。
(4) 被告は、原告Bに対し、9万6000円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3(1) 被告は、別紙1被告商品目録記載3の各商品を製造し、又は譲渡してはならない。
(2) 被告は、別紙1被告商品目録記載3の各商品を撮影した写真データを送信可能化し、又は自動公衆送信してはならない。
(3) 被告は、別紙1被告商品目録記載3の各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄せよ。
(4) 被告は、原告Cに対し、12万2500円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4(1) 被告は、別紙1被告商品目録記載4の各商品を製造し、又は譲渡してはならない。
(2) 被告は、別紙1被告商品目録記載4の各商品を撮影した写真データを送信可能化し、又は自動公衆送信してはならない。
(3) 被告は、別紙1被告商品目録記載4の各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄せよ。
(4) 被告は、原告Dに対し、4万2000円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は、原告会社に対し、59万6424円及びうち58万8576円に対する平成27年9月6日から、うち7848円に対する同月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
7 訴訟費用はこれを10分し、その1を原告Aの、その1を原告Bの、その1を原告Cの、その1を原告Dの、その2を原告会社の各負担とし、その余を被告の負担とする。
8 この判決は、第1項(1)、(2)及び(4)、第2項(1)、(2)及び(4)、第3項(1)、(2)及び(4)、第4項(1)、(2)及び(4)、並びに第5項に限り、仮に執行することができる。
9 原告A、原告B及び原告Cのために、この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由
第1 請求
1 原告Aの請求
(1) 主文第1項(1)ないし(3)と同旨
(2) 被告は、原告Aに対し、75万0600円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告Bの請求
(1) 主文第2項(1)ないし(3)と同旨
(2) 被告は、原告Bに対し、196万9200円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告Cの請求
(1) 主文第3項(1)ないし(3)と同旨
(2) 被告は、原告Cに対し、197万7000円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告Dの請求
(1) 主文第4項(1)ないし(3)と同旨
(2) 被告は、原告Dに対し、105万2400円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告会社の請求
(1) 被告は、別紙1被告商品目録記載5の各商品を製造し、又は譲渡してはならない。
(2) 被告は、別紙1被告商品目録記載5の各商品を撮影した写真データを送信可能化し、又は自動公衆送信してはならない。
(3) 被告は、別紙1被告商品目録記載5の各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄せよ。
(4) 被告は、原告会社に対し、113万4108円及びこれに対する平成27年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、別紙2著作物目録記載の各絵画(以下、個別には、同目録の番号に対応して「本件著作物1の1」などといい、同目録記載の各絵画を総称して「本件各著作物」と、それらの著作権を総称して「本件各著作権」という。)に関し、本件著作物1の1及び同1の2の著作者であり、それらの著作権を有すると主張する原告A、本件著作物2の1ないし同2の6の著作者であり、それらの著作権を有すると主張する原告B、本件著作物3の1ないし同3の6の著作者であり、それらの著作権を有すると主張する原告C、本件著作物4の1ないし同4の3の著作者であり、それらの著作権を有すると主張する原告D、及び本件各著作物について、それらの著作権者から独占的に利用することの許諾を受けた(以下、当該許諾に基づく権利を「独占的利用権」という。)と主張する原告会社が、別紙1被告商品目録記載の各スマートフォン用ケース(以下、個別には、同目録の番号に対応して「被告商品1−00396」などといい、また、同目録記載1の各商品を併せて「被告商品1」と、同目録記載2の各商品を併せて「被告商品2」と、同目録記載3の各商品を併せて「被告商品3」と、同目録記載4の各商品を併せて「被告商品4」と、同目録記載5の各商品を併せて「被告商品5」という。なお、同目録記載の各商品を総称して「被告各商品」ということがある。)に印刷された図柄は本件各著作物の複製物であるから、被告が被告各商品を製造及び譲渡する行為は本件各著作権(複製権、譲渡権)を侵害する行為であり、被告が被告各商品を撮影した写真データをウェブサイトにアップロードする行為は本件各著作権(公衆送信権)を侵害する行為であるほか、被告の上記行為は原告会社が有する本件各著作物の独占的利用権を侵害する行為であり、また、被告の上記各行為のうち、本件著作物1の1及び同1の2に係るものは同著作物についての原告Aの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害する行為、本件著作物2の1ないし同2の6に係るものは同著作物についての原告Bの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害する行為、本件著作物3の1ないし同3の6に係るものは同著作物についての原告Cの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害する行為、本件著作物4の1ないし同4の3に係るものについては同著作物についての原告Dの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害する行為であるなどと主張して、@原告A、原告B、原告C及び原告Dが、著作権法112条1項に基づき、前記第1の1ないし4の各(1)及び(2)のとおり、被告商品1ないし同4の複製及び譲渡の差止め並びに被告商品1ないし同4を撮影した写真データの送信可能化及び自動公衆送信の差止めを求め、また、同条2項に基づき、前記第1の1ないし4の各(3)のとおり、被告商品1ないし同4の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データの各廃棄を求め、A原告会社が、本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して差止請求権及び廃棄請求権を行使するとして、前記第1の5の(1)及び(2)のとおり、被告商品5の複製及び譲渡の差止め並びに被告商品5を撮影した写真データの送信可能化及び自動公衆送信の差止めを求め、前記第1の5の(3)のとおり、被告商品5の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データの各廃棄を求め、B原告A、原告B、原告C及び原告Dが、著作権及び著作者人格権の各不法行為による各損害賠償請求権に基づき、前記第1の1ないし4の各(4)のとおり、被告に対し、損害賠償金(請求額は、原告Aにつき75万0600円〔著作権侵害による逸失利益600円、無形損害(著作権侵害と著作者人格権侵害を選択的に主張するものと解される。原告B、原告C及び原告Dについても同様。)60万円及び弁護士費用15万円の合計〕、原告Bにつき196万9200円〔著作権侵害による逸失利益1万9200円、無形損害180万円及び弁護士費用15万円の合計〕、原告Cにつき197万7000円〔著作権侵害による逸失利益2万7000円、無形損害180万円及び弁護士費用15万円の合計〕、原告Dにつき105万2400円〔著作権侵害による逸失利益2400円、無形損害90万円及び弁護士費用15万円の合計〕)及びこれに対する平成27年9月6日(本件訴状送達の日の翌日)を起算日とする民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、C原告会社が、本件各著作物についての独占的利用権の侵害を理由とする不法行為による損害賠償請求権に基づき、前記第1の5の(4)のとおり、被告に対し、損害賠償金113万4108円(独占的利用権の侵害による逸失利益83万4108円及び弁護士費用30万円の合計)及びこれに対する平成27年9月6日(本件訴状送達の日の翌日)を起算日とする民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実等(当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)
(1) 当事者
ア 原告ら
(ア) 原告会社は、インターネットを利用してスマートフォン用ケースの販売等を行う株式会社である。
(イ) 原告Aは、イタリア共和国に在住するアーティストである。
(ウ) 原告Bは、インドネシア共和国に在住するアーティストである。
(エ) 原告Cは、オランダ王国に在住するアーティストである。
(オ) 原告Dは、我が国に在住するアーティストである。
イ 被告
 被告は、日用品の販売等を行う株式会社である。
(2) 本件各著作物
 次の表の「番号」欄記載の各著作物(本件各著作物)は、インターネット上のウェブサイト「Society6」において、それぞれ対応する「提供者」欄に記載の者により提供された(by)ものとして公表された美術の著作物である(甲1の1ないし28の2。提供者の標記は原告が提出した訳文による。)。
番号
(別紙2著作物目録記載の番号)
提供者
1の1,1の2 A(判決注:原告Aを指す。)
2の1〜2の6 B(判決注:原告Bを指す。)
3の1〜3の6 C1(判決注:後述のとおり原告Cを指す。)
4の1〜4の3 D1ことD(判決注:原告Dを指す。)
F(以下「F」という。
7の1〜7の5 G1
H(以下「H」という。
9の1〜9の3 I(以下「I」という。
10 J(以下「J」という。
11
12の1,12の2
13 M1
14の1,14の2 N(以下「N」という。
15 O1
16 P1
17 Q1ことQ(以下「Q」という。
18
19 S1
20 T(以下「T」という。
21の1,21の2 U1
22の1,22の1
23の1〜23の5 W(以下「W」という。
24の1,24の2 X1
25の1〜25の8 Y(以下「Y」という。
26 Z(以下「Z」という。)
27 α(以下「α」という。
28の1,28の2 β1ことβ(以下「β」という。
 上記「提供者」欄記載の者のうち、「C1」とは原告Cの、「G1」とはブラジル連邦共和国に在住するアーティストであるG(以下「G」という。)の、「 M1」とはハンガリーに在住するアーティストであるM(以下「M」という。)の、「O1」とはカナダに在住するアーティストであるO(以下「O」という。)の、「P1」とはタイ王国に在住するアーティストであるP(以下「P」という。)の、「R」とはオランダ王国に在住するアーティストであるR1・テュウイニッセン及びアネロス・ヴァン・テン・ヴァーグ(以下、両名を併せて「R1ら」という。)の、「S1」とはアメリカ合衆国に在住するアーティストであるS(以下「S」という。)の、「U1」とはアメリカ合衆国に在住するアーティストであるU(以下「U」という。)の、「X1」とはスペインに在住するアーティストであるX(以下「X」という。)の各ペンネームである(甲42〔枝番号を含む。〕、弁論の全趣旨)。
(3) 被告の行為
 被告は、インターネット上のウェブサイトである別紙3ウェブサイト目録各記載の各ウェブサイト(以下、併せて「本件各ウェブサイト」という。)上に本件各著作物の画像データをアップロードして、本件各著作物を図柄として印刷したスマートフォン用ケースの販売の申出をし、平成25年6月1日から平成27年9月30日までの間に、別紙4販売数量一覧表の「合計」欄に記載された数量の被告各商品を製造して販売した(甲29の1ないし38の3)。
 なお、別紙1被告商品目録に記載された番号のうち、枝番号(例えば、被告商品1−00396の場合の「00396」などを指す。)は、被告が販売の申出をしたスマートフォン用ケースに印刷される本件各著作物のデザインを特定する番号である。
3 争点
(1) 本件各著作物の著作者及び著作権者(争点1)
(2) 原告会社は、本件各著作物について独占的利用権を有するか(争点2)
(3) 被告が被告各商品を製造し、販売した行為は、本件各著作権(複製権、譲渡権)又は独占的利用権を侵害する行為に当たるか(争点3)
(4) 被告は、被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイト上にアップロードしたか、また、同行為が本件各著作権(公衆送信権)を侵害する行為に当たるか(争点4)
(5) 被告の行為が原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害する行為に当たるか(争点5)
(6) 原告会社は、本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して、差止請求権及び廃棄請求権を行使できるか(争点6)
(7) 差止め及び廃棄の必要性が認められるか(争点7)
(8) 原告らが受けた損害の額(争点8)
4 争点に対する当事者の主張
(1)争点1(本件各著作物の著作者及び著作権者)について
【原告らの主張】
ア 原告Aは、本件著作物1の1及び同1の2を創作した著作者であり、これらの著作権者である。
イ 原告Bは、本件著作物2の1ないし同2の6を創作した著作者であり、これらの著作権者である。
ウ 原告Cは、本件著作物3の1ないし及び同3の6を創作した著作者であり、これらの著作権者である。
エ 原告Dは、本件著作物4の1ないし同4の3を創作した著作者であり、これらの著作権者である。
オ 本件著作物5ないし同28の2は、前記2(2)記載の表中、これらの著作物に対応する「提供者欄」記載の者(アーティスト)が創作した著作物であり、「提供者」欄記載の者(アーティスト)がそれぞれ本件著作物5ないし同28の2の著作権者である。
【被告の主張】
 いずれも不知。
(2) 争点2(原告会社は、本件各著作物について独占的利用権を有するか)について
【原告会社の主張】
 原告会社は、本件著作物1の1ないし同4の3について、その著作権者である原告A、原告B、原告C及び原告Dから、それぞれ独占的利用権を付与されており、また、本件著作物5ないし同28の2についても、次のとおり、その著作権者である各アーティストから、それぞれ独占的利用権を付与されている。
 すなわち、原告会社の代表者であるγ(以下「γ」という。)は、別紙5独占的利用権の取得日一覧表の各「アーティスト」欄記載のアーティストに対して契約書のひな形(甲41。以下「本件契約書案」という。)を電子メールにより送付し、対応する「包括的な契約成立日」欄記載の日に、本件契約書案に各アーティストが署名した契約書を受領した上(甲42〔枝番号を含む。〕。なお、一部のアーティストについては、契約書を受領していない。)、「ウェブページ掲載開始日」に、対応する「本件著作物」欄各記載の著作物を用いたスマートフォン用ケースを原告会社の運営するウェブサイトに掲載してその販売を開始した(甲43)。
 これにより、原告会社は、別紙5独占的利用権の取得日一覧表の「本件著作物」欄記載の各著作物について、対応する「独占的利用権が発生した日」欄記載の日に、独占的利用権を有するに至った(なお、原告会社が設立されたのは平成24年10月1日であるから、同日より前に独占的利用権を取得したのはγである。γは、原告会社の設立時に、アーティストらの黙示の同意の下に、当時取得していた独占的利用権を原告会社に現物出資して承継させたものである。)。
【被告の主張】
 原告会社の主張は、いずれも否認する。
 原告会社は、本件著作物5ないし同28の2についての独占的利用権に関して、本件契約書案の文面等に基づいて縷々主張しているところ、同文面は、アーティストが「another determinably competitive party」と契約を締結してはならないとし、「明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しない」と翻訳されているが、「exclusive license」(排他的利用許諾)などとは記載されておらず、「明らかに競合する」という定義から外れる相手には許諾可能と解釈できる。また、原告会社は、γが個人で取得した独占的利用権について、原告会社の設立時に、アーティストらの黙示の同意の下に、原告会社に現物出資して承継させたと主張するが、現物出資した旨の原告会社の定款が証拠として提出されているわけでもなく、黙示の同意があったという点についても、書面による契約がなくとも独占的利用権の取得を認めることとなり不当である。
(3) 争点3(被告が被告各商品を製造し、販売した行為は、本件各著作権〔複製権、譲渡権〕又は独占的利用権を侵害する行為に当たるか)
【原告らの主張】
 別紙4販売数量一覧表の「被告商品」欄記載の商品(スマートフォン用ケース)は、それぞれ対応する「本件著作物」欄記載の著作物(同欄記載の番号〔枝番を含む。〕は、別紙2著作物目録の番号〔枝番を含む。〕に対応するものである。)の複製物であるから、被告が同一覧表のとおり被告各商品を製造して販売した行為は、いずれも同一覧表の「アーティスト」欄記載のアーティストが有する著作権(複製権及び譲渡権)を侵害する行為である。
 また、被告は、平成25年7月9日までに、原告会社が本件各著作物について独占的利用権を有することを認識したが(甲44)、その後も被告各商品の製造及び販売を継続したものであるから、被告は、被告各商品を製造して販売する行為により、故意に、原告会社が本件各著作物について有する独占的利用権を侵害したものである。
【被告の主張】
 原告らの主張は、否認し、争う。
 争点2【被告の主張】で述べたとおり、原告会社の独占的利用権は認められないし、仮に、原告会社に独占的利用権が認められたとしても、被告は、βから本件著作物28の1及び同28の2の利用につき許諾を受けているから、少なくともこれらの著作物についての独占的利用権の侵害は認められない。
(4) 争点4(被告は、被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイト上にアップロードしたか、また、同行為が本件各著作権〔公衆送信権〕を侵害する行為に当たるか)について
【原告らの主張】
 被告が別紙4販売数量一覧表の「被告商品」欄記載の商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイトにアップロードした行為は、対応する「アーティスト」欄記載のアーティストの著作権(公衆送信権)を侵害する行為である。
【被告の主張】
 原告らの主張は、否認する。
 被告が本件各著作物のデジタルデータを本件各ウェブサイトにアップロードした事実はあるが、被告は、顧客から注文を受けてからスマートフォン用ケースにデザインを印刷して被告各商品を製造していたから、被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイトにアップロードした事実はない。
(5) 争点5(被告の行為が原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権〔氏名表示権、同一性保持権〕を侵害する行為に当たるか)について
【原告A、原告B、原告C及び原告Dの主張】
 被告は、本件著作物1の1ないし4の3の複製物である被告商品1ないし同4を製造して販売し、また、これらを撮影した写真データを本件各ウェブサイトにアップロードしていたところ、いずれの行為の際にも著作者である原告A、原告B、原告C又は原告Dの氏名又は雅名を表示しなかった。また、本件著作物1の1ないし4の3の一部のみを利用する行為は、著作者の意に沿わない改変に当たる。
 したがって、被告の上記各行為により、原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)がそれぞれ侵害された。
【被告の主張】
 製造、販売及び本件各ウェブサイトへのアップロードに際し、原告A、原告B、原告C及び原告Dの氏名又は雅名を表示しなかったことは認めるが、デザイン自体に大きな変更はない。
(6) 争点6(原告会社は、本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して、差止請求権及び廃棄請求権を代位行使できるか)について
【原告会社の主張】
 前記争点2【原告会社の主張】において述べたとおり、原告会社は、別紙5(独占的利用権の取得日一覧表)の「本件著作物」欄記載の各著作物について、独占的利用権を取得しているところ、原告会社が本件各著作物の著作権者に送付した本件契約書案(甲41)には、「第三者が著作物の権利を侵害した場合には、これに対処します。」との条項があり、これは、原告会社が、別紙5の「アーティスト」欄記載の各アーティストに対して、第三者が本件各著作物の利用をした場合に、その排除を求めることができる債権を有していることを前提とするものである。
 したがって、原告会社は、上記各アーティストに代位して、被告に対し、本件著作物5ないし同28の2に係る著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)の侵害行為の差止め及び侵害の行為を組成した物の廃棄を求めることができるというべきである。
【被告の主張】
 原告会社の主張は、否認し、争う。
 原告会社が本件著作物5ないし同28の2について独占的利用権を取得しているものとは認められない。
(7) 争点7(差止め及び廃棄の必要性が認められるか)について
【原告らの主張】
 被告は、現に被告各商品の製造、譲渡及び譲渡の申出を継続しており、又はそのおそれがあるから、被告による被告各商品の製造及び譲渡、被告各商品を撮影した写真データの送信可能化及び自動公衆送信を差し止める必要があり、また、これを十全ならしめるため、被告各商品の製造に用いる原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データを廃棄させる必要がある。
【被告の主張】
 原告らの主張は、否認し、争う。
 被告は、本件訴状を受領した時点で、直ちに本件各ウェブサイトから本件各著作物のデータを削除し、被告各商品の製造及び販売を停止したから、差止め及び廃棄の必要性はない。
 (8) 争点8(原告らが受けた損害の額)について
【原告らの主張】
ア 原告Aが受けた損害の額(合計75万0600円)
(ア) 逸失利益(600円)
 原告Aが本件著作物1の1及び1の2の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法14条3項)は、適法に許諾した場合の許諾料の2倍である600円を下ることはない。
 被告は、本件著作物1の2の複製物である被告商品1−01429 を1個販売したから、原告Aが受けた逸失利益の損害は、600円×1個=600円である。
(イ) 無形的損害(60万円)
 原告Aは、本件著作物1の1及び同1の2についての著作権又は著作者人格権が侵害されることにより、60万円の無形的損害を受けた。
(ウ) 弁護士費用(15万円)
 15万円が損害として認められるべきである。
イ 原告Bが受けた損害の額(合計196万9200円)
(ア) 逸失利益(1万9200円)
 原告Bが本件著作物2の1ないし同2の6の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、適法に許諾した場合の許諾料の2倍である600円を下ることはない。
 被告は、本件著作物2の1ないし同2の4又は同2の6の複製物である被告商品2−00182、同2−00183、同2−00225、同2−00254 及び同2−01619 を併せて32個販売したから、原告Bが受けた逸失利益の損害は、600円×32個=1万9200円である。
(イ) 無形的損害(180万円)
 原告Bは、本件著作物2の1ないし同2の6についての著作権又は著作者人格権が侵害されることにより、180万円の無形的損害を受けた。
(ウ) 弁護士費用(15万円)
 15万円が損害として認められるべきである。
ウ 原告Cが受けた損害の額(合計197万7000円)
(ア) 逸失利益(2万7000円)
 原告Cが本件著作物3の1ないし同3の6の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、適法に許諾した場合の許諾料の2倍である600円を下ることはない。
 被告は、本件著作物3の2ないし同3の6の複製物である被告商品3−00072、同3−00073、同3−00104、同3−00678 及び同3−00820 を併せて45個販売したから、原告Cが受けた逸失利益の損害は、600円×45個=2万7000円である。
(イ) 無形的損害(180万円)
 原告Cは、本件著作物3の1ないし同3の6についての著作権又は著作者人格権が侵害されることにより、180万円の無形的損害を受けた。
(ウ) 弁護士費用(15万円)
 15万円が損害として認められるべきである。
エ 原告Dが受けた損害の額(合計105万2400円)
(ア) 逸失利益(2400円)
 原告Dが本件著作物4の1ないし同4の3の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、適法に許諾した場合の許諾料の2倍である600円を下ることはない。
 被告は、本件著作物4の1ないし同4の3の複製物である被告商品4−00052、同4−00106 及び同4−00506 を併せて4個販売したから、原告Dが受けた逸失利益の損害は、600円×4個=2400円である。
(イ) 無形的損害(90万円)
 原告Dは、本件著作物4の1ないし同4の3についての著作権又は著作者人格権が侵害されることにより、90万円の無形的損害を受けた。
(ウ) 弁護士費用(15万円)
 15万円が損害として認められるべきである。
オ 原告会社が受けた損害の額(合計113万4108円)
(ア) 逸失利益(83万4108円)
 原告会社は、本件各著作物について独占的利用権を有していたところ、被告は、本件各著作物の複製物である被告各商品を合計426個販売して、原告会社の独占的利用権を侵害した。独占的利用権の侵害による損害の算定については、著作権法114条1項の類推適用が認められるべきところ、被告による侵害行為(被告各商品の譲渡)がなければ、原告会社は、本件各著作物を利用したスマートフォン用ケースを同数販売することができ、その単位数量当たりの利益の額は、1個あたり958円である(3528円〔販売価格〕−1000円〔印刷代〕−300円〔アーティストへのロイヤリティ〕−270円〔梱包作業・資材費〕)。
 したがって、被告による被告各商品の販売により原告会社が受けた損害の額は、1958円×426個=83万4108円である。
(イ) 弁護士費用(30万円)
 30万円が損害として認められるべきである。
【被告の主張】
 被告各商品の販売数量は認めるが、損害の額については争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件各著作物の著作者及び著作権者)について
 次表の「証拠」欄記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次表の「本件各著作物」欄記載の著作物は、対応する「著作者兼著作権者」がその著作者であり、著作権者であると認められる。
本件各著作物 著作者兼著作権者 証拠
1の1,1の2 原告A 甲1の1,1の2
2の1〜2の6 原告B 甲2の1〜2の6
3の1〜3の6 原告C 甲3の1〜3の6
4の1〜4の3 原告D 甲4の1〜4の3
甲5
甲6
7の1〜7の5 甲7の1〜7の5
甲8
9の1〜9の3 甲9の1〜9の3
10 甲10
11 甲11
12の1,12の2 甲12の1,12の2
13 甲13
14の1,14の2 甲14の1,14の2
15 甲15
16 甲16
17 甲17の1,17の2
18 R1ら 甲18
19 甲19
20 甲20
21の1,21の2 甲21の1,21の2
22の1,22の1 甲22の1,22の2
23の1〜23の5 甲23の1〜23の5
24の1,24の2 甲24の1,24の2
25の1〜25の8 甲25の1〜25の8
26 甲26
27 α 甲27
28の1,28の2 β 甲28の1,28の2
 弁論の全趣旨によれば、上記「著作者兼著作権者」欄に記載の者は、いずれも、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の締結国に常居所を有しているものと認められるから、本件各著作物は、いずれも、我が国の著作権法による保護を受ける(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約3条2項、著作権法6条3号)。
 なお、原告A、原告B及び原告Cは、我が国に常居所を有していないところ、被告による行為が同原告らに対する著作権及び著作者人格権侵害の不法行為を構成するとして、不法行為による損害賠償請求権、差止請求権及び廃棄請求権を行使するとしている。これらの請求権の有無の判断は、同原告らが主張するところの不法行為の主要な部分である、被告による被告各商品の製造、譲渡等が行われた我が国の法を準拠法とするのが相当である(法の適用に関する通則法17条)。
 また、上記「著作者兼著作権者」欄に記載の者(アーティスト)は、原告Dを除き、我が国には常居所を有していないが、次項で問題となる原告会社の本件各著作物についての独占的利用権の有無の判断は、我が国における著作物の利用に関する契約の成否及び内容に係るものであることに鑑みると、上記アーティストとγ又は原告会社との間で著作物の利用に関する契約が締結されたとうかがわれる外形的な事実関係が認められるときは、我が国の法を準拠法とする旨の黙示の合意(法の適用に関する通則法7条にいう当事者による準拠法の選択)が認められるものと解して、検討するのが相当というべきである。
2 争点2(原告会社は、本件各著作物について、独占的利用権を有するか)について
(1) 本件著作物5について
 証拠(甲42の5、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物5の著作権者であるEは、平成24年8月23日、γとの間で、「1.制作物の一部または全体を無断で変更しません。変更する場合は権利者と協議の上、変更いたします。但し販促に必要な範囲において見出しの付加、素材編集は行えるものとします。」「2.権利者に許諾を得た範囲内での販売利用を致します。使用条件以外の利用・複製は、使用料金を含め改めて制作者に使用許諾を得ます。」「3.許諾に基づく商品等の販売時期・価格・広告宣伝方法、その他販売方法については弊社が決定出来るものとします。但し、これらの決定にあたり、権利者のイメージを損なうことのないよう配慮します。」「6.第三者が著作物の権利を侵害した場合には、これに対処します。」「8.権利者は契約期間中に日本国内において、本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しないものとします。」との規定(以下、上記5規定を「本件各規定」という。)に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。300yen (JPY) per smart phone case product.」との規定のある「著作権利用規約及び契約」と題する書面を取り交わし、γは、同年9月27日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物5の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Eにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースをγが製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、γは、本件著作物5について現に利用を開始したと認められるから、γは、平成24年9月27日、本件著作物5について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(2) 本件著作物6について
 証拠(甲42の6、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物6の著作権者であるFは、平成24年11月24日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Our company will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物6の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Fにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物6について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成24年11月24日、本件著作物6について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(3) 本件著作物7の1ないし同7の5について
 証拠(甲42の7の1、42の7の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物7の1ないし同7の5の著作権者であるGは、平成24年9月11日、γとの間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。300yen (JPY) per smart phone case product.」との規定のある「著作権利用規約及び契約」と題する書面を取り交わし、γ又は原告会社は、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物7の1ないし同7の5の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物7の1及び同7の2の複製物は平成25年2月2日、同7の3の複製物は平成24年9月29日、同7の4及び同7の5の複製物は平成25年9月14日である。)事実が認められる。
 上記書面は、Gにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースをγが製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、γ又は原告会社は、本件著作物7の1ないし同7の5について現に利用を開始したと認められるから、γ又は原告会社は、本件著作物7の1ないし同7の5について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物7の1及び同7の2について平成25年2月2日、同7の3について平成24年9月29日、同7の4及び同7の5について平成25年9月14日である。)と認めるのが相当である。
(4) 本件著作物8について
 証拠(甲41、42の8、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物8の著作権者であるHは、原告会社から本件各規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面の提示を受け、平成25年1月19日までに、同書面に記載された条項を承諾する旨を表示した事実が認められ、原告会社が、同月20日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物8の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Hにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物8について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成25年1月20日、本件著作物8について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(5) 本件著作物9の1ないし同9の3について
 証拠(甲41、42の9の1、42の9の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物9の1ないし同9の3の著作権者であるIは、平成25年11月18日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Smart Phones Case: 300 Yen for every product sold. Throw Pillows: 200 Yen for every products sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月22日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物9の1ないし同9の3の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Iにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物9の1ないし同9の3について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成25年11月22日、本件著作物9の1ないし同9の3について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(6) 本件著作物10について
 証拠(甲42の10の1、42の10の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物10の著作権者であるJは、平成26年1月20日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Smart Phones Case: 300 Yen for every product sold. Throw Pillows: 200 Yen for every products sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月19日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物10の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Jにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物10について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成26年1月20日に、本件著作物10について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(7) 本件著作物13について
 証拠(甲42の13、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物13の著作権者であるMは、平成25年4月24日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Our company will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月25日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物13の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Mにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物13について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成25年4月25日、本件著作物13について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(8) 本件著作物14の1及び同14の2について
 証拠(甲41、42の14、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物14の1及び同14の2の著作権者であるNは、平成25年1月18日、原告会社との間で、本件各規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月19日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物14の1及び同14の2の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Nにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物14の1及び同14の2について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成25年1月19日、本件著作物14の1及び同14の2について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(9) 本件著作物18について
 証拠(甲42の18の1、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物18の著作権者であるR1らは、平成24年11月24日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Our company will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、その頃、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物18の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、R1らにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物18について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成24年11月24日、本件著作物18について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(10) 本件著作物19について
 証拠(甲42の19の1、42の19の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物19の著作権者であるSは、平成26年1月11日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Smart Phones Case: 300 Yen for every product sold. Throw Pillows: 300 Yen for every products sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月14日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物19の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Sにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物19について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成26年1月14日、本件著作物19について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(11) 本件著作物20について
 証拠(甲41、42の20の1、42の20の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物20の著作権者であるTは、平成25年1月11日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。We will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月23日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物20の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Tにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物20について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成25年1月11日、本件著作物20について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(12) 本件著作物22の1、同22の2について
 証拠(甲42の22の1、42の22の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物22の1及び同22の2の著作権者であるVは、平成25年1月23日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Our company will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物22の1及び同22の2の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物22の1の複製物は平成25年8月8日、同22の2の複製物は平成26年11月12日である。)事実が認められる。
 上記書面は、Vにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物22の1及び同22の2について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、本件著作物22の1及び同22の2について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物22の1について平成25年8月8日、同22の2について平成26年11月12日である。)と認めるのが相当である。
(13) 本件著作物23の1ないし同23の5について
 証拠(甲41、42の23、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物23の1ないし同23の5の著作権者であるWは、平成24年11月1日、原告会社との間で、本件各規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物23の1ないし同23の5の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物23の1及び同23の5の複製物は平成25年7月4日、同23の2の複製物は平成24年11月2日、同23の3及び同23の4の複製物は平成24年10月15日である。)事実が認められる。
 上記書面は、Wにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物23の1ないし23の5について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、本件著作物23の1ないし同23の5について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物23の1及び同23の5について平成25年7月4日、同23の2について平成24年11月2日、同23の3及び同23の4について平成24年10月15日である。)と認めるのが相当である。
(14) 本件著作物24の1及び同24の2について
 証拠(甲41、42の24の1、42の24の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物24の1及び同24の2の著作権者であるXは、原告会社から本件各規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面の提示を受け、平成25年1月18日までに、同書面に記載された条項を承諾する旨を表示した事実が認められ、原告会社が、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物24の1及び同24の2の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物24の1の複製物は平成25年1月26日、同24の2の複製物は同年6月16日である。)事実が認められる。
 上記書面は、Xにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物24の1及び同24の2について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、本件著作物24の1及び同24の2について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物24の1について平成25年1月26日、同24の2について同年6月16日である。)と認めるのが相当である。
(15) 本件著作物25の1ないし同25の8について
 証拠(甲42の25の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物25の1ないし同25の8の著作権者であるYは、平成24年9月3日、γとの間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。300yen (JPY) per smart phone case product.」との規定のある「著作権利用規約及び契約」と題する書面を取り交わし、γ又は原告会社は、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物25の1ないし同25の8の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物25の1、同25の2及び同25の7の複製物は平成24年12月16日、同25の3及び同25の6の複製物は同年9月30日、同25の4及び同25の5の複製物は平成25年2月19日、同25の8の複製物は同年11月29日である。)事実が認められる。
 上記書面は、Yにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースをγが製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、γ又は原告会社は、本件著作物25の1ないし同25の8について現に利用を開始したと認められるから、γ又は原告会社は、本件著作物25の1ないし同25の8について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物25の1、同25の2及び同25の7について平成24年12月16日、同25の3及び同25の6について同年9月30日、同25の4及び同25の5について平成25年2月19日、同25の8について同年11月29日である。)と認めるのが相当である。
(16) 本件著作物26について
 証拠(甲42の26の1、42の26の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物26の著作権者であるZは、平成26年2月20日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。Our company will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同年3月8日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物26の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、Zにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物26について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成26年3月8日、本件著作物26について、独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(17) 本件著作物27について
 証拠(甲42の27の1、42の27の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物27の著作権者であるαは、平成24年11月1日、原告会社との間で、本件各規定に加えて「著作物の利用許諾の対価として以下の支払いを行う。We will pay 300 Yen for every product sold.」との規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面を取り交わし、原告会社は、同月2日、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物27の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した事実が認められる。
 上記書面は、αにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物27について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、平成24年11月2日、本件著作物27について独占的利用権を取得したと認めるのが相当である。
(18) 本件著作物28の1及び同28の2について
 証拠(甲41、42の28の1、42の28の2、43)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物28の1及び同28の2の著作権者であるβは、原告会社から本件各規定のある「著作権利用規約及び合意書」と題する書面の提示を受け、平成24年11月24日までに、同書面に記載された条項を承諾する旨を表示した事実が認められ、原告会社が、自身が運営するウェブサイトにおいて、本件著作物28の1及び同28の2の複製物であるスマートフォン用ケースの販売を開始した(販売を開始した日は、本件著作物28の1の複製物は平成24年12月27日、同28の2の複製物は同月2日である。)事実が認められる。
 上記書面は、βにおいて、自己の著作物を複製したスマートフォン用ケースを原告会社が製造し、日本国内において販売し、また広告や宣伝などスマートフォン用ケースを販売する際に通常想定される範囲内において同著作物を利用することを許諾した上、これと同一の利用態様については、日本国内において他の者には重ねて許諾しない旨を約するものと評価でき、同合意に基づき、原告会社は、本件著作物28の1及び同28の2について現に利用を開始したと認められるから、原告会社は、本件著作物28の1及び同28の2について、独占的利用権を取得した(取得した日は、本件著作物28の1について平成24年12月27日、同28の2について同月2日である。)と認めるのが相当である。
(19) 本件著作物11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2について
 原告会社は、上記各著作物について原告会社が独占的利用権を有すると主張するが、原告会社と上記各著作物の著作権者との間で独占的利用許諾契約が締結されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。なお、甲第42の15及び甲第42の17は、被告による侵害行為が判明した後に作成されたメールであり、当該侵害行為以前に原告会社が独占的利用権を取得したことを認めるには足りない。
(20) 本件著作物1の1ないし同4の3について
 原告会社は、本件著作物1の1ないし同4の3について独占的利用権を有すると主張するが、被告が争っているにもかかわらず、何らの立証もしないから(原告らは、「甲第42号証の1〜4及び11は欠番とする。」〔平成28年1月12日付け第1準備書面2頁〕と述べて、上記書証の申出を取りやめたが、その後、本件口頭弁論の終結に至るまで、本件著作物1の1ないし同4の3について原告会社が独占的利用権を付与されたことを裏付ける証拠を何ら提出しなかった。)、同主張は採用することができない。
(21) γから原告会社への独占的利用権の移転について
 上記(1)、(3)及び(15)で述べたとおり、E、G及びYから同人らの著作物について本件各規定等のある書面を取り交わしたのはγであるが、証拠(甲47、48)によれば、γは、平成24年10月1日に原告会社を設立し、原告会社を設立した後は、著作物を利用したスマートフォン用ケースを販売した場合のアーティストへの支払は原告会社から行っていること、これらについてE、G又はYから異議が述べられたことはないことが認められ、これらの事実によれば、平成24年10月1日以前にγが取得した独占的利用権は、同日頃、γから原告会社に承継され、同承継について、E、G及びYは、いずれも黙示にこれを承諾したものと推認され、同推認を覆すに足りる事情はうかがわれない。
(22) 被告の主張について
 被告は、原告会社が著作権者と取り交わした書面が「本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しない」と記載するにとどまり、「exclusive license」(排他的利用許諾)などと記載されていないなどとして、独占的利用権の成立を争っているが、著作権者は、利用態様を限定して独占的利用許諾を行うこともできるところ、「契約期間中に日本国内において、本許諾と明らかに競合すると認められる態様で第三者に許諾しない」という条項には、当該許諾契約により限定された利用態様と同一の利用態様により、日本国内において他の者には重ねて許諾しない趣旨を読み込むことができるから、同条項を有する書面により成立した契約関係を、独占的許諾契約と認定することに差支えはないというべきである。
 被告は、独占的利用権がγから原告会社に承継された点に関して、現物出資した旨の定款がないとか、アーティストの黙示の同意があったとすることは書面による契約なく独占的利用権の取得を認めることとなり不当であるなどと主張するが、γから原告会社への独占的利用権の承継が推認されることは上記(21)に述べたとおりであるし、独占的利用許諾契約の成立に、必ず書面による意思表示の合致を必要とするものではないから、被告の上記主張はいずれも採用することができない。
3 争点3(被告が被告各商品を製造し、販売した行為は、本件各作物についての著作権〔複製権、譲渡権〕又は独占的利用権を侵害する行為に当たるか)について
(1) 著作権(複製権、譲渡権)の侵害について
 前記第2、2(3)のとおり、被告は、平成25年6月1日から平成27年9月30日までの間に、別紙4販売数量一覧表に記載した数量(各月の数量は、その月の初日から末日までの合計〔ただし、「平成25年6〜8月」については3か月分の合計〕である。)の被告各商品を製造し、販売したこと(「合計」欄の数値が「0」のものを除く。)、同一覧表中「被告商品」欄記載のスマートフォン用ケースが対応する「本件著作物」欄記載の著作物の複製品であることは、いずれも当事者間に争いがない。
 したがって、被告が同一覧表中「被告商品」欄記載のスマートフォン用ケースを製造し、販売した行為は、それぞれ対応する「アーティスト」欄記載のアーティストが有する「本件著作物」欄記載の著作物の著作権(複製権及び譲渡権)を侵害する行為であることは明らかである。
 なお、原告らは、被告が実店舗においても被告各商品を販売した旨を主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
(2) 独占的利用権の侵害について
 原告会社が、本件著作物5ないし同28の2(ただし、同11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2を除く。)について独占的利用権を有していたことは前記2で認定したとおりである。
 証拠(甲44の1ないし45の2)によれば、原告会社は、平成25年7月8日、被告に対し、本件各著作物の複製物である被告各商品の製造及び譲渡について、本件各著作物の著作権者が被告に許諾した事実はないとして、被告各商品の販売等の停止を求め、さらに、同月9日には、一部のアーティストとの間で取り交わした「著作権利用規約及び合意書」の写しを添付して、原告会社が一部の著作物について独占的利用権を有すること、また、他の著作物についても現在アーティストに確認中であることなどを伝えた。
 そうすると、被告は、平成25年7月9日以降、原告会社から具体的に独占的利用権を有すると指摘された著作物についての独占的利用権については故意にこれを侵害したものと認められるし、原告会社が同日時点で具体的に独占的利用権を有する旨を指摘しなかった著作物についても、他の著作物についても権利関係を確認中である旨を原告会社が指摘していることからすれば、少なくとも重大な過失により、原告会社が有する独占的利用権を侵害したものといわざるを得ない。他方で、被告が、平成25年7月9日より前に、原告会社が独占的利用権を有していることを認識し又は認識し得たことを認めるに足りる証拠はないから、同日より前の被告の行為については、原告会社に対する独占的利用権の侵害による不法行為は成立しない。
(3) 被告の主張について
 被告は、本件著作物28の1及び同28の2の著作権者であるβから利用につき許諾を受けているから、少なくともこれらの著作物については独占的利用権の侵害は認められないと主張するが、証拠(甲42の28の2)によれば、かえって、βは被告には著作物の利用について許諾していないことが認められるから、被告の主張を採用することはできない。
4 争点4(被告は、被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイト上にアップロードしたか、また、同行為が本件各著作権〔公衆送信権〕を侵害する行為に当たるか)について
 証拠(甲29の1ないし38の3)によれば、被告は、平成26年から平成27年頃、本件各著作物をスマートフォン用ケースに印刷したもの(被告各商品)の画像データ(別紙1被告商品目録掲載の画像データ)を作成した上、本件各ウェブサイトにアップロードした事実が認められる。
 被告は、この点について、被告は顧客から注文を受けた後にスマートフォン用ケースにデザインを印刷して被告各商品を製造していたから、「被告各商品を撮影した写真データ」を本件各ウェブサイトにアップロードした事実はないと主張する。確かに、本件各ウェブサイトには、「最新UV印刷機で立体印刷が可能となりました。」「オリジナルのアイフォンケースを1個からお作りします。」「世界のアートデザインを数千種類の中からお選びいただけます。」(甲29の1)などの記載があって、被告各商品は、いわゆる受注生産方式で製造されていることが推認できるが、被告の主張によっても、被告は、本件各著作物を加工して、別紙1被告商品目録掲載の画像データを作成し、これを当該商品の写真として示した上、注文を受ければ直ちにこれを製造して販売するものとして本件各ウェブサイトにアップロードしているのであるから、同画像データは、「被告各商品を撮影した写真データ」に該当するものというべきである。
 以上によれば、被告が本件各著作物の複製物である「被告各商品を撮影した写真データ」を本件各ウェブサイトにアップロードした行為は、本件各著作物の著作権者が有する著作権(公衆送信権)を侵害する行為に当たるというべきである。
5 争点5(被告の行為が原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権〔氏名表示権、同一性保持権〕を侵害する行為に当たるか)について
 前記第2、2(3)及び第3、4のとおり、被告は、本件各著作物をスマートフォン用ケースに印刷したもの(被告各商品)の画像データ(別紙1被告商品目録掲載のの画像データ)を作成した上、本件各ウェブサイトにアップロードして被告各商品の販売の申出をし、別紙4販売数量一覧表のとおり、被告各商品を製造して販売した事実が認められ、さらに、証拠(甲29の1ないし38の3)によれば、被告は、上記アップロード並びに被告各商品の製造及び販売に際し、本件各著作物の著作者の氏名又は雅名を表示しなかった事実が認められる。
 したがって、被告による上記行為は、原告A、原告B、原告C及び原告Dの氏名表示権を侵害する行為というべきである。
 他方で、証拠(甲1の1ないし4の3)によれば、原告Aは本件著作物1の1及 び同1の2を、原告Bは本件著作物2の1ないし同2の6を、原告Cは本件著作物3の1ないし同3の6を、原告Dは本件著作物4の1ないし同4の3を、いずれもインターネット上のウェブサイトである「Socirty6」に掲載し、「Society6」の運営者において、これらの著作物をに印刷して販売することを認めていたものと認められるから、被告がこれらの著作物を利用してスマートフォン用ケースの画像データを作成したこと、またスマートフォン用ケースを製造して販売したことが、著作者の意に反する切除その他の改変に当たるものとは認められず、同一性保持権が侵害されたものとは認め難い。
6 争点6(原告会社は、本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して、差止請求権及び廃棄請求権を代位行使できるか)について
 前記2において認定したとおり、原告会社は、本件著作物5ないし同28の2(ただし、同11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2を除く。)について独占的利用権を有していたものと認められるが、その余の本件各著作物について独占的利用権を有していたとは認められない。
 しかるところ、原告会社は、原告会社が本件各著作物の著作権者に送付した本件契約書案(甲41)には、「第三者が著作物の権利を侵害した場合には、これに対処します。」との条項があって、同条項は、原告会社が、著作権者に対して、第三者が著作物の利用をした場合にはその排除を求めることができる旨の債権を有していることを前提とするものといえるから、原告会社は、著作権者に代位して、著作権の侵害行為の差止め及び廃棄を求めることができると主張する。
 確かに、本件契約書案には、原告会社が主張するとおり、「第三者が著作物の権利を侵害した場合には、これに対処します。」との記載があるが、著作権者が原告会社に対して差止請求権及び廃棄請求権を行使すべき義務を負担する旨の条項はなく、本件著作物5ないし同28の2(同11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2を除く。)の各著作権者が、原告に対して、第三者が侵害行為を行った場合に、当該著作権者において差止請求権や廃棄請求権を行使すべき義務を負担しているものとは認められない。他に、原告会社が、上記各著作権者に対して何らかの債権を有していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると、債権者代位権(民法423条)の法意を用いて、各著作権者が有する差止請求権及び廃棄請求権を原告会社が代位行使することができるものと認めることは困難である。
 なお、前記のとおり、本件契約書案には、「第三者が著作物の権利を侵害した場合には、これに対処します。」との記載があり、著作権者が、著作権に基づく差止請求権及び廃棄請求権を原告会社に行使させることを容認する趣旨を読み取る余地もあるが、仮にそのような合意の成立が認められるとしても、非弁護士の法律事務の取扱い等を禁止する弁護士法72条や、訴訟信託を禁止する信託法10条、著作権等管理事業者に種々の義務を負わせた著作権等管理事業法等の趣旨からして、かかる合意に基づく請求を認めることはできないというべきである。
 以上によれば、原告会社による差止請求及び廃棄請求には、全て理由がない。
7 争点7(差止め及び廃棄の必要性が認められるか)について
 前記6のとおり、原告会社による差止請求及び廃棄請求にはいずれも理由がないが、前記3(1)、4及び5で認定説示したとおり、原告Aは本件著作物1の1及び同1の2の、原告Bは本件著作物2の1ないし同2の6の、原告Cは本件著作物3の1ないし同3の6の、原告Dは本件著作物4の1ないし同4の3の各著作者兼著作権者であり、同人らの著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたものと認められる。そして、既に認定したとおり、被告は、本件各ウェブサイト等において、顧客からの注文を受けたら直ちにデザインを印刷したスマートフォン用ケースを製造して販売する旨を告知していることに加え、被告が本件各ウェブサイトにアップデートした本件各著作物の画像データを破棄したことを認めるに足りる証拠もないことからすると、現段階においても、なお、被告が被告各商品を製造、譲渡し、また、被告各商品のデータを送信可能化するおそれが認められる。
 したがって、被告による被告商品1ないし同4の製造及び譲渡並びに同商品を撮影した写真データの送信可能化(自動公衆送信を含む。)を差し止めるとともに、侵害の予防のために必要な措置として、同商品の製造に用いる原版データ、製造済みの商品及び商品を撮影した写真データを破棄させる必要があるものと認められる。
8 争点8(原告らが受けた損害の額)について
(1) 原告Aについて
ア 逸失利益
 被告が、平成25年6月から平成26年8月までの間に、別紙4に示されるとおり、本件著作物1の2の複製物であるスマートフォン用ケースを1個販売したこと(なお、同年9月の販売はない。)は、当事者間に争いがない。
 そこで、本件著作物1の2の著作権者である原告Aがその著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)について検討するに、証拠(甲41、42〔枝番号を含む。〕)によれば、原告会社は、インターネット上のウェブサイト「Society6」でデザインを公開しているアーティストに対して、スマートフォン用ケース1個あたり300円を支払う旨の契約を提示し、現に多くのアーティストとの間で契約の締結に至っていること、他方で、被告は、「Society6」に掲載されたデザインを著作権者の許諾を得ることなく本件各ウェブサイトにアップロードしてスマートフォン用ケースの販売の申出をするなどしており、著作権者からの申出を受けて初めてライセンス交渉をするなどの態度を示していたことなどが認められるところ、原告Aを含む美術の著作物の著作権者は、そのような者とは直ちには交渉に応じないものと推認されることも考慮すると、著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、スマートフォン用ケース1個の販売につき、500円と認めるのが相当である(なお、仮に、原告Aが原告会社の主張するとおり独占的利用権を付与しているとすれば、原告Aが原告会社以外から著作権の行使につき金銭を受けることを想定すべきでないから、原告会社の主張に係るアーティストへのロイヤリティ相当額300円とするのが相当であるとも考えられるが、原告会社に対する独占的利用権の付与の事実が認められないことは、既に説示したとおりであり、上記のとおり認定することは、妨げられない。)。
 したがって、原告Aが受けた逸失利益の損害は、500円と認められる。
イ 慰謝料
 被告の行為により原告Aの氏名表示権が侵害されたことは上記5のとおりであるが、スマートフォン用ケースに著作権者の氏名又は雅名を表示することが必ずしも一般的とは認め難いこと、被告による被告各商品の販売数量から推察される本件各ウェブサイトの閲覧者数の程度等を斟酌すると、被告の行為により原告Aが受けた精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額としては、1万円をもって相当と認める。
 原告Aは、著作者人格権の侵害のみならず著作権の侵害によっても無形的損害を受けたと主張するが、同損害が発生したと認めるに足りる的確な証拠はないから、同主張を採用することはできない。
ウ 弁護士費用
 被告は、原告会社による事前の交渉に容易に応じることがなく、原告Aが、我が国の弁護士に委任して訴訟提起を余儀なくされたことや、本件の手続経緯等を考慮し、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として、3万円を認めるのが相当である。
エ 合計
 以上によれば、被告の行為により原告Aが受けた損害として、損害賠償金合計4万0500円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月6日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を認めることができる。
(2) 原告Bについて
ア 逸失利益
 被告が、平成25年6月から平成26年8月までの間に、別紙4に示されるとおり、本件著作物2の1ないし同2の4及び同6の複製物であるスマートフォン用ケースを合計32個販売したこと(なお、同年9月の販売はない。)は、当事者間に争いがない。
 そして、本件著作物2の1ないし同2の4及び同6の著作権者である原告Bがその著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、前記(1)アと同様の理由により、スマートフォン用ケース1個の販売につき、500円と認めるのが相当である。
 したがって、原告Bが受けた逸失利益の損害は、1万6000円と認められる。
イ 慰謝料
 被告の行為により原告Bの氏名表示権が侵害されたことは上記5のとおりであるが、スマートフォン用ケースに著作権者の氏名又は雅名を表示することが必ずしも一般的とは認め難いこと、被告による被告各商品の販売数量から推察される本件各ウェブサイトの閲覧者数の程度等を斟酌すると、被告の行為により原告Bが受けた精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額としては、5万円をもって相当と認める。
 原告Bは、著作者人格権の侵害のみならず著作権の侵害によっても無形的損害を受けたと主張するが、同損害が発生したと認めるに足りる的確な証拠はないから、同主張を採用することはできない。
ウ 弁護士費用
 被告は、原告会社による事前の交渉に容易に応じることがなく、原告Bが、我が国の弁護士に委任して訴訟提起を余儀なくされたことや、本件の手続経緯等を考慮し、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として、3万円を認めるのが相当である。
エ 合計
 以上によれば、被告の行為により原告Bが受けた損害として、損害賠償金合計9万6000円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月6日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を認めることができる。
(3) 原告Cについて
ア 逸失利益
 被告が、平成25年6月から平成26年8月までの間に、別紙4に示されるとおり、本件著作物3の2ないし同3の6の複製物であるスマートフォン用ケースを合計45個販売したこと(なお、同年9月の販売はない。)は、当事者間に争いがない。
 そして、本件著作物3の2ないし同3の6の著作権者である原告Cがその著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、前記(1)アと同様の理由により、スマートフォン用ケース1個の販売につき、500円と認めるのが相当である。
 したがって、原告Cが受けた逸失利益の損害は、2万2500円と認められる。
イ 慰謝料
 被告の行為により原告Cの氏名表示権が侵害されたことは上記5のとおりであるが、スマートフォン用ケースに著作権者の氏名又は雅名を表示することが必ずしも一般的とは認め難いこと、被告による被告各商品の販売数量から推察される本件各ウェブサイトの閲覧者数の程度等を斟酌すると、被告の行為により原告Bが受けた精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額としては、7万円をもって相当と認める。
 原告Cは、著作者人格権の侵害のみならず著作権の侵害によっても無形的損害を受けたと主張するが、同損害が発生したと認めるに足りる的確な証拠はないから、同主張を採用することはできない。
ウ 弁護士費用
 被告は、原告会社による事前の交渉に容易に応じることがなく、原告Cが、我が国の弁護士に委任して訴訟提起を余儀なくされたことや、本件の手続経緯等を考慮し、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として、3万円を認めるのが相当である。
エ 合計
 以上によれば、被告の行為により原告Cが受けた損害として、損害賠償金合計12万2500円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月6日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を認めることができる。
(4) 原告Dについて
ア 逸失利益
 被告が、平成25年6月から平成26年8月までの間に、別紙4に示されるとおり、本件著作物4の1ないし同4の3の複製物であるスマートフォン用ケースを合計4個販売したこと(なお、同年9月の販売はない。)は、当事者間に争いがない。
 そして、本件著作物4の1ないし同4の3の著作権者である原告Dがその著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、前記(1)アと同様の理由により、スマートフォン用ケース1個の販売につき、500円と認めるのが相当である。
 したがって、原告Cが受けた逸失利益の損害は、2000円と認められる。
イ 慰謝料
 被告の行為により原告Dの氏名表示権が侵害されたことは上記5のとおりであるが、スマートフォン用ケースに著作権者の氏名又は雅名を表示することが必ずしも一般的とは認め難いこと、被告による被告各商品の販売数量から推察される本件各ウェブサイトの閲覧者数の程度等を斟酌すると、被告の行為により原告Dが受けた精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額としては、1万円をもって相当と認める。
 原告Dは、著作者人格権の侵害のみならず著作権の侵害によっても無形的損害を受けたと主張するが、同損害が発生したと認めるに足りる的確な証拠はないから、同主張を採用することはできない。
ウ 弁護士費用
 被告は、原告会社による事前の交渉に容易に応じることがなく、原告Dが、弁護士に委任して訴訟提起を余儀なくされたことや、本件の手続経緯等を考慮し、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として、3万円を認めるのが相当である。
エ 合計
 以上によれば、被告の行為により原告Dが受けた損害として、損害賠償金合計4万2000円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月6日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を認めることができる。
(5) 原告会社について
ア 逸失利益
(ア) 著作権法114条1項の類推適用の可否について
 前記2において認定したとおり、原告会社は、本件著作物5ないし同28の2(ただし、同11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2を除く。)について独占的利用権を有していたものと認められ、日本国内において、事実上、これらの著作物の複製物を譲渡することによる利益を独占的に享受しうる地位にあり、その限りで、著作物を複製する権利を専有する著作権者と同等の立場にあること、また、原告会社は、現実に、上記著作物を利用したスマートフォン用ケースを販売していたことに照らせば、原告会社の受けた損害の額の算定に際して、著作権法114条1項を類推適用することができるものと解するのが相当である。
(イ) 譲渡数量及び販売能力
 被告が平成25年6月から平成26年9月までの間に販売した被告各商品の数量が別紙4販売数量一覧表のとおりであることに当事者間に争いはない。もっとも、前記3(2)のとおり、同日平成25年7月9日より前の被告の行為については、原告会社に対する独占的利用権の侵害は成立しないほか、前記2(5)のとおり、原告会社が本件著作物9の1ないし同9の3について独占的利用権を取得した日は平成25年11月22日と認められること、前記2(6)のとおり、原告会社が本件著作物10について独占的利用権を取得した日は平成26年1月20日と認められることなどからすれば、独占的利用権の侵害を構成する被告各商品の譲渡数量は、別紙4販売数量一覧表のうち、赤字で数字を記載した数量であり、その合計は228個と認められる (ただし、上記228個のうち平成26年9月に販売された3個については、具体的な譲渡日が明らかでないことから、これらの販売による損害賠償金に係る遅延損害金の起算日は、同月6日〔本件訴状送達の日の翌日〕とすることはできず、不法行為後であることが明らかな同月30日とするほかはない。)。
 なお、証拠(甲43)及び弁論の全趣旨によれば、原告会社は、平成25年7月9日から平成27年9月までの間に、同数量のスマートフォン用ケースを販売する能力を有していたものと認められる。
(ウ) 単位数量当たりの利益の額
 証拠(甲41ないし43、54の1ないし56の2)によれば、原告会社は、本件各著作物を利用したスマートフォン用ケースを販売しており、同スマートフォン用ケース1個を販売した際の原告の利益の額は、販売価格(3528円)から印刷代(1000円)、ライセンス料(300円)及び梱包費用(270円)を控除した1958円と認められる。
(エ) 販売することができないとする事情
 被告は、原告会社が、平成25年7月9日から平成27年9月までの間に、同数量のスマートフォン用ケースを販売することができないとする事情について、何らの主張立証をしない。
(オ) 小括
 以上により、原告会社が受けた損害の額としては、譲渡数量228個に単位数量当たりの利益の額1958円を乗じた44万6424円と認められる(うち平成27年8月までの譲渡数量225個に係る44万0550円についての遅延損害金の起算日は、原告会社の請求どおり同年9月6日であるが、うち同月の譲渡数量3個に係る5874円についての遅延損害金の起算日は、同月30日となる。)。
イ 弁護士費用
 被告は、原告会社による事前の交渉に容易に応じることがなく、原告会社が、弁護士に委任して訴訟提起を余儀なくされたことや、本件の手続経緯等を考慮し、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として、15万円(上記ア(オ)で説示したところに従って按分し、うち14万8026円についての遅延損害金の起算日は、原告会社の請求どおり同年9月6日とし、うち1974円についての遅延損害金の起算日は、同月30日とするのが相当である。)を認めるのが相当である。
ウ 合計
 以上によれば、被告の行為により原告会社が受けた損害として、損害賠償金合計59万6424円及びうち55万8576円に対する不法行為後の日である平成27年9月6日から、うち7848円に対する不法行為後であることが明らかな同月30日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を認めることができる。
9 結論
 以上によれば、原告らの各請求は、主文第1項ないし第5項の限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却すべきである。
 よって、主文のとおり判決する(原版データ、製造済み商品及び商品を撮影した写真データの廃棄を命ずる部分については、仮執行宣言を付すことは相当ではないので、これを付さない。)。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 嶋末和秀
 裁判官 鈴木千帆
 裁判官 天野研司


(別紙1)著作物目録<省略>
(別紙2)被告商品目録<省略>
(別紙3)ウェブサイト目録
1 LUXE case factory(PC用)
  http:<以下略>
2 LUXE case factory(スマートフォン用)
  http:<以下略>
3 STORES.jp
  https:<以下略>
4 LUXE case factory
  http:<以下略>
5 楽天
  http:<以下略>
6 ヤフオク
  http:<以下略>
7 DeNAショッピング
  http:<以下略>
8 DeNA BtoB market
  http:<以下略>
9 auショッピングモール
  http:<以下略>
10 amazon.co.jp
  http:<以下略>
 以上
(別紙4)販売数量一覧表<省略>
(別紙5)独占的利用権の取得日一覧表<省略>
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