判例全文 | ||
【事件名】輸入代理店vs直輸入店 取扱説明書事件 【年月日】平成28年7月27日 東京地裁 平成27年(ワ)第13258号 著作権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結日 平成28年5月23日) 判決 原告 有限会社FUNAZAWA 同訴訟代理人弁護士 上野潤 被告 株式会社ロイヤル 同訴訟代理人弁護士 小島秀樹 同 菊池毅 同 雨宮弘和 同 平征三朗 主文 1 被告は、別紙被告挿絵目録記載(4)ないし(6)の挿絵の記載を含む説明書を複製し又は譲渡してはならない。 2 被告は、被告の占有に係る前項の説明書のうち、別紙被告挿絵目録記載(4)ないし(6)の挿絵の記載部分を廃棄し又は抹消せよ。 3 被告は、別紙被告挿絵目録記載(4)ないし(6)の挿絵の電磁的記録を、同記録が入力されている被告の占有に係るハードディスクその他の記録媒体から消去せよ。 4 被告は、原告に対し、13万円及びこれに対する平成27年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 7 この判決は、第1項及び第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告説明文目録記載の文章及び被告挿絵目録記載の挿絵が記載された説明書を複製し又は譲渡してはならない。 2 被告は、被告の占有に係る前項の説明書を廃棄せよ。 3 被告は、別紙被告説明文目録記載の文章の電磁的記録を、同記録が入力されている被告の占有に係るハードディスクその他の記録媒体から消去せよ。 4 被告は、別紙被告挿絵目録記載の挿絵の電磁的記録を、同記録が入力されている被告の占有に係るハードディスクその他の記録媒体から消去せよ。 5 被告は、原告に対し、127万円及びこれに対する平成27年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件は、「スイマーバ」という商品名の乳幼児用浮き輪(以下「本件商品」という。)の日本における総代理店である原告が、自らが日本国内において本件商品を販売する際に同封している説明書(以下「原告説明書」という。)中の別紙原告説明文目録記載(1)ないし(11)の説明文(以下、それぞれ「原告説明文1」ないし「原告説明文11」といい、これらを併せて「原告説明文」という。)及び別紙原告挿絵目録記載(1)ないし(6)の挿絵(以下、それぞれ「原告挿絵1」ないし「原告挿絵6」といい、これらを併せて「原告挿絵」という。)は、職務著作として原告が著作者となるところ、直輸入品の販売等を営む被告が、平成26年12月5日から平成27年3月16日までの間、日本国内において本件商品を販売する際に同封した説明書(以下「被告説明書」という。)中の別紙被告説明文目録記載(1)ないし(11)の説明文(以下、それぞれ「被告説明文1」ないし「被告説明文11」といい、これらを併せて「被告説明文」という。)及び別紙被告挿絵目録記載(1)ないし(6)の挿絵(以下、それぞれ「被告挿絵1」ないし「被告挿絵6」といい、これらを併せて「被告挿絵」という。)は、原告説明文及び原告挿絵を複製したものであり、被告は原告の複製権及び譲渡権並びに著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害した旨主張して、被告に対し、@著作権法112条1項に基づき、上記著作権の侵害の停止又は予防として、被告説明文及び被告挿絵が記載された説明書の複製及び譲渡の差止めを求めるとともに、A同条2項に基づき、上記著作権の侵害の停止又は予防に必要な措置として、被告説明書の廃棄並びに被告説明文及び被告挿絵の電磁的記録の消去を求め、併せて、B民法709条に基づき、損害賠償金127万円(著作権侵害による著作権法114条2項に基づく損害50万円、著作者人格権の侵害による慰謝料50万円及び弁護士費用相当損害27万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年5月31日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾の括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、書証番号は、特記しない限り枝番の記載を省略する。) (1) 当事者 ア 原告は、玩具・ベビー用品の輸入・販売等を業とする特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律3条2項)である(甲1、弁論の全趣旨)。 イ 被告は、直輸入品の卸売販売、インターネット販売・小売販売等を業とする株式会社である(甲2、弁論の全趣旨)。 (2) 本件商品等 カナダ法人であるモントリー・エンタープライセス・リミテッド(以下「モントリー社」という。)は、乳幼児がプールや風呂でスイミングを体験するために首に付ける浮き輪である本件商品を製造・販売している。原告は、モントリー社との間で、本件商品につき、日本での販売に関する独占的ライセンス契約を締結し、我が国において本件商品を輸入・販売している(甲4、13、弁論の全趣旨)。 (3) 原告説明書等 ア 原告は、日本国内において本件商品を販売する際、本件商品の取扱説明書として原告説明書(甲13)を同封している。原告説明書には、原告説明文及び原告挿絵が記載されており、原告説明文には、@本件商品への空気の注入、A乳幼児への装着前の本件商品の点検、Bバスタブの水温と水深、C本件商品の乳幼児への装着、D乳幼児のバスタブへの入れ方、E安全上の注意及び使用上の注意等についての記載がある(甲13、弁論の全趣旨)。 イ 本件商品については、原告説明書が作成される前から、モントリー社が作成した英文の取扱説明書(甲4。以下「モントリー説明書」という。)が存在していた(甲4、弁論の全趣旨)。 また、原告説明書が作成された時期に先立つ平成20年10月には、一般社団法人日本玩具協会により、「ST基準内商品、空気入れビニールおもちゃに対するPL−注意表示ガイドライン(改訂)」(乙12。以下「本件ガイドライン」という。)が公表されていた(乙12、弁論の全趣旨)。 (4) 被告説明書等 被告は、平成26年12月5日から平成27年3月16日までの間、日本国内において本件商品を販売し、その際、本件商品の取扱説明書として被告説明書(甲6)を同封していた。被告説明書は、被告が平成26年12月5日頃原告説明書を参考にして作成したものであり、これには被告説明文及び被告挿絵が記載されていたが、原告の名称は表示されていなかった(甲5ないし8、弁論の全趣旨)。 3 争点 (1) 著作権及び著作者人格権侵害の成否 被告が被告説明文及び被告挿絵を含む被告説明書を作成し、これを同封して本件商品を販売したことは、原告説明文及び原告挿絵に係る原告の複製権及び譲渡権並びに同一性保持権を侵害し、被告説明書の公衆への提供に際し原告の名称を表示しなかったことは原告の氏名表示権を侵害するか。 ア 原告説明文と被告説明文とで共通する表現部分に創作性が認められるか。 イ 上記アで創作性が認められる表現部分は、モントリー説明書又は本件ガイドラインと共通しその実質を同じくする部分であるのか、それとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるのか。 ウ 原告挿絵に創作性が認められるか。 エ 原告説明文及び原告挿絵の著作者ないし著作権者は原告か。 (2) 差止請求及び廃棄・消去請求の当否 現時点においても被告が被告説明書を複製、頒布して原告の著作権を侵害するおそれがあり、その差止め並びに廃棄及び電磁的記録の消去をする必要性があるか。 (3) 損害の発生の有無及び損害額 原告は、被告の前記(1)の著作権及び著作者人格権侵害行為により、それぞれ幾らの損害を受けたか。 4 争点に関する当事者の主張 (1) 著作権及び著作者人格権侵害の成否について 【原告の主張】 ア 原告説明文と被告説明文について 原告説明文は、我が国の消費者が本件商品を安全かつ適切に使用するための原告の考え(格別の評価)を表現したものであり、思想又は感情を創作的に表現した言語の著作物である。 この点に関し、我が国においては、原告が初めて本件商品を販売した際、幼児用首浮き輪なる商品は存在しておらず、高い品質と安全性が求められる日本市場向けに幼児用首浮き輪の安全適切な使用方法等を分かりやすく理解させるための取扱説明書は存在していなかった。原告説明文は、そのような中で、原告の創意工夫によって作成されたものであり、また、本件商品の取扱説明書において、幼児のどのような行動に着目した注意事項を記載しておくか、どのような文章で注意喚起を行うかといった点については無限の選択肢があると考えられるから、著作権法上保護される創作性を有するというべきである。 原告説明文と被告説明文とでは、別紙説明文対比表1記載のとおり、漢字と平仮名の違いを除いて全く同一の文章であり、かつ、原告説明書における原告説明文1ないし11の並び順と被告説明文1ないし11の並び順もほぼ同一である。そして、このように原告説明文と被告説明文とで共通する表現部分について、別紙説明文対比表2の「創作性の主張(原告)」欄記載のとおり創作性が認められる。 そして、被告説明文は、原告説明文に依拠して作成されたものである。 以上によれば、被告説明文は、著作物たる原告説明文を複製したものというべきである。 イ モントリー説明書及び本件ガイドラインとの関係について 原告説明文は、モントリー説明書の英語の説明文を日本語に翻訳した上で、その内容の検討を行い、日本向けの取扱説明書用として新たな日本語での説明文に修正、校正等したものである。そのため、原告説明文は、モントリー説明書とは記載内容や記載順序が異なっている。 前記アのとおり原告説明文と被告説明文とで共通する創作的表現部分は、別紙説明文対比表2の「二次的著作物において新たに付加された創作性(原告)」欄記載のとおり、モントリー説明書又は本件ガイドラインと実質を同じくする部分ではなく、原告説明文において新たに独自に付与された創作的部分である。 ウ 原告挿絵と被告挿絵について 原告挿絵は、本件商品の安全適切な使用方法が具体的かつ鮮明にイメージできるような工夫を施したものであり、思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物である。 被告挿絵は、別紙挿絵対比表記載のとおり、原告挿絵とほぼ同一のものである。 そして、被告挿絵は、原告挿絵に依拠して作成されたものである。 したがって、被告挿絵は、著作物たる原告挿絵を複製したものというべきである。 エ 原告説明文及び原告挿絵の著作者・著作権者について 原告説明文及び原告挿絵は、原告の発意に基づき作成された著作物で、その作成時から、原告が自己の著作の名義の下に公表することが予定されていたものである。そして、原告説明文は、原告の従業員である舩澤尚美がその職務上作成したものであり、原告挿絵は、原告が株式会社プリモパッソ(以下「プリモパッソ」という。)に委託して作成させたものである。 したがって、著作権法15条1項により、原告が原告説明文及び原告挿絵の著作者となる。そして、原告説明文及び原告挿絵の著作権も、著作者である原告に帰属している。 なお、仮に、原告挿絵の著作者が法的にはプリモパッソであると評価せざるを得ないとしても、少なくともその著作権については、挿絵完成後に原告に帰属することが委託契約当初から約束されていたものであり、原告が原告挿絵の著作権を有することは明らかである。 オ 著作権侵害について 以上によれば、被告が、原告が著作権を有する著作物である原告説明文及び原告挿絵を複製して被告説明文及び被告挿絵を含む被告説明書を作成し、これを同封して本件商品を販売したことは、原告説明文及び原告挿絵に係る原告の複製権及び譲渡権を侵害したものである。 カ 著作者人格権侵害について (ア) 被告は、原告説明文及び原告挿絵の複製物である被告説明文及び被告挿絵を含む被告説明書を公衆へ提供するに当たり、原告説明文及び原告挿絵の著作者である原告の名称を表示しなかった。したがって、被告は、原告説明文及び原告挿絵に係る原告の氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害したものである。 (イ) 被告は、別紙説明文対比表1記載のとおり、被告説明文において、原告説明文中の漢字を平仮名に変更し、また、別紙挿絵対比表記載のとおり、被告挿絵において、原告挿絵中の子供の頭の形や表情を変更するなどした。これらは、原告の意に反する改変である。したがって、被告は、原告説明文及び原告挿絵に係る原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害したものである。 【被告の主張】 ア 原告説明文と被告説明文について 原告説明文は、@本件商品の使用方法等という客観的事実を、特に評価等を下すこともなく叙述したものであって、思想又は感情を表現したものではないし、A次のとおり創作性を有さず、さらにはB文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものではないから、著作権法上の著作物ではない。 原告説明書のような製品の説明書は、一般的に表現方法の選択の余地が乏しい上、本件商品については、誤った使用方法は乳幼児の生命・身体に重大な危険を及ぼす可能性があるため、説明書の具体的な内容は商品製作者であるモントリー社の取扱説明書(モントリー説明書)の内容に準じたものとする必要があるから、その表現方法の選択の余地は一層限定的であるといえる。原告説明文の内容は、本件商品の使用方法等を使用順序どおりに分説したにすぎないし、その表現形式は、見出しの活用、挿絵の引用、色分けの活用などを含め、一般に多くの製品の取扱説明書等において見られるありふれた表現形式にすぎないから、創作性を認めることはできない。 原告説明文と被告説明文とで共通する表現部分について、創作性が認められない具体的な理由は、別紙説明文対比表2の「創作性の主張に対する被告の反論」欄記載のとおりである。 イ モントリー説明書及び本件ガイドラインとの関係について 二次的著作物の著作権は、原著作物において既に創作され表現されていた部分には及ばない(最高裁平成9年7月17日判決・民集51巻6号2714頁〔ポパイ事〕)。 原告説明文と被告説明文とで共通する表現部分の多くは、別紙説明文対比表2の「二次的著作物において新たに付加された創作性の不存在(被告)」欄記載のとおり、モントリー説明書又は本件ガイドラインと同一の内容であって、これらを模倣したものであるから、原告独自の創作性は認められない。 ウ 原告挿絵と被告挿絵について 原告挿絵は、@本件商品の使用方法等という客観的事実を、特に評価等を下すことなく表現したものであって、思想又は感情を表現したものではないし、A創作性を有さず、さらにはB文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものではないから、著作権法上の著作物ではない。 エ 原告説明文及び原告挿絵の著作者・著作権者について 原告説明文及び原告挿絵の著作者・著作権者が原告であることは争う。 原告説明文について、原告の従業員が作成したことは明らかになっていないし、原告挿絵については、原告自身が、プリモパッソが作成したものであるとしている。原告説明文及び原告挿絵のいずれについても、プリモパッソの役職員が作成したものであるとすると、著作者及び著作権者は、プリモパッソの役職員であると考えられ、原告であるとは認められない。 オ 著作権侵害の成否について 原告説明文及び原告挿絵は著作権法上の著作物には当たらないし、これらの著作権者が原告であるとも認められないから、被告が原告の著作権を侵害した旨の原告の主張は失当である。 カ 著作者人格権侵害の成否について 原告説明文及び原告挿絵は著作権法上の著作物には当たらないし、これらの著作者が原告であるとも認められないから、被告が原告の著作者人格権を侵害した旨の原告の主張は失当である。 (2) 差止請求及び廃棄・消去請求の当否について 【原告の主張】 被告は、現在も、被告商品を販売する際、被告説明書を同封して使用している。したがって、被告が被告説明書を複製、頒布して原告の著作権を侵害するおそれがあり、原告の著作権に対する侵害の停止又は予防のためには、被告に対し、被告説明文及び被告挿絵が記載された被告説明書の複製及び譲渡を差し止める必要がある。また、上記侵害の停止又は予防に必要な措置として、被告説明書を廃棄させ、被告説明文及び被告挿絵のデータ(電磁的記録)を消去させる必要がある。 【被告の主張】 被告は、平成27年3月16日以降は、本件商品の販売の際に被告説明書を同封していない。すなわち、被告は、同月5日に原告から著作権侵害を主張する警告書を受領したことを受け、社内で対応を検討した結果、無用なトラブルを避けるため、同月16日に本件商品の販売を中止した。その後、被告は、被告説明書の内容を変更した新たな説明書(乙8。以下「新説明書」ともいう。)を作成し、同年5月18日以降、本件商品の販売を再開したが、その販売に当たっては、この新説明書を同封している。 したがって、現時点で被告が被告説明書を複製、頒布して原告の著作権を侵害するおそれがあるものではなく、その差止め並びに廃棄及びデータ(電磁的記録)の消去をする必要性は存しない。 (3) 損害の発生の有無及び損害額について 【原告の主張】 ア 被告は、故意に、原告説明文及び原告挿絵に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害したものであるから、これについて原告に対し民法709条に基づき損害賠償責任を負う。 イ 被告は、上記著作権侵害行為により、自ら本件商品の取扱説明書を作成する場合における作成費用を免れたのであるから、少なくとも同作成費用分の利益を受けている。 すなわち、原告説明文は、モントリー説明書の英語の説明文を日本語に翻訳した上で、その内容の検討を行い、日本向けの取扱説明書用として作成し、さらに、法律事務所にリーガルチェックを依頼して完成させたものである(本件商品の使用によって万が一にも幼児がけがをしたり死亡したりする事態が起こってはならないと考え、説明書の記載内容には十分慎重になる必要があったため、法律事務所にリーガルチェックを依頼し、その結果、13か所にわたる具体的な修正案が提示され、これを反映した。)。また、原告挿絵は、原告が具体的なイメージや構図等をプリモパッソに伝えた上で委託して完成させたものである。このような作業工程に鑑みれば、原告説明書の作成にかかった費用は、50万円を下らない。そうすると、被告が自ら本件商品の取扱説明書を作成したとすれば、50万円の作成費用を要したとみるべきである。 以上によれば、被告が上記著作権侵害行為により受けた利益の額は50万円であるところ、これが、著作権法114条2項により、原告が受けた損害の額と推定されるというべきである。 ウ 原告は、被告の著作者人格権侵害行為により、精神的苦痛(精神的損害)を被った。原告説明文及び原告挿絵の創作性の程度に鑑みれば、この精神的苦痛に対する慰謝料は、50万円を下らない。 エ 原告は、被告の著作権及び著作者人格権侵害行為により、これを理由とする本件訴訟の提起・追行を弁護士に委任することを余儀なくされた。そして、原告は、実際に本件訴訟の弁護士費用として27万円の支出を要したところ、上記著作権及び著作者人格権侵害と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は、同額を下らない。 オ 以上によれば、被告が前記アのとおり賠償責任を負う原告の損害額は、合計127万円を下らない。 【被告の主張】 ア 仮に、被告の行為が原告の著作権及び著作者人格権の侵害に該当するとしても、原告が主張するような損害は発生していない。 イ 著作権法114条2項は、著作権侵害による被侵害者の売上げ減少による逸失利益の推定規定である。被告が得たと原告が主張する本件商品の取扱説明書作成費用分の利益なるものは、原告の逸失利益とは全く無関係であるため、そもそも同項による損害額の推定の対象とはならない。また、仮に同項の適用があるとしても、被告が免れた作成費用がそのまま原告の利益となる関係にはないことから、同項の推定が覆ることは明らかである。 ウ 原告説明文はモントリー説明書の引き写しにすぎず、原告挿絵はプリモパッソが作成しているため、いずれも原告のオリジナルではなく、法人にすぎない原告に精神的損害は全く発生していない。 第3 当裁判所の判断 1 著作権及び著作者人格権侵害の成否について (1) 被告説明文について ア 被告説明文による原告説明文に係る著作権侵害の成否の判断について 原告は、原告説明文は創作性を有する表現たる著作物であり、被告説明文は原告説明文を複製したものであって、原告の著作権に対する侵害が成立する旨主張する。 そこで検討するに、上記著作権侵害が認められるためには、まず、@ 原告説明文と被告説明文とで共通する表現部分について、創作性が認められなければならない。そして、原告説明文と被告説明文は、いずれも本件商品の取扱説明書における説明文であるところ、製品の取扱説明書としての性質上、当該製品の使用方法や使用上の注意事項等について消費者に告知すべき記載内容はある程度決まっており、その記載の仕方も含めて表現の選択の幅は限られている。これに対し、原告は、我が国においては、原告が初めて本件商品を販売した際、高い品質と安全性が求められる日本市場向けに幼児用首浮き輪の安全適切な使用方法等を分かりやすく理解させるための取扱説明書は存在していなかった旨指摘するけれども、そのような状況にあっても、本件商品の使用方法や使用上の注意事項等については、それ自体はアイデアであって表現ではなく、これを具体的に表現したものが一般の製品取扱説明書に普通に見られる表現方法・表現形式を採っている場合には創作性を認め難いといわざるを得ない。本件商品の取扱説明書において、幼児のどのような行動に着目した注意事項を記載しておくか、どのような文章で注意喚起を行うかといった点についても、選択肢の幅は限られているとみられる。 次に、前記前提事実に証拠(甲4、13)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告説明文は、モントリー説明書の英語の説明文を日本語に翻訳した上でこれを修正して作成されたものであり、同説明文に依拠して作成されたものと認められる。二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないこと(最高裁平成4年(オ)第1443号同9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁〔ポパイ事件〕)に照らすと、上記@で創作性が認められる表現部分についても、A モントリー説明書の説明文と共通しその実質を同じくする部分には原告の著作権は生じ得ず、原告の著作権は原告説明文において新たに付与された創作的部分のみについて生じ得るものというべきである。そして、本件においては、上記@で原告説明文(日本語)と被告説明文(日本語)とで共通する表現部分について創作性が認められるとすれば、その理由は、もとより翻訳の仕方に関わるものではなく、英文か日本文かに関わらない表現内容等によるものと考えられるから、上記Aでは、モントリー説明書の英文を日本語に翻訳したその訳し方に創作性があったとしても、被告による原告の著作権侵害を基礎付ける理由にはなり得ず、表現内容等について原告説明文において新たに追加・変更された部分でなければ、上記「原告説明文において新たに付与された創作的部分」には当たらないというべきである。 また、原告説明文において本件ガイドラインと共通しその実質を同じくする部分についても、原告説明文がこれに依拠したと認められる場合には、上記Aと同様、原告の著作権は生じないというべきである。 以上の見地に立って、被告説明文が著作物たる原告説明文を複製したものであって原告の著作権侵害が成立し得るかどうかについて、以下、個々的に検討する。 イ 原告説明文1と被告説明文1について (ア) 原告説明文1と被告説明文1とは、「警告」及び「注意」の前に△の記号があるかどうか及び漢字と平仮名のいずれを遣うか(「ください」と「下さい」など)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文1のうち、「【安全上の注意】 保護者の方へ、必ずお読みください。」、「必ず本ガイドを読んで大人の保護者の方が注意しながら正しくご使用ください。」、「警告 正しい取り扱いをしなければ、死亡または重傷を負うおそれがあります。」、「生後18ヶ月かつ体重11kg までの赤ちゃん専用です。」、「空気栓を確実に閉め、空気漏れがないか確認してください。」、「異常があればすぐに使用を中止してください。」、「救命用具として使用しないでください。」、「赤ちゃんの一人遊びは危険です。赤ちゃん一人での使用はしないでください。」、「必ず保護者の手が届く範囲でご使用ください。」、「本品は赤ちゃんが一人で使用することを想定したものではありません。」、「使用中は目を離さないようにして、異変があればすぐに保護者が対応出来る状況で使用してください。」、「注意正しい取り扱いをしなければ、傷害を負ったり物的損傷を受けるおそれがあります。」、「空気を入れ過ぎたり、高圧ポンプなどを使用しないでください。破損の原因になります。」、「炎天下に放置しないでください。」、「本体が柔らかくなる場合があります。その場合は、空気の追加を控えるか、少量にしてください。」、「タバコや火気に近づけないでください。」という記載部分は、本件商品の取扱説明書において本件商品の用途や使用上の注意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない。 また、「強制」や「禁止」を示す記号の用い方についても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない(なお、原告説明書における色分けは、原告説明文の創作性の根拠として主張されているものではないが、仮に、この点について検討したとしても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、創作性は認められない。)。 (ウ) 他方で、原告は、「スイマーバにあごがのるようになってからご使用ください。」、「あごがスイマーバの穴から下にさがる状態で使用しないでください。」という記載部分について、使用する幼児の身体の部位の状態を具体的に表現したものである点で、本件商品の正しい装着方法を具体的にイメージさせる創意工夫が見て取れるから、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、幼児の身体に装着する商品について、幼児の身体の部位の状態を具体的に表現すること自体は、ありふれたものといわざるを得ない。 また、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、本件商品の浮き輪の内側のどこかにあごを乗せて使用すること、バックル部分があごの下に来るように装着することが記載されていたことが認められ、幼児のあごと本件商品との位置関係に言及して説明すること自体は、原告説明文において新たに付与された部分とはいえない。 そして、これらを前提に、上記記載部分の表現ぶりに何か個性が発揮されているものとは認められない。 そうすると、上記記載部分について、創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (エ) また、原告は、「赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につく程度の水深で使用してください。」、「深い水深では、保護者の方が背がつく深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。」、「浅い水深での使用は、赤ちゃんの転倒や溺水の危険があります。」という記載部分について、本件商品がこれまでにない新しい商品であることを考慮して、本来の本件商品を使用するための水深のみならず、深い水深、浅い水深での使用上における注意点をも順に明記することで、安全な本件商品の使用方法を容易にイメージさせる工夫を施しており、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、幼児用浮き輪の使用方法を説明するに当たって水深について言及し、その際、本来想定している理想の水深のみならず、そうでない水深で使用した場合の注意点をも順に記載することは、特別な表現ではなく、ありふれたものといわざるを得ない。 また、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、(a)「安全のため、赤ちゃんの成長に合わせ、赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底に着くように水深を調整してください。」、(b)「赤ちゃんが浅い水深で腹這いにならないようにしてください。上記の適切な水深を保つようにすれば、このような事態は自然と避けられます。」との記載がされていたことが認められる。原告説明文では、上記(a)に「足を伸ばして」という文言を加えていること、上記(b)に転倒の危険性への言及を加えていること、「深い水深」の場合についても説明を加えている点が認められるが、これらの表現内容や表現方法に個性の発揮があるとは認められない。 そうすると、当該記載部分について、創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (オ) さらに、原告は、「ハンドポンプの部品が、赤ちゃんの口や目に入らないように使用・保管してください。」という記載部分について、ハンドポンプの部品が小さいことに着目し、赤ちゃんの口や目に入る可能性を考慮したものであって、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、そのような可能性を考慮したことは、アイデアであって、その表現ぶりに個性が発揮されているものと認められない以上、上記記載部分について創作性を認めることはできない。 (カ) 加えて、原告は、(a)「空気を入れ過ぎたり、高圧ポンプなどを使用しないでください。破損の原因になります。」との記載に続いて、「外周部にシワが少し残るくらいが適量です。」という記載をしている部分について、「外周部にシワが少し残るくらい」という視覚的に分かりやすい表現を用いている点で、創作性が認められ、(b)「岩角やくい、砂利、貝殻、ガラス片、金属片、木片など、尖ったものとの接触は避けてください。」という記載部分について、具体例を挙げてイメージを想起しやすくしている点で、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、証拠(乙12)によれば、空気入れビニールおもちゃに関する一般社団法人日本玩具協会によるガイドラインである本件ガイドラインにも、(a)使用上の注意として「空気の入れ過ぎは破損の原因になります。外周部にシワが少し残るくらいが適量です。」との記載、(b)禁止事項として「岩角やくい、砂利、貝殻、ガラス片、金属片、木片など、とがったものとの接触」との記載がされていたことが認められ、原告説明文の上記各記載部分は、これらと全く同一の記載文言を用いたものである。これに本件ガイドラインの性格や原告のアクセス可能性をも併せ考慮すると、原告説明文の上記記載部分は、本件ガイドラインの上記記載に依拠して作成されたものと推認される。 したがって、上記各記載部分が、原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (キ) 以上によれば、被告説明文1が著作物たる原告説明文1を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 ウ 原告説明文2と被告説明文2について (ア) 原告説明文2と被告説明文2とは、「ステッカー(浴室の壁面など、お使いになる場所の見えるところに貼ってください)」という記載文言の有無、「日本語公式ガイド」の「公式」の文言の有無、漢字と平仮名のいずれを遣うか(「この度」と「このたび」)及び漢字の遣い方(「本紙」と「本誌」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文2は、(a)「はじめに」という見出しの下、(b)「この度はスイマーバ商品をご購入いただきありがとうございます。」、(c)「製品パッケージの中に以下の内容があるかご確認ください。」、「うきわ首リング」、「ハンドポンプ」、「日本語公式ガイド(本紙)」と記載されたものであり、本件商品の取扱説明書の冒頭部分の記載として、全く個性の発揮が見られない。 原告は、上記(c)の記載部分について、内容物を一覧にまとめることで、不足品がないかどうかが一目で分かるような工夫をこらしていると主張するが、そのようなことは、およそ製品の取扱書において一般的にされている極めてありふれたものというべきである。 したがって、原告説明文2には、創作性は何ら認められない。 (ウ) そうすると、被告説明文2が著作物たる原告説明文2を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 エ 原告説明文3と被告説明文3について (ア) 原告説明文3と被告説明文3とは、若干の指示語の違い(「本品」と「本製品」)や漢字と平仮名のいずれを遣うか(「有る」と「ある」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文3は、「使用上の注意」という見出しの下、「本品の内部構造は複雑なので、空気を入れて内圧が高い状態でひねったり、広げたりすると破損の原因になります。ていねいに取り扱ってください。」、「本品使用時には、あらゆる油脂類は使用しないでください。本品の素材に影響を及ぼす以外に、油脂により滑りやすくなり事故につながる恐れがあります。」、「赤ちゃんの健康に少しでも心配のある方は、かかりつけの小児科医に本品で水遊び をしてもよいかご相談ください。肌がかぶれるなどのアレルギー症状が有る場合は使用を中止してください。」と記載されたものであり、本件商品の取扱説明書において本件商品の使用上の注意事項を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない。 (ウ) そうすると、被告説明文3が著作物たる原告説明文3を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 オ 原告説明文4と被告説明文4について (ア) 原告説明文4と被告説明文4とは、全く同一である。 (イ) 原告説明文4は、(a)「お使いになる前に」という見出しの下、(b)「本品のご使用前に必ず本ガイドを最後まで読んで使用方法を守り、安全にお使いください。」、(c)「※本品はプレスイミングを体験するためものであり、一般的なスイミングを習得するためのものではありません。」、(d)「※本品は命の維持や溺れることを防止するなどの救命用に作られたものではありません。」と記載されたものであり、これらが全て赤色で表示されている点も含めて、本件商品の取扱説明書の記載として、全く個性の発揮が見られない。 原告は、上記(c)の記載部分について、「プレスイミング」と「スイミング」という言葉を対比させ、本件商品の目的を明示している、上記(d)の記載部分について、本件商品が救命用ではないということを明示していると指摘し、これらに創意工夫が見られる旨主張するが、言葉の対比自体はアイデアにすぎないし、救命用の商品でないという商品の基本的な性格付けを説明することには何ら個性の発揮が見られないというべきである。 そして、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、「本品は、プレスイミングと伝統的な幼児のスイミングレッスンへの移行のために使用されるものであり、スイムレッスンに代わるものではありません。」との記載及び「本品は、救命具ではなく、溺れることを防止するものではありません。」との記載がされていたことが認められ、「プレスイミング」という文言が既に使用されていたことや、「プレスイミング」と「スイミング」が対比されていたことを指摘することができる。したがって、上記(c)及び(d)の記載部分は、そもそも原告説明文において新たに付与された部分とはいえない。 以上によれば、原告説明文4について創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (ウ) そうすると、被告説明文4が著作物たる原告説明文4を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 カ 原告説明文5と被告説明文5について (ア) 原告説明文5と被告説明文5とは、漢字と平仮名のいずれを遣うか(「おそれ」と「恐れ」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文5は、(a)「お手入れと保管」との見出しの下に、(b)「スイマーバは中性洗剤で洗い、洗剤成分をぬるま湯でしっかり洗い流してください。それ以外の方法での洗浄、漂白は避けてください。洗剤成分が残っていると滑りやすくなり、使用中に赤ちゃんの体が抜け落ちるおそれがあります。」、(c)「◎保管上の注意:洗浄後は陰干しします。直射日光を避け、冷暗所、低湿度の場所で保管してください。」、(d)「◎廃棄上の注意:廃棄の際は、各地方自治体の廃棄区分に従ってください。」と記載されたものであり、本件商品の取扱説明書において本件商品の手入れ・保管方法と保管上・廃棄上の注意事項を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない。 原告は、上記(b)中の「使用中に赤ちゃんの体が抜け落ちるおそれがあります。」との記載について、使用する幼児の身体の状態を具体的に表現している点で創意工夫が見て取れる旨主張するが、そのような表現は、ありふれたものといえる上、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、「赤ちゃんの体が浮き輪から抜け落ちるおそれがあります。」との記載がされていたことが認められ、原告説明文において新たに付与された部分とはいえない。 以上によれば、原告説明文5について創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (ウ) そうすると、被告説明文5が著作物たる原告説明文5を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 キ 原告説明文6と被告説明文6について (ア) 原告説明文6と被告説明文6とは、「上側、下側の順に上下2ヶ所の空気栓から空気を入れます。」と記すか「上側、下側の順に2か所の空気栓から空気を入れます。」と記すか、漢字と平仮名のいずれを遣うか(「ぬらして」と「濡らして」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文6のうち、「スイマーバの使い方」、「使う前に、空気漏れがないか確認する。」、「●空気栓は栓と弁の二重構造になっていますが、弁は空気の急激な漏れを防ぐ補助弁で空気を完全に止めるものではありません。必ず栓をしっかり差し込んで使用してください。」、「●栓がきついときは、少しぬらして差し込んでください。」という記載部分は、本件商品の取扱説明書において本件商品の使用方法とその際の注意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない(なお、赤色・青色の色分けについて検討したとしても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。)。 (ウ) 他方、原告は、「@上側、下側の順に上下2ヶ所の空気栓から空気を入れます。 ・手で触れて、空気の入り具合を確かめながら行ってください。 ・外周にシワが少し残るくらいが適量です。 ・少ない空気量での使用は危険です。」、「A 空気が入ったら栓をしっかり差し込み、さらに本体内部に強く押し込んでください。」、「B水の中に60秒間沈めて、空気漏れがないか確認してください。」という記載部分について、(a)本件商品への空気の注入方法について、単に「スイマーバに空気を注入して栓をしてください。空気漏れがないか確認してご使用ください。」といった抽象的な説明をするのではなく、作業を時系列的かつ具体的に記載している点、 (b)「手で触れて、空気の入り具合を確かめながら」、「外周にシワが少し残るくらい」、「水の中に60秒間沈めて」というように、本件商品への空気注入作業の光景を具体的にイメージさせるような表現を用いている点で、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、上記(a)の点については、製品の取扱説明書において、製品の使用方法を時系列的かつ具体的に記載すること自体は、通常必要な説明の仕方であり、ごくありふれた表現方法といわざるを得ない。 また、上記(b)の点については、「手で触れて、空気の入り具合を確かめながら」との文言はありふれたものであるし、「外周にシワが少し残るくらい」との文言が、原告説明文において新たに付与された創作的部分とはいえないことは、前記イ(カ) で説示したとおりである。「水の中に60秒間沈めて」という文言についても、このような時間の設定自体はアイデアにすぎないし、その表現の仕方について個性の発揮があるとは認められない。 そうすると、上記記載部分に創作性を認めることは困難である。 (エ) 以上によれば、被告説明文6が著作物たる原告説明文6を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 ク 原告説明文7と被告説明文7について (ア) 原告説明文7と被告説明文7とは、漢字と平仮名のいずれを遣うか(「のる」と「乗る」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文7のうち、「水中で使う前に、試着して位置やサイズを確認する」、「開口部の隙間からあごが落ちないようにSwimavaのロゴが顔側(あごの下)になるようにします。」「●本品は生後18ヶ月かつ体重が11kg までの赤ちゃん専用です。」という記載部分は、本件商品の取扱説明書において本件商品の使用方法とその際の注意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない(なお、赤色・青色の色分けについて検討したとしても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。)。 (ウ) 他方、原告は、「スイマーバを両手で広げ、顔側(あごの下部分)から優しくつけて、首の後ろで上下の各ベルトをカチリと留めます。」という記載部分について、「カチリ」という擬音語を用いている点で創意工夫がされている旨主張するが、使用方法の説明において擬音語を用いること自体は一般的にされることであるところ、「カチリ」という擬音語もありふれた表現であるから、上記記載部分が創作的な表現であるということはできない。 (エ) また、原告は、「スイマーバの上にあごがのり、頭とあごを支えているかを確認します。」、「小さい赤ちゃんや、顔・頭・あごが小さい赤ちゃんは口元が水面に浸かったり、あごがスイマーバにのらない場合は体が抜け落ちるおそれがあります。スイマーバにあごがのるまでご使用を控えてください。」という記載部分について、使用する幼児の身体の部位の状態を具体的に表現したものである点で、本件商品の正しい装着方法を具体的にイメージさせる創意工夫が見て取れるから、創作性が認められる旨主張するが、前記イ(ウ)で説示したところによれば、このような記載部分について創作性を認めることは困難である。 (オ) さらに、原告は、「首回りが太く大人の指2本分のゆとりがない場合は、ご使用をやめてください。赤ちゃんの首が締め付けられる危険があります。」という記載部分について、「大人の指2本分のゆとり」という表現を用いている点で、創作性が認められる旨主張する。しかしながら、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、「浮き輪と赤ちゃんとの間に、常に少なくとも指2本が入るほどの余裕を持たせてください。」と記載されていたことが認められ、上記表現が原告説明文において新たに付与された創作的部分ということはできない。 (カ) 以上によれば、被告説明文7が著作物たる原告説明文7を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 ケ 原告説明文8と被告説明文8について (ア) 原告説明文8と被告説明文8とは、「目安は」と記しているか「目安や」と誤記しているかという相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文8のうち、「バスタブの水温と水深を調整する」との見出しの下、赤色・青色の色分けをしつつ表現している点は、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。 (ウ) 他方、原告は、「水温:水温が常に沐浴やお風呂など月齢にあった温度になるように調整してください。水温計を用意して5分ごとに測ることをお勧めします。」、「●目安は、水温35度±2度の範囲です。30度以下の水や高温は避けてください。」という記載部分について、適切な水温を一定に保つための方法等を具体的に表現している点で、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、上記の水温の調整の仕方や温度設定の目安などの内容自体はアイデアにすぎないし、その表現の仕方について個性の発揮があるとは認められない。 また、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、「水温は、およそ35℃/90°Fから±2度以内に保ってください。」、「水温が赤ちゃんの月齢に合った温度になるように調整してください。赤ちゃん用の水温計を購入し、5分ごとに水温を測ってください。」、「一般的に、水温は30℃を下回らないようにします。」と記載されていたことが認められ、上記記載部分が原告説明文において新たに付与された部分ということはできない。 そうすると、上記記載部分について創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (エ) また、原告は、「水深:水深は、安全のため常に赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につくぐらいに調整してください。この水深は赤ちゃんが最も安全に動ける深さです。」、「●深い水深では、保護者の方が背がつく深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。」、「●浅い水深では、転倒の危険があるので使用しないでください。」という記載部分について、本来の本件商品を使用するための水深のみならず、深い水深、浅い水深での使用上における注意点をも順に明記することで、安全な本件商品の使用方法を容易にイメージさせる工夫を施しており、創作性が認められる旨主張するが、前記イ(エ)で説示したところによれば、このような記載部分について創作性を認めることは困難である。 (オ) 以上によれば、被告説明文8が著作物たる原告説明文8を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 コ 原告説明文9と被告説明文9について (ア) 原告説明文9と被告説明文9とは、仮名遣い(「6ヶ月」と「6か月」)の相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文9は、(a「スイマーバを赤ちゃんに装着する」との見出しの下)に、(b)「生後6ヶ月までの赤ちゃん 最初は二人の大人が付き添います。一人が赤ちゃんを支えている間に、もう一人が両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。」、(c)「生後6ヶ月以降の赤ちゃん・お座りができる赤ちゃん 大人一人でスイマーバを装着することができます。両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。」、(d)「●使用前に水の中に60秒間沈めて、空気漏れなどの異常がないか確かめてください。異常がある場合は使用しないでください。 ●使用中は首がしまりすぎないか、常に確認してください。 ●スイマーバを広げるときは下側のハンドルを持って広げないでください。破損の原因になります。 ●スイマーバの下側のハンドルは赤ちゃんが握るためのものです。ハンドルが下方向(水中)になるように装着してください。」と記載されたものであり、本件商品の取扱説明書において本件商品の装着方法とその際の注意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない(なお、赤色・青色の色分けについて検討したとしても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。)。 原告は、上記(c)中の「優しく装着します。」との記載について、本件商品が子供と大人のコミュニケーションを図るためのツールである点を強調する狙いが現れている旨主張するが、それ自体極めてありふれた表現であるから、これについて創作性を認めることはできない。 (ウ) そうすると、被告説明文9が著作物たる原告説明文9を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 サ 原告説明文10と被告説明文10について (ア) 原告説明文10と被告説明文10とは、漢字と平仮名のいずれを遣うか(「抱きあげて」と「抱き上げて」、「手が空いた」と「手があいた」)という相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文10のうち、「赤ちゃんをバスタブに入れる」、「@バスタブの水抜き栓がしっかりと閉まっていることを確認します。常に水温と水深を管理、調整してください。」、「A使用を終了するときは、二人の大人が付き添ってください。一人がタオルを広げ、もう一人が赤ちゃんを抱きあげてタオルを持った方にゆっくり渡します。手が空いた方がスイマーバをはずします。」、「●装着中は保護者の手が届く範囲でご使用ください。」、「●使用時間は必ず30分以内にします。」、「●いつもと違うなどの異常がある場合は、すぐに使用を中止してください。」という記載部分については、本件商品の取扱説明書において本件商品の使用方法とその際の注意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない(なお、赤色・青色の色分けについて検討したとしても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。)。 (ウ) 他方、原告は、「食後を避けて機嫌の良いときに」という記載部分について、本件商品が子供と大人のコミュニケーションを図るためのツールである点を強調する狙いが現れている旨主張するが、それ自体極めてありふれた表現であるから、これについて創作性を認めることはできない。 (エ) また、原告は、「赤ちゃんを観察し、異常がないか?いつもと様子が違うか?楽しんでいるか?疲れているか?「もうバスタブから出たいよ。終わりたいよ。」というしぐさ、サイン、表情などを見逃さないでください。」という記載部分について、言葉を話すことができない赤ちゃんの気持ちを代弁するために、あえて鍵括弧付きで「もうバスタブから出たいよ。終わりたいよ。」という言葉を挿入し、大人が乳幼児の様子をつぶさに観察する必要があることを印象付けている点で、創作性が認められる旨主張する。 しかしながら、証拠(甲4)によれば、モントリー説明書においても、「赤ちゃんが入浴や水泳を終わりたいというサインを出しているかどうか、しっかりと注意を払ってください。赤ちゃんは、もうスイマーバの使用を終わりたいと思っているときは、あなたにそれを伝えようとします。」と記載されていたことが認められ、このような内容については、原告説明文において新たに付与されたものではない。原告説明文10では、鍵括弧付きの会話調で上記のとおり表現しているが、このような表現方法自体は、ありふれた表現の域を出ないものといわざるを得ない。 そうすると、上記記載部分について創作性を認めることは困難であるし、少なくとも原告説明文において新たに付与された創作的部分であるとは認められない。 (オ) 以上によれば、被告説明文10が著作物たる原告説明文10を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 シ 原告説明文11と被告説明文11について (ア) 原告説明文11と被告説明文11とは、送り仮名(「合わせたり」と「合せたり」)や括弧閉じの有無に係る相違点を除いて、同一である。 (イ) 原告説明文11は、(a)「赤ちゃんとスイマーバを楽しむための適切な使い方」との見出しの下に、(b)「赤ちゃんの機嫌がいいときに5分程度のご使用から始めましょう。」、(c)「初めて水に入った赤ちゃんは泣くことがあります。初めは短い時間で様子を見ながらご使用ください。慣れてきたら機嫌や状態にあわせて使用時間を徐々に長くします。」、(d)「できるだけ毎日決まった時間帯(お昼寝やお休み前)にご使用になることをお勧めします。毎晩お休み時間の前にご使用になると赤ちゃんの体がほぐれ、ほどよい疲れでぐっすりと眠ることでしょう。(個人により反応に差があります)」、(e)「赤ちゃんが泣いたときは、異常がないか?機嫌が悪くはないか?眠くないか?湯温が熱すぎないか?みてください。また、赤ちゃんと目線を合わせたり、肌を触れ合ってみてください。」、(f)「使い始めて2週間ほどでお風呂の内側を蹴ったりして遊ぶようになります。ただし、水嫌いの赤ちゃんなど個々に差があり、反応は様々です。よく観察して赤ちゃんの状態や水温などにご注意ください。」と記載されたものであり、本件商品の取扱説明書において本件商品の推奨される使用方法及びこれに関する留意事項等を通常の仕方で表現したものであって、全く個性の発揮が見られないから、創作性は何ら認められない。また、上記(a) の見出しを青色で表示している点についても、製品の取扱説明書においてありふれたものであるから、これについて創作性は認められない。 原告は、上記(e)の記載について、本件商品が子供と大人のコミュニケーションを図るためのツールである点を強調する狙いが現れている旨主張するが、その表現の仕方自体はありふれたものであるから、これについて創作性を認めることはできない。 (ウ) そうすると、被告説明文11が著作物たる原告説明文11を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 ス 原告説明文と被告説明文の記載順序について 原告説明文と被告説明文とは、原告説明文2ないし10と被告説明文2ないし10の記載順序が共通している。しかし、この順序は、説明書を読む順序や本件商品を使用する際の手順に沿ったものであるから、創作性を認めることはできない。 セ 小括 以上の次第で、被告説明文が著作物たる原告説明文を複製したものであるとして、これについて原告の著作権侵害が成立するということはできない。 (2) 被告挿絵について ア 原告挿絵が著作物に当たるかについて (ア) 原告挿絵1について 原告挿絵1は、@本件商品である浮き輪を描いた絵に、A「上側」、「空気栓」及び「ベルト」との文字による指示説明を加えたものである。 上記@の絵は、本件商品の取扱説明書において、本件商品について説明するために、単に本件商品自体を描いたにとどまるものであり、その描き方には一定の選択肢があるとしても、当該目的・用途による制約が掛かるものである。上記絵は立体的な描き方をしているが、それ自体はありふれたものであるし、立体的に描く場合には、上記の目的・用途から、ある程度忠実に形状が分かりやすいように描く必要があると考えられるところ、上記絵の表現の仕方(技法等)はありふれており、個性の発揮は認められない。 上記Aのとおり指示説明を加えることも、製品の取扱説明書においてごくありふれたものである。 そうすると、原告挿絵1は、創作性を欠き、著作物に当たるとは認められない。 (イ) 原告挿絵2について 原告挿絵2は、@本件商品である浮き輪を描いた絵に、A「下側」、「空気栓」、「ハンドル」及び「ベルト」との文字による指示説明部分を加えたものである。 前記(ア)で説示したところに照らすと、原告挿絵2は、創作性を欠き、著作物に当たるとは認められない。 (ウ) 原告挿絵3について 原告挿絵3は、@本件商品の部品である空気栓を描いた絵(押し込まない状態と押し込んだ状態の2通り)に、A「空気栓」、「栓」、「弁」及び「押し込む」との文字による指示説明と矢印を加えたものである。 上記@の絵は、本件商品の取扱説明書において、本件商品の部品について説明するために、単に当該部品のみを描いたにとどまるものであり、その描き方の選択肢はごく限られると考えられるところ、上記絵の表現の仕方はごくありふれており、個性の発揮は何ら認められない。 上記Aのとおり指示説明や矢印を加えることも、製品の取扱説明書においてごくありふれたものである。 そうすると、原告挿絵3は、創作性を欠き、著作物に当たるとは認められない。 (エ) 原告挿絵4について 原告挿絵4は、@本件商品を乳幼児に試着する場面における(a)本件商品、(b)乳幼児の上半身及び(c)乳幼児に本件商品を装着させる保護者等(以下、単に「保護者」という。)の腕を記載した絵に、A「試着してみる」との文字、3つの矢印及び円形の点線を加えたものである。 上記@の絵について、(a)の部分はそれ自体としては前記(ア)のとおりありふれており、(c)の部分もそれ自体としてはごくありふれているが、(b)の部分は乳幼児の顔・頭・恰好等をどのように描くかについてはある程度選択の幅がある上、(a)ないし(c) をどのような範囲でどのような位置関係で組み合わせて描くかについても、選択の幅がある。本件商品の使用方法等を示す挿絵という性質上、表現の選択の幅はある程度限られる面があるものの、上記のような絵全体としての描き方には少なからぬ選択肢が存すると考えられるところ、上記@の絵を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定できない。 そうすると、上記Aの点についてはありふれたものであるにしても、原告挿絵4について、その創作性を否定して、著作物としての保護を一切否定することは相当でなく、狭い範囲ながらも著作権法上の保護を受ける余地を認めることが相当というべきである。原告挿絵4は、本件商品の取扱説明書における挿絵ではあるが、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり、美術の著作物に当たるというべきである。 (オ) 原告挿絵5について 原告挿絵5は、@本件商品を乳幼児に試着した場面における(a)本件商品、(b)乳幼児の頭部及び(c)保護者の手を描いた絵に、Aベルト部分についてベルトを締める様子を拡大して矢印付きで描いた絵を加え、さらにB「指2本分のゆとりが必要」及び「上下のベルトをしめる」との文字を加えたものである。 上記@の絵について、(a)ないし(c)の各部分はそれぞれ単独ではありふれたものであるが、これらをどのような範囲でどのような位置関係で組み合わせるか、とりわけ(c)の部分の手指を構図上どのように描き入れるかについては、選択の幅があるし、上記Aの絵の組み合わせ方についても、選択の幅が少なくない。本件商品の使用方法等を示す挿絵という性質上、表現の選択の幅はある程度限られる面があるものの、上記のような絵全体としての描き方には少なからぬ選択肢が存すると考えられるところ、上記@及びAの絵を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定できない。 そうすると、上記Bの点についてはごくありふれたものであるにしても、原告挿絵5について、その創作性を否定して、著作物としての保護を一切否定することは相当でなく、狭い範囲ながらも著作権法上の保護を受ける余地を認めることが相当というべきである。原告挿絵5は、本件商品の取扱説明書における挿絵ではあるが、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり、美術の著作物に当たるというべきである。 (カ) 原告挿絵6について 原告挿絵6は、@本件商品を着用した乳幼児をバスタブに入れた場面における(a) バスタブ、(b)本件商品を首に着用した状態の乳幼児の全身及び(c)温度計を描いた絵に、A乳幼児の足を強調するマークとB「35±2℃」との数字・記号を加えたものである。 上記@の絵について、(a)及び(b)の各部分はそれぞれ単独ではありふれたものであるが、(c)の温度計をどのように簡略化して描くかについては個性の発揮が全くないとはいえない上、それを含めた(a)ないし(c)をどのような範囲でどのような位置関係で組み合わせて描くかについても、選択の幅がある。さらに、「赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につくぐらいの位置」に水深を調整すべきことを表現するために、上記Aのマークを加えた表現も含めると、選択の幅が少なくない。本件商品の使用方法等を示す挿絵という性質上、表現の選択の幅はある程度限られる面があるものの、上記のような絵全体としての描き方には少なからぬ選択肢が存すると考えられるところ、上記@及びAの絵を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定できない。 そうすると、上記Bの点についてはごくありふれたものであるにしても、原告挿絵6について、その創作性を否定して、著作物としての保護を一切否定することは相当でなく、狭い範囲ながらも著作権法上の保護を受ける余地を認めることが相当というべきである。原告挿絵6は、本件商品の取扱説明書における挿絵ではあるが、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり、美術の著作物に当たるというべきである。 (キ) 小括 以上のとおり、本件挿絵1ないし3は著作物には当たらないが、本件挿絵4ないし6は著作物に当たるということができる。 イ 被告挿絵が原告挿絵の複製に該当するかについて (ア) 被告挿絵4について 証拠(甲6、13)によれば、原告挿絵4と被告挿絵4とは、@乳幼児の顔・頭・恰好等の描き方が、若干の表情の違いを除いて共通し、かつ、A本件商品、乳幼児の上半身及び保護者の腕の記載範囲・位置関係・組み合わせ方において共通していること、他方で、B「試着してみる」との文字、3つの矢印及び円形の点線の有無、C保護者の右手の明確な記載の有無、D本件商品における記載文字の明確性及び着色の濃淡など微細な点において相違していることが認められる。 上記@及びAの共通点については、前記ア(エ)で説示したとおり、これらを併せると創作性が認められる表現であるのに対し、上記BないしD等の相違点については、これらを併せても創作性は認められない。そうすると、被告挿絵4は、原告挿絵4の創作的な表現部分を再製し、これにより挿絵全体として原告挿絵4の表現上の本質的な特徴の同一性を維持するものである一方、新たな創作的表現を付加するものではないとみられる。 そして、前記前提事実に証拠(甲6、13)及び弁論の全趣旨を総合すると、被告は、被告説明書に先行して本件商品の取扱説明書として流布していた原告説明書を見て、同じ対象商品である本件商品の取扱説明書である被告説明書を作成したものであるところ、被告説明書の記載内容は、全体を通じて、原告説明書の記載内容に酷似していることが認められる。これらの事実に照らせば、被告挿絵が原告挿絵に依拠して作成されたことは優に推認される。 以上によれば、被告挿絵4は、原告挿絵4の複製に当たるというべきである。 (イ) 被告挿絵5について 証拠(甲6、13)によれば、原告挿絵5と被告挿絵5とは、@本件商品、乳幼児の頭部及び保護者の手の記載範囲・位置関係・組み合わせ方が、全体の構図における保護者の手指の描き入れ方を含め、共通し、かつ、A本件商品の絵に対するベルトを締める様子の拡大図の組み合わせ方やB「指2本分のゆとりが必要」及び「上下のベルトをしめる」との文字部分においても共通していること、他方で、C乳幼児の表情に若干の違いが見られるほか、D本件商品の着色の濃淡、Eベルトを締める様子の拡大図の大きさなど微細な点において相違していることが認められる。 上記@及びAの共通点については、前記ア(オ)で説示したとおり、これらを併せると創作性が認められる表現であるのに対し、上記CないしE等の相違点については、これらを併せても創作性は認められない。そうすると、被告挿絵5は、原告挿絵5の創作的な表現部分を再製し、これにより挿絵全体として原告挿絵5の表現上の本質的な特徴の同一性を維持するものである一方、新たな創作的表現を付加するものではないとみられる。 以上に加え、前示のとおり、被告挿絵が原告挿絵に依拠して作成されたものであることによれば、被告挿絵5は、原告挿絵5の複製に当たるというべきである。 (ウ) 被告挿絵6について 証拠(甲6、13)によれば、原告挿絵6と被告挿絵6とは、@温度計の簡略図の描き方、Aバスタブ、乳幼児の全身及び温度計の記載範囲・位置関係・組み合わせ方において共通し、かつ、B乳幼児の足を強調するマークやC「35±2℃」との数字・記号部分においても共通していること、他方で、D着色の仕方(赤色の有無を含む。)において相違し、Eバスタブの形に多少の違い、F乳幼児の表情や体型等に若干の相違点があることが認められる。 上記@ないしBの共通点については、前記ア(カ)で説示したとおり、これらを併せると創作性が認められる表現であるのに対し、上記DないしF等の相違点については、これらを併せても創作性は認められない。そうすると、被告挿絵6は、原告挿絵6の創作的な表現部分を再製し、これにより挿絵全体として原告挿絵6の表現上の本質的な特徴の同一性を維持するものである一方、新たな創作的表現を付加するものではないとみられる。 以上に加え、前示のとおり、被告挿絵が原告挿絵に依拠して作成されたものであることによれば、被告挿絵6は、原告挿絵6の複製に当たるというべきである。 ウ 小括 以上の次第で、被告挿絵4ないし6は、それぞれ、著作物たる原告挿絵4ないし6を複製したものということができる。 (3) 原告挿絵の著作者・著作権者について 証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば、原告挿絵は、プリモパッソが原告からの委託に基づき作成したものであるところ、その著作権はプリモパッソから原告に譲渡されたことが認められる。 そうすると、原告挿絵を創作した著作者はプリモパッソであり、著作権者は原告であるというべきである。 (4) 著作権侵害の成否について 前記(2)及び(3)によれば、被告が被告挿絵4ないし6を含む被告説明書を作成し、これを同封して本件商品を販売したことは、原告挿絵4ないし6に係る原告の複製権及び譲渡権を侵害したものというべきである。 (5) 著作者人格権侵害の成否について 前記(1)で説示したところによれば、被告説明文について原告説明文に係る著作者人格権侵害を認めることはできないし、また、前記(3)で説示したところによれば、原告挿絵については、プリモパッソが著作者であるから、原告の著作者人格権を侵害したものとは認められない。 2 差止請求及び廃棄・消去請求の当否について 前記前提事実及び弁論の全趣旨に前記1(4)を総合すると、@被告は、平成26年12月5日から平成27年3月16日までの間、被告挿絵4ないし6を含む被告説明書を同封して本件商品を販売し、これにより原告挿絵4ないし6に係る原告の複製権及び譲渡権を侵害したこと、A被告は、現在も、本件商品を販売していること、B被告は、被告挿絵4ないし6を含む被告説明書の使用による著作権侵害の成立を争っていることが認められる。 他方で、証拠(乙8)によると、被告が新たな説明書を作成したことはうかがわれるが、現時点で実際に、被告が本件商品を販売する際に被告説明書ではなく新説明書を同封していることを認めるに足りる証拠はない。また、被告説明書が廃棄されたことやその電磁的記録が消去されたことをうかがわせる証拠もない。 以上を総合すると、現時点においても、被告が、被告挿絵4ないし6を含む被告説明書を複製、頒布して、これにより原告挿絵4ないし6に係る原告の複製権及び譲渡権を侵害するおそれがあると認められる。 したがって、上記侵害のおそれを理由とする原告の被告に対する著作権法112条1項に基づく差止請求には理由があるというべきである。また、同条2項に基づく侵害の停止又は予防に必要な措置として、被告の占有に係る被告説明書のうち被告挿絵4ないし6の記載部分の廃棄又は抹消を求める請求及び被告挿絵4ないし6の電磁的記録の記録媒体からの消去を求める請求にも理由があるというべきである。 3 損害賠償請求について (1) 著作権侵害による著作権法114条2項に基づく損害について ア 前記1で認定、説示したところによれば、被告は、故意又は過失により、被告挿絵4ないし6を含む被告説明書を複製し、平成26年12月5日以降、これを同封して本件商品を販売し、その結果、原告の原告挿絵4ないし6に係る複製権及び譲渡権を侵害したと認められる。したがって、被告は、原告に対し、民法709条に基づき、この点に関する損害賠償責任を負う。 イ そこで、その損害について検討するに、原告は、被告が上記著作権侵害行為により本件商品の取扱説明書作成費用50万円を免れるという利益を受けたから、これが著作権法114条2項により原告が受けた損害の額と推定される旨主張する。 しかしながら、被告が説明書作成費用を免れるという利益を受けたからといって、その分原告が損害を受けたとみるべき合理的な根拠がないことは明らかであるから、著作権法114条2項に基づく推定の基礎を欠くというべきである。 もっとも、日本国内における本件商品の販売について原告と競合する被告が、上記のとおり本件商品の取扱説明書に関する原告の著作権を侵害している以上、これによる損害が全くないともいい難い。 そこで、前記1(2)で説示したところに照らしても、原告挿絵4ないし6及び被告挿絵4ないし6については、もともと商品の取扱説明書としての性質上、表現内容が限られているものであり、実際、原告挿絵4ないし6も、創作性の程度は低いといわざるを得ないことなどを考慮して、原告挿絵4ないし6に係る上記著作権侵害による損害は3万円と認めることが相当である。 (2) 弁護士費用相当損害について 弁論の全趣旨によれば、原告は、被告の前記著作権侵害行為により、これを理由とする損害賠償及び差止等を求める本件訴訟の提起・追行について原告訴訟代理人弁護士に委任することを余儀なくされたものであると認められ、その弁護士費用相当額の損害は、10万円と認めることが相当である。 (3) 小括 以上によると、原告は、被告の著作権侵害行為により、合計13万円の損害を受けたものというべきであり、これについて被告は原告に対して損害賠償責任を負うというべきである。 第4 結論 よって、原告の請求は、@被告挿絵4ないし6の記載を含む説明書の複製・譲渡の差止め、A被告挿絵4ないし6の廃棄又は抹消及びその電磁的記録の消去並びにB損害賠償金13万円及びこれに対する不法行為の後である平成27年5月31日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これらをいずれも認容し(なお、主文第2項及び第3項については、仮執行宣言を付するのは相当でないから、これを付さないこととする。)、その余の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 笹本哲朗 (別紙)被告挿絵目録 下記1の説明書(被告説明書)に記載されている下記2(1)ないし(6)の挿絵。 記1 題名 スイマーバの使い方 発行人 被告 発行年月日 平成26年12月5日ころ 記2 (1)被告挿絵1 <画像省略> (2)被告挿絵2 <画像省略> (3)被告挿絵3 <画像省略> (4)被告挿絵4 <画像省略> (5)被告挿絵5 <画像省略> (6)被告挿絵6 <画像省略> (別紙)被告説明文目録 下記1の説明書(被告説明書)に記載されている下記2(1)ないし(11)の文章。 記1 題名 スイマーバの使い方 発行人 被告 発行年月日 平成26年12月5日頃 記2 (1) 被告説明文1 【安全上の注意】 保護者の方へ、必ずお読みください。 必ず本ガイドを読んで大人の保護者の方が注意しながら正しくご使用ください。 ※図記号の説明:!記号は、必ず実行していただく「強制」を意味しています。 ○記号は、してはいけない「禁止」を意味しています。 警告 正しい取り扱いをしなければ、死亡または重傷を負う恐れがあります。 !生後18か月かつ体重11kgまでの赤ちゃん専用です。 ・スイマーバにあごが乗るようになってからご使用ください。 赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につく程度の水深で使用してください。 ・深い水深では、保護者の方が背が付く深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。 ・浅い水深での使用は、赤ちゃんの転倒や溺水の危険があります。 空気栓を確実に閉め、空気漏れがないか確認してください。 異常があればすぐに使用を中止してください。 ○救命用具として使用しないでください。 あごがスイマーバの穴から下にさがる状態で使用しないでください。 赤ちゃんの一人遊びは危険です。赤ちゃん一人での使用はしないでください。 ・必ず保護者の手が届く範囲でご使用ください。 本品は赤ちゃんが一人で使用することを想定したものではありません。 ・使用中は目を離さない様にして異常があればすぐに保護者が対応できる状況で使用して下さい。 注意 正しい取り扱いをしなければ、障害を負ったり物的損傷を受ける恐れがあります。 !ハンドポンプの部品が、赤ちゃんの口や目に入らないように使用・保管してください。 ○空気を入れすぎたり、高圧ポンプなどを使用しないでください。 ・破損の原因になります。外周部にシワが少し残るくらいが適量です。 炎天下に放置しないでください。 ・本体が柔らかくなる場合があります。 その場合は空気の追加を控えるか、少量にしてください。 岩角やくい、砂利、貝殻、ガラス片、金属片、木片など、尖ったものとの接触は避けてください。 タバコや火気に近づけないでください。 (2) 被告説明文2 【はじめに】 このたびはスイマーバ商品をご購入いただきありがとうございます。 製品パッケージの中に以下の内容があるかご確認ください。 1. うきわ首リング 2. ハンドポンプ 3. 日本語ガイド(本誌) (3) 被告説明文3 【使用上の注意】 ●本製品の内部構造は複雑なので、空気を入れて内圧が高い状態でひねったり、広げたりすると破損の原因になります。ていねいに取り扱ってくださ い。 ●本品使用時には、あらゆる油脂類は使用しないでください。本品の素材に影響を及ぼす以外に、油脂により滑りやすくなり事故につながる恐れがあります。 ●赤ちゃんの健康に少しでも心配のある方は、かかりつけの小児科医に本品で水遊びをしてもよいかご相談ください。肌がかぶれるなどのアレルギー症状がある場合は使用を中止してください。 (4) 被告説明文4 【お使いになる前に】 本品のご使用前に必ず本ガイドを最後まで読んで使用方法を守り、安全にお使いください。 ※本品はプレスイミングを体験するためのものであり、一般的なスイミングを習得するためのものではありません。 ※本品は命の維持や溺れることを防止するなどの救命用に作られたものではありません。 (5) 被告説明文5 【お手入れと保管】 スイマーバは中性洗剤で洗い、洗剤成分をぬるま湯でしっかり洗い流してください。それ以外の方法での洗浄、漂白は避けてください。洗剤成分が残っていると滑りやすくなり、使用中に赤ちゃんの体が抜け落ちる恐れがあります。 ◎保管上の注意:洗浄後は陰干しします。直射日光を避け、冷暗所、低湿度の場所で保管してください。 ◎廃棄上の注意:廃棄の際は、各地方自治体の廃棄区分に従ってください。 (6) 被告説明文6 【スイマーバの使い方】 【1】 使う前に、空気漏れがないか確認する @上側、下側の順に2か所の空気栓から空気を入れます。 ・手で触れて、空気の入り具合を確かめながら行ってください。 ・外周にシワが少し残るくらいが適量です。 ・少ない空気量での使用は危険です。 A空気が入ったら栓をしっかり差し込み、さらに本体内部に強く押し込んでください。 B水の中に60秒間沈めて、空気漏れがないか確認してください。 ●空気栓は栓と弁の二重構造になっていますが、弁は空気の急激な漏れを防ぐ補助弁で空気を完全に止めるものではありません。必ず栓をしっかり差し込んで使用してください。 ●栓がきついときは、少し濡らして差し込んでください。 (7) 被告説明文7 【2】水中で使う前に、試着して位置やサイズを確認する @スイマーバを両手で広げ、顔側(あごの下部分)から優しくつけて、首の後ろで上下の各ベルトをカチリと留めます。 Aスイマーバの上にあごがのり、頭とあごを支えているかを確認します。 B開口部の隙間からあごが落ちないようにSwimavaのロゴが顔側(あごの下)になるようにします。 ●本品は生後18ヶ月かつ体重が11 kg までの赤ちゃん専用です。 ●小さい赤ちゃんや、顔・頭・あごが小さい赤ちゃんは口元が水面に浸かったり、あごがスイマーバに乗らない場合は体が抜け落ちるおそれがあります。スイマーバにあごが乗るまでご使用を控えてください。 ●首回りが太く大人の指2本分のゆとりがない場合は、ご使用をやめてください。赤ちゃんの首が締め付けられる危険があります。 (8) 被告説明文8 【3】 バスタブの水温と水深を調整する 水温:水温が常に沐浴やお風呂など月齢にあった温度になるように調整してください。水温計を用意して5分ごとに測ることをお勧めします。 ●目安や、水温35度±2度の範囲です。30度以下の水や高温は避けてください。 水深:水深は、安全のため常に赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につくぐらいに調整してください。この水深は赤ちゃんが最も安全に動ける深さです。 ●深い水深では、保護者の方が背がつく深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。 ●浅い水深では、転倒の危険があるので使用しないでください。 (9) 被告説明文9 【4】 スイマーバを赤ちゃんに装着する 生後6か月までの赤ちゃん 最初は二人の大人が付き添います。一人が赤ちゃんを支えている間にもう一人が両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。 生後6か月以降の赤ちゃん・お座りができる赤ちゃん 大人一人でスイマーバを装着することができます。両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。 ●使用前に水の中に60秒間沈めて、空気漏れなどの異常がないか確かめてください。異常がある場合は使用しないでください。 ●使用中は首がしまりすぎないか、常に確認してください。 ●スイマーバを広げるときは下側のハンドルを持って広げないでください。 破損の原因になります。 ●スイマーバの下側のハンドルは赤ちゃんが握るためのものです。ハンドルが下方向(水中)になるように装着してください。 (10)被告説明文10 【5】 赤ちゃんをバスタブに入れる @バスタブの水抜き栓がしっかりと閉まっていることを確認します。食後を避けて機嫌の良いときに、赤ちゃんの脇を支えてゆっくりとバスタブに入れます。常に水温と水深を管理、調整してください。 A使用を終了するときは、二人の大人が付き添ってください。一人がタオルを広げ、もう一人が赤ちゃんを抱き上げてタオルを持った方にゆっくり渡します。手が空いた方がスイマーバをはずします。 ●装着中は保護者の手が届く範囲でご使用ください。 ●使用時間は必ず30分以内にします。 ●赤ちゃんを観察し、異常がないか?いつもと様子が違うか?楽しんでいるか?疲れているか?「もうバスタブから出たいよ。終わりたいよ。」というしぐさ、サイン、表情などを見逃さないでください。 ●いつもと違うなどの異常がある場合は、すぐに使用を中止してください。 (11)被告説明文11 ●赤ちゃんとスイマーバを楽しむための適切な使い方 ・赤ちゃんの機嫌がいいときに5分程度のご使用から始めましょう。 ・初めて水に入った赤ちゃんは泣くことがあります。初めは短い時間で様子を見ながらご使用ください。慣れてきたら機嫌や状態にあわせて使用時間を徐々に長くします。 ・できるだけ毎日決まった時間帯(お昼寝やお休み前にご使用になることをお勧めします。毎晩お休み時間の前にご使用になると赤ちゃんの体がほぐれ、ほどよい疲れでぐっすりと眠ることでしょう。(個人により反応に差があります) ・赤ちゃんが泣いたときは、異常がないか?機嫌が悪くはないか?眠くないか?湯温が熱すぎないか?みてください。また、赤ちゃんと目線を合せたり、肌を触れ合ってみてください。 ・使い始めて2週間ほどでお風呂の内側を蹴ったりして遊ぶようになります。ただし、水嫌いの赤ちゃんなど個々に差があり、反応は様々です。よく観察して赤ちゃんの状態や水温などにご注意ください。 (別紙)原告説明文目録 下記1の説明書(原告説明書)に記載されている下記2(1)ないし(11)の文章。 記1 題名 Swimava (日本語公式ガイド) 著作名義人 Swimava Japan (FUNAZAWA Co.,Ltd) 記2 (1)原告説明文1 【安全上の注意】 保護者の方へ、必ずお読みください。 必ず本ガイドを読んで大人の保護者の方が注意しながら正しくご使用ください。 ※図記号の説明:!記号は、必ず実行していただく「強制」を意味しています。 ○記号は、してはいけない「禁止」を意味しています。 △警告 正しい取り扱いをしなければ、死亡または重傷を負うおそれがあります。 !生後18ヶ月かつ体重11 kg までの赤ちゃん専用です。 ・スイマーバにあごがのるようになってからご使用ください。 赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につく程度の水深で使用してください。 ・深い水深では、保護者の方が背がつく深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。 ・浅い水深での使用は、赤ちゃんの転倒や溺水の危険があります。 空気栓を確実に閉め、空気漏れがないか確認してください。 異常があればすぐに使用を中止してください。 ○救命用具として使用しないでください。 あごがスイマーバの穴から下にさがる状態で使用しないでください。 赤ちゃんの一人遊びは危険です。赤ちゃん一人での使用はしないでください。 ・必ず保護者の手が届く範囲でご使用ください。 本品は赤ちゃんが一人で使用することを想定したものではありません。 ・使用中は目を離さないようにして、異変があればすぐに保護者が対応出来る状況で使用してください。 △注意 正しい取り扱いをしなければ、傷害を負ったり物的損傷を受けるおそれがあります。 !ハンドポンプの部品が、赤ちゃんの口や目に入らないように使用・保管してください。 ○空気を入れ過ぎたり、高圧ポンプなどを使用しないでください。 ・破損の原因になります。外周部にシワが少し残るくらいが適量です。炎天下に放置しないでください。 ・本体が柔らかくなる場合があります。その場合は、空気の追加を控えるか、少量にしてください。 岩角やくい、砂利、貝殻、ガラス片、金属片、木片など、尖ったものとの接触は避けてください。 タバコや火気に近づけないでください。 (2) 原告説明文2 【はじめに】 この度はスイマーバ商品をご購入いただきありがとうございます。 製品パッケージの中に以下の内容があるかご確認ください。 1.うきわ首リング 2.ハンドポンプ 3.ステッカー(浴室の壁面など、お使いになる場所の見えるところに貼ってください) 4.日本語公式ガイド(本紙) (3) 原告説明文3 【使用上の注意】 ●本品の内部構造は複雑なので、空気を入れて内圧が高い状態でひねったり、広げたりすると破損の原因になります。ていねいに取り扱ってください。 ●本品使用時には、あらゆる油脂類は使用しないでください。 本品の素材に影響を及ぼす以外に、油脂により滑りやすくなり事故につながる恐れがあります。 ●赤ちゃんの健康に少しでも心配のある方は、かかりつけの小児科医に本品で水遊び をしてもよいかご相談ください。肌がかぶれるなどのアレルギー症状が有る場合は使用を中止してください。 (4) 原告説明文4 【お使いになる前に】 本品のご使用前に必ず本ガイドを最後まで読んで使用方法を守り、安全にお使いください。 ※本品はプレスイミングを体験するためものであり、一般的なスイミングを習得するためのものではありません。 ※本品は命の維持や溺れることを防止するなどの救命用に作られたものではありません。 (5) 原告説明文5 【お手入れと保管】 スイマーバは中性洗剤で洗い、洗剤成分をぬるま湯でしっかり洗い流してください。それ以外の方法での洗浄、漂白は避けてください。洗剤成分が残っていると滑りやすくなり、使用中に赤ちゃんの体が抜け落ちるおそれがあります。 ◎保管上の注意:洗浄後は陰干しします。直射日光を避け、冷暗所、低湿度の場所で保管してください。 ◎廃棄上の注意:廃棄の際は、各地方自治体の廃棄区分に従ってください。 (6) 原告説明文6 【スイマーバの使い方】 【1】 使う前に、空気漏れがないか確認する @上側、下側の順に上下2ヶ所の空気栓から空気を入れます。 ・手で触れて、空気の入り具合を確かめながら行ってください。 ・外周にシワが少し残るくらいが適量です。 ・少ない空気量での使用は危険です。 A空気が入ったら栓をしっかり差し込み、さらに本体内部に強く押し込んでください。 B水の中に60秒間沈めて、空気漏れがないか確認してください。 ●空気栓は栓と弁の二重構造になっていますが、弁は空気の急激な漏れを防ぐ補助弁で空気を完全に止めるものではありません。必ず栓をしっかり差し込んで使用してください。 ●栓がきついときは、少しぬらして差し込んでください。 (7)原告説明文7 【2】水中で使う前に、試着して位置やサイズを確認する @スイマーバを両手で広げ、顔側(あごの下部分)から優しくつけて、首の後ろで上下の各ベルトをカチリと留めます。 Aスイマーバの上にあごがのり、頭とあごを支えているかを確認します。 B開口部の隙間からあごが落ちないようにSwimavaのロゴが顔側(あごの下)になるようにします。 ●本品は生後18ヶ月かつ体重が11kgまでの赤ちゃん専用です。 ●小さい赤ちゃんや、顔・頭・あごが小さい赤ちゃんは口元が水面に浸かったり、あごがスイマーバにのらない場合は体が抜け落ちるおそれがあります。スイマーバにあごがのるまでご使用を控えてください。 ●首回りが太く大人の指2本分のゆとりがない場合は、ご使用をやめてください。赤ちゃんの首が締め付けられる危険があります。 (8)原告説明文8 【3】 バスタブの水温と水深を調整する 水温:水温が常に沐浴やお風呂など月齢にあった温度になるように調整してください。水温計を用意して5分ごとに測ることをお勧めします。 ●目安は、水温35度±2度の範囲です。30度以下の水や高温は避けてください。 水深:水深は、安全のため常に赤ちゃんが足を伸ばしてちょうど底につくぐらいに調整してください。この水深は赤ちゃんが最も安全に動ける深さです。 ●深い水深では、保護者の方が背がつく深さ、且つ手の届く範囲内でご使用ください。 ●浅い水深では、転倒の危険があるので使用しないでください。 (9)原告説明文9 【4】 スイマーバを赤ちゃんに装着する 生後6ヶ月までの赤ちゃん 最初は二人の大人が付き添います。一人が赤ちゃんを支えている間に、もう一人が両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。 生後6ヶ月以降の赤ちゃん・お座りができる赤ちゃん 大人一人でスイマーバを装着することができます。両手でスイマーバを広げ、上下のベルトが赤ちゃんの頭の後ろにくるように優しく装着します。 ●使用前に水の中に60秒間沈めて、空気漏れなどの異常がないか確かめてください。異常がある場合は使用しないでください。 ●使用中は首がしまりすぎないか、常に確認してください。 ●スイマーバを広げるときは下側のハンドルを持って広げないでください。破損の原因になります。 ●スイマーバの下側のハンドルは赤ちゃんが握るためのものです。ハンドルが下方向(水中)になるように装着してください。 (10)原告説明文10 【5】 赤ちゃんをバスタブに入れる @バスタブの水抜き栓がしっかりと閉まっていることを確認します。食後を避けて機嫌の良いときに、赤ちゃんの脇を支えてゆっくりとバスタブに入れます。常に水温と水深を管理、調整してください。 A使用を終了するときは、二人の大人が付き添ってください。一人がタオルを広げ、もう一人が赤ちゃんを抱きあげてタオルを持った方にゆっくり渡します。手があいた方がスイマーバをはずします。 ●装着中は保護者の手が届く範囲でご使用ください。 ●使用時間は必ず30分以内にします。 ●赤ちゃんを観察し、異常がないか?いつもと様子が違うか?楽しんでいるか?疲れているか?「もうバスタブから出たいよ。終わりたいよ。」というしぐさ、サイン、表情などを見逃さないでください。 ●いつもと違うなどの異常がある場合は、すぐに使用を中止してください。 (11)原告説明文11 ●赤ちゃんとスイマーバを楽しむための適切な使い方 ・赤ちゃんの機嫌がいいときに5分程度のご使用から始めましょう。 ・初めて水に入った赤ちゃんは泣くことがあります。初めは短い時間で様子を見ながらご使用ください。慣れてきたら機嫌や状態にあわせて使用時間を徐々に長くします。 ・できるだけ毎日決まった時間帯(お昼寝やお休み前)にご使用になることをお勧めします。毎晩お休み時間の前にご使用になると赤ちゃんの体がほぐれ、ほどよい疲れでぐっすりと眠ることでしょう。(個人により反応に差があります) ・赤ちゃんが泣いたときは、異常がないか?機嫌が悪くはないか?眠くないか?湯温が熱すぎないか?みてください。また、赤ちゃんと目線を合わせたり、肌を触れ合ってみてください。 ・使い始めて2週間ほどでお風呂の内側を蹴ったりして遊ぶようになります。ただし、水嫌いの赤ちゃんなど個々に差があり、反応は様々です。よく観察して赤ちゃんの状態や水温などにご注意ください。 (別紙) 原告挿絵目録 下記1の説明書(原告説明書)に記載されている下記2(1)ないし(6)の挿絵。 記1 題名 Swimava (日本語公式ガイド) 著作名義人 Swimava Japan (FUNAZAWA Co.,Ltd) 記2 (1) 原告挿絵1 <画像省略> (2) 原告挿絵2 <画像省略> (3) 原告挿絵3 <画像省略> (4) 原告挿絵4 <画像省略> (5) 原告挿絵5 <画像省略> (6) 原告挿絵6 <画像省略> (別紙)説明文対比表1
(別紙)説明文対比表2 <省略> |
日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |