判例全文 line
line
【事件名】“パチンコ攻略法”雑誌広告事件
【年月日】平成22年5月12日
 大阪地裁 平成20年(ワ)第5968号

判決


主文
1 被告らは、原告に対し、連帯して76万9000円及び内金17万5000円に対する平成19年4月11日から、内金59万4000円に対する同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、原告に生じた費用の10分の7と被告らそれぞれに生じた費用の各10分の7を原告の負担とし、原告に生じた費用の20分の3と被告株式会社Aに生じた費用の10分の3を同被告の負担とし、原告に生じた費用の20分の3と被告株式会社Bに生じた費用の10分の7を同被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
 被告らは、原告に対し、連帯して255万円及び内金35万円に対する平成19年4月11日から、内金220万円に対する同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、被告株式会社Aの発行した雑誌に掲載された広告を見て、2件の広告主に連絡を取り、パチンコ攻略法(以下「攻略法」という。)の情報を購入したところ、いずれも虚偽の内容であったとして、同被告及び当該広告を当該雑誌に提供した広告代理店である被告株式会社Bに対し、過失の不法行為による損害賠償請求権に基づき、合計255万円及びこれに対する最終の損害発生日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告は昭和56年3月8日生まれの男性である。
 被告Aは、書籍・雑誌の出版及び販売等を目的とする株式会社である。
 被告Bは、広告、宣伝に関する企画及び制作等を目的とする株式会社である。
(2) 被告Aは、平成19年3月24日ころ、「C5月号」(以下「本件雑誌」という。)を発行した。本件雑誌には、被告Bが広告代理店として提供した、以下の広告が掲載されていた。
ア DことEの広告(以下「D広告」という。)
 別紙1のとおりであり、「全国ホール派遣メンバー大募集」、「ギャンブルではありません。仕事として稼いでください。」、「日額10万円以上、月額100万円以上」などとの広告を掲載して、パチンコ台のメーカーやパチンコ店の依頼で行うものとして、いわゆる打ち子募集の広告をしていた。
イ 株式会社F(以下、Dと併せて「Dら」という。)の広告(以下「F広告」といい、D広告と併せて「本件各広告」という。)
 別紙2のとおりであり、Fの会員がパチコンでもうけたとの体験者の談話が記載されているほか、「F会員に直撃!!爆裂体験報告!私たち攻略法で相当勝ってます!」、「今まで普通に打ってた日々が無駄に思える」、 「やはり本物の攻略法は凄かった! 」、 「30連荘直撃確定!!!さらに62箱93,485玉出た!!!」、「確変モード継続率 驚異の98.2%!!!!!」などと記載し、応募者の中から抽選で77名に無料で攻略法を提供し、抽選で外れた人には1万円をプレゼントすると広告していた。
2 争点
(1) 原告は、Dらから金銭を詐取されたか(詐欺被害の有無)
(2) 被告Bが本件各広告を提供し、被告Aが本件雑誌に掲載したことにつき、過失があるか(被告らの過失の有無)
(3) 被告らの過失と原告の損害との間に因果関係はあるか(因果関係の有無)
(4) 過失相殺の有無及び割合
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(詐欺被害の有無)について
(原告の主張)
ア パチンコは個々のパチンコ台の釘の配置や角度、遊戯者の打ち方、遊戯に投じる金額や時間、パチンコ台に組み込まれて電磁的に管理されている回転式の絵柄の組み合わせなどの複合的な要因により出球の数が変動する遊技機である。つまり、出球の状況は偶然性が高く、特定の操作方法により確実に球が出るということはない。
イ Dによる詐取
(ア) 原告は、D広告を見て、平成19年4月3日、その広告に記載されていたDの電話番号に電話をかけた。
 その後、電話で、D従業員のGと名乗る人物から原告に電話があり、打ち子の電話面接として氏名住所などいくつかの質問を受け、システムの説明を受けた。その概要は、Dが指示するパチンコ台でパチンコを行い、出玉換金額の50パーセントを顧客の取り分とし、50パーセントをDの取り分とする、パチンコ台は、通常は大当たりの確率が400分の1や360分の1のところ、100分の1になっている台をDが指示し、その台で打つので、必ず大当たりする、というものであった。
(イ) 原告は、平成19年4月9日、Gから、打ち子として採用するとの電話連絡を受けた。打ち子が出玉を持ち逃げしないように大学生のバイトの監視員を雇っているが、現在大阪周辺では監視員のいるパチンコ店がなく、三重県ならあるので、1か月間、三重県に出向いてやってくれないかということだった。原告は仕事があるので断ったところ、監視員のいないパチンコ店で打ってもらう方法があるが、監視する代わりに保証金を振り込んでもらうというシステムになっていると言われ、保証金はコースによって異なり、Rコースが26万8000円、Sコースが51万1000円と言われた。そして、打ち子の活動によるDのもうけが保証金の2倍になった時点で保証金は返金してくれるということであった。
 そこで同日、原告は、Gの上記説明を信頼してRコースを選択し、指示された銀行口座へ26万8000円を振り込み、翌日にはファクシミリを用いてDと契約書を取り交わした。
(ウ) 平成19年4月10日午後7時から打ち子として活動できるということだったので、同日午後5時ころ、原告がGに電話すると、専属プロのHの指示に従うようにとのことだった。同日午後6時ころ、Hを名乗る人物から原告に電話があり、RコースからSコースに変更したほうがよいと言った。Hの説明ではRコースだと勝つことはできるが2万円程度であり、Sコースならもっと確実に出玉が出る、ぐずぐずしているとSコースの人員枠がなくなってしまうが今なら間に合うと言われ、半強制的にSコースに変更され、差額24万3000円を振り込んでもらえばよいと言われた。
(エ) 平成19年4月11日、原告がDに電話をすると、Iと名乗る人物が電話に出たので、5万円しか用意できない旨述べた。Iは、いろいろと頑張ってくれているみたいなので5万円でSコースに切り替えできるようにするから、すぐに振り込んでほしいと述べたので、原告は同日中に5万円をIの指定する銀行口座へ振り込んだ。
 ところが、後にHから原告へ電話があり、上司から怒られた、やはり5万円では活動できない、残りの19万3000円を振り込んでほしい、と述べた。
 そこで原告は、Dとファクシミリを用いて新たに契約書を取り交わすとともに、19万3000円を工面したことをDに連絡したところ、税金対策のためゆうパックで送ってほしいと言われたのでゆうパックで送付した。
 送付後、Sコースの手順が書かれた「極秘情報」と題する書類がファクシミリ送信されてきたので、原告はパチンコ店に出向き、Dに電話連絡をしてその指示どおりにパチンコを始めた。しかし、3回ほど手順を試したが効果がなかったのでDに電話をすると、手順が悪い、もっと簡単な手順にするから明日またパチンコ店に行ってほしいという説明だった。原告は、その説明を聞いて、詐欺だと思ったので、急いでゆうパックの取戻手続を行い、19万3000円は取り戻すことができた。
(オ) 以上により、原告は、以下のとおり合計35万円の損害を被った。
a 詐取された金員 合計31万8000円
b 弁護士費用 3万2000円
ウ Fによる詐取
(ア) F広告を見た原告は、Fの提供するパチンコ攻略情報を買えば確実にパチンコでもうけることができると誤信し、平成19年4月11日、その広告に記載されていたFの電話番号に電話をかけた。
 その電話で、F従業員を名乗るJから、@Fは会員システムにより攻略法の情報を提供していると説明され、A電話面接により入会が認められる、B会員にはグランドマスターコース、マスターコース、さらにその下コースがある、C入会のためには、消費者金融会社から金を借りてきてF指定の口座へ送金すれば、原告の信用調査が完了して入会が認められる、等の説明を受けた。
 その説明を聞いて、原告は、マスターコース(入会金100万円)を申し込むことにしたところ、Jから、K株式会社とL株式会社から各50万円ずつを借りてくるようにと指示された。
(イ) 原告は、平成19年4月11日にKから50万円、同月12日にLから50万円をそれぞれ借り入れ、その旨をJに報告すると、同人からFの指定口座が教えられそこへ送金するよう指示された。
(ウ) 平成19年4月12日、原告はM銀行N支店のF名義の口座に計100万円を送金し、銀行振込の受取書をFへファクシミリ送信した。
 銀行振込受取書のファクシミリ送信後すぐにJから原告に電話があり、「あと60万円を振り込んでくれたら連チャンパックを付けることができます。どうしますか。」と言ってきたので、原告は、それを申し込んだ。
 そして、Jから指示をされたO株式会社及び株式会社Pに融資を申し込んだところ、Oは50万円、Pでは30万円の融資枠の設定を受けることができることになった。
 Fへの送金額は60万円だったので、上記消費者金融2社からの借入金額の割り振りをどうするかJに電話して指示を仰いだところ、Jから「80万円全額を借りてそれを振り込んでくれたら、連チャンパックを付けた上で、グランドマスターに昇格させます。」と言われた。次々と送金指示額が増大してきているので、原告は、80万円を振り込んでグランドマスターになることについては断った。しかし、Jから執ように「それで(グランドマスターで)行きましょう。」と言われ、結局、根負けして応じることにした。
(エ) それで、原告は、平成19年4月13日、上記2社から計80万円を借り入れ、Fの指定口座に80万円を振り込んだ。
(オ) 以上により、原告は、以下のとおり合計220万円の損害を被った。
a 詐取された金員 合計180万円
b 精神的苦痛に対する慰謝料 20万円
c 弁護士費用 20万円
(被告らの主張)
 知らない。
(2) 争点(2)(被告らの過失の有無)について
(原告の主張)
ア 被告らが本件各広告につき負う注意義務
(ア) 雑誌広告は、購読者に対して、広告に掲載した商品やサービスについて購買意欲を喚起すること等を目的としてなされるが、広告に虚偽や欺瞞的な内容が含まれる場合、読者が不測の損害を被る可能性が高く、大量部数を発行する雑誌の場合、そのおそれが顕著である。また、出版社や広告代理店は、広告料や広告作製費用の取得という利益を得て、広告主の販売活動を支援しながら、他方で、出版者らは不特定多数の読者から雑誌代金を受領して販売利益を得ているという関係にある。
 したがって、出版社や広告代理店は、読者の雑誌及び広告記事に対する信頼を保護すべき立場にあり、広告内容の真実性に疑念を抱くべき事情があって、読者らに不測の損害を及ぼすべきことを予見し得る場合には、虚偽の広告記事によって読者に不測の損害が生じないよう、必要な範囲で広告記事を調査した上、虚偽・欺瞞的な広告記事を読者に提供してはならない義務がある。
(イ) したがって、@広告内容が明らかに誇大・不合理であり、A広告内容により読者の利益が不当に害されるおそれがあり、B調査確認が容易である場合には、広告内容の真実性及び広告主の実態等に関する調査確認義務があり、これにより真実性を確認できない場合は、本件各広告を読者に提供しない義務があり、この注意義務に違反したときは、被告らは不法行為責任を負うというべきである。
イ D広告について
(ア) 広告内容が明らかに誇大・不合理であること
a D広告には、「派遣メンバー大募集」、「パチンコ・パチスロで稼ぎたい方大募集」、「ギャンブルではありません。仕事として稼いでください」などの記載がある。
 また、D広告には、メンバーの体験談として、「会社役員(42歳)月間収支126万円」、「手順は凄く簡単だったのですぐに覚え、その日のうちに試しました。数分後、半信半疑だった私の目を疑うような結果が・・・『確信』に変わった瞬間でした。・・・今では月々90万円の収益をあげています。」、「家事手伝い(30歳)月間収支98万円」、「的確な指導と簡単な技術を教えてもらい空いた時間を使ってホールへ出向きました。・・・(P.S.稼いだお金で両親にハワイ旅行をプレゼントしました!)」などの記載もある。
 これらの記載は、Dから教えられた攻略法を用いることによって、日額10万円以上、月額100万円以上という多大な利益を得られることを内容とするものであり、確実に当たりの出る攻略法の存在が当然の前提とされている。
b 上記(1)(原告の主張)アのとおり、現在のパチンコやパチスロの大当たりの確率などはすべてプログラムによって制御されているのであって、確実に大当たりする攻略法は、そもそも存在しない。
 指定された場所や方法でパチンコを打つことにより確実な収益を上げることは、本来不可能であり、多数の打ち子を募集して成り立つ事業など存在しない。
 それにもかかわらず、D広告は、確実に当たりの出る攻略法の存在を前提として、日額10万円以上、月額100万円以上という多大な利益を得られることを宣伝し、「月間収支126万円」、「月間収支98万円」といったメンバーの体験談を紹介することにより、あたかも攻略法が本当に存在するかのような印象を抱かせる内容となっている。
 このように、D広告は、確実に大当たりする攻略法は実際には存在しないにもかかわらず、それを用いて多額の利益を得ることができることを虚偽の体験談を交えて紹介しているのであり、その内容が誇大・不合理であることは明らかである。
(イ) 広告内容により読者の利益が不当に害されるおそれがあること
a 読者が攻略法の存在を誤信する危険性
(a) D広告は、確実に大当たりする攻略法や一定の収益の保証は全く存在しないにもかかわらず、それが存在することを当然の前提として打ち子を募集するものである。
 そして、打ち子募集の際に「日額10万円以上、月額100万円以上」、「派遣メンバー大募集」、「ギャンブルではありません。仕事として稼いでください」などと掲げ、この広告を読む者をして、パチンコがギャンブルであるという心理的抵抗を取り除き、あたかも派遣社員として正業を行うかのような錯覚を持たせるとともに、本来存在しない攻略法があたかも存在するかのように誤信させる内容となっている。読者がその魅力的な言葉に惑わされて、冷静な判断能力を欠いてしまうことは容易に想像できる。
(b) パチンコの打ち子募集に関する情報は、パチンコという限られた業界内の情報でしかないため、読者が他の情報媒体を通じて多角的かつ客観的な判断をすることが期待できない。
(c) 仮にパチンコ以外の雑誌又は新聞紙に攻略法に関する広告が掲載された場合であれば、読者が冷静な判断をすることがあるかもしれない。
 しかしながら、D広告が掲載されたのはパチンコ雑誌であり、その大部分が攻略法に関する広告及び記事で占められていた。この場合、読者は、パチンコ業界に精通するパチンコ雑誌の出版社を通じて提供された情報であることを根拠として、広告内容について疑問を抱くことなく、安易に広告内容が真実であると誤信する危険性がある。
b 読者が広告内容に従って安易に申込みをする危険性
 D広告は、 「完全無料!!」、 「もちろん軍資金提供!!」、「登録料・情報料・年会費0円」、「面倒な手続は一切不用!!お電話一本で簡単登録!!」などの記載により、攻略法の無料提供を受けられるという内容の宣伝をしている。
 これらの記載についても、読者を「費用が一切かかることなく簡単に登録できるのであれば試しに申込みをしてみよう。」という心理状態にさせて、読者が広告内容の真実性等について慎重に検討する機会を不当に奪うものといえる。
 よって、読者が広告内容に従って安易に申込みをする危険性がある。
(ウ) 調査確認が容易であること
a 被告らには調査確認する機会があったこと
 被告Aは、攻略法の専門誌を発行しており、被告Bは、広告代理店としてパチンコに関する広告の作成を多数手掛けており、パチンコ業界にも精通していたのであるから、攻略法の情報提供名目での詐欺事件が横行していることを当然知り得たし、パチンコ台の仕組み等についても一定の知識を備えていたのであるから、攻略法の存在等について疑念を抱くことが十分に可能であった。
b 被告らは調査確認する能力及び手段を有していたこと
 被告らはパチンコ業界に精通していたから、その関係者等を通じて広告内容の真実性及び広告主の実態等について調査することが容易であった。
 攻略法はパチンコ業界のみで通用するものであり、その広告主の数もある程度限定されているといえることから、被告らが広告主の実態を調査することも容易であった。
 広告代理店としては、広告作成の目的、広告の内容・レイアウト等について広告主から説明を受けなければ広告作成に着手することができない。本件においても、被告Bは、それらについて広告主から説明を受けていたはずであり、その際、その真実性等を直接に確認することも容易であった。
 被告Aは、専門誌である本件雑誌を多数回発行し、攻略法を名目とする業者が多数の広告掲載を依頼してきており、その業者が虚偽的かつ欺瞞的な広告内容を掲載していることを十分に承知していた。その広告内容の真実性を担保すべき資料の提供を求めることも可能で、これが提示されない場合には、広告掲載を拒絶することも容易であったはずである。
ウ F広告について
(ア) 広告内容が明らかに誇大・不合理であること
a F広告には、「X&Yに直撃攻略法発覚!!」、「2007年最高峰のワザ!!」、「奇跡の大スクープを緊急公開!!」、「30連荘直撃確定!!!」、「さらに62箱93,485玉出た!!!」、「確変モード継続率驚異の98.2%!!!!」、「確変モード継続率驚異の98.6%!!!!」、「PS20V128チップの解析に成功!!」、「好きなときに決める!絶対無敵のモード変確!!」、「大当たり確率、攻略法使用前『369.5分の1』、攻略法使用後『1.38分の1』」、「大当たり確率、攻略法使用前『397分の1』、攻略法使用後『1.24分の1』」などの記載がある。これらは、攻略法を用いることによって大当たりする確率がほぼ100パーセントであることを内容とするものであり、確実に大当たりすると読者に受け取られる記載である。
b 確実に大当たりする攻略法が存在しないことは上記のとおりである。
 それにもかかわらず、F広告には、攻略法を用いることによって、ほぼ100パーセントの確率で大当たりする旨の記載が多数なされている。また、同広告においては、「攻略法発覚!!」、「奇跡の大スクープを緊急公開!!」、「30連荘直撃確定!!!」、「絶対無敵のモード変換!!」などといった明らかに誇張された表現が多数用いられている。
 このように、F広告は、確実に大当たりする攻略法が実際には存在しないにもかかわらず、それが存在することを誇大な表現を用いて紹介しているのであり、その内容が誇大・不合理であることは明らかである。
(イ) 広告内容により読者の利益が不当に害されるおそれがあること
a 読者が攻略法の存在を誤信する危険性
(a) F広告は、確実に大当たりする攻略法が実際には存在しないにもかかわらず、それが存在する旨の宣伝をするものである。パチンコをする者にとって、確実に大当たりするという言葉は非常に魅力的であり、そのため読者がその魅力的な言葉に惑わされて冷静な判断能力を欠いてしまう危険性が大きい。
(b) 攻略法に関する情報は、パチンコという限られた業界内の情報でしかないため、読者が他の情報媒体を通じて多角的かつ客観的な判断をすることも期待できない。
(c) 仮にパチンコ以外の雑誌や新聞紙に攻略法に関する広告が掲載された場合であれば、読者が冷静な判断をすることもある程度は期待できる。
 しかしながら、F広告が掲載されたのはパチンコ雑誌であり、その雑誌の大部分が攻略法に関する広告(総頁数208頁のうち51頁)及び記事で占められていた。この場合、読者は、パチンコ業界に精通するパチンコ雑誌の出版社を通じて提供された情報であることを根拠として、攻略法について違和感を覚えることなく、安易にその存在を誤信してしまう危険性がある。
(d) これらの事実からすれば、F広告により、読者が攻略法の存在を誤信する危険性がある。
b 読者が広告内容に従って安易に申込みをする危険性
 F広告は、「祝無料使い放題!!!!!」、「強制確変打法無料伝授!!」、「抽選で77名様に無料提供!!」、「抽選にもれても軍資金1万円プレゼント!!」などの記載により、攻略法の無料提供を受けられるという内容の宣伝をしている。
 これらの記載は、読者を「無料であれば試しに申込みをしてみよう。」という心理状態にさせて、読者が広告内容の真実性等について慎重に検討する機会を不当に奪うものである。
 よって、読者が広告内容に従って安易に申込みをする危険性がある。
(ウ) 調査確認が容易であること
 上記イ(ウ)に同じ。
エ 被告らの注意義務違反
 被告らは、本件各広告につき、上記イ、ウのとおりの事情があったのであるから、読者の利益が害されることを防止するため、広告主であるDらの業務内容、本件各広告の作成の目的や広告内容の詳細にまで踏み込んで、具体的かつ実質的な調査確認を行うべきであり、真実性を確認できる資料が提供されなければ、広告作成やその掲載を断念すべきであったにもかかわらず、これを怠ったのであるから、過失による不法行為責任を負う。
(被告Aの主張)
ア 被告Aは、広告掲載の取次を業とする広告業者に対し、広告主の所在確認及び本人確認を行わせており、本件各広告については被告Bにおいて行われた。
 本件各広告と同一又は同種の広告は、本件雑誌と同種の雑誌の平成19年5月号にも掲載されているし、従前からも継続的に掲載されてきた。
イ 被告Aは、攻略法は存在すると理解しており、特定の操作方法により確実に玉が出るとまではいえないにしても、パチンコ台の機種の特徴や癖を認識し、一定の操作方法を行うことにより当たりを出やすくしたり、無駄を少なくしたりすることができるので、実践データをもとにして当たりが発生しやすい状況等を予測し、仮説を立て、記事を作成している。 
 攻略法は、パチンコ台のメーカーが様々な思惑で新機種を開発するので、それに応じて種々のものが工夫されるが、その効果において、パチンコ店の営業上致命的となるものから、そこに至らないにしても当たりの出やすいもの、大した効果を生じないものまで千差万別であり、また、方法において、個人レベルのものからある程度一般化され得るものまで多種多様である。
 パチンコ店の営業上致命的となったものとしては、例えば、Q、T及びUという機種があり、玉を打ち出すタイミングを体得し、それを実行することにより当たりが出やすくなり、結局、パチンコ店はそれらの機種を順次撤去することになったのである。
ウ 雑誌広告は、その広告に関する取引について一つの情報を読者に提供するものにすぎず、読者が広告を見たこととその広告に関する取引をなすこととの間に必然的な関係はないのであるから、被告Aが本件各広告の内容の真実性をあらかじめ調査し、確認すべき一般的な法的義務はない。
エ 本件各広告の内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情が存在しなかったこと
 D広告は、全体としてパチンコ台のメーカーやパチンコ店等が必要とするいわゆる打ち手を募集しているにすぎず、特定のパチンコ攻略法を宣伝するものではないし、「日額10万円以上、月額100万円以上」という記載や体験談もそのような収入が保証されるというものでもない。そして打ち手を派遣することが業として成り立つか否かについての検証は困難である。したがって、この広告をもって誇大、不合理と断定することは困難である。
 F広告は、Vが東京都内のパチンコ店でYという機種で9万3485玉(62箱)を得たという新聞記事等を前提としたものであるが、攻略法は千差万別で、中にはパチンコ店の経営上致命的となる可能性のあるものも存在することからして、この広告をもって直ちに誇大、不合理と言い切れるものではない。
オ 本件各広告がその読者に不測の損害を及ぼすと予見できなかったことF広告に「確実に大当たり」という文言はないし、本件雑誌を含む攻略法に関する業界誌の読者はパチンコ愛好家であって、同人らは相当程度のパチンコ経験を有し、愛好家同士の情報交換やインターネット及び多数の業界誌により少なくとも一定程度のパチンコに関する知識を蓄積しているのが常であるから、他の情報媒体を通じて多角的かつ客観的な判断をなすことが期待できないわけではない。
 また、本件雑誌では、広告については「PR」と表示し、編集記事と広告を区別しているのであるから、広告をもって、読者が雑誌出版社からの情報であると誤認することもない。
 D広告に関しては、パチンコ愛好家が打ち子募集の広告を見て、派遣社員として正業を行うかのような錯覚を持つとは理解し難い事態である。本件各広告における無料との記載についても、何が無料なのか必ずしも明らかでなく、読者がDらと契約交渉する過程においてその内容が判明するはずである。ちなみに、原告はDらと契約交渉する当初の段階で保証金や入会金についての説明を受けているようである。
 したがって、本件各広告の内容が真実でなかったことにより読者が不測の損害を被るとは通常考えられず、被告Aはこれを予見できなかったのである。
カ 調査確認の必要性がなかったこと
 被告Aは攻略法が存在するものと理解しているし、本件以外には、広告代理店に対するものを含め本件各広告に関する苦情の申出はなかったのであって、その真実性や広告主に関する調査をなすべき必要性は生じていなかった。また、広告主の有する攻略法は、それなりに管理されていて、被告Aが業界誌の出版社であるからといって、その真実性について調査することは困難であるし、雑誌「C」を発行するには毎月24日の発売日の少なくとも10日前までに、表紙、編集記事、広告、DVDなどすべてのデータが用意されなければ間に合わず、その数日前までには編集記事等について校正を完了しなければならないので、広告代理店に広告内容の確定、校閲等をさせ(その責任の所在を明確にするため、広告に関する問い合わせ先を当該広告の頁下に広告代理店名及び連絡先を明示していた。)、自らは最終校正段階でNGワードがないことの確認をしている状況であって、広告内容の真実性や広告主の実態を簡単に調査できるものではない。
キ よって、被告Aに過失はなく、原告に対する不法行為責任を負わない。
(被告Bの主張)
ア パチンコはギャンブル的な要素を持つ遊技であるところ、原則的に偶然性に左右されるものであることに何ら疑いはない。しかし、パチンコ台を注意深く観察し、打ち方を試行錯誤することによって、パチンコ台の知られていない特性を見つけ、当たりの確率が上がる打ち方を探し出すことは、それを攻略法というかどうかは別にして、パチンコをする者にとって一つの楽しみである。そういったパチンコに勝つためのノウハウは存在すると考えられるし、それを系統立てて、攻略法という名で他者に提供することも十分に可能である。そうでなければ、本件雑誌のように攻略法を売りにした雑誌が数多く出版されることもない。
 ただし、被告Bは確実に大当たりする攻略法があるとは考えていないし、本件各広告の内容も確実に大当たりするとは記載していない。
 そもそも、広告代理店はパチンコ台及びスロット台を調査できるものでない以上、内容に踏み込んで実際にその攻略法が結果を出せるのかまで確認する義務はない。また、Dらがいかなる攻略法を有していたかは、営業秘密に関わることである以上、被告Bとして広告の内容以上に知ることはできない。
イ メディアとしての影響力がないこと
 本件雑誌は、数多くある攻略法の雑誌の一つにすぎず、しかもギャンブルの一分野を扱っていて、媒体そのものについて信用を得ているものではない。
 読者が仮にパチンコに親しんでいるなら、パチンコがギャンブルであることを当然認識しているから、仮に広告が誇大ならば、注意深い読者はすぐに話半分に聞かなければならないと気付くであろうし、そのような広告を載せている雑誌自体についても、信用に足りるかを慎重に判断することになる。
 仮に、読者がパチンコをほとんどしたことがなく、パチンコ雑誌についてもほとんど見たことがないなら、その読者にとっては攻略法の雑誌はもともと、さほど影響力のあるメディアとはいえない。すなわち、その読者にとっては、広告は内容もよく分からず、広告が誇大であっても、そうでない他の広告との区別が付かないであろうから、そもそもその読者にとって、当該広告及びそれを掲載する雑誌は信用に足りるものではない。
 結局のところ、注意深い読者にとっては、読者がパチンコに精通していようがいまいが、攻略法の雑誌はメディア自体の信用性による読者に対する影響力という点で、それほどないといえる。特定の読者が、攻略法の雑誌それ自体を信用して詐欺に遭うのは、読者側の不注意による部分が大きい。
ウ 広告内容の真実性に疑問を抱くべき特別の事情がなかったこと
 被告Bは、攻略法は存在していると考えているので、他に詐欺事案があることをもって、漠然とすべての業者について詐欺事案があると疑ってかかることはできない。そして、被告Bは、取引開始時及び取引継続中に、Dらについて詐欺を行っているという話を聞いたことがなかった。
 本件雑誌における本件各広告以外の広告を見ても、当たりの確率が高くなることを表示したり、無料提供又は低額による提供であったりと、どれも本件各広告と似たようなものである。このような状況の中で、被告Bが広告代理店として、本件各広告をこの業界の、少なくとも本件雑誌の常識の範囲内の広告であると判断してもやむを得ない。
 広告内容が誇大というためには、広告内容と実際に提供されたサービスが全く異なるものでなければならず、Dらや他の業者が提供する攻略法では結果が全く出ないこと明らかにしなければならないところ、原告は、すべての攻略法は役に立たないと述べるだけで、何らの立証もしていない。
エ 読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見できなかったこと
 広告を見て広告主と接触した読者がどのような行動を取るか分からない以上、漠然と何らかの損害が発生すると予見することはできない。また、顧客誘引後、Dらが原告に金銭を借りさせて、だまし取ることまで予見できるわけではない。
 原告は本件各広告を見て、Dらと接触を持ち、無料とうたわれているのに、言われるままに金銭を支払ったというのであるが、原告としては、Dらと接触を持つ中で金銭を要求されることはおかしいと感じることは十分できたのに、そうしなかったのであり、このような原告の不注意による損害まで被告Bが予見し得るはずがない。
オ 調査確認義務がなかったこと
 Dらのような攻略法提供を主とする広告主の実態は、多数の人員をもって当たるものではなく、攻略法さえ有していれば、営業者が極めて少人数でも行えるものであり、広い事務所を構える必要もなく、法人組織にする必要もない。そうすると、広告代理店としては、会社の規模や登記の有無が重要なのではなく、広告主の代表者や担当者との人的関係の中で、詐欺をするような業者でないことを確認することが重要である。
 したがって、広告代理店がする確認については、直接、広告主の代表者や担当者と会い、面接して信用できる者であるかを確認すればよい。そして、事後的に広告代金をきちんと支払うか、当該広告主について悪いうわさなどを聞かないかなどをもとに、その信用性を補完すれば必要にして十分である。これ以上に、過剰な義務、例えば広告業者から広告主に対して詐欺を疑うような確認をする義務や広告内に詐欺に注意するような文言を入れる義務を課すことは、営業が萎縮したり、競争相手に顧客を奪われたりして経営が成り立たなくなってしまう。
 本件では、被告Bは、Dらの代表者と直接面談して、その段階で信用に足る人物であると判断したのであり、その後のDらの広告作成代金の支払状況、うわさについても、その信用性を疑うに足りる事情はなかった。
 真に広告主が信用に足るか、詐欺を行うような業者であるかは、Dらと直接接触し、説明を受けた原告が、自ら慎重に調べるなどして判断すべきであり、本件請求は、自らの責任を媒体業者及び広告業者である被告Bに転嫁しているといわざるを得ない。
カ よって、被告Bに過失はなく、原告に対する不法行為責任を負わない。
(3) 争点(3)(因果関係の有無)について
(原告の主張)
 本件雑誌は、違法行為をする業者らが不特定多数の消費者に対する詐欺行為をはたらくための機会を提供しているのであり、本件各広告が掲載されなければ、原告がDらと接点を持つことはなく、詐欺被害に遭うこともなかったのであるから、被告らが原告とDらとの間の交渉に直接関与していなくても、原告の損害と被告らの行為との間には因果関係があるというべきである。
(被告Aの主張)
ア パチンコにギャンブル性があることは周知の事実であり、原告も十分にこれを認識していた。近年、パチンコのギャンブル性は相当高くなっていると考えられ、原告はパチンコを相当期間にわたって継続的に行ってきたのであるから、当然、そのギャンブル性を熟知していたはずである。大きく勝ったこともあれば、大きく負けることもあったと推測される。
 原告は、本件雑誌における本件各広告を見て、Dらから保証金又は入会金名目で多額の金銭を詐取されたと主張するが、それら保証金や入会金は本件各広告の内容となっておらず、それらを出えんする必要は、原告とDらとの交渉過程で初めて生じ、原告は自己の主体的な判断に基づき金銭を交付したものである。本件各広告は原告がDらと接触する契機にはなったのかもしれないが、それ以上の役割を果たしていない。
 原告は、Dとの交渉過程において、保証金名目で一定の金員を送金した後、詐欺だと認識していったん送付手続を行っていたゆうパックの取戻手続をなしている。既に一定の金員を詐取されたと認識しているのであるから、かかる事態に遭遇した一般人であれば、通常、被告らに問い合わせたり、種々の相談窓口に相談したりするであろうと考えられる。ところが、原告は、何らの対応もしないまま、Fとの交渉を始め、入会金名目で再び金員を詐取されたと主張しているのであって、このような原告の一連の行動は理解し難い。
イ 以上の事情を考慮すれば、被告Aが本件各広告を掲載したことと原告の損害との間には因果関係がない。
(被告Bの主張)
ア 原告は、自らDらに電話をかけ、直接、Dらの担当者からシステムについての説明を受け、自らの意思で申し込んで契約を締結し、Dらの言うままに送金している。
 原告は、Dらからシステムの説明を受けた時点や送金を要求された時点など、Dらの対応や要求に疑問を持ち、金銭の出えんを阻止できる機会はいくつもあった。例えば、原告としては、Dらに対し、広告で無料とうたっている以上、まず無料で攻略法を使用させ、本物と判断できれば契約するという交渉もできたはずである。それにもかかわらず、漫然とDらの言いなりになったのである。
イ したがって、仮に被告Bに何らか法的責任につながる落ち度があったとしても、その落ち度と原告の損害の間には、上記アのとおり原告自身の不注意な行為が介在しており、この不注意な行為が原告自身の損害を招いたことは明らかである。よって、被告Bの本件各広告の作成と原告の損害との間には相当因果関係があるとはいえない。
(4) 争点(4)(過失相殺の有無及び割合)について
(被告Aの主張)
 上記(3)(被告Aの主張)アに記載した事情からすれば、原告がDらに金銭を送って損害を被ったことの落ち度は大きく、相当程度の過失相殺がなされるべきである。
(被告Bの主張)
 被告Bが本件各広告を作成したことは、原告がDらに接触する機縁となったにすぎず、原告の損害という結果に対する影響は著しく低い。
 一方、上記(3)(被告Bの主張)アのとおり、原告には不注意な行為があり、これがなければ全く原告に損害が発生しなかったことを考えると、その不注意な行為の結果に対する影響は非常に大きく、大幅な過失相殺がなされるべきである。
(原告の主張)
 争う。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(詐欺被害の有無)について
(1) 上記争いのない事実、証拠(甲1、2の1・2、甲3の1・2、甲4ないし7、8の1ないし3、甲9ないし13、14の1・2、甲16、31、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、平成15年ころから週に2回程度パチンコをしていたが、平成19年3月下旬、コンビニエンス・ストアで、同月24日発売の本件雑誌(平成19年5月号)を見て、攻略法に関心を持ち、購入した(甲1、10、16)。
 本件雑誌には、別紙1のとおりのD広告と、別紙2のとおりのF広告が掲載されていた。
イ 原告は、平成19年4月3日、Dに電話をかけたところ、その担当者から、出玉換金額の半分を原告の、半分をDの取り分とすること、パチンコ台は通常は大当たりの確率が400分の1や360分の1のところを、100分の1に設定された台をDが指示するので必ず大当たりするとの説明を受けた。
 原告は、同月9日、Dの担当者から電話を受け、打ち子として採用することが決まった、打ち子が出玉を持ち逃げしないようにDは監視員を雇っており、監視員のいる三重県に出向いてほしいなどといわれた。原告は仕事があるために断ると、同担当者は、監視員のいないパチンコ店で打つ方法もあるが、監視する代わりに保証金を振り込む必要があり、その金額はRコースが26万8000円、Sコースが51万1000円であること、その保証金については、打ち子の活動によるDのもうけが保証金の2倍になった時点で返金すると説明した。原告はこの説明を信じて、Rコースを選択し、同日、Dに対し、保証金26万8000円を振り込んで支払った。
 原告は、同月10日午前10時19分、Dから、Rコース(代金26万8000円)の契約書をファクシミリで受け取り、署名押印してファクシミリで送信した(甲11)。原告は、同日午後6時ころ、Dの専属プロを名乗る者から電話を受け、Rコースではもうかる金額が2万円程度であり、Sコースならもっと確実に出玉があるから変更したほうがよいと言われたことから、変更することにした。
 原告は、同月11日、Dに電話をかけ、その担当者にSコースとRコースの差額24万3000円のうち5万円しか用意できないと述べたところ、それで構わないと言われたことから、指定された預金口座に振り込んで支払った。ところが、その後、原告は、その担当者から電話を受け、残額19万3000円が必要であると言われたことから、これを了承した。原告は、同日午後1時、DからSコース(代金24万3000円)の契約書をファクシミリで受け取り、署名指印してファクシミリで送信し(甲12)、19万3000円をDに指示されたゆうパックで送ったところ、午後2時25分、Dから、「極秘情報」と題する攻略法の情報がファクシミリで送られてきた(甲13)。そこで、原告は、同日、パチンコ店に出向いてDから受け取った攻略法のとおりにパチンコをしてみたが、効果がなく、Dに電話をかけても、手順が悪い、もっと簡単な手順にするなどと言われたことから、詐欺に遭ったと考え、上記ゆうパックの取戻手続を行った。
ウ 原告は、平成19年4月11日、今度こそはきちんとしたところと契約をして、攻略法を入手しようと考え、本件雑誌において、原告の好きな「Y」という機種についての攻略法を持つとの広告を載せていたFに電話をかけたところ、その担当者から、@会員にはグランドマスターコース、マスターコース(入会金100万円)及びその下のコースがあること、A消費者金融会社から金を借りてきて、F指定の口座に送金し、原告の信用調査が完了すれば、入会が認められることなどの説明を受けたことから、マスターコースへの入会を申し込んだ。
 原告は、同日午後9時35分、Kから50万円を借り(甲2の1)、同月12日午前9時57分、Fに同額を振り込んで支払い(甲2の2)、さらに、午後零時1分、Lから50万円を借り(甲3の1)、午後零時9分、Fに同額を振り込んで支払って(甲3の2)、それら振込みの利用明細をFにファクシミリ送信した。そうすると、原告は、Fの担当者から電話を受け、あと60万円を振り込めば連チャンパックを付けられると勧誘されたことから、これも申し込んだ。
 原告は、Pで30万円、Oで50万円の融資枠の設定を受けたことから、Fの担当者にそれぞれから借りる金額につき指示を仰いだところ、上記60万円でなく80万円まで借りてFに支払えば、連チャンパックを付けた上でグランドマスターコースに昇格させると言われたことから、これに応じることとし、同月13日午前11時44分、Pから30万円を借り(甲5)、午後零時48分、Oから50万円を借り(甲4)、午後1時14分、Fに合計80万円を振り込んで支払った(甲6)
 原告は、同月15日ころ、Fから購入申込書の送付を受けたが、攻略法の信用性に疑問を抱き、z消費生活センターにも相談の上、購入することをやめ、購入申込書も記入して返送することはしなかった。
 原告は、Fに電話をかけて、担当者に対して180万円を返還するよう求めたが、その担当者は、上記申込書に署名押印してFに送付しなければ返金できないなどと言って、返還を拒んだ。
エ 原告は、平成19年5月2日、本訴の訴訟代理人でもあるW弁護士に本件被害について相談し、同弁護士は、同月7日、Fに対して180万円の返還を求める通知書を送付したが、Fはこれを受け取らず(甲8の1ないし3)、同月22日には同通知書を普通郵便で発送したが、転居先不明により届かなかった(甲9)。
 さらに、原告代理人のW弁護士は、同年6月1日、Dに対し31万8000円の返還を求める通知書を送付し、同月4日、Dに到達した(甲14の1・2)。
(2) 以上の認定を基に検討するに、Dについては、原告が提供を受けた攻略法を用いたが効果がなかったこと、D広告においては既に会員が大阪市内に100人、その他大阪府内に88人おり、さらに大阪府内で33人を募集していて、会員は基本的には近所のパチンコ店でパチンコをすることになっていたにもかかわらず、大阪府内でDが用意した監視員のいるパチンコ店がないとして、遠方に1か月も行かせるという無理な条件を提示したこと、これを原告が断るや広告にはない保証金の支払を要求し、さらに支払うべき保証金の額を2度にわたって上げていること、DことEの所在はその後不明となっていること、その他後記2(2)ウに掲げる事情を総合考慮すると、Dが提供した攻略法は架空のものであったと認定することができる。
 また、Fについても、F広告にはない高額の入会金の支払を求めたこと、原告の信用調査と称して消費者金融から多額の金銭を借りさせ、これを入会金に当てさせたこと、支払うべき保証金の額を2度にわたって上げていること、返金を求める原告に対して購入申込書の作成、送付を求めるという不合理な行動をしていること、F及びその代表者の所在はその後不明となっていること、「X」という機種を開発した株式会社x及び「Y」という機種を開発したy株式会社は、各機種の性能、構造上、F広告に記載された方法で大当たりを導くことはできない旨回答していること(甲20の1・2、甲21の1・2)、その他後記2(2)エに掲げる事情を総合考慮すると、Fが有するとしていた攻略法は架空のものであったと認定することができる。
(3) そうすると、原告は、Dから保証金名下に31万8000円を、Fから入会金名下に180万円を詐取されたと認定できる。
 また、原告は、Dらに対して返還を求めるために、弁護士に本件訴訟の提起、追行を委任しているから弁護士費用相当額として、それぞれその約1割として3万2000円及び18万円も相当因果関係のある損害と認定できる。
 他方、原告は、Fから詐取されたことにつき慰謝料も請求しているが、経済的損害に対する賠償を受けてもなお慰謝料の支払を要するほどの精神的苦痛が原告に生じたと認めることはできない。
2 争点(2)(被告らの過失の有無)について
(1) 上記争いのない事実、証拠(甲1、10、16、36ないし38、40、乙1、2の1・2、乙6、丙26、証人b、被告A代表者a)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認定できる。
ア 被告Aは「C」という攻略法に関する雑誌を出版していて、平成19年5月号の本件雑誌については約6万部を出版したが、その同年6月号からは、関連会社で、広告代理店の株式会社cが出版を引き継いだ(甲40、丙26)。
 被告Aは、攻略法の販売を主たる業とする株式会社dの関連会社であり、被告Aの代表者であるaは平成15年10月1日から平成17年6月25日までdの取締役を務めていた関係にあり、本件雑誌にd作成の広告を多数掲載していた(甲16、36ないし39、被告A代表者)。
イ 被告Aの本件雑誌における総広告代理店は株式会社eであり、c、被告Bの順に取引関係が続いた。
ウ 被告Bは、Fより、平成18年4月27日から平成19年4月23日までに発売された本件雑誌を含む多数のパチンコ雑誌や週刊誌向けの広告作成や掲載を受注し、平成18年12月までの発売分については広告代理店である有限会社fに対し、平成19年1月以降の発売分についてはFの指示により有限会社gに対し、それぞれ請求書を発行し、代金の支払を受けた。本件雑誌のF広告の代金は390万円(消費税別)であった。(乙2の1・2)
 また、被告Bは、Dより、平成19年1月14日から同年9月28日までに発売された多数のパチンコ雑誌向けの広告作成及び掲載を受注し、代金の支払を受けた。本件雑誌のD広告の代金は45万円(消費税別)であった。(乙1)
エ 被告Bで営業を担当していたbは、Fとの取引開始に当たってその本社を訪問し、商業登記簿謄本を受け取り、代表取締役であるhと面談した。面談時には広告の内容や料金などについて話がなされたが、Fが攻略法を有しているのかやその効果がどれほどのものかについては話されることはなく、実際に試されることもなかった。
 その後、被告Bは、Fから写真やデータ、文章などを受け取り、これを加工して、広告を作成し、その中で別紙2のF広告も作成し、本件雑誌に掲載された。
オ 被告Bの営業担当者は、Dの屋号でパチンコ店へ打ち子を派遣する商売を営むと称するEと面談し、広告の打合せを行ったが、大阪市北区ij丁目k番l号mビルn階にあるとされた事務所へは訪問しなかった。
カ 被告Bは、本件各広告以外にも本件雑誌に掲載された以下の広告の作成に携わった。
(ア) o(1頁)
 1ゲームで当たりを決定づける勝ち手順を完全収録したDVDを販売するもの
(イ) p(46頁)
 資金を提供され、1日平均5万円及び歩合給の支払を受けられ、パチンコで稼げる情報を無料で提供される打ち子を募集するもの
(ウ) 有限会社q(96頁)
 攻略法を初期費用0円で販売するもの
(エ) r(112頁と113頁の間)
 「X」という機種につき、0手順直撃攻略法を公開するとして、これを収録したDVDを添付するもの
(オ) s(129頁)
 投資金も技術も不要で、驚くほど稼げる直撃打法を完全無料で提供するもの
(カ) r(140頁から143頁)
 上記(エ)と同じ会社が、1機種直撃100パーセント攻略法を2万円で販売するもの
(キ) 有限会社t(144頁)
 資金を提供され、月額30万円及び歩合給と交通費の支払を受けられ、パチンコ及びパチスロで稼げる情報を無料で提供される打ち子を募集するもの
(ク) 株式会社u(193頁から195頁)
 「X」及び「Z」という機種につき、誰でも簡単に実践可能な乱数変換直撃打法という攻略法があるとして、これを1機種に限り1万5000円で販売するもの
(ケ) v(207頁)
 パチンコ5機種につき、30秒間で攻略できる、4回転直撃秒殺攻略法を2万円で販売するもの
(2)ア ところで、雑誌広告は、雑誌上への掲載行為によって初めて実現されるものであり、その広告に対する読者らの信頼は、当該雑誌やその発行者に対する信頼と全く無関係に存在するものではなく、広告媒体業務にも携わる雑誌社及びその広告の仲介・取次をする広告代理店としては、雑誌広告の持つ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって、読者らに不測の損害を及ぼすことを予見し、又は予見し得た場合には、真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり、その限りにおいては雑誌広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解され、その義務に違反した場合は不法行為が成立すると解される。
イ そこで検討するに、本件雑誌は6万部発行され、日本全国の書店やコンビニエンス・ストアなどで広く販売されたが、パチンコやその攻略法の分野でそれほど著名なものではあったわけではなかった。原告も本件雑誌を知っていて購入したわけではなかったが、コンビニエンス・ストアでも販売されていたものであったから内容が怪しいものではないものと考えていたというのであり、本件雑誌にも、著名な新聞ほどではないにしても、ある程度の信頼や影響力があったといえる。
 この点、被告Bは、本件雑誌はギャンブルの側面を有するパチンコの攻略法を取り扱うものであり、雑誌としての信頼性や読者に対する影響力はそれほどなかったと主張するが、広告代理店としてDらのために本件各広告を作成して本件雑誌に広告を取り次ぎ、利益を上げながら、本件雑誌における広告の効果を否定することは矛盾があり、採用することができない。
ウ(ア) D広告の内容は、別紙1のとおりであり、パチンコ店での打ち子を募集するものであるが、ギャンブルではなく仕事であること、Dはパチンコ台のメーカーやパチンコ店から集客のために依頼され、もうけられる情報を得ていること、登録料、情報料及び年会費がいずれも無料であり、パチンコをするための資金も提供され、日額5万円及び歩合給の支払を受けることができ、日額10万円以上、月額100万以上も可能であること、近所のパチンコ店で活動することなどが記載されている。
 しかしながら、一切の費用がかからず、パチンコをする資金まで提供された上に、近所でパチンコをするだけで最低でも日額5万円の支払を受けられる仕事があるとはおよそ考えにくいし、被告Bは本件雑誌につき上記(1)カ(イ)、(キ)のとおり他にも2社から同様の広告の作成を請け負っていて、これらがいずれも真実であれば、そのような仕事が多数存在することになるのであって、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったといえる。
(イ) そして、仮にDがパチンコ台のメーカーやパチンコ店からもうけられる情報を得ていなければ、Dは会員から受け取る利益が得られないのであるから、会員から他の名目で金銭を受け取ろうとすることは容易に推測できることである。
(ウ) そうすると、被告Bとしては、Dがきちんと事業を行っているのか、上記情報を得ているのかをそれなりに確認する必要があるのであり、上記情報について秘匿性の高いものであるが故に詳細には明らかにさせられないとしても、例えば、実際に既にいる会員がパチンコするのに1回でも同行するなどすれば操作方法をじっくりと見なくても、玉をどれだけ獲得したかによって容易に分かることである。
 しかしながら、被告Bは、Eと面談したと主張するものの、その裏付けを欠いていて、面談の事実があったかは明確でない上、実際にどのような会話がなされたのかや上記情報についていかなる説明を受けたかも明らかにできず、事務所を訪問すらしていないというのであるから、調査確認する義務に違反したといわざるを得ない。
エ(ア) F広告の内容は、別紙2のとおりであり、「X」及び「Y」の2機種に攻略法が発覚したこと、3回転でいつでも確変モードに直結可能であること、「X」について、攻略法の使用によって、大当たり確率が369.5分の1から1.36分の1に、確変中大当たり確率が36.95分の1から1.36分の1に、確変突入率が60パーセントから98.2パーセントに、時短連チャン率が約23.7パーセントから98.2パーセントに上がること、「Y」について、攻略法の使用によって、大当たり確率が397分の1から1.24分の1に、確変中大当たり確率が39.7分の1から1.24分の1に、確変突入率が80パーセントから98.7パーセントに、時短連チャン率が約27.5パーセントから98.6パーセントに上がること、この攻略法を「Y」のパチンコ台で使った人が、 35連チャンの大当たりとなり、 9万3485玉(62箱)を獲得したこと、Fには13年の歴史があり、攻略法の指導を行う定期講習会の開催は200回を超え、参加者は5万人に上ること、申込者の中から抽選で77名にそれらの攻略法を無料で提供し、外れた人にも1万円か1機種の攻略法を無料で提供することなどが記載されていた。
 上記攻略法による大当たりの確率は約73.5パーセント又は約80.6パーセントであり、時短連チャン率は上記のとおりで、いずれも非常に高く、一定時間パチンコをすれば大当たりし、かつこれが繰り返されるのが確実というのにほかならないのであって、「確実に大当たりする攻略法があるとは書いてない」との被告Bの主張は採用できない。そして、これでは、パチンコのギャンブルとしての性格は失われ、パチンコ店やパチンコ台のメーカーは多額の損害を被り、また速やかに善後策を講じる必要が生じるところ、上記両機種につきかかる事態がこれまでに生じたといった事情は一切うかがえない。このような攻略法が存するのかにつき、被告Aは過去にパチンコ台が撤去される事態に至った機種が複数あると指摘するが、証拠によって認定できるのはサブ基盤にプログラムミスが生じたことによる1件のみであり(丙4の1・2)、その他の証拠(丙1、3、5の1・2、丙11ないし13)については執筆者がいかなる立場の者で、いかなる根拠に基づき記載されたものかが明確でなく(w連合会に対する調査嘱託の結果)、認めるに足りない。そして、本件雑誌において、被告Bが作成した広告だけでも上記(1)カ(ア)、(ウ)、(エ)及び(カ)、(オ)、(ク)、(ケ)のとおり6社に上り、これだけ多くの攻略法に関する広告依頼が同時期に同被告の下に集まるとは考え難い。また、xの製作した「X」とyの製作した「Y」が、製造者が異なるのに、ほぼ同様の手法で大当たりが導き出せるというのも甚だ不自然である。
 この点、被告Aは、攻略法も様々なものがあり、パチンコ店の営業上致命的となるものから、そこまで至らないとしても当たりを出やすくするもの、大した効果がないものまであるから攻略法の広告が誇大、不合理とは言い切れないと主張するが、上記で認定したFの広告はこれが真実であれば営業上致命的となるものと考えられるのである。
 また、被告Aは、本件各広告と同一又は同種の広告がほかにも掲載されているとか、インターネット上で多数の業者が攻略法に関する広告を行っているなどと主張するが、そうであるからといって、本件各広告を取り次ぎ、また掲載するかどうかの被告らの判断につき注意義務が軽減されるものとはいえない。
 よって、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったといえる。
(イ) そして、Fは攻略法を77名に無料で提供し、抽選に漏れた人には1万円か1機種の攻略法をプレゼントするというのであり、これでは少なくとも1機種の攻略法を使用することができ、上記のとおり攻略法が本当に効果を有するものであれば、さらに別の攻略法を購入しなくても十分にもうけることができ、Fとしては390万円もの多額の広告料金を支出しながら利益を上げることができなくなるのであって、会員から他の名目で金銭を受け取ろうとすることは容易に推測できることである。
(ウ) そうすると、被告Bとしては、Fがきちんと事業を行っているのか、上記情報を得ているのかをそれなりに確認する必要があるのであり、上記情報について秘匿性の高いものとして詳細には明らかにさせられないとしても、例えば、実際にパチンコするのに同行するなどすれば操作方法をじっくりと見なくても、玉の出方によって容易に分かることである。
 しかしながら、被告Bは、bにおいてFの本社に出向き、商業登記簿謄本を確認し、代表者らと面談したというのであるが(証人b)、Fが設立されたのは平成18年6月20日であり、法人として13年の実績がないことは明らかであるし、攻略法につき何らの確認をしておらず、調査確認する義務に違反したといわざるを得ない。
オ 被告Aについて検討するに、同被告は本件雑誌を出版しており、その代表者は攻略法の販売を主たる取引とするdの取締役を務めていたこともあったのであるから、被告B以上に、パチンコの機種や性能、パチンコ業界の事情に詳しいのであり、相当数の組合員店舗をかかえるw連合会は平成16年時点で「サクラ・打ち子詐欺勧誘にご注意」との警告ポスターをパチンコ店1店舗当たり2枚を配布し、打ち子名目での勧誘がなされ、詐欺事件が発生していることを客に知らせていたこと(w連合会に対する調査嘱託の結果)を被告Aが知らなかったはずがないし、被告Bの取り次いだ上記(1)カの広告だけでなく、ほかにも同様の攻略法又は打ち子に関する広告を多数掲載していたのであるから、それほど多くの攻略法が同時期に見付かっており、また、打ち子の募集がなされていることについて広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったといえる。
 しかるに、被告Aは、本件各広告又はDらにつき何ら調査も確認もせず、また被告Bをして、調査や確認をさせていないのである。
カ 以上の検討によれば、被告らには過失があると認められる。
3 争点(3)(因果関係の有無)について
 上記1で認定したとおり、原告は本件各広告を見て、Dらに電話をかけ、その後金銭を詐取されたのである。
 確かに、本件各広告の内容と原告がDらに騙された内容は異なっており、原告は、Dらの担当者との話の中で、本件各広告に記載された取引条件とは異なる取引をすることを決めたと認められる。
 しかしながら、本件各広告にはDについては打ち子の収入や費用、Fについては無料の攻略法の提供といった取引の内容だけでなく、Dはパチンコ台のメーカーやパチンコ店からもうかる情報を得ていること、Fは非常に高い確率で大当たりし、これを継続させることができる有力な攻略法を有していることも記載されていて、そのために、原告はDらが攻略法に関する一般には知られていない、もうけることができる有力な情報を有していると信じ、多額の金銭を支払う取引を行ったのであるから、本件各広告と原告のした取引の内容が異なっているからといって、因果関係を欠くことにはならないというべきである。
 また、被告らは、原告の不注意な行動が介在していて因果関係を欠くと主張するが、それは過失相殺において検討すべき事情である。
 よって、被告らの過失と原告の損害との間には因果関係が認められる。
4 争点(4)(過失相殺の有無及び割合)について
 上記1で認定したとおり、原告はその当時26歳の会社員の男性であり、一定の社会経験及び社会常識を備えていたこと、原告は以前からパチンコを楽しんでいたこと、パチンコはギャンブルの側面を有しており、もうかることもあれば損をすることもあること、原告がなしたDらとの取引は本件各広告の内容とは有償であることなど大きく異なっていること、原告が支払った金銭は多額であること、原告はDに騙されたことに気付いたのであるから、攻略法について、より慎重に検討することができたのに、損失を取り戻そうとして、その当日中にD広告が掲載されていた本件雑誌を見てFに電話をかけ、さらに5.6倍もの多額の損失を生じさせていること、Fの担当者から信用調査と言われて、原告は言われるがままに消費者金融会社から金を借りていること、DにしてもFにしても、何かと理由を付けて振込金を追加させようとしていることなどの事情があり、原告の損害拡大に対する過失は相当に大きいものといわざるを得ない。
 そうすると、D関係の損害については5割の過失相殺をなし((31万8000円+3万2000円)×0.5=17万5000円)、F関係の損害については7割の過失相殺をなす((180万円+18万円)×0.3=59万4000円)のが相当である。
5 結論
 以上によれば、原告の請求は、被告らに対し、連帯して76万9000円及び内金17万5000円に対する平成19年4月11日から、内金59万4000円に対する同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容すべきであり、これを超える部分は理由がないから棄却すべきである。よって、主文のとおり、判決する。

大阪地方裁判所第23民事部
 裁判官 後藤誠
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/