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【事件名】焼結機設計図の複製事件(2) 【年月日】平成22年5月27日 知財高裁 平成22年(ネ)第10020号 損害賠償・損害賠償反訴請求事件 (原審東京地裁平成21年(ワ)第33458号、同第37278号) (口頭弁論終結日 平成22年5月11日) 判決 控訴人(原審反訴被告) 株式会社イー・ピー・ルーム 被控訴人(原審反訴原告) 住石マテリアルズ株式会社 訴訟代理人弁護士 冨永敏文 同 尾原央典 主文 1 本件控訴を棄却する。 ただし、控訴人の本訴請求に係る訴えの取下げに基づき、原判決主文第1項を取り消す。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の反訴請求を却下する。 3 訴訟費用は、第1、第2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 本件は、控訴人(以下「反訴被告」という場合がある。)が、被控訴人(以下「反訴原告」という場合がある。)との間で放電焼結機及びワークローダーを製造納入する旨の契約を締結し、放電焼結機の設計図等の原図を反訴原告に送付したところ、反訴原告が原図を複製し、第三者に頒布して放電焼結機を製造させ、反訴原告名で販売したと主張して、反訴原告に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴を提起し、反訴原告が、反訴被告が提起した本訴に係る訴えは、反訴原告・反訴被告間の関連訴訟の確定判決において認められなかった請求と実質的に同一の請求を行うものであるから、反訴被告による本訴の提起及び維持は、反訴原告に対する不法行為に当たると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金21万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成21年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める反訴を提起した事案である。 原判決は、本訴について、反訴被告が本訴に係る訴えを提起することは、訴権の濫用に当たり許されず、法律的根拠を欠き不適法であるとして、その請求に係る訴えを却下し、反訴について、反訴被告は、その主張する権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながらあえて本訴を提起し、維持したものと認められ、反訴被告による本訴の提起及び維持は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであるから、反訴原告に対する不法行為を構成するとして、反訴請求を全部認容した。反訴被告は、控訴を提起し、当審において、本訴請求に係る訴えを取り下げ、控訴の趣旨記載の判決を求めた。 なお、以下、略語については、当裁判所も原判決と同一のものを用いる。 1 前提となる事実 原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」、「2 前提となる事実」(原判決2頁19行目から22頁17行目まで)を引用する。 2 当事者の主張 次のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」、「4 反訴についての当事者の主張」(原判決24頁11行目から25行目まで)を引用する。 原判決24頁25行目の後に行を改めて次のとおり挿入する。 「ウ 反訴原告は、@反訴被告が特許権を有していた放電焼結機について、これに精通する訴外会社の従業員を引き抜き、A反訴被告が放電焼結機の営業に供するために所有していた図面原紙一式を反訴被告から借り受け、返還せず、B反訴被告名称欄を反訴原告名称欄に改変して複製し、第三者に頒布して放電焼結装置を製造させ、販売する行為を行った。反訴原告の上記各行為は、不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争行為(「不正取得」、「不正使用」行為)に該当する。 ところで、前訴事件C、前訴事件C控訴事件、前訴事件D、前訴事件E、前訴事件F、前訴事件F控訴事件、前訴事件G、前訴事件G控訴事件、前訴事件H、前訴事件H控訴事件、前訴事件I、前訴事件I控訴事件、前訴事件J、前訴事件J控訴事件、前訴事件K、前訴事件K控訴事件及び前訴事件Lの各判決(以下、総称して「前訴各判決」という。)は、反訴原告の「不正取得」、「不正使用」について判断されていない。したがって、反訴被告が、本訴を提起し、維持したことは、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く、濫用訴訟であるとはいえない。 反訴原告が、不正競争防止法に違反する行為をしながら、反訴被告に対し、弁護士費用の支払を請求することは、失当である。 エ したがって、反訴請求に係る訴えは却下されるべきである。」 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、反訴原告の反訴請求を正当として認容すべきと判断するものであり、その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」、「2 反訴について」の(1)から(4)まで(原判決27頁18行目から28頁26行目まで)のとおりであるから、引用する。 原判決28頁13行目の後に行を改めて次のとおり挿入する。 「これに対し、反訴被告は、前訴各判決は、反訴原告の行為が不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争行為に該当するか否かの争点について、判断したものではないから、反訴被告が、本訴を提起したことが、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く濫用訴訟であるとはいえず、不法行為を構成しない、と主張する。 しかし、反訴被告の主張は、以下のとおり、理由がない。すなわち、 ア 反訴被告の提起した本訴は、反訴被告との契約に違反する反訴原告の行為が債務不履行を構成すると主張して、損害賠償金の支払を求めた請求であって、不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争行為を構成すると主張して、損害賠償金の支払を求めた請求ではないこと、そして、本訴は既に訴えの取下げによって終了していること、このような経緯に照らすと、反訴原告の行為が不正競争防止法所定の不正競争行為に該当することを前提とする請求が、新たな請求原因に基づくものであるとしても、反訴被告の主張は、その主張自体失当である。 イ 不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争行為に該当することを理由として損害賠償金の支払を求めた請求については、前訴事件C及び前訴事件C控訴事件において、これと同一の事実主張を基礎とする反訴被告の不法行為に基づく請求が棄却され、敗訴判決が確定している。したがって、仮に、本訴は、反訴原告の行為が不正競争防止法所定の不正競争行為に該当するという新たな請求原因に基づく請求を含むものと解したとしても、同一の主張事実を前提とする実質的に同一の紛争を蒸し返すものであることに変わりはない。 その他、反訴被告は縷々主張するが、いずれも理由がない。したがって、反訴被告の上記主張は是認できない。」 2 以上のとおり、反訴原告の反訴請求は理由があり、原判決は相当である(ただし、当審において、反訴被告が本訴請求に係る訴えを取り下げたことにより、原判決主文第1項は失効した。)。よって、反訴被告の控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 齊木教朗 裁判官 武宮英子 |
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