判例全文 line
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【事件名】携帯電話向けコンテンツの著作権侵害事件
【年月日】平成22年4月28日
 東京地裁 平成18年(ワ)第24088号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成22年2月26日)

判決
原告 株式会社ハイパーキューブ
同訴訟代理人弁護士 高橋省
被告 株式会社インデックス・ホールディングス
被告 株式会社インデックス
被告 A
上記3名訴訟代理人弁護士 平野耕司
同 山崎哲
同 渡邊清朗
同 近藤美紀
同 楠純一
同 高橋雅喜


主文
1 被告株式会社インデックス・ホールディングス及び被告株式会社インデックスは、原告に対し、各自38万円及びこれに対する平成20年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社インデックスは、原告に対し、77万円及びこれに対する平成20年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、被告株式会社インデックス・ホールディングスと原告との間においては、これを2000分し、その1を被告株式会社インデックス・ホールディングスの負担とし、その余は原告の負担とし、被告株式会社インデックスと原告との間においては、これを1500分し、その1を被告株式会社インデックスの負担とし、その余は原告の負担とする。
5 本判決の第1項及び第2項は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1章 請求
第1 主位的請求
1 被告らは、原告に対し、各自33億8028万3423円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告に対し、各自3500万円に対する平成18年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Aは、原告に対し、550万円及びこれに対する平成18年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 予備的請求
1 被告株式会社インデックス・ホールディングスは、原告に対し、24億9594万5911円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載1〜74の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社インデックスは、原告に対し、8億4933万7512円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載75〜115の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Aは,原告に対し、500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2章 事案の概要
第1 訴訟物及び主張の要旨
1 訴訟物の概要
 本件は、原告が、被告らに対し、主位的に、別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェア(以下、著作権法2条1項10号の2の「プログラム」、同項10号の3の「データベース」、データ等の電磁気記録及び画面に表示される文字、画像等の映像又は影像など電磁気的に提供される情報の総体〔マニュアル、設計書等の文書は含まない。〕を意味するものとして「ソフトウェア」との用語を使用する。なお、別紙第1ソフトウェア目録には欠番がある。)について、著作権(複製権、翻案権、公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)侵害若しくはプログラム著作権のみなし侵害(著作権法113条2項)の不法行為又は著作物の利用許諾契約違反の債務不履行に基づいて、損害賠償金33億8028万3423円(弁護士費用3000万円を含む。)及びこれに対する不法行為後の日(月ごとの計算)又は本件訴状送達日の翌日である平成18年11月8日(弁護士費用及び著作者人格権侵害に基づくものにつき)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、被告Aに対し、著作権(複製権、翻案権、公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害の不法行為又は著作物の利用許諾契約違反の債務不履行に基づいて、損害賠償金550万円及びこれに対する本件訴状送達日の翌日である平成18年11月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、また、予備的に、上記ソフトウェアを使用したとの不当利得返還請求権に基づいて、被告株式会社インデックス・ホールディングス(以下「被告ホールディングス」という。)に対し、不当利得金24億9594万5911円の返還及び同不当利得金に対する受益後の日(月ごとの計算)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を、被告株式会社インデックス(以下「被告インデックス」という。)に対し、不当利得金8億4933万7512円の返還及び同不当利得金に対する受益後の日(月毎の計算)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を、被告Aに対し、不当利得金500万円の返還及び同不当利得金に対する受益開始の日である平成12年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を、それぞれ求める事案である。
2 原告の主張の要旨
 原告は、別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアは、プログラム以外の部分も含めてすべての部分について原告が著作者である著作物であるところ(原告代表者の発意に基づき原告代表者が原告の業務につき職務上作成したこと、又は同様に原告代表者が作成し原告の著作名義の下に公表することによる職務著作)、被告らがこれら著作物を著作物の利用許諾期間を超えて使用したこと(以下「期間制限違反」という。)、利用許諾数量を超えて使用したこと(以下「数量制限違反」という。)、許諾条件を越えて改変したこと(以下「改変」という。)、原告の著作者名を表示しなかったこと(以下「氏名非表示」という。)、第三者に複製物を交付してその内容を開示したこと(以下「複製物の交付」という。)、第三者に改変若しくは2次的著作物を作成させたこと(以下「翻案」という。)が著作権侵害行為に当たるとともに、著作物の利用許諾契約違反の債務不履行(以下「許諾契約違反」という。)にも当たり(選択的併合)、また、被告らがこれらソフトウェアのプログラム部分を使用していることが著作権法113条2項のみなし侵害行為(以下「みなし侵害」という。)に当たると主張している。
 なお、原告は、平成22年2月23日付け訴え変更申立書で、請求額を拡張する一方、別紙第2ソフトウェア目録記載のソフトウェア(「恋愛の神様DX」)及び同第1ソフトウェア目録F(「愛と出会いの占い館」)以外のソフトウェアについては、その損害又は不当利得を使用許諾期限より前のものに限定し、これに伴い、上記除外されたソフトウェアに係る期間制限違反の主張を撤回した。
3 被告らの主張の要旨
 被告らは、上記ソフトウェアの著作者及び著作物性を争うほか、その使用に係るプログラムと上記ソフトウェアに含まれるプログラムとの間には同一性・類似性がないと反論するとともに、被告らには著作物の利用許諾契約に違反して上記の著作権侵害行為又は債務不履行をした事実はないと反論している。
 なお、上記2のとおり、原告が期間制限違反の主張を一部撤回したことに伴い、期間制限違反に関する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を原告が放棄したとの被告らの反論も撤回された。
第2 前提となる事実
1 当事者等
(1) 原告
 原告は、平成7年5月に有限会社として設立され、平成12年2月に株式会社に組織変更された、コンピュータによるデータの処理及び通信並びにソフトウエアの開発、制作及び販売等を目的とする資本金1000万円の株式会社である。
 原告は、平成10年ころから被告ホールディングスにサーバ等のハードウェアを販売し、その保守管理の委託を受けていたが、平成11年ころからはプログラム開発の受注も受けるようになった。
 原告は、主に原告代表者とその妻がプログラム開発等を行い、多いときでも社員数名程度の規模であった会社である。
 (争いのない事実、原告代表者〔第1回、第2回〕、甲57、弁論の全趣旨)
(2) 被告ホールディングス
ア 被告ホールディングスは、平成7年9月に設立された株式会社であり(当時の商号は「株式会社ノザーク・ビーエヌエス)、平成9年9月に商号を「株式会社インデックス」に変更するとともに会員を対象とした情報提供サービスの仲介・斡旋等を主たる事業とし、平成9年10月からはモバイルコンテンツ配信サービスを開始した。(争いのない事実、甲34別紙3、55、103、被告A、弁論の全趣旨)
イ その後、被告ホールディングスは、NTTドコモのiモードやKDDIのEZwebなどのインターネット接続が可能な携帯電話やPHSサービスにおけるコンテンツを企画、制作又は開発するとともに、これを各移動体通信キャリアに提供して利用者に配信し、各移動体通信キャリアの代金回収代行サービスを使用して情報料を利用者から直接課金、回収する事業や、ライセンス事業等を行っている。(甲3、4、34別紙3、103)
ウ 被告ホールディングスは、平成13年3月、日本証券市場に株式を店頭登録し、平成16年12月、上記店頭登録を取り消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場した。また、被告ホールディングスは、平成18年6月1日、自らを新設分割会社、被告インデックスを新設分割設立会社とする会社分割を行い(以下、単に「会社分割」という。)、商号を現商号に変更した。
 会社分割において、被告ホールディングスは、被告インデックスに対し、コンテンツ事業(インターネットへ接続可能な携帯電話などへのコンテンツの企画、開発又は配信、顧客企業からのコンテンツを中心とした受託開発及び映像技術や映像ソフト等の開拓及び販売)、ソリューション事業(顧客企業からのシステム受託開発、ブロードバンドに関連したシステムサービスの提供等、顧客企業からの請負)、コマース事業(モバイル、Web、テレビショッピング等での物販)等の全事業並びにこれに係る一切の資産・負債及びこれに付随する権利義務・契約上の地位を免責的債務引受けの方法により承継させた。
 (争いのない事実、甲103、乙44)
エ 被告ホールディングスにおける下記3(1)の「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画開発の現場責任者は、Bであり、同人は、平成10年2月から平成19年1月まで被告ホールディングスに在籍していた。(乙78、証人B)
(3) 被告インデックス
 被告インデックスは、平成18年6月1日、会社分割により設立された、会員を対象とした情報提供サービスの仲介・斡旋、コンピュータ及びその関連機器の販売・斡旋等を目的とする株式会社である。(乙20、弁論の全趣旨)
 会社分割により、被告インデックスは、被告ホールディングスから、全事業並びにこれに係る一切の資産・負債及びこれに付随する権利義務・契約上の地位を免責的債務引受けの方法により承継した。
 (争いのない事実、甲103、乙44)
(4) 被告A
 被告Aは、平成9年4月から被告ホールディングスの代表取締役を務めており、同社の株式20%以上を有する。
 (争いのない事実、甲34別紙3、103)
(5) 有限会社アカデメイア
ア 有限会社アカデメイア(以下「アカデメイア」という。)は、占い、心理学、文化教養関連のスクール運営等を目的とする会社であり、その代表者はCである。
 アカデメイアは、各種メディアに対する占いコンテンツの原稿制作、配信原稿の提供、各種占いサイトの企画、開発、運営等を業としている。(甲120、乙43、証人C)
イ アカデメイアには占い師であるDが平成10年から平成16年まで取締役兼講師として稼働していた。(乙91、証人C)
2 著作権
 別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアのうち、そのプログラム部分は、原告が著作権を有する。(弁論の全趣旨)
 なお、同目録Lの「さくま式スゴロク(東海道五十三次及び奧の細道)」のプログラム部分のうち、「奧の細道」のプログラム部分について成立した自白は、原告代表者が作成した未完成プログラムである方の「L奧の細道」(後述)に関するものである。
3 原告プログラム
(1) 被告ホールディングスは、いずれも携帯端末向けコンテンツ配信用ソフトウェアである(ただし、後記「J四次婆」はパソコン向けコンテンツ配信用である〔甲53、乙93〕。)、
(@) 別紙第1ソフトウェア目録記載@の「四次婆」(以下、このソフトウェア及び配信されるサービスを指すものとして「四次婆(DDI)」という。以下同じ。)のうちのプログラム部分(以下「@四次婆」という。)を使用して、「四次婆(DDI)」の配信サービスを遅くとも平成11年6月ころから、
(A) 同A「恋愛の神様」(以下「恋愛の神様」(NTTドコモ)」という。)のうちのプログラム部分(以下「A恋愛の神様」という。)を使用して、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを平成11年2月から、
(B) 同B「プライベートホームページ」(以下「プライベートホームページ」という。)のうちのプログラム部分(以下「Bプライべートホームページ」という。)を使用して「プライベートホームページ」の配信サービスを平成11年4月ころから(甲55)、
(C) 同D「ツヴァイ資料請求プログラム」(以下「ツヴァイ資料請求」という。)のうちのプログラム部分(以下「Dツヴァイ資料請求」という。)を使用して、「ツヴァイ資料請求」の配信サービスを遅くとも平成12年2月ころから(乙135の1)、
(D) 同E「リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム」(以下「リクルート」という。)のうちのプログラム部分(以下「Eリクルート」という。)を使用して、「リクルート」の配信サービスを遅くとも平成11年10月ころから(乙146の1)、
(E) 同F「愛と出会いの占い館」(以下「愛と出会いの占い館」という。)のうちのプログラム部分(以下「F愛と出会いの占い館」という。)を使用して、「愛と出会いの占い館」の配信サービスを遅くとも平成12年3月ころから(乙153の1)、
(F) 同H「映画館空席情報」(以下「映画館空席情報」という。)のうちのプログラム部分(以下「H映画館空席情報」という。)を使用して、「映画館空席情報」の配信サービスを遅くとも平成10年10月ころから(乙140の1)、
(G) 同J「四次婆」(以下「四次婆(DION)」という。)のうちのプログラム部分(以下「J四次婆」という。)を使用して、「四次婆(DION)」の配信サービスを遅くとも平成11年4月ころから(乙145の1)、
(H) 同K「ゲームコーナー」(以下「ゲームコーナー」という。)のうちのプログラム部分(以下「Kゲームコーナー」という。)を使用して、「ゲームコーナー」の配信サービスを遅くとも平成11年9月ころから(乙150の1)、
(I) 同L「さくま式スゴロク(東海道五十三次及び奥の細道)」(以下、同「東海道五十三次」部分を「東海道五十三次」、同「奥の細道」部分を「奥の細道」という。)のうち、「東海道五十三次」のプログラム部分(以下「L東海道五十三次」という。)を使用して、「東海道五十三次」の配信サービスを遅くとも平成12年2月ころから(乙151の1)、
(x@) 同O「ガチャピン・ムック」(以下「ガチャピン・ムック」という。)のプログラム部分(以下「Oガチャピン・ムック」という。)を使用して、「ガチャピン・ムック」の配信サービスを遅くとも平成12年2月ころから(乙152の1)、
 それぞれ、そのプログラム、データベース、データなどの電磁気記録を被告ホールディングスの南青山事務所内のサーバに記録し、文字、画像等の映像若しくは影像又は記録されているデータなどの情報を不特定の利用者又は特定多数の利用者の携帯端末に送信することにより行っていた(以下、上記までのプログラム部分と原告が作成した「奧の細道」のプログラム部分を併せて「原告プログラム」というほか、原告が作成した特定のプログラムという意味でも「原告プログラム」いうことがある。)。
 (それぞれ掲記の証拠のほか、争いのない事実、弁論の全趣旨)
(2) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
ア 配信
 被告ホールディングスは、平成10年10月、NTTドコモとコンテンツ提供契約を締結し、平成11年2月のiモードサービス開始と同時に、「A恋愛の神様」によって制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを開始した。(甲7、34別紙3、55)
イ メニュー構成
 「A恋愛の神様」によって制御されていた「恋愛の神様(NTTドコモ)」のメニュー構成は、(@)「2000〜の恋愛」、(A)「恋専毎日ホロスコ」、(B)「今月の運命」、(C)「今月のプレゼント」、(D)「合コンでゴン」、(E)「2人の未来」、(F)「片思いの行く末」、(G)「あの人との相性」、(H)「お読みください」、(I)「無料!心理テスト」、(x@)「登録コーナー」、(xA)「おまけ」から成っていた。(乙17)
ウ 機能
 「A恋愛の神様」によって制御されていた「恋愛の神様(NTTドコモ)」の機能としては、@占い結果、心理テスト結果、利用規約等の画面表示をする機能、A占いのための計算等をする機能、B心理テストのための計算等をする機能、C会員登録、会員プロフィール登録をする機能などがある。(乙17)
エ プログラム言語
 「A恋愛の神様」の開発に使用されたプログラム言語は、インタープリタ言語(ソースコードをインタープリタと呼ばれるプログラムに引き渡し、このインタープリタが逐次ソースコードに対応するルーチンを呼び出してプログラムを実行する言語)であるPHP3であり、iモード用のhtml(Webページを記述するマークアップ言語)の中にスクリプト(一連の処理手順の記述)として組み込まれ、その実行結果がhtml内の該当箇所に配置され、
 その結果、携帯電話等にhtmlに沿った表示がされる。
 本件において原告から提出された「A恋愛の神様」のソースコードの総行数は3245行である。
 (甲20、乙17、19)
オ 構成
(ア) 「A恋愛の神様」には、占いのための計算をしたり、占い結果を画面表示するなどを行う本体プログラムと、占い結果の内容を一覧表示して内容のチェックをしたり、ユーザー情報の削除、追加などをする管理プログラムとがある。(甲22の1・3、乙34)
(イ) 「A恋愛の神様」の本体プログラムは、
(@) 女性(金星)と男性(火星)のそれぞれの星座同士で男女の相性占いを行うプログラム(aisho-p.php3、aisho.php3)、
(A) 西洋占星術、四柱推命又は九星気学で今月の運命の占いを行うプログラム(destiny.php3)、
(B) 男女カップルの相性占いを行うプログラム(e-gokon.php3、gokon-p.php3、gokon.php3)、
(C) 生年月日から対応する星座を求めるプログラム(Fseiza)、
(D) 恋愛運の占いを行うプログラム(holo.php3)、
(E) ルーン石を利用したルーン占いで恋愛の行方の占いを行うプログラム(rune.php3)、
(F) 心理テストを行うプログラム(sinri.php3)、
(G) タロット占いを行うプログラム(tarot.php3)、
(H) 関数を定義するプログラム(util)
 などから成る。
 このうち、
 上記Fseiza(甲22の3の15頁)の中に
(@) Fgetseiza関数(甲22の3の15頁20行目〜。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)が存し、
上記util(甲22の3の51頁〜)の中に、
(A) Fgetnikkan関数(甲22の3の52頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。)、
(B) Fgetkyusei関数(甲22の3の52頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。)、
(C) Fgetymd関数(甲22の3の51〜52頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)、
(D) gifimg関数(甲22の3の51頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)
 が存し、
 上記aisho.php3(甲22の3の6頁〜)の中に
(E) Fgethosiseiza関数(甲22の3の6頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
 が存する。
 (甲22の3、乙17)
カ データ定義ファイル
(ア) 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、PHP言語のarray文を使用した配列(複数の値を格納できる変数で、添字〔各値の索引〕は並び順を示す数値となる。)又は連想配列(自由な文字列を添字とする配列)によって作成された多次元配列(階層又は表形式となった配列)を利用して定義されている。すなわち、複数のデータを配列に入れ、その配列を更に別の配列に組み入れ、これら配列を複数集めたものを1つのデータ定義ファイルとしている。これらデータ定義ファイルは、本体プログラムに配列として読み込まれて、本体プログラムの一部として使用される。(甲22の2・3)
(イ) 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、
(@) 百人一首の文章(100.data。甲22の2の1頁〜5頁。)、
(A) 男女それぞれの星座同士の相性度とその相性の内容説明である相性占いの文章(aisho.data。甲22の2の6頁〜16頁。以下「相性占いの結果データ定義ファイル」ともいう。)、
(B) 相性占いに係るサンプル文章(aisho.sample。甲22の2の17頁。)、
(C) 男女それぞれの生年月日とこれに対応する星座のデータ(aisho_date.data。甲22の2の18頁〜31頁。以下「相性占いの星座定義プログラム」ともいう。)、
(D) プレゼント当選者に係るサンプル文章(announce.data。甲22の2の32頁。)、
(E) 九星と干支のデータ(destiny.data。甲22の2の33頁。以下「今月の運命の定義ファイル」という。)、
(F) 今月の運命に係るサンプル文章(destiny.sample。甲22の2の34頁。)、
(G) 男女それぞれの星座同士の相性度及びその相性の内容説明並びに血液型の相性度に係る文章(gokon.data。甲22の2の40頁〜43頁。以下「合コンでゴン用データ定義ファイル」ともいう。)、
(H) 合コンでゴンに係るサンプル文章(gokon.sample。甲22の2の44頁。)、
(I) 恋愛運に係るサンプル文章(holo.sample。甲22の2の45頁。)、
(I@) 季節の占いの文章(natsu.data。甲22の46頁〜47頁。)、
(IA) メンテナンスのお知らせの文章(osirase.data。甲22の48頁。)、
(IB) お読み下さいの文章(readme.data。甲22の2の49頁。)、
(IC) ルーン石の呼称、そのルーン石の意味及びルーン占いの結果の文章(rune.data。甲22の2の50頁〜56頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル」ともいう。)、
(ID) 片思いの行く末に係るサンプル文章(rune.sample。甲22の2の57頁。)、
(IE) 99年最後の恋愛運の文章(saigo.data。甲22の2の58頁〜59頁。)、
(IF) 星座に係るデータ(seiza.data。甲22の2の60頁。)、
(IG) 心理テストの分類、メニュー、質問と答え、答えに応じた心理テスト結果の文章(sinri.data。甲22の2の61頁〜72頁。以下「心理テスト用データ定義ファイル」ともいう。)、
(IH) タロットの意味とタロット占いの結果の文章(tarot.data。甲22の2の73頁〜75頁。)、
(II) タロット占いに係るサンプル文章(tarot.sample。甲22の2の76頁。)、
(II@) バレンタインの占い結果の文章(valentin.data。甲22の2の77頁。)、
(IIA) バレンタインの占いに係るサンプル文章(valentin.sample。甲22の2の78頁。)、
(IIB) ホワイトデーの占い結果の文章(whiteday.data。甲22の2の79頁。)、
(IIC) ホワイトデーの占いに係るサンプル文章(whiteday.sample。甲22の2の80頁。)、
(IID) 2000年〜の占い結果の文章(y2k.data。甲22の2の81頁。)、
(IIE) 2000年〜占いに係るサンプル文章(y2k.sample。甲22の2の82頁。)などから成る。
 (甲22の2、乙18)
キ 画像ファイル
 41種のルーン石の画像から成り、ルーン占いにおいて、占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ、その画像が画面に表示される。画面に表示される画像は、別紙美術対比表1〜4の左欄のものである(以下、同対比表1及び2の左欄の画像を「原告カラー画像」と、同3及び4の左欄の画像を「原告白黒画像」とそれぞれいう。)。(甲19の1・2、弁論の全趣旨)
ク 会員情報の管理
 会員情報の管理には、データベースを利用しており、データベースの管理にはMySQLを使用している(以下、このデータベースを「原告会員情報データベース」という。)。(甲22の3の36〜37頁、乙19、弁論の全趣旨)
(3) その他
ア 「四次婆(よじばばあ)」は、もともとは平成10年2月にポケベルを媒体としてサービスを開始した文字情報サービスであり、四次元の住人である「四次婆」をメインキャラクターとしたコミュニケーションサービスであり、当時、女子中学生の間で浸透していた架空のキャラクターである四次婆を利用したコンテンツである。「四次婆(DDI)」を当初制作したのは有限会社プロシード(以下「プロシード」という。)であり、被告ホールディングスは、平成11年1月ころから「四次婆(DDI)」の配信サービスを開始した。原告は、その後、この「四次婆(DDI)」のプログラムの修正に当たった。原告が制作に関与した「四次婆(DDI)」は平成11年6月ころから配信サービスが開始された。(甲38の1〜113、55、89の1・2、乙144の1、弁論の全趣旨)
イ 「ツヴァイ資料請求」は、結婚相談所のツヴァイから被告ホールディングスが開発を受託したEZWeb向けの広告営業モデル型のサービスである。(乙72)
ウ 「リクルート」は、株式会社リクルートから被告ホールディングスが開発を受託したDDIポケットのPHS文字情報サービスPメールDX向けのサービスである。(乙72)
エ 「さくま式スゴロク」は、さくまあきらの企画によるスゴロク式ゲームであり、「東海道五十三次」、「奥の細道」及び「西遊記」の3部作である。「東海道五十三次」は、スゴロクの目を振って出た目の分だけ東海道を下っていくというものである。(甲55、弁論の全趣旨)
オ 「ガチャピン・ムック」は、株式会社フジクリエイティブコーポレーションの使用許諾を得た「ガチャピン」や「ムック」の画像等を利用した待ち受け画像、グリーティングカード等を配信するサービスである。(甲57、乙94)
(4) 原稿売買
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」に関し、平成11年2月22日付けで(実際の契約書締結はそれよりも後。)、被告ホールディングスとアカデメイアは、アカデメイアが制作した原稿を被告ホールディングスが使用することを許諾し、これに対して被告ホールディングスはアカデメイアに情報料の半額を支払うとする等を内容とする「iモード情報サービスに於ける占いコンテンツ用原稿売買契約書」を締結した。(乙31、証人C)
4 本件確認書
(1) 原告代表者は、被告Aの勧めもあって、平成11年8月30日、被告Aから1株5万円で20株(合計100万円)の被告ホールディングスの株式を取得した。(甲34別紙3、48)
(2) 被告ホールディングスの配信するコンテンツには、主に原告代表者が作成したプログラムが使用されていた。また、これらコンテンツのプログラム、データが蔵置されていた被告ホールディングスのサーバは、すべて原告代表者が選定して被告ホールディングスに納入し、その構成を設定したものであり、被告ホールディングスは、原告にそれらすべてについて保守管理を委託していた。これらのサーバには原告代表者のみしか知らない管理者用パスワードが設定してあり、原告代表者以外の者が保守管理をすることはできないようにされていた。原告代表者は、主にtelnetを利用した遠隔操作により上記サーバの保守管理をしていたが、必要に応じて被告ホールディングスに出向いてサーバの保守管理に当たることもあった。(甲34別紙1、48、50、弁論の全趣旨)
(3) 上記サーバについての保守管理契約では、保守委託料が、サーバ1台又はコンテンツ1つ当たり月額10万円又は20万円(一部は5万円)とされていたが、原告と被告ホールディングスとの間では、この保守委託料の額をめぐって上げる下げるとの応酬が続いていた。被告ホールディングスに平成11年12月ころ技術担当の取締役としてEが入社すると、Eから原告に対して提出が求められたサーバ構成図、プログラム設計書などの資料を原告が提出しなかったり、Eと原告代表者との間でサーバの保守管理方法について意見が対立したりし、被告ホールディングスと原告との間で紛議が生じるようになった。(甲1、37、48、83、乙95、原告代表者〔第2回〕、弁論の全趣旨)
(4) 平成12年3月26日午前7時45分ころから午前11時30分ころまでの間、被告ホールディングスのサーバが設置されたビルで電気設備点検のため停電となることから、被告ホールディングスは、サーバを順次強制終了させていった。被告ホールディングスからの報告及びサーバの遠隔操作により原告代表者もこのことを知っていた。
 ところが、その後、ビルの電源が復旧したにもかかわらず被告ホールディングスのサーバは起動せず、そのため被告ホールディングスのコンテンツ配信サービスが全部停止になったことから、同日昼ころ、管理者用パスワードを知らず自ら保守することができない被告ホールディングスは、原告代表者に対して、サーバの復旧を依頼した。ところが、原告代表者は、当日は日曜日であり原告の休業日であったことを理由に、原告の営業日である翌日の月曜日の昼ころからサーバの復旧作業に取り掛かる旨を回答した。
 (甲34、48、53、67、79の1、80の1、83)
(5) そのため、平成12年3月26日から同月27日未明にかけ、Eは、管理者用パスワードを解析してサーバにアクセスし、ようやくサーバを復旧するとともに、サーバ管理者用のパスワードを変更した。
 ところが、その後にリモートアクセスでサーバのパスワードが変更されたことに気が付いた原告代表者は、被告ホールディングスの事務所を訪れ、サーバを元の状態に戻して自分がサーバを管理することを要求した。しかし、Eはこれに応じなかった。
 (甲48、79の1)
(6) 平成12年3月27日、原告代理人弁護士高橋省は被告に対して内容証明郵便を送り(同月28日到達)、原告がサーバの監視、保守を行えないのは原告のプログラムに対する権利行使を妨げているものであるから、(@)上記書面到達後3時間以内に原告が被告ホールディングスのサーバを操作できるようにすること、(A)上記書面到達後1日以内に被告ホールディングスのサーバに被告ホールディングスが加えた操作を明らかにすることを要求するとともに、原告のこの要請に被告ホールディングスが応じない場合には直ちに法的手続をするとの警告をした。(甲79の1・2)
(7) その後、原告代表者がサーバの死活監視プログラムをそのままとしていたため、telnetを利用した原告から被告ホールディングスのサーバへの多数回のアクセスがあったり、サーバにアクセスできずサーバ停止と判断したことによる警告メールが大量に原告から被告ホールディングスに送信された。被告ホールディングスは、これらを、原告による被告ホールディングスのサーバのダウンをねらった妨害工作と受け止めた。(甲53、80の1、81の1、83)
(8) 平成12年3月31日、被告ホールディングス代理人弁護士Fは、原告に対し、被告ホールディングスが自己の資産であるサーバにアクセスするのは当然の権限である、原告には被告ホールディングスからの保守依頼に応じないなどの義務履行の懈怠があったほか、そもそも、当日は、原告が遠隔操作でサーバ起動時にサービスが開始できないようにわざと設定を変えていたことが判明した、その後もサーバダウンをねらった妨害工作があったとして、業務妨害行為の中止と保守委託契約の解除、貸与した物品の返還等を申し入れた。(甲80の1・2、弁論の全趣旨)
(9) 平成12年4月11日、原告代理人弁護士高橋省は、被告ホールディングスに対し、貸与した物品等の返還には応じるが、原告が被告ホールディングスに対して貸与している物品の返還、原告に対する未払代金の支払、原告プログラムの返還等を求める旨の内容証明郵便を送った。(甲81の1・2)
(10) その後も原告と被告ホールディングスの両者間で書面による代理人弁護士を介したやり取りがあったが(甲82の1〜2の2、83)、被告ホールディングスの担当者及び取締役と、原告代表者及びその妻とでされた協議においては激しい口論が生じ収拾の付かない状態となることから、平成12年5月ころ、上場を目指しており紛争を抱えこむのを回避したいと考えた被告Aからの申入れにより、弁護士を介せず、被告Aと原告代表者とが直接に交渉をすることになった。両者の間では、被告ホールディングスの未払金の有無、原告代表者の保有する被告ホールディングス株式の買取り、原告が開発中であったと主張するプログラムの開発料の支払、原告プログラムの著作権の買取り又は使用許諾の条件などの点について協議が行われた。もっとも、被告Aとしては、金銭的な支払により紛争が円満解決すればそれでよいという態度であり、細部は原告代表者主導で進められた。(甲34、49、49別紙、乙88、被告インデックス代表者(G)、原告代表者〔第2回〕、被告A、弁論の全趣旨)
(11) 原告及び原告代表者と、被告ホールディングス及び被告Aは、平成12年6月15日、次の記載のある書面(甲1。以下「本件確認書」という。)を取り交わした。(甲49、弁論の全趣旨)
 「1 ・・・〈省略〉
 2 株式会社インデックスは株式会社ハイパーキューブに、別紙ロイヤリティ契約分のプログラムに関連する該当コンテンツサービスが終了するまで、備考欄のロイヤリティ割合に応じた金額を支払う。ただし、期間は平成17年3月31日までとする。
 支払方法
 ・・・〈省略〉
 3 株式会社ハイパーキューブは、別紙のプログラムの平成17年3月31日分までの使用をAに許諾し、その対価は¥15、000、000−とする。
 但し、プログラムは株式会社インデックス社内での各プログラム1本づつの使用に留めることとし、それ以外の権利は株式会社ハイパーキューブが留保する。またコンテンツサービスを継続的に維持するために株式会社インデックスが行う改変については認めるがこれを除く著作権の侵害、およびプログラムを外部に漏洩・販売することは認めない。株式会社インデックスは平成17年3月31日をもって該当プログラムおよび該当プログラムから派生したプログラムの全ての使用を終了し破棄する。なおAは当該対価を平成12年7月5日までに株式会社ハイパーキューブに支払う。
 4 ・・・〈省略〉
 5 上記1・2の@およびBの支払が完了した後に、Hが所有している株式会社インデックスの株式20株をAへ¥5、000、000−で譲渡し、株券と引き換えにHへAから譲渡代金を支払う。
 6 上記以外に株式会社インデックスならびにAと株式会社ハイパーキューブならびにHの間において債権・債務はないことを確認する。なお、今後一切当事者間の不利益になるような発言等誹謗中傷行為をしないことを確認する。
 (別紙)開発費等
 四次婆リニューアル・・・〈省略〉
 恋愛の神様再構築・・・〈省略〉
 プライベートホームページ追加サーバー・・・〈省略〉
 アサヒ飲料アンケートプログラム・・・〈省略〉
 ツヴァイ資料請求プログラム・・・〈省略〉
 リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム・・・〈省略〉
 保守定額分
 ・・・〈省略〉
 DDI−P様向け四次婆・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 DoCoMo様向け恋愛の神様・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 IDO様向け愛と出会いの占い館
  ・プライベートホームページ・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 パソナソフトバンク様向け求人情報・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 IDO様向け映画館空席情報サービス・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 リクルートフロムエー様向けアルバイト情報検索プログラム・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 シンタックス様向け『ブティックホテル情報』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 DION様向け四次婆・・・〈省略〉
 ロイヤリティ契約分
 DDIポケット『ゲームコーナー』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 NTTドコモ『さくま式スゴロク』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 アサヒ飲料アンケートプログラム・・・〈省略〉
 DDIポケット『マップツアー得旅アミーゴ』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 DDIポケット『ALBAの映画タイム』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 NTTドコモ『ガチャピンムック』・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉
 開発キャンセル分
 父母会やろうよ・・・〈省略〉
 さくま式3部作第二弾『奥の細道』・・・〈省略〉
 特別保守費用
 四次婆リニューアル/仕様書違いによる作業・・・〈省略〉
 ・・・〈省略〉」
(12) 平成12年7月5日、被告Aは、原告に対し、上記許諾料1500万円及び株式買取代金500万円を支払い、原告代表者は、被告Aに対し、被告ホールディングスの株式20株を引き渡した。(甲34別紙3、50別紙、弁論の全趣旨)
5 被告の行為
(1) プログラム使用
ア 原告プログラム
 被告ホールディングスは、平成12年3月時点で、原告プログラム(「L奧の細道」を除く。)をサーバに蔵置し、これを使用してコンテンツ配信サービスを行っていた。(弁論の全趣旨)
イ 「奧の細道」
 被告ホールディングスは、「奧の細道」の配信サービスを平成12年5月以降に開始した。(甲116、乙154の1の1、弁論の全趣旨)
(2) プログラム作成
ア 「A−1旧恋愛の神様」
(ア) 開発・配信
 被告ホールディングスは、平成12年5月ころ、株式会社ケンパック(現在、グローバルバリュー株式会社。以下「ケンパック」という。)に対し、PHP言語でプログラムが作成されている「A恋愛の神様」をC言語で開発し直すことを委託し、ケンパックは、ソリューションシステム・インターナショナル株式会社(以下「ソリューションシステム」という。)にプログラム開発業務を再委託し、さらに、ソリューションシステムは、株式会社サザン・クリエイト(以下「サザンクリエイト」という。)に開発業務の一部を再委託した。プログラム開発は、ソリューションシステムとサザンクリエイトの担当者がそれぞれした。(甲18、乙3〜7、14、30)
 被告ホールディングスは、ケンパックから、新たなプログラムの納品を平成12年7月に受け(このプログラムが第2ソフトウェア目録記載1のソフトウェアのプログラム部分であり、以下、「A−1旧恋愛の神様」という。)、同年9月からこのプログラムによる「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行っている。(乙5、16、弁論の全趣旨)
(イ) メニュー構成
 「A−1旧恋愛の神様」により制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」のメニューは、(@)「お知らせ」、(A)「無料!心理テスト館」、(B)「恋専毎日ホロスコ」、(C)「今週の恋の呪文」、(D)「今月の運命」、(E)「タロットのお告げ」、(F)「神秘ルーン石占い」、(G)「合コンでゴン」、(H)「あの人との相性」、(x)「2000〜の恋愛」、(x@)「開運プレゼント」、(xA)「恋のラッキー体験談」、(xB)「お読みください」、(xC)「登録コーナー」、(xD)「よくある質問」から成る。(乙17)
(ウ) 機能
 「A−1旧恋愛の神様」により制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」の機能は、@占い結果、心理テスト結果、利用規約等の画面表示をする機能、A占いの計算等をする機能、B心理テストの計算等をする機能、C会員登録、会員プロフィール登録をする機能などがある。(乙17)
(エ) プログラム言語
 「A−1旧恋愛の神様」の開発に使用されたプログラム言語は、コンパイラ言語(ソースコードをコンパイラでオブジェクトコードに一括変換しておいてからプログラムを実行する言語)であるC言語(一部でC++ )であり、テキストファイルを読み込み、プログラム実行の結果としてiモード用html文全体を生成している。
 本件において被告らから提出された「A−1旧恋愛の神様」のソースコードの総行数は1万5548行である。
 (乙17、19)
(オ) 構成
a 「A−1旧恋愛の神様」には、占いのための計算をしたり、占い結果を画面表示するなどを行う本体プログラムと占い結果の内容を一覧表示し内容のチェックをしたり、ユーザー情報の削除、追加などをする管理プログラムとがある。(乙30、33の1〜23、34)
b 「A−1旧恋愛の神様」の本体プログラムには、
(@) 女性(金星)と男性(火星)のそれぞれの星座同士で男女の相性占いを行うプログラム(aisho.c)、
(A) 西洋占星術、四柱推命又は九星気学で今月の運命の占いを行うプログラム(destiny.c)、
(B) 各種共通処理の関数を定義するプログラム(form.c)、
(C) 心理テストを行うプログラム(free.c)、
(D) 男女のカップルの相性占いを行うプログラム(gokon.c)、
(E) 恋愛運の占いを行うプログラム(holo.c)、
(F) テキストファイルを読み込んでiモード用htmlに変換する関数を定義等するプログラム(html.c)、
(G) ルーン石を利用したルーン占いによる恋愛の行方の占いを行うプログラム(rune.c)、
(H) 星座等の計算関数を定義するプログラム(seiza.c)、
(I) タロット占いを行うプログラム(tarot.c)
 などから成る。
 このうち、
 上記seiza.c(乙30の187頁〜)の中に
(@) GetSeizaNo関数(乙30の187頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)、
(A) GetNikkan関数(乙30の187頁〜188頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。)、
(B) GetKyusei関数(乙30の188頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。)
 が存し、
 上記form.c(乙30の39頁〜)の中に
(C) GetYmd関数(乙30の39頁〜40頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)
 が存し、
 上記html.c(乙30の71頁〜)の中に
(D) GetgifTag関数(乙30の72頁〜73頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)
 が存し、
 aisho.c(乙30の23頁〜)の中に
(E) GetSyugosei関数(乙30の26頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
 が存する。
 (乙17、30)
(カ) データ定義ファイル
a 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、汎用的なデータ形式であるCSVファイル形式(複数のデータをカンマ等の記号で区切って並べたもの)でデータが羅列され(一部htmlファイルが含まれている。)、本体プログラムにより構造体(複数の型の変数をひとまとめとしたもの。)又は配列として読み込まれて、本体プログラムの一部として使用される。(乙29、54)
b 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、
(@) 男女二人の星座同士の相性度とその相性の内容説明である相性占いの文章(aisho.csv。乙29の1頁〜9頁。以下「相性占いの結果データ定義ファイル」ともいう。)、
(A) 男性(火星)の生年月日とこれに対応する星座のデータ(aisho_mars.csv。乙29の10頁〜15。)、
(B) 女性(金星)の生年月日とこれに対応する星座のデータ(a i s h o _venus.csv 。乙29の16頁〜25頁。以下、aisho_mars.csvと併せて「相性占いの星座定義ファイル」ともいう。)、
(C) 九星占いの文章(destiny200006.csv、destiny200007.csv。乙29の26頁〜27頁。)、
(D) 謝罪の文章(dberrmsg.txt。乙29の29頁。)、
(E) 九星と干支のデータ(destiny.csv。乙29の30頁。以下「今月の運命の定義ファイル」ともいう。)、
(F) FAQの文章(FAQ.csv。乙29の31頁。)、
(G) 心理テストの分類のデータ(free.txt。乙29の28頁、32頁。)、
 女性編の心理テストのメニューのデータ(01.txt。乙29の33頁。)、
 男性編の心理テストのメニューのデータ(02.txt。乙29の34頁。),
 男女共通編の心理テストメニューのデータ(03.txt。乙29の35頁。)、
 心理テストの質問及び答え、 答えに応じた心理テスト結果の文章(sr_boy01.csv〜sr_boy11.csv、sr_boy.csv、sr_com01.csv〜sr_com09.csv、sr_com.csv、sr_girl01.csv〜sr_girl11.csv、sr_girl.csv。乙29の36頁〜76頁。以下、free.txt、01.txt、02.txt、03.txtと併せて「心理テスト用データ定義ファイル」ともいう。)、
(H) 男女二人の星座の相性度及びその相性の内容説明である合コンでゴンの文章(gokon.csv。乙29の77頁〜78頁。以下「合コンでゴン用データ定義ファイル」ともいう。)、
(I) 恋愛運の文章(holo20000514.csv〜holo20000518.csv,holo20000604.csv〜holo20000608.csv、holo20000614.csv〜holo20000618.csv。乙29の79頁〜93頁。)、
(I@) 格言のメニュー及び文章(kakugen.csv、kakugen.txt。乙29の115頁〜117頁。)、
(IA) バレンタインの占い結果の文章(valentin.csv。乙29の118頁。)、
(IB) ルーン占いのメニュー(rune.txt。乙29の135頁。)、
(IC) ルーン石の呼称、そのルーン石の意味及びルーン占い(今日会った人との相性)の結果の文章(rune01.csv。乙29の136頁〜137頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル1」ともいう。)、
(ID) ルーン占い(今日会った人との相性)のメニュー(rune01.txt。乙29の138頁)、
(IE) ルーン石の呼称、そのルーン石の意味及びルーン占い(片思いの行方)の結果の文章(rune02.csv。乙29の139頁〜141頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル2」ともいう。)、
(IF) ルーン占い(片思いの行方)のメニュー(rune02.txt。乙29の142頁。)、
(IG) タロット占いのメニュー(tarot.txt。乙29の143頁。)、
(IH) タロットの意味とタロット占い(恋人に不安あり)の結果の文章(tarot01.csv。乙29の144頁〜145頁。)、
(II) タロット占い(恋人に不安あり)のメニュー(tarot01.txt。乙29の146頁。)、
(II@) タロットの意味とタロット占い(ケンカした時)の結果の文章(tarot02.csv。乙29の147頁〜148頁。)、
(IIA) タロット占い(ケンカした時)のメニュー(tarot02.txt。乙29の149頁。)、
(IIB) タロットの意味とタロット占い(カップルの未来)の結果の文章(tarot03.csv。乙29の150頁〜151頁。)、
(IIC) タロット占い(カップルの未来)のメニュー(tarot03.txt。乙29の152頁。)、
(IID) 2000年〜の占い結果の文章(y2k2000.csv。乙29の153頁〜154頁。)、
(IIE) 疫病神の占い結果の文章(yakukami.csv。乙29の155頁〜162頁。)、
(IIF) 生年月日とこれに対応する星座のデータ(yaku_jupiter.csv。乙29の163頁〜165頁。)
などから成る。
 (乙18、29)
(キ) 画像ファイル
 41種のルーン石の画像から成り、ルーン占いにおいて、占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ、その画像が画面に表示される。画面に表示される画像は、別紙美術対比表1〜4の右欄のもの(以下「被告カラー画像」という。)である。(乙27、弁論の全趣旨)
(ク) 会員情報の管理
 会員情報の管理には、データベースを利用しており、データベースの管理にはSybaseを使用している(以下、このデータベースを「被告会員情報データベース」という。)。(乙19、30の151頁〜153頁)イ「A−1新恋愛の神様」
(ア) 開発・配信
 被告ホールディングスは、平成15年、合資会社ビルド(現在、有限会社ビルド。以下「ビルド」という。)に対して「A−1旧恋愛の神様」を拡張更新するプログラムの開発を委託した。(乙3)
 被告ホールディングスは、ビルドから、新たなプログラムの納品を平成15年5月ころに受け(このプログラムも第2ソフトウェア目録記載1のソフトウェアに係るプログラムであり、以下、「A−1新恋愛の神様」という。)、このころから、このプログラムによる「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行っている。(乙8〜10、弁論の全趣旨)
 なお、その後も「A−1新恋愛の神様」の拡張更新は続けられている。
 (乙9、11、12、弁論の全趣旨)
(イ) プログラム言語
「A−1新恋愛の神様」は、「A−1旧恋愛の神様」と同様に、C言語で開発されている。ただし、本件で被告らから提出されたソースコードは、後記「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」が作成された後の平成19年1月〜平成20年12月のころに作成されたものである。(乙69、90)
 後記「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」は、「A−1新恋愛の神様」とキャリアを異にするが、おおむねその内容は共通している。(弁論の全趣旨)
(ウ) 構成
「A−1新恋愛の神様」の本体プログラムには、
 html.cpp(乙90の240頁〜)の中に
(@) GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙90の291頁〜292頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)、
(A) GetNikkan関数(乙90の294頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。)、
(B) GetKyusei関数(乙90の294頁〜295頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。)、
(C) GetYmd関数(乙90の261頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)、
(D) *GetImgTag関数(乙90の265頁〜266頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)が存する。
 (乙90)
(エ) 画像ファイル
 41種のルーン石の画像から成り、ルーン占いにおいて、占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ、その画像が画面に表示される。画面表示される画像は、別紙美術対比表1〜4の右欄のものであったが、平成20年10月24日、別なものに差し替えられた。(乙27、弁論の全趣旨)
 後記「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」は、「A−1新恋愛の神様」とキャリアを異にするが、画像ファイルは共通である。(弁論の全趣旨)
(オ) 会員情報の管理
 会員情報の管理について「A−1旧恋愛の神様」から変更はない。
 後記「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」は、「A−1新恋愛の神様」とキャリアを異にするが、会員情報データベースは共通である。(弁論の全趣旨)
ウ 「A−2恋愛の神様」
(ア) 開発・配信
 被告ホールディングスは、プログラム開発会社に「A−1新恋愛の神様」をEZwebに対応させたプログラムの開発を委託し、平成16年1月ころ、その納品を受け、そのころ、このプログラム(このプログラムが第2ソフトウェア目録記載2のソフトウェアに係るプログラムであり、以下、「A−2恋愛の神様」といい、同目録2記載のソフトウェア及びこれにより配信されるサービスを指すものとして「恋愛の神様(KDDI)」という。)を使用して、「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスを開始した。(甲76、弁論の全趣旨)
(イ) プログラム言語
 「A−2恋愛の神様」は、「A−1新恋愛の神様」と同様に、C言語で開発されている。(乙45、50、57)
(ウ) 構成
 「A−2恋愛の神様」の本体プログラムのhtml.cpp(乙45の121頁〜)の中に
(@) GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙45の152頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)、
(A) GetNikkan関数(乙45の154頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。)、
(B) GetKyusei関数(乙45の154頁〜155頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。)、
(C) GetYmd関数(乙45の133頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)、
(D) *GetImgTag関数(乙45の135頁〜136頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)、
(E) *GetVenusSeizaName関数及び*GetMarsSeizaName関数(乙45の152頁〜153頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
 が存する。
 (乙45、121)
エ 「A−3恋愛の神様」
(ア) 開発・配信
 被告ホールディングスは、プログラム開発会社に「A−1新恋愛の神様」をYahoo!ケータイに対応させたプログラムの開発を委託し、平成15年8月ころその納品を受け、そのころ、このプログラム(このプログラムが第2ソフトウェア目録記載3のソフトウェアに係るプログラムであり、以下、「A−3恋愛の神様」といい、同目録3記載のソフトウェア及びこれにより配信されるサービスを指すものとして「恋愛の神様(ソフトバンク)」という。)を用いて「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを開始した。(弁論の全趣旨)
(イ) プログラム言語
「A−3恋愛の神様」は、「A−1新恋愛の神様」と同様に、C言語で開発されている。(乙46、50、58)。
(ウ) 構成
 「A−3恋愛の神様」の本体プログラムのhtml.cpp(乙46の123頁〜)の中に
(@) GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙46の153頁〜154頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)、
(A) GetNikkan関数(乙46の155頁〜156頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。)、
(B) GetKyusei関数(乙46の156頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。)、
(C) GetYmd関数(乙46の135頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)、
(D) *GetImgTag関数(乙46の137頁〜138頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)、
(E) *GetVenusSeizaName関数及び*GetMarsSeizaName関数(乙46の154頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
 が存する。
 (乙46)
(3) 負荷分散装置の導入及び稼働
ア 導入・稼働
(ア) 被告ホールディングスは、株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーからf5ネットワークス社の負荷分散装置であるBIG−IP(以下「BIG−IP」という。)をリースで導入し、平成12年5月からこれを稼働させている。なお、被告インデックスは現在もBIG−IPを使用しているが、これと平成12年当時使用していた機種とは異なるものである。(争いのない事実、甲2、5の2、36別紙6、乙70、84、96、弁論の全趣旨)
(イ) 被告ホールディングスは、南青山事務所(以下「南青山」という。)にサーバを設置していたが、平成12年5月ころから平成13年にかけて、これら南青山に設置されたサーバをエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の大手町データセンター(以下「大手町」という。)に順次移管し、さらに、被告ホールディングスは、平成14年5月から、ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC株式会社(現在、ソフトバンクIDC株式会社)のデータセンター(新宿)にサーバを移管している。(甲76、乙59の1・2、117、118、弁論の全趣旨)
 大手町で被告ホールディングスが使用するサーバ群の回線は1回線のみであり、すべてのサーバがBIG−IPの配下で稼働することになっている。(乙59の1、弁論の全趣旨)
イ 負荷分散等の意義
(ア) 負荷分散は、広い意味では複数のサーバに処理を分散し、個々のサーバに掛かる負荷を平準化(ロードバランス)することをいい、負荷分散装置を使用する方法のほか、DNS(Domain Name System。ホスト名とIPアドレスの結び付きを提供するサービス)を利用して1つのホスト名に複数のIPアドレス(物理サーバ)を順番に割り当て、ほぼ均等にそれらIPアドレスにトラフィックを振り分けるDNSラウンドロビン方式、複数のサーバが分割された機能を分担し合うクラスタリングも含まれる。負荷分散装置による典型的な負荷分散は、アクセスをトラフィックに応じて動的に複数のサーバへ分配するものであり、NAT(Network Address Translator。インターネット上におけるグローバルアドレスを内部ネットワーク上のプライベートアドレスに変換する仕組み)方式により、一定のアルゴリズムで、負荷分散装置へのあて先アドレスを各サーバのIPアドレスに変換して、ローテーションを動的に変更させながら各サーバにトラフィックを割り振り、クライアント−サーバ間の個々のコネクションを管理するというものである。(甲36別紙6、別紙9、別紙10、乙70、77の1・2)
(イ) ファイアウォールは、内部ネットワークをインターネットなどの外部からの不正なアクセスから防止するものであり、ゲートウェイ(ネットワーク同士の接点において接続先のネットワークに合わせてプロトコルなどを変換するハードウェア)をパケットが通過する際にパケットのヘッダを解析してパケットを遮断させ又は通過させるパケットフィルタリングやプロキシ(代理)サーバ経由で外部との接続、認証を行うアプリケーションレベルゲートウェイなどがある。(甲36別紙3、別紙4、別紙5)
ウ 負荷分散の実行
 被告ホールディングスは、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」につき、それぞれ、1台のサーバをデータベースサーバとして、2台のサーバをWWWサーバとしてプログラムを1部複製し(合計2部)、この合計3台のサーバをBIG−IPの配下に置き、BIG−IPの負荷分散機能を利用し、コンテンツ配信サービスを行っている。(弁論の全趣旨)
6 前訴和解
(1) コンテンツ売却
ア 被告ホールディングスは、コミュニケーション系サイトからの整理、撤退のため、平成13年7月31日、株式会社デリリオスエンタテインメント(以下「デリリオス」という。)との間で、次のとおり(判決注:契約書上の呼称は本判決のものに置き換えてある。)、代金1億円(消費税別)でコンテンツを売却する契約を締結した。これに伴い、平成13年8月ころ、被告ホールディングス名義による「四次婆(DDI)」、「四次婆(DION)」及び「プライベートホームページ」の配信サービスは停止され、デリリオス名義による上記コンテンツの配信サービスが開始された。(甲75、76、78)
 「第1条(定義)
 本契約において『本件各コンテンツ』とは、被告ホールディングスが開発・運営・管理している下記の各コンテンツをいう。
 1名称『四次婆』
 配信場所DDIポケット『四次婆』
 <URL省略>
 DION『四次婆』
 <URL省略>
 <URL省略>
 2名称『プライベートホームページ』
 配信場所<URL省略>
 第2条(目的)
 被告ホールディングスはデリリオスに対し、平成13年8月31日、本件各コンテンツ及びこれに関する下記の目的物(以下『本件目的物』という)を売り渡し、デリリオスはこれを買い受けた。
 記
 1 本件各コンテンツに関するプログラム(以下『本件プログラム等』という)の所有権、著作権その他一切の権利
 2 別紙〈判決注:省略〉記載の商標権(以下『本件商標権』という)
 ・・・
 第4条(引渡し)
 1 被告ホールディングスはデリリオスに対し、平成13年月日限り、第3条2項〈判決注:省略〉に定める売買代金全額の支払いを受けるのと引き換えに本件目的物を引き渡す。
 但し、本件商標権を除く本件目的物の引渡しは占有改定によるものとし、本件機材等は被告ホールディングスに設置し、デリリオスの委託の下、被告ホールディングスが引き続き保守・管理等を行うものとする。
 2 被告ホールディングスは、平成13年8月31日限り、本件商標権の移転に必要な全ての手続を開始する。
 第5条(権利の移転)
 本件目的物の所有権、著作権、商標権等の一切の権利は、被告ホールディングスが第3条2項に定める売買代金全額の支払いを受けるのと引き換えに、デリリオスに移転する。
 ・・・
 第10条(契約関係の承継)
 デリリオスは、第5条に定める本件目的物の権利移転と同時に、被告ホールディングスと本件各コンテンツ利用者との間の本件各コンテンツ利用契約上の地位を承継する。
 ・・・
 第12条(保守・管理等)
 1 本件目的物の権利移転後、デリリオスは被告ホールディングスに対し、本件コンテンツの保守・管理等を委託するものとし、デリリオスは被告ホールディングスの指示に従い本件コンテンツを運営するものとする。
 2 デリリオスは被告ホールディングスに対し、保守・管理・運営業務の対価として、1コンテンツあたり毎月金1、000、000円を支払うものとする。
 3 保守管理契約の細目は、被告ホールディングス・デリリオス別途協議の上、これを定めるものとする。
 ・・・」
イ その後、上記1億円の売却代金は半額に減額され、平成14年8月30日、被告ホールディングスは、受領した上記1億円のうち5000万円をデリリオスに返還した。(甲78)
ウ 被告ホールディングス又は被告インデックスは、子会社を通じるなどして、上記契約に従い、「四次婆(DDI)」、「四次婆(DION)」及び「プライベートホームページ」の配信サービスの実行を行った。(乙79)
(2) 前訴提起
 原告は、平成15年7月、被告ホールディングスに対し、被告ホールディングスがビットオンに「Oガチャピン・ムック」と互換性のある新プログラムを制作させるに当たって「Oガチャピン・ムック」のプログラムを複製又は送信可能化させ、また、「ガチャピン・ムック」の画像等の画面やその表示順序を複製又は送信可能化させたことを理由とする著作権侵害などに基づいて(ただし、訴え変更後のもの)、損害賠償金1億3484万8522円の内金5000万円の支払を求める訴え(当庁平成15年(ワ)第16027号。以下「前訴」という。)を提起した。(争いのない事実、甲57、61、弁論の全趣旨)
(3) 裁判上の和解
 原告(同事件原告)と被告ホールディングス(同事件被告)及び被告A(同事件利害関係人)は、平成18年9月1日、次のとおりの裁判上の和解(以下「前訴和解」という。)をした。(争いのない事実、甲65)
 「1 本和解は、@東京地方裁判所平成15年(ワ)第16027号著作権報酬金請求事件、A被告が別紙プログラム目録記載のプログラム『ガチャピン・ムック』、同『プライベートホームページ』及び同『四次婆』を、原告の許諾なく第三者に流出させたとされる紛争、並びにB別紙プログラム目録記載の各プログラムの原作品につき、被告が不適切な管理を行ったとされる紛争の各紛争を解決するものである(以下、@ないしBの各紛争を一括して『本件紛争』という。)。
 2(1) 被告は、原告に対し、本件紛争の解決金として、連帯して1億6000万円の支払義務のあることを認める。
 (2) 利害関係人は、原告に対し、本項(1)記載の被告の債務について連帯保証する。
 (3) 被告及び利害関係人は、原告に対し、平成18年9月29日限り、連帯して、本項(1)記載の金員を・・・〈判決注:省略〉に送金して支払う。
 3 原告と被告は、別紙プログラム目録記載の各プログラムの著作権が原告に帰属することを相互に確認する。
 4(1) 原告は、被告に対し、訴外株式会社デリリオスエンタテインメント(以下「デリリオス」という。)への再譲渡を目的として、別紙プログラム目録記載のプログラムのうち、プログラム「プライベートホームページ」及び同「四次婆」の開発段階プログラム(別紙「『プライベートホームページ』開発段階プログラム」及び「『四次婆』開発段階プログラム」のとおり。)の複製物及びその著作権を、合計金500万円で譲渡する。
 (2) 被告は、原告に対し、平成18年9月29日限り、本項(1)記載の金500万円を・・・〈判決注:省略〉に送金して支払う。
 (3) 原告は、本項(1)において譲渡した各著作物につき、著作者人格権を行使しない。
 (4) 原告は、被告に対し、本項(1)記載の各プログラムについて、隠れたものも含め一切の瑕疵担保責任を負わない。
 (5) 本項(1)記載の譲渡は、原告、被告及びデリリオスのソフトウェア開発や運用事業を何ら制約するものではない。
 5 原告は、本和解成立後速やかに、被告及び利害関係人に対する本件紛争に関するすべての刑事告訴を取り下げる。
 6 原告は、原告を債権者、デリリオスを債務者とする東京地方裁判所平成17年(ヨ)第22061号公衆送信等禁止仮処分命令申立事件を、本和解成立後速やかに取り下げる。
 7 デリリオスが、平成18年9月1日以前に、別紙プログラム目録記載のプログラム「プライベートホームページ」又は同「四次婆」につき負荷分散装置を使用していたことを原因として、直接又は間接に原告の著作権その他の法的利益を侵害していた場合、被告及び利害関係人は、原告に対し、デリリオスの原告に対する損害賠償債務を免責的に引き受けることとし、連帯してこの損害賠償債務を弁済する。
 8 別紙プログラム目録記載の各プログラムにつき、被告又は利害関係人が、負荷分散装置を使用していたことを原因として、直接又は間接に原告の著作権その他の法的利益を侵害していた場合、原告が被告又は利害関係人に対し損害賠償請求権を行使することを妨げない。
 9 ・・・〈判決注:省略〉
 10 原告は、被告に対するその余の請求を放棄する。
 11 原告、被告及び利害関係人は、原告と被告の間、原告とデリリオスとの間、及び原告と利害関係人との間において、本件紛争に関し、本和解条項に定めるほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。
 12・・・〈判決注:省略〉
(別紙)プログラム目録
 原告被告間の平成12年6月15日付確認書記載の各プログラムのうち、下記のプログラム
 記
 1 ガチャピンムック
 2 プライベートホームページ
 3 四次婆
 4 恋愛の神様
 5 アサヒ飲料アンケートプログラム
 6 リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム
 7 IDO向け愛と出会いの占い館
 8 パソナソフトバンク求人情報サーバー
 9 IDO向け映画館空席情報サービス
 10 シンタックス向けブティックホテル情報
 11 ゲームコーナー
 12 さくま式スゴロク
 13 マップツアー得旅アミーゴ
 14 ALBAの映画タイム
 15 父母会やろうよ
 16 奥の細道」
 なお、上記前訴和解別紙プログラム目録に記載のとおり、同別紙記載のプログラムとは、本件確認書締結に当たって前提とされたプログラムであり(すなわち、本判決における原告プログラムと同旨。)、前訴和解時に被告インデックスが配信中のコンテンツが使用しているプログラムではない。したがって、同目録記載15及び同16のプログラムは、原告が開発中であった未完成のプログラムの方を指している。
(争いのない事実、甲1、乙62、63、122、弁論の全趣旨)
(4) 和解確認書
 原告と被告ホールディングスは、前訴和解第2項の1億6000万円の内訳をどのような名目とするかについて、前訴和解成立前から協議をしており、被告ホールディングスは、(@)「Oガチャピン・ムック」の未払ロイヤリティ、(A)「@四次婆」、「J四次婆」及び「Bプライベートホームページ」をデリリオスに譲渡したことに伴う損害賠償金並びに(B)前訴和解条項別紙プログラム目録記載のプログラムについて不適切な管理を行ったことによる損害賠償金とする提案を行った。しかし、原告がこの内容に強く反発したことから、被告ホールディングスは、中途半端な修正にとどまってなおかつその内容に納得したと見られるよりは、一切修正を求めないことによって納得した上で合意したものではないことを示す方針を採ることとした。そして、上記前訴和解同日、原告と被告ホールディングス及び被告Aは、前訴和解第2項の1億6000万円の内訳を、(@)「Oガチャピン・ムック」の未払ロイヤリティ、(A)「Oガチャピン・ムック」、「@四次婆」、「J四次婆」及び「Bプライベートホームページ」の著作者人格権の侵害による損害賠償並びに(B)前訴和解条項別紙プログラム目録記載のプログラムの原作品の滅失につき被告ホールディングス及び被告A不適切な管理を行ったことによる損害賠償とする旨の確認書を取り交わした。(甲63、64、66、乙130)
(5) 平成18年10月30日、原告は本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
第3 争点
(権利の有無)
1 プログラムに係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
2 言語(文章)に係る著作権(複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権侵害関係)
3 美術(画像)に係る著作権(複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権侵害関係)
4 データベース(データ定義ファイル)に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
5 データベース(会員情報データベース)に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
6 編集著作物に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
7 画面表示に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)
8 数値、記号に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)
(侵害行為の有無)
9 期間制限違反
10 数量制限違反
11 改変
12 氏名非表示
13 複製物の交付
14 翻案
15 みなし侵害
(責任原因)
16 被告ホールディングスの責任
17 被告インデックスの責任
18 被告Aの責任
19 責任態様
(債務不履行)
20 許諾契約違反
(損害)
21 損害の発生
22 利益額
23 損害の額(著作権法114条2項)
24 慰謝料
(不当利得)
25 不当利得
第4 争点に関する当事者の主張
1 プログラム
(1) 対比部分の創作性
ア 原告
(ア) 星座を求めるプログラム
a(a) 原告代表者は、「A恋愛の神様」を、被告ホールディングスから交付された数枚程度の企画書を参照して独自に作成した。この際、原告がアカデメイア又は被告ホールディングスからプログラム仕様書や計算式の交付を受けたことはない。そもそも、プログラマーではない占い師がプログラムの内部変数名を詳細に指定するはずもない。
 アカデメイアから占いに関する計算式が提供されていたのであれば、「A−1旧恋愛の神様」作成時に、同プログラムの作成者は各種占いの仕組みをアカデメイアに聞けば済むはずであるが、実際には、同作成者が占いの仕組みが分からないとするコメントをソースコード中に残していたり、第三者のホームページを参考資料として閲覧したりしている。
(b) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」は、平成11年2月22日から配信サービスが開始されているが、被告らの主張するように同月10日にアカデメイアから原告代表者に対して占いの仕様が指示されたのでは、到底同月22日までにプログラミングが間に合うはずがない。
(c) 被告ホールディングスがNTTドコモに提出した平成11年2月3日付け「恋愛の神様(NTTドコモ)」に係る企画書には、原告代表者の生年月日を用いたサンプル登録画面が記載されており、原告代表者が作成中のプログラムの画面を被告らが動作させてその画面表示を基に作成したものであることが明らかである。したがって、原告代表者が全面的に「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画を行い、その企画を被告ホールディングスがNTTドコモに持ち込んだことを裏付けている。また、既に同日時点で「A恋愛の神様」が稼働していたことを意味するから、被告らが主張するように、同年2月10日にアカデメイアが原告代表者に占いの仕様を指示するということもあり得ない。
(d) 西洋占星術にしても、四柱推命にしても、過去何百年にもわたって行われている一般的な占いであって、その仕組みは広く知られており、わざわざ占い師が仕様を定めるような特殊なものではない。また、計算方式や計算精度はプログラムの作成者にゆだねられるのであって、占いの仕組みから自動的に計算式が決定されるようなものでもない。
(e) 被告らがアカデメイアが原告代表者に指示したとする日干の計算式は不完全であるし、「A恋愛の神様」が使用している計算式とも異なる。このような不完全な計算式しか指示できなかったアカデメイアよりも、原告の方が占いに精通していることは一目瞭然である。また、被告らにおいてアカデメイアが原告に提供したとする資料と「A恋愛の神様」が使用している立春の区分とは異なっている。
b 「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは、月と日という異なる範囲を持つ数値に対し、まず、月を使用した荒い振り分けを行い、続いて各月の中で、日付を使用して星座を判断するという2段階の流れとしているものであり、原告代表者独自の表現である。
c 「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムのスペースや改行位置、変数名などの部分には創作性が認められる。
d 生まれた月日に対応した星座名を求めるアルゴリズムの表現方法としては、C言語で作成された「A−1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムを例にとれば、(@)文法上不要な括弧やスペースの入れ方を変える、(A)文法上不要な括弧やスペースを取り除く、(B)括弧の部分ですべてインデントをする、(C)比較演算子「<=」(以下)に代えて「<」(小なり)を使用する、(D)if文に代えて条件演算子「?:」(3項演算子)を使用する、(E)switch−case文に代えてif文のみを使用する、(F)if−else文を使用する変わりに、変数に値を代入しておきif文の条件成立の場合に変数を上書きする、(G)最後のcaseをdefaultにして範囲外の値が返されるのを防ぐ、(H)条件を反転させる、(x)月の順番ではなく星座番号の順番に従ってコードを記述する、(x@)「{」の位置を上下にそろえる、(xA)引数の記述順序を変え、又はポインタを使用する、(xB)変数の型をchar型に変える、(xC)変数の型をunsigned型にする、(xD)星座番号をdefineで定数としておく、(xE)defineに代えてenumを使用する、(xF)条件と設定値を配列にまとめてループで読み出す、(xG)月と日を同時に判定する、(xH)1年の全日付について星座番号を定めたテーブルを準備し、計算式で該当星座番号を求める、などの多数の表現がある。
(イ) 日干計算のプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムの変数名、関数名などの部分には創作性がある。
(ウ) 九星を求めるプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 立春の判断方法は数多く存在しており、「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは、その中でたまたま原告代表者が採用した手法で記述されている。
c 「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムの「d25」、「d23」という変数名などの部分には創作性が認められる。
d 「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムでは、「立春」を表す変数名に誤って「shunbun」(春分)と命名してしまったが、このような選択は独創的である。
(エ) 年月日を得るプログラム
 上記(ア)aに同じ。
(オ) 画像タグを生成するプログラム
 上記(ア)aに同じ。
(カ) 守護星を求めるプログラム
 上記(ア)aに同じ。
(キ) 相性占いの結果データ定義ファイル
a たとえデータであってもプログラムの一部である。データ定義ファイルのデータの数、データの意味、データの並び順、データの分割方法に必然性はないから、創作性がある。
b 星座の種類は12種類しかないから、数値などで識別するのが一般的であるにもかかわらず、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルは、星座の英語名で識別するようにしている。
(ク) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(キ)aに同じ。
b 「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルのように星座名を英語の文字列で指定することや、日付を8桁で表現することは、他に方法がないほどの必然的なものではない。12種類しかない星座をわざわざ文字列で表したならば、日付についても文字列で表す方が月日の区切り文字などを入れられて分かりやすくなる。また、年部分を2桁で表す方法も一般的に使われているが、これとも異なる表現である。
c 「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは、データを先頭から昇順に並べているが、ほかにも、年を定めたテーブルを引き、次に月を定めたテーブルを引き、そして日を定めたテーブルを引き、最終的に結果を得るような方法等もあるし、そもそもテーブルを使わず計算式で答えを求める方法もある。
(ケ) 今月の運命の定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(コ) 心理テスト用データ定義ファイル
a 上記(キ)aに同じ。
b 「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルは、データとデータの間の連結関係を示し、全体として質問のツリー構造を作り上げ、ユーザー入力に対して次々と質問を切り替えていくという簡易的なプログラム構造を規定したものである。
(サ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(シ) ルーン占い用データ定義ファイル
a 上記(キ)aに同じ。
b 「A恋愛の神様」で画面に表示すべき画像のファイル名とルーン占い用データ定義ファイルの変数名は、原告代表者が自由な発想に基づき命名したものである。
イ 被告ら
(ア) 星座を求めるプログラム
a(a) 「A−1旧恋愛の神様」のソースコードの98.9%に当たる1万5378行には「A恋愛の神様」のソースコードとの間に類似性はない。残り1.1%に当たる170行に「A恋愛の神様」のソースコードと類似する部分があるとはいえ、この部分は占いの計算結果を計算するロジックの関数部分であるところ、これらはアカデメイアが原告代表者に対して提供した占いの仕様(各種占いの仕組み、計算式、占い結果等)に従って作成されただけのものであり、この部分には創作性がない。
(b) アカデメイアは、平成11年2月10日、四柱推命における日の十干(日干)に関する仕組みや日干を算出する計算式、九星気学に関する仕組みや計算式を原告代表者に直に説明し、メモや一覧表を原告代表者に交付した。
b 星座を求める計算方法及び各星座の境界条件は、解法に該当するものであり著作物として保護されない。星座を求める計算方法は、誕生日が何月であるかを調べ、次に日付を調べて、該当する星座を見つけ出すという手法であるが、「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは、上記の星座を求める計算方法をそのまま表現したわずか17行の単純なプログラムである。そして、該当する月の調べ方はswitch−case文を使用し、該当する日の調べ方はif文を使用しているが、これは大部分のプログラマーがそうしても不思議ではないありふれた表現である。「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは、PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず、アイディアの凡庸な表現に該当し、創作性がない。
c ソースコードにおけるスペースの位置や改行の位置は、何ら知的価値を創造していないものであり、保護に値する表現とはいえない。
(イ) 日干計算のプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 日干を求める計算式は解法であり、著作物として保護されない。「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムの関数名は、関数の機能を表すありふれた関数名であり、凡庸な表現である。「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、わずか6行の単純なプログラムであり、PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず、アイディアの凡庸な表現に該当し、創作性がない。
(ウ) 九星を求めるプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 九星を求める計算式及び立春を求める計算式は解法に該当し、著作物として保護されない。「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムにおける立春を求める計算式は、まず立春が2月4日とならない例外的な年をテーブルで持ち、その例外年と占いをする年を比較することで立春が何日になるかを判断している。効率性を重視してプログラミングする以上、「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムのように例外的な年の方が圧倒的に少ない場合、数の少ない例外を列挙した方が効率的なことから、このような手法は極めてありふれた考え方である。「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは、わずか12行の簡単なプログラムであり、PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず、アイディアの凡庸な表現に該当し、創作性がない。
c ソースコードにおける変数名それ自体は何ら知的価値を創造しておらず、また、変数名は分かりやすい表現である必要があり、その表現は限られたものであるから、保護に値する表現とはいえない。
(エ) 年月日を得るプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、わずか6行の簡単なプログラムであり、PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず、アイディアの凡庸な表現に該当し、創作性がない。このような簡易なプログラムに創作性を認めては、コンピュータにおいて年月日を扱うことは極めて困難となり、今後の電子計算機の広範な利用を妨げることになる。
(オ) 画像タグを生成するプログラム
 「A恋愛の神様」の画像タグ(htmlにおける画像を表示するためのimgタグ)を生成するプログラムの処理手順は、一般的な手法である。「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは、わずか15行の簡単なプログラムであり、PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず、アイディアの凡庸な表現に該当し、創作性がない。
(カ) 守護星を求めるプログラム
 上記(ア)aに同じ。
(キ) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 占い結果に関するデータの並び順、占い結果の記述内容は、すべてアカデメイアが提供した原稿に基づいて記述されたものにすぎない。
b 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の相性占いは、西洋占星術における星座同士の相性を占うものであるから、その占い結果のデータは、当然に144通りとなる。
(ク) 相性占いの星座定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(ケ) 今月の運命の定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(コ) 心理テスト用データ定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(サ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(シ) ルーン占い用データ定義ファイル
 上記(キ)aに同じ。
(2) 依拠
ア 「A−1旧恋愛の神様」
(ア) 原告
a 「A−1旧恋愛の神様」の作成に関与したビルドの井上は、データベースのデータ部分を移行するために「A恋愛の神様」のソースコードを見たことを認めている。
b 次の事実から、「A−1旧恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」に依拠して作成されたプログラムといえる。
(a) 「A恋愛の神様」の関数、データ定義ファイル、文章表現、コメントなどを複製した明確な形跡がある。
(b) 「A恋愛の神様」のソースコードを参照することなしには分かるはずもないファイル名、変数名、関数名、数式、計算手順などが同一の箇所が多数見られる。
(c) 「A恋愛の神様」で使用されるデータ構造との一致点がある。
(d) 「A−1旧恋愛の神様」のソースコード中に「A恋愛の神様」のソースコードを手元に置き変換(翻訳又は複製)したと解釈するしかないコメントが残されている。
(e) A恋愛の神様」において「立春」と「春分」を取り違えて変数を命名してしまった間違いが、「A−1旧恋愛の神様」にもそのまま引き継がれている。
(f) 「A−1旧恋愛の神様」の作成者が占いの本質を理解していなかった結果、「A恋愛の神様」のプログラムを複製することで、同一動作を確保しようとした明確な形跡がある。
(イ) 被告ら
a 「A−1旧恋愛の神様」の作成に当たって、開発会社が「A恋愛の神様」のソースコードを見たことは認める。
b その余の点については争う。
イ 「A−1新恋愛の神様」
(ア) 原告
 「A−1新恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
 争う。
ウ 「A−2恋愛の神様」
(ア) 原告
 「A−2恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
 争う。
エ 「A−3恋愛の神様」
(ア) 原告
 「A−3恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
 争う。
(3) 類否
ア 「A−1旧恋愛の神様」
(ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムとでは、スペースの位置、改行位置、1つの命令であるため文法上不要である「{」と「}」の使用の有無及びその位置も含めて構文が同一である。また、両プログラムの各星座の境界条件は同一であり、その関数名もほぼ同じである。
b 日干計算のプログラム
 「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムが1行で計算しているのに対して、「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムは変数を使用して計算を分割している違いはあるが、ほぼ同じものである。両プログラムにおいて計算式が異なる部分があるものの、これは「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムの作成者が日干の計算式の意味を理解できず、誤解したまま「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムを引き写したことによるものである。また、両プログラムの関数名は、ほぼ同じである。
c 九星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムとは、ほぼ同じ名称の関数名が使用され、同一の名称の変数が使われている。また、「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムで「立春」と「春分」とを取り違えて、立春を示す変数に「shunbun」(春分)と名付けてしまっているが、「A−1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムで立春を示す変数名にも「shunbun」と名付けられており、同じ間違いが継承されている。また、両プログラムは、変数d23、d25で定義されている配列の要素が全く同じであり、2月4日以外の例外日のみを配列にしておくというプログラムの設計思想も同一である。さらに、両プログラムの関数の計算手順も、不必要な括弧があることや変数の名称までも含めて同一である。
d 年月日を得るプログラム
 「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、ほぼ同じ関数名を使用している。「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは、「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムに比して、エラーを返す処理が追加されたり、sm、sdなどの配列を使用してPHP言語のsubstr関数と同様の処理を実現させたり、さらに、結果となる値を返す方法も異なっているが、それらの違いは言語仕様の違いに起因するものであり、「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムをC言語に翻訳したことにより生じたにすぎない。
e 画像タグを生成するプログラム
 「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、ほぼ同じ関数名を使用してるほか、pathという名称の変数を使用している点も同一である。「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムでは、ユーザの指定がない場合の処理やアニメデータの存在のチェックなどの処理が追加されているが、ユーザがあらかじめ登録した値と携帯電話の表示性能を考慮して、カラー、白黒又はアニメのうちどの画像を表示するかを選択する処理手順という基本的機能は同一内容であり、「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは、「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムをC言語に翻訳しただけのものである。
f 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、守護星を得るという同じ目的のプログラムである。両プログラムの関数の名称などは異なるが、引数は同じになっている。ただし、処理結果は、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムが星座名を得るものであるのに対し、「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムでは星座番号を得ることになっている点で若干異なる。
 ただし、プログラムの表現は、冒頭で変数jの値を計算する式に類似性があり、変数sの使用方法にも類似性がある。しかし後半のforループ部分は、かなり異なる書き方になっている。
 しかしながら、目的、引数などが同じ類似の関数であるから「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとには、類似性がある。
g 相性占いの結果データ定義ファイル
 「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルとは、定義されているデータそのものやその定義の順番、英文星座名を使用していること、相性点数、結果文章及びデータの並び順、144通りの組合せというデータ量であることのいずれの点においても一致しており、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルをCSV形式に翻訳しただけのものである。
h 相性占いの星座定義ファイル
 「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルとは、「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルが、1つのファイルであった「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルを2つのファイルに分割し、さらに1986年以降のデータを追加しているほかは、ファイル名、データ内容、日付を8桁の数値で記述している点などが同一である。
i 今月の運命の定義ファイル
 「A恋愛の神様」の今月の運命の定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の今月の運命の定義ファイルとは、同一の内容である。
j 心理テスト用データ定義ファイル
 「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルとは、「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにデータが追加されているものの、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルに含まれているデータは、すべて「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにも含まれている関係にあり、「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルで定義しようとしているデータの番号、文章、選択肢などが同一であるから、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルをCSV形式に変更しただけでのものである。
k 合コンでゴン用データ定義ファイル
 「A恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルとは、本質的に同一である。
l ルーン占い用データ定義ファイル1
 「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1とは、占いの結果文章は異なるが、それ以外の要素は、同一の内容であり、その配列順序も同一である。また、ルーン石の正逆(上下)方向を区別するためにルーン石の呼称として「-p」「-n」を付加するという命名法も同一である。
m ルーン占い用データ定義ファイル2
 「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル2とは、占いの結果文章も配列順序も同一である。また、両プログラムのルーン石の名称も同一である。
(イ )被告ら
 いずれも争う。
イ 「A−1新恋愛の神様」
(ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラム( G e t S e i z a N o 、GetSeizaNum)は、後記ウ又はエの「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の星座を求めるプログラム(GetSeizaNo、GetSeizaNum)とほぼ同一の内容であるが、さそり座といて座の境界となる部分につき、さそり座の終わりを11月22日から同月21日としている点だけが変更されている。なお、「A−1新恋愛の神様」のGetSeizaNoはほぼ全体がコメントアウトされているが、コメントとはいえソースコードには残っているから、「A−1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは、「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムと連続性を有している。
b 日干計算のプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、後記ウ又はエの「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の日干計算のプログラムと同一である。
c 九星を求めるプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは、後記ウ又はエの 「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと同一である。
d 年月日を得るプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと、後記ウ又はエの「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは、「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」の年月日を得るプログラムが、入力文字列に対する検査について、入力文字列が年月日又は年月日時の記述であるかを桁数で判別するものであったのに対し、「A−1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムが、これら検査に加えて年月日時分の記述も許容するように桁数が追加されている点が異なる。
e 画像タグを生成するプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと、後記ウ又はエの「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、「A−1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムが、NTTドコモだけではなくKDDIやソフトバンクにも対応できるように、@画像フォーマットPNGに対応させた、Aコメントアウトされていた画像フォーマットGIFの通常サイズ用処理が再度組み込まれた、BNTTドコモ505端末用の処理が一部変更になった、Cソフトバンク用処理が一部変更になった、DKDDI向け処理が追加されたなどの処理の一部が変更されているが、主要な部分は同一である。
f 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1新恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、類似する。
(イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは、データファイルから星座を得るように全面的に書き換えられ、「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムとは異なる処理のプログラムとなっており、類似しない。
b 日干計算のプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは異なる計算式により日干の計算をしており、類似しない。
c 九星を求めるプログラム
 争う。
d 年月日を得るプログラム
 年月日を「YYYYMMDD」(年年年年月月日日)の8文字で取り扱い、それぞれを分解して年月日を取得する方法は、プログラミングにおいて一般的に利用される方法である。「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「A−1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、いずれもこの考え方で年、月又は日を数値として取得しているが、そのソースコードの表現は異なっており、類似しない。
e 画像タグを生成するプログラム
 URLを求めてこれに基づいて画像タグを生成するという手法は、一般的な方法である。「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは、いずれもこの考え方で画像タグを生成しているが、そのソースコードの表現は異なっており、類似しない。
f 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1新恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、類似しない。
ウ 「A−2恋愛の神様」
(ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
 「A−2恋愛の神様」のGetSeizaNoは、「A−1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムと全く同じ関数であるから、類似する。また、「A−2恋愛の神様」のGetSeizaNoの改良版であるGetSeizaNumは、 上記GetSeizaNoに引き続いてソースコードに連続して記述されているところ、GetSeizaNoでは、引数が月、日の2つの数値だったところを、GetSeizaNumでは、日付を示す文字列となっている。この変更に伴い、日付を示す文字列から月、日の数値への変換式がGetSeizaNumの冒頭に入っている。また、返し値である変数seiza が、GetSeizaNoでは「int seiza;」と不定値の状態のまま準備されているのに対し、GetSeizaNum では「static int seiza= 0;」と初期化されている。
b 日干計算のプログラム
 「A−2恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、関数の名称、目的、関数の定義前に入れられたコメントのみが同じで、引数及び内部計算は、全く別のものとなっている。
c 九星を求めるプログラム
 「A−2恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムとは、「A−1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムでは九星の値として1〜9を返していたものを「A−2恋愛の神様」の九星を求めるプログラムでは同値を0〜8を返すように変更されているほかは、全く同じである。
d 年月日を得るプログラム
 「A−2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと比して、次の改良がなされている。
(@) 「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは引数を破壊しているが、「A−2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは、引数を破壊しないように改良されている。
(A) 「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは、引数をコピーしてから引数の妥当性を判別しているが、「A−2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは、命令の順序を入れ替えて、妥当性を判別してから引数をコピーしている。
e 画像タグを生成するプログラム
 「A−2恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、目的、引数は同じものの、関数の名称が改められたほか、内部計算も全く別のものとなった。したがって、両プログラムの内容もほぼ完全に違う。
f 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−2恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、引数が大きく変わり、目的によって2つのプログラムを使い分ける形に変わっており、処理内容もかなり違っている。しかし、両プログラムとも、日付を渡して星座名を得る関数であり、その点では「A−1新恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムよりも、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムの関数の動作に近い。
 ソースコードが大幅に書き直されているが、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムを発展的に改良したものであり、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムの創作性が失われるものではないから、類似する。
(イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム
 争う。
b 日干計算のプログラム
 「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−2恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、それぞれ異なる計算式により日干の計算がされており、類似しない。
c 九星を求めるプログラム
 争う。
d 年月日を得るプログラム
 年月日を「YYYYMMDD」(年年年年月月日日)の8文字で取り扱い、それぞれを分解して年、月又は日の数値を取得する方法は、プログラミングにおいて一般的に利用される方法である。「A恋愛の神様」と「A−2恋愛の神様」とでは、いずれもこの考え方で年月日を取得しているが、そのソースコードの表現は異なっており、類似しない。
e 画像タグを生成するプログラム
 URLを求めてこれに基づいて画像タグを生成するという手法は、一般的な方法である。「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−2恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、いずれもこの考え方で画像タグを生成しているが、そのソースコードの表現は異なっており、類似しない。
f 守護星を求めるプログラム
 争う。
エ 「A−3恋愛の神様」
(ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、「A−2恋愛の神様」に同じ。
b 日干計算のプログラム
 上記aに同じ。
c 九星を求めるプログラム
 上記aに同じ。
d 年月日を得るプログラム
 上記aに同じ。
e 画像タグを生成するプログラム
 上記aに同じ。
f 守護星を求めるプログラム
 上記aに同じ。
(イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、「A−2恋愛の神様」に同じ。
b 日干計算のプログラム
 上記aに同じ。
c 九星を求めるプログラム
 上記aに同じ。
d 年月日を得るプログラム
 上記aに同じ。
e 画像タグを生成するプログラム
 上記aに同じ。
f 守護星を求めるプログラム
 上記aに同じ。
2 言語
(1) 作成者
ア 原告
(ア) 別紙言語対比表の各上欄の文章を含む「恋愛の神様(NTTドコモ)」内のすべての文章は、原告代表者が独自に創作したものである。原告代表者は、被告ホールディングスより、平成11年2月22日の「恋愛の神様(NTTドコモ)」のサービスインの間近になって、アカデメイアから占いの文章について名義貸しを受けるということを聞いたが、アカデメイアが「恋愛の神様(NTTドコモ)」に関するアイディア又はヒントを出すようになったのは、「A恋愛の神様」のプログラム開発が終了し、そのデバックも終わった後のことであり、何らそれらが反映されることはなかった。
(イ) 被告らが被告ホールディングスにおいて「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画制作に当たった証拠として提出する各種書類は、内容が薄くて仕様書と呼べるレベルのものではなく、アイディア段階にとどまるものか、あるいはiモード仕様を満たさない実現不可能なものばかりである。このような仕様書で「A恋愛の神様」を制作することはできず、上記書類は、別のコンテンツの企画か、あるいはボツになった企画に関するものである。
(ウ) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」は、平成11年2月22日にサービスインしている。被告らの主張するように同月10日にアカデメイアから原告代表者が占いの仕組みを説明されても、それから被告ホールディングスに見積書を提出したり、値引き交渉をしたりしてからプログラムの作成を始めなければならず、しかも、被告ホールディングスからもアカデメイアからもプログラム仕様書の交付はなく、かえって、被告らが証拠として提出するような誤った計算式のメモと役に立たない企画書等の資料しか交付されなかったのでは、到底サービス開始時までに「恋愛の神様(NTTドコモ)」が完成するはずはない。
(エ) 原告代表者は、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の制作に当たり、被告ホールディングスとのやり取りの中からいくつかのアイデア又はヒントを得、また、被告ホールディングスの依頼によって対応した部分もあるが、「恋愛の神様(NTTドコモ)」内のすべての文章の創作を行ったのは原告代表者である。占いは女性利用者が多数見込まれたことから、女性の意見の代表として被告ホールディングスの女性社員の意見を聞くとの理由でBが制作に参加していたが、いくつかの意見を出したにすぎず、制作に対する関与はほとんどなかったといってよいほど極めて限定的であった。
(オ) 「A恋愛の神様」の中には、サンプルデータとして「1965年」、「2月5日」との文章が存するが、これは原告代表者の誕生日であり、「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章が原告代表者によって制作されたことの証左である。
(カ) 原告代表者は、遅くとも昭和55年10月にはバイオリズムと星占いに関するプログラムを作成しており、その後も同じような占い用プログラムを数回作成している。原告代表者は、占いに精通しており、アカデメイアの協力がなくても「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章を制作する能力を十分に有していた。むしろ、D及びアカデメイアを有名たらしめたのは、この「恋愛の神様(NTTドコモ)」にDやアカデメイアの名が出ていたからである。
(キ) 「A恋愛の神様」の天文暦は、「完全版日本占星天文暦第1版」とは大きく異なるものであり、「A恋愛の神様」の天文暦は、アカデメイアや被告ホールディングスの関与なしに原告代表者によって創作されたものである。すなわち、アカデメイアの指示する読み方によって「完全版日本占星天文暦第1版」からデータを拾い出して、これと「A恋愛の神様」の天文暦とを対比すると、ほとんどが一致せず、「A恋愛の神様」の天文暦が「完全版日本占星天文暦第1版」のデータに従っていないことは一目瞭然である。
(ク) 「A恋愛の神様」におけるルーン占いの方式は独特のものであり、被告ホールディングス又はアカデメイアから指示されたものではないことはもちろん、古代より伝わる伝統的なルーン占いとも異なっているものである。古代より伝わるルーン占いでは、25個のルーン石をシャッフルし、1つのストーンを取り出すことで占うものであり、16個のルーンストーンは上下の方向性があるから、方向性のあるものは50分の1の確率で選ばれ、方向性のないものは25分の1の確率で選ばれる。しかし、「A恋愛の神様」におけるルーン占いの方式は、どのパターンも41分の1の確率で選ばれるようになっている。
(ケ) 被告らは、「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章の著作権者が原告であることを自白した。
イ 被告ら
(ア) 被告ホールディングスは、平成10年夏ころ、アカデメイアに対し、携帯電話で配信する占いのコンテンツの企画立案への協力と原稿制作等を依頼した。そして、被告ホールディングスは、アカデメイアより占いの種類や占い項目等について提案を受けて企画を立案し、同年8月27日、NTTドコモに企画書を提出した。その後、占いの項目を恋愛に特化する方針に変更し、アカデメイアにその方針を伝え企画を具体化していった。被告ホールディングスとアカデメイアは、平成10年11月上旬から下旬にかけて、メニュー、占い結果の原稿文字数、画面遷移等について打合せを行い、アカデメイアから占いの種類、占いの項目、占い結果に関して情報提供を受け、コンテンツの内容、画面表示等について順次具体化していった。また、被告ホールディングスは、同年11月30日にサンプル原稿の制作をアカデメイアに依頼し、これを受領した。アカデメイアは、平成10年12月から本格的に原稿の作成に着手し平成11年1月中旬ころから最終的に使用する原稿の納品を開始し同年2月10日に納品を完了するというスケジュールで原稿制作作業を進めており、この結果、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の占い文等の文章を完成させた。
(イ) 被告ホールディングスが平成10年11月ころに原告に対して「恋愛の神様(NTTドコモ)」に係るプログラムの開発を打診した可能性はあるかも知れないが、被告ホールディングスが正式に原告にプログラム開発を依頼したのは平成11年1月ころと考えられる。被告ホールディングスは、アカデメイアから原稿が提出される都度、原告に対し電子データ又は紙媒体で原稿を交付していった。同年2月10日、被告ホールディングスは、アカデメイアに対し、原告代表者に占いの仕組みや計算式を教えてほしい旨を依頼し、アカデメイアのCは、原告代表者に日干や九星の仕組みや計算式を説明し、日干の計算式を記入したメモや九星の一覧表を交付した。
 原告代表者は、これら情報提供を受けて、「A恋愛の神様」を完成させた。
(ウ) 原告は、占いに精通していない原告代表者が、専門的知識を要する占いの原稿をどのように創作したのか、原告代表者はどこで占いを学んだのか、原告代表者はどのような書籍を参考にしたのか、何ら具体的に明らかにしていない。
(エ) 「A恋愛の神様」の天文暦は、被告ホールディングスが制作したものである。この天文暦作成時、被告ホールディングスは、アカデメイアから、「完全版 日本占星天文暦 第1版」掲載の表中の日付を単純に抽出するよう指示を受けており、同表下部のplanet Ingress欄を参照して表中の日付を修正するようなことはしていない。被告ホールディングスの行ったデータ抽出方法によると、「完全版 日本占星天文暦 第1版」と「A恋愛の神様」の天文暦との相違はわずか3%であり、相違した原因も入力ミスにすぎない。一方、原告は、「A恋愛の神様」の天文暦は「完全版 日本占星天文暦 第1版」に依拠せず創作したと主張するが、両者の差異は長いものでは305日になっているところ、このような大幅な差異は入力ミス以外に考えられず、原告代表者が何か別の書籍やデータを参照したという理由では説明できない。「A恋愛の神様」の天文暦が「完全版 日本占星天文暦 第1版」を元に作成されたことは明らかである。
(オ) 被告らが「恋愛の神様(NTTドコモ)」の著作権が原告にあることを自白した事実はない。仮に自白に該当するかのような事実があったとしても、既にこれを撤回している。
(2) 対比部分の創作性
ア 原告
 「A恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章には、いずれも創作性がある。
イ 被告ら
 争う。
(3) 依拠
ア 原告
 「A−1旧恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各下欄の文章は、「A恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章に依拠している。
イ 被告ら
 争う。
(4) 類否
ア 原告
「A恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章と、「A−1旧恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各下欄の文章は、別紙言語対比表記載のとおり、類似する。
イ 被告ら
 争う。
3 美術
(1) 作成者
ア 原告
(ア) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」がサービス提供を開始した平成11年2月22日時点では、iモードには白黒端末しか存在しなかったので、原告代表者は、端末に合わせて別紙美術対比表3及び4左欄のとおりの白黒画像(原告白黒画像)を作成した。
(イ) 平成11年末ころより平成12年初頭にかけてカラー端末が発売されたため、原告代表者は、白黒画像に彩色する形で別紙美術対比表1及び2のとおりのカラー画像(原告カラー画像)を作成した。
イ 被告ら
 原告は、原告白黒画像及び原告カラー画像を創作したことについて何ら具体的な主張、立証をしていない。
(2) 創作性
ア 原告
(ア) 原告白黒画像及び原告カラー画像には創作性がある。だれが作画してもこれと同じ作品ができあがるとはいえない。
(イ) 白黒画面表示においてドットを用いて濃淡を表現する技法は一般的に用いられるものであるが、原告白黒画像と既刊書「ルーンの書」におけるルーンの石の絵は、ルーン文字の書体も、線の太さも、石の図柄・外形・凹凸の形状も、ルーン文字と石とのバランスも全く異なり、石の形状、石の表面のドット、石の側面のドット、それらドットにより表現される全体的な濃淡、全体的な印象等において異なる著作物である。
(ウ) 原告カラー画像は、原告白黒画像に着色したのみならず、石に影を付け、石への着色と背景への着色が画像ごとに異なっている。この着色や影の付加は、原告代表者の想像力の赴くままにしたものである。
(エ) 原告代表者は、既刊書「ルーンの書」を見たことがない。また、原告代表者が当初作成したルーン石の画像は上下の判別の付かない石の形状を用いた画像であったが、その後、上下非対称の石の形状を用いた画像に作り替えている。既刊書「ルーンの書」の石の形状は上下の判別が付くものであるから、同書をみて原告白黒画像を作成したのであれば、最初から上下非対称の石の形状の画像を作っていたはずである。
イ 被告ら
(ア) 原告は、原告白黒画像及び原告カラー画像の創作性について何ら具体的な主張、立証をしていない。
(イ) 原告白黒画像及び原告カラー画像は、ルーン占いで使用するルーン文字が書かれた石(ルーン石)の画像である。ルーン文字は、ゲルマン民族が紀元2〜3世紀ころから使用していた文字であり、当然ながら原告代表者が創作したものではない。原告白黒画像と既刊書「ルーンの書」に記載された石の絵とを比較すると、両者が酷似していることが分かる。すなわち、両者とも、平べったく周囲が角張った形状の石を点と線で描き、その石の中にルーン文字を直線的な字体で表記している。原告白黒画像が、上記書籍に掲載されている石の絵を基に作られており、この絵の単純な模倣又はささいな改変を加えたにすぎないことは明白であり、原告白黒画像に創作性は認められない。
(ウ) 原告カラー画像は、原告白黒画像に着色したものであり、やはり上記「ルーンの書」に掲載されている石の絵にささいな改変を加えたにものにすぎない。完全な模倣とはいえないとしても、既存の著作物にささいな改変を加えただけのものには、著作者の創造的選択は認められないから、原告カラー画像には、創作性がない。
(3) 依拠
ア 原告
 被告カラー画像は、原告白黒画像又は原告カラー画像に依拠している。
イ 被告ら
 争う。
(4) 類否
ア 原告
(ア) 原告白黒画像と被告カラー画像は、別紙美術対比表3及び4のとおり、類似する。
(イ) 原告カラー画像と被告カラー画像は、別紙美術対比表1及び2のとおり、類似する。
イ 被告ら
 争う。
4 データベース1
(1) 作成者
ア 原告
 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、原告代表者が作成した。
イ 被告ら
 争う。
(2) 対比部分の創作性
ア 原告
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a(a) データ定義ファイルは、データを集積したものであり、データ利用のために検索性を持たせてあるから、「データベース」に該当する。
(b) 仮に個々のデータ定義ファイルに創作性がないとしても、データ定義ファイルは、それぞれが密接に関連付けられ、データ定義ファイルを集めた全体が1つのデータベースを構成し、そこに極めて高い創作性がある。例えば、相性占いの星座定義ファイルにより、ユーザが入力した男女2人分の生年月日を基に、男性の金星星座、女性の火星星座を取り出し、これを基に、相性占いの結果データ定義ファイルから相性の結果を得ており、この2つのファイルには密接な関連付けが行われている。
b 相性占いの結果データ定義ファイルの全体のデータ数は144個となっており、12星座2個の組合せであって全部を網羅しているため選択はないが、結果文章の作成においては、携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し、簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守るようにしてある。また、文章内容は、原告代表者が、無限の言語表現の可能性の中から作成し、推敲を行い当該文章として選択を行った。さらに、一般的な占いで使用される太陽星座ではなく、火星星座及び金星星座が使用されている。このようにデータの分割方法、文面の長さ、内容、火星星座と金星星座の組合せを選択したことはデータベースの構成として必然的なものではなく、原告代表者がこれを選択し、体系的に構築した創作表現の発露である。
c 占いの結果文章に標準的な属性が定められているわけではなく、せいぜい結果ごとに文章が違うという程度の分割しかない。したがって、文章の中に相性度という数値を入れる必要があっても、データベース上でこれを分割して格納する必然性は生じない。そもそも、被告らが主張するようにあるものの属性が異なるとみなしたことは、すなわちそのこと自体に創作性の現れがある。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(アaに同じ。
b 相性占いの星座定義ファイルの星座は英語名で書かれているが、あらかじめ12個しかないと分かっているならば番号でもよい。相性占いの星座定義ファイルの生年月日は1943年(昭和18年)〜1985年(昭和60年)の間に設定されているが、「恋愛の神様(NTTドコモ)」が平成11年(1999年)2月に運用が開始されているにもかかわらず、その時点までのデータを網羅しているわけではない。このように日付の範囲を1943年からとすることも、星座を英語名で示すことも、データベースの構成として必然的なものではなく、原告代表者がこれを選択し、体系的に構築した創作表現の発露である。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 心理テスト用データ定義ファイルのデータは、通し番号、質問又は回答を示すフラグ(Q又はA)、選択肢1、飛び先1、選択肢2、飛び先2、・・・選択肢n、飛び先nにより構成されており、質問に対して選択された内容によって次の質問の通し番号が選択され、複数の質問を経て結果にたどり着くようデータが密接な関係に立っている。また、質問のときには必ず2以上の選択肢があるが、回答のときには選択肢は存在しない。質問のときの通し番号は数値、結果のときの通し番号は大小のアルファベットになっている。また、複数選択型(回答が3択以上)や複数回質問方式(複数回の質問に連続して回答し、最後に分岐する方式)にも対応できるように独自の工夫をした。さらに、質問・結果文章の作成においては、携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し、簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守り、文章内容も、原告代表者が、無限の言語表現の可能性の中から作成、推敲を行い当該文章として選択を行った。質問又は回答を示すフラグは必ずしも必要ではなく、通し番号でデータの種別を区別する必要もない。このようにデータの分割方法や、通し番号の体系、文面の長さ、内容はデータベースの構成として必然的なものではなく、原告代表者がこれを選択し、体系的に構築した創作表現の発露である
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 合コンでゴン用データ定義ファイルの全体のデータ数は144個となっており、12星座同士の全組合せであり、全部を網羅しているため選択はないが、結果文章の作成においては、携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し、簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守っている。また、文章内容も、原告代表者が、無限の言語表現の可能性の中から作成、推敲を行い当該文章として選択を行った。このように文面の長さ、内容を選択したことはデータベースの構成として必然的なものではなく、原告代表者がこれを選択し、体系的に構築した創作表現の発露である。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b ルーン占い用データ定義ファイルにおける各ルーン石の識別子のデータは、英語のルーン名の後ろに、ハイフンを付け、向きの正逆を意味するp(ポジ)又はn(ネガ)を付けたものであるが、このルーン識別子の体系は原告代表者が創作し表現、定義したものである。一方、日本語のルーン名と正逆の別のデータは分離しているが、分離しないことも可能である。「意味」、「暗示するもの」、「占い結果」はそれぞれデータとして分離しているが、「占い結果」だけでも十分であるし、データを分離しないことも可能である。結果文章の作成においては、携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し、簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守り、文章内容も、原告代表者が、無限の言語表現の可能性の中から作成、推敲を行い当該文章として選択を行った。このようにデータの分割方法、ルーン識別子の定義、文面の長さ、内容はデータベースの構成として必然的なものではなく、原告代表者がこれを選択し、体系的に構築した創作表現の発露である。
c ルーン文字は、古代ヨーロッパで使用されていた古代文字で、時代、土地により様々なものがあった。このため、文字数は定まっておらず、流派によって違いがあり、必ず25種類でならなければならいなどの標準的な仕様は存在せず、正逆(上下)を区別するかどうか、いくつの文字の組合せで占うかなども様々であり、ルーン文字には無限の選択肢がある。ルーン占いの結果が41種類というのは、古代文字を使う占いが様々考えられる中から携帯電話でも気軽に占える形式を原告代表者がたまたま選択した結果である。原告代表者が作成した占いの結果は、たまたま41通りになったのであり、そのため占い結果のデータも41通りとなったものであり、このことには原告代表者の創作性が働いたものである。
イ 被告ら
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a(a) 別紙データベース対比表の各欄の文章は、原告がデータベースと主張する「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルを構成する個々の情報を取り上げているだけであり、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルがデータベースの著作物性を有するかとは関係のない事項を掲記しているにすぎない。
(b) 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの情報量は極めて少なく、かつ、将来にわたって情報を追加更新することを前提としていないものであり、データベースとはいえない。
(c) データ定義ファイルは極めてシンプルな構造であり、その検索方法も1通りしか想定されておらず、多数の検索項目による縦横な検索はできず、著作権法が想定するデータベースとは本質的に異なる。
b 相性占いの結果データ定義ファイルのデータの分割方法は、相性点数と文章という属性の異なる情報を分割したにすぎず、極めて一般的である。文面の長さ自体も、占い結果の内容にすぎず、12星座同士の組合せは網羅的であり、情報の選択にも創作性はない。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 相性占いの星座定義ファイルの生年月日が1943年から始まっているとしても、これは陳腐なアイディアにすぎない。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 複数の選択肢を持つ質問を多数用意し、各質問に対する回答によって、次にどの質問に回答するかを決定し、このような質問、回答を繰り返し、最終的な結果が出るというスタイルは、書籍や雑誌で頻繁に用いられているありきたりの手法にすぎない。
c 心理テストの原稿はアカデメイアが提供したのであり、心理テスト用データ定義ファイルのデータ数、データの関係、文面の長さ等は、占いの仕様として決定されていたものである上、その内容も一般的なものである。心理テスト用データ定義ファイルにおけるデータの分割方法も、属性の異なる情報を分割したにすぎず、極めて一般的である。原告の主張する「通し番号」の体系もアカデメイアの原稿はもちろんのこと、雑誌などでも用いられているごく一般的なものである。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記(ア)aに同じ。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b ルーン占い用データ定義ファイルにおけるデータの分割方法は、属性の異なる情報を分割したにすぎず、極めて一般的である。ルーン占い用データ定義ファイルのルーン識別子は、41個の場合分けを選択するために使用しているのみであり、その識別子自体、ルーン石の名称そのものに正逆の区別をつけたのみであって、陳腐なアイディアである。また、ルーン占い用データ定義ファイルの文面の長さは、占い結果の内容から既に決まっている。
(3) 依拠
ア 原告
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルに依拠している。
イ 被告ら
 「A−1旧恋愛の神様」を作成するに当たって、開発会社が「A恋愛の神様」のソースコードを見たことは認める。
(4) 類否
ア 原告
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 別紙データベース対比表の作成に当たっては、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルとの比較を行いやすくするため、両ファイルから本質的でない部分を削除した。すなわち、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルから、(@)配列命令の「array()」、(A)データ区切り記号の「,」、(B)文字列を示す記号である「“」「”」「‘」「’」、(C)array文において引数とデータを結び付けて連想配列を作成する「=>」をそれぞれ削除し、「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルからは、(@)CSVファイルでデータの区切りを示す記号である「,」、(A)無意味なデータである「EOF」を削除した。
b 別紙データベース対比表別紙1のとおり、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルとは、すべてのデータ内容が同一であり、データベースとして同一である。なお、対比に当たっては、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルにおいては、女性の星座による連想配列を作り、その連想配列の内部に男性の星座による連想配列を組み入れているのに対し、「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルにおいては、女性星座と男性星座とを個別にそれぞれ組み合わせているため、「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルの女性星座の各部分を削除した。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙2のとおり、「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルとは、すべてのデータが同一であり、データベースとして同一のものである。なお、「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルでは1ファイルであったが、「A−1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは2ファイルに変更されている。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙4の1〜3のとおり、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルとは、女性編及び男性編はすべてのデータが完全に同一であり、男女共通編はすべてのデータがほぼ同一である。また、同別紙4の4のとおり、メニュー編については、「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにおいてデータが追加されているが、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにおいて含まれていたデータは、すべて「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにすべて同じ順番のまま含まれている。なお、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルでは1ファイルであったが、「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルでは、女性編、男性編、男女共通編、メニュー編の4ファイルに変更されている。
 さらに、同別紙4の5〜7のとおり、「A−1旧恋愛の神様」においては未使用とされているデータについても対比をしてみると、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルは、女性編及び男性編はすべてのデータが完全に同一であり、男女共通編はすべてのデータがほぼ同一である。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙5のとおり、「A恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルは、すべてのデータが同一であり、データベースとして同一のものである。
(オ)ルーン占い用データ定義ファイル1及び同2
a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙6の1〜3のとおり、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2とは、すべてのデータが同一であり、データベースとして同一のものである(ただし、「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1については「占い結果」の文章が全く異なるため「意味」及び「暗示するもの」に係る部分に限る。)。なお、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルは、ルーン石の「意味」及び「暗示するもの」と「占い結果」とを2つに分割していたところ、「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2においては、いずれも、ルーン石の「意味」及び「暗示するもの」に「占い結果」を各ルーン石について追加することによって「意味」、「暗示するもの」及び「占い結果」をひとまとめにしてこれらを分割していないため、同別紙6の1では、「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1から「占い結果」の部分を削除し、同別紙6の2では、「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル2から「ルーンの名称」と「占い結果」だけを取り出して対比している。
イ 被告ら
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 別紙データベース対比表は、PHP言語の仕様やCSV形式のファイルに依存する部分を削除して対比を行っているが、文章以外の部分を削除すれば最後に残るのは文章のみであり、結局、個々の文章を対比していることになる。このような文章のみの対比は、データベースの対比として意味をなさない。
b 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、配列又は連想配列の多次元配列を使用した索引の構造を有しているが、「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、CSV形式のデータに対してプログラムによる計算式(何番目にあるか)によりデータの参照が行われるのであり、両ファイルの体系的構成は異なる。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル
 上記(ア)aに同じ。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル
 上記(ア)aに同じ。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記(ア)aに同じ。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル1及び2
a 上記(ア)aに同じ。
b 「A−1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2においては、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと異なり、ルーン石の「意味」、「暗示するもの」及び「占い結果」をひとまとまりのデータにしているのであるから、両者の体系的構成は異なる。
5 データベース2
(1) 作成者
ア 原告
(ア) 原告会員情報データベースは、原告代表者が、データをどのように格納するか、分割格納するか、統合して格納するか、テーブルやカラムの命名をどうするか、アクセス速度をどう試験し、どう判断するか等、様々な要素を詳細に考え、何段階にも渡る試行錯誤、創作過程を経て創作したものである。「A恋愛の神様」のinstest.php(甲22の3の28頁〜29頁)は、5万回のデータベースアクセスを実行しアクセス速度を精密に計測試験するプログラムであり、アクセス速度の評価を行っていた際の名残である。
(イ) 汎用データベースソフトを使用した場合、データベースが存在する前にデータの体系的な構成が存在する状況となるが、その際の著作者は、体系的な構成を準備した者である。プログラムによって自動収集・更新される作業自体はプログラムが行っているだけの機械的なもので、自動収集・更新作業には創作的活動は認められないから、データベースの著作者は、データベースの体系的な構成を構築した者である。
(ウ) 原告会員情報データベースには、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスの開始直前である平成11年2月22日午前0時時点で12人の会員データが記録されていた。このデータのうち10人分は原告代表者が入力したテスト用の初期データである。したがって、原告会員情報データベースは、この時点で既にデータベースとして完成していた。
 その後、会員の操作によりデータが追記又は削除されているが、これらはプログラムにより機械的に自動更新されたものであるから創作性が認められず、又は追加部分が当初データベースの体系的構成の同一性を保っているものであるから、いずれにしても、更新されたデータベースも当初の体系の構成を行った者の著作物である。
イ 被告ら
 争う。
(2) 創作性
ア 原告
(ア) レコード内にどのようなカラムが作製、記録されているかについてデータベースの著作物としての創作性があり、テーブルをどのように定義し、どのように分割するかについてもデータベースの著作物としての創作性がある。したがって、たとえデータベース内に1つもデータがない状態であっても、当該データベースには創作性がある。
(イ) 原告会員情報データベースは、「有料会員の情報を保持するテーブル」、「会員が占いに使用する情報を保持するテーブル」、「会員の個人情報を保持するテーブル」及び「会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル」の4つのテーブルに分割され、携帯電話の個体番号を変換した文字列(uid)によってひも付けされている。会員データを1つのテーブルに保持することも容易であるが、これを4つに分割することは、だれが設計しても同じ分割になるとはいえないから、原告代表者による体系的構成の創作性の現われである。どのようなデータ(会員の姓、会員の名、誕生日、生年月日、ニックネーム、携帯電話番号、会員に対するアンケート、カラー表示の有無)を収集するかということも、だれが設計しても同じになるとはいえないから、情報の選択の創作性の現われである。
イ 被告ら
 会員データを4分割することは、検索の効率性からの要請にすぎない。また、課金のために必要な情報、占いに必要な情報、アンケートへの回答で得た情報、カラー表示に関する情報といった一般的な形で4分割しているのみであり、そのテーブルの分割方法に創作性はない。さらに、これら分割された情報を、個人の特定として最も確実な課金のための情報である携帯電話の個体識別番号で関連付けるという構成も、極めて一般的である。また、ユーザーに情報を入力させるに当たって、一般的な携帯コンテンツで要求される情報項目や占いサイトとして必要な情報項目を入力させるのは当然であって、情報の選択にも創作性はない。
(3) 依拠
ア 原告
 原告会員情報データベースから被告会員情報データベースにデータを移行するに当たって、設計書も移行プログラムも作成されていないのは、被告会員情報データベースに全く同じ構造を使用したため、特別なプログラムの助けもなくデータの移行が完了できたことを意味している。被告ホールディングスは、原告会員情報データベースの会員データを引き継いで被告会員情報データベースに移行しているのであるから、同データベースは原告会員情報データベースと連続性がある。
イ 被告ら
 争う。
(4) 類否
ア 原告
(ア) 原告会員情報データベースのuidテーブル(有料会員の情報を保持するテーブル)には、uidカラムが存在する。
 被告会員情報データベースのuidテーブルには、uidカラムが存在する。
 したがって、両テーブルは、テーブル名、カラム名、カラムの並び順共にほぼ同じ定義になっている。
(イ) 原告会員情報データベースのuprof テーブル(会員が占いに使用する情報を保持するテーブル)には、uid、mynick、mybirth、myseiza、mykyusei、mynikkan、mysexのカラムが存在する。
 被告会員情報データベースのuprof テーブルには、uid、mynick、mybirth、mysexのカラムが存在する。
 したがって、両テーブルは、テーブル名、カラム名、カラムの並び順共にほぼ同じ定義になっている。
(ウ) 原告会員情報データベースのuinfoテーブル(会員の個人情報を保持するテーブル)には、uid、namesei、namemei、email、keitaitel、sex、hearのカラムが存在する。
 被告会員情報データベースのuinfo テーブルには、uid、namesei、namemei、email、keitaitel、sex、hearのカラムが存在する。
 したがって、両テーブルは、テーブル名、カラム名、カラムの並び順共にほぼ同じ定義になっている。
(エ) 原告会員情報データベースのucolor テーブル(会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル)には、uid、mycolorカラムが存在し、mycolorカラムは、「0」、「1」及び「2」によって、それぞれ端末標準の画像、強制的に白黒画像を使用及びアニメ画像の使用との情報を記録している。 被告会員情報データベースのucolor テーブルには、uid、mycolorのカラムが存在する。mycolorカラムは、「COLOR_DEF」、「COLOR_MONO」及び「COLOR_ANIME」によって、それぞれ標準、白黒及びアニメを使用との情報を記録している。
 したがって、両テーブルは、テーブル名、カラム名、カラムの並び順、データ共にほぼ同じ定義になっている。
イ 被告ら
 争う。
6 編集著作物
(1) 作成者
ア 原告
 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、原告代表者が作成した。
イ 被告ら
 争う。
(2) 創作性
ア 原告
 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、編集著作物としての創作性がある。
イ 被告ら
 争う。
(3) 依拠
ア 原告
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルに依拠している。
イ 被告ら
 「A−1旧恋愛の神様」を作成するに当たって、開発会社が「A恋愛の神様」のソースコードを見たことは認める。
(4) 類否
ア 原告
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと類似する。
イ 被告ら
 争う。
7 画面表示
(1) 作成者
ア 「四次婆(DDI)」
(ア) 原告
a 画面表示は原告代表者が作成した。
b プロシードの「四次婆(DDI)」のプログラムを作り替えるに当たり、原告代表者は画面表示もすべて作り替えた。
(イ) 被告ら
 画面表示の内容が特定されておらず、原告代表者が作成したとの立証がない。
イ 「プライベートホームページ」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
上 記ア(イ)に同じ。
ウ 「ツヴァイ資料請求」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
エ 「リクルート」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
オ 「愛と出会いの占い館」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
カ 「映画館空席情報」
(ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
キ 「四次婆(DION)」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
ク 「ゲームコーナー」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
ケ 「さくま式スゴロク」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
コ 「ガチャピン・ムック」
(ア) 原告
 上記ア(ア)aに同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
(2) 創作性
ア 「四次婆(DDI)」
(ア) 原告
a 画面表示には創作性がある。
b 原告の手元には最終版のプログラムはない。これは、平成12年3月26日〜27日にかけてプログラム等を記録していたサーバの管理支配が原告から被告ホールディングスに移転したためである。
(イ) 被告
 画面表示の内容が特定されておらず、画面表示に創作性があるとの立証がない。
イ 「プライベートホームページ」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
ウ 「ツヴァイ資料請求」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
エ 「リクルート」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
オ 「愛と出会いの占い館」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
カ 「映画館空席情報」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
キ 「四次婆(DION)」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
ク 「ゲームコーナー」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
ケ 「さくま式スゴロク」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
コ 「ガチャピン・ムック」
(ア) 原告
 上記ア(ア)に同じ
(イ) 被告ら
 上記ア(イ)に同じ。
8 数値、記号
ア 作成者
(ア) 原告
 別紙数値・記号対比表の各上欄の表現は、原告代表者が創作した。
(イ) 被告ら
 争う。
イ 創作性
(ア) 原告
 別紙数値・記号対比表別紙1は「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの相性占いの点数編の点数、同別紙2は「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの合コンでゴンのポイント編のポイントであり、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術の範囲に属するものである。
(イ) 被告ら
 争う。
ウ 依拠
(ア) 原告
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルの点数、ポイントは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの点数、ポイントに依拠している。
(イ) 被告ら
 争う。
エ 類否
(ア) 原告
 別紙数値・記号対比表別紙1及び2のとおり、「A恋愛の神様」で使用される点数、ポイントと「A−1旧恋愛の神様」で使用される点数、ポイントとは、同一である。
(イ) 被告ら
 争う。
9 期間制限違反
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
ア 原告
 被告らは、平成17年4月1日以降も、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行っている。
イ 被告ら
 平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスは、「A恋愛の神様」とは類似性のない「A−1新恋愛の神様」によりされている配信サービスである。なお、四柱推命、九星気学の占いについては、平成14年1月をもって配信サービスを停止した。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」
ア 原告
 被告らは、平成17年4月1日以降も、「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスを行っている。
イ 被告ら
 平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスは、「A恋愛の神様」とは類似性のない「A−2恋愛の神様」によりされている配信サービスである。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
ア 原告
 被告らは、平成17年4月1日以降も、「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行っている。
イ 被告ら
 平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスは、「A恋愛の神様」とは類似性のない「A−3恋愛の神様」によりされている配信サービスである。
(4) 「愛と出会いの占い館」
ア 原告
 被告らは、平成17年4月1日以降も、「愛と出会いの占い館」の配信サービスを行っている。
イ 被告ら
 被告ホールディングスは、平成12年10月末に「F愛と出会いの占い館」の使用を終了し、同年11月からはビットオンに依頼して全面リニューアルした新プログラムを使用して「愛と出会いの占い館」の配信サービスをしている。そして、「愛と出会いの占い館」は、平成13年6月に配信サービスが終了している。
(5) 会員情報データベース
ア 原告
 原告会員情報データベースは、「A恋愛の神様」と一体的に扱われるものであるから、本件確認書によって平成17年3月31日までの使用のみが許諾された。そうすると、被告会員情報データベースが原告会員情報データベースを改変したものであるならば、被告会員情報データベースは原告会員情報データベースの2次的著作物であり、平成17年3月31日にその使用を終了しなくてはならない。一方、被告会員情報データベースが、新たな著作物であるならば、被告らは原告会員情報データベースを無断で複製したものであり、使用許諾期間を問うまでもなく、被告らは当初から著作権侵害をしていたことになる。
イ 被告ら
 争う。
10 数量制限違反
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
ア 原告
(ア)a 被告ホールディングスは、平成12年5月ころ、緊急課題であったサーバの負荷分散のため、BIG−IPを導入した。株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーの雑誌広告(甲2)におけるEの発言からみて、被告らは負荷分散装置を使用するに当たって原告プログラムの複製物を少なくとも3本作成した。また、サイベース株式会社の雑誌広告(甲7)におけるIの発言からみて、被告らは毎週サーバを増設しており、その度ごとに原告プログラムの複製をした。
b 原告としては、被告ホールディングスが負荷分散装置を採用する場合も当然に想定して本件確認書を作成し、リスクヘッジをしなければならない状況にあった。一方、被告らは、負荷分散装置の導入を考慮していたものの、どの程度の複製をするのかが決まっておらず、負荷分散装置を導入しない可能性もあった。一方で、被告らには著作権の買取りをする資力もなかった。そこで、必要に応じて被告ホールディングスが使用する原告プログラムの本数を増やすこととし、本件確認書では、あえて「1本のみの使用とする」ことが明示されたのである。
c コンピュータソフトウェア業界には、多用な使用許諾方式があるが、いずれの方式にあっても、可能な限り使用量を正確にカウントしようとしているのであり、使用許諾契約は厳密に解釈されなければならない。本件確認書は、プログラムの使用本数でカウントする方式であり、CPUの数やプロセッサコアの数やサーバ台数や接続ユーザー数はカウントの対象ではない。「プログラム1本」であるならば、プログラムの数に依る。
d アクセス数の増加によりサーバの許容できる処理量を超えたとしても、必然的に負荷分散装置の使用が帰結されるのではなく、サーバの性能を上げて許容処理量を引き上げたり、あるいは、新規会員の募集を一時停止して処理量の増加を食い止めるという方策により、簡単にアクセス数の増加に対応できる。
e 被告ホールディングスが負荷分散装置の導入の検討を始めたのは、平成12年初めころであり、そのきっかけとなる平成11年末ころの「恋愛の神様(NTTドコモ)」のアクセス数は20万アクセス超であった。このことから、被告ホールディングスは、20万アクセスが負荷分散の必要性の指標となることを理解することになった。
 1台のサーバの処理能力が20万アクセスであることの共通認識は、「恋愛の神様(NTTドコモ)」や「四次婆(DDI)」の実際の運用から導かれたものであり、原告から被告ホールディングスに対する平成11年6月〜7月付けの見積書にもそのように記載されている。したがって、20万アクセスが負荷分散装置に当該プログラムをかけるか否かの目安である。
 サーバのCPUの負荷率を上げているのは、インタープリタ言語で記述されている原告プログラムの実行に当たってのインタープリタ作業であり、したがって、アクセス数こそがサーバ増設の指標である。いずれの原告プログラムも原告代表者が作成している以上、コンテンツの特性はCPUの負荷率にほとんど影響がない。会員数が増加すればデータベースサーバの処理が遅くなるが、会員数が増加すれば当然ながらアクセス数が増加するのであるから、結局のところ、やはりアクセス数がサーバ増設の指標である。被告ホールディングスによるBIG−IP導入の動機が、正にこの装置を導入する時点のアクセス数であるはずがない。
f プログラムが負荷分散機能に対応するか否かについての技術的に大きなポイントは、データベースサーバを使っているか否かである。データベースサーバを使った場合、複数のWWWサーバがデータをデータベースサーバ上で共有管理できるので、負荷分散していることになる。原告プログラムは、すべてデータベースサーバを用いたデータベース連携WWWシステムであるから、負荷分散機能に対応したものである。
 原告プログラムがこのように負荷分散機能に対応するものであることは、被告Aも知っていた。被告ホールディングスが負荷分散装置の導入を検討していた時期は、原告と被告ホールディングス間で紛争が発生する前であるから、もし原告プログラムが負荷分散機能に対応していないならば、1台のサーバ装置をより高速な装置に置き換えるという選択しか被告ホールディングスにはなく、使用用途のない負荷分散装置の選定作業を進めるはずがない。
g ファイアウォール機能(パケットフィルタリング)やキャリアごとの閲覧制限機能を求めるならば、高額な負荷分散装置を導入する必要はなく、より安価なルータやファイアウォール専用装置でそれらを実現すればよい。当時、被告ホールディングス社内には既にルータが導入済みであり、その設定を変更するだけで、ファイアウォール機能、キャリアごとの閲覧制限機能等の各種の機能を容易に実現できた。
h プログラムを全面的に作り直すためには、プログラムのすべての動作を網羅的に緻密に解析する必要があり、比較的高度な作業が要求されることはいうまでもない。これに対し、負荷分散機能に対応しているか否かは、データベースのアクセス形式やファイルのアクセス形式等の形式について調査、解析をすれば足りるのであり、プログラムのすべての動作を解析する必要もない比較的簡単なことである。被告ホールディングスにおいて原告プログラムの設計書やマニュアルがなくとも原告プログラムを全面的に作り直すことができたというならば、負荷分散機能に対応しているか否かを解析するのにも原告プログラムの設計書やマニュアルは必要ない。端的に開発者であった原告代表者に尋ねればもっと簡単である。
i 平成12年3月以前には、原告プログラムを管理下に置きプログラムの使用をしていたのは原告のみであり、被告ホールディングスが使用していたという事実はない。したがって、被告ホールディングスが原告からプログラムの使用態様に制限を受けていなかったのは当然である。本件確認書により、初めて、被告Aのみが原告プログラムを許諾を受けて使用できるようになったのである。
j 「WAP占い」サーバには、「Bプライベートホームページ」も格納していた。当時、「Bプライベートホームページ」の管理画面に発言チェック機能があったところ、被告ホールディングスのサーバ構成図(乙59の1)の「WAP占い」サーバの下部に「発言チェック」サーバが記載されている。そうすると、同構成図からは、被告ホールディングスが引き続き「WAP占い」サーバ内に「Bプライベートホームページ」の本体プログラムを格納し、「Bプライベートホームページ」の発言チェック機能は別のサーバに格納していたことが分かる。したがって、乙59の1によれば、原告プログラムが負荷分散されていることが明らかである。
k 原告が「ガチャピン・ムック」に複数のWWWサーバを設定していたのは、プログラムを複製したためではなく、プログラムを分割したためである。「Oガチャピン・ムック」のプログラムをメニュー部分と2つのコンテンツ部分の3つに分割し、メニューサーバ1台と2台のコンテンツサーバに配置した。分割されたプログラムのファイルを複数台のWWWサーバに分割して配置しても、全体としてプログラムが本件確認書にいう「1本」であることには変わりない。確かに、プログラムを複数台のWWWサーバに分割して配置するときには、動作上の必要性から、一部のファイルは重複して配置されるが、これはプログラムの分割の必要から行われるものであり、プログラムが複製されて複数本になったわけではない。
l 「四次婆(DDI)」と「四次婆(DION)」とは、「四次婆」のタイトルを冠し、「四次婆(DDI)」で掲示板に書き込まれた内容が「四次婆(DION)」で閲覧できるという特徴を持つものの、「@四次婆」と「J四次婆」とは全く別のプログラムであり、それぞれ独立して創作したものであり、別々のサーバに収容されていた。したがって、「@四次婆」と「J四次婆」とを併せた1本のプログラムが複数のサーバに蔵置されていたものではない。
m 著作権法47条の5は、インターネットサービスプロバイダー(ISP)の業務の便宜を図るために制定されたものであり、自己のために自動公衆送信をし、また、プログラムを複製した被告らには同条の適用はない。同条は、公衆送信の対象ではないプログラムの複製を許容していない。そもそも原告の本件請求はいずれも平成22年1月1日から施行された同条の新設前の行為だけを問題にしている。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 平成12年ころ、「恋愛の神様(NTTドコモ)」は、他のコンテンツ用のプログラムを「恋愛の神様(NTTドコモ)」用のサーバから分離していった結果、専用のWWWサーバと専用のデータベースサーバを使用する状態にあった。平成12年4月ころには「恋愛の神様(NTTドコモ)」がパンク状態でクレームが相次ぐ状況であったことから、被告ホールディングスはサーバを増設してこれに対応し、平成12年夏以降にはデータベースソフトをSybaseに入れ替えて対応しているが、そうであれば、被告ホールディングスは、平成12年4月から同年9月ころまでの間、WWWサーバを増設していたことになる。それはすなわち、それらWWWサーバ内に「A恋愛の神様」の複製物を蔵置したことにほかならない。したがって、被告ホールディングスは、負荷分散装置の負荷分散機能を用いていなかったとしても、「A恋愛の神様」を複製し、DNSラウンドロビンのような単純な方法で負荷分散を行っていたはずである。
イ 被告ら
(ア)a 甲2は宣伝用の書類であり、そこに掲載されているコンテンツ画面は、被告ホールディングスのコンテンツサービスとして記載されているだけであり、負荷分散装置の負荷分散機能を使用しているコンテンツとして掲載されているのではない。また、そこに掲載されているイラストは、単なる概念図であり、実際にサーバを何台使用しているかを示すものではない。
b 本件確認書は、被告ホールディングスが引き続いてコンテンツ配信サービスをすることを目的としているところ、負荷分散機能がコンテンツ配信を円滑に行いサービス提供の中断を回避する機能を有している以上、これを利用するために必要な範囲でプログラムの複製を行うことは、本件確認書による許諾の範囲内の行為である。負荷分散機能を使用したとしても、配信されているコンテンツサービスは1つであり、当該コンテンツサービスとは別途独立したコンテンツを配信したり、又は第三者に複製物を譲渡若しくは貸与して同一のコンテンツサービスが別途配信される場合とは異なる。また、負荷分散装置で複数のプログラムを稼働させてコンテンツ配信をしたとしても、複数のコンテンツサービスが提供されているわけではないから、売上げが増加するという関係になく、許諾者の許諾対価に不足が生じるわけではないから、原告に不測の損害を与えるものでもない。
c 原告と被告ホールディングスとの間の本件確認書締結前の関係は、著作権の帰属についてこそ双方の認識に相違があったものの、「ロイヤリティ契約分」については、売上げに応じたロイヤリティを支払うことで、それ以外のプログラムについては、初期開発費用を支払うのみで、プログラムを期間の定めなく使用することができた。その使用の態様も、原告自ら1コンテンツにつき複数のサーバを被告ホールディングスに購入させ、被告ホールディングスは複数のサーバを使用してコンテンツの配信をしていたというものである。コンテンツ配信に必要である限り、被告ホールディングスの使用態様には何ら制限がなかった。したがって、従前にこのような態様で使用していたにもかかわらず、本件確認書で従前の使用態様に制約を課すようなことを被告ホールディングスが了承するはずがない。少なくとも、従来どおりにコンテンツ配信に必要な使用を可能とすることが、本件確認書締結時点での最低限の条件であった。
d 本件確認書は、被告ホールディングスと原告との関係をすべて清算し、被告ホールディングスが何らの支障なくコンテンツ配信サービスをすることを目的とするものであり、急激なアクセス増加に対応できるよう負荷分散をするためにプログラムの本数を追加する場合にすら原告に追加許諾料を支払う必要があるという趣旨であれば、何ら紛争の抜本的な解決にはならない。そのような将来の紛争の余地を残すような確認書の締結に被告ホールディングス及び被告Aが応じることはあり得ない。
e 原告が証拠として提出するコンテンツへのアクセス記録が正しいものとしても、アクセス数のみがCPUやメモリの負荷率を高める要素ではなく、会員数、コンテンツの特性、プログラムの処理計算量、データ量、サーバのスペック等を総合的に勘案しなければならず、一律に20万アクセスを超えればサーバの負荷分散が必要になるという前提そのものが誤りである。「恋愛の神様(NTTドコモ)」にしても、BIG−IPを導入した平成12年5月時点のアクセス数は43万〜50万アクセスである。
f 原告プログラムが負荷分散機能に対応していることを原告は何ら具体的に主張、立証していない。
g BIG−IPには、負荷分散機能のほか、ファイアウォール機能、キャリヤごとの閲覧制限機能などもあり、それら機能も目的として被告ホールディングスはBIG−IPを導入したのであり、BIG−IPを導入したから当然に負荷分散機能を使用するためであったとか、当然に負荷分散機能を使用したとかとはいえない。
h 本件確認書上プログラムの複製が許されるか否かと、実際に被告ホールディングスが複製を行ったか否かは別問題である。現実に負荷分散機能を使用するに当たっては、(@)当該プログラムが負荷分散機能に対応しているか、(A)ネットワーク、負荷分散装置又は個々のサーバに負荷分散に必要な設定が存在しているか、(B)データベースサーバにどのようなサーバを接続する必要があるのか、(C)処理を特定のサーバに限定する必要があるプログラムが存在していないか、などについて正確な情報が必要である。ところが、原告から被告ホールディングスに対しては、プログラム設計書やマニュアルは交付されておらず、開発者たる原告の協力も得られないのであるから、プログラムを解析して動作を1つ1つ確認していくほかない。しかし、これは多額の費用と労力を必要とする上に、解析結果が正しいという保証はなく、到底現実的ではない。したがって、被告ホールディングスは、(@)不人気又は収益性の低いサービスは大手町に移設しないで終了させる、(A)人気の高いもの又は収益性の高いものはプログラムの作り直しをする、(B)残りは大手町に移設するが負荷分散に対応するようにはせずにそのまま稼働させるという対応を採った。
i 原告が被告ホールディングスのサーバの保守管理に関与している間には、原告代表者自身が1つのコンテンツに複数のサーバを充てていた。これは、サーバダウンを回避し、サーバの処理速度を上げるためであるが、その目的、複数のサーバを使用する点は、BIG−IPによる負荷分散機能の実現と何ら異なるものではない。原告は、プログラムの機能分割をしていただけである旨を主張するが、機能分割の方法には、1本のプログラムを切り分けて複数のサーバに格納する方法とともに、プログラム全体をサーバの台数分複製し、それぞれに格納されたプログラムの一部のみが稼働するように設定する方法があるのであり、機能分割をしていたからといってプログラムが複製されていないという関係にはない。原告は、複数のサーバにどのようにプログラムが格納されて使用されていたかについて、単に機能分割したと主張するのみで、当時のサーバ構成図等を提出せず、何らの客観的立証を行っていない。
j 「四次婆」は、「四次婆(DDI)」と「四次婆(DION)」として複数のキャリアで配信されており、このように1つのプログラムを複数のマルチキャリアで配信することが本件確認書における許諾の範囲に含まれていた。
k 著作権法47条の5(平成22年1月1日施行)によれば、キャッシュサーバ、ミラーサーバ、バックアップサーバなどによる複製行為が許容されているが、このような通信の効率化や安定性の向上のためにする複製行為の許容の趣旨は、負荷分散装置における負荷分散においても当てはまる。
(イ) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスをするに当たり、「A−1旧恋愛の神様」又は「A−1新恋愛の神様」をBIG−IPの配下に置いて負荷分散機能を使用した。「恋愛の神様(NTTドコモ)」は3台のサーバを使用しており、1台はデータベースサーバ、2台がWWWサーバである。したがって、「A−1旧恋愛の神様」及び「A−1新恋愛の神様」の複製部数は2本である。
(ウ) アクセス数の多かった「恋愛の神様(NTTドコモ)」についてはBIGIPの負荷分散機能を利用する必要性が高かったが、「A恋愛の神様」が負荷分散に対応しているかどうか不明である上に、開発者である原告の協力を得られる状況ではなかった。そこで、被告ホールディングスは、「A−1旧恋愛の神様」を開発して平成12年9月からこのプログラムによってBIG−IPの負荷分散機能を使用したが、「A恋愛の神様」を複製の上負荷分散機能を使用したことはない。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」
ア 原告
 被告らは、BIG−IPを稼働させて「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
 「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスをするに当たり、「A−2恋愛の神様」をBIG−IP配下に置いて負荷分散機能を使用した。「恋愛の神様(KDDI)」は、3台のサーバを使用しており、1台はデータベースサーバ、2台がWWWサーバである。したがって、「A−2恋愛の神様」の複製部数は2本である。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
ア 原告
 被告らは、BIG−IPを稼働させて「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
 「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスをするに当たり、「A−3恋愛の神様」をBIG−IP配下に置いて負荷分散機能を使用した。「恋愛の神様(ソフトバンク)」は3台のサーバを使用しており、1台はデータベースサーバ、2台がWWWサーバである。したがって、「A−3恋愛の神様」の複製部数は2本である。
(4) 「四次婆(DDI)」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「四次婆(DDI)」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 「四次婆」(DDI)」においては、平成11年6月に55万1000アクセス、同年7月には64万2000アクセスと、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の3倍のアクセスがあったことから、負荷分散機能を用いる必要性があった。
(エ) 原告は「@四次婆」についてサーバを増設して複数のWWWサーバを設定していたが、これはプログラムを分割収容していただけである。
(オ) 「四次婆」を稼働するためには、少なくとも、(@)メール配送用サーバ、(A)データベースサーバ、(B)WWWサーバ、(C)「J四次婆」のサーバ、(D)アクセスログ格納用のサーバが必要であり、原告が被告ホールディングスのサーバを管理していた状況では、(B)WWWサーバは最低3台が必要であった。したがって、被告ら提出の証拠からうかがわれるように被告ホールディングスが4台のサーバのみを大手町に移設したとしたら、それだけでは従前と同じ状態で「四次婆(DDI)」を稼働できない。被告らは、サーバ数を減らした後に「四次婆(DDI)」を負荷分散したものとみられる。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 「四次婆(DDI)」の配信サービスをするに当たり、「四次婆(DDI)」を負荷分散装置の配下に置いたが、「@四次婆」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかった。一方、既に南青山で6〜7台のサーバが稼働していてBIG−IPの負荷分散機能を使用する必要性もなかった。そこで、被告ホールディングスは、「@四次婆」をBIG−IPの配下に置いたものの、従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(5) 「プライベートホームページ」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「プライベートホームページ」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 「プライベート・ホームページ」においては、平成12年1月の段階で既に84万7千余アクセス、同2月の段階で111万1千余アクセスと桁違いのアクセスがあったことから、負荷分散機能を用いる必要性があった。
(エ) 被告ホールディングスからビットオンに対する新プログラムの開発報酬は、約41万円であり、この低額な報酬からすれば、ビルドは、「Bプライベートホームページ」に課金処理を追加しただけの改修を加えたにすぎない。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 「プライベートホームページ」の配信サービスをするに当たり、「プライベートホームページ」を負荷分散装置の配下に置いたが、「Bプライベートホームページ」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことから、大手町に移設しなかった。被告ホールディングスがBIG−IP配下に置いたのは、平成12年8月にビットオンに依頼して新たに開発した新プログラムである。
(ウ) 原告は、「Bプライベートホームページ」の内容を明らかにしておらず、上記ビットオンが開発した新プログラムと「Bプライベートホームページ」とが類似するとの立証をしていない。
(6) 「ツヴァイ資料請求」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「ツヴァイ資料請求」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「ツヴァイ資料請求」の配信サービスをするに当たり、「ツヴァイ資料請求」を負荷分散装置の配下に置いたが、「Dツヴァイ資料請求」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことから、BIG−IPの配下に置いたものの従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(7) 「リクルート」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「リクルート」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「リクルート」を大手町に移設しておらず、負荷分散装置で使用したことはない。
(8) 「愛と出会いの占い館」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「愛と出会いの占い館」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 被告ホールディングスのサーバ構成図(乙59の1)でも、負荷分散装置配下に3台の「WAP占い」(「愛と出会いの占い館」を含む。)サーバが記載されており、具体的に負荷分散装置にかけた状況が図示されている。
(エ) 「愛と出会いの占い館」においては、平成12年1月ころよりアクセス数が急増し、同年3月には10万3000アクセスに達し、その後も自然と増加する蓋然性が高いことを考慮すると、数か月のうちの早い段階で20万アクセスを超過したと考えられる。したがって、「愛と出会いの占い館」に負荷分散機能を用いる必要性があった。
(オ) 被告ホールディングスからビットオンに対する新プログラムの開発報酬は、約30万円であり、この低額な報酬からすれば、ビットオンは、「F愛と出会いの占い館」に課金処理を追加しただけの改修を加えたにすぎない。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「愛と出会いの占い館」の配信サービスをするに当たり、「愛と出会いの占い館」を負荷分散装置の配下においたことはある。しかし、「F愛と出会いの占い館」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことから、「F愛と出会いの占い館」は大手町に移設しなかった。被告ホールディングスがBIG−IPの配下に置いたのは、平成12年8月にビットオンに依頼して新たに開発した新プログラムである。
(ウ) 原告は、「F愛と出会いの占い館」の内容を明らかにしておらず、上記ビットオンが開発した新プログラムと「F愛と出会いの占い館」とが類似するとの立証をしていない。
(エ) 被告ホールディングスは、「愛と出会いの占い館」の配信サービスをするに当たり、上記新プログラムをBIG−IPの配下に置いて負荷分散機能を使用した。「愛と出会いの占い館」は3台のサーバを使用しており、1台はデータベースサーバ、2台がWWWサーバである。したがって、上記新プログラムの複製部数は2本である。
(9) 「映画館空席情報」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「映画館空席情報」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「映画館空席情報」の配信サービスをするに当たり、「映画館空席情報」を負荷分散装置の配下に置いたが、「H映画館空席情報」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことから、BIG−IP配下に置いたものの従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(10) 「四次婆(DION)」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「四次婆(DION)」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「四次婆(DION)」の配信サービスをするに当たり、「四次婆(DION)」を負荷分散装置の配下に置いたが、「J四次婆」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかった。一方、既に南青山で6〜7台のサーバが稼働していてBIG−IPの負荷分散機能を使用する必要性もなかった。そこで、被告ホールディングスは、「J四次婆」をBIG−IPの配下に置いたものの従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(11) 「ゲームコーナー」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「ゲームコーナー」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「ゲームコーナー」の配信サービスをするに当たり、「ゲームコーナー」を負荷分散装置の配下においたが、「Kゲームコーナー」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことから、BIG−IP配下に置いたものの従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(12) 「さくま式スゴロク」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「さくま式スゴロク」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 「東海道五十三次」のアクセス数は平成12年1月より26万アクセスを超えており、その後も20万アクセス前後であり、「東海道五十三次」に負荷分散機能を用いる必要性があった。
(エ) 原告が被告ホールディングスのサーバを保守管理していたときには、「さくま式スゴロク」は7台のサーバを使用していたが、その内訳は、(@)メニューサーバ、(A)「東海道五十三次」用WWWサーバ、(B)「東海道五十三次」用データベースサーバ、(C)「奧の細道」用WWWサーバ、(D)「奧の細道」用データベースサーバ、(E)「西遊記」用WWWサーバ、(F)「西遊記」用データベースサーバである。「奧の細道」は、原告代表者が完成直前まで作成していた。「西遊記」を原告代表者が開発することはなかった。
(オ) 平成12年3月当時、「L奥の細道」は95%の完成段階にあり、被告らは、この「L奥の細道」の完成作業を外注してプログラムとして完成させ、平成12年5月1日から「奧の細道」の配信サービスを開始した。
 被告ら提出の証拠によると、被告ホールディングスは平成12年4月12日に「奧の細道」に係るプログラムの開発業務委託契約をし、同年4月30日に成果物が納入を受けたことになるが、18日間で「奥の細道」に係るプログラムを完成させることは困難である。さらに、「奥の細道」は、「東海道五十三次」と同様、「桃太郎電鉄」で著名なゲーム作家である、さくまあきらの名前を冠している「さくま式スゴロク」3部作の第2部であるから、さくまあきらが検収する期間も必要であるのに、それが確保できない。したがって、開発会社は、原告代表者が開発し95%まで完成させた「L奧の細道」を土台にして新プログラムを作成しているはずである。
(カ) 被告ホールディングスは、本件確認書で、「L奥の細道」を使用許諾対象に入れ、使用許諾料を支払っている。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「東海道五十三次」の配信サービスをするに当たり、「東海道五十三次」を負荷分散装置の配下に置いたが、「L東海道五十三次」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことや、「東海道五十三次」にはもともと複数台のサーバが導入されており、負荷率が問題となるような種類のコンテンツでもなかったことから、BIG−IPの配下に置いたものの従前と同じ状態で使用を継続し、BIG−IPの負荷分散機能は使用していない。
(ウ) 被告ホールディングスは、インタービジネス株式会社に「奧の細道」に係るプログラムの開発を委託し、平成12年4月30日にその成果物の納入を受けた。なお、本件確認書締結に当たっては、原告が「L奧の細道」を95%まで完成させたと主張することから、被告ホールディングスはその開発費用を原告に支払うこととしたが、そのプログラムの引渡しは受けていない。したがって、「L奧の細道」を被告ホールディングスが使用したことはない。
(13) 「ガチャピン・ムック」
ア 原告
(ア) 上記(1)ア(ア)に同じ。
(イ) 被告らは、BIG−IPを稼働させて「ガチャピン・ムック」の配信サービスをするに当たり、少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 「ガチヤピン・ムック」においては、平成12年5月31日のアクセス数は24万3千余であり、負荷分散機能を用いる必要性があった。被告らの主張するように一時的なアクセス数増加であったとしても、負荷分散機能を用いずにその主張に係る26万アクセスを処理することはできない。
(エ) 被告らが証拠として提出する「Oガチャピン・ムック」と被告ホールディングスが開発させた新プログラムとを対比する資料は、原告代表者が作成していない部分を原告代表者作成として比較したり、リニューアル時に重点的に作り替えられたファイルを取り出して比較したものであり、類似性の比較として無意味である。たった2つのファイルを選び出して対比しても、全体が類似してないとはいえない。
イ 被告ら
(ア) 上記(1)イ(ア)に同じ。
(イ) 被告ホールディングスは、「ガチャピン・ムック」の配信サービスをするに当たり、「ガチャピン・ムック」を負荷分散装置の配下に置いたが、「Oガチャピンムック」が負荷分散機能を使用するように開発されたか否かも分からず、開発者である原告の協力が得られるような関係でもなかったことや、「ガチャピン・ムック」は、単なる情報提供サービスであって負荷率が低く、さらに、もともと「ガチャピン・ムック」に複数台のサーバが導入されていて負荷分散機能を用いる必要もなかったことから、BIG−IPの負荷分散機能を使用せず、以前と同じ状態のまま稼働させた。また、被告ホールディングスは、新たに開発した新プログラムも使用している。
(ウ) 「ガチャピン・ムック」は、平成12年5月31日に一度だけ26万アクセスに達したが、これはTV放送でコンテンツの宣伝をしたことなどによる一時的なアクセス数の上昇であり、それ以外は9万〜4万5000アクセスしかなかったコンテンツである。
(エ) 原告は、「Oガチャピン・ムック」の内容を明らかにしておらず、上記開発会社が開発した新プログラムと「Oガチャピン・ムック」とが類似するとの立証をしていない。
11 改変
(1) プログラム
ア 原告
(ア) 「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」の同一性保持権を侵害する。
(イ) 「A恋愛の神様」の題号である「恋愛の神様」を「恋愛の神様DX」に変更したことは、「A恋愛の神様」の同一性保持権を侵害する。
イ 被告ら
 争う。
(2) データ定義ファイル
ア 原告
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの同一性保持権を侵害する。
イ 被告ら
 争う。
(3) 会員情報データベース
ア 原告
 被告会員情報データベースは、原告会員情報データベースの同一性保持権を侵害する。
イ 被告ら
 争う。
(4) その他
ア 原告
 被告らは、「恋愛の神様(NTTドコモ)」を除く別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアについて、原告の同一性保持権を侵害する行為をした。
イ 被告ら
 争う。
12 氏名非表示
ア 原告
 被告らは、別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアについて、原告の氏名表示権を侵害する行為をした。
イ 被告ら
 争う。
13 複製物の交付
(1) 原告
ア 被告らは、原告プログラムを複製してこれを開発会社に開示した。
イ 本件確認書では、開発会社にプログラム開発を外注する場合であっても、被告ホールディングスが原告プログラムを開示することは禁じられている。原告プログラムは、原告代表者のノウハウやアイディアの集積であり、これが外部に開示された場合には、競業会社にノウハウやアイディアを取得されたり、原告代表者のノウハウやアイディアが公知のものになってしまって原告代表者が特許申請する権利が奪われてしまい、あるいは、他社が特許出願をするおそれも生じてしまう。なお、原告代表者がいまだ特許出願をしていないのは、最大限の経済効果を発揮するようなタイミングを見計らって特許出願をしようとしているからである。
ウ 被告ホールディングスは、本件確認書の締結日である平成12年6月15日時点において、技術担当取締役のE、平成12年4月1日入社した技術部長であるI及び専門学校を卒業したJが在籍しており、さらに、平成12年8月には技術部員であるK、平成12年11月には技術室長であるLらを次々に雇用しており、遅くとも、平成13年3月までに、数名の技術者を雇用・確保していたから、自らプログラム開発を行う専門的技術・知識を持ち合わせており、外部の開発会社を使用する必要はなかった。実際、保守管理は自ら行うと原告代表者に申し入れて原告のサーバの保守管理を排斥している。したがって、本件確認書の記載どおり、原告プログラムの使用許諾を受けた被告Aが原告プログラムの改変に当たって使用できる履行補助者は、被告ホールディングスのみである。
エ 原告代表者は、本件確認書締結当時、被告ホールディングスが今後積極的に技術者を雇用しこれを増員するであろうと考えていたし、被告Aからも、原告プログラムの改変に当たって外部の開発会社を使いたいという要望はなかった。もし、被告ホールディングスが外部の開発会社を関与させるというなら、原告代表者のアイデアやノウハウの漏洩を防止するため、それら外部の開発会社をあらかじめ本件確認書の当事者に加えなければならない。前訴和解では、「外部」に代えて「第三者」という言葉を用いているが、これは、本件確認書の趣旨を明確にしたものである。
オ ソフトウエア開発業界の慣習からいっても、再委託(第三者委託)は慎重になされており、再委託を禁じることは一般的な選択である。ソフトウエア開発業界には、委託者の納得もなく野放図に再委託を容認する慣習はない。
カ 原告は、前訴で、被告ホールディングスが「Oガチャピン・ムック」の新たなプログラムを作成するためにビットオンに「Oガチャピン・ムック」のソースコードを漏洩していたことが複製権侵害であるとの主張をし、前訴和解及びこれに付随する確認書では、被告ホールディングスは、被告ホールディングスがプログラム開発の外注先であるビットオンに「Oガチャピン・ムック」のソースコードを遺漏した行為が本件確認書の「外部への漏洩」に該当し、改変の有無を問わず複製権侵害行為になることを確認し、その上で、原告に損害賠償金を支払っている。
キ 被告ホールディングスが、「A恋愛の神様」のソースコードをサザンクリエイトに開示した日は、平成12年5月1日であり、本件確認書の締結日である平成12年6月15日よりも前である。しかし、被告Aからは、本件確認書締結当時、原告プログラムのソースコードを既に外部の開発会社に開示してしまったという申出はなかったから、上記開示は、本件確認書による改変の許諾の範囲に含まれない。したがって、「A恋愛の神様」の改変は、本件確認書による許諾の範囲外の行為である。
(2) 被告ら
ア 外部の開発会社が原告プログラムを参照したのは、会員情報や占い結果文書等のデータ移行に必要な範囲にすぎない。
イ 本件確認書締結当時、被告ホールディングスは、コンテンツの企画立案しか行っておらず、プログラム開発を行う専門的技術・知識のない被告ホールディングスが外部にプログラムの開発を委託することは当然に予定されていた。だからこそ、被告ホールディングスは原告に多数のプログラムの開発及び保守管理を委託してきたのであり、原告も被告ホールディングスにプログラム開発能力がないことは熟知していた。したがって、被告ホールディングスが外部の開発会社を利用することは、本件確認書の使用許諾の範囲内の行為である。また、仮にそうでないとしても、開発会社は、被告ホールディングスの手足となってプログラムの改変を行うための被告ホールディングスの履行補助者にすぎない。
ウ 本件確認書で原告プログラムの改変が認められている以上、これに伴う原告プログラムの複製は、当然に認められていることである。
エ 被告ホールディングスは、前訴でも、「Oガチャピン・ムック」のソースコードを開発会社のビットオンに開示したことは本件確認書に反するものではないと主張していた。また、和解金の内訳についても、「Oガチャピン・ムック」を開発会社のビットオンに開示したことについて損害賠償義務を認めていなかった。これに対し、原告がこの内容の修正を求め、協議が膠着状態になったことから、中途半端に内容を修正するよりも原告の要求をそのまま受け容れた方が得策と判断し、被告ホールディングスは、前訴和解及びこれに付随する確認書の締結に応じたまでである。
14 翻案
(1) 原告
ア 被告ホールディングスは、会社外部の者に原告プログラムに依拠した2次的著作物を作成させた。
イ 被告Aは、原告プログラムの貸与を受けた者であり、著作権法47条の2(平成21年法律第53号による改正前)の適用はなく、被告ホールディングスは原告プログラムの貸与を受けたものですらない。また、著作権法20条2項3号は、一定の行為が同一性保持権侵害にならないことを規定しているだけであり、同条に基づいて著作権者以外の者が同条を根拠に改変できる権利を取得できるものではない。改変は、本件確認書に基づいてしか行うことができないから、本件確認書に反する改変は、直ちに違法となる。
ウ 本件確認書は、原告プログラムを改変しながら被告Aが原告プログラムの使用を続けるための使用許諾契約であり、原告プログラムを流用して、本件確認書締結当時想定もされていなかった別途独立したプログラムを新規に作ることは、本件確認書の許諾事項である「コンテンツを継続的に維持するための改変」には該当しない。
 本件確認書の「コンテンツサービスを継続的に維持するため」の「維持」とは、「物事の状態をそのまま保ちつづけること」、「同じ状態を保ち続けること」を意味し、「改変」に該当するかどうかの判断は、「改変」作業を行わなければ「コンテンツサービスをそのまま保ちつづけることができなくなる」こと、すなわち、「改変」を行わなければコンテンツ配信サービスの停止・廃止に追い込まれるか否かが基準となるのであり、新機能を盛り込んだ高機能版の作成などは含まれない。コンテンツサービスは、新しい携帯電話の発売に応じて機種登録を追加すれば維持可能であり、強いていえば、新機種登録すらしなくてもコンテンツサービスは維持できる。いずれにせよ、原告プログラムのデータや原告会員情報データベースの会員情報にも原告の権利が及んでおり、原告の許諾なくこれらを複製することはできないのだから、原告の許諾がなければ、被告ホールディングスは新たなプログラムの開発をすることはできない。
エ 被告ホールディングスは、本件確認書締結前に「A−1旧恋愛の神様」の作成作業をサザンクリエイトにさせており、また、これはただ単にプログラムの稼働を高速化するという目的のためにすぎず、コンテンツサービスの停止・廃止と関係がないから、本件確認書で許容される「A恋愛の神様」の「改変」ではない。また、「A−1旧恋愛の神様」は、コンテンツ配信サービスの「維持」に不必要な切除・追加を大幅に加え、言語変換までして全面的に「A恋愛の神様」を作り直したものであるから、「A恋愛の神様」の「改変」と認識されるべき範囲を大幅に超えており、本件確認書の「改変」とはいえない。
(2) 被告ら
ア 原告は、「A恋愛の神様」以外の原告プログラムについて、その2次的著作物がどのようなものか、具体的にどのような侵害行為がされたのか特定していないばかりか、原著作物たる原告プログラムそれ自体の内容すらも特定していない。
イ 本件確認書上、被告ホールディングスが改変を行うことは許容されている。被告ホールディングスが開発を委託した開発会社は、新プログラムを開発するに当たり、原告とは異なるプログラミング言語で一からプログラムを組んでおり、原告プログラムに手を加えたり、原告プログラムを他のプログラム言語にそのまま翻訳したのではない。開発会社が参照したのは、会員情報や文章等のデータ移行に必要な範囲である。開発会社は、被告ホールディングスから新プログラムの開発委託を受け、被告ホールディングスと秘密保持契約を締結した上で、新プログラムへのデータ移行に必要な限度で原告プログラムを参照したにすぎない。このような行為まで本件確認書で許されていないとすると、永久に原告プログラムを改変しながら使用する以外、コンテンツサービスを継続する方法がなくなるが、これは不当な拘束である。
ウ 原告プログラムには、これまで収集した会員情報や、被告ホールディングスが制作させた文章等が蓄積され格納されている。これらを新プログラムに移行することは、新プログラムの開発のために必要不可欠の行為であるし、これらに対する権利は原告が有するものではない。
エ 「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」及び「A−3恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」の2次的著作物ではない。
15 みなし侵害
(1) 原告
ア 被告ホールディングスは、原告プログラムについて、プログラムのみなし侵害をした。
イ 「A−1旧恋愛の神様」は、本件確認書の「改変」に該当しない行為により作成されたプログラムであり、原告の翻案権を侵害するプログラムである。被告ホールディングスは、完成した「A−1旧恋愛の神様」のプログラムを平成12年6月〜7月に開発会社から引渡しを受けることによってこのプログラムを使用する権原を取得した。
 被告ホールディングスは、本件確認書締結前には、「A恋愛の神様」に関する何の権利も持っておらず、本件確認書の締結によって初めて限定的な改変の権利も得ることになったから、本件確認書締結前に被告ホールディングスがサザンクリエイトに「A恋愛の神様」のプログラムを複製して交付したことは複製権侵害行為である。したがって、被告ホールディングスは、「A−1旧恋愛の神様」が「A恋愛の神様」の複製権侵害を土台とした原告の著作権を侵害するものであることを認識していたのであり、その情を知っていたといえる。
(2) 被告ら
 プログラム開発能力のない被告ホールディングスが外部の開発会社にプログラム開発を委託することは本件確認書で許容されている。仮にそうでないとしても、開発会社は被告ホールディングスの履行補助者にすぎない。したがって、被告ホールディングスには本件確認書に反する行為がなく、原告の著作権を侵害する行為により作成されたプログラム自体が存在しないから、みなし侵害の前提を欠く。
16 被告ホールディングスの責任
(1) 会社分割前
ア 原告
(ア) 被告ホールディングスは、民法709条に基づき責任を負う。
(イ) 被告ホールディングスは、被告Aの違法行為につき平成18年法律第50号による廃止前の民法44条に基づき責任を負う。
(ウ) 被告ホールディングスは、被告Aの違法行為につき会社法(平成17年法律第86号)350条に基づき責任を負う。
(エ) 仮に被告ホールディングスの会社分割前の損害賠償債務が被告インデックスに承継されたとしても、原告は、不法行為債権者であり会社法810条の催告を受けていないから、被告ホールディングスは、原告に対し、損害賠償債務を負担する。
イ 被告ら
 会社分割に伴い、被告ホールディングスの責任はすべて被告インデックスが免責的債務引受けをした。
(2) 会社分割後
ア 原告
(ア) 被告ホールディングスは、民法709条に基づき責任を負う。
(イ) 被告ホールディングスは、被告Aの違法行為につき平成18年法律第50号による廃止前の民法44条に基づき責任を負う。
(ウ) 被告ホールディングスは、被告Aの違法行為につき会社法(平成17年法律第86号)350条に基づき責任を負う。
イ 被告ら
 争う。
17 被告インデックスの責任
(1) 会社分割前
ア 原告
(ア) 会社分割において、被告インデックスは、被告ホールディングスからコンテンツサービス関連の人的(従業員、外注先、得意先、コンテンツの登録会員等)、物的(サーバ、コンテンツ等)な組織的・有機的な全サービス機構を一体として移転を受けた。被告インデックスは被告ホールディングスの違法行為を利用しながら営業を継続しているもので、両社のコンテンツ事業は一体的な事象で社会観念上も全体として一個の行為と見られるから、被告ホールディングスの行為と被告インデックスの行為とは客観的共同関係を有し、会社分割前の被告ホールディングスの行為も被告インデックスの民法709条の不法行為となる。
(イ) 仮に会社分割に伴い会社分割前の被告ホールディングスの損害賠償債務を被告インデックスが承継したのであるならば、被告インデックスは原告に対して損害賠償債務を負担する。
イ 被告ら
 会社分割に伴い、被告ホールディングスの責任はすべて被告インデックスが免責的債務引受けをした。
(2) 会社分割後
ア 原告
(ア) 被告インデックスは、民法709条に基づく責任がある。
(イ) 被告インデックスは、民法715条に基づく使用者責任を負担する。
(ウ) 被告インデックスは、会社分割前は被告ホールディングスの取締役であり、会社分割後は被告インデックスの代表取締役であるGが原告の著作権を侵害させる行為を続けさせた違法行為につき、会社法(平成17年法律第86号)350条に基づく責任を負う。
イ 被告ら
 争う。
18 被告Aの責任
(1) 会社分割前の被告ホールディングス関係
ア 原告
 被告Aは、被告ホールディングスの代表者として民法709条に基づく責任を負う。
イ 被告ら
 争う。
(2) 会社分割後の被告ホールディングス関係
ア 原告
 被告Aは、被告ホールディングスの代表取締役で、被告インデックスは被告ホールディングスの100%子会社である。被告Aは、会社分割後も100%子会社の被告インデックスが引き続き不法行為を継続していることを熟知しており、被告ホールディングスをして被告インデックスの不法行為を中止させる義務があったにもかかわらず、子会社からの利益獲得のため違法行為を放置したから、民法709条に基づき責任を負う。
イ 被告ら
 争う。
(3) 会社分割後の被告インデックス関係
ア 原告
 被告Aは、被告インデックスの100%親会社である被告ホールディングスの代表取締役として、被告インデックスが原告の権利を侵害することを積極的に押し進めたものであるから、民法709条に基づき責任を負う。
イ 被告ら
 争う。
19 責任態様
(1) 原告
ア 民法719条1項に基づく不真正連帯債務。
イ 平成18年法律第50号による廃止前の民法44条に基づく不真正連帯債務。
ウ 会社法(平成17年法律第86号)350条に基づく不真正連帯債務。
エ 民法715条に基づく不真正連帯債務。
オ 会社法810条2項の催告の不履行。
(2) 被告ら
 争う。
20 許諾契約違反
(1) 原告
 上記9〜13に主張したとおり、被告らの行為は許諾契約に違反し、債務不履行に当たる。
 その理由は、上記9〜13に同じ。
(2) 被告ら
 争う。
21 損害の発生
(1) 原告
 携帯コンテンツ業界への参入は自由であり、参入枠などは存在しない。特段の資格も必要なく、多大な設備投資や多数の人員も要しない。そのため、携帯コンテンツ事業者数は数千を超え、年々増加している。そして、携帯コンテンツ事業に重要なのはコンテンツ用プログラムであるところ、原告は十分なプログラム開発能力を有しており、サーバ運用の技術にも問題はない。したがって、原告はいつでも携帯コンテンツ運用により利益を上げられる立場にある。また、原告は、携帯コンテンツ事業と同質のものである会員制ネットサービス事業や携帯コンテンツを販売する(あるいは月次利用させる)事業と同質のものであるネットを通じたソフトウエア販売事業を行ったことがある。
 そうすると、被告らは原告の後からネット事業に参入した同業者にすぎず、原告は、いつでも携帯コンテンツの運用による収益可能性を有していた。
(2) 被告ら
 プログラムの複製数に応じて利用者が2倍、3倍と増加する関係にはなく、BIG−IPの負荷分散機能を使用したからといって原告に損害を与えることはない。
 その余は争う。
22 利益率
(1) 原告
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」、「恋愛の神様(ソフトバンク)」、「四次婆(DDI)」、「プライベートホームページ」、「ツヴァイ資料請求」、「リクルート」、「愛と出会いの占い館」、「映画館空席情報」、「四次婆(DION)」、「ゲームコーナー」、「東海道五十三次」、「奧の細道」及び「ガチャピン・ムック」の利益率は51%〜90%であり、平均して87.1%である。
(2) 被告ら
 被告ホールディングス又は被告インデックスのコンテンツ事業における主な経費を差し引くと、両社の利益率は、各コンテンツ及び各期を平均して売上額の15%である。
23 損害の額(著作権法114条2項)
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
ア 原告
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の平成12年4月から平成21年10月までの利益額は、25億6531万4427円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の平成10年9月1日(第4期)から平成22年8月31日(第15期の期中)までの売上げは、合計26億3583万4496円である。
 その余は争う。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」
ア 原告
 「恋愛の神様(KDDI)」の平成15年12月から平成21年10月までの利益額は、1億5970万7348円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「恋愛の神様(KDDI)」の平成15年9月1日(第9期)から平成22年8月31日(第15期の期中)までの売上げは、合計1億8552万3704円である。
 その余は争う。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
ア 原告
 「恋愛の神様(ソフトバンク)」の平成15年10月から平成21年10月までの利益額は、5783万6978円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「恋愛の神様(ソフトバンク)」の平成15年9月1日(第9期)から平成22年8月31日(第15期の期中)までの売上げは、合計7303万0516円である。
 その余は争う。
(4) 「四次婆(DDI)」
ア 原告
 「四次婆(DDI)」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、7136万6459円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「四次婆(DDI)」の平成12年9月1日から平成13年8月31日(第6期)の売上げは、118万5112円である。
 その余は争う。
(5) 「プライベートホームページ」
ア 原告
 「プライベートホームページ」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、5042万2880円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「プライベートホームページ」の平成11年9月1日(第5期)から平成13年8月31日(第6期)までの売上げは、合計5088万3925円である。
 その余は争う。
(6) 「ツヴァイ資料請求」
ア 原告
 「ツヴァイ資料請求」の平成12年4月から平成12年9月までの利益額は、899万9410円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「ツヴァイ資料請求」の平成11年9月1日(第5期)から平成13年8月31日(第6期)までの売上げは、合計1180万円である。
 その余は争う。
(7) 「リクルート」
ア 原告
 「リクルート」の平成12年4月から平成13年12月までの利益額は、5756万7217円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「リクルート」の平成11年9月1日(第5期)から平成15年8月31日(第8期)までの売上げは、合計6781万8393円である。
 その余は争う。
(8) 「愛と出会いの占い館」
ア 原告
 「愛と出会いの占い館」の平成12年4月から平成21年10月までの利益額は、2億4430万6645円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「愛と出会いの占い館」の平成11年9月1日(第5期)から平成15年8月31日(第8期)までの売上げは、合計7355万5677円である。
 その余は争う。
(9) 「映画館空席情報」
ア 原告
 「映画館空席情報」の平成12年4月から平成12年8月までの利益額は292万4950円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「映画館空席情報」の平成10年9月1日(第4期)から平成12年8月31日(第5期)までの売上げは、合計1063万4800円である。
 その余は争う。
(10) 「四次婆(DION)」
ア 原告
 「四次婆(DION)」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、2025万3885円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「四次婆(DION)」の平成10年9月1日(第4期)から平成13年8月31日(第6期)までの売上げは、合計4285万6903円である。
 その余は争う。
(11) 「ゲームコーナー」
ア 原告
 「ゲームコーナー」の平成12年4月から平成14年8月までの利益額は、1128万5588円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「ゲームコーナー」の平成11年9月1日(第5期)から平成15年8月31日(第8期)までの売上げは、合計2472万1214円である。
 その余は争う。
(12) 「さくま式スゴロク」
ア 原告
 「東海道五十三次」の平成12年4月から平成15年10月までの利益額は、1759万9385円であり、同額が原告の損害となる。
 「奧の細道」の平成12年5月から平成15年10月までの利益額は、1466万6062円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「東海道五十三次」の平成11年9月1日(第5期)から平成16年8月31日(第9期)までの売上げは、合計3242万4374円である。
 「奥の細道」の平成12年9月1日(第6期)から平成16年8月31日(第9期)までの売上げは、合計1740万1125円である。
 その余は争う。
(13) 「ガチャピン・ムック」
ア 原告
 「ガチャピン・ムック」の平成12年4月から平成13年10月までの利益額は、6303万2279円であり、同額が原告の損害となる。
イ 被告ら
 「ガチャピン・ムック」の平成11年9月1日(第5期)から平成16年8月31日(第9期)までの売上げは、合計1億4282万4930円である。
 その余は争う。
(14) 被告A
ア 原告
 被告Aは、被告ホールディングス及び被告インデックスと共同して、原告プログラムを著作権侵害によって作成されたものと知って使用し、このことにより、被告ホールディングスが平成13年3月に株式公開し、その結果、被告Aは急騰した持株によって多額の創業者利益を取得することになった。このみなし侵害行為(著作権法第113条2項)により平成12年4月1日から平成21年6月30日までに被告Aの得た利益は1182億8032万円であるが、この利益は、著作権法第114条2項に基づき、原告が受けた損害の額と推定される。原告は、本件では内金500万円を請求する。
イ 被告ら
 仮に原告の主張する著作権侵害行為があったとしても、これと被告Aの創業者利益の取得には何ら因果関係がなく、著作権侵害による損害とはいえない。
24 慰謝料
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金100万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金100万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金100万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(4) 「四次婆(DDI)」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(5) 「プライベートホームページ」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(6) 「ツヴァイ資料請求」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ被告ら
 争う。
(7) 「リクルート」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(8) 「愛と出会いの占い館」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(9) 「映画館空席情報」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(10) 「四次婆(DION)」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(11) 「ゲームコーナー」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(12) 「さくま式スゴロク」
ア 原告
 被告らが「東海道五十三次」に係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金10万円を請求する。
 被告らが「奧の細道」に係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金10万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(13) 「ガチャピン・ムック」
ア 原告
 被告らが上記ソフトウェアに係る原告の著作者人格権を侵害したことにより原告に与えた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は多額であるが、本件では内金20万円を請求する。
イ 被告ら
 争う。
(14) 弁護士費用
ア 原告
 原告は、本件を原告訴訟代理人弁護士橋省に委任し、弁護士報酬3000万円を支払うことを約した。
イ 被告ら
 争う。
25 不当利得
(1) 被告ホールディングス
ア 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
(ア) 原告
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の平成12年4月から同18年5月までの利益額は、19億6642万0807円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
イ 「恋愛の神様(KDDI)」
(ア) 原告
 「恋愛の神様(KDDI)」の平成15年12月から平成18年5月までの利益額は、3793万9757円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
ウ 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
(ア) 原告
 「恋愛の神様(ソフトバンク)」の平成15年10月から平成18年5月までの利益額は、1926万2400円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
エ 「四次婆(DDI)」
(ア) 原告
 「四次婆(DDI)」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、7136万6459円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
オ 「プライベートホームページ」
(ア) 原告
 「プライベートホームページ」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、5042万2880円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
カ 「ツヴァイ資料請求」
(ア) 原告
 「ツヴァイ資料請求」の平成12年4月から同年9月までの利益額は、899万9410円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
キ 「リクルート」
(ア) 原告
 「リクルート」の平成12年4月から平成13年12月までの利益額は、5756万7127円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
ク 「愛と出会いの占い館」
(ア) 原告
 「愛と出会いの占い館」の平成12年4月から平成18年5月までの利益額は、1億5420万4922円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
ケ 「映画館空席情報」
(ア) 原告
 「映画館空席情報」の平成12年4月から同年8月までの利益額は、292万4950円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
コ 「四次婆(DION)」
(ア) 原告
 「四次婆(DION)」の平成12年4月から平成13年8月までの利益額は、2025万3885円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
サ 「ゲームコーナー」
(ア) 原告
 「ゲームコーナー」の平成12年4月から平成14年8月までの利益額は、1128万5588円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
シ 「さくま式スゴロク」
(ア) 原告
 「東海道五十三次」の平成12年4月から平成15年10月までの利益額は、1759万9385円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
 「奧の細道」の平成12年9月から平成15年10月までの利益額は、1466万6062円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
ス 「ガチャピン・ムック」
(ア) 原告
 「ガチャピン・ムック」の平成12年4月から平成13年10月までの利益額は、6303万2279円であり、被告ホールディングスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
(2) 被告インデックス
ア 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
(ア) 原告
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の平成18年6月から平成21年10月までの利益額は、5億9889万3620円であり、被告インデックスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
イ 「恋愛の神様(KDDI)」
(ア) 原告
 「恋愛の神様(KDDI)」の平成18年6月から平成21年10月までの利益額は、1億2176万7591円であり、被告インデックスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
ウ 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
(ア)原告
 「恋愛の神様(ソフトバンク)」の平成18年6月から平成21年10月までの利益額は、3857万4578円であり、被告インデックスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ)被告ら
 否認する。
エ 「愛と出会いの占い館」
(ア) 原告
 「愛と出会いの占い館」の平成18年6月から平成21年10月までの利益額は、9010万1723円であり、被告インデックスは、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき同額の利得を得た。
(イ) 被告ら
 否認する。
(3) 被告A
ア 原告
 被告Aは、被告ホールディングスが原告プログラムの大ヒットによって計上した違法な利益を土台として平成13年3月に株式公開し、その結果とそれ以後急騰した持株によって多額の創業者利益を取得し、平成12年4月1日から同21年10月までの間に、法律上の原因を欠き悪意で原告の損失に基づき各種の利得を少なくとも1000億円以上得た。本件では利得の内金500万円を請求する。
イ 被告ら
 被告ホールディングスの株式公開は、同社が手がけていた多数のコンテンツ及び他の事業による収益等を総合考慮し、被告ホールディングスの企業全体としての評価が認められたことにより実現したものであり、原告プログラムを使用したコンテンツのヒットのみによるものではない。
第3章 当裁判所の判断
第1 争点1(プログラム)について
1 同(1)(対比部分の創作性)につき
(1) 星座を求めるプログラム
ア 「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムのソースコードの内容及びその処理内容は、概略、生年月日の月と日から、当該生年月日がどの星座に相当するかを判定するために、まず、月を示す数値をswitch−case文で各月に場合分けした上で、それぞれの月の中で、if−else文で上限日以下の日付であれば該当する星座に相応する番号を(星座の境界日は月の途中にあるため。)、それ以外の場合には別の星座に相応する番号を返すというものである。
 生年月日の月と日によって決定される星座を求めるに当たり、まず月を場合分けし、その月の中にある2つの星座の境界日によって、どちらかの星座に振り分けるというのはプログラム作成過程におけるアイディア又は解法にすぎない。しかるところ、これらは著作権法による保護の対象外であり、これをそのまま表現したか、あるいはこれを平凡な選択によるありふれた表現手法で表現した場合には、実質的にはアイディア又は解法に従っただけのものとして、その表現には創作性がないものというべきである。
 そこで、上記星座を求めるプログラムについて検討するに、上記アイディア又は解法を表現する表現手法は限定されているところ、このプログラムは、いずれも極めて基本的な命令であるswitch−case文とif−else文とを組み合わせて単純な条件分岐をするだけの平凡な構文で、上記アイディア又は解法をそのまま表現したか、あるいはありふれた表現手法で表現したにすぎず、創作性を認めることはできない。
イ 原告は、「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムにつき、スペースや改行位置、変数名などの部分に創作性が認められる旨を主張するが、プログラムとは、「指令を組み合わせたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号の2)であって、これら指令の組み合わせと関わり合いのない部分は、そもそもプログラムとしての創作性ともかかわりのない部分である。それをさておいても、星座を求めるプログラムのスペースや改行位置に格別の個性の発露は見いだし難く、変数名にしても、月を「m」、日を「d」、星座番号を「s」としただけの全くありふれた表現であり、いずれにせよ、創作性を想定することはできない。
ウ また、原告は、生まれた月日に対応した星座名を求めるアルゴリズムには多数の表現が選択し得る旨を主張する(原告の提示した例が、「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムではなく、「A−1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムに基づくことはさておくこととする。)。
 しかし、原告の上記主張の前提とされているのは、アルゴリズムが単に「誕生日と星座との対応関係」であるということであるが、アルゴリズムとは、「問題を解決する定型的な手法・技法。コンピューターなどで、演算手続きを指示する規則。算法。」(広辞苑第6版)のことであり、何ら課題解決に向けた取決めを含まないものはアルゴリズムということはできない。原告が主張する「アルゴリズム」とは、解決技法ではなく、解決課題そのものをいうにすぎず、原告の上記主張のようにアルゴリズムを限定しないならば、表現の数を膨らますことができるのは当然である。しかしながら、著作権法にいうプログラムの創作性とは、ある解法(アルゴリズム)を表現するに当たっての創作性のことであり、解法が異なるプログラムを対比することは、アイディア又は解法を対比しているにすぎず、無意味である。
 もっとも、原告が主張する例示の表現中には、前記説示の「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムの解法と異ならない解法の下に記述されたとみ得るものも散見されないではない。しかしながら、プログラム言語においてはその命令数が限定され、自ら命令語を作出する余地はなく、文法においても厳密に定義されたものに機械的に従うほかないこと、そして、プログラムが機能的な表現であって、だれがその作成に当たっても効率性という方向に必然的に向かうことなどにかんがみれば、プログラムの表現には自ずと一定範囲の常識的な実用的慣用的表現というものが生じるのであり、その部分はありふれたものとして独占を許すべきではないから、プログラムの創作に当たっての表現の選択とは、上記の要請からくるありふれた表現の範囲があることを考慮して判断すべきものである。しかるところ、前記説示の「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムの解法と異ならない解法の下に記述されたとみられるものも、括弧、スペース、インデント等の有無、位置という前述のとおりプログラムの創作性とはかかわりのない部分が相違するだけのものか、あるいは比較演算子、条件演算子の変更などという限定された選択が相違しているだけのものであって、いずれもありふれた選択の範囲の中にあるものにすぎない。自らがした表現のほかにもありふれた表現があり得るからといって、自らの表現がありふれた表現でないことになるものではない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
エ 上記のとおり、そもそも「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムの表現そのものからして既に創作性が認められない以上、その余の創作性に係る原告の主張につき判断するまでもなく、上記プログラムに創作性を認めることはできない。
(2) 日干計算のプログラム
ア 「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムのソースコードの内容及びその処理内容は、概略、生年月日の年と月と日から、当該生年月日がどの日干(日の十干)に相当するかを判定するために、まず、1月又は2月生まれをそれぞれ前年の13月又は14月とする処理をした上(これはもともと以下の式で要求される前処理である。)、公知である西暦y年m月d日の曜日を求める公式であるZellerの公式の一部を変形した式によって、10日周期の日干の最初の基準日からずれていく総日数を算出し、これを10で割った余りに相応する数値を返すというものである。
 日干の計算式は、プログラム作成過程におけるアイディア又は解法にすぎず、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、この計算式をPHP言語の命令を利用してそのとおりに表現しただけのものであって、プログラム表現としてはありふれたものにすぎず、創作性がない。
イ 原告は、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムの変数名、関数名などの部分に創作性がある旨を主張するが、前記(1)イに説示のとおり、変数名、関数名についてはプログラムの創作性とは無関係というべきである。それをさておいても、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムの変数名は、年を「y」、月を「m」、日を「d」、戻り値を「z」とするだけの全くありふれた表現であり、関数名にしても、日干(nikkan)を得る(get)関数(function)の意味で「Fgetnikkan」としているだけの全くありふれた表現であり、何ら創作性を見いだし難い。
ウ 上記のとおり、そもそも日干計算のプログラムの表現そのものに既に創作性が認められない以上、その余の創作性に係る原告の主張につき判断するまでもなく、上記プログラムに創作性を認めることはできない。
(3) 九星を求めるプログラム
ア 「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムのソースコードの内容及びその処理内容は、概略、生年月日の年と月と日から、当該生年がどの九星に相当するかを判定するために、まず、立春が(2月)5日である年と立春が(2月)3日である年をそれぞれ配列として格納し、立春日を(2月)4日とした上で、上記各配列を読み込んでいき、年が一致したら立春日を5日又は3日として上書きし、この日付を用いて算定の基準となる年を求め(九星の判定の前提となる年は立春日によって前年と今年に分かれるため、立春日より前年の場合は年から1を減じる。)、この年を用いて9年周期である九星と年との対応式から九星の番号を返すというものである。
 うるう年の場合と異なり、立春がいつになるかを求める簡易な数式が存在するとは認められないから、上記プログラムのアイディア又は解法は、立春が2月3日〜5日となる年のデータを準備してこれに当てはめて立春日を決定し、立春日を基準に算定の基準となる年を求め、この年に基づき九星の数式を用いて九星を求めると特定される。しかるに、上記プログラムは、立春をひとまず2月4日として置いているが、原則的な場合を初期値として置き、例外的な場合にこれに上書することは、プログラミングの常套手段にすぎず、そのほかは、ループを利用した配列の読み込みと前年になるかどうかの判定と九星を求める対応式を、PHP言語の命令を利用してそのとおりに表現しただけのものであって、プログラム表現としてはありふれたものにすぎず、創作性があるとはいえない。
イ 原告は、「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは、数多く存在する立春の判断方法の中からたまたま原告が採用した手法で記述されている旨を主張するが、立春の判断方法それ自体は、アイディア又は解法にすぎないものであり、その選択をもって表現の選択ということはできない。
 また、原告は、「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムの変数名に創作性がある旨を主張するが、前記(1)イに説示のとおり、変数名についてはプログラムの創作性とは無関係というべきである。それをさておいても、「y」、「m」、「d」、「c」、「off」、「n」、「d25」、「d23」などのありふれた、かつ、極めて短い変数名に創作性は認め難い。なお、「立春」を表す変数名に「shunbun」(春分)と命名したことは、原告が自認するとおり勘違いによるものであり、「立春」を「春分」と誤解した状況を前提とすれば、「春分」を表す変数名に「shunbun」と命名しただけの全くありふれた表現であって創作性がない。そして、これを「立春」を求める関数における変数に適用したことは、単なる誤記の類というべきであって、知的生産活動としての思想が表現されたものとはいい難い。
 原告の上記主張は、いずれも採用することができない。
ウ 上記のとおり、そもそも「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムの表現そのものに既に創作性が認められない以上、その余の創作性に係る原告の主張につき判断するまでもなく、上記プログラムに創作性を認めることはできない。
(4) 年月日を得るプログラム
ア 「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムのソースコードの内容及びその処理内容は、概略、年月日を表す文字列から年、月、日の部分をそれぞれ取り出してこれを整数の配列として返すものである。
 指定した位置から文字列の一部分を取り出すことは、PHP言語の標準関数substrの機能そのものであり、年月日を得るプログラムは、単にこのsubstr関数を3つ並記してsubstr関数がする処理をそのとおり実現しているだけのものであり、創作性がないことは明らかである。
イ 上記のとおり、そもそも星座を求めるプログラムの表現そのものに既に創作性が認められない以上、その余の創作性に係る原告の主張につき判断するまでもなく、上記プログラムに創作性を認めることはできない。
(5) 守護星を求めるプログラム
ア 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムのソースコードの内容及びその処理内容は、概略、年4桁、月2桁、日2桁の数値を取り出して8桁の数値に置き換え、星座名と8桁の数値を要素とする配列の中の数値部分を読み込んでいき、8桁の数値が所定の条件に達したときは、相応する星座名部分を返すものである。
 ここで扱う生年月日と星座名の対応は、恒星である太陽の位置に基づく一般的な太陽星座ではなく、惑星である金星又は火星の位置に基づく金星星座又は火星星座であり、これらの星座と生年月日との対応を求める簡易な数式が存在することは認められないから、上記プログラムのアイディア又は解法は、生年月日と金星星座又は火星星座とが対応してあるデータを読み込んで星座名を返すというものに特定される。しかるに、上記プログラムは、生年月日を8桁の数値に置き換え、また、「aquarius」を初期値としているが、そのまま並べれば8つの数値になる生年月日(西暦)を8桁の数値に置き換えることは全くありふれた手法にすぎず(そもそも読み込んで対比すべきデータ定義ファイルの生年月日の数値が8桁なのであるから、プログラム部分も8桁の数値にせざるを得ない。)、また、誤作動防止のために初期値を設定することはプログラミングの常套手段にすぎず、そして、そのほかは、ループを利用した配列の読み込みをPHP言語の命令を利用してそのとおりに表現しただけのものであって、プログラム表現としてはありふれたものにすぎず、創作性があるものとはいえない。
イ 上記のとおり、そもそも守護星を求めるプログラムの表現そのものに既に創作性が認められない以上、その余の創作性に係る原告の主張につき判断するまでもなく、上記プログラムに創作性を認めることはできない。
(6) 相性占いの結果データ定義ファイル
ア 「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルを構成するデータは、主に画面表示に供される文章等の文字データなどの単にコンピュータ処理に供される側のデータであって、コンピュータに対する指令の組合わせではないから、この部分がプログラムの一部を構成するということができるとしても、プログラムの創作性とはかかわりのないものであって、そのデータの選択、データの内容、データの並び順、データの分割方法ゆえに、プログラムの創作性が生じるものではない。そして、データ定義ファイルは、array文を使用して上記データを階層構造に並べたものであるが(一部に階層構造すらないものがある。)、データを配列することはPHP言語のarray文の機能そのものであり、データ定義ファイルは、単にこのarray文がする処理をそのとおり実現しているだけのものであり、プログラムとして創作性のないことは明らかである。
イ 原告は、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルで星座の英語名を用いたことをもって創作性がある旨を主張するが、上記のとおり、データそれ自体の表現内容によってプログラムの創作性が生じるものではない。それをさておいても、星座のデータに星座の英語名を使用することは、全くありふれた表現手法であって、いずれにしても創作性のあるものではない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
(7) 相性占いの星座定義ファイル
ア 上記(6)アのとおりであり、創作性を認めることはできない。
イ 原告は、「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルに星座の英語名を用いたことや、日付を8桁の数値にしたことをもって創作性がある旨を主張するが、上記のとおり、データの表現内容によってプログラムの創作性が生じるものではない。それをさておいても、星座のデータに星座の英語名を使用することや、日付を8桁の数値で表現することは、全くありふれた表現手法であって、いずれにしても創作性を生じさせる余地はない。原告は、日付の表現方法としては他に異なる表現方法がある旨を主張するが、それらもいずれも創作性ある表現とはいえない。他にありふれた表現の選択の余地があるからといって、自己の表現に創作性が生じるものではない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
(8) 今月の運命の定義ファイル
 上記(6)アのとおりであり、創作性を認めることはできない。
(9) 心理テスト用データ定義ファイル
 上記(6)アのとおりであり、創作性を認めることはできない。
(10) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記(6)アのとおりであり、創作性を認めることはできない。
(11) ルーン占い用データ定義ファイル
ア 上記(6)アのとおりであり、創作性を認めることはできない。
イ 原告は、「A恋愛の神様」のファイル名と変数名に創作性がある旨を主張するが、上記のとおり、ファイル名や変数名とプログラムの創作性とにはかかわりがない。それをさておいても、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルのファイル名及び変数名は、古来から伝わるルーン石の外国語表記に、ハイフンを介して上下を示す「p」又は「n」の1字の符合を付しただけの極めてありふれたものであって、創作性のあるものではない。
2 同(3)(類否)につき
(1) 「A−1旧恋愛の神様」
ア 日干計算のプログラム
 「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、そもそも日干を求める計算式が異なり、解法又はアイディアのレベルからして異なるものであるから、そのプログラムの表現が類似するものとはいえない。原告は、「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムを誤解して引き写したものであると主張するが、「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムの計算式が変数yearを12で除しているのは、干支のサイクルの中で日の十干を求めようということであり、結果に影響を与えない無意味な数値を意図的に紛れ込ませたというようなものではない。また、「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムの計算式後半部分の2を減ずるところの意味合いも、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは解釈を異にした上で同一の結論に達しているものである(甲18、乙30)。「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、そのプログラム表現が前提としているアイディア又は解法のレベルにおいて、これらを実質的に異にしているものというべきである。原告の上記主張は、採用することができない。なお、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとで、その関数名がほぼ同じであることは、プログラムの表現の類否とはかかわりがないというべきであるから、上記結論を左右しない。
イ 年月日を得るプログラム
 「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは、「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムにおいて、「A恋愛の神様」にはない入力された値のチェックとエラーを返す処理があり、「A恋愛の神様」が使用しているsubstr関数ではなく配列を使用し、また、「A恋愛の神様」が年、月及び日を要素とする配列で返すのとは違って、年、月又は日ごとにポインタ(変数などが格納されているアドレスを値とする変数)として返しているのであるから、「A恋愛の神様」のプログラムの表現と類似するものとはいえない。原告は、「A−1旧恋愛の神様」において配列を使用したのは、C言語においてsubstr関数に相当する関数がないことに起因するにすぎず、上記配列の使用はsubstr関数の翻訳である旨を主張するが、その主張のとおり、「A−1旧恋愛の神様」は、PHP言語におけるsubstr関数と同等のC言語の関数を使用したというのではなく、substr関数のアルゴリズムにさかのぼって同関数と同様の機能を別な表現でもって実現したということであり、上記部分は、プログラムの果たす機能が類似するというだけであって、表現が類似することにはならない。原告の上記主張は、採用することができない。なお、両プログラムの関数名がほぼ同じであることが上記結論を左右しないことは、前述のとおりである。
ウ 画像タグを生成するプログラム
 「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとの類似性について原告が主張するところは、ユーザがあらかじめ登録した値と携帯電話の表示性能を考慮してどの画像を表示するかを選択する処理手順という基本的機能についてのものである。しかしながら、そもそもプログラムの処理手順がアイディアないし解法に属するものであるのみならず、ここで原告が主張している処理手順とは、「A−1旧恋愛の神様」においてユーザの指定がない場合の処理やアニメデータの存在のチェックなどの処理が「A恋愛の神様」における処理に追加されていることすらも捨象した、具体的な処理の流れを更に抽象化した基本的処理のことをいっているのであるから、表現とはかかわりのないところの類似を主張するにすぎず、その主張は失当である。また、原告は、「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムの関数名と「path」という変数名が「A恋愛の神様」のそれと類似する旨を主張するが、前記1(1)イにて説示のとおり、プログラムの創作性と関数名、変数名とは関係がなく、原告の上記主張は、創作性のない部分を対比するものとして、類似性の主張として無意味であって失当である。それをさておいても、「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムの関数名は「gifimg」であり、「A−1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムの関数名は「*GetGifTag」なのであり、関数名が、短い文字数の中で関数の機能を的確に表出するためその表現が極めて限定されていることを考慮すれば、類似しないというほかない。変数名の点についても、画像ファイルの存在するフォルダに至るまでのパスを示す変数として「path」を使用しているだけのことであり、全くありふれた表現として、創作性を認める余地はない。原告の上記主張も、採用することができない。
エ 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとの類似性について原告が主張するところは、守護星を得るという同じ目的のプログラムであるというところに尽き、これはプログラム表現のためのアイディア又は解法以前のプログラムの仕様の問題であって、表現でないところの類似を主張するにすぎず、その主張は失当である。そして、「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムは、forループ部分がポインタを使った構造体(複数の型の変数をひとまとめにしたもの。)のメンバ(構造体によってまとめた要素)を参照する形式になっており、原告が自認するとおり、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムにおけるforループ部分とはプログラムの表現が異なる。「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1旧恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとで、1行だけ同一の命令文があることは上記結論を左右しない。
オ 相性占いの結果データ定義ファイル
 「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、単にデータのみが羅列されているだけのCSV形式のデータであり、そもそもそれ自体はプログラムではないのであるから、PHP言語のarray文を使用した配列である「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルとプログラムの表現として類似する余地がない。
カ 相性占いの星座定義ファイル
 上記オに同じ。
キ 今月の運命の定義ファイル
 上記オに同じ。
ク 心理テスト用データ定義ファイル
 上記オに同じ。
ケ 合コンでゴン用データ定義ファイル
 上記オに同じ。
コ ルーン占い用データ定義ファイル1
 上記オに同じ。
サ ルーン占い用データ定義ファイル2
 上記オに同じ。
(2) 「A−1新恋愛の神様」
ア 日干計算のプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムは、原告も自認するとおり、プログラムの表現として全く異なる「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の日干計算のプログラムと同一のものであるから、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、類似するということはできない。
イ 年月日を得るプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、下記(3)イ及び同(4)イのとおり、「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは類似しない「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムを変更した「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の年月日を得るプログラムを、更に変更したものであるから、「A−1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは、類似するということはできない。
ウ 画像タグを生成するプログラム
 「A−1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは、原告がほぼ完全に違う内容であることを自認する「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムを更に変更したものであり、そのプログラムの表現をみても類似する部分というものを見いだし難いから、「A−1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、類似するということはできない。
エ 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−1新恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、そのプログラムの表現に類似する部分というものを見いだし難いから、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、類似するということはできない。
(3) 「A−2恋愛の神様」
ア 日干計算のプログラム
 原告も自認するとおり、「A−2恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、そのプログラムの表現が全く異なるから、「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「A−2恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは、類似するということはできない。
イ 年月日を得るプログラム
 「A−2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは、上記(1)イのとおり、「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと類似しない「A−1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムを更に変更したものであるから、「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「A−2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは、類似するということはできない。
ウ 画像タグを生成するプログラム
 「A−2恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは、原告がほぼ完全に違う内容であることを自認しており、そのプログラムの表現をみても類似する部分というものを見いだし難いから、「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは、類似するということはできない。
エ 守護星を求めるプログラム
 「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−2恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとの類似性について原告が主張するところは、日付を渡して星座名を得る関数であるという点だけであり、その主張は、表現でないところの類似を主張するにすぎず、失当である。そのプログラムの表現をみても類似する部分というものを見いだし難いから、「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「A−2恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは、類似するということはできない。
(4) 「A−3恋愛の神様」
ア 日干計算のプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、上記(3)アに同じ。
イ 年月日を得るプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、上記(3)イに同じ。
ウ 画像タグを生成するプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、上記(3)ウに同じ。
エ 守護星を求めるプログラム
 「『A−2恋愛の神様』」とあるところを「『A−3恋愛の神様』」と改めるほかは、上記(3)エに同じ。
3 まとめ
 以上のとおりであり、「A恋愛の神様」と「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」との対比によれば、両者は、創作性のない部分において類似するか又は類似する部分がないかのいずれかであって、せいぜい、創作性のない「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラム若しくは九星を求めるプログラム(ソースコードにして合計33行)が、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」の星座を求めるプログラム若しくは九星を求めるプログラムと似ているという限度の事実が認められるにすぎない。してみれば、その余の点について判断するまでもなく、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」を複製又は翻案したものであると認めることはできない。
第2 争点2(言語)について
1 同(1)(作成者)につき
(1) 自白
 原告は、被告らが「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等の著作権が原告にあることを自白した旨を主張するようであるが、そもそも権利の存在に関する自白は権利自白にすぎず拘束力を認めることはできない。また、訴訟手続上、著作権侵害を主張し、そこで著作物を「プログラム」と特定するのであれば、それは著作権法2条1項10号の2の「プログラム」として著作物を特定したものであり、この著作物に言語、美術、画像等のアウトプットに係る著作物又は単なる電子データは含まれない。原告の主張は、「プログラム」という用語又はその具体的な名称で、あるときはプログラムそのものを指したり、あるときはプログラムを含むソフトウェアを指したり、あるいは当該ソフトウェアに提供されるサービスを指すなど一貫していないが(このように原告の主張する著作権侵害の範囲が明確でないことが審理の過程で判明したことから、受命裁判官は、平成20年3月21日第10回弁論準備手続期日、同年5月13日第12回弁論準備手続期日、同年6月20日第13回弁論準備手続期日及び同年7月11日第14回弁論準備手続期日において、原告に対し、侵害されたとする著作物の範囲を明確にするよう釈明を求めた。)、このような場合、原告の主張が不明確であるからといって、自白が成立する範囲を自白した者に不利益に解すことはできないから、被告らの自白は、著作権法上のプログラムの範囲でされたものと解するのが相当である。したがって、被告らが、言語、美術、データベースの著作物等、プログラム著作物でない著作物について原告の著作権を自白したものとすることはできない。この点は、前訴和解条項3条の著作権確認条項についての確認範囲の解釈についても同様にあてはまる。
(2) メール
ア 原告は、自己が著作者であることの立証責任を負担するにもかかわらず、その訴訟活動は、主として被告らに被告ホールディングス若しくは被告インデックス又はアカデメイアが著作者であることの証拠提出を求め、この要求に応じて被告らが提出した証拠を難じるというものであり(これにより被告ホールディングス若しくは被告インデックス又はアカデメイアが著作者であることの立証ができなかったとしても、それは著作者がだれであるか真偽不明になるだけであって、転じて原告が著作者であることの立証がされたことになるものではない。)、積極的に原告代表者が創作をしたことを裏付ける立証活動をしておらず、原告から提出された実質的な証拠といえるのは、原告代表者の陳述又は供述を除けば、甲39のメールのみである。
イ そこで、まず、上記メールについて検討するに、上記メールの中には、原告代表者から被告ホールディングスに対して、平成10年12月18日付けで「金星/火星の星座をもとめる表のチェック」及び「相性診断結果のチェック」と題するプログラムを作ったことを連絡するメール(甲39の6)、同月22日付けでデータ定義ファイルの一部に該当する相性占いとルーン占いのデータ(aisho.data、rune.data)を送信するメール(甲39の7〜9)、平成11年1月24日付けで「石をいくらいじっても文字自体に目が行ってしまうので、上下の判別がつかないだろうと思います。・・・やってみましたが、占い文も書きにくいというのもあります。」との文章を含む原告白黒画像を送信するメール(甲39の22・23)、同年2月2日付けで星座記号等についての画像ファイルを送信するメール(甲39の34〜36)、同日付けで合コンでゴンのイージー版を作成したことを連絡するメール(甲39の39)があることが認められる。しかしながら、いずれもこれらデータ等を送付する又は作成したことを連絡するというメールだけが提出されており、対応する被告ホールディングス担当者から原告に対して送付されたメールが見当たらず、どのような経緯で上記各メールが送付されたのかは不明である。また、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等をすべて原告代表者が作成したというならば、原告から被告ホールディングスに文章等の完成版が送付されていてもよさそうなものであるが、原告代表者がメールに添付して送付した文章は、データ定義ファイルの内容のすべてを網羅しているものではない。その上、被告ホールディングスと原告との間の技術的な情報のやり取りやロゴマークなどについてのメールのやり取りに比すると、文章、画像については、原告と被告ホールディングスのやり取りに関するメールは極端に少ない。そうすると、原告から被告ホールディングスへの返信メールに対応するはずの被告ホールディングスから原告への送信メールが欠落しているのか、あるいは被告ホールディングスから原告への送信メールが意図的に削除されたとの疑念をいれざるを得ない。むしろ、「『心理テスト』のプログラムと問題文と回答文を改良しました。」(甲39の10・11)、「要望いただいていた、ルーン占いをもっと豪華にとの件をためしてみました。まず、B様の考えの、タロットみたいに全部に上下を持たせて種類を増やす、方法ですが、あまり良くないです。」(甲39の22)、「サンプルは、こちらでの占い文の作成が完全に終わっているものの、そちらでのチェックOKをもらっていませんので完全にチェック終わり・・・」(甲39の67)のようなメールを見ると、むしろ上記メールでのやり取り以上の重要なやり取りが、メールの送付以外の方法でされていたことがうかがわれ、甲39のメールのみで被告ホールディングスと原告との主なやり取りを把握できるとはいい難い。
ウ ところで、被告Aから原告代表者あての平成10年11月18日付けメール(甲39の5)には、「ドコモの見積を拝見しました。今回はH様が保守だけではなく占い文とプログラムなど全部する見積にしても高いと感じております。内容は変えず値引きしていただきたい。有名ブランドで箔を付ける費用がかかります。理解してほしい。・・・」とのメールがあるものの、これは「仮に原告が占い文をも作成したとしても高すぎる、有名ブランドに制作を依頼する費用がかかるのでプログラム制作費用については値引きしてほしい。」とも解釈できるのであり、必ずしも原告代表者が自ら「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等を作成したことを裏付けるものとして決定的なものとはいえない。そもそも、上記メールは、その内容からして原告代表者が「A恋愛の神様」の作成に関与する前に原告に送信されたものと認められるから、その後に実際に原告代表者が占い文等の作成に当たったか否かを直接証するものではない。
エ また、平成11年1月7日付けアカデメイアから被告ホールディングスあての乙41のメールにおけるサンプル原稿(サンプルといっているのであるから、一部を抜粋したものを意味することは明らかである。)と平成10年12月22日付け原告から被告ホールディングスあての甲39の7〜9のメール(これもまたデータ定義ファイルとして完成したものではない。)にそれぞれルーン占いの文章が記載されているところ、両者は、「相手に『交換』を保たれる」「『だだ』まだ大勢の異性」など誤字が一致する箇所がある一方(この誤字は甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルでは修正されている。)、甲39の9のメールの中には乙41のメールにはない文章があったり(甲39の9のメールで追加された文章は、甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと同じである。)、乙41のメールでは「ナウシズ」「逆」の場合の占い結果文とされているものが、甲39の9のメールでは「ナウシズ」「正」の場合の占い結果文の末尾に誤って挿入されて、「ナウシズ」「逆」の文章が全く異なる部分があったりする(この誤りは甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルに引き継がれており、そのため、乙39の9のメールと甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの「ナウシズ」「逆」の場合の占い結果文には新たな文章が入れられている。)(甲30の2の2)。上記のような内容の変遷過程、特に、乙41のメールにおいてルーン石の占い文の「正」「逆」の区別のために付けられた「逆)」との記号が残されたまま、「ナウシズ」「逆」の場合の占い文が甲39の9のメール及び甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの「ナウシズ」「正」の場合の占い結果文の末尾に挿入されていることからすれば、これは、「正)」、「逆)」の記号が記載されている文章からこれら文字を機械的に削除していたときに生じる誤りであると考えるのが自然であるから、とりも直さず、「正)」、「逆)」記載のある文章が先に作成されていたと考えるほかない。したがって、作成の順番からいえば、乙41のメール、甲39の9のメール、甲22の2の「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと認めるのが合理的である。しかしながら、作成日付の順番は、甲39の9のメール、乙41のメール、甲22の2のデータ定義ファイルとなっており、つじつまが合わない。
 いずれにせよ、乙41のメールの日付が甲39の9のメールの日付よりも信用できるものと認めるに足りる証拠まではなく、そうであれば、上記認定事実から合理的に帰結できることは、乙41のメール及び甲39の9のメールのいずれよりも先に作成された文章が既にあったということであり、そうすると、甲39の9のメールは、原告代表者が先に当該占い文章を作成したことを何ら立証するものではない。
オ 以上からすれば、甲39のメールから原告代表者が「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等を作成したものと認めることはできない。
(3) 証言及び供述
ア アカデメイア代表者であるC及び被告ホールディングスの担当者Bは、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等の作成について、次のような証言をしている。
(ア) 証人C
(@) 「(問) 例えば、覚えていらっしゃる指示の内容というのはありますか。
(答) 例えば、これは占い原稿の基本なんですけども、断定的な口調を避けるようにとか、あと、ネガティブな表現を余り多用しないようにということですね。どうしても、そうは言ってもネガティブな情報を伝えなきゃいけないという場合でしたらば、必ず、あとでアドバイスの形を付け加えるようにですとか、また、短い文章でつないでリズミカルに読みやすい文章にするようにですとか、そういったかなり細かい指示になりますけども。」
(尋問調書10頁)
(A) 「(答) これは相性占いの場合ですと、通常の星占いと違ったものにしようということになりましたので、通常の星占いというのは・・・〈省略〉それはいわゆる天体の太陽というものの運行を基に、太陽が何座に、どの星座に入っていたかというふうな区分なんです。ですから、太陽ではない、例えば金星とか、火星とか、当時、余り表の印刷物とか雑誌とかに取り上げられにくいもの、そういったものを取り上げて恋愛の原稿にしていきましょうという形になったんですけども。
(問) そうすると、男性は何の惑星に決まるんですか。
(答) 男性は火星ですね。
(問) 女性は。
(答) 女性は金星です。
(問) それはなぜなんでしょうか。
(答) これは、火星というのは基本的に占星術の世界では戦いの星というふうに定義づけられていまして、自分から攻めていくとか、あるいは獲得していくとか、求愛していくとかという働きがあるんです。・・・〈省略〉そこで火星が何座に入っているかというのを用います。一方女性のほうは、金星というのが、受け止めるとか、あるいは感じて気持ちいいと思うというふうなことの定義を持っていますので、・・・〈省略〉金星を取り上げています。」
(同10頁〜11頁)
(B) 「(問) 相性の決め方というのは何かルールがあるんですか。
(答) 基本的には、よく知られています十二星座ですね、・・・〈省略〉同じ価値観を共有し合っているもの同士が三つずつセットで4グループに分けたりします。これ、4区分、あるいはフォーエレメンツなんて言いまして、そこに属しているもの同士ですね、具体的には火のグループ、地のグループ、風のグループ、水のグループというふうになるんですが、各グループに所属しているもの同士は、お互い、価値観が共有し合えるので仲がいいというふうに、まず、みなします。・・・〈省略〉
(問) 同じ星座群同士は相性がいいんですか。
(答) ・・・〈省略〉同じ価値観を共有する、・・・〈省略〉したがって、相性がいいと。・・・〈省略〉
(問) 次に、星座群は違うんだけれども相性はいい組合せというのはあるんですか。
(答) ・・・〈省略〉火のグループと風のグループが、・・・〈省略〉お互いがお互いを助け合う関係ですとか、あと、地のグループと水のグループも、・・・〈省略〉仲が協力し合える関係という形で、次に相性のいいグループになります。
(問) 同じ相性のいい星座群同士でも、相性のよさに差はあるんですよね。
(答) ・・・〈省略〉四つのエレメンツと、また別基準のグループ分けがありまして、これ、3区分、クオリティーと言います。これは動作原理を基にして12の星座を、今度は四つずつ、三つのグループに分けるんですが、具体的には活動のグループ、不動のグループ、柔軟のグループというふうに名付けられています。
(問) 例えば、どういう場合が相性が悪いんでしょうか。
(答) この同じクオリティーの活動グループ同士ですとか、不動のグループ同士とか、柔軟のグループ同士というのは、お互いの動作がぶつかり合って、・・・まとまりがつかなくなってけんかになるとか。
(問) つまり、エレメンツとクオリティーで相性の度合いは大分決まってくるということでよろしいですか。
(答) そうです。・・・〈省略〉
(問) そうすると、この点数というのは適当に付けたわけではなくて、占い的な根拠がきちんとあるんですね。
(答) はい、当然です。」
(同12頁〜16頁)
(C) 「(問) 心理テストというのは占いなんですか、心理学なんですか。
(答) 心理学ではないですね。じゃあ占いかと言われると、厳密な意味で言うと、占いではございません。ただし、ある種のゲームなんですけどもね、我々のほうで提供しております心理テストは、そこに占い的な要素を加味して、単なるゲームではないよというような。
(問) 占い的要素を加味するというのは、どのような要素を加味されているんですか。
(答) 一番多いパターンは、先ほど例にも挙げました四つのエレメンツですね、その価値観に即して最終的に四つの答えに行き着くというふうなパターンのものを多く作成します。」
(同17頁)
(D) 「(問) タロット占いの結果文章というのは、どういう根拠から導き出すものですか。
(答) 基本的には、その並び順というのは、要はカードに振られている番号ですね。その数字、西洋の占いというのは、伝統的に伝わっています数秘術というふうなものをベースにしているものがすごく多いんですけども、その数が持っている意味ですね、というふうなものですとか、あと、そのカードに描かれた絵柄ですね、その絵柄の表すものと、大体この辺の範囲とかこういう内容というのはシンボリズムによってあるんですけども、そういうものを基にして、あと、与えられたテーマにそれを落とし込んだ場合、どういうふうに解釈するという形でやっていきます。」
(同19頁)
(E) 「(問) 例えば、そのルーン占いというのは、ルーン文字は正と逆がありますよね。
(答) はい、全部ではないですが。
(問) これは、全く逆の意味になるんですか、愛と憎しみみたいな形で。
(答) いや、そうなるものも一部あるかもしれませんが、基本的にそういうワンパターンではないです。本来のものがネガティブな感じに転化してしまう、・・・〈省略〉そういう正位置の内容を獲得するまでに必要な影の部分と言うんですか、水面下の部分とか、そういったものを採用するですとか、要するに何パターンかの逆位置のものが、特にこれといった法則もなく入り混じっているのが、ちょっと分かりにくいところなんです。・・・〈省略〉
(問) 今回の恋愛の神様では、ルーン文字の結果文章って41パターンなんですけれども、それはなぜなんでしょうか。
(答) その逆位置が存在しない文字、正も逆も識別ができないものは9種類あるんです。ですから、本来の文字の種類は25種類ですから、単純に正、逆というふうに2倍すると50通りというふうになるはずですけども、正、逆の判別がつかないものが9通りありますから、50から9を引くと41通りになります。」
(同22頁〜23頁)
(イ) 証人B
(@) 「(〔判決注別紙言語対比表別紙7を示す〕(問) こちらの対比1というのを見ていただきたいんですけれども、これはエラーがあった場合の表示文章なんですね。
(答) はい。
(問) これはどなたがお考えになったんですか。
(答) これは私が考えました。
(問) 何で自分が考えたというふうに言えるんですか。
(答) この恋愛の巫女よりというところなんですけども、当時、先行して、うちの会社は四次婆というコミュニティーサービスをやっていたんですが、その中のメニューの一つに、四次婆神社というコーナーがありまして、そこから、巫女という言葉を思いついたのと、あと、私が大学時代に巫女のアルバイトをしてたので、こういう文言を入れました。」
(尋問調書7頁)
(A) 「(問) 次に対比5、こちらにマイメニュー登録時の表示文章4というのがあるんですが、ここに、利用規約というのが載っていますね。
(答) はい。
(問) これは、何を基に作ったものなんですか。
(答) これはドコモさんの仕様ですね。仕様をそのまま抜き出して、付けました。」
(同8頁)
(B) 「(問) それから対比13。
 ・・・〈省略〉
(問) これはだれが考えたんでしょうか。
(答) これも私が考えました。
(問) 何かインデックスなりに工夫したところというのはあるんですか。
(答) はい。当時、四次婆というコミュニケーションサービスをやってまして、非常にユーザーさんとのやり取りが多かったんですね。ユーザーさんから来るメールもすごく多かったので、質問にすぐにメールで返信できないということがありまして、それで、ユーザーさんからメールがすぐ返ってこないじゃないかというようなおしかりを受けたことがあったので、恋愛の神様のときには、御質問への回答が遅れる場合がありますという文章を入れました。・・・〈省略〉
(問) この文章の中に、なお、個人的な占いのご相談には答えかねますというふうにあるんですが、これは何で入れたんですか。
(答) これもこのメール受け付けのところで個人的な占いを質問されても、ちょっとこちらとしても対応に困ってしまうので、この一文、入れさせていただきました。」
(同9頁〜10頁)
イ 一方、原告代表者の供述は、次のとおりである。
(@) 「(問) 原告御自身は、占いについてはどこで学ばれたんですか。
(答) 私は独学です。
(問) 何か著名な書籍等をお読みになっていますか。
(答) 今現在、これといって記憶しているものはありませんが、占いに関する書籍は、かなりのものを読んだと記憶しております。・・・〈省略〉
(問) 本件訴訟では、どうやって原稿を作ったのか、その裏付けになるものを証拠として提出してほしいという要請が裁判官からもあったと思うんですが、そのような具体的なものについては、今まで一切出ていませんね。
(答) 今回、その恋愛の神様の原稿を作るに当たって特に参考にした書籍というのはありませんので、何かその裏付けになるものと言われても、示すことはできません。ただ、私が子供のころからどうやって占いを勉強したのかと問われれば、たくさん本を読みましたというお答えにはなります。」
(原告代表者〔第1回〕尋問調書18頁〜19頁)
(A) 「(問) これを作成するに当たって、参考にした文献はありますか。
(答) あります。
(問) 何を参考にされましたか。
(答) ルーンストーンに関する占いの書籍は多々出版されておりますので、それらを参考にしております。
(問) 具体的な名前を挙げてください。
(答) 今現在、すみません、どれか一つを上げることはちょっとできないんですけども。・・・〈省略〉使った書籍については、もちろん保管してありますけども、それらの書名について、今すぐ言えるかと言われたら、今すぐは言えないと。」
(同27頁〜28頁)
(B) 「(問) この点数を決めた根拠を説明してください。
(答) まず、西洋占星術においては星の位置関係、今回は、女性が金星、男性は火星という星を使っておりますけれども、それの位置関係によって相性がいい、悪いというのが決まっていくというルールがございます。つまり、例えば、30度であるとか、60度であると、90度であると、180度であると、そういった角度によって相性を求めるというのが西洋占星術の占いにありますので、その仕組みを使い、点数を決めました。
 ・・・〈省略〉
(問) しし座とおひつじ座、いて座、それぞれが90点なのは。
(答) そこの個々のことにつきましては、私は占いは勉強しましたけども、常日ごろから、日々、実践と言いますけど、対面で何の参考資料もなく記憶に基づいて占いをするということを職業としておりませんので、今すぐに答えろと言われても、答えられるものではないです。
(問) クオリティーとエレメンツという話は聞いたことがありますか。
(答) ・・・ないというふうにお答えいたします。
(問) この、みずがめ座との相性80点の文章があるんですけれども、こういう文章は何を根拠に作るんですか。
(答) これは純粋に創作によるものですね。
(問) 純粋な創作、あなたが何がしかの原典を見て書いたものではなく。
(答) 参考資料を見てということではなくて。
(問) 参考資料を見ないで書いた。
(答) はい。
 ・・・〈省略〉
(問) その文章を書くに当たって、どのような考え方で文章を作られたんですか。要するに、結果文章の根拠は何ですか。
(答) いや、それも純粋に創作によるものです。
(問) 純粋な創作というのは、あなた自身がゼロから考えたということですか。
(答) はい。」
(同39頁〜41頁)
(C) 「(問) どういう根拠を使って心理テストを作られましたか。
(答) それも創作によるものですね、特に参考文献はありません。
(問) 何もない、占い的な根拠はないんですか。
(答) 参考文献若しくは学術的な根拠があるかと言われたら、それはありません。」
(同41頁〜42頁)
ウ 上記アのとおりの証人C及び証人Bの「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等の作成過程についての供述内容は、上記イのとおりの原告代表者のものに比べ、具体的かつ説得的である。そして、東洋占い、西洋占い、心理テストなど各種専門的知識に及ぶ言語表現は、各種占い師を擁し、外注先も持つ(証人C)アカデメイアにおいてこそ作成し得たと考えるのが自然であるが、参考文献もなしに原告代表者が1人で一から創作したとすることは困難である。そのようなことから、受命裁判官は、原告に対し、平成20年9月17日第16回弁論準備手続期日、同年10月17日第17回弁論準備手続期日、同年11月14日第18回弁論準備手続期日において参考文献等、原告が著作者であることを裏付ける根拠となる資料があるか釈明を求めたにもかかわらず、原告は、原稿、参考文献等は一切明らかにせず、上記求釈明を前提に臨んだ尋問期日においてもこれを明らかにしなかった。原告が、参考文献もなくすべて完全に自己が一から創作したものについては、参考文献はないことになるが、そうであるならば、尋問に対しては、一から創作した自分の知識で答えれば済むことであって、具体的に供述することができるはずであるが、原告代表者は、上記イにあるように、むしろ供述に詰まっているのであり、その供述態度は不自然というほかなく、その供述を採用することはできない。
 結局、原告代表者の供述によっても、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等が原告代表者によって創作されたとは認め難い。
(4) 主張及び陳述
 原告代表者は、「言語の著作物等に関して」と題する陳述書(甲24)において(平成20年6月13日付け原告準備書面(15)8頁も同旨。)、百人一首の内容を電子データ化しただけにすぎない100.dataについて、「原告が独自に作成した物である。」と、rune.dataについて、古来から伝わるルーンストーンの名称について、「データ定義前半の各々のルーンストーンの呼称・・・については原告が独自に作成した。」と、tarot.dataについて、「データ定義前半の各々のタロットカードの呼称データは原告が作成した。」とし、その上で「本体プログラム及び管理プログラム内の全ての文章(言語の著作物の側面)は原告の独自の創作によるものであり原告に著作権が帰属している。」など、その主張自体から採用し難い内容の陳述をしている。また、原告代表者は、甲29の陳述書でも「ルーンストーンの呼称は、・・・アルファベットではありません。ルーンストーンの画像ファイルのファイル名の命名について、原告は原告が独自に行ったとの主張を行ってきました・・」とか、単なる星座のアルファベット表記につき「・・・星座名にアルファベットを使用しています。そして、そのアルファベットは外部から解る筈の無い原告が独自に命名した物であるにもかかわらず、・・・」と陳述している。そのほかにも、被告ホールディングスから原稿をもらったものを電子データ化したにすぎないnatsu.dataについても「被告らのヒントやアイディアが入っています、文章やデータの配列(編集著作物の要素)やデータベース化は原告が独自に行いましたので、被告らの関与はありません。」などと陳述している。そして、この結果、上記の多くの部分を本人尋問中に自分が創作したものではないとして撤回せざるを得なくなっている(原告代表者〔第1回〕尋問調書26頁、32頁、34頁〜35頁、38頁参照)。
 上記の経緯に照らすと、原告代表者作成の各陳述書も信用することができない。
(5) 企画
 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画は被告ホールディングス取締役Mの発案であり、同人はアカデメイアに知り合いを有していたことから、平成10年6月ころ、同社代表取締役のCを紹介されたこと(乙15、43、78)、既に平成10年8月27日付けで「ゲートウェイサービスによるコンテンツ総合占い館アカデメイアの御提案」と題する企画書が被告ホールディングスからNTTドコモに提出され、西洋占星術、四柱推命、九星気学、タロットカード、ルーン占い等を利用した運勢占いや心理テストを取り込むことが考えられていたこと(乙35、弁論の全趣旨)、平成10年10月ころに、恋愛に特化した占いコンテンツとすることになったこと(乙43、60)、アカデメイアから参考となる書籍、資料が被告ホールディングスに提供又は紹介されたこと(乙43、47、48、66、92、証人C、証人B)、平成10年11月19日、被告ホールディングスとアカデメイアとの間で「恋専毎日ホロスコ」のメニューや原稿について打合せを行っていること(乙37)、同月30日、同年12月15日、平成11年2月2日に被告ホールディングスからアカデメイアに各種占い、心理テストの原稿作成の催促がされていること(乙39、40、42)からすれば、「恋愛の神様」の仕様はアカデメイアと被告ホールディングスとの間で定められたこと、アカデメイアが原稿作成に関与していたことが認められる。
 このようにアカデメイアと被告ホールディングスとの間で企画打合せが行われていたのであるから、これが「恋愛の神様(NTTドコモ)」に反映されたと考えるのが自然である。
(6) 天文暦
ア 「恋愛の神様(NTTドコモ)」は、一部の占いが惑星の位置に基づく星座を利用しており、この星座を導くためには天文暦に基づくデータが必須であり、少なくとも天文暦を収載した文献を参照しなければ作成のできないものであるが、原告は、自己が依拠した天文暦に関する文献も明らかにすることができない。したがって、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等がすべて原告代表者が作成したものであるとの原告の主張は採用することができないものというべきである。
イ ところで、ASTRO COMMUNICATIONS SERVICES,Inc.「完全版日本占星天文暦1900年〜2000年」(魔女の家BOOKS 1998年。甲44別紙1、乙66。以下「日本占星天文暦」という。)の天文暦と「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルとを対比すると、一覧表の下に掲記されているplanet Ingress(サイン移動。天体がサインを変える時期)欄のデータを基に、時間まで考慮した正確なデータを取得した場合(二つの星座の境界日のうちどちらの星座に帰属する時間が長いかにより当該日をどちらかの星座に振り分ける方法)には、「A恋愛の神様」と「日本占星天文暦」とは、半分が一致しない(甲44別紙3)。しかし、planet Ingress欄を考慮せず、単純に一覧表の日付のみに従って天文暦を取得した場合、29か所(全体の約3%)を除いて「A恋愛の神様」と「日本占星天文暦」とは一致していること、この29か所はわずかな例外を除けば明らかな誤記であることが認められる(乙105、106)。
 一方、「日本占星天文暦」における天文暦と、野中かおり=アカデメイア(天晶礼乃)著、伊泉龍一(有限会社アカデメイア)監修「恋愛の神様DX 金星占い」(株式会社インデックス2002年、甲44別紙2)の天文暦とを対比すると、わずかな例外を除き一致している(甲44別紙5)。このことにかんがみれば、アカデメイアが「日本占星天文暦」を利用していたとするCの証言は信用できるが、そうであれば、「A恋愛の神様」制作時においても、アカデメイアが被告ホールディングスに対して「日本占星天文暦」の利用を指示したという証人Cの証言及びBの陳述(乙105)を疑うべき理由はない。
 そして、平成10年当時、日本製の天文暦は数種類あるものの、絶版中であったり、データの信ぴょう性に問題があるとされ、日本で手に入る洋書の天文暦も3種類であるところ、「日本占星天文暦」は、この中の1つである「アメリカン・エフェメリス」を日本標準時で作成した天文暦である(甲44別紙6)。したがって、天文暦のデータを取得するとすれば「日本占星天文暦」を利用する蓋然性が高いところ、上記のとおり、これと「A恋愛の神様」の天文暦とが非常に高い確度で一致している。したがって、「A恋愛の神様」の天文暦がplanet Ingress欄を考慮しない簡略なデータとなっていることが、意図的なものであったのか(乙104、105参照)、それともアカデメイアの指示漏れであったのかはともかくとして、「A恋愛の神様」の天文暦は「日本占星天文暦」に依ったものと推認される(なお、前述のとおり、原告は、数少ないとされる天文暦のどれを使用したかを明らかにできていない。)。
ウ もとより、天文暦のような日付と星座の対応データが著作物といえないことは明らかであって、「日本占星天文暦」に依拠していなくても、「A恋愛の神様」の天文暦データそれ自体は言語の著作物ではないことはいうまでもないが、少なくとも、「日本占星天文暦」は見ずに天文暦を作成したとする原告代表者の陳述(甲31)は、自分が作成していない天文暦を自己が作成したとするものか、「日本占星天文暦」を見たのにそれを見ていないとしているのかのいずれかであり、どちらにせよ採用することができない。
(7) ルーンの意味の文章
ア 原告から被告ホールディングスあての平成11年1月24日付けメールには、「石をいくらいじっても文字自体に目が行ってしまうので、上下の判別がつかないだろうと思います。・・・やってみましたが占い文も書きにくいというのもあります。」との文章があることが認められ(甲39の22)、平成11年2月2日付け被告ホールディングスからアカデメイアあてのファックスにも、「ルーンの意味を入れた方がいいか(先日C様あてにFAXしたものです)」との記載があること(乙42)、被告ホールディングス作成の平成11年2月3日付けNTTドコモあてのプレゼンテーション資料(乙32)には、既にルーンの意味の文章が一部掲載されていることに照らすと、ルーンの意味の文章(甲22の2の50頁〜51頁)については、アカデメイアから原稿を得ずに原告代表者が自ら作成した可能性がないではない。
イ しかしながら、ラルフ・ブラム著=関野直行訳「ルーンの書」(株式会社ヴォイス1991年。以下「ルーンの書」という。)には、上記ルーンの意味に関して、
(@) マンナズ(Mannaz)について、
 「@自己A人間B人類」(扉部分)「C自己」(本文標題)であるところ(数字については本判決で補充した。)、
 ルーン占い用データ定義ファイル(甲22の2の50頁〜)によると、
 「@自己A人間B人類C自己」とあり(なお、ルーンの意味については、正逆で区別はない。)、
 内容、順序とも一致している。
 以下、順次、同様に検討すると、
(A) ゲーボ(Gebo)について、
 「ルーンの書」で
 「@パートナーA贈り物B神から又は首長から臣下への贈り物」「Cパートナー贈り物」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルで
 「@パートナーA贈り物B神から又は首長から臣下への贈り物Cパートナー」と、
(B) アンスズ(Ansuz)について、
 「ルーンの書」で
 「@信号A神Bロキ神C口(神の御言葉の源) D河口」「E信号Fメッセンジャーのルーンロキ神」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルで
 「@信号A神Bロキ神C口(神の御言葉の源) D河口E信号Fメッセンジャー」と、
(C) オシラ(Othila)について、
 「ルーンの書」で
 「@分離A財産又は遺産B故国C故郷」「D分離E後退遺産」とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルで
 「@分離A財産又は遺産B故国・C故郷D分離E後退」と、
(D) ウルズ(Uruz)について、
 「ルーンの書」で
 「@力A力B生け贄の動物Cオーロクス(ヨーロッパ蓄牛の祖先)D野牛」「力E男らしさF女らしさ野牛」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルで
 「@力A力B生け贄の動物Cオーロクス(ヨーロッパ蓄牛の祖先)D野牛E男らしさF女らしさ」と、
(E) パース(Perth)について、
 「ルーンの書」で
 「@伝授A不確かな意味B秘事(秘密のルーン)」「C伝授D秘められしもの秘密」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@伝授A不確かな意味B秘密(のルーン) C伝授D秘められしもの神秘」と、
(F) ナウシズ(Nauthiz)について、
 「ルーンの書」で
 「@束縛A要求B必要性C束縛D人間の悲しみの原因E教訓F苦難」「束縛必要性G苦痛」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@束縛A要求B必要性C束縛E教訓F苦難・G苦痛D人間の悲しみの原因」と、
(G) イングズ(Inguz)について、
 「ルーンの書」で
 「@豊饒Aイング(後に神となった伝説の英雄)」「B豊饒C新しい始まり英雄イング」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@豊饒Aイング(後に神となった伝説の英雄) B豊饒C新しい始まり」と、
(H) エイワズ(Eihwaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@防御Aイチイの木Bイチイからつくられた弓Cルーンの魔術D避ける力Eルーンのカレンダーまたは棒ごよみ」「F防御避ける力いちの木」とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@防御Aイチイの木Bイチイの弓Cルーンの魔術D避ける力Eルーンのカレンダー又は棒暦F防御」と、
(I) アルジズ(Algiz)について、
 「ルーンの書」で
 「@保護A保護B防御CヘラジカDスゲの木またはイグサ」「保護スゲまたはイグサへらじか」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@保護A保護B防御CへらじかDスゲの木又はイグサ」と、
(I@) フェイヒュー(Fehu)について、
 「ルーンの書」で
 「@所有A畜牛B所有物C共同体の重要な財産」「所有D滋養畜牛」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@所有A畜牛B所有物C共同体の貴重な財産D滋養」と、
(IA) ウンジョー(Wunjo)について、
 「ルーンの書」で
 「@喜びA喜びB苦しみや悲しみのない状態」「喜びC光」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@喜びA喜びB苦しみや悲しみのない状態C光」と、
(IB) ジェラ(Jera)について、
 「ルーンの書」で
 「@収穫A年B収穫C実り多い年」「収穫D実りの季節E一年」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@収穫A年B収穫C実り多い年D実りの季節E一年」と、
(IC) カノ(Kano)について、
 「ルーンの書」で
 「@開始AたいまつB小舟C潰瘍D女神ネルトゥス信仰と関連」「E開始F開くことG火たいまつ」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@開始A松明B小舟C潰瘍D女神ネルトゥス信仰と関連E開始F開く事G火」と、
(ID) テイワズ(Teiwaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@戦士A戦いの勝利B導きの星Cテュール神」「戦士D空の神ティール」(傍点は判決で付した。)
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@戦士A戦いの勝利B導きの星Cテュール神(D空の神ティール)」(傍点は判決で付した。)と、
(IE) ベルカナ(Berkana)について、
 「ルーンの書」で
 「@成長Aカバの木B豊饒信仰と関連C再生D新しい命」「E成長再生かばの木」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@成長Aカバの木B豊饒信仰と関連C再生D新しい命E成長」と、
(IF) エワズ(Ehwaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@動きA馬B太陽を引くものとしての馬」「C動きD進歩馬」とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは、
 「@動きA馬B太陽を引くものとしての馬C動きD進歩」と、
(IG) ラグズ(Laguz)について、
 「ルーンの書」で
 「@流れA水B海C豊饒の源」「D流れ水E導くもの」とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@流れA水B海C豊饒の源D流れE導くもの」と、
(IH) ハガラズ(Hagalaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@破壊AあられBみぞれC損害を与える自然の力」「D破壊自然の持つ力あられ」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@破壊AあられBみぞれC損害を与える自然の力D破壊」と、
(II) ライゾ(Raido)について、
 「ルーンの書」で
 「@旅A騎行B旅C死後の魂の旅D旅のお守り」「旅コミュニケーションF融合G再融合」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@旅A騎行B旅C死後の魂の旅D旅のお守りF融合・G再融合コミュニケーション」と、
(II@) スリサズ(Thurisaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@門A巨人B悪魔CいばらDトール神」「E門F行動しない場所トール神」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは、
 「@門A巨人B悪魔CいばらDトール神E門F行動しない場所」と、
(IIA) サガズ(Dagaz)について、
 「ルーンの書」で
 「@ブレークスルーA日B神の光C繁栄と実り多きこと」「DブレークスルーE変革F昼」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@ブレイクスルーA日B神の光C繁栄と実り多きことDブレークスルーE変革F昼」と、
(IIB) イサ(Isa)について、
 「ルーンの書」で
 「@休止A氷B氷ること」「C停止D妨げるものE氷」とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@休止A氷B凍ることC停止・休止D妨げるもの」と、
(IIC) ソウェイル(Sowelu)について、
 「ルーンの書」で
 「@完全性A太陽」「B完全性C生命力太陽のエネルギー」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@完全性A太陽・太陽のエネルギーB完全性C生命力」と、
(IID) ブランク・ルーン(The Blank Rune)について、
 「ルーンの書」で
 「@未知A運命のルーン」「未知」
 とあるところ、
 ルーン占い用データ定義ファイルでは
 「@未知未知A運命のルーン」
 となっている。
ウ 以上のとおり、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルにおいては、ごくわずかな例外を除いて、上記「ルーンの書」の扉部分のルーンの意味に記載されたものと同じ言葉が同じ順番に登場し、その後、本文標題部分の言葉が、重複部分が適宜除かれて、これもまたごくわずかな例外を除いて、上記「ルーンの書」と同じ言葉が同じ順番に登場している。上記「ルーンの書」は翻訳書であって訳語の選択には幅があることを加味すれば、上記一致を偶然のことと説明することは困難であり、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルのルーンの意味部分の文章は、上記「ルーンの書」の記載を単に引き写しただけのものと推認することができる。
 そうすると、上記「ルーンの書」の扉部分の文章と本文標題部分に言語の著作物又は編集著作物として創作性があるか否かはさておき、少なくとも、「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルのルーンの意味部分の著作者に原告がなり得ないことは明らかである。そして、上記「ルーンの書」は何らかの形で原告に渡って原告代表者がこれを参照してルーン占い用データ定義ファイルを作成したものということになるから、上記「ルーンの書」を本訴において初めて見た、ルーンの名称と意味は自分が独自に考案したとしている原告代表者の陳述(甲31)は、採用することができない。
(8) 原告の主張に対して
ア 原告は、アカデメイアは単に名義貸しをしたにすぎない旨の主張をする。
 しかしながら、原告が平成12年3月以降に全くサーバにアクセスできなくなっている以上、それ以降に更新を要する占いの文章は、これをアカデメイアが作成したことは明らかであり、当事者間においてもこの点は争いのないところである(甲33、乙43)。そうとすると、原告の主張によれば単に名前を貸しただけで自ら占い文を作成していないアカデメイアが、原告代表者の作成した更新を要さない文章に合わせて、更新を要する文章を作成してこれに並立させることになるが、占いの専門家としてその指導も行っていたアカデメイアが、そのような行為をしなければならない事情は、本件証拠上うかがうことができない。
 したがって、原告の上記主張は、不合理というほかなく採用することができない。
イ 原告は、原告代表者は遅くとも昭和55年10月にバイオリズムと星占いに関するプログラムを作成しており、原告代表者はアカデメイアよりも占いに精通している旨の主張をする。
 しかし、甲35によっても、要するに原告代表者が高校生時代にBASICを使用して星占いとバイオリズムに関するプログラムを作成したことがあるという事実がうかがい知れるだけであり、これと「恋愛の神様(NTTドコモ)」の占い文とがどのような関係にあるか全く不明であり、何ら参考とはならない。それ以降原告代表者が「A恋愛の神様」の作成に当たる間までに、原告代表者が占いに関与していたことを証するに足りる証拠が何ら提出されていないことや、上記(3)イの原告代表者の供述内容からすれば、原告代表者が専門家であるアカデメイアより占いに精通していると認めることは困難である。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は、被告らが証拠として提出した企画制作関係の書類に従って「恋愛の神様(NTTドコモ)」を実現することは不可能であると主張するが、これらの証拠は、断片的ではあるものの、制作過程を証するものとして提出されているのであって、これらのみに従って「恋愛の神様(NTTドコモ)」が作成されたとか、これらが仕様書又はプログラム仕様書(設計書)であるとするものではないから、その主張は失当である。
 そもそも、立証責任を負担する原告は、仕様書又はプログラム仕様書(設計書)など自らが企画制作に当たったことを証する証拠を提出していないのであって、原告の上記主張は採用することができない
エ 原告は、平成11年2月10日にアカデメイアから占いの仕組みを説明されたのでは、同月22日の「恋愛の神様(NTTドコモ)」のサービスインに間に合わない旨の主張をする。
 しかし、被告らは同月10日に原告に対して占いの仕組みを説明したことがあると主張しているのであり、同日から原告がプログラム作成に取り掛かったと主張しているものではない。占いの計算式以外の部分についてはそれ以前にも取り掛かることが可能であるし、そもそもアカデメイアが原告代表者に占いの仕組みを説明したことがなければアカデメイアが占いの文章を作成したことにならないという関係もない。また、原告は、被告らがアカデメイアから原告に提供したと主張する日干の計算式を記載したメモ(乙22)を、誤った無用なものと主張するが、この計算式の要部は大の月(31日)の数を計算する項のところであり、この計算式と「A恋愛の神様」の計算式との差異は、それ以外のうるう年の算定方法と「A恋愛の神様」においてプログラミング上の要請から(甲18)最後の項で1多く減じている点にすぎない。うるう年の算定については、上記乙22のメモは生年月日が1900年代という条件下でのみ成立するような簡略な式を提示しているが(甲18参照)、「A恋愛の神様」においてはこれを公知の原則的な式に戻したにすぎず、両者の式に本質的な違いはない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は、「A恋愛の神様」のサンプルデータに原告代表者の誕生日が記載されているから、「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章が原告代表者によって制作されたものといえる旨の主張をするが、サンプルデータはプログラミングするものが既存のデータを利用して適宜作成するものであって、サンプルデータを作成したものが当該既存のデータを作成したといえる関係にはない。そもそも、被告らも、原告代表者がプログラミングをしたことまで否定しているのではない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
カ 原告は、「A恋愛の神様」のルーン占いの方式は原告が独自に考案した独特のものであるから、被告ホールディングス又はアカデメイアの関与がなかったといえる旨の主張をする。
 しかし、前記「ルーンの書」及び証人Cの証言によれば、ルーン占いにおいて、上下の区別のつかないもの(9個)を除き、正逆(上下)を含めて41通り(25+16)の場合分けにすることは通常のことであると認められ、これを正規に正逆のあるものの正逆それぞれの確率を50分の1、正逆のないものの確率を25分の1としないで、すべて41分の1の確率とするコーディングをすることは、占いの本質が異種のものとなったというようなものではなく、プログラム処理上の簡略化、省略化という要請から導かれるにすぎないものである(原告も占い上の根拠からこのような確率にしたとは主張、立証していない。)。仮にこれが利用者の便宜を考慮したアカデメイアの発案(乙82参照)ではなく、原告の発案であるとしても、何ら独創性の発揮などというものではなく、このことから占い文章を原告が創作したとの事実が導かれるものではない。
 したがって、原告の上記主張も採用することができない。
(9) 小括
 以上のとおりであって、少なくとも、原告代表者が、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等のうち別紙言語対比表2〜6の占い文、心理テスト等の文章を作成したと認めることはできない。また、後記2(3)のとおり、原告が別紙言語対比表別紙7の対比1及び対比7の著作者であると認めることもできない。
2 同(2)(創作性)につき
(1) 別紙言語対比表別紙1、同7及び別紙(無番)に関し
 別紙言語対比表別紙1、同7及び別紙(無番)の文章は、「A恋愛の神様」の本体プログラム中の文章とサンプル文章であり、原告代表者が本体プログラムのソースコードを作成していることは容易にうかがわれる一方、アカデメイアが関与することはやや想定し難い部分である。そこで、その創作性を検討する(いずれも上欄のもの。創作性が認められる場合には、改めてそれぞれ個別に作成者について検討する。)。
(2) 別紙言語対比表別紙1の文章
 この文章はreadmeのデータであり、「恋愛の神様(NTTドコモ)」がアカデメイアがプロデュースしたものであることとそのメニュー内容をただ単に示し、平凡な勧誘文言を加えただけのありきたりの文章であり、創作性を認め難い。
(3) 別紙言語対比表別紙7の文章
ア 別紙言語対比表別紙7の文章のうち、コンテンツの説明(対比2〜4、19、23〜26)、利用規約(対比5、6、14)、注意事項・指示説明(対比8〜13、15〜18、20〜22、27〜29)は、単語あるいはごく短い文章であるか、単に別の文章を引き写したものであるか、コンテンツの企画、方向性、機器、規約、占いの仕様など(これらは表現とはいえない。)によってほぼ自動的にその内容が定まるものか、常識的な内容とする限りは誰が作成してもほとんど同様の文章にならざるを得ないものであり、格別の表現上の工夫も見らないのであって、創作性を認め難い。
イ 一方、「ごめんなさい、恋愛の神様は風邪で寝込んでいます。しばらくして風邪が治るころに再度トライお願いします。m( ..)m 恋愛の巫女より」(対比1)、「もうお別れなの?さみしいな、また来てね〜(;c;/〜〜〜 今解約しても月末ぎりぎりで解約しても利用料金は同じだから、もう少し使ってくださいな。それに来月、プレゼントが当たるかもしれないよ〜って未練がましいですが、またのご利用を首を長〜くしてお待ちしております。」(対比7)については、サイトそれ自体を女性として擬人化し、柔和な表現で相手の気持ちを鎮めつつ、うちに秘めた自己主張を流出させている表現であり、インターネットサイトにおける謝罪や顧客引き止めという機能を目的とした表現の類とはいえ、創作性を認める余地がないではない。
 そこで、この文章について作成者を検討すると、対比1については前記1(3)ア(イ)に摘示の証人Bの証言にかんがみて、同人が著作したものと認められる。一方、対比7に係る同人の証言はないが、その内容からみて女性が作者とみる方が自然であることや、対比1からの一連の流れの文章とみられることなどにかんがみると、同部分も証人Bが著作したと考えるのが相当である。
 したがって、別紙言語対比表別紙7の文章については、創作性がないか、創作性が認められる部分があるとしても当該部分は原告代表者が作成したものとは認められない。
(4) 別紙言語対比表別紙(無番)に関し
ア 別紙言語対比表別紙(無番)の文章のうち、コンテンツの説明と勧誘文言(対比1、3、5、7、8、10、12、14、16、19)、注意事項・指示説明(対比18)は、ごく短い文章であるか、コンテンツの企画、方向性、機器の性能、規約(これらは表現とはいえない。)によってほぼ自動的にその内容が定まるものであり、その勧誘文言もありきたりのものである。「心を鎮めてから占いをはじめてくださいね」の部分に目新しさを感じ得ないではないが、やはりごく短いものであり、表現上の工夫があるとまではいい難く、創作性を認めることはできない。
イ 別紙言語対比表別紙(無番)の文章のうち、データ定義ファイルの占い文章から抜き出したサンプル文章(対比2・4〔もとのデータは甲22の2の11頁参照〕、6〔destinyに関するデータ定義ファイルの提出はない。〕、9〔もとのデータは甲22の2の42頁〕、11〔holoに関するデータ定義ファイルの提出はない。〕、13〔もとのデータは甲22の2の54頁参照〕、15〔もとのデータは甲22の2の73頁参照〕、17〔y2kに関するデータ定義ファイルの提出はない。〕)等は、前記1に認定のとおり、そもそももとのデータの著作者が原告ではないのであるから、これを引き写しただけの上記各文章に別途創作性が生じる余地はない。なお、destiny、holoなどの時期性の占い文章(更新系)についてのデータ定義ファイルは本件に証拠として提出されていないが、原告自ら著作権侵害の対象としない旨を述べてこれに係る証拠を提出しないとしているものであるから、そのサンプル文章も、もとのデータ定義ファイルを引き写したものと推認される。
(5) 小括
 以上のとおりであって、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の文章等のうち別紙言語対比表別紙1、同別紙7及び同別紙(無番)の文章については、創作性が認められないか、又は原告が著作者と認められないかのいずれかである。
3 まとめ
 以上のとおりであり、「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章に原告の著作権を認めることはできない。
第3 争点3(美術)について
1 同(1)(作成者)につき
 原告が原告白黒画像及び原告カラー画像について自ら著作者であるとして陳述するところは(甲19、27の2)、結論だけを述べるごく抽象的なものであり、直ちにこれに沿った認定をすることはできない。
 しかし、原告から被告ホールディングスあての平成11年1月24日付けメールには、「要望いただいていた、ルーン占いをもっと豪華にとの件をためしてみました。まず、B様の考えの、タロットみたいに全部に上下を持たせて種類を増やす、方法ですが、あまり良くないです。・・・今回の作業で少し見栄えの良くなった絵を作りましたのでこれに差替えます。・・・」(甲39の22)との記載があり、これに付された画像は原告白黒画像と同じものと認められ、この作成過程に係る原告代表者の供述によると、従前の画像は原告白黒画像とはかなり異なるものであったようにうかがわれ、原告白黒画像はこの証人Bからの要望に応えた時点で完成したものと認められる。
 一方、ルーン石の画像作成に係る証人Bの証言又は陳述(乙78)は、抽象的な域を出ておらず、具体的な事実が全く提示されていない。
 そうすると、原告白黒画像及びこれに彩色加工した原告カラー画像は、原告が作成したと推認するのが相当である。
2同(2)(創作性)につき
(1) 原告白黒画像
ア 前記第2、1(7)に認定のとおり、原告代表者は「ルーンの書」を見たものと認められる上、ルーン文字には各種様々あるにもかかわらず(甲111の1・2)、「恋愛の神様(NTTドコモ)」におけるルーン文字と「ルーンの書」のルーン文字とが一致していることは、単なる偶然であるとすることは困難であり、原告白黒画像及び原告カラー画像は、この「ルーンの書」の絵を参考にしたものと認められる。
 ところで、「ルーンの書」の表紙裏には、四方が不規則に欠けた状態の長方形に点々が入って(欠けた部分については表面よりも多く)て石版状に見える石の上に、ルーン文字が書かれている絵が掲載されている。
イ 原告白黒画像は、別紙美術対比表3及び4の左欄のとおりであるところ、これは、四方が不規則に欠けた状態の長方形の中に適宜に点(ドット)をランダムに入れて(欠けた部分については表面よりも多く)石版を表した画像を3種類ほど用意し、これにルーン文字を上書きし、このうち正逆(上下)のあるものはこの画像を180度回転させたというものである(甲19の2)。
ウ 石版の上にルーン文字が書かれているという構成は、上記「ルーンの書」の絵にかんがみて、ありふれた構成と認められる。そして、古来から伝わるルーン文字についてはもとより原告代表者が創作したものではなく、原告白黒画像のルーン文字部分はこのルーン文字をそのまま表現しているだけであるから、原告代表者が作成したといえるのは背景の石版部分だけである。そして、原告白黒画像で着目されかつ構成の中心となるのはルーン文字である一方、その背景の石版は格別これを見る者に着目されるところではなく、単に石版であることが分かればそれで十分といえる部分である。しかるに、不規則に欠けた状態の長方形に点(ドット)を打ち込んで石を表現するというのはありふれた表現手法にすぎないものであり、原告白黒画像はそのようなありふれた表現手法をそのまま用いて、具体的表現に当たり、欠けた部分の不規則さ、点の数を微調整しているにすぎないのであるから、ありふれた表現の範囲を出ない。
 したがって、原告白黒画像を全体と観察して、そこに既存のモチーフを離れた新たな創作性が付与されているものとは認め難く、原告白黒画像に創作性を認めることはできない。
(2) 原告カラー画像
ア 原告カラー画像は、別紙美術対比表の1及び2の左欄のとおりであるところ、これは原告白黒画像の各ルーン石部分と新たに設定した背景部分にルーン石同士で同じ色の組合せが生じないように配色したほか、ルーン文字を影付き文字として石に刻み込まれた状態を表し、更にルーン石の下に影を付けたというものである。
 以上のような加工を原告白黒画像に加えたことにより、原告カラー画像は、既存のモチーフを離れた新たな創作性が付与されたものというべきであり、原告カラー画像には創作性を認めることができる。
イ 被告らは、原告カラー画像は「ルーンの書」の絵にささいな改変を加えたにすぎない旨を主張するが、25個のルーンとその背景の配色にはほぼ無限の組合せがあるのであり、既存の著作物に色を付けたものが当然に新たな著作物となるものではないとしても、そのほかの加工も加味すれば、原告カラー画像には創作性があるというべきである。
 被告らの上記主張は採用することができない。
3 同(3)(依拠)につき
 下記4のとおり、被告カラー画像が原告カラー画像と同一であり、偶然の一致でこのことが生じ得る可能性はないから、被告カラー画像は原告カラー画像に依拠したものと推認される。
4 同(4)(類否)につき
 別紙美術対比表1及び2のとおり、原告カラー画像と被告カラー画像とは同一のものと認められる。
5 まとめ
 以上のとおりであるから、被告カラー画像には原告の著作権が及んでいると認められる。
第4 争点4(データベース1)について
1 同(4)(類否)につき
 別紙データベース対比表は、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルの体系を構成してあるarray文を削除してその階層構造を消したり、「A−1旧恋愛の神様」のデータを一部削除して「A−1旧恋愛の神様」のデータの並び順を「A恋愛の神様」とそろえ、あるいは同種データだけを対応するにようにしたり、あるいは「A恋愛の神様」と「A−1旧恋愛の神様」のファイル分割の差異を無視したりなどして、対比を行っているのであり、要するに、わざわざ「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルを類似するように体系的構成や情報を加工をした上で両者の個々のデータの対比をしているか、あるいは存在しない架空のデータベースの体系を対比するだけのものであって、データベースの対比の主張、立証としては意味をなさないものである(受命裁判官は平成21年6月30日第23回弁論準備手続期日で原告に対して全体の体系的構成を明らかにするよう釈明を求め、この点の示唆をしたが、原告は何ら対応しなかった。)。そもそも、単なるデータ定義ファイルそれ自体をとらえても、何らデータ構造を有しないCSV形式のデータにすぎない「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルが、階層構造を有する「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルとデータベースとして類似する余地はない。
 したがって、原告の類否に係る主張はおよそ採用することのできないものであり、その余の点について判断するまでもなく、原告の類否に係る主張は失当というほかない。なお、以下、念のため、データ定義ファイルもプログラムに読み込まれた後はデータベース類似の検索機能を有しデータベースとなり得るとする仮定の下に対比部分の創作性について検討する。
2 同(2)(対比部分の創作性)につき
(1) 相性占いの結果データ定義ファイル
ア 「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルは、女性の星座名を要素とする配列を作成し、その各星座の中に男性の星座名を要素とする配列を作成し、その各星座の中に相性度と占い文の2つの要素を持つ配列を作成したものである(甲22の2)。
 前記第2における認定からみて、相性占いの結果データ定義ファイルの中の情報は、アカデメイアが作成したものと認められるところ、当然ながら、どのような情報をどのように組み合わせるかはアカデメイアの占いの仕様に従って既定のものであるから、「A恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルの情報の選択に創作性を認める余地はない。そして、相性占いの結果データ定義ファイルは、このように既定の組合せをPHP言語が備えるarray文による連想配列の機能を用いて、牡羊座(Aries)、牡牛座(Taurus)、双子座(Gemini)、蟹座(Cancer)、獅子座(Leo)、乙女座(Virgo)、天秤座(Libra)、蠍座(Scorpio)、射手座(Sagittarius)、山羊座(Capricorn)、水瓶座(Aquarius)、魚座(Pisces)という十二星座の順番に並べて表現したものにすぎず、その情報の体系的構成に創作性を認めることはできない。
イ 原告は、仮に個々のデータ定義ファイルに創作性がないとしても、データ定義ファイルを集めた全体としての1つのデータベースが、その体系的構成に創作性がある旨を主張する。
 しかし、そこで主張されている関連付けとは、あるデータ定義ファイルから読み取った情報を利用してプログラムが次の動作を行う際に別のデータ定義ファイルの情報を利用するという当然のことをいっているにすぎず、それらデータ定義ファイルはただ単純に並置されているだけであって、相互の関連付けをいうものではなく、何ら創作性を基礎づけるものではない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ また、原告は、個々のデータを原告代表者が創作したことを前提に、これらデータを創作したこと自体が言語という体系の中からの情報を選択したことになる旨を主張するが、そのようなものはデータベースにおける情報の選択に当たらないことはいうまでもなく(原告がいうところの情報の選択は、要するに、個々の文章の創作性をいうものにすぎない。)、それをさておいても、そもそも、それら個々のデータを原告代表者が創作したという前提が成り立っていない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、相性度と占い文がデータとして分割されていることに創作性がある旨を主張する。
 しかしながら、数値と文章を分けることは全く自然な選択であって、ありふれた構成にすぎないから、この点に創作性を認めることはできない。
(2) 相性占いの星座定義ファイル
ア 「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは、金星(女性)と火星(男性)の配列の中のそれぞれに、星座名と当該星座の境界日である生年月日とを要素とする配列を作成したものである。(甲22の2)
 生年月日と星座の組合せは天文暦により自動的に定まることであり、その選択又は体系的構成に創作性を認めることはできない。
イ 原告は、生年月日の範囲が1943年(昭和18年)〜1985年(昭和60年)としたことは、制作当時である1999年(平成11年)までのデータを網羅していないから創作性がある旨を主張する。
 しかし、全データ又は該当分野の全データを収集することは現実的でも実用的でもなく、データベースの作成に当たっては、何を収集の対象とすべきかを決めてからその収集を行うものであり、これは情報の選択以前にされるデータベースの仕様の問題であるところ、「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは、収集すべきデータの範囲を1943年(昭和18年)〜1985年(昭和60年)に定めたというにすぎず、これをもって情報の選択があったとはいえない。要するに、「A恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは、収集した全データをそのまま記録したものにすぎない。もっとも、いずれにしても、特段の事情のない限り、単に時的要素でデータの範囲を区切ることはだれしもが当然に行うありふれた選択であり、その選択の内容はどこかの時点を任意に指定するだけの作業であるから、その指定に一定の知的生産活動の反映があるとしても、単にデータの範囲がどこかで区切られたという結果が生じるだけであり、創作性があったことにはならない。また、その範囲でデータを利用するプログラム側に、初期値を規定して範囲外のデータを選択したときの特別の処理をする工夫があったとしても、それだけでは、データベースとしての情報の選択に創作性があったことになるものではない。
 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
ウ また、原告は、星座を英語名としたことに創作性がある旨を主張するが、それは情報の選択の創作性の問題ではなく情報の創作性の問題であって、データベースの創作性とはかかわりのないことであり、その主張を採用することはできない。
エ その余の原告の主張も採用することができない。
(3) 心理テスト用データ定義ファイル
ア 「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルは、通し番号、質問又は回答を示すフラグ(Q又はA)、質問(複数)と回答の階層構造を配列で表現したものである。(甲22の2)
 前記第2における認定からみて、心理テスト用データ定義ファイルの中の情報は、アカデメイアが作成したものと認められるところ、当然ながら、どのような質問をしそれに対する回答をどのようにするかはアカデメイアの心理テストの仕様に従った既定のものであるから、「A恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルの情報の選択に創作性を認めることはできない。そして、相性占いの結果データ定義ファイルは、このように既定の組合せをPHP言語が備えるarray文による連想配列の機能を用いて、そのまま表現したものにすぎないから、情報の体系的構成にも創作性は認められない。
イ 原告は、心理テスト用データ定義ファイルが複数選択型や複数回質問方式に対応している旨を主張しているが、複数選択や複数回質問はプログラムにより実現されているものであり、データ定義ファイルの構造は本体プログラムに依存せざるを得ないから(甲22の3の48頁、54頁〜55頁)、データ定義ファイルの体系的構成の創作性を基礎づけられるものではない。また、原告は、フラグや通し番号の使用について創作性がある旨の主張をするが、質問に「Q」のフラグを使用して数値で通し番号を付し、回答に「A」のフラグを使用してアルファベットで通し番号を付しても、数値とアルファベットは最も一般的な通し番号であり、記号と文章を分けることもごく自然な選択であって、ありふれた構成にすぎないから、創作性を認めることはできない。文章の創作が情報の選択と関連性がないことは前述のとおりである。
 したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。
ウ その余の原告の主張も採用することができない。
(4) 合コンでゴン用データ定義ファイル
 「A恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルは、主に星座名を要素とする配列を作成し、その各星座の中に更に星座名を要素とする配列を作成し、その各星座の中に相性ポイントと占い文の2つの要素を持つ配列を作成したものである(甲22の2)。
 前記第2の認定からみて、合コンでゴン用データ定義ファイルの中の情報は、アカデメイアが作成したものと認められるところ、当然ながら、どのような質問をしそれに対する回答をどのようにするかはアカデメイアの占いの仕様に従った既定のものであるから、「A恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルの情報の選択に創作性を認めることはできない。そして、合コンでゴン用データ定義ファイルは、このように既定の組合せをPHP言語が備えるarray文による連想配列の機能を用いて、十二星座の順番にそのまま表現したものにすぎないから、情報の体系的構成にも創作性は認められない。文章の創作が情報の選択と関連性がないことは前述のとおりである。
 その余の原告の主張も採用することができない。
(5) ルーン占い用データ定義ファイル
ア 「A恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルは、(@)各ルーン石(正逆)の配列の中にそれぞれのルーン石の「意味」と「暗示するもの」を要素とする配列を作成し、さらに、(A)もう一つの各ルーン石(正逆)の配列の中にそれぞれの占い結果を格納したものである(甲22の2)。
イ (@)の部分についていえば、前記第2、1(7)において認定のとおり、この部分は「ルーンの書」の記載を単に引き写したものであり、この部分をPHP言語が備えるarray文による連想配列の機能を用いて、そのまま表現しても、情報の選択又は体系的構成のいずれにも創作性を認めることはできない。
ウ (A)の部分についていえば、前記第2の認定からみて、その情報は、アカデメイアが作成したものと認められるところ、当然ながら、どのような質問をしそれに対する回答をどのようにするかはアカデメイアのルーン占いの仕様に従った既定のものであるから、この部分にも情報の選択に創作性を認めることはできない。そして、(A)の部分は、このように既定の組合せをPHP言語が備えるarray文による連想配列の機能を用いて、「ルーンの書」に記載のルーン石の順番に従ってそのまま表現したものにすぎないから、情報の体系的構成にも創作性は認められない。
エ 原告は、日本語のルーン名と正逆の別のデータを分離させた点に創作性がある旨を主張するが、カタカナの名称と漢字で示された性質を分離させるのはごく自然な選択であり、ありふれたものにすぎない。また、原告は、ルーン石の「意味」及び「暗示するもの」と「占い結果」をデータとして分離した点に創作性がある旨を主張するが、単に書籍を引き写した部分とアカデメイアから提供を受けた部分が分かれているにすぎず、何ら創作性が現れているとはいえない。また、原告は、「占い結果」だけでも十分であるとしているが、現にそのような構成になっていないのであるから、仮定の構成を採り得る可能性をもって創作性を基礎付けられるものではない。文章の創作が情報の選択と関連性がないことは前述のとおりである。
 したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。
オ 原告は、ルーン占いの結果が41通りとなっていることに創作性がある旨を主張するが、前記第2、1(8)カに認定のとおり、ルーン占いの結果は41通りとなるのが一般的であり、何ら原告の独創性の現れと認めることはできず、原告の上記主張を採用することはできない。
カ その余の原告の主張も採用することができない。
(6) 小括
 したがって、結局、データ定義ファイルには、仮にこれをデータベースであるとしても、データベースとしての創作性を認めることができない。
3 まとめ
 以上のとおりであり、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、データベースとしての原告の著作権を認めることができないか、又は「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルと「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルとが類似するとは認められないということとなる。
第5 争点5(データベース2)について
1 同(2)(創作性)につき
 データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう」(著作権法2条1項10号の3)ものであるから、情報を含まないものは著作権法上の「データベース」には該当しないが、この点をひとまずおいて、原告会員情報データベースの創作性について判断することとする。
 原告は、原告会員情報データベースにどのようなカラムにどのような情報が記録され、テーブル間の構造がどのようになっているのかなど会員情報データベースの内容を立証したとはいい難いが、前記第2章第4、5(4)アにおける原告の主張は、携帯電話の個体番号を変換した文字列(uid)を主キーとし、uidのみを格納した「有料会員の情報を保持するテーブル」のほかに、「会員が占いに使用する情報を保持するテーブル」、「会員の個人情報を保持するテーブル」及び「会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル」の3つのテーブルがあるというものである。とすれば、主キーのみを保持したテーブルのほかにわずか3つのテーブルに情報を分割して格納し、個人識別情報をキーとして関連付けを行っただけのものであって、その体系的構成に創作性を認めることはできない。
 また、上記主張によれば、「会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル」にはuidカラムのほかは会員の携帯端末の画面表示に係る情報を格納するmycolorの1つのカラムしか存在しておらず、「会員が占いに使用する情報を保持するテーブル」は、占いの仕様から格納すべき情報が当然に定まるものであり、「会員の個人情報を保持するテーブル」に格納されているのは、uidカラムのほかは、姓、名、メールあて先、携帯電話番号、性別、アンケートの結果という携帯電話によるインターネットを利用したコンテンツ配信サービスにおいて当然に必要となる事項が格納されているだけである。したがって、原告会員情報データベースには、情報の選択にも創作性を認めることはできない。
2 同(4)(類否)につき
 仮に原告代表者が10人分のテストデータを入力したことによって原告会員情報データベースが完成したものとしても(その10人分のデータが被告会員情報データベースに含まれているかどうか不明なのはひとまずおくこととする。)、現在、被告会員情報データベースは、平成12年12月時点で登録会員数が30万人を超えているというのであるから(甲7、55)、既に上記時点において、原告会員情報データベースに含まれていた情報と被告会員情報データベースの情報との間に同一性があるということはできず、その後も会員数は増加していると認められるから(弁論の全趣旨)、原告会員情報データベースと被告会員情報データベースは、データベースとしての同一性を認めることができない。
 したがって、被告会員情報データベースが原告会員情報データベースと類似するということはできない。
3 まとめ
 以上のとおりであり、原告会員情報データベースは、データベースとしての原告の著作権を認めることができないものか、又は原告会員情報データベースは被告会員情報データベースと類似するとは認められないということとなる。
第6 争点6(編集著作物)について
1 同(2)(創作性)につき
 原告は、編集著作権侵害の前提となる編集著作物の創作性のある部分を特定しないから、編集著作物に係る主張は失当というほかない。仮に、それが「A恋愛の神様」におけるデータ定義ファイルにおけるテキスト文字の組合せと順序というのであれば、前記第4、2において説示したとおり、同データ定義ファイルは既定若しくは自動的に定める組合せをそのまま表現し、かつ、その順序に何ら創意工夫を加えていないものであるから、その素材の選択又は配列のいずれにも創作性を認めることはできない。
2 まとめ
 したがって、いずれにしても、データ定義ファイルに編集著作物としての原告の著作権を認めることはできない。
第7 争点7(画面表示)について
1 同(2)(創作性)につき
 原告は、画面表示の侵害を主張するコンテンツについて、何らその画面表示を特定せず、「ガチャピン・ムック」を除いて、画面表示を特定する証拠も存在せず、また、「ガチャピン・ムック」については、被告らから「Oガチャピン・ムック」が証拠(乙125)として提出されたものの、原告はいかなる部分に創作性があるのか全く主張しない。
 以上の次第であるから、原告主張に係る原告プログラムの画面表示に創作性を認めることはできない。
2 まとめ
 したがって、原告主張に係る原告プログラムの画面表示に原告の著作権を認めることはできない(以下、これらのコンテンツについてはプログラムの侵害にしぼって判断を加えることとする。)。
第8 争点8(数値、記号)について
1 同(2)(創作性)につき
 別紙数値・記号対比表に記載のとおり、原告が著作権を主張する「数値、記号」なるものは、0〜9の数字やA〜Zのアルファベットなどの言語体系を構成する要素たる文字そのものであるから、これに対して創作性が生じる余地はない。また、これをどのように使用するかはアイディアにすぎず、表現ではない。
2 まとめ
 したがって、別紙数値・記号対比表に記載の数値、記号に原告の著作権を認めることはできない。
第9 争点9(期間制限違反)について
1 同(1)(「恋愛の神様(NTTドコモ)」)につき
 前記第2章第2、5(2)ア(キ及び同イ(エの認定並びに前記第1〜第6及び第8までの認定判断によれば、被告ホールディングス及び被告インデックスは、会社分割の前後を通じて、「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行うに際し、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間、原告の著作権が及ぶ被告カラー画像を公衆送信したことが認められる。なお、弁論の全趣旨によれば、「A恋愛の神様」は、「A−1恋愛の神様」が稼働するころには既に被告ホールディングスのサーバから削除されたものと認められる。
2 同(2)(「恋愛の神様(KDDI)」)につき
 前記第2章第2、5(2)イ(エの認定並びに前記第1〜第6及び第8までの認定判断によれば、被告ホールディングス及び被告インデックスは、会社分割の前後を通じて、「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスを行うに際し、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間、原告の著作権が及ぶ被告カラー画像を公衆送信したことが認められる。
3 同(3)(「恋愛の神様(ソフトバンク)」)につき
 前記第2章第2、5(2)イ(エの認定並びに前記第1〜第6及び第8までの認定判断によれば、被告ホールディングス及び被告インデックスは、会社分割の前後を通じて、「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行うに際し、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間、原告の著作権が及ぶ被告カラー画像を公衆送信したことが認められる。
4 同(4)(「愛と出会いの占い館」)につき
 被告らが平成17年4月1日以降も「F愛と出会いの占い館」を用いて「愛と出会いの占い館」の配信サービスを行ったことを認めるに足りる証拠はない。かえって、証拠(甲76、乙85、101、115、153の1、153の2の1・2、153の3、153の4の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、「愛と出会いの占い館」は、遅くとも平成15年には配信サービスが終了していることが認められる。さらに、被告ホールディングスが平成12年10月にビットオンに開発を委託して「愛と出会いの占い館」に係る新プログラムを制作したことが認められるところ(乙85、乙115、乙118、119、弁論の全趣旨)、本件においては「F愛と出会いの占い館」のプログラムを特定する証拠は全く提出されておらず、上記新プログラムと「F愛と出会いの占い館」とを対比することができない。しかも、無料サイトから有料サイトへ変更された上に言語もPHPからperlに変更されていることからみて、両者が類似する可能性も極めて低いものと推測される。そうすると、この新プログラムが「F愛と出会いの占い館」を複製又は翻案したものといえないことは明らかであるから、被告らが平成17年4月1日以降も「F愛と出会いの占い館」を用いて「愛と出会いの占い館」の配信サービスを行ったと認めることはできない。なお、原告は、「愛と出会いの占い館」が「占い放題¥90」と改称されて現在も継続中である旨の主張をし、これを裏付けるものとして甲119を提出するが、「占い放題¥90」に係るプログラムと「F愛と出会いの占い館」の類似性に関する証拠を全く提出しないから、およそ採用し得るところではない。
5 同(19)(会員情報データベース)につき
 前記第5、3に説示のとおり、原告会員情報データベースにはデータベースとして原告の著作権を認めることができないものか、又は原告会員情報データベースは被告会員情報データベースと遅くとも平成12年中には類似しないものとなったから、被告ホールディングス又は被告インデックスが被告会員情報データベースを平成17年4月以降使用したとしても原告の著作権を侵害するということはない。
6 まとめ
 以上から、被告ホールディングス及び被告インデックスが、「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」及び「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行うに際し、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間、原告の著作権が及ぶ被告カラー画像を公衆送信した点についてのみ期間制限違反が認められる。
第10 争点10(数量制限違反)について
1 同(1)(「恋愛の神様(NTTドコモ)」)につき
(1) 本件確認書の解釈
ア 本件確認書の解釈について被告らと原告との間で対立があるが、本件確認書は、例えば、その3条に「株式会社ハイパーキューブは、別紙のプログラムの平成17年3月31日分までの使用をAに許諾し、・・・」とあるものの、本件確認書別紙をみると、「開発費等」、「保守定額分」、「ロイヤリティ契約分」、「開発キャンセル分」、「特別保守費用」との項目のもとにプログラムを指すのか、開発作業を指すのかのも不明なものが雑然と掲記されているだけであり、上記「別紙プログラム」が何を指すのか自体が不明確なものである(少なくとも本件に係る原告プログラムを含むものであることは当事者間に争いがない。)。そして、下記に個別に検討するとおり、その契約内容を本件確認書の条項の文言どおりに解釈すると、理解困難なものとなり、およそ契約書としては不十分なものというほかない。前記第2章第2、4に認定した本件確認書が作成された経緯に照らせば、本件確認書は、当事者間で全く新たな法律関係を合意したというよりは、現状の追認とそのわずかな変更を記載したにすぎないものととらえるほかない。
 したがって、本件確認書の解釈によって本件確認書でされた合意内容を探究するに当たっては、まずは条項の文言に依りつつも、原告プログラムの利用を取り巻く当時の状況を踏まえて、合意の欠如する部分について、合理性の観点からその内容を補充することとする。
イ 使用許諾条項
(ア) 本件確認書には「株式会社ハイパーキューブは、別紙のプログラムの・・・使用をAに許諾し、・・・」(3条)とのみ記載されており、A(被告A)個人にのみプログラムの使用を許諾したように読み取れるが、一方で、被告Aが「株式会社インデックス」(被告ホールディングス)に再使用許諾ができるとの条項がない。
 しかし、被告A個人が配信サービスを行っているのではないし、被告A個人がサーバを有しているわけでもないから、このままでは被告ホールディングスは原告プログラムを使用することができず、配信サービスを停止するほかないことになる(なお、会社代表者は会社と委任関係にあり自己の利益のためでなく会社の利益のために行動するのであるから、会社代表者が会社の履行補助者ということがいえたとしても、会社は会社代表者の履行補助者ということはできない。)。
(イ) ところで、平成12年3月より前においては、原告と被告ホールディングスとの間にはプログラムの使用に係る許諾に関する取決めはなく、使用期限、使用本数などの使用条件も限定なしに、被告ホールディングスは原告代表者作成のプログラムを利用してコンテンツ配信サービスを行っていたものであり、ただ、そのプログラムの使用開始に当たって、開発費用の負担として、(@)原告が被告ホールディングスから開発費用の一括払を受ける方法と、(A)プログラム完成後に被告ホールディングスの売上げの一定割合(ロイヤリティ割合)を原告が被告ホールディングスから受け取る方法が定められていたほかは、特にプログラムの使用許諾料名目の支払というものはなかった。(原告代表者〔第2回〕弁論の全趣旨)
 このことからすれば、平成12年3月より前においては、被告ホールディングスが特段の制限なく原告プログラムの複製物の貸与又は複製物の譲渡を受けてこれを使用していたことは明らかである(原告代表者自身、被告ホールディングスが使用者であることを自認している。原告代表者尋問調書〔第2回〕21頁参照)。したがって、わざわざ原告に対して開発費等の支払のほかに今まで支払っていなかった許諾料を改めて支払うこととしたにもかかわらず、本件確認書を取り交わしたことによって被告ホールディングスがかえってプログラムの使用をすることができなくなってしまうということは、契約解釈として余りに不合理である。
(ウ) 原告は、平成12年3月より前に原告プログラムを使用してコンテンツ配信サービスを行っていたのは原告自身である旨を主張するが、被告ホールディングスのサーバを保守管理するだけのプログラム開発会社にすぎない原告が、被告ホールディングスがリースにより借り受けて被告ホールディングスの事務所に存するサーバを利用して被告ホールディングスの名義で行われているコンテンツ配信サービス(弁論の全趣旨)を支配管理しているなどということは、根拠のない前提に基づく主張であって、およそ採用する余地がない。
(エ) 以上からすれば、本件確認書3条本文の「株式会社ハイパーキューブは、別紙プログラムの・・・使用をAに許諾し、・・・」とは、単に被告Aが原告に対価を支払うため原告が原告プログラムの使用を許諾したというだけの条項にすぎないと認めるのが相当であり、被告ホールディングスが原告プログラムを使用できる地位が本件確認書により失われたものと解することはできない。被告ホールディングスは、本件確認書の前後を通じて従前と同様に原告プログラムを使用でき、ただ、被告ホールディングスに向けられた本件確認書3条但し書に付せられた使用期間、使用本数、使用条件の制限に服することになったものと解するのが相当である。実際、本件確認書の3条但し書は「株式会社インデックスは平成17年3月31日をもって該当プログラム及び該当プログラムから派生したプログラム全ての使用を終了し破棄する。」との条項があり、被告ホールディングスがプログラムを使用できることが当然の前提とされている。
 なお、上記のとおり被告ホールディングスが本件確認書の前後を通じて従前と同様に原告プログラムを使用できる以上、原告白黒画像及び原告カラー画像の利用についても黙示に使用が許諾されていたものと解される(原告も、この点を認めている。)。
ウ 使用本数条項
(ア) 本件確認書は、その3条但し書において「但し、プログラムは株式会社インデックス社内での各プログラム1本づつの使用に留めることとし、・・・」としており、「1本」とは通常の語義で解する限りはプログラムの複製物1つを意味するものであるから、被告ホールディングスが使用できる原告プログラムの本数は「1本」に制限されたようにも読める。
 しかし、原告プログラムは、原告が被告ホールディングスのサーバの保守管理に当たっていた時点で、それぞれサーバを「A恋愛の神様」については3台(原告代表者〔第2回〕、弁論の全趣旨)、「@四次婆」及び「J四次婆」については8台(乙108、110、111、弁論の全趣旨)、「Bプライベートホームページ」について2台(原告代表者〔第2回〕、「Kゲームコーナー」について2台(乙109)、「Lさくま式スゴロク」については7台(乙113、弁論の全趣旨)、「Oガチャピン・ムック」について4台(乙112、弁論の全趣旨)使用しており、これらプログラムを1本しか使用できないとすれば、被告ホールディングスは、わざわざプログラムを1本に集約してサーバの構成を変える費用と労力をかけなければならない上、その結果、サーバの処理能力を越えることになってコンテンツ配信サービスを行うことができなくなる危険も負担しなければならない。そして、少なくとももとのサービス体制に戻すためにも、被告ホールディングスは本件確認書締結と同時にプログラムの本数について原告と更に協議をして直ちに追加の金銭負担をしなければならず、しかも、原告がこれに応じるか否かは本件確認書に何ら定めがないから、原告にはこれを拒否する自由もあり、被告ホールディングスの要望が受け容れられない可能性もある。しかし、これでは本件確認書によって何ら紛争解決をしていないことになるばかりか、わざわざ原告に開発費等の支払のほかに今まで支払っていなかった許諾料が支払われることになったにもかかわらず、かえって被告ホールディングスの立場が従前より不利になってしまうことになる。これは、契約解釈としては余りに不合理である。
(イ) 原告は、原告が被告ホールディングスのサーバの保守管理に関与していた時に導入したサーバには、それぞれ分割されたプログラムが蔵置されているだけであり、各分割部分を通じればプログラムは「1本」しかない旨を主張する。
 上記主張を裏付けるに足りる具体的な主張、立証はないが、それはさておき、その主張を前提にしても、分割されたそれぞれのプログラムも一部とはいえ分割前のプログラムであることにかわりはなく、分割前のプログラムの複製物が複数のサーバに複製されたことにほかならないのであり(さらに、原告自身も、たとえ分割したとしても一部が重複して複数のサーバに複製されることは認めている〔甲53参照〕。)、これをもってプログラムの複製物が「1本」であるということはできない。原告の主張するような書籍を物理的に分割した場合とプログラムを複製した場合とを対比することは不適切な比喩である。「著作物」とは物理的な対象ではなく観念的な存在を指すものである。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 一方、被告らは、「1本」とはコンテンツ提供「サービス」1本の意味である旨の主張をするが、その主張や被告インデックス代表者の尋問にかんがみても、その趣旨は結局のところ最後まで判然とせず、採用の限りではない。被告らの主張によると、必要に応じてほぼ無制約に複製が行えることになるが、少なくとも本件確認書には何らかの形で複製部数を限定しようとする意図が含められていることが明らかであり、そのこと自体まで無視するような解釈は採用し得ない。
(エ) 以上を踏まえて、本件確認書3条但し書の「但し、プログラムは株式会社インデックス社内での各プログラム1本づつの使用に留めることとし、・・・」との条項を解釈すると、これは被告ホールディングスの従前のコンテンツ配信サービス体制「1本」のみの使用を許諾し、このサービス体制を変更してサーバ台数又はプログラム本数を増加することを制限したものというべきである。したがって、被告ホールディングスが、従前と同様のサーバ数かつプログラムの複製物数を超えない限度でコンテンツ配信サービスを行うことは(もとより減じることは何ら差し支えがない。)、本件確認書の制限するところではないものと解される。
(2) 負荷分散
ア 負荷分散の意義については、前記第2章第2、5(3)イ(アのとおりであり、そこで説示した典型的な負荷分散機能を使用するためには、まず言語仕様としてこれに対応していなければならないが、原告プログラムの開発に使用されたプログラム言語が負荷分散機能の使用の前提となる機能をサポートしているか否につき、原告の主張、立証はない。
 次に、負荷分散装置配下のサーバ間で負荷分散をするには、プログラムが負荷分散可能な設計になっていなければならない。すなわち、プログラムが用いるデータのうち同期(複数のプログラムが並列的に実行されているときに、同じ記憶領域に同時にアクセスしてしまって内容の整合性が失われるのを制御する。)が必要なデータについてはサーバ間で矛盾が生じないようにデータベースにおいて一括管理される必要があり、さらに、連続する複数の処理が複数のサーバ上のプログラムで実行されると不具合が起こるプログラムについては、連続する処理が同一のサーバで処理されるように負荷分散装置においてセッション維持機能(あるユーザのトラフィックをアクセス時に最初に接続したサーバと同じサーバに接続維持させる機能)が働くように設定しなければならない。
 しかし、「原告プログラムが負荷分散装置に対応しているのか。」との求釈明に対する原告の回答は、「データベースを使用しているから『負荷分散』対応している。」というものであり(甲37)、その回答内容から案ずるに、それ以外に本件で問題となっている負荷分散には対応していないことを原告自ら自認したか、あるいは対応していないことが推認される。
イ また、負荷分散装置配下のサーバ間の負荷分散を行うには、対象となるプログラムの設計書やマニュアルが入手できない場合は、プログラムを解析して、データベースにおいて一括管理されていることを確認し、あるいは負荷分散装置の設定のための情報を収集しなければならない。したがって、プログラム設計書がない場合には、かなりの労力を要する上、負荷分散しても後に予期せぬ問題が発生するリスクがあり、プログラムを作り直した方が早い場合もある。(乙70、71、77、97)
 原告は、「A恋愛の神様」についてプログラム設計書を作成していない旨を主張し、これに沿う原告代表者の陳述書(甲37)を提出しており、いずれにしてもプログラム設計書、マニュアル等の文書が原告から被告ホールディングスに交付されていないことは当事者間で争いのない事実であるから、「A恋愛の神様」を負荷分散装置配下のサーバ間で負荷分散を行うためには、被告ホールディングスとしてはプログラムを解析する以外の選択肢はないことになる。そして、この点は、その余の原告プログラムについても同様である。なお、前記第2章第2、4に認定の被告ホールディングスと原告との紛争経過からみて、開発者たる原告代表者に尋ねるということは、およそ被告ホールディングスにおいて採り得るところではない。
 このような場合、被告ホールディングスとしては、費用をかけてリスクをかかえた中途半端な改修をするよりも、プログラムを作り直して抜本的な解決を図るか、あるいは何もしないかのいずれかの対応をするのが経済的合理性にかなっているということができる。したがって、被告ホールディングスが、(@)大手町に移設しないで終了させるプログラム、(A)作り直しをするプログラム、(B)大手町に移設はするがそのまま稼働させるプログラムというように、原告プログラムを割り振るという対応を採ったこと(乙118参照)は、経済的合理性の観点から首肯できるところである。
(3) 前訴和解の解釈
 数量制限違反は、前訴和解8条を前提とする請求であり、前記第2章第2、6(3)のとおり、前訴和解8条は、「別紙プログラム目録記載の各プログラムにつき、被告又は利害関係人が、負荷分散装置を使用していたことを原因として、直接又は間接に原告の著作権その他の法的利益を侵害していた場合、・・・」と定められているが、これは、要するに複製権の侵害があった場合のことを意味するものであると解され、単に負荷分散装置の配下においたことにより直ちに侵害とみなす趣旨ではないというべきであり、また、本件確認書で許容されている行為であっても侵害とみなすものではないと解される。
 しかるところ、負荷分散装置配下に複数のサーバが接続されていても、特定のプログラムに向けたトラフィックを単一のサーバに振り向けるアルゴリズムを用いることにより、特定のプログラムについてサーバ間の負荷分散を行わないことも可能であり(乙70、71、77の1、84)、このような場合には複製は生じていないから、前訴和解8条にはこのような場合は含まれない。また、本件確認書で許容されている従前の使用態様を継続しているにすぎない場合については、負荷分散装置配下に置いたとしても前訴和解8条には含まれないものと解される。
(4) 原告の主張に対して
ア 原告は、使用許諾契約は厳密に解釈されなければならないから、これに従い本件確認書においてもプログラムの数に依るべきであると主張するが、本件確認書はそもそも厳密に解釈できるようなものでないことは上記(1)アのとおりであり、その主張は前提を欠く。
イ 原告は、20万アクセスがサーバ増設の指標として当事者間の共通の了解事項であった旨を主張し、平成11年6月〜7月付けの「20万アクセス/日/台」等の記載のある原告作成の見積書(甲84の1〜4)を提出する。
 しかし、このような見積書があるならば膨大なアクセス数を調べた資料(甲72の1〜9)だけを先に提出して、「被告らが負荷分散装置の検討を始めたのは2000年初めからであり、そのきっかけとなる『1999年末頃』の恋愛の神様のアクセス数は20万アクセス超であった。このことから、被告は、20万アクセスが負荷分散の必要性の指標となることを理解することになった。原告が保管していたアクセス数記録(甲72号証の1乃至9『アクセス数集計表及びアクセス数記録』)を参照。」(平成21年5月15日付け原告準備書面(44)3頁参照)などの主張に及ぶとは考えられない。そもそも、「恋愛の神様(NTTドコモ)」のアクセス数が20万超となったのは平成11年10月であり(甲72の1)、平成11年6月に20万アクセスが負荷分散の必要性の指標であるとの知見に至るのかは全く不明である。
 原告提出の上記証拠は信用することができず、その主張を採用することができない。
ウ 原告は、ファイアウォール機能やキャリアごとの閲覧制限機能を求めるだけならば負荷分散装置を導入する必要はない旨を主張する。この点に係る当初の被告らの主張を採用するものではないが、負荷分散装置配下において負荷分散機能を使用するプログラムがある以上、すべてのプログラムについて負荷分散装置の負荷分散機能を使用しないとしても、負荷分散装置を導入するメリットはある。
 したがって、被告らの当初の主張が本件の結論を左右するものではない。
(5) 被告らの主張に対して
 被告らは、その主張の位置付けが定かではないが、本件確認書は、原告との「手切金」又は原告プログラムの「追加買取代金」を定める趣旨であり、あたかも原告プログラムの著作権が被告ホールディングスに移転したかのような主張をし、その主張は一貫しないものといわざるを得ない。この点についていえば、著作権の譲渡を受けたと考える者が著作権者のように振る舞う蓋然性は高いとはいい得る。しかし、前記(1)イのとおり、被告ホールディングスは、原告からは開発費用名目の負担のほかに何ら対価の支払を求められていなかったものであり、被告ホールディングスと開発会社との契約においては、プログラムの著作権は、汎用的な処理を定めたプログラム部分を除き被告ホールディングスに譲渡されていること(乙95別紙6、115、116、120)、このような契約例はモデル契約書にも提示されている通常の契約形態であることからみて(甲98)、権利関係について何ら明示の取り決めをしなかった被告ホールディングスと原告との間で原告プログラムの著作権について疑義が生じることは事の成り行き上当然のことである。被告らが原告プログラムの著作権の帰属について争うかのような主張をすることも、訴訟上なされる防御方法の一態様の域を出ないものというほかない(もちろん、被告ホールディングスがプログラム著作権の譲渡を立証できていない以上、プログラム著作権は開発者たる原告に帰属すると認められる。)。いずれにしても、著作権の帰属と、実際に原告プログラムが負荷分散機能を使用できるものであったか、実際に原告プログラムを複製したかとは別の問題である(著作権を有していても客観的に負荷分散機能を使用することが不能なものは、同機能を実行できない。)。
 したがって、被告らが上記主張をした一事をもって被告らが負荷分散装置の負荷分散機能を使用するために原告プログラムを複製したと直ちに断じることはできない。
(6) 「A恋愛の神様」
ア 負荷分散のための複製の有無
 「A恋愛の神様」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していたと認めるに足りる証拠はなく、また、前記第2章第2、5(2)ア(ア及び同(3)ア(アに認定したとおり、被告ホールディングスが負荷分散装置を導入した平成12年5月時点では、被告ホールディングスは既に負荷分散対応である「A−1旧恋愛の神様」の導入作業をしていたわけであるから、これと別途、「A恋愛の神様」を負荷分散対応のために改修する経済的合理性はない。また、「恋愛の神様」については、平成12年ころ大手町においてBIG−IPの配下におかれたut1〜ut3の3台のサーバ(IPアドレス:<省略>)が稼働し、この3台のサーバのうち1台がデータベースサーバである(甲7、乙59の1、弁論の全趣旨)。一方、原告がサーバ構成に関与していた平成11年3月にサーバが1台導入され(乙107)、平成12年1月にサーバが1台導入されていること(乙114)、原告代表者は「A恋愛の神様」のプログラムを分割した旨供述し(原告代表者〔第2回〕)、また、原告がサーバの保守管理に関与しているときにデータベースサーバを使用していたとも主張していることを併せ考えれば、「A恋愛の神様」の使用サーバ数は、原告がサーバ構成に関与していた時点で既に3台であったと認められ、被告ホールディングスが従前の使用態様を変更したとか、変更する必要性があったということはできない。
イ 原告の主張に対して
 原告は、株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーの雑誌広告(甲2)やサイベース株式会社の雑誌広告(甲7)を根拠に負荷分散のために「A恋愛の神様」を複製した旨を主張するが、甲2の記事にあるのは概念図と何を負荷分散したかも分からない発言だけであり、また、甲7の「毎週サーバを増設」というのが宣伝文句の誇張であることは明らかである上、どのコンテンツをどのようにするためにサーバを増設したのかは全く不明である。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ その余の原告の主張も、採用することができない。
エ 小括
 以上に検討したとおり、「A恋愛の神様」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したと認めることはできない。
(7) 「A−1旧恋愛の神様」
ア 負荷分散のための複製の有無
 前記第1、3のとおり、このプログラムは「A恋愛の神様」を複製又は翻案したものであるとは認められないから、これを複製しても原告の「A恋愛の神様」に対する著作権を害するものではない。なお、原告カラー画像は、データファイルであり、これを負荷分散のために複製したとは認められない。
イ 小括
 したがって、「A−1旧恋愛の神様」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために複製しても原告の著作権を侵害するということはできない。
(8) 「A−1新恋愛の神様」
ア 負荷分散のための複製の有無
 前記第1、3のとおり、このプログラムは「A恋愛の神様」を複製又は翻案したものであるとは認められないから、これを複製しても原告の「A恋愛の神様」に対する著作権を害するものではない。
 なお、原告カラー画像は、データファイルであり、これを負荷分散のために複製したとは認めらない。また、この画像は下記「A−2恋愛の神様」及び「A−2恋愛の神様」と共通のデータであるから、これら複数のコンテンツのためにわざわざ複製したとは認められない。
イ 小括
 したがって、「A−1新恋愛の神様」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために複製しても原告の著作権を侵害するということはできない。
2 同(2)(「恋愛の神様(KDDI)」)につき
ア 負荷分散のための複製の有無
 前記第1、3のとおり、「A−2恋愛の神様」は「A恋愛の神様」を複製又は翻案したものであると認められないから、これを複製しても原告の「A恋愛の神様」に対する著作権を害するものではない。
イ 小括
 したがって、「A−2恋愛の神様」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために複製しても原告の著作権を侵害するということはできない。
3 同(3)(「恋愛の神様(ソフトバンク)」)につき
ア 負荷分散のための複製の有無
 前記第1、3のとおり、このプログラムは「A恋愛の神様」を複製又は翻案したものであると認められないから、これを複製しても原告の「A恋愛の神様」に対する著作権を害するものではない。
イ 小括
 したがって、「A−3恋愛の神様」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために複製しても原告の著作権を侵害するということはできない。
4 同(4)(「四次婆(DDI)」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「@四次婆」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「@四次婆」を負荷分散に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もない。そして、「@四次婆」及び「J四次婆」については、平成12年ころ南青山においてd0〜d6及びdm(メールサーバ)の8台のサーバ(IPアドレス:<省略>)が稼働しているところ(乙59の2)、原告がサーバの保守管理に関与していた平成11年3月に5台のサーバが導入され(乙108)、さらに、同平成11年10月には2台のサーバが導入され(乙110)、同平成11年11月には1台のサーバが導入されている(乙111)。したがって、この南青山の構成はそもそも原告が構成したものであり、「@四次婆」は原告によってもともと相当数の複製がされている。したがって、8台ものサーバが必須であったか否かはともかく、この体制から更に負荷分散に対応するようにプログラム又はサーバを増加させる必要性があったものとは認められない。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、被告担当者Kの陳述書(乙118)によれば、大手町では4台のサーバしか使用されていないから、BIG−IPの負荷分散機能を使用した旨を主張する。
 しかし、原告が導入したサーバは8台に及ぶものの、サーバ4台ではアクセスに対応できないとする根拠は本件証拠上見当たらない。もっとも、上記陳述書によれば、被告ホールディングスは何らかの形でサーバ構成を変えたのであるから、その際には、あるサーバからのプログラムの削除とこれをあるサーバへ複製する行為が生じる可能性がある(もともとの構成が不明であるから、その詳細を特定することはできない。)。しかしながら、前記1(1)ウ(エに説示したとおり、全体としてプログラムの複製数又はサーバを減少させることは本件確認書の使用許諾条項の趣旨には反しないものであり、その際に行われる複製はもともとの使用許諾の範囲内の行為というべきであり、数量制限違反とはいえない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ その余の原告の主張も、採用することができない。
(3) 小括
 以上に検討したとおり、「@四次婆」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
5 同(5)(「プライベートホームページ」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
ア 「Bプライベートホームページ」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「Bプライベートホームページ」を負荷分散に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もない。なお、「プライベートホームページ」については、南青山においてii、ii0〜ii2の4台のサーバ(IPアドレス:<省略>)が稼働しているが(乙59の2)、これが従前の構成を変更したことにより生じたものかどうかを認めるに足りる証拠はない。
イ もっとも、被告ホールディングスが平成12年10月にビットオンに開発を委託して「プライベートホームページ」に係る新プログラムを制作したことが認められ(乙116、118、119、弁論の全趣旨)、この新プログラムが負荷分散に対応していた可能性はある。しかしながら、本件においては「Bプライベートホームページ」のプログラムを特定する証拠は全く提出されてなく、およそ上記新プログラムと「Bプライベートホームページ」とを対比することができない。してみれば、この新プログラムが「Bプライベートホームページ」を複製又は翻案されたともいえないことは明らかであり、そうとすれば、「Bプライベートホームページ」がBIG−IPの負荷分散機能を使用するために複製されているということはできない。
 そもそも原告は、前訴和解において、「Bプライベートホームページ」が滅失したことを原因とする解決金を既に受領しているのであって(被告ホールディングスは、本件確認書により、平成17年3月31日まで「Bプライベートホームページ」を廃棄すべきことを義務付けられていたのであり、平成17年3月31日まで「Bプライベートホームページ」を保存すべきことを義務付けられていたわけではない。)、「Bプライベートホームページ」がなければ同プログラムに係るプログラム著作権侵害の立証をし得ないことは明らかであり、「Bプライベートホームページ」の滅失に係る損害の賠償をするとは、そのような損害をも見込んだ上で賠償する趣旨と解すべきであるから、本件のような立証不可の事態は、前訴和解の賠償金の中に当然に折り込み済みであったものというべきである。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、上記新プログラムの開発委託報酬が低額であるから、同新プログラムは「Bプライベートホームページ」の複製又は翻案である旨を主張するが、そもそも適切な報酬額なるものの立証がないのであるから、そのようなことのみで新プログラムが「Bプライベートホームページ」の複製又は翻案であると断定することはできない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
イ その余の原告の主張も、採用することができない。
(3) 小括
 したがって、「Bプライベートホームページ」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
6 同(6)(「ツヴァイ資料請求」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「Dツヴァイ資料請求」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「Dツヴァイ資料請求」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もなく、負荷分散する経済的合理性があったとも認められない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
(2) 小括
 したがって、「Dツヴァイ資料請求」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
7 同(7)(「リクルート」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「Eリクルート」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「Eリクルート」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もなく、負荷分散する経済的合理性があったとも認められない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
(2) 小括
 したがって、「Eリクルート」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
8 同(8)(「愛と出会いの占い館」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
ア 「F愛と出会いの占い館」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「F愛と出会いの占い館」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もない。
イ 前記第9、4に説示したとおり、被告ホールディングスが平成12年10月にビットオンに開発を委託して制作した「愛と出会いの占い館」に係る新プログラムと「F愛と出会いの占い館」とが類似しているとは認められないから、この新プログラムが負荷分散装置に対応するものであったとしても、「F愛と出会いの占い館」をBIG−IPの負荷分散機能を使用するために新たに複製したということはできない。この点は、「占い放題¥90」に係るプログラムと「F愛と出会いの占い館」の類似性が認められない以上、「占い放題¥90」に係るプログラムについても同様である。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、被告ホールディングスのサーバの青山における構成図(乙59の1)に3台のサーバが記載されているのは「F愛と出会いの占い館」を複製したものである旨を主張するが、これらサーバに蔵置されているのが「F愛と出会いの占い館」であることを認めるに足りる証拠はないし、「F愛と出会いの占い館」が新たに複製されたことを認めるに足りる証拠もない。
イ また、原告は、上記新プログラムの開発委託報酬が低額であるから、同新プログラムは「F愛と出会いの占い館」の複製又は翻案である旨を主張するが、そもそも適切な報酬額なるものの立証がないのであるから、そのようなことのみで新プログラムが「F愛と出会いの占い館」の複製又は翻案であると断定することはできない。
ウ その余の原告の主張も、採用することができない。
(3) 小括
 したがって、「F愛と出会いの占い館」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
9 同(9)(「映画館空席情報」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「H映画館空席情報」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「H映画館空席情報」を負荷分散装置に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もなく、負荷分散する経済的合理性があったとも認められない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
(2) 小括
 したがって、「H映画館空席情報」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
10 同(10)(「四次婆(DION)」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「J四次婆」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「J四次婆」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もなく、負荷分散する経済的合理性があったとも認められない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
(2) 小括
 したがって、「J四次婆」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
11 同(11)(「ゲームコーナー」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
 「Kゲームコーナー」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「Kゲームコーナー」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もなく、負荷分散する経済的合理性があったとも認められない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
(2) 小括
 したがって、「Kゲームコーナー」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
12 同(12)(「さくま式スゴロク」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
ア 「L東海道五十三次」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「L東海道五十三次」を負荷分散機能に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もない。そして、「L東海道五十三次」については、原告が被告ホールディングスのサーバの保守管理に関与していた平成12年1月に既にgg0〜gg3、ggの5台のサーバ(IPアドレス:<省略>)ともう2台のサーバが稼働しており(乙59の2、113)、従前のサーバ構成を変えて負荷分散を図る経済的合理性があったとも認め難い。
イ 「L奥の細道」については、そもそも未完成のプログラムであるから、これを負荷分散のために複製することはあり得ない。もっとも、被告ホールディングスがインタービジネス株式会社に開発を委託して同名のプログラムを制作したことが認められ(乙120)、この新プログラムが負荷分散装置に対応していた可能性はある。しかしながら、本件においては「L奥の細道」のプログラムを特定する証拠は全く提出されておらず、上記プログラムと「L奥の細道」とを対比することができない。してみれば、このプログラムが「L奥の細道」を複製又は翻案したともいえないことは明らかであり、そうとすれば、「L奥の細道」がBIG−IPの負荷分散機能を使用するために複製されているということはできない。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、「奧の細道」について新たに開発されたプログラムの開発期間が短期間であるから、同プログラムは「L奥の細道」の複製又は翻案である旨を主張するが、プログラムの内容を捨象して単に開発期間のみを論じても意味がなく、その主張は採用することができない。
イ その余の原告の主張も、採用することができない。
(3) 小括
 したがって、「Lさくま式スゴロク」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
13 同(13)(「ガチャピン・ムック」)につき
(1) 負荷分散のための複製の有無
ア 「Oガチャピン・ムック」がBIG−IPの負荷分散機能に対応していることを認めるに足りる証拠はなく、被告ホールディングスが「Oガチャピン・ムック」を負荷分散に対応するよう改修したことを認めるに足りる証拠もない。「ガチャピン・ムック」の会員数は最大でも1万3000人程度であり、テレビ放送での一時的なアクセス数の増加(弁論の全趣旨)を除けば、平成15年以降は継続して会員が減少してその歯止めがきかない状態であったサイトであり(乙94)、メニューサーバ1台、WWWサーバ2台、データベースサーバ1台という「ガチャピン・ムック」の構成(乙95別紙3)を負荷分散に対応するようにするという経済的合理性も認め得ない。
イ もっとも、被告ホールディングスが平成13年10月にビットオンに開発を委託して「ガチャピン・ムック」に係る新プログラムを制作したことが認められ(甲60、乙119、124、126)、この新プログラムが負荷分散に対応していた可能性はある。しかしながら、原告は、この新プログラムと「Oガチャピン・ムック」とが類似することを認めるに足りる主張、証拠の提出をしない。かえって、前訴においては、原告自身が「Oガチャピン・ムック」と上記新プログラムが類似していないことを自認していたかのようにもうかがわれる(甲90参照)。してみれば、この新プログラムが「Oガチャピン・ムック」を複製又は翻案したものとの立証はないのであり、仮に上記新プログラムが負荷分散機能を使用するために複製がされていたとしても、「Oガチャピン・ムック」がBIG−IPの負荷分散機能を使用するために新たに複製されているということはできない。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、被告らは上記新プログラムと「Oガチャピン・ムック」とが類似しない旨の十分な主張、立証を行っていない旨を主張するが、原告が類似性を主張、立証すべきであり、原告がそれをしないことは上記(1)イのとおりであるから、原告の上記主張は採用することができない。
イ その余の原告の主張も、採用することができない。
(3) 小括
 したがって、「Oガチャピン・ムック」を負荷分散装置の負荷分散機能を用いるために新たに複製したとは認められない。
14 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らに数量制限違反の著作権侵害行為があったとは認められない。
第11 争点11(改変)について
1 同(1)(プログラム)につき
(1) 著作物の改変
 原告は、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」について「A恋愛の神様」を改変したプログラムである旨を主張するが、どの部分をもって「意に反して」改変されたものとするのか全く特定せず、その主張は失当である。
 いずれにしても、前記第1、3のとおり、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」は、いずれも「A恋愛の神様」を複製又は翻案したとは認められない別の著作物であるから、被告らは、「A恋愛の神様」について著作権法20条にいう著作物の改変を行ったものということはできない。
(2) 題号の改変
 前記第1、3のとおり、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」は、「A恋愛の神様」を複製又は翻案したとは認められない別の著作物であるから、被告らが「A恋愛の神様」の題号を改変したとは認められない。なお、「恋愛の神様」という題号は、そもそも被告ホールディングスが創作したものと認められるから(弁論の全趣旨)、この題号を「恋愛の神様DX」としたことに基づく原告の著作者人格権侵害が生じる余地はない。
2 データ定義ファイルの改変
 原告は、「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルを改変したものである旨を主張するが、どの部分をもって「意に反して」改変されたものとするのか、全く特定せず、その主張は失当である。
 いずれにしても、前記第2、3、第4、3及び第6、2のとおり、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、原告の著作権を認めることができないか、若しくは創作性がないか、又は「A−1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルと類似するとは認められないものであるから、被告らは、「A恋愛の神様」のデータ定義ファイルについて著作権法20条にいう著作物の改変を行ったものということはできない。
3 会員情報データベースの改変
 原告は、原告会員情報データベースを改変した旨を主張するが、どの部分をもって「意に反して」改変されたものとするのか、全く特定せず、その主張は失当である。
 いずれにしても、前記第5、3のとおり、原告会員情報データベースは、原告の著作権を認めることができないものか、又は被告会員情報データベースと類似するとは認められないものであるから、被告らは、原告会員情報データベースについて著作権法20条にいう著作物の改変を行ったものということはできない。
4 その他
 原告は、そのほかにも別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアにつき同一性保持権侵害があった旨を主張するが、どのソフトウェアのどの部分をもって「意に反して」改変されたものとするのか、全く特定せず、その主張は失当である。
5 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らに同一性保持権侵害の著作者人格権侵害行為があったとは認められない。
第12 争点12(氏名非表示)
1 侵害の有無について
 原告は、被告らが別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアについて、原告の氏名表示権を侵害する行為をした旨を主張するが、どのソフトウェアについてどのような行為をもって著作権法19条にいう氏名の非表示があったのか全く特定せず、その主張は失当である。
2 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らに氏名表示権侵害の著作者人格権侵害行為があったとは認められない。
第13 争点13(複製物の交付)について
1 本件確認書の解釈につき
(1) 改変許諾条項
ア 本件確認書は、3条但し書において「またコンテンツサービスを継続的に維持するために・・・行う改変については認める・・・」と規定している。そして、そのほか、「改変」の内容を特段限定する趣旨の文言はない。
 前記第10、1(1)イに説示したとおり、被告ホールディングスは、もともと原告プログラムの使用をすることができるのであり、したがって、「当該電子計算機において利用し得るようにするため」、又は「電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするため」に必要な改変は著作権法上許容されている(著作権法20条2項3号)。それにもかかわらず、あえて上記の条項を設定し、このことも含めた対価が原告に対して支払われるのであるとするならば、この条項は、上記法定の許容範囲を越える広範な改変を許容したものと解するのが相当である。
イ そこで、上記条項をみてみると、その条項は「コンテンツサービスを継続的に維持するために」として、コンテンツサービスの維持継続を目的としているものであって、プログラム稼働の維持継続を目的としているものではなく、現に、本件確認書2条においても、「別紙ロイヤリティ契約分のプログラムに関連する該当コンテンツサービス」として、「プログラム」と「コンテンツ」とは一応分けて観念されているほか、原告も、同条につき、前訴において、「コンテンツ」と「プログラム」とは異なるものであるからたとえ「プログラム」が全く別なものに変更されても「コンテンツ」が同一であればロイヤリティの支払義務がある旨の主張をしていたところである(甲57)。しかるところ、コンテンツの同一性は画面表示等のアウトプットで認識されるのであって、プログラム部分の同一性で認識されるものではない。
 そうすると、本件確認書3条但し書で許容された改変とは、全く該当コンテンツの維持に関係のない改変はともかくとして、そうでない場合には、改変内容に特段の限定は付けないものとした趣旨と解するほかない。このように解しても、被告ホールディングスは、相応の対価を支払い、使用期限経過後は、たとえ改変されたプログラムが派生物(2次的著作物)に該当する場合でもその権利の一切を事実上放棄することになっているのであり(もちろん、新たな著作物であればその後の使用に制約が課されるいわれはない。)、衡平を欠くというものではない。
ウ また、プログラムを改変するためには、ソースコードの解析行為が必要であり、その際、必ず複製行為を必要とするから、上記条項が、プログラム(ソースコード)の複製を許容していることはいうまでもない。
(2) 外部漏洩・販売禁止条項
ア 本件確認書は、3条但し書において「プログラムを外部に漏洩・販売することは認めない。」と規定している。
 プログラムの複製物を販売することにより公衆に提供することは、譲渡権の侵害であり、わざわざ規定を置くまでもなく許容されないことが明らかであるから、「外部に・・・販売」とは、公衆への提供に該当しない場合、すなわち、デリリオスに対する販売のような特定かつ少数に対する提供のような場合でも(ただし、占有改定のような観念的な提供でも足りるかは一応問題になる。)、被告ホールディングスがその関係者以外に販売すればこれを直ちに契約違反とする趣旨と解される。一方、上記(1)において判断したとおり、被告ホールディングスには広範な改変権原が付与されており、その際に原告プログラムを複製することが許容されている。そして、コンテンツ配信事業者にすぎず、しかも、この事業目的に資するに足りるプログラムを要する被告ホールディングスが、プログラムの改変を含むプログラムの開発をするためにプログラム開発会社又は個人にプログラム開発を委託することは当然の企業行動であるから、「外部に・・・販売」と並置されている「外部に漏洩」とは、このことを前提としたものと考えられる。そして、上記条項ではわざわざ「漏洩」を禁止するとしているのであって、単純な「開示」を禁止しているものではない。
イ このような観点から「外部に漏洩」の意義を検討すれば、「外部に漏洩」とは、「外部に・・・販売」されたプログラムの買受人のように無制約に自己のための利用を許容されるような態様でプログラムの内容が開示されることを意味するものと解するのが相当であり、単に開発を委託されたプログラム開発会社に原告プログラムを開示することは含まれないものというべきである。
(3) 原告の主張に対して
ア 原告は、被告ホールディングスは、自らプログラム開発を行う専門的技術・知識を持ち合わせているから、外部の開発会社を使用する必要はなく、したがって、本件確認書は、被告ホールディングスの社員以外は一切改変に関与できない旨を主張する。
 しかし、本件確認書を取り交わした当時、被告ホールディングスにプログラム開発の能力がないことを原告は承知していたわけであり(だからこそ、外部の開発会社である原告にプログラムの開発を委託していた。)、実際にも、本件確認書が作成された時点で被告ホールディングスにいた技術者はわずか3名であり、そのうち1名は平成11年12月に入社したメディア事業本部システム技術部長兼取締役であったEであり(甲34別紙3)、うち1名は平成12年4月に入社した技術統括室統括部長というI(甲7)であり、両者とも役職者であり、残り1名が専門学校を卒業したJ(弁論の全趣旨)であるから、プログラムを自社開発することなどおよそできるはずがない。原告代表者が、コンテンツ配信事業者でありコンテンツ制作のための自社の専属プログラマを擁していない被告ホールディングスが、外部の開発会社又は個人を利用しないと考えるべき合理的理由は見いだし難い。
 このような状況において、外部の開発会社の利用を禁止するというのでは、本件確認書は、対価を受け改変を許容しておきながらその手段を奪っているということになり、契約解釈としては不合理である。
 原告の上記主張は、採用することができない。
イ 原告は、本件確認書を取り交わした当時、被告ホールディングスが会社外部の開発会社を利用することを予想し得なかった旨の主張をするが、上記アのとおり、その主張は採用し得ない。
 のみならず、証拠(甲2、5の1・2、6、34、34の別紙4)によれば、被告ホールディングスにおいては、平成12年初頭には会員数の増加によるサーバの負荷増大への対策が課題となっており、そのころ、Eが原告代表者に対して負荷分散装置であるBIG−IPのカタログ、プレゼン資料などを示して意見を求めたことが認められるから、この時点でBIG−IPの導入がかなり具体化していたことが認められる。したがって、原告は、既にこの時点において被告ホールディングスが負荷分散装置を導入することを知っていたというべきである。そして、負荷分散装置を導入するとあれば、プログラムの改修、改変は当然に想定されるところであるから、原告としても近々に被告ホールディングスが改変行為に取り掛かることは分かっていたものと認められる。その上で、上記(1)のとおり被告ホールディングスにプログラムを自主開発する能力が当面ないという事情を前提にすれば、本件確認書で原告プログラムの改変を被告ホールディングスに許容することとは、すなわち、外部の開発会社がそれに当たるであろうことにほかならない。
 したがって、原告代表者は、具体的可能性としても外部の開発会社が使用されることを当然に知っていたと認められる。
 原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は、ソフトウエア開発業界には野放図に再委託を許す慣習はない旨を主張する。
 しかし、原告が主張する再委託とはプログラム開発について注文者に対する関係でされる再委託のことであり、本件に該当するものではない。それはさておき、原告が提出する契約書例によっても、ベンダ(開発受託者)が委託者から受託した開発業務を再委託することそれ自体まで禁じるという発想は現実的とは思われておらず、それゆえ所定の条件の下にこれを許容することを前提に、それをどのような条件とするかを考慮しているのであり(乙96の1、97の1、98、99参照)、そこでいうところの委託者の立場にすぎない被告ホールディングスが、会社外部の開発会社を全く利用できないという事態が現実的でないことはいうまでもない。野放図にプログラムの複製が許されないことはいうまでもないが、ソフトウェアの開発がだれの助力も得ずに受託者のみの力でされなければならないことが社会一般の慣習などという原告の前提は失当である。
 したがって、原告の上記主張は採用することはできない。
エ 原告は、被告ホールディングスが会社外部の開発会社にプログラム開発を委託できたのでは、原告プログラムのノウハウ、アイディアが競業会社に奪われてしまう旨を主張するが、そうであるならばそのことを禁止する条項を具体的に規定すれば足りたことである。本件確認書の条項を合理的に解釈すれば上記に説示したとおりであり、原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は、前訴和解及びこれに付属する確認書において、被告ホールディングスは外部の開発会社にプログラムを開示することが本件確認書の「外部への漏洩」に該当すると認めた旨を主張する。
 前記第2章第2、6(3)に認定したとおり、被告ホールディングス及び被告Aが「Oガチャピン・ムック」を会社外部の開発会社に開示したことを前訴和解及びこれに付属する確認書に含めたことは、原告の要求を入れて和解を成立するためにした便法としての譲歩の結果にすぎず、そのことから直ちに事実を確定することはできない。それはさておき、そもそも前訴和解条項は、
 「1 本和解は、@・・・A被告が別紙プログラム目録記載のプログラム『ガチャピン・ムック』、同『プライベートホームページ』及び同『四次婆』を、原告の許諾なく第三者に流出させたとされる紛争、B・・・を解決するものである(以下、@ないしBの各紛争を一括して『本件紛争』という。)。
2(1) 被告は、原告に対し、本件紛争の解決金として、連帯して1億6000万円の支払義務のあることを認める。
 ・・・
11 原告、被告及び利害関係人は、原告と被告の間、原告とデリリオスとの間、及び原告と利害関係人との間において、本件紛争に関し、本和解条項に定めるほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。」
 とし、前訴和解に付随する確認書は、前訴和解第2項の1億6000万円の内訳を、
 「・・・
 (2) 上記プログラム(判決注:「Oガチャピンムック」)についての著作者人格権の侵害による損害賠償として金・・・円
 ・・・」
 としているだけなのであり、被告ホールディングス及び被告Aが「Oガチャピン・ムック」を開発会社に開示したことについては、単に原告の請求権が放棄されているだけであり(請求放棄条項はその権利が存することを当然に相手方が認めていることを前提とするものではない。)、これについての損害賠償金を支払ったとか、違法であることを確認したとはどこにも記載されていない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
2 被告の行為につき
(1) 「A恋愛の神様」
ア 上記1(1)〜(3)によれば、被告ホールディングスが「A−1旧恋愛の神様」の開発を外部の開発会社に委託するに当たって、「A恋愛の神様」のソースコードの複製物を交付したこと自体は、その範囲、開示の目的を問うまでもなく、本件確認書で許諾された範囲内の行為である。
イ そのほか被告らが「A恋愛の神様」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ 原告は、「A恋愛の神様」を開発会社に開示した日は本件確認書締結日よりも前であるから、本件確認書による許諾の範囲外である旨を主張する。
 しかし、そもそも本件確認書がその効力を締結日より前の少なくとも平成12年3月まで遡らせていることは、本件確認書締結日である平成12年6月15日時点までに被告ホールディングスがコンテンツ配信サービスを継続していたことから明らかなことであり、実際、本件確認書にも契約の効力に関する始期の定めはない。しかも、もともと原告は、平成12年3月から本件確認書締結日までの間に原告プログラムにつき著作権侵害又は著作者人格権侵害があり得ることを想定しており(甲82の1)、それを踏まえて本件確認書の締結に臨んでいるのであり、また、一般的にいって、時期を問わずにプログラムの改変自体を許容するとした者が、通常、改変がその許容した時期の前にされていたからとして結論を違えるとも思われない。むしろ、契約の効力を遡らせておきながら本件確認書締結前の改変だけは許さないとする特約をするのであれば、そのことを契約書に明示すべきであり、それをしていない以上、本件確認書締結前に被告ホールディングスが開発会社に「A恋愛の神様」を開示したからといって、本件確認書で許諾された範囲内の行為でないことになるわけではない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
エ したがって、「A恋愛の神様」の複製物を交付したことは原告の著作権を侵害するものではない。
(2) 「@四次婆」
ア 上記1(3)オによれば、第2章第2、6(1)の「四次婆」のデリリオスに対するコンテンツ売却について前訴和解で包括的な解決が図られており、被告ホールディングスがデリリオスに「@四次婆」の複製物を交付したこと(占有改定)についてもこれに含まれていると認められる(この旨の被告らの黙示の主張があると解される。)。
イ そのほか被告らが「@四次婆」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、「@四次婆」につき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
(3) 「Bプライベートホームページ」
ア 上記1(3)オによれば、第2章第2、6(1)の「プライベートホームページ」のデリリオスに対するコンテンツ売却について前訴和解で包括的な解決が図られており、被告ホールディングスがデリリオスに「Bプライベートホームページ」の複製物を交付したこと(占有改定)についてもこれに含まれていると認められる(この旨の被告らの黙示の主張があると解される。)。
イ 前記1(1)〜(3)によれば、被告ホールディングスが「Bプライべートホームページ」の開発を外部の開発会社に委託するに当たって、仮に「Bプライべートホームページ」のソースコードの複製物を交付したとしても、その範囲、開示の目的を問うまでもなく、本件確認書で許諾された範囲内の行為である。
ウ そのほか被告らが「Bプライべートホームページ」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
エ したがって、「Bプライべートホームページ」につき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
(4) 「F愛と出会いの占い館」
ア 上記1(1)〜(3)によれば、被告ホールディングスが「F愛と出会いの占い館」の開発を外部の開発会社に委託するに当たって、仮に「F愛と出会いの占い館」のソースコードの複製物を交付したとしても、その範囲、開示の目的を問うまでもなく、本件確認書で許諾された範囲内の行為である。
イ そのほか被告らが「F愛と出会いの占い館」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、「F愛と出会いの占い館」につき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
(5) 「J四次婆」
ア 上記1(3)オによれば、第2章第2、6(1)の「四次婆」のデリリオスに対するコンテンツ売却について前訴和解で包括的な解決が図られており、被告ホールディングスがデリリオスに「J四次婆」の複製物を交付したこと(占有改定)についてもこれに含まれていると認められる(この旨の被告らの黙示の主張があると解される。)。
イ そのほか被告らが「J四次婆」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、「J四次婆」につき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
(6) 「Oガチャピン・ムック」
ア 前記1(1)〜(3)によれば、被告ホールディングスが「Oガチャピン・ムック」の開発を外部の開発会社に委託するに当たって、「Oガチャピン・ムック」のソースコードの複製物を交付したこと(甲60)は、その範囲、開示の目的を問うまでもなく、本件確認書で許諾された範囲内の行為である。
イ そのほか被告らが「Oガチャピン・ムック」の複製物を交付したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、「Oガチャピン・ムック」につき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
(7) その余の原告プログラム
 被告らがこれら原告プログラムの複製物を外部の開発会社に交付したことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、これらプログラムにつき、複製物を交付したことによる原告の著作権侵害は認められない。
3 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らに複製物の交付による著作権侵害行為があったことは認められない。
第14 争点14(翻案)について
1 本件確認書の解釈につき
(1) 改変許諾条項
 本件確認書は、3条但し書において「またコンテンツサービスを継続的に維持するために・・・行う改変については認める・・・」と規定しており、この改変許諾条項の解釈については、前記第13、1のとおり、全く該当コンテンツの維持に関係のない改変を除いて、改変内容に特段の限定は付さないものとしたものと認められる。
(2) 原告の主張に対して
ア 原告は、本件確認書の改変許諾条項は、別途独立した新たなプログラムを新規に作ることを禁止している旨を主張する。
 しかしながら、前記第13、1に認定判断したとおり、コンテンツが同一である限りは、その維持のためのプログラムの改変は、本件確認書の改変許諾条項により許諾されていることであり、改変より生じた当該改変プログラムが原告プログラムと類似性があるか否かは本件確認書の改変許諾条項の律するところではない。本件確認書の改変許諾条項は原告プログラムの改変を許容しているのであり、改変が積み重なった結果、類似性のないプログラムに至ってしまえば、以後、そのプログラムは本件確認書の許諾ではなく一般法規により律せられるだけであり、ひるがえって途中の改変が契約違反とされるいわれはない。
 また、原告プログラムの改変をした結果、類似性のないプログラムが生じ、その結果、コンテンツも同一性でなくなった場合には、本件確認書の改変許諾条項の「コンテンツを継続的に維持するため」という条件には合致しないことにはなるが、プログラムもコンテンツも同一性がないならば、それは全く本件確認書と関係のない行為をしているだけであり、改変が積み重なった結果、類似性のないプログラムに至ってしまったことによってひるがえって途中の改変が契約違反とされることがないのは、上記のとおりである。むしろ、本件確認書の改変許諾条項が禁じているのは、原告の主張するような場合ではなく、原告プログラムと類似性あるプログラムを類似性のないコンテンツに転用又は流用することである。この場合には、元のコンテンツ配信サービスの維持に全く関係のない理由で原告プログラムを改変して使用することになり、それを制限する合理性はある。しかしながら、いずれにしても、前記までの認定判断のとおり、本件証拠上、原告プログラムと類似するプログラムを別なコンテンツに流用していることを認めるに足りる証拠はない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
イ 原告は、本件確認書の改変許諾条項の改変は、コンテンツ配信サービスの停止・廃止に追い込まれるのを防止するための改変、例えば新機種登録という程度のものしか意味しない旨を主張する。
 しかし、原告の主張するところは、要するにプログラムの同一性を損なわない改変しか許さないというものに等しく、それでは被告ホールディングスがわざわざ改変の許諾を受けてその対価を支払った意味がない。その上、この解釈は「コンテンツの維持」という本件確認書の文言からかけ離れたものというほかない。
 原告の上記主張は、採用することができない。
2 被告らの行為につき
(1) 「A恋愛の神様」
ア 前記第1、3のとおり、「A−1旧恋愛の神様」、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」は、いずれも「A恋愛の神様」を複製若しくは翻案したものであるとは認められないから、上記1(2)に認定判断したとおり、被告ホールディングスの行為は本件確認書の改変許諾条項に反するものではない。
イ そのほか被告らが「A恋愛の神様」の翻案をしたことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、「A恋愛の神様」につき、翻案をしたことによる原告の著作権侵害は認められない。
(2) その余の原告プログラム
 被告らが、上記1(1)に認定判断の「改変」に違反した改変をしたことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、これら原告プログラムにつき、翻案をしたことによる原告の著作権侵害は認められない。
3 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らに翻案による著作権侵害行為があったとは認められない。
第15 争点15(みなし侵害)について
1 みなし侵害の有無につき
 前記第1、3及び前記第13、3のとおり、「A−1旧恋愛の神様」が原告の翻案権を侵害するプログラムでない以上、原告の主張はその前提を欠く。
 そのほかの原告プログラムについても、原告の翻案権を侵害する翻案行為の存在が認められないほか、そもそも原著作物たる原告プログラムの内容すら特定されておらず、又はその内容を特定するに足りる主張、立証がないから、検討する余地がない。
2 まとめ
 以上のとおりであるから、被告らにみなし侵害の著作権侵害行為があったとは認められない。
第16 争点16(被告ホールディングスの責任)について
1 会社分割前につき
(1) 不法行為請求権
 前記第1〜第15までの認定判断によれば、前記第9、6のとおり、被告ホールディングスは、平成17年4月1日から会社分割の前日まで、「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」又は「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行い、これに伴って被告カラー画像を公衆送信し、原告カラー画像に係る原告の公衆送信権(送信可能化権を含む。)を侵害したことになるから、民法709条の不法行為責任を負う。
(2) 免責的債務引受け
 前記第2章第2、1(2)ウ及び同(3)のとおり、上記不法行為に基づく不法行為債務は、被告インデックスが免責的債務引受けにより承継した。
 しかし、消滅株式会社等(新設分割株式会社〔会社法803条、763条5号参照〕)である被告ホールディングスは、原告に対して、会社分割に際し、会社法810条1項2号、2項に基づく異議等についての各別の催告をしなければならないところ(会社法810条3項)、被告ホールディングスが原告に対してその催告をしたことは認められないから(弁論の全趣旨)、原告は、新設分割会社である被告ホールディングスに対し、新設分割設立会社である被告インデックスが成立した平成18年6月1日に被告ホールディングスが有していた財産の価額を限度として被告ホールディングスに対して上記不法行為債権の履行を請求できる(会社法764条2項)。この場合、新設分割設立会社である被告インデックスは、重畳的債務引受けをしたこととなるから、被告インデックスと新設分割会社である被告ホールディングスは、この不法行為債務について不真正連帯債務を負うことになると解される。なお、この責任限度額につき被告ホールディングスの主張はない。
2 会社分割後につき
(1) 不法行為請求権
 前記第2章第2、1(2)ウ及び同(3)のとおり、会社分割後に「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」又は「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行っているのは被告インデックスであり、被告ホールディングスがこれに関与していることを認めるに足りる証拠はないから、被告ホールディングスが不法行為責任を負うとすることはできない。
(2) 原告の主張に対して
 原告は、被告Aについての被告ホールディングスの代位責任を主張するが、被告Aは被告インデックスの取締役ではないから、その主張は、いずれも失当である。なお、受命裁判官は、平成19年7月13日第6回弁論準備手続期日、平成19年9月10日第7回弁論準備手続期日、平成21年5月19日第22回弁論準備手続期日、平成21年6月30日第23回弁論準備手続期日において、被告らの連帯責任の根拠、会社分割前後の責任の根拠などについて明確にするよう釈明を求めたが、原告は、具体的事実関係、法的根拠を明らかにせず、単に従前の主張を繰り返した。そこで、上記(1)のとおり認定する。
3 まとめ
 以上のとおりであり、被告ホールディングスは、会社分割前の公衆送信権(送信可能化権を含む。)侵害についてのみ、不法行為責任を負う。
第17 争点17(被告インデックスの責任)について
1 会社分割前につき
(1) 不法行為請求権
 前記第2章第2、1(3)のとおり、会社分割により設立された被告インデックスが設立前の原告の著作権を侵害する行為を行うことはないから、被告インデックスが不法行為責任を負うことはない。
(2) 原告の主張に対して
 原告は、被告ホールディングスの行為と被告インデックスの行為とが客観的共同関係を有する旨を主張するが、会社が存在しない間に他者と客観的共同関係を有する不法行為をすることはないから、その主張を採用することはできない。
(3) 免責的債務承継
 ただし、前記第16、1(2)のとおり、被告ホールディングスの不法行為に基づく不法行為債務は、被告インデックスが免責的債務承継により承継した。
2 会社分割後
 前記第9、6のとおり、被告インデックスは、会社分割の日から平成20年10月24日までの間、「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」又は「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを行い、これに伴って被告カラー画像を公衆送信し、原告カラー画像に係る原告の公衆送信権(送信可能化権を含む。)を侵害したことになるから、民法709条の不法行為責任を負う(その余の原告の請求は選択的であるから、判断を要しない。)。
3 まとめ
 以上から、結局、被告インデックスは、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間の不法行為責任をすべて負うこととなる。
第18 争点18(被告Aの責任)について
1 会社分割前につき
 原告は、コンテンツ配信サービスにおける被告Aの関わりについて、何ら具体的事実関係を主張、立証せず、単に被告Aが被告ホールディングスの代表者であるから責任を負うとするのみであり、その主張はいずれも採用することができない。
2 会社分割後につき
 原告は、コンテンツ配信サービスにおける被告Aの関わりについて、何ら具体的事実関係を主張、立証せず、単に被告Aが被告インデックスの親会社である被告ホールディングスの代表者であるから責任を負うとするのみであり、その主張はいずれも採用することができない。
3 まとめ
 以上のとおりであり、被告Aが不法行為責任を負うということはできない。
第19 争点19(責任態様)について
 前記第16、1(2)に説示のとおり、各別の催告のない不法行為によって生じた新設分割株式会社の債務の債権者に対する不法行為債務は、新設分割株式会社と新設分割設立会社との不真正連帯債務になるから、前記第16、3及び第17、3によれば、平成17年4月1日から平成18年5月31日までの損害賠償責任は、被告ホールディングスと被告インデックスの不真正連帯債務になり、平成18年6月1日から平成20年10月24日までの損害賠償債務は、被告インデックスの単独責任となる。
第20 争点20(許諾契約違反)について
 前記第1〜第15までに認定判断したとおり、「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」又は「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスにおいて被告カラー画像を公衆送信したとの点を除き、被告らに不法行為責任は認められない。そして、原告が本件確認書に違反すると主張するところは、不法行為責任と同じであるから、不法行為責任が認められない部分においては債務不履行責任も認められない。
 したがって、前記第10、1(1)イ(エのとおり、本件確認書により被告ホールディングス又は会社分割により被告ホールディングスの地位を承継した被告インデックスは、原告から原告カラー画像の許諾を受け、前記第9、6のとおり原告カラー画像の使用期限を徒過して被告カラー画像を公衆送信(送信可能化を含む。)した契約違反があるのであるから、この点においてのみ債務不履行責任を負う。ただし、この契約責任については会社法810条の適用はないから、被告インデックスが被告ホールディングスの債務を免責的債務引受けにより全部承継した。
第21 争点21(損害の発生)について
 著作権法114条2項は、売上げ減少による逸失利益の推定規定と解されるから、権利者が当該著作物を利用していない場合には逸失利益が発生する前提を欠くため、同項の適用はないと解すべきである。これを本件についてみるに、原告は、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間、原告カラー画像を使用したことはなく、コンテンツ配信サービスを行っていないのであるから(弁論の全趣旨)、同項の損害の推定規定を適用する前提を欠き、同項を適用することはできない。
 原告は、原告はいつでも携帯コンテンツの運用による収益可能性を有していたから著作権法114条2項の適用がある旨を主張するが、現実に当該著作物を利用していなかった以上、同項を適用する余地はない。
 原告の主張は、採用することができない。
第22 争点22(利益の額)について
 前記第21のとおり著作権法114条2項の適用の余地がない以上、この点を判断する必要はない。
第23 争点23(損害の額)について
1 著作権法114条3項
 原告の著作権法114条2項の主張中には、印税率に言及した部分も見られるから、原告は、著作権法114条2項の適用がない場合には、著作権法11条3項の規定を適用することを黙示的に主張しているものと解される。
 また、被告ホールディングス又は被告インデックスが故意に原告カラー画像に係る原告の公衆送信権(送信可能化権を含む。)を侵害したと認めるに足りる証拠はないが、原告と両被告との上記著作権侵害に至る経緯にかんがみれば、両被告とも、上記著作権侵害につき、少なくとも過失はあるものと認められる。
2 売上高
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」
 平成17年4月1日から平成20年10月24日までの「恋愛の神様(NTTドコモ)」による売上高は、8億5400万円を下らないと推認される(弁論の全趣旨)。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」
 平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間の「恋愛の神様(KDDI)」による売上高は、1億5100万円を下らないと推認される(弁論の全趣旨)。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」
 平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間の「恋愛の神様(ソフトバンク)」による売上高は、5250万円を下らないと推認される(弁論の全趣旨)。
(4) 小括
 以上から、「恋愛の神様(NTTドコモ)」、「恋愛の神様(KDDI)」及び「恋愛の神様(ソフトバンク)」の平成17年4月1日から平成20年10月24日までの間の売上高は、10億5750万円を下らないものと認められる。
3 使用料率
 この点に係る当事者の具体的主張、立証はないが、10%を下回るものではないと推認される。
 原告は、オンライン販売における著者の印税率は75%〜90%である旨の記載のある証拠を提出するが、それら印税率は本件のような著作物の利用とは異なる使用形態に係る使用料率に係るものであって、本件においてその使用率を採用することはできない。
4 寄与率
 著作権侵害が認められたのは被告カラー画像の公衆送信(送信可能化を含む。)の点のみであり、一方、上記売上高はコンテンツ配信サービス全体の売上高である。被告カラー画像は、利用者がルーン占いをした際に表示される画像であり、ルーン占いの中で占める位置は補助的、装飾的なものにすぎず、この占いに占める地位として重要なものとはいえない。そして、前記第2章第2、5(2)に認定したとおり、「恋愛の神様(NTTドコモ)」に係るプログラムが「A−1旧恋愛の神様」であった時点で、メニューとしては10以上に分かれており、その後、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」と拡張されていく中で、かなりの数のメニューが追加されたであろうことは、そのソースコードの量からみても(「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」のデータ定義ファイルは、膨大であり、すべてを証拠として提出することは不可能であった。)、容易に推認することができる。
 したがって、「A−1新恋愛の神様」、「A−2恋愛の神様」又は「A−3恋愛の神様」のコンテンツ配信サービスにおける被告カラー画像の寄与はわずかな部分にとどまるものというべきである。また、原告カラー画像は、携帯画面に表示するという制約を課された小さな画像であるが、その最も注視される部分は古来から伝わるルーン文字部分であり、美的創作性の多くをルーン文字という独占を許さないものに依っており、原告固有の創作性の程度は、必ずしも高いものとすることはできない。
 そのほか本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば、被告カラー画像のコンテンツに占める寄与割合は、上記全期間に上記全コンテンツを平均して100分の1が相当と認める。
5 使用料
 以上1〜4によれば、被告カラー画像の公衆送信(送信可能化を含む。)に対して原告が原告カラー画像の著作権の行使について受けるべき金銭の額に相当する額は、次のとおり105万円となる。
 (記)10億5750万円×10%×(1/100)≒105万円
6 期間の按分
 被告インデックスが単独で不法行為を行っていた期間は、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの約43か月のうち、平成18年6月1日から平成20年10月24日までの約29か月である。したがって、被告インデックスが単独で不法行為を行っていた期間の損害額は、次のとおり70万円と認められる。
 (記)105万円×(29/43)≒70万円
 したがって、被告ホールディングス及び被告インデックスが連帯責任を負う損害額は、次のとおり35万円となる。
 (記)105万円−70万円=35万円
7 弁護士費用
 本件における弁護士費用は、上記認容額にかんがみ、被告インデックスが単独で行った不法行為につき7万円、被告ホールディングス及び被告インデックスが連帯責任を負う不法行為責任につき3万円が相当と認める。
8 遅延損害金起算日
 上記4に説示のとおり、本件で認容された損害賠償額は、平成17年4月1日から平成20年10月24日までの全期間を通じて原告カラー画像が寄与した割合を基に算定されているから、その損害について個々の期間についての寄与を観念することはできず、実際にもどの月にどの程度の損害が発生したなどの詳細を明らかにできる性質のものではない。
 したがって、遅延損害金の起算日は、最終の不法行為の日である平成20年10月24日からとするのが相当である。そして、上記不法行為に対応する弁護士費用相当額の損害についても、これと同様に解するのが相当である。
9 まとめ
 以上から、被告ホールディングス及び被告インデックスが原告に対して連帯負担する損害賠償額は38万円、被告インデックスが原告に対して負担すべき損害賠償額は77万円となる(合計115万円)。
 なお、不法行為に基づく損害賠償として著作権法114条3項に基づき算定されたこの額(被告ホールディングスにつき38万円、被告インデックスにつき115万円)を、債務不履行に基づく損害賠償額が超えるとは認められないから(前記第20に説示のとおり、被告インデックスに対する損害額だけが問題となる。)、債務不履行に基づく請求は理由がない。
第24 争点24(慰謝料)について
 前記第11、5及び第12、2のとおり、被告らが原告の著作者人格権を侵害したとは認められないから、著作者人格権侵害による慰謝料請求を認めることはできない。
第25 争点25(不当利得)について
 原告は不当利得の返還請求をするが、仮に原告が不法行為に基づく請求と同様の理由から被告ホールディングス及び被告インデックスに不当利得の返還請求をすることができるとしても、その利得額が前記第23、9の損害額を超えるとは認められない。また、被告Aには何ら原告の損失と因果関係ある利得が存在するとは認められない。
 よって、原告の不当利得返還請求は理由がない。
第26 結論
 以上の次第であるから、原告の本件請求は、主位的請求につき、被告ホールディングス及び被告インデックスに対しては損害賠償金38万円及びこれに対する平成20年10月24日から支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の連帯支払を求める限度で、被告インデックスに対しては損害賠償金77万円及びこれに対する平成20年10月24日から支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないからこれをすべて棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 岡本岳
 裁判官 坂本康博
 裁判官 中村恭は、転任のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 岡本岳
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/