判例全文 line
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【事件名】ウェッブサイト表示画面の著作物性事件
【年月日】平成24年12月27日
 東京地裁 平成22年(ワ)第47569号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成24年11月20日)

判決
原告 A
訴訟代理人弁護士 小早川真行
被告 B
訴訟代理人弁護士 井上晋一


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、160万円及びこれに対する平成23年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、「大道芸研究会」と称する団体(以下、単に「大道芸研究会」という。)の元会員である原告が、原告が開設し、管理していた「大道芸研究会」と題するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)の別紙原告画面目録1ないし7記載の各画面(以下「本件各画面」と総称し、それぞれを「本件画面1」、「本件画面2」などという。)及びそのソースコード(HTMLソースコード)は、原告を著作者とする著作物であり、大道芸研究会の会員である被告が、別紙被告画面目録1ないし7記載の各画面(以下「被告各画面」と総称し、それぞれを「被告画面1」、「被告画面2」などという。)を作成し、自己の管理するウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。)に掲載した行為は、上記著作物について原告が保有する同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害する行為に該当し、仮にそうでないとしても、被告の上記掲載に至る一連の行為は原告の法的保護に値する利益を侵害する一般不法行為を構成する旨主張して、被告に対し、損害賠償の支払を求めた事案である。
2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)
(1) 当事者
ア 原告は、昭和60年に大道芸研究会の会員となった後、平成22年3月末日、大道芸研究会を退会した(甲15、弁論の全趣旨)。
イ 被告は、大道芸研究会の会員である。
(2) 本件各画面及びそのソースコード
ア 原告は、平成12年ころ、本件ウェブサイト(略)を開設し、管理するようになった(甲7、8、原告本人、弁論の全趣旨)。
イ 平成22年2月1日当時の本件ウェブサイトの画面構成は、本件各画面のとおりであった。
 本件各画面のソースコードには、別紙2−1記載のソースコード(以下「本件ソースコード」という。)が含まれている。
(3) 被告各画面及びそのソースコード
ア 被告は、平成22年2月1日、本件ウェブサイトのソースコード(本件ソースコードを含む。)を取り込み、新たな情報を追加するなどして、「大道芸研究会」と題する被告ウェブサイト(略)を開設し,管理している(被告本人、弁論の全趣旨)。
イ 平成22年2月19日当時の被告ウェブサイトの画面構成は、被告各画面のとおりであった。
 被告各画面のソースコードには、別紙2−2記載のソースコード(以下「被告ソースコード」という。)が含まれている。
3 争点
 本件の争点は、次のとおりである。
(1) 被告が被告ウェブサイトに被告各画面を掲載した行為についての同一性保持権侵害の成否(争点1)
ア 本件各画面に係る同一性保持権侵害の成否(争点1−1)
 具体的には、本件各画面が著作物に該当するか、被告が被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載した行為が、原告が保有する本件各画面の同一性保持権を侵害する行為に該当するか。
イ 本件ソースコードに係る同一性保持権侵害の成否(争点1−2)
 具体的には、本件ソースコードが著作物に該当するか、被告が被告ソースコードを作成した行為が、原告が保有する本件ソースコードの同一性保持権を侵害する行為に該当するか。
(2) 被告が被告ウェブサイトに被告各画面を掲載するに至る一連の行為についての一般不法行為の成否(争点2)
(3) 被告が賠償すべき原告の損害額(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(同一性保持権侵害の成否)について
(1) 原告の主張
ア 争点1−1(本件各画面に係る同一性保持権侵害の成否)について
(ア) 本件各画面は、原告が、掲載写真(画像)以外のレイアウト、デザイン、表題(タイトル)等の内容の全てを作成した。
 もともとウェブサイトの画面構成(デザイン・レイアウト)は、どこにどのような画像を載せるかなど、その選択の幅が広く、作成者の創作性が発揮されやすい。
 本件各画面は、別紙1−1記載のとおり(左側の番号は、本件各画面の番号を示す。)、それぞれの画面構成において原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸又は美術の範囲に属するものであるから、全体として、原告を著作者とする著作物に該当する。
(イ) 本件各画面と被告各画面とを対比すると、別紙1−2記載のとおり(左側の番号は、本件各画面及び被告各画面の番号を示す。)、被告各画面は、本件各画面の非本質的な部分が一部改変されたものであり、被告各画面から本件各画面の本質的な特徴を感得することができる。
 また、原告は、被告に対し、被告が本件各画面及び本件ソースコードを利用又は改変して被告各画面を作成することを許諾したことはない。
 そうすると、被告が被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載した行為は、原告の意に反して、本件各画面の本質的な特徴を維持しつつ、これを改変したものといえるから、本件各画面について原告が保有する同一性保持権(著作権法20条1項)の侵害行為に該当する。
イ 争点1−2(本件ソースコードに係る同一性保持権侵害の成否)について
(ア) 本件ソースコード(本件各画面のHTMLソースコード)は、原告が作成した。
 ソースコードは、画面構成と比べ、その特性上、その記述には選択の幅が相対的に狭いが、コンピュータに対する指令の組合せであっても、何十行という大きな範囲で見れば、どのような指令をどのような順序で使用するか、どのような要素を指令するかについて、選択の幅が広くなり、そこには作成者の創作性が発揮され得る。
 本件ソースコードは、別紙2−1記載のとおり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、全体として、原告を著作者とするプログラムの著作物(著作権法10条1項9号)に該当する。
(イ) 本件ソースコードと被告ソースコードとを対比すると、別紙2−2記載のとおり、被告ソースコードは、本件ソースコードの非本質的な部分が一部改変されたものであり、被告ソースコードから本件ソースコードの本質的な特徴を感得することができる。
 また、原告が、被告が本件各画面及び本件ソースコードを利用又は改変して被告各画面を作成することを許諾していないことは、前記ア(イ)のとおりである。
 そうすると、被告が被告ソースコードを作成した行為は、原告の意に反して、本件ソースコードの本質的な特徴を維持しつつ、これを改変したものといえるから、本件ソースコードについて原告が保有する同一性保持権(著作権法20条1項)の侵害行為に該当する。
(2) 被告の主張
ア 争点1−1(本件各画面に係る同一性保持権侵害の成否)について
(ア) 本件各画面は、原告が、マイクロソフト社のホームページ作成アプリケーションソフトであるFrontPage Express(以下「フロントページエクスプレス」という。)を用い、大道芸研究会の広報や会員から集めた情報や写真を配置して作成したものである。タイトルのフォントやテーブル枠のパラメーターを寄せ集めて配列し、データを適宜並べただけの本件各画面の画面構成は、ホームページ作成マニュアルの標準例に類似した初歩的かつ典型的なものであって、創作性はない。
 また、本件各画面に使用されているフォント、背景模様、アイコン等の素材は、フロントページエクスプレスに付属の素材や市販のCD、インターネットからの素材(フリー素材)を利用したものであり、原告の著作物ではない。
 さらに、掲載文章は「事実をそのまま表現したもの」であり、そもそも著作物ではなく、また、写真、投稿、事実のデータなども、原告の著作物ではない。
 したがって、本件各画面が原告を著作者とする著作物に該当するとの原告の主張は、理由がない。
(イ) 本件各画面が原告の著作物に該当しないことは、前記(ア)のとおりである。
 また、被告は、平成22年1月31日に行われた大道芸研究会の1月の例会で、原告から、本件ウェブサイトの更新及び引継ぎの要請を受けたので、被告ウェブサイトに本件各画面の背景及びアイコンをそのまま使い、大道芸研究会の広報の内容について必要な更新をして掲載したところ、同年2月17日に至り、原告から、「私の使っている素材は使わないで欲しい。」との連絡を受けたことから、背景及びアイコンを変更したものであり、原告の意に反して本件各画面を変更したものではない。その後、被告は、原告が本件ウェブサイトの引継ぎそのものを拒んでいることを認識し、同月20日、被告ウェブサイトを全面的に変更している。
 したがって、被告が被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載した行為が原告の本件各画面の同一性保持権の侵害行為に該当するとの原告の主張は、理由がない。
イ 争点1−2(本件ソースコードに係る同一性保持権侵害の成否)について
 本件ソースコード(HTMLソースコード)は、原告が自ら記述したものではなく、フロントページエクスプレスが、原告の作成した描画画面から自動的に変換生成したプログラム言語であり、そもそも、表現それ自体とは異なる「表現の手段」ないし「表現の方法」として著作権の保護の対象とはならないし(著作権法10条3項)、また、原告の思想又は感情が創作的に表現されているともいえない。
 したがって、被告が被告ソースコードを作成した行為が原告の本件ソースコードの同一性保持権の侵害行為に該当するとの原告の主張は、理由がない。
2 争点2(一般不法行為の成否)について
(1) 原告の主張
ア 仮に本件各画面及び本件ソースコードが著作物に該当しないとしても、本件各画面及び本件ソースコードは、原告が多大な時間と労力を費やして作成したものであるから、原告は、本件各画面及び本件ソースコードの利用について法的保護に値する利益を有している。
 被告が、本件各画面及び本件ソースコードをそのままコピーして、アップロードし、これを利用して被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載するに至った一連の行為は、他人の労力にただ乗りする行為であり、しかも、原告は、大道芸研究会で生じた内紛で対立関係にあった被告には原告のデータを一切使われたくないと強く思っていたことからすると、被告の上記一連の行為は、社会的に許容される限度を超えて原告の上記法的保護に値する利益を違法に侵害したものといえるから、原告に対する一般不法行為(民法709条)を構成する。
イ なお、原告が、被告に対し、本件ウェブサイトの更新及び管理業務の引継ぎを求めたり、本件各画面及び本件ソースコードを利用し、変更することについて許諾した事実は存在しない。
(2) 被告の主張
 原告は、本件ウェブサイトを大道芸研究会の活動の広報及び記録のため会に提供し、会から毎月制作費と実費相当額の支給を受けて、本件ウェブサイトの更新と管理の責務を負っていたが、それを怠っていた。
 原告は、平成22年1月31日に行われた大道芸研究会の1月の例会で、原告のパソコンが故障して、本件ウェブサイトの更新及び管理ができなくなったので誰か引き継いで欲しい旨発言したので、被告は、本件ウェブサイトの更新及び引継ぎを受諾し、本件ウェブサイトのソースコードを取り込み、改定事項や新しい活動データなどの大道芸研究会に関する情報を追加し、編集し直して、被告ウェブサイトを開設し、上記更新及び引継ぎの処理をした。
 ところが、前記1(2)ア(イ)のとおり、原告は、被告に対し、「私の使っている素材は使わないで欲しい。」との要求をし、さらには、被告ウェブサイト自体の削除の要求をするに至ったものであり、一旦本件ウェブサイトの更新及び引継ぎを被告に要請し、本件各画面及び本件ソースコードを利用して更新することを承諾しておきながら、一方的にこれを反古にしたものである。
 したがって、被告ウェブサイトに被告各画面を掲載するに至った被告の一連の行為が原告に対する一般不法行為を構成するとの原告の主張は、理由がない。
3 争点3(原告の損害額)について
(1) 原告の主張
ア 前記1(1)のとおり、被告は、本件各画面及び本件ソースコードについて原告が保有する同一性保持権を侵害したものであり、被告には故意又は過失があるから、原告に対し、上記同一性保持権侵害の不法行為に基づく損害賠償義務を負う。
 また、仮にこれが認められないとしても、前記2(1)のとおり、被告が被告ウェブサイトに被告各画面を掲載するに至る一連の行為は、原告に対する一般不法行為を構成するから、被告は、原告に対し、上記不法行為に基づく損害賠償義務を負う。
イ 原告が本件ウェブサイトの作成に期間として3、4か月、作業時間として数百時間かけたことなどからすると、前記アの被告の同一性保持権侵害行為によって原告が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は、160万円を下らない。
 また、前記アの被告の一般不法行為による原告の慰謝料額は、同様に、160万円を下らない。
ウ 以上によれば、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として160万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(不法行為の後)である平成23年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
(2) 被告の主張
 原告の主張は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(同一性保持権侵害の成否)について
(1) 争点1−1(本件各画面に係る同一性保持権侵害の成否)について
ア 本件各画面の作成等について
 前記争いのない事実等(2)と証拠(甲9、12(枝番を含む。)、14、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、@本件各画面は、平成22年2月1日当時、原告が管理する本件ウェブサイトに表示されていたウェブページであり、原告が、マイクロソフト社のホームページ作成ソフトウェアであるフロントページエクスプレスを使用して作成したものであること、A本件各画像の素材については、文字のフォント、ボタン等はフロントページエクスプレスに添付のものが、背景の画像はフロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものが、写真の画像は大道芸研究会の会員が撮影した写真がそれぞれ使用されていることが認められる。
イ 本件各画面の著作物性について
 原告は、本件各画面は、別紙1−1記載のとおり(左側の番号は、本件各画面の番号を示す。)、それぞれの画面構成(デザイン・レイアウト)において原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸又は美術の範囲に属するものであるから、全体として、原告を著作者とする著作物に該当する旨主張する。
(ア) 本件画面1について
a 本件画面1は、別紙原告画面目録1のとおり、画面上中央に「大道芸研究会」と太文字のタイトルを配置し、そのタイトルの下に更新内容の掲載欄を配置し、画面中央やや上に、「都合によりしばらくメールの送受信ができません。お急ぎの方は、下記へご連絡をお願いします。」と記載した文章及び横長の長方形の枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載し、画面下中央部に写真の画像を掲載し、全体の背景に花柄模様の画像を使用したものである。
 上記写真の画像は、大道芸研究会の会員のCが撮影した写真を素材とするものであり(甲9、原告本人)、また、前記ア認定のとおり、文字のフォントや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面1の画面構成は、画面上中央に「大道芸研究会」と黒い太文字のタイトルを、タイトルの下に更新内容の掲載欄を、画面中央やや上、赤色の四角い枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点、タイトルの背景は桃色で電話とFAX欄の背景は黄色である点、画面下中央部に大きく写真を貼っている点、背景に花柄模様の画像を使用している点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 そこで検討するに、著作権法が保護の対象とする「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)をいい、アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものには、同法による保護は及ばない。
 ところで、団体に関する各種の情報を掲載し、広報等の目的で開設された団体のウェブサイトのホームページ(ウェブページ)の画面構成においては、@団体名を画面の上に太文字で配置すること、A各ページの掲載内容を示すタイトル欄をページごとに設けること、B各記載内容にタイトルを設けること、Cタイトルを枠や図形の中に配置すること、D画面上に、各種の大きさの枠を設けてその中に、あるいは枠を設けずに、更新内容、団体の連絡先、団体の説明、団体の活動内容及び入会に関する情報等の団体のホームページとして必要な内容を掲載すること、E写真を中央に大きく掲載したり、小さめの写真複数枚を並べて掲載すること、F写真に近接して写真の説明等を配置すること、G画面内に他のページへのリンクの案内ボタンを複数並べて配列し、あるいは、単独で配置すること、H図柄の背景や単色の背景を使用すること、I文字・枠・背景に各種の色や柄を用いることは、いずれも一般的に行われていることであり(乙11ないし15、弁論の全趣旨)、ありふれた表現であるといえる。
 しかるところ、原告が本件画面1に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、上記@、D、E、H及びIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面1の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(イ) 本件画面2について
a 本件画面2は、別紙原告画面目録2のとおり、画面上中央に径の異なる2本の円弧とその両端を直線で結んで囲まれた図形の枠内に「ご挨拶」のタイトルを配置し、画面中央やや上、横長の長方形の枠の中に大道芸研究会の説明を記載するとともに右端に大道芸研究会のマークを配置し、画面中央の横長の長方形の枠内に「【大道芸研究会の主な活動】」のタイトルと、上から、「月例会」、「伝承館」、「資料の収集」、「創作活動」、「専門家による講義」、「出版物の発行」、「イベント参加」の7項目に関する内容を掲載し、画面下中央の横長の長方形の枠内に「《会費・会員種について》」のタイトル、その下に入会金、月会費等を掲載し、画面左側に縦に各ページへの案内ボタン(横長の楕円形の図形)を配置し、背景に縦方向の線で構成された模様がある画像を使用したものである。
 前記ア認定のとおり、文字のフォント、ボタンや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面2の画面構成は、画面上中央、扇形の枠内に「ご挨拶」と黒字のタイトルを、画面中央やや上、四角い枠内に当会の説明と右端に大道芸研究会のマークを、画面中央、赤色の枠と黄色い背景に「大道芸研究会の主な活動」と題し、月例会、伝承館、資料の収集、創作活動、専門家による講義、出版物の発行、イベント参加の7項目を掲載した点、画面下中央、赤色の枠と黄色い背景に「会費・会員種について」と黒字のタイトルを、その下に入会金、月会費を掲載した点、画面左側縦に各ページへの案内ボタンを配置した点、背景に小豆色で所々瓢箪のイラストがある画像を使用した点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面2に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bAないしD、GないしIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面2の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(ウ) 本件画面3について
a 本件画面3は、別紙原告画面目録3のとおり、画面上中央の横長の長方形の枠内に「月例会」のタイトルを配置し、画面中央やや上の横長の長方形の枠内に月例会のお知らせ、日時、会場、会費などの内容の掲載、画面中央に径の異なる2本の円弧とその両端を直線で結んで囲まれた図形の枠の中に「ようこそ」と書いてある例会場への案内ボタン、画面中央やや下の横長の長方形の枠内に「プログラム」と題し、「発声練習」、「実技研修」、「特別講座」、「事務局だより」の4項目に関する内容を掲載し、画面中央下の横長の長方形の枠内に「<大道芸研究会事務局>」等と題し、電話番号、FAX番号、URLの内容を掲載し、画面左側に縦に各ページへの案内ボタン(横長の楕円形の図形)を配置したものである。
 前記ア認定のとおり、文字のフォント、ボタンや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面3の画面構成は、画面上中央、赤色の四角い枠内に「月例会」と黒字のタイトルを、画面中央やや上、緑色の四角い枠内に月例会のお知らせ、日時、会場、会費などを掲載した点、画面中央、扇形の枠の中に「ようこそ」と書いてある例会場への案内ボタンを、画面中央やや下、黒色の四角い枠内に「プログラム」と題し、「発声練習」、「実技研修」、「特別講座」、「事務局だより」の4項目を掲載した点、画面中央下、黄色の四角い枠内に「大道芸研究会事務局」と題し、電話番号、FAX番号、URLを掲載し、画面左側縦に各ページへの案内ボタンを配置した点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面3に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bAないしD、G及びIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面3の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(エ) 本件画面4について
a 本件画面4は、別紙原告画面目録4のとおり、画面上中央に、径の異なる2本の円弧とその両端を直線で結んで囲まれた図形の枠の中に「月報」のタイトルを配置し、画面左側の上から、「インターネットHP更新のお知らせ」、「私の庭場(143)」、「イベント出演情報」、「イベント出演報告」、「事務局だより」を配置し、画面下よりやや上の長方形の枠内に「◎忘年会のお知らせ◎」のタイトル、その下に日時、会場、会費、受付を掲載し、画面下中央に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載し、画面左側に縦に各ページへの案内ボタン(横長の楕円形の図形)を配置したものである。
 前記ア認定のとおり、文字のフォント、ボタンや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面4の画面構成は、画面上中央、扇形の枠の中に「月報」と黒字のタイトルを、画面左側の上から、紫色の枠内に「インターネットHP更新のお知らせ」を、青色と緑色の枠内に「私の庭場(143)」>E氏の出来事を、赤色の枠内に「イベント出演情報」を、青色の枠内に「イベント出演報告」>イベントの日時、場所、演目を、緑色と紫色の枠内に「事務局だより」を配置した点、画面下よりやや上、赤色の四角い枠と黄色い背景に「◎忘年会のお知らせ◎」と黒字のタイトル、その下に日時、会場、会費、受付を掲載した点、画面下中央、大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点、画面左側縦に各ページへの案内ボタンを配置した点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面4に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bAないしD、GないしIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面4の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(オ) 本件画面5について
a 本件画面5は、別紙原告画面目録5のとおり、画面上中央に、径の異なる2本の円弧とその両端を直線で結んで囲まれた図形の枠の中に「耳寄り」のタイトルを配置し、画面上中央のタイトルのすぐ下に「どなたでもご覧いただけるイベントです」と記載し、画面中央やや上、横長の長方形の枠内に「《千葉県立房総のむら「お正月」のイベント》」のタイトル、その下に日時、会場、交通、演目、問合せの内容を掲載し、画面右下に横長の長方形の枠内に大道芸研究会事務局への連絡先を掲載し、画面左側に縦に各ページへの案内ボタン(横長の楕円形の図形)を配置したものである。
 前記ア認定のとおり、文字のフォント、ボタンや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面5の画面構成は、画面上中央、扇形の枠の中に「耳寄り」と黒字のタイトル、画面上中央、タイトルのすぐ下に「どなたでもご覧いただけるイベントです」と表示した点、画面中央やや上、桃色の四角い枠と黄色い背景に<千葉県立房総のむら「お正月」のイベント>と黒字のタイトル、その下に日時、会場、交通、演目、問合せを掲載した点、画面右下、緑色の四角い枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点、背景に薄緑色と白色のチェック柄の画像を使用した点、画面左側縦に各ページへの案内ボタンを配置した点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面5に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bAないしD、GないしIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面5の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(カ) 本件画面6について
a 本件画面6は、別紙原告画面目録6のとおり、画面上中央の額縁の様な枠内に「図書館」のタイトルを配置し、タイトルの下に横長の長方形の枠内に「《大道芸研究会・発刊物のご案内》」のタイトルとその下に発刊物名、金額、掲載演目の内容を記載し、その下の横長の長方形の枠内に「◎下記には、「日本の大道芸」及び」で始まる注意文を記載し、その下に枠線内に出版物又はビデオ・CD全96品のタイトル、著者、価格、発行又は発売元、連絡先、品物の内容等の説明内容を記載し、画面下中央に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載し、背景に縦方向の線で構成された模様がある画像を使用したものである。
 前記ア認定のとおり、文字のフォント、ボタンや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面6の画面構成は、画面上中央、額縁の様な枠内に「図書館」と黒字のタイトルを、画面上タイトルの下、赤色の四角い枠線内に<大道芸研究会・発刊物のご案内>発刊物名、金額、掲載演目を掲載した点、画面上<大道芸研究会・発刊物のご案内>の下、赤色の四角い枠と黄色い背景に◎下記には、「日本大道芸」および〜と注意文を、その注意文を記載した欄の下から4ページ目の画面下までオレンジ色の枠線内に出版物もしくはビデオ・CD全96品のタイトル、著者、価格、発行もしくは発売元、連絡先、品物の内容説明を掲載した点、4ページ目の画面下中央、大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点、背景に縦に模様の入った肌色の画像を使用した点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面6に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bAないしD、H及びIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面6の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(キ) 本件画面7について
a 本件画面7は、別紙原告画面目録7のとおり、画面上中央の横長の長方形の枠内に「大道芸研究会・写真集」のタイトルを配置し、画面上中央、タイトルの下から画面下中央まで写真を縦2列に掲載し、それぞれ写真の下にコメントを掲載し、背景に濃い色の壁紙を使用したものである。
 前記ア認定のとおり、上記写真の画像は、大道芸研究会の会員が撮影した写真を素材とするものであり、また、前記ア認定のとおり、文字のフォントや背景の画像は、フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから、これらの素材自体は、原告の著作物であるとはいえない。
b 原告は、本件画面7の画面構成は、画面上中央、桃色の四角い枠と黄色い背景に「大道芸研究会・写真集」と黒字のタイトルを表示した点、画面上中央、タイトルの下から2ページ目の画面下中央まで写真を縦2列にして貼っている点、それぞれ写真の下にコメントを掲載した点、背景に黒色の壁紙を使っている点において、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、画面全体として創作性がある旨主張する。
 しかしながら、原告が本件画面7に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は、前記(ア)bA、E、F、H及びIのとおり、団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては、一般的なものであって、ありふれたものであり、表現上の創作性があるものと認めることはできない。また、原告が挙げる本件画面7の色合いの点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、モノクロの書証しか提出されていない。)。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
(ク) 小括
 以上によれば、本件各画面には、原告主張の表現上の創作性が認められないから、本件各画面が全体として著作物に該当するとの原告の主張は、理由がない。
ウ まとめ
 以上のとおり、本件各画面は原告の著作物に該当するものと認められない。
 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本件各画面に係る同一性保持権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
(2) 争点1−2(本件ソースコードに係る同一性保持権侵害の成否)について
ア 本件ソースコードの著作物性について
 原告は、本件ソースコードは、別紙2−1記載のとおり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、全体として、原告を著作者とするプログラムの著作物(著作権法10条1項9号)に該当する旨主張する。
 そこで検討するに、プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには、プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され、その作成者の個性が表れていることが必要であると解される。
 しかるところ、本件ソースコードは、原告がフロントページエクスプレスを使用して本件各画面を作成するに伴ってそのソフトウェアの機能により自動的に生成されたHTMLソースコードであって、原告自らが本件ソースコードそれ自体を記述したものではないこと(原告本人、弁論の全趣旨)からすると、本件ソースコードの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現され、その個性が表れているものとは認められない。
 したがって、原告の上記主張は、理由がない。
イ まとめ
 以上のとおり、本件ソースコードは原告の著作物に該当するものと認められない。
 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本件各画面に係る同一性保持権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
2 争点2(一般不法行為の成否)について
 原告は、@本件各画面及び本件ソースコードは、原告が多大な時間と労力を費やして作成したものであるから、原告は、本件各画面及び本件ソースコードの利用について法的保護に値する利益を有している、A被告が、本件各画面及び本件ソースコードをそのままコピーして、アップロードし、これを利用して被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載するに至った一連の行為は、他人の労力にただ乗りする行為であり、しかも、原告は、大道芸研究会で生じた内紛で対立関係にあった被告には原告のデータを一切使われたくないと強く思っていたことからすると、被告の上記一連の行為は、社会的に許容される限度を超えて原告の上記法的保護に値する利益を違法に侵害したものといえるから、原告に対する一般不法行為を構成する旨主張する。
(1) 判断の基礎となる事実
 前記争いのない事実等、前記1(1)アの事実、証拠(甲6ないし9、12、13、15ないし17、乙1、2、5ないし8、10、16ないし22、26ないし28(枝番のあるものは枝番を含む。)、証人D、原告本人、被告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
ア 本件ウェブサイトの開設及び管理
(ア) 原告は、昭和60年に、日本古来から伝わる大道芸を学ぶ会として結成された大道芸研究会に入会した。大道芸研究会は、会員相互の親睦、大道芸の技芸向上等を目的として、会員による技芸の練習、研修、研究、指導、各種イベントでの技芸者派遣等の活動を行っていた。
 原告は、平成12年ころ、大道芸研究会の活動等の情報を発信するために大道芸研究会のウェブサイトを立ち上げることにした。
 原告は、パソコンに関する知識が乏しかったことから、パソコン教室に通うなどした上、マイクロソフト社のホームページ作成ソフトウェアであるフロントページエクスプレスを用いて長時間かけてホームページを作成し、原告の夫が契約していたプロバイダのサーバー上にアップロードして、本件ウェブサイトを開設した。
 以後、本件ウェブサイトは、大道芸研究会の公式ホームページとして、大道芸研究会及びその活動状況の紹介、会員の勧誘、月例会の案内等会員に対する連絡事項の伝達などに利用されるようになった。
(イ) 原告は、本件ウェブサイトの開設以来、掲載する情報を適宜最新のものに更新するなどして本件ウェブサイトを管理していた。一方で、原告は、大道芸研究会から、会員が支払った会費等の収入の中から、上記管理費用(本件ウェブサイトのプロバイダに対するホームページアカウント料を含む。)として月額735円を受領していた。
イ 大道芸研究会の内紛及び原告の休会
(ア) 平成21年当時、大道芸研究会は、約60名の会員で構成され、会長、副会長、会計等の役員、6名の運営委員からなる運営委員会及び事務局が置かれており、原告は、副会長かつ運営委員であった。
 平成21年12月ころ、会の会計に使途不明金がある、各種イベントの主催者からの技芸者の派遣要請に対する運営委員会による派遣会員の人選基準が不明朗であるなどとして運営委員とその他の会員との関係が悪化し、平成22年1月10日、運営委員会は、会の解散を可決した。
(イ) 平成22年1月31日に開催された大道芸研究会の1月の例会(月例会)において、事務局長から大道芸研究会を解散する旨の議案が提出されたが、会員の反対多数で否決されたため、大道芸研究会は会として存続することになった。
 他方で、会計兼務の事務局長を含む4名の運営委員は退会し、原告は副会長を辞任して休会する意思を表明した。
 会員のD(以下「D」という。)は、原告が休会するのであれば大道芸研究会のホームページの更新はどうするのかと原告に質問したところ、原告は、原告のパソコンが壊れており、更新することができない旨述べ、また、休会中に更新する意向も示さなかった。
 そこで、D又は他の会員が、パソコンに詳しい会員の被告に大道芸研究会のホームページの更新を依頼してはどうかと提案し、被告がその場で受諾したため、被告が、「HP担当」として原告に代わって大道芸研究会のホームページの運営管理を行うことが正式に決まった。もっとも、その際、原告と被告との間で更新の具体的な方法について協議することはなかった。
 その後、上記例会に引き続き、会員による新年会が開催され、原告も、これに参加した。
ウ 被告ウェブサイトの開設から原告の退会に至る経緯
(ア) 被告は、前記イ(イ)の1月の例会において被告が原告に代わって大道芸研究会のホームページの運営管理を担当するに至った経緯及び上記例会における原告の言動等から、大道芸研究会のホームページを更新するに際し、本件ウェブサイトのウェブページを利用することが原告の意に反するものではないと考え、また、原告のパソコンが壊れているのであれば、原告から本件ウェブサイトに係るデータを直接入手することはできないものと考えたことから、平成22年2月1日、本件ウェブサイトのウェブページから、本件各画面の画像データ及び本件ソースコードをそのままダウンロードして自己のパソコンに取り込み、被告の契約しているプロバイダのサーバー上にアップロードした上で、これを基に一部必要な範囲で内容を変更し、大道芸研究会のホームページとして被告ウェブサイトを開設した。
(イ) 被告は、平成22年2月2日、原告に対し、被告ウェブサイトを開設したが、検索エンジンで「大道芸研究会」を検索しても被告ウェブサイトではなく、本件ウェブサイトが表示されてしまうため、被告ウェブサイトが表示されるように原告の協力を求める旨(乙18)を記載したはがきを送付したところ、原告は、そのころ、被告に対し、電話で、本件ウェブサイトを削除する方法で対応すると回答した。
(ウ) 原告は、平成22年2月17日、被告に対し、被告ウェブサイトについて、原告のホームページを使うのをやめてもらいたい旨述べて抗議をしたため、被告は、同日中に、本件各画面中の文字のフォント、アイコン、背景画像や写真の配置等を変更して被告各画面のとおりとした。
 原告は、同月18日、他の会員に対しても被告ウェブサイトについて抗議をした。被告は、同月19日に出張先でその抗議の事実を知ったため、同月20日に出張から帰った後、被告ウェブサイトの画面構成及び内容を被告各画面のものから大幅に変更した。
 その後、原告は、同年3月末日、大道芸研究会を退会した。
(2) 検討
ア 前記(1)の認定事実によれば、被告は、本件ウェブサイトのウェブページから、本件各画面の画像データ及び本件ソースコードをそのままダウンロードして自己のパソコンに取り込んで、これらをアップロードして、被告ウェブサイトを開設し、その後、本件各画面及び本件ソースコードを利用して被告各画面を作成し、被告ウェブサイトに掲載したことが認められる。
 そこで検討するに、著作権法は、著作物の利用について、一定の範囲の者に対し、一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに、その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で、著作権の発生原因、内容、範囲、消滅原因等を定め、独占的な権利の及ぶ範囲、限界を明らかにしていることに照らすならば、同法所定の著作物に該当しないものの利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁判所平成23年12月8日第一小法廷判決民集65巻9号3275頁参照)。
 これを本件についてみるに、本件各画面及び本件ソースコードが原告を著作者とする著作物に該当しないことは前記1(1)及び(2)において判示したとおりであるところ、原告が主張する本件各画面及び本件ソースコードの利用についての利益は、著作権法が規律の対象とする独占的な利用の利益をいうものにほかならないから、原告が多大な時間と労力を費やして本件各画面及び本件ソースコードを作成したとしても、被告の上記一連の行為は、原告に対する不法行為を構成するものとみることはできないというべきである。
イ また、仮に原告が主張する本件各画面及び本件ソースコードの利用についての利益が法的保護に値する利益であると解し得るとしても、前記(1)の認定事実によれば、本件ウェブサイトは、大道芸研究会の活動等の情報を発信するための大道芸研究会のホームページとして開設され、原告が大道芸研究会の会員の会費等から管理費用を受領して管理していたのであるから、原告は、大道芸研究会の会員のために本件ウェブサイトを開設・管理していたものといえるものであり、原告が自己のパソコンの故障等により本件ウェブサイトのウェブページの更新ができない状況となった場合に、他の会員が本件ウェブサイトのウェブページについてその画面やソースコードを利用して大道芸研究会の活動等の情報を最新のものに更新することが社会的に許容される限度を超えるものとみることはできない。
 そして、前記(1)認定の事実関係の下においては、被告が、平成22年1月31日に開催された大道芸研究会の1月の例会において被告が原告に代わって大道芸研究会のホームページの運営管理を担当するに至った経緯及び上記例会における原告の言動等から、同年2月1日に大道芸研究会のホームページを更新するに際し、本件ウェブサイトのウェブページを利用することが原告の意に反するものではないと考えたことは、被告が大道芸研究会の解散に関する議決において原告と異なる立場を採ったことを考慮してもなお、特段不合理であると認めることはできないし(なお、原告が、上記例会において、被告には本件ウェブサイトに係る原告のデータを一切使われたくないと強く思っていたことを表明した事実はうかがわれない。)、その後、被告が、同月17日に、原告から直接電話で抗議を受けて、同日のうちに本件各画面中の文字のフォント、アイコン、背景画像や写真の配置等を被告各画面のとおり変更し、さらには、同月20日に被告ウェブサイトの画面構成及び内容を被告各画面のものから大幅に変更するに至った経緯に照らすならば、前記ア認定の被告の一連の行為が社会的に許容される限度を超える違法な行為であると認めることはできない。
ウ 以上の次第であるから、被告の一連の行為が原告に対する一般不法行為を構成するとの原告の主張は、理由がない。
 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の上記一般不法行為の成立を前提とする不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
3 結論
 以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 大鷹一郎
 裁判官 高橋彩
 裁判官 石神有吾


(別紙省略)
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